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経営学リテラシー 共通シラバス (2018 年度 ) 授業の目的経営学部では 大学生活のみならず卒業後のキャリアにおいて必要とされる能力の育成を目指しています 本科目では 経営に関連する最近のトピックやゲストスピーカーによる講演を題材に そうした能力の礎となるスキルや知識の修得を目指すとともに ビジ

副学長 教学担当 中村 久美 新しい大学づくりに向けた教育の展開 巻頭言 2012年6月に文部科学省が公表した 大学改革実行プラン は 激動の社会における大学機能の再構築を掲げています 教学に関し ては ①学生の主体的な学びの創出や学修時間の拡大化をはじめと する大学教育の質的転換 ②グローバル化に

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資料1 骨子案(たたき台) 

ウィメンズ ヘルス プロモーション概論 2 井村真澄 1 年次前期 授業の目的 リプロダクティブヘルス ライツやウィメンズヘルスに関する歴史背景 国際的動向 基盤となる理論 概念への理解を深め 女性の生涯を通じた健康課題について学び 女性とその家族に対する健康支援の充実に向けたエビデンスに基づく助産

習う ということで 教育を受ける側の 意味合いになると思います また 教育者とした場合 その構造は 義 ( 案 ) では この考え方に基づき 教える ことと学ぶことはダイナミックな相互作用 と捉えています 教育する 者 となると思います 看護学教育の定義を これに当てはめると 教授学習過程する者 と

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身の回りの現象に関わる話題の中で 数理の考え方がどのように使われているのかを理解しながら 数理の基礎を学ぶことによって 専門の問題に対して 数理を活用して取り組める論理的思考力を修得する そして この能力を身につけるために 学生が主体的に 専門に繋がる基礎学力を修得できる科目群を編成している 4.

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資料4-4 新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について 審議のまとめ(参考資料)

目次 Ⅰ. 建学の精神と社会的使命 1. 建学の精神 2. 社会的使命 3. 教育方針 Ⅱ. 長期ビジョン 1. 策定の趣旨 2. 計画の期間 3. 本学が目指す大学像 4. 大学像実現へ向けた方向性 Ⅲ. 中期計画 ( 前期 ) 1. 経済社会環境の変化に対応した教学組織の再編成 (1) 学部の再

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平成 30 年度授業シラバスの詳細内容 科目名 ( 英 ) 担当教員名 情報技術と職業 - 演習 (Information Technology at Work Place - 授業コード exercise ) 松永多苗子 星芝貴行 坂井美穂 足立元 坪倉篤志 科目ナンバリン 福島学 グコード 配当

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調査概要 授業評価アンケート結果 ( 大学 ) 調査票

答申本文(1/2)

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Transcription:

学習成果につながるアクティブ ラーニングとそれを支える学習環境 国立大学図書館協会シンポジウム 2012 年 12 月 3 日 同志社大学山田礼子

学士課程教育の構築が中教審答申の焦点に 学士課程教育の構築に向けて( 審議のまとめ ) 2008 年 3 月 25 日付中央教育審議会大学分科会制度 教育部会 2008 年 12 月の中教審答申においても確認 知識基盤社会 における大学教育の量的拡大 ( ユニバーサル段階 ) を積極的に受け止めつつ 社会からの信頼に応え 国際通用性を備えた学士課程 教育の構築を目指す 2

質保証強化の方針への転換 従来の多様化 弾力化のあり方の見直しを図り 質保証強化の方針の明確化 学士 の品質保証を全面に打ち出しつつ 出口 中身 入口 を統合した一体的な改革の提言特に 出口 に関し 我が国の学士号が保証する能力を明確化する観点から 学士力 を提起 本学でも ディプロマ ポリシー ( 出口 カリキュラム ポリシー ( 中身 ) アドミッション ポリシー ( 入口 ) の明確化が必須の課題 3

中央教育審議会大学分科会 2012 年審議のまとめと答申 中教審大学分科会大学教育部会による 審議のまとめ 予測困難な時代において生涯学び続け 主体的に考える力を育成する大学へ メッセージ 学士課程教育の質的転換 キーワードの一つが 学修時間の増加 4

2008 年答申から 2012 年までの 大学環境の変化 多くの教員が研究至上から教育志向へ 95% の大学がシラバス作成 ほとんどの大学が初年次教育を導入 多くの大学がアクティブ ラーニング手法とプログラムを導入 しかし 5

日本の高等教育への批判 産業界や社会からの大学教育の質や大学生への強い批判が存在 メディアによる調査への回答者の 60% が日本の大学はグローバル化社会に対応した知識やスキルを身につけさせる教育を提供していないと批判 6

日本の高等教育の質的転換の 必要性の背景は? 授業や授業外での一日の学修時間は 8 時間 しかし 日本の学生の一日あたり平均学修時間は 4.6 時間 アメリカの大学生と比較すると低い 特に 理学 保健 芸術分野と比較した場合 社会科学分野等の学生の平均学修時間が低い 7

学生の主体的な学びの確立 - その始点としての学修時間 - (1) 大学における学修時間は学修の量と質が前提各大学の学士課程教育の基本的な目標の達成状況は 学修時間から判断可能 1 学士課程教育に求められる学修の質が伴っている 2 大学の重視する教育に関する機能に照らして適切に設定 3 大学や教員の組織的な責任体制がその確保に対応 (2) 学修時間は 様々な学士課程教育の改善の手法の中でも 大学ごとの学士課程教育の内容 方法の自律性や多様性の確保を妨げることなく 大学間の制度的な共通性を前提にした学士課程教育の質的転換の始点として活用 (3) 世界的にも学士課程教育の質の保証が課題になっている中で 我が国の学士課程教育における基本的な学修時間の確保は 国際的な信頼の源泉として不可欠 8

深い学びを支えるための学習と学習環境の整備 深い学びを支えるための学習方法とは? 座学 アクティブ ラーニングの組み合わせ 深い学びを支えるための学習環境とは? ラーニング コモンズという環境の整備 9

JCIRP 継続データから見る学修状況

JCSS 参加大学 学部数 JCIRP データの説明 JCSS 参加者数 JFS 参加大学 学部数 JFS 参加者数 JJCSS 参加大学 学部数 JJCSS 参加者数 2004 14 1491 2005 8 3961 2007 16 6512 2008 N/A N/A 163 19661 9 1966 2009 24 4183 69 8534 30 7244 2010 81 8300 N/A N/A 23 7369 2011 N/A N/A 119 10913 34 12151 Total 143 24447 351 39108 96 28730 参加大学 学部 短期大学数 590 参加者数 92285 人 11

1 週間の授業時間以外での学習時間 情報系 5.30% 15.20% 21.70% 24.50% 18.00% 8.40% 0.60% 6.20% 2.00% 芸術系 15.80% 32.20% 22.80% 13.90% 7.90% 3.50% 2.00% 家政系 2.30% 9.30% 23.30% 30.20% 20.90% 7.00% 2.30% 4.70% 教育系 5.40% 17.90% 22.40% 22.70% 16.80% 2.40% 6.60% 5.90% 医療系 5.10% 16.40% 22.40% 23.30% 15.50% 4.10% 6.90% 6.20% 理工農生物系 5.40% 17.30% 21.40% 24.70% 14.50% 6.20% 3.10% 7.40% 社会科学系 人文系 3.20% 2.60% 10.80% 25.60% 27.60% 19.30% 9.20% 1.70% 1.60% 5.50% 24.40% 27.50% 24.70% 10.00% 3.90% 2.20% 0 時間 1 時間未満 1-2 時間 3-5 時間 6-10 時間 11-15 時間 16-20 時間 20 時間以上 12

1 週間の授業や実験への出席時間 0 時間 1 時間未満 1-2 時間 3-5 時間 6-10 時間 11-15 時間 16-20 時間 20 時間以上 1.60% 情報系 2.80% 13.10% 14.70% 13.10% 14.40% 17.20% 23.10% 芸術系 5.60% 4.50% 9.60% 6.10% 10.60% 11.60% 19.20% 32.80% 家政系 2.40% 4.80% 2.40% 7.10% 83.30% 教育系 2.60% 3.00% 5.10% 10.50% 14.30% 19.20% 15.30% 30.10% 医療系 3.80% 2.80% 5.90% 10.10% 12.60% 7.90% 12.00% 44.90% 理工農生物系 2.30% 4.30% 7.80% 12.80% 12.90% 10.70% 11.10% 38.10% 社会科学系 5.50% 4.70% 9.30% 13.20% 15.40% 17.90% 13.10% 20.90% 人文系 2.00% 3.60% 5.40% 14.00% 15.60% 22.80% 17.30% 19.30% 13

学修時間と授業への出席時間 全体的尐ない学修時間 授業以外での学修時間が 0 時間である学生がいずれの分野にも一定の割合で存在 社会科学系の学生の学修時間が相対的に低く 人文系の学生の学修時間も同様に低い 1 学期に履修する授業数が多い 主体的な学修時間の確保はなされていない 14

70 60 50 ラーニングアウトカムの自己評価 大きく増えたの比率 大学教育の効果は? 40 30 20 10 0 一般的な教養 分析や問題解決能力 専門分野や学科の知識 批判的に考える能力 異文化の人々に関する知識 リーダーシップの能力 人間関係を構築する能力 異文化の人々と協力する能力 地域社会が直面する問題の理解 国民が直面する問題の理解 文章表現の能力 プレゼンテーションの能力 数理的な能力 コンピュータの操作能力 グローバルな問題の理解 アメリカ 2005 46.1 35.1 59.5 38.7 21 27.5 32.4 20.7 19.5 25.9 30.2 28.1 14.1 27 26.1 13 日本 2005 9.5 7.3 23.6 10 6.2 4.7 11.8 3.1 3.6 5.4 6 7 3.3 19.5 5.9 4.8 日本 2007 7.8 8.1 24.1 9.8 7.5 6.2 11.7 3.8 3.7 4.8 6.8 8.7 4.2 16.1 4.7 4.7 日本 2010 7.3 8.2 24.4 8.9 7.8 6.1 12.8 4.6 5.2 5.4 5.8 7.9 3.4 12.9 4.9 4.6 外国語の能力 継続的データでそれほど変化のない日本の学生のラーニング アウトカムの自己評価サンプル大学は異なるけれども一般化できるデータとしての意味? 自己評価の低い傾向のある日本の学生, 高い傾向のあるアメリカの学生どれくらいが適正水準か? 15

100 90 大きく増えたと増えたの合計比率 80 70 60 50 40 30 20 10 大学教育の効果は? 着実に増加している学士力関連 0 一般的な教養 分析や問題解決能力 専門分野や学科の知識 批判的に考える能力 異文化の人々に関する知識 リーダーシップの能力 人間関係を構築する能力 異文化の人々と協力する能力 地域社会が直面する問題の理解 国民が直面する問題の理解 文章表現の能力 プレゼンテーションの能力 数理的な能力 コンピュータの操作能力 グローバルな問題の理解 日本 2005 75.9 60.7 87.1 56.8 47.5 26.3 55.1 22.2 30.4 49.3 46.3 44.3 21.4 76.5 49 32.9 日本 2007 71.2 62.7 84 53.3 44.4 31.3 57.9 22.6 32.6 39.8 47.7 52.4 26.9 70.4 30.7 27.9 日本 2010 71.7 68.4 83 55.8 48.9 38.2 64.3 29.9 41.1 45.4 49.8 55.8 28.9 67 36 30 外国語の能力 16

継続データからの示唆 1 ゆっくりだが着実に学習成果は上がっている 国際比較は単純ではない 自己評価には国民性 文化性が反映 何が上昇させている要因なのか? 教育方法 : アクティブ ラーニングの効果は? 中教審答申案においても アクティブ ラーニング の導入の進捗が提示筆者も多くの大学が今後 アクティブ ラーニング を導入すると期待 17

継続データからの示唆 2 アメリカの学生の方が学修時間はかなり長い しかし 学修時間の確保については アメリカの大学においても学修時間の減尐が指摘 アメリカでもいかに学生が主体的な学びを確保できるかということが最近の 10 年間の重要なテーマ 具体的には 学生の Engagement を増加させるための方策についての研究や提案 その一つが 学生を主体的に関わらせる授業方法や授業内容 : アクティブ ラーニングの研究や実践 それを支える環境の研究が蓄積 18

アクティブ ラーニングとは? 実社会で直面する複雑 多様な正解が一つではない課題に適切に対応できる思考力 創造力および課題探求能力を育成するために効果的な手法であり 体験学習 ディスカッション 学生のプレゼンテーションによる双方向対話型の授業あるいは学生が自ら資料や文献を探し 授業の事前 事後の学習に関わる等も含まれる 19

学修成果とアクティブ ラーニングとの関係は? 授業における学習経験 : 学生が自分の考えや研究を発表するあり授業における学習経験 : 学生が自分の考えや研究を発表するなし 49.6% 70.1% 55.1% 74.7% 50.4% 29.9% 44.9% 25.3% 減増減増 一般教養 国公立 一般教養 私立 20

授業における学習経験 : 学生が自分の考えや研究を発表するあり 授業における学習経験 : 学生が自分の考えや研究を発表するなし 29.5% 68.2% 51.1% 74.0% 70.5% 31.8% 48.9% 26.0% 減増減増 専門分野や学科の知識 国公立 専門分野や学科の知識 私立 21

授業における学習経験 : 学生が自分の考えや研究を発表するあり 授業における学習経験 : 学生が自分の考えや研究を発表するなし 48.6% 70.5% 51.2% 75.8% 51.4% 29.5% 48.8% 24.2% 減増減増 分析や問題解決 国公立 分析や問題解決 私立 22

授業における学習経験 : 学生自身が文献や資料を調べるあり 授業における学習経験 : 学生自身が文献や資料を調べるなし 70.5% 84.4% 69.0% 78.9% 29.5% 15.6% 31.0% 21.1% 減増減増 批判的思考力 国公立 批判的思考力 私立 23

授業における学習経験 : 授業中に学生同士が議論をするあり 授業における学習経験 : 授業中に学生同士が議論をするなし 46.1% 60.5% 55.7% 64.9% 53.9% 39.5% 44.3% 35.1% 減増減増 批判的思考力 国公立 批判的思考力 私立 24

分野別にみる授業での学習経験 授業における学習経験 全体 人文系 社会科理工農学系生系 医療系 平均 SD 平均 SD 平均 SD 平均 SD 平均 SD 学生自身が文献や資料を調べる 2.98 0.82 3.14 0.77 2.9 0.81 2.99 0.78 3.04 0.84 学生が自分の考えや研究を発表する 2.78 0.78 3.04 0.7 2.79 0.76 2.6 0.77 2.76 0.79 実験 実習などを実施し 学生が体験的に学ぶ 2.67 0.97 2.32 0.95 2.51 0.93 2.92 0.92 3 0.95 学生が仕事に役立つ知識やスキルを学ぶ 2.65 0.89 2.32 0.82 2.63 0.84 2.33 0.78 3.09 0.88 学生同士が授業中に議論をする 2.6 0.82 2.69 0.82 2.65 0.79 2.33 0.78 2.73 0.84 学生にコメント付でレポートが返却される 2.51 0.82 2.5 0.8 2.41 0.83 2.63 0.77 2.57 0.82 学生の意見が授業に取り入れられる 2.44 0.79 2.51 0.78 2.49 0.79 2.28 0.76 2.43 0.8 TAが授業を補助する 2.3 0.95 1.91 0.9 2.25 0.9 2.89 0.84 2.25 0.95 Maxium score of each item is 5 仕事に役立つ内容の授業との関連性の高い医療系 プレゼンテーションの経験が多い人文系 TA の活用度が高い理工農生系 25

アクティブ ラーニングを支える環境の形成

ラーニング コモンズという概念 授業外の学習支援を提供する施設 米国の多くの大学 学習支援のためのスペースが図書館に設置 ラーニング コモンズ トータルな学びの支援を提供する場所として定着スタッフ支援 アサインメントに関する工夫 レポート作成支援 プレゼンテーション準備 27

日本の大学における ラーニング コモンズの実態 加藤信哉 小山憲司編訳 ラーニング コモンズ 大学図書館の新しいかたち (2012 年 ) で公表された国内実態調査によると ラーニング コモンズを設置する大学 15.5% 学習支援サービスデスクを持つ大学 31% IT 担当職員の支援デスクを持つ大学 19% ライティング支援を実践する大学 9% 28

日本におけるラーニング コモンズの実情と課題 空間としては存在 しかし 効果的 機能的に教育改革 大学教育の改善のために運営されているかは疑問 学習支援機能としての環境としての定着あるいは充実はこれからの重要事項 いかに正課外の学習空間として学生の間に定着させるか ピア ラーニングとしての場としての活用と仕掛け チュータリング機能の開発と充実 ユニバーサルデザインとしての建築 備品 29

同志社大学のラーニング コモンズ 新棟 良心館 2 階 3 階 2550 平米 2 階 クリエィティブコモンズ ミニレクチャーやセミナー イベント 学生同士の国際化の進展の場 留学生とのコミュニケーション スペース 3 階 リサーチ コモンズ 自習エリアやグループ学習エリア可動式の椅子 机 ボード スクリーン等 情報支援エリア ICT 支援エリア ライティング センター プリント ステーション コモンズ専属の専任教職員の配置 30

ラーニング コモンズを定着させ 機能させるための分野間連携モデル 学習成果目標の共有 分野間を越えての教学マネジメント : チーム ティーチング 図書館 情報学研究者 図書館スタッフ 図書館機能 情報検索機能 アカデミック インテグリティ等 教育学 心理学研究者 学習支援スタッフ 国際交流スタッフ アクティブ ラーニング方法 レポート ライティング 初年次教育研究 ピア ラーニング 協同学習等 31

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