平成 27 年度長崎県雇用管理改善促進事業 介護事業所のキャリアパス制度導入ガイド 働きがいのある職場づくりを目指して 介護のプロを目指して 頑張るぞ! 5 等級 4 等級 3 等級 2 等級 1 等級 長崎県福祉保健部長寿社会課 公益財団法人介護労働安定センター長崎支部
目 次 Ⅰ キャリアパスの必要性 1 1. キャリアパスとは 2. キャリアパスの必要性 Ⅱ キャリアパス導入にあたっての手順 2 1. 組織体制を検証する 2. キャリアの職位の階層を設定する 3. 役割 職務内容を設定する 4. 能力 研修 資格などを設定する 5. 賃金テーブルを設定する 6. キャリアパスの例 Ⅲ キャリアパス導入の事例 3 1. 事例 1: 小規模事業所 A 法人のキャリアパス導入の事例 2. 事例 2: キャリアパスを導入し処遇改善加算 Ⅰ を算定した B 法人の事例 Ⅳ 各種支援制度 6
Ⅰ キャリアパスの必要性 1. キャリアパスとは キャリアパスとは 一般的に企業や事業所等において職員が ある職位や役職に就くまでに辿ることとなる経歴 ( キャリア ) や道筋 ( パス ) のことです 職員の視点からは 将来自分が目指す職位や役職を目指して どのような資格を取得していくか どのような形で経歴を積んでいくかという道標となります また 事業所から見たキャリアパスは 中長期的な事業計画の上で 職員はどのような経験を積みどのような能力を身に着ける必要があるかなどを明確にするものとなります このようなキャリアパスを示すことで 職員は自己の目指すべき道というものを描くことができ モチベーションを高めることが期待できます また 事業所にとっては 職員の確保 定着 サービスの質の向上につながることになります 2. キャリアパスの必要性 将来的にも介護人材の不足が予想されているなか 介護人材の確保 定着の推進を図るためには 介護職員が将来展望を持って介護の職場で生き生きと働き続けることができるよう 能力 資格 経験等に応じた給与面や労働環境面からの適正な処遇がなされることが重要であり こうしたキャリアパスに関する仕組みを 介護の職場に導入 普及していく必要があります キャリアパスは 全ての介護事業所に共通するものではなく 各事業所の規模や形態 目指す 方向性 求める人材像等に応じた 各事業所独自のものを作成することとなります キャリアパス導入による期待効果 < 事業所 > 指揮命令系統の明確化責任の所在の明確化職員に求める能力の明確化職員の確保 定着サービスの質の向上 < 職員 > 目標の明確化スキルアップ昇給 昇格仕事の達成感モチベーションアップ 1
Ⅱ キャリアパス導入にあたっての手順 1. 組織体制を確立する組織体制をしっかりと構築していないと 指揮命令がはっきりしない 責任の所在が曖昧 情報共有が不十分となってしまいます まずは 現在の組織体制を検証し 自法人 事業所の組織図を作成するなど 目指すべき組織体制を確立する必要があります 2. キャリアの職位の階層を設定する 1. で作成した組織図に基づき 一般職 主任 管理職などの職位の階層を設定します その際 人数が一番多いと思われる 一般職 については 初級 中級 上級などに細分化することをお奨めします 3. 役割 職務内容を設定する 1 階層ごとに 求められる役割を設定します 2 階層ごとに 職務内容を設定します 4. 能力 研修 資格などを設定する 1 階層ごとに 求められる能力を設定します 2 階層ごとに 業務上必要と思われる研修を設定します 3 階層ごとに 業務上必要と思われる資格を設定します 5. 賃金テーブルを設定する人事評価制度と組み合わせて キャリアと能力に応じた各階層の賃金テーブルを設定します 人事評価制度を導入していないところは 賃金とのリンクが難しいようであれば 当面はキャリアパスの運用をしっかりと定着させてください 6. キャリアパスの例 階層役割従事期間能力 研修 資格等賃金テーブル 経営幹部 経営理念に沿って 経営目標を設定し 組織全体を統括する 8 年以上経営管理能力 管理職 ( 施設長等 ) 主任 ユニットリーダー 一般 ( 上級 ) 一般 ( 中級 ) 一般 ( 初級 ) 経営理念に向かって 自部門の中 長期目標の遂行を図るとともに自部門を統括する業務に関する専門知識 技能を有し グループの短期目標の遂行を図るとともに 部下の指導育成を行う業務に関する必要な知識 技能を有し業務の仕組みや流れの抜本的な改善を行うとともに 下位等級者の指導助言を行う業務に関する一般的な知識 技能を有し 上位者の一般的な指示のもと 課題や問題点の解決を行う業務に関する基礎的な知識技能を有し 上位者の詳細な指示のもと 定型的な業務を正確に行う 57 年 34 年 12 年 介護支援専門員社会福祉士 介護福祉士認知症リーダー研修 介護福祉士認知症実践者研修 初任者研修認知症実践者研修 一般常識 接遇 マナー基本的な介護技術 知識コミュニケーション能力 ポイント キャリアパス導入後は 絵に描いた餅 として終わらせるのではなく その適正な運用が重要となります 各職員の育成計画の策定やフォローに当たっては 目標面接の場をとおして事業所が求める人材像と 職員が自ら将来像を描けるよう 管理者と職員がお互いに納得した上で 振り返りと 短期 ( 半年 1 年 ) 中長期の目標設定を定期的に確認することをお奨めいたします 2
Ⅲ キャリアパス導入の事例 事例 1: 小規模事業所 A 法人のキャリアパス導入の事例 サービス形態 : 小規模デイサービス 訪問介護 居宅支援を併設 法人形態 : 株式会社 人員体制 : 代表が居宅のケアマネを兼務 パート事務員 1 人 小規模デイに管理者兼相談員 1 人 介護正職員 1 人 パート7 人 訪問介護はサービス提供責任者 1 人 登録ヘルパー 7 人 現状の課題 (1) 隅々に目の届く丁寧な介護 を目指し とても熱心で 一生懸命な事業所ですが 労務や人事制度に 対する知識 雇用管理改善に対する意識が薄く 指揮命令が曖昧でした (2) 管理者やサービス提供責任者の監督職も 現任職員も日々の業務に追われ また 職員の入れ替わ りもあり サービス内容のチェックや業務内容の確認も十分にできていませんでした (3) 全員が中途採用で 給与は前職の支給額を代表が聞き取り 金額を決定し その後の昇給のルールも ありません 不公平感を感じている職員も見られました キャリアパス導入の成果 (1) キャリアパスに設定する各等級の職位 職責 職務内容に応じた任用の要件は 職員が有する技能や スキル 知識の難易度ごとに等級分けをし 指揮命令系統を明確にすることができました (2) 職務要件の設定により 日常業務のなかで各職員が 何ができていて 何ができていないのかを客観 的に判断できる指標になりました (3) 任用要件や職務要件は 法人が各等級で求める人材要件とも重なっています 資格や知識要件なども キャリアパスに明記し共有することで 法人と職員が共に目指すべき方向性 ( ベクトル ) を一致させることができました また 各等級における賃金を決定することで 前職の水準に頼らず 自社の基準に照らした賃金を決めることができ 公平さ 公正さを保つことができました 3
A 法人のキャリアパス 等級 1 等級 2 等級 3 等級 4 等級 5 等級 任用要件 指導を受けながら日常的な業務ができる 自立して日常業務ができる 介護技術に優れチーム介護ができる リーダーシップを発揮し 部門管理ができる 会社全体のマネジメントと部門の統括ができる 職位 職責初任レベル一般職 ( 初級 ) 一般職 ( 上級 ) 主任サービス提供責任者レベル 部門長管理者レベル 職務要件 きちんとした返事ができる ルール約束を守ることができる 会社の理念を知っている 仕事の内容を理解している 先輩の指導なしにほとんどの業務ができる 報告連絡相談ができる 個人情報の管理ができる 業務記録が書ける 業務はすべて一人ででき チーム介護もスムーズにできる 優れた工夫や考えを持ちながら介護ができる 新人教育ができる 担当業務において部下の指導ができる 多職種との連携ができる リスクや事故等まで考え行動でき 利益についても理解している 会社全体のことを考え 全職員の指導教育ができる 会議等を主宰できる 代表を補佐しすべての業務を統括できる 勝手な遅刻や早退をしない 賃金 事例 1 のような小規模の事業所で 人事制度そのものがないという事業所向けのキャリアパスづくり として参考にしてください 4
事例 2: キャリアパスを構築し処遇改善加算 Ⅰ を算定した B 法人の事例 サービス形態 : 訪問介護と訪問看護を併設 法人 形 態 : NPO 法人 人員 体 制 : 訪問介護事業所は代表者と 法人唯一の正職員であるサービス提供責任者が1 人 フルタイムの契約職員が6 人 現状の課題 (1) 代表は これからは定年退職後も元気なベテランや子育てがひと段落した女性をもっと活用し 地域に貢献したい と強い思いを持っていましたが 職員のモチベーションを保つキャリアパスや賃金体系がありませんでした 新しい戦力の確保も大切ですが 現在のスタッフのスキルアップや能力アップを図り 今よりも質の高いサービスを提供することが課題となっていました (2) 採用で競合する社会福祉法人との賃金格差も大きく 人材の確保や定着が難しい状況でした キャリアパス導入の成果 (1) 事業所の目指すべきものを明確にし 職員の意識と行動の変化を促すため 経営理念や地域での役割 法人内での昇進 昇格に必要な仕事の経験や技術 知識などが見て分かるキャリアパスを6 等級でつくり 職員の意識改善や技能レベルなどの資質も向上しました (2) キャリアパス導入をきっかけに介護職員処遇改善加算 Ⅰ を新規で算定し 昇給原資を確保することになり 給与の改善につながりました (3) 代表が日ごろから職員に対し伝えていることをキャリアパスに明文化し 各等級で求められる技術 知識な どの職務要件も設定すると同時に 等級が上がるたびに基本給も上がる賃金体系にすることができました 介護職員処遇改善加算の算定手続き処遇改善加算を算定するために必要な手続きは 下記の長崎県のホームページに掲載されています https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/hukushi-hoken/koreisha/shinsei-henkou/syogukaizen-shinsei-henkou/ キャリアパス要件 1 導入するキャリアパスに等級ごとの任用要件を定める要件 Ⅰ 21のキャリアパスに等級ごとの賃金体系を定める 3 任用要件と賃金体系を事業所の就業規則か賃金規程に記載し 職員に周知する 4 職員の資質向上に向け目標を設定する要件 Ⅱ 54の目標を達成するために研修計画を立て計画に沿って研修を実施し 職員の能力評価に取り組むか 資格取得のための支援をする 5
Ⅳ 各種支援制度 介護職員の確保 定着やキャリアアップのための各種支援制度 ( 助成金 ) を紹介します ( 平成 28 年 3 月末現在 ) 1 職場定着支援助成金 雇用管理制度 ( 評価 処遇制度 研修制度 健康づくり制度 メンター制度 ) の導入等による雇用管理改善を行い人材の定着 確保を図る場合に助成するものです このうち介護関連事業主の場合は 介護福祉機器の導入等も助成対象となります < 例 > 雇用管理責任者を選定し 雇用管理改善につながる制度等を導入した場合 制度導入助成 評価 処遇制度の導入 10 万円 研修体系制度の導入 10 万円 健康づくり制度の導入 10 万円 メンター制度の導入 10 万円 平成 28 年 4 月以降 介護事業主が 賃金制度整備計画 を提出し 賃金制度を整備した場合に助成する介護労働者雇用 管理制度助成が創設される予定です < 例 > 賃金制度整備計画 の提出 認定 賃金制度の整備 ( 賃金制度整備計画期間 ) (1 年経過後 ) 介護労働者介護労働雇用管理制度助成者雇用管理制度助成制度整備助成目標達成助成 ( 第 1 回 ) 50 万円 60 万円 (3 年経過後 ) 介護労働者雇用管理制度助成目標達成助成 ( 第 2 回 ) 90 万円 2 キャリアアップ助成金 有期契約労働者 短時間労働者 派遣労働者といった いわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップなどを促進するため 正規雇用への転換 人材育成 処遇改善などの取組を実施した事業主に対して助成する制度です < 例 > 非正規雇用の従業員に対して指定された講座を受講させた場合 企業規模訓練経費助成 (1 人あたり ) 賃金助成 ( 年間 1200 時間まで ) 中小企業 大企業 訓練時間数が 100 時間未満の場合 100 時間以上 200 時間未満の場合 200 時間以上の場合 訓練時間数が 100 時間未満の場合 100 時間以上 200 時間未満の場合 200 時間以上の場合 上限額 15 万円 30 万円 50 万円 上限額 10 万円 20 万円 30 万円 1 人 1 時間当たり 800 円 500 円 労働者のキャリア形成を効果的に促進するため 雇用する労働者に対して職業訓練などを計画に沿って実施した場合に 訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です < 例 > 従業員に対して指定された講座を受講させた場合 企業規模訓練経費助成 (1 人あたり ) 賃金助成 (1 コース 1600 時間まで ) 3 キャリア形成促進助成金 中小企業 1/2( 上限 50 万円まで ) 1 人 1 時間当たり 800 円 大企業 1/3( 上限 30 万円まで ) 400 円 従業員に対して1コース20 時間以上のoff-JTを受講させた場合 企業規模 訓練経費助成 (1 人あたり ) 賃金助成 (1コース1200 時間まで ) 助 訓練時間数が 上限額 中小企業 成 100 時間未満の場合 15 万円率 100 時間以上 200 時間未満の場合 30 万円 1 人 1 時間当たり 800 円 1/2 200 時間以上の場合 50 万円 助 訓練時間数が 上限額 大企業 成 100 時間未満の場合 10 万円率 100 時間以上 200 時間未満の場合 20 万円 400 円 1/3 200 時間以上の場合 30 万円 各種助成金につきましては 平成 28 年 4 月以降変更及び追加される場合がありますので 詳しくは下記までお問い合わせください お問い合わせ先 長崎労働局職業安定部職業対策課 ( :095-801-0042) 6