1 章 血管炎ってどんな病気 血管炎を疑い 診断するにはどうするか 分類から診断 主に本書では原発性血管炎について述べる 血管炎の兆候に関しては BVAS の項 1 章 Q04 で詳細に述べる 3 原発性全身性血管炎のそれぞれの血管炎の診断はどうしてするの 図1に示した流れで診断していく 以下に図に

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IgG4 関連疾患 IgG4 関連疾患診断基準 IgG4 関連疾患 厚生労働省 IgG4 関連疾患に関する調査研究 班 ポケットブック版にてご覧いただけます. お問い合わせフォーム IgG4 関連疾患の診断は基本的には,

2 章 +αの 情 報 に 着 目 する! 1 血 球 算 定 検 査 結 果 2 生 化 学 検 査 結 果 手 がかりに 乏 しいのも+α 1 症 例 をみてみよう! 1 60 吉 見 祐 輔 percutaneous coronary intervention PCI

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164 章血管炎 紫斑 その他の脈管疾患 表皮 A-2 B-3 真皮 A-1 B-2 A-1: 皮膚白血球破砕性血管炎 A-2:IgA 血管炎 B-1: 結節性多発動脈炎 B-2: 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 B-3: 多発血管炎性肉芽腫症 皮下組織 B-1 図.2 炎症の主座となる血管の深さと血

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ROCKY NOTE 結節性多発動脈炎 Polyarteritis nodosa : PAN(131219) 学生時代には苦手な分野だったが 今では自然と得意分野になっている なんてことはほとんどなかった気がす

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

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日本内科学会雑誌第104巻第10号

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

5. 予後我が国のコホート研究に登録された新規患者 33 名の6か月後の寛解導入率は 97% であった 一般に 副腎皮質ステロイドの副作用軽減のためには速やかな減量が必要である一方 減量速度が速すぎると再燃の頻度が高くなる 疾患活動性の指標として臨床症状 尿所見 PR3-ANCA 及び CRP など

知っておきたい関節リウマチの検査 : 中央検査部医師松村洋子 そもそも 膠原病って何? 本来であれば自分を守ってくれるはずの免疫が 自分自身を攻撃するようになり 体のあちこちに炎 症を引き起こす病気の総称です 全身のあらゆる臓器に存在する血管や結合組織 ( 結合組織 : 体内の組織と組織 器官と器官

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呈することです 侵さない臓器は無いと言ってもいいくらいに現在までに多くの臓器病変が記載されています ( 表 2) ただし 悪性腫瘍( 癌 悪性リンパ腫など ) や類似疾患 (Sjögren 症候群 原発性硬化性胆管炎 Castleman 氏病 二次性後腹膜線維症 肉芽腫性多発血管炎 サルコイドーシス

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異常に起因する紫斑病 2) 小児に多く成人には比較的まれ 1) 本症の紫斑の特徴は手に触れる紫斑 palpable purpura で発熱 関節痛を伴いながら 主として四肢 顔面 躯幹に現れ 特に四肢では関節部に多く 丘疹状紅斑でその中心部から出血がみられることである 1) 本症に特徴的な紫斑は 1

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2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります


血管炎

要件の判定に必要な事項 1. 患者数 ( 平成 24 年度医療受給者証保持者数 ) 6255 人 2. 発病の機構不明 3. 効果的な治療方法未確立 ( 根治療法なし ) 4. 長期の療養必要 ( 身体機能低下の進行抑制を目標に治療が必要である ) 5. 診断基準あり 6. 重症度分類悪性関節リウマ

2009年8月17日

臨床調査個人票 新規 更新 IgG4 関連疾患 (IgG4 関連疾患包括 ) 行政記載欄 受給者番号判定結果 認定 不認定 基本情報 姓 ( かな ) 名 ( かな ) 姓 ( 漢字 ) 名 ( 漢字 ) 郵便番号 住所 生年月日西暦年月日 * 以降 数字は右詰めで 記入 性別 1. 男

社会保障 介護認定 1. 要介護 2. 要支援 3. なし要介護度 生活状況 移動の程度 身の回りの管理 ふだんの活動 1. 歩き回るのに問題はない 3. 寝たきりである 1. 洗面や着替えに問題はない 3. 自分でできない 1. 問題はない 3. 行うことができない 2. いく

類膠原病および12) サルコイドーシス A C 410 縁疾患膠原病および類縁疾患 知識 技術 技能 症例 頁 9) その他の治療薬 ( 乾燥性角結膜炎治療薬, 唾液分泌促進薬, プロスタグランジン製剤など ) A B 血液浄化療法 ( 血漿交換療法, 免疫吸着療法, 白血球除去療法

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蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

300 IgG4関連疾患

ある ARS は アミノ酸を trna の 3 末端に結合させる酵素で 20 種類すべてのアミノ酸に対応する ARS が細胞質内に存在しています 抗 Jo-1 抗体は ARS に対する自己抗体の中で最初に発見された抗体で ヒスチジル trna 合成酵素が対応抗原です その後 抗スレオニル trna

14栄養・食事アセスメント(2)

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ヒト慢性根尖性歯周炎のbasic fibroblast growth factor とそのreceptor

臨床調査個人票 新規 更新 044 多発血管炎性肉芽腫症 行政記載欄 受給者番号判定結果 認定 不認定 基本情報 姓 ( かな ) 名 ( かな ) 姓 ( 漢字 ) 名 ( 漢字 ) 郵便番号 住所 生年月日西暦年月日 * 以降 数字は右詰めで記入 性別 1. 男 2. 女 出生市区町村 出生時氏

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検査項目情報 P-ANCA Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital 一次サンプル採取マニュアル 免疫学的検査 >> 5G. 自己免疫関連検査 >> 5G552.P-ANCA Ver.7 perinucl

検査項目情報 クリオグロブリン Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital 一次サンプル採取マニュアル 免疫学的検査 >> 5A. 免疫グロブリン >> 5A160. クリオグロブリン Ver.4 cryo


情報提供の例


要件の判定に必要な事項 1. 患者数約 8,000 人 2. 発病の機構不明 ( 自己免疫機序が考えられている ) 3. 効果的な治療方法未確立 ( ステロイドが第一選択薬 中止についての統一見解は得られていない 再発時の治療は未確立 ) 4. 長期の療養必要 ( 中止によって多くは再発する ) 5

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背部痛などがあげられる 詳細な問診が大切で 臨床症状を確認し 高い確率で病気を診断できる 一方 全く症状を伴わない無症候性血尿では 無症候性顕微鏡的血尿は 放置しても問題のないことが多いが 無症候性肉眼的血尿では 重大な病気である可能性がある 特に 50 歳以上の方の場合は 膀胱がんの可能性があり

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

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59 20 : 50 : : : : : 2 / :20 / 25 GTP /28 5/3 5/4 5/8 6/1 1 7kg 6/9 :178.7cm :68.55kg BMI:21.47 :37.3 :78 / :156/78mmHg 1

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

研究協力施設における検討例 病理解剖症例 80 代男性 東京逓信病院症例 1 検討の概要ルギローシスとして矛盾しない ( 図 1) 臨床診断 慢性壊死性肺アスペルギルス症 臨床経過概要 30 年前より糖尿病で当院通院 12 年前に狭心症で CABG 施行 2 年前にも肺炎で入院したが 1 年前に慢性


頻度の高い症状は 発熱 (53%) 易疲労感 (39%) 脈が触れない (38%) 血圧の左右差 (37%) 頸部痛 (24%) ふらつき めまい (23%) 高血圧 (18%) 胸痛 (13%) 息切れ (11%) 上肢痛 (10%) 頭痛 (10%) 視力障害 (8%) などです 5. 合併症罹

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを


イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

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301128_課_薬生薬審発1128第1号_ニボルマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドラインの一部改正について

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編集協力 : 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターリウマチ性疾患薬剤疫学研究部門 特任教授針谷正祥先生

5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

1治療 かっていたか, 予想される基礎値よりも 1.5 倍以上の増加があった場合,3 尿量が 6 時間にわたって 0.5 ml/kg 体重 / 時未満に減少した場合のいずれかを満たすと,AKI と診断される. KDIGO 分類の重症度分類は,と類似し 3 ステージに分けられている ( 1). ステー

使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

臨床検査の保険適用について ( 平成 23 年 10 月収載予定 ) 測定項目 参考点数 1 E2 ( 新方法 ) 抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体 (MPO-ANCA) D 抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体 (MPO-ANCA) 290 点 2 E2 ( 新方法 ) 結

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

くは不育症プラス特異的自己抗体をもって APS と定義するシンプルな構造になっているこ と 続発性または二次性という用語は使用せず それぞれに合併した APS と表現すること を推奨している点です APS の症状 APS の頻度の高い症状として 脳 心臓 肺などの動静脈血栓症 習慣流産 血小板減少

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

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220 モダンメディア 64 巻 6 号 2018[ 臨床検査アップデート ] 臨床検査アップデート 19 Up date 血管炎について Vasculitis Causes, Symptoms, and Treatments さ佐 とうこう藤晃 Koichi SATO いちふる一 1) : 古 い

1 8 ぜ 表2 入院時検査成績 2 諺齢 APTT ALP 1471U I Fib 274 LDH 2971U 1 AT3 FDP alb 4 2 BUN 16 Cr K4 O Cl g dl O DLST 許 皇磯 二 図1 入院時胸骨骨髄像 低形成で 異常細胞は認め

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というもので これまで十数年にわたって使用されてきたものになります さらに 敗血症 sepsis に中でも臓器障害を伴うものを重症敗血症 severe sepsis 適切な輸液を行っても血圧低下が持続する重症敗血症 severe sepsis を敗血症性ショック septic shock と定義して

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 5. 免疫学的検査 >> 5G. 自己免疫関連検査 >> 5G010. 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク

スライド 1

はじめに 全身性エリテマトーデス (SLE) は患者数が少なく 治療法の確立が難しいことから 難病 に指定されています かつては命にかかわることも少なくない病気でしたが 現在では治療法が進歩して 長く付き合うことになる病気に変わってきています この冊子では SLE の病態とその治療法をまとめました

改訂後改訂前 << 効能 効果に関連する使用上の注意 >> 関節リウマチ 1. 過去の治療において 少なくとも1 剤の抗リウマチ薬 ( 生物製剤を除く ) 等による適切な治療を行っても 疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること 2. 本剤とアバタセプト ( 遺伝子組換え ) の併用は行わな

ROCKY NOTE 血球貪食症候群 (130221) 完全に知識から抜けているので基本的なところを勉強しておく HPS(hemophagocytic syndrome) はリンパ球とマクロファージの過剰な活性

で広く処方される抗菌薬 例えば βラクタムやキノロン系薬で治療することが可能ですが 標的療として長期間の治療を要するものが多いため きっちりと確定診断をつけることが必要です 腫瘍性疾患も不明熱の原因として重要悪性リンパ腫 原発性肝癌 転移性肝がん 腎細胞癌 転移性脳腫瘍 白血病などです 骨髄増殖性疾

1981 年 男 全部位 C00-C , , , , ,086.5 口腔 咽頭 C00-C

診療のガイドライン産科編2014(A4)/fujgs2014‐114(大扉)

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検査項目情報 抗 SS-A 抗体 [CLEIA] anti Sjogren syndrome-a antibody 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 5G076 分析物 抗 SS-A 抗体 Departme

063 特発性血小板減少性紫斑病

脈が触れない など多様な症状が出現します また一部の患者さんでは心臓の大動脈弁付近に傷害を生じて弁膜症を発症してしまい 程度によってはその後心臓の働きに問題が生じることがあります また 腎臓の血管が傷害されて 腎臓の働きが低下することもあります さらに 下肢を栄養する血管が傷害を受けて歩行が困難にな

①改正臨床調査個人票記入にあたっての留意事項_

4氏 すずき 名鈴木理恵 り 学位の種類博士 ( 医学 ) 学位授与年月日平成 24 年 3 月 27 日学位授与の条件学位規則第 4 条第 1 項研究科専攻東北大学大学院医学系研究科 ( 博士課程 ) 医科学専攻 学位論文題目 esterase 染色および myxovirus A 免疫組織化学染色

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

自己免疫疾患の治療ハンドブック 他の医療機関を受診される場合は本剤を服用中である旨を必ず医師にお伝えください 主治医または薬剤師の連絡先 川崎医科大学リウマチ 膠原病学 ( 17 年 3 月印刷 )IS-NK PRG23011A01 教授守田吉孝先生

第2次JMARI報告書

なくて 脳以外の場所で起きている感染が 例えばサイトカインやケモカイン 酸化ストレスなどによって間接的に脳の障害を起こすもの これにはインフルエンザ脳症やH HV-6による脳症などが含まれます 三つ目には 例えば感染の後 自己免疫によって起きてくる 感染後の自己免疫性の脳症 脳炎がありますが これは

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1 章 血管炎ってどんな病気 血管炎を疑い診断するにはどうするか 分類から診断 主に本書では原発性血管炎について述べる 血管炎の兆候に関してはBVAS の項 1 章 Q04 で詳細に述べる 3 原発性全身性血管炎のそれぞれの血管炎の診断はどうしてするの 図1に示した流れで診断していく 以下に図に沿った解説を加える 湯村和子 ここが ポイント まず血管炎を疑ったら感染症や悪性腫瘍 表 1 を鑑別する 血管炎を疑ったら原発性か続発性かを鑑別する 血管炎を疑ったら図 1 の手順で診断していく 2012 年の Chapel 表 2 図 2 Hill Consensus Conference の分類 CHCC2012 Watts らの分類アルゴリズム 図 3 の流れに沿って診断する 表 1 血管炎に似た症状を示す疾患 1 感染症 細菌性心内膜炎B 型 C 型肝炎結核梅毒など 2 悪性腫瘍 心房粘液腫リンパ腫癌腫症など 3 サルコイドーシス 4 凝固障害 抗リン脂質抗体症候群血栓性血小板減少症など 5 薬物中毒 コカインアンフェタミン麦角アルカロイドなど 1 血管炎の定義 ① 臨床所見 症候が血管炎に矛盾しないこと ② 障害臓器の生検所見 血管炎 診断の確定 ③ 一般検査所見 ④ 特異的な検査あるいは適切な 障害部位の画像所見 尿検査CRP血沈 血清クレアチニン血液一般検査など 特定の血管炎症候群に適切に分類 特徴的な血管炎の診断に至る Watts らの分類アルゴリズムなどを 参考に分類 診断する 図 1 原発性全身性血管炎の診断の流れ ① 臨床所見 が特徴的であること 血管炎の症候と矛盾しないこと 1 章 Q04 血管炎を示唆する所見はたとえば触知可能な紫斑肺の浸潤影や顕微鏡的血尿 などだが症候の原因として血管炎以外の疾患が除外されなければならない ハリソン内科学 には 血管炎は血管の損傷を特徴とする臨床病理的過程である ② 生検所見 では血管炎 壊死性血管炎または肉芽腫性病変 が認められること 通常血管内腔が傷害されやすくあらゆる大きさ 部位の血管が傷害され組織の ③ 一般検査所見 ではCRP血沈血小板増加貧血血清クレアチニンなどを 虚血と関連し多岐にわたる血管炎症候群が生じる 血管炎は単一のこともあれば チェックするとともに尿検査は必ず行う またANCA 陽性であるかを確認する 複数の臓器を障害することもある と定義されている ④ 特異的な検査あるいは適切な障害部位の画像所見 2 血管炎と似た兆候を示す疾患の鑑別 1 神経生理学的検査で多発性単神経炎 EGPA 1MPA 2PAN 3 2 血管造影 MRI 血管画像 による結節性変化 動脈瘤 PAN高安動脈炎 まず全身性血管炎 表 2 に似た症状を呈する疾患 表 1 を鑑別する 3 頭頸部と胸部 CTまたはMRIによる眼窩後部と気管支病変 GPA 4高安動脈炎 わが国の厚生労働省のそれぞれの血管炎の診断基準と Watts らの分類アルゴリズム 4 好酸球の増加 以上 EGPA での診断基準は異なることがある 5 胸部 CT で間質性肺炎結節性肺炎など MPAGPA 同時に続発性の血管炎は薬剤性血管炎ではプロピルチオウラシル PTU によるもの 1 EGPA eosinophilic granulomatosis with polyangiitis 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 旧名称 チャーグ ストラウス症候群 Churg-Strauss syndrome CSS 2 MPA microscopic polyangiitis 顕微鏡的多発血管炎 3 PAN polyarteritis nodosa 結節性多発動脈炎 4 GPA granulomatosis with polyangiitis 多発血管炎性肉芽腫症 旧名称 ウェゲナー肉芽腫症 Wegener s granulomatosis WG が有名でありまた全身性エリテマトーデス systemic lupus erythematosus SLE や関節リウマチなどの続発性血管炎ではないことも証明しておかなければならない 8 血管炎が疑われる患者 1 章 血管炎ってどんな病気 Q02 血管炎を疑い診断するにはどうするか 分類から診断 9

2 CHCC2012 ANCA ANCA microscopic polyangiitis MPA 3 granulomatosis with polyangiitis GPA2 Q Wegener s granulomatosis WG eosinophilic granulomatosis with polyangiitis EGPA ANCA 2 Q12 Churg Strauss syndrome CSS giant cell arteritis GCA 2 Q07 temporal arteritis TA Takayasu s arteritis TA 2 Q06 aortitis syndrome IgA IgA vasculitis IgAV 2 Q13 Henoch Schönlein purpura HSP mixed cryoglobulinemia cutaneous leukocytoclastic angiitis CLA 2 Q14 Kawasaki s disease2 Q08 polyarteritis nodosa PAN 2 Q09 periarteritis nodosa PN ANCA 2002 1990 B PAN KD A TA GCA CV IgA IgAV HUVAnti C1q vasculitis GBM ANCA C MPA GPA EGPA 3 A B C 1 4 CHCC2012に基づき血管炎症候群を血管径で分類した ( 2, 2) 1) 1) 抗基底膜病と低補体血症性蕁麻疹様血管炎 ( 抗 C1q 血管炎 ) はCHCC2012 では免疫複合型血管炎に入れられた 単一臓器の血管炎として中枢神経系血管炎,1994 年のCHCC 2) では免疫複合体血管炎に分類されていた皮膚白血球破砕性血管炎, 皮膚動脈炎などが,CHCC2012で新たに単一臓器血管炎に分類されている Cogan 病, ベーチェット病は variable vessel vasculitis(vvv) として分類されている 2 1 ANCA 1 章血管炎ってどんな病気? Q02 血管炎を疑い, 診断するにはどうするか? 分類から診断 11

3 章 顕微鏡的多発血管炎を症例から考えてみよう 表 1 顕微鏡的多発血管炎の診断基準 難治性血管炎分科会1998 年 顕微鏡的多発血管炎とは その診断は 小型血管炎 顕微鏡的多発血管炎 ① 急速進行性糸球体腎炎 ② 肺胞出血もしくは間質性肺炎 1 主要症候 ③ 腎 肺以外の臓器症状 紫斑皮下出血消化管出血多発性単神経炎など 2 主要組織所見 湯村和子 ここが ポイント ① MPO-ANCA 陽性 3 主要検査所見 中高年齢者の血尿をみたら尿路系悪性腫瘍か 顕微鏡的多発血管炎 micro- 4 判定 血管炎を疑ったらANCA を測定してみる 難病情報センター結節性動脈周囲炎 2 顕微鏡的多発血管炎認定基準 http://www.nanbyou.or.jp/upload_files/ MPA はいつ独立した疾患になったの 1866 年に Kussmaul と Maier が 古典的 結節性動脈周囲炎症例を報告しMPA 2 025_2_s.pdf より ③ 腎 肺以外の臓器症状 紫斑 皮下出血 皮膚症状 消化管出血 消化器症状 4 4 はその亜型と認識されてきた 1994 年 Jennette ら 1 はChapel Hill Consensus 多発性単神経炎 神経症 など と記載されているがこの中で頻度が高いのは神 Conference CHCC で 結節性多発動脈炎より独立した血管炎として MPA を分 経症状の多発性単神経炎で約 30 に起こってきている 主要症候に挙げられてい 離した る症候は当然頻度が高いが ③ に記載されている以外にどのような症状があるの MPAはわが国では多くはMPO-ANCAが陽性である 2012年のCHCCでANCA か不明である が陽性の血管炎をまとめて ANCA 関連血管炎 AAV というようになり 2 わが国 臨床調査個人票に書かれている記入項目 図 3 参照 でここに記載されていない項 での AAV の主体は MPA である 目が該当するがそのためにもBVAS 1 章 Q04 で挙げられている臓器障害の わが国の MPA の診断基準を読み取ろう 兆候を知っておくことが重要である 現在進行中の前向きコホート研究での ANCA 関連血管炎の RemIT-JAV-RPGN 1998 年厚生労働省の難治性血管炎分科会で MPA の診断基準が提案された 表 1 のうち MPA 94 例平成 24 年 7 月現在 での臓器障害出現頻度 図 1 3 も臨床調 表 1 の 1 主要症候について以下に解説する 査個人票 n 697 の頻度と同じく 80 近くの症例で腎障害が認められる 続い MPA 発症とほぼ同時期に 70 80 の高頻度に ① 急速進行性糸球体腎炎 RPGN て神経症状 39. 4 呼吸器症状 37. 2 と続く RemIT-JAV-RPGN では BVAS を 起こる ② 肺胞出血もしくは間質性肺炎 胸部病変であるこれらの症候も 30 40 程度の頻 度で起こるが最近では肺出血で発症する症例は比較的少なくなってきている 114 ③ 蛋白尿 血尿BUN血清 Cr 値の上昇 確実 definite a 主要症候の 2 項目以上を満たし組織所見が陽性 b 主要症候の① 及び② を含め 2 項目以上を満たしMPO-ANCA が陽性 疑い probable a 主要症候の 3 項目を満たす例 b 主要症候の 1 項目と MPO-ANCA 陽性の例 が遅れる 1 ② CRP 陽性 ④ 胸部X線にて肺胞出血を疑う浸潤影や間質性肺炎像 scopic polyangiitis MPA を疑う 発熱や体重減少などの全身症状を伴っている場合は感染症や悪性腫瘍を疑って診断 細動脈 毛細血管 後毛細血管細静脈の壊死血管周囲の炎症性細胞浸潤 使用し評価しているが 間質性肺炎 が BVAS には明記されていないため頻度が低 い 診断基準にはないが非特異的炎症反応としての発熱体重減少なども高頻 度であり知っておくと診断が容易である 多くは無症状で胸部 X 線撮影による浸潤影 下肺野の網状陰影 がみられることから 表 1 の 2 主要組織所見であるが皮膚や腎臓の生検診断は専門医がいるところで 間質性肺炎で診断されることが多い 胸部単純 CT による診断が有用である 行うので4 判定の確実 a の診断が一般病院でつくことは少ない 3 章 顕微鏡的多発血管炎を症例から考えてみよう Q15 顕微鏡的多発血管炎とは その診断は 小型血管炎 顕微鏡的多発血管炎 115

RemIT JAV n 94 0 90 80 70 60 50 40 30 20 0 n 697 に正常範囲と判断してしまう場合もあり注意を要する 尿異常や腎限局性の場合には, 症状が乏しく診断が困難なことも多い MPO-ANCA 陽性で急速進行性糸球体腎炎だけの場合,MPAの疑い例になる 最近では, 腎限局型として MPAの範疇に入れることも多くなってきている 1の3)4 は胸部 X 線検査で, 間質性肺炎があっても無症状のことがほとんどであり, 軽度であれば胸部 X 線検査では判定が難しく, 胸部 CTで確認が必要である 以上, この診断基準を満たせば, 公費給付の手続きができるので, 臨床調査個人票 ( 3) を提出する 患者の医療費の負担軽減が可能である 1 MPA 3 3に示す臨床調査個人票をみると,BVASの9 項目に準じ取り上げられていることがわかる mg dl 25 20 P 0.0079 なお, 臨床調査個人票には患者が該当する重症度分類を, 結節性多発動脈炎の重症度 分類 ( 2 Q09 3) に準じ, 記載しなければならない 臨床調査個人票を記入するとき, 記入項目をみると MPA が結節性動脈周囲炎 (peri- CRP 15 5 0 2 CRP 4 1 の 3) に挙げられている項目で最も重要な項目は 1ANCA 測定を行うことである 4) 判定の確実 (b) では, 1 急速進行性糸球体腎炎 +2 間質性肺炎があり,MPO- ANCA 陽性であれば MPA の診断が可能で, ジェネラリストでも診断が可能である MPO ANCA MPA MPA PR3 ANCA MPO ANCA GPA 1 の 3)2 の CRP 陽性の所見は, 発熱などの全身症状がある場合には, 陽性高値で あるが, 急速進行性糸球体腎炎のみの腎限局型の場合では, 2 で示すように CRP 低値か陰性のことも多い 4) 1の3)3 の蛋白尿 血尿,BUN, 血清クレアチニン値の上昇は, 急速進行性糸球体腎炎であれば当然当てはまるので, 重複しているともいえる 健診での尿異常で発見される場合や診断以前の血清クレアチニン値が不明で, 軽度の上昇の場合は一般的 3 * 2 http://www.nanbyou.or.jp/upload_files/025_2_r.pdf 116 3 章顕微鏡的多発血管炎を症例から考えてみよう Q15 顕微鏡的多発血管炎とは? その診断は? 小型血管炎 : 顕微鏡的多発血管炎 117