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必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

3-2 学びの機会 グループワークやプレゼンテーション ディスカッションを取り入れた授業が 8 年間で大きく増加 この8 年間で グループワークなどの協同作業をする授業 ( よく+ある程度あった ) と回答した比率は18.1ポイント プレゼンテーションの機会を取り入れた授業 ( 同 ) は 16.0


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ホームページ掲載資料 平成 30 年度 全国学力 学習状況調査結果 ( 上尾市立小 中学校概要 ) 平成 30 年 4 月 17 日実施 上尾市教育委員会

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

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2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

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領域別正答率 Zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz んんんんんんんんんんんんん 小学校 中学校ともに 国語 A B 算数( 数学 )A B のほとんどの領域において 奈良県 全国を上回っています 小学校国語 書く B において 奈良県 全国を大きく上回っています しかし 質問紙調査では 自分

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授業概要と課題 第 1 回 オリエンテェーション 授業内容の説明と予定 指定された幼児さんびか 聖書絵本について事後学習する 第 2 回 宗教教育について 宗教と教育の関係を考える 次回の授業内容を事前学習し 聖書劇で扱う絵本を選択する 第 3 回 キリスト教保育とは 1 キリスト教保育の理念と目的

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目 次 1 学力調査の概要 1 2 内容別調査結果の概要 (1) 内容別正答率 2 (2) 分類 区分別正答率 小学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 3 小学校算数 A( 知識 ) 算数 B( 活用 ) 5 中学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 7 中学校数学 A( 知識 )

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総合的な探究の時間 は 何を 何のために学ぶ学習なのか? 総合的な探究の時間 は与えられたテーマから みなさんが自分で 課題 を見つけて調べる学習です 総合的な探究の時間 ( 総合的な学習の時間 ) には教科書がありません だから 自分で調べるべき課題を設定し 自分の力で探究学習 ( 調べ学習 )

24 京都教育大学教育実践研究紀要 第17号 内容 発達段階に応じてどのように充実を図るかが重要であるとされ CAN-DOの形で指標形式が示されてい る そこでは ヨーロッパ言語共通参照枠 CEFR の日本版であるCEFR-Jを参考に 系統だった指導と学習 評価 筆記テストのみならず スピーチ イン

7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

学習意欲の向上 学習習慣の確立 改訂の趣旨 今回の学習指導要領改訂に当たって 基本的な考え方の一つに学習 意欲の向上 学習習慣の確立が明示された これは 教育基本法第 6 条第 2 項 あるいは学校教育法第 30 条第 2 項の条文にある 自ら進んで学習する意欲の重視にかかわる文言を受けるものである

p.1~2◇◇Ⅰ調査の概要、Ⅱ公表について、Ⅲ_1教科に対する調査の結果_0821_2改訂

第 1 章総則第 1 教育課程編成の一般方針 1( 前略 ) 学校の教育活動を進めるに当たっては 各学校において 児童に生きる力をはぐくむことを目指し 創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で 基礎的 基本的な知識及び技能を確実に習得させ これらを活用して課題を解決するために必要な思考力 判

平成29年度 小学校教育課程講習会 総合的な学習の時間

ている それらを取り入れたルーブリックを生徒に提示することにより 前回の反省点を改善し より具体的な目標を持って今回のパフォーマンスに取り組むことができると考える 同に そのような流れを繰り返すことにより 次回のパフォーマンス評価へとつながっていくものと考えている () 本単元で重点的に育成をめざす

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成績評価を「学習のための評価」に

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考え 主体的な学び 対話的な学び 問題意識を持つ 多面的 多角的思考 自分自身との関わりで考える 協働 対話 自らを振り返る 学級経営の充実 議論する 主体的に自分との関わりで考え 自分の感じ方 考え方を 明確にする 多様な感じ方 考え方と出会い 交流し 自分の感じ方 考え方を より明確にする 教師

回数テーマ学習内容学びのポイント 2 過去に行われた自閉症児の教育 2 感覚統合法によるアプローチ 認知発達を重視したアプローチ 感覚統合法における指導段階について学ぶ 自閉症児に対する感覚統合法の実際を学ぶ 感覚統合法の問題点について学ぶ 言語 認知障害説について学ぶ 自閉症児における認知障害につ

5 年 No.64 英語劇をしよう (2/8) まとまった話を聞いて内容を理解することができる 主な言語料 して天気や日時などの確認をす 教 1 本時のめあてを知 Peach Boy を詳しく聞いてみよう物語を聞く (3 回目 ) 登場人物全体について聞かせ 聞き取れた単語をカタカナでもいいので書き

教育と法Ⅰ(学習指導要領と教育課程の編成)

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商業科 ( 情報類型 ) で学習する商業科目 学年 単位 科目名 ( 単位数 ) 1 11 ビジネス基礎 (2) 簿記(3) 情報処理(3) ビジネス情報(2) 長商デパート(1) 財務会計 Ⅰ(2) 原価計算(2) ビジネス情報(2) マーケティング(2) 9 2 長商デパート (1) 3 プログ

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2 教科に関する調査の結果 (1) 平均正答率 % 小学校 中学校 4 年生 5 年生 6 年生 1 年生 2 年生 3 年生 国語算数 数学英語 狭山市 埼玉県 狭山市 61.4

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福祉科の指導法 単位数履修方法配当年次 4 R 2 年以上 科目コード EC3704 担当教員佐藤暢芳 ( 上 ) 赤塚俊治 ( 下 ) 2017 年 11 月 20 日までに履修登録し,2019 年 3 月までに単位修得してください 2014 年度までの入学者が履修登録可能です 科目の内容 福祉科

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市中学校の状況及び体力向上策 ( 学校数 : 校 生徒数 :13,836 名 ) を とした時の数値 (T 得点 ) をレーダーチャートで表示 [ ] [ ] ハンドボール ハンドボール投げ投げ H29 市中学校 H29 m 走 m 走 表中の 網掛け 数値は 平均と同等または上回っているもの 付き

平成 21 年度全国学力 学習状況調査結果の概要と分析及び改善計画 調査実施期日 平成 21 年 10 月 2 日 ( 金 ) 教務部 平成 21 年 4 月 21 日 ( 火 )AM8:50~11:50 調査実施学級数等 三次市立十日市小学校第 6 学年い ろ は に組 (95 名 ) 教科に関す

アイヌ政策に関する世論調査 の概要 平成 3 0 年 8 月内閣府政府広報室 調査対象 全国 18 歳以上の日本国籍を有する者 3,000 人 有効回収数 1,710 人 ( 回収率 57.0%) 調査時期平成 30 年 6 月 28 日 ~7 月 8 日 ( 調査員による個別面接聴取 ) 調査目的

6 年 No.12 英語劇をしよう (2/7) 英語での 桃太郎 のお話を理解し 音読する 導 あいさつをす 挨拶の後 Rows and Columns を交え 天気や時 入 候の確認 既習事項の確認をす (T1,T2) ペンマンシップ ペンマンシップ教材を用いて アルファベットの ジングル絵カー

資料3 道徳科における「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習・指導改善について

平成 29 年度全国学力 学習状況調査の結果の概要 ( 和歌山県海草地方 ) 1 調査の概要 (1) 調査日平成 29 年 4 月 18 日 ( 火 ) (2) 調査の目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析し 教育施策の成果と課題を検証し

平成 29 年度 全国学力 学習状況調査結果と対策 1 全国学力調査の結果 ( 校種 検査項目ごとの平均正答率の比較から ) (1) 小学校の結果 会津若松市 国語 A は 全国平均を上回る 国語 B はやや上回る 算数は A B ともに全国平均を上回る 昨年度の国語 A はほぼ同じ 他科目はやや下

3-1. 新学習指導要領実施後の変化 新学習指導要領の実施により で言語活動が増加 新学習指導要領の実施によるでの教育活動の変化についてたずねた 新学習指導要領で提唱されている活動の中でも 増えた ( かなり増えた + 少し増えた ) との回答が最も多かったのは 言語活動 の 64.8% であった

単元構造図の簡素化とその活用 ~ 九州体育 保健体育ネットワーク研究会 2016 ファイナル in 福岡 ~ 佐賀県伊万里市立伊万里中学校教頭福井宏和 1 はじめに伊万里市立伊万里中学校は, 平成 20 年度から平成 22 年度までの3 年間, 文部科学省 国立教育政策研究所 学力の把握に関する研究

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国語科学習指導案

l. 職業以外の幅広い知識 教養を身につけたいから m. 転職したいから n. 国際的な研究をしたかったから o. その他 ( 具体的に : ) 6.( 修士課程の学生への設問 ) 修士課程進学を決めた時期はいつですか a. 大学入学前 b. 学部 1 年 c. 学部 2 年 d. 学部 3 年 e

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人間科学部専攻科目 スポーツ行政学 の一部において オリンピックに関する講義を行った 我が国の体育 スポーツ行政の仕組みとスポーツ振興施策について スポーツ基本法 や スポーツ基本計画 等をもとに理解を深めるとともに 国民のスポーツ実施状況やスポーツ施設の現状等についてスポーツ行政の在り方について理

習う ということで 教育を受ける側の 意味合いになると思います また 教育者とした場合 その構造は 義 ( 案 ) では この考え方に基づき 教える ことと学ぶことはダイナミックな相互作用 と捉えています 教育する 者 となると思います 看護学教育の定義を これに当てはめると 教授学習過程する者 と

各教科 道徳科 外国語活動 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする 各教科 道徳科 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする

調査の概要調査方法 : インターネットによる調査調査対象 : 全国のイーオンキッズに通う小学生のお子様をお持ちの保護者 500 名全国の英会話教室に通っていない小学生のお子様をお持ちの保護者 500 名計 1,000 名調査実施期間 : イーオン保護者 :2017 年 4 月 1 日 ( 土 )~

(2) 国語 B 算数数学 B 知識 技能等を実生活の様々な場面に活用する力や 様々な課題解決のための構想を立て実践し 評価 改善する力などに関わる主として 活用 に関する問題です (3) 児童生徒質問紙児童生徒の生活習慣や意識等に関する調査です 3 平成 20 年度全国学力 学習状況調査の結果 (

1. 調査結果の概況 (1) の児童 ( 小学校 ) の状況 < 国語 A> 今年度より, ( 公立 ) と市町村立の平均正答率は整数値で表示となりました < 国語 B> 4 国語 A 平均正答率 5 国語 B 平均正答率 ( 公立 ) 74.8 ( 公立 ) 57.5 ( 公立 ) 74 ( 公立

~明日のコア人材を育成する参加型研修~

の間で動いています 今年度は特に中学校の数学 A 区分 ( 知識 に関する問題 ) の平均正答率が全 国の平均正答率より 2.4 ポイント上回り 高い正答率となっています <H9 年度からの平均正答率の経年変化を表すグラフ > * 平成 22 年度は抽出調査のためデータがありません 平

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本日 2012 年 2 月 15 日の記者説明会でのご報告内容をお送りいたします 文部科学省記者会でも配布しております 報道関係各位 2012 年 2 月 15 日 株式会社ベネッセコーポレーション代表取締役社長福島保 新教育課程に関する校長 教員調査 新教育課程に関する保護者調査 小学校授業 国語

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二さらに現代社会においては 音楽堂等は 人々の共感と参加を得ることにより 新しい広場 として 地域コミュニティの創造と再生を通じて 地域の発展を支える機能も期待されている また 音楽堂等は 国際化が進む中では 国際文化交流の円滑化を図り 国際社会の発展に寄与する 世界への窓 にもなることが望まれる

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

(2) 学習指導要領の領域別の平均正答率 1 小学校国語 A (%) 学習指導要領の領域 領 域 話すこと 聞くこと 66.6(69.2) 77.0(79.2) 書くこと 61.8(60.6) 69.3(72.8) 読むこと 69.9(70.2) 77.4(78.5) 伝統的な言語文化等 78.3(

5_【資料2】平成30年度津波防災教育実施業務の実施内容について

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1 国の動向 平成 17 年 1 月に中央教育審議会答申 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について が出されました この答申では 幼稚園 保育所 ( 園 ) の別なく 子どもの健やかな成長のための今後の幼児教育の在り方についての考え方がまとめられています この答申を踏まえ

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17 石川県 事業計画書

工業教育資料347号

活動の流れ 1 4 人のグループに分かれ テーマを決める 校内の施設紹介 学校行事 クラブ活動 時間割など 2 各グループで実施計画を立てる 3 動画を撮影する 4 写真を使って動画を作成する 動画の長さは 1 人 2~3 分とし 全員が発表できるように 分担 を決める 5 必要な語いや表現を調べる

61.8%

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Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

調査結果からみえてきたこと 大学教育改革の渦中にあった 8 年間の学生の意識や学びの変化をまとめると 以下 3 点です (1) アクティブ ラーニング形式の授業が増え 自己主張できる学生が増加 大学の授業で際立って増加しているのが アクティブ ラーニングの機会です 特にこの 4 年間で ディスカッシ

Transcription:

わたしたちの演劇教育のアスペクトと伝統芸術 THEATRICAL PEOPLE & TEACHERS, BE INCREASINGLY INTRESTED IN TRADITIONAL PERFORMING ARTS OF JAPAN 演劇人よ 教育者よ 自国の伝統芸術に関心を 小林 志郎 このエッセイは 2 年前 演劇と教育 ( 日本演劇教育連盟 晩成書房 ) に書いた 演劇教育と伝統芸術 に加筆し 一部文章を書き改めたものである 演劇と教育 に掲載された拙文を読むと 説明が不足し 論及が浅いのが目立ち 二年間書き改めるチャンスをねらっていた 今回 2002 年に国立台湾芸術大学で開催された 演劇教育国際シンポジウム に寄せた論文 VARIOUS ASPECTS OF DRAMA & THEATRE IN EDUCATION IN JAPAN の一部をエッセイに挿入し 内容を深めたつもりだ 上記の論文はシンポジウムの責任者 張暁華教授の求めに応じて 英語による講演原稿 英文による論文 中国語による論文を彼の研究室スタッフと書き上げた経緯がある シンポジウムの成功は 彼の企画力とマネジメント能力 そしてなによりも学問的業績に負うことが多い ウエブサイト上で 上記の論文を読むことができる どういう経緯でデジタル化されたのか 筆者があずかり知らぬことである 何か理由があるのだろう 関心がある方はぜひお読みください わたくしとって 教育とは何か という命題がいつも重くのしかかってくる 教育とは 私たちの文化や芸術 伝統 知的財産 制度 技術などを次の世代に受け渡す行為であり 私たちはそれを生業としているからだろう 私たちの仕事は文化や芸術を次の世代に受け渡すという使命を担っているのだ 30 代のある日 私は自分の日本人観と文化 芸術観がおかしいということに気づき 強烈なショックを受けた ニューヨークで川端康成作 古都 の映画作品を見た 終演後 アメリカ人から質問が集中した 彼らの関心は かわらけ投げ 神護寺 鎌倉 義経 勧進帳 延年の舞 安宅の関 東大寺 雅楽 声明であり 能狂言 人形浄瑠璃 歌舞伎 長唄 清本 新内 日本舞踊であり それらが根底のところで川端文学や日本映画や演劇とどうつながるのかということだった 最後には 日本人は アメリカ人よりアメリカを知っている しかし日本の文化や芸術をなぜ知らないのか と正面から尋ねられた 確かに 私たちは 日本の芸術文化に対して疎い面がある 特に 日本オリジナルの文化芸術だという分野に関しては弱い だが 一般のアメリカ人も 演劇を学ぶアメリカ人も アメリカの演劇に対しては勉強不足だと私は 感じてきた ユージン オニール (1888-1953) やアーサー ミラー

(1915-2005) について私たちよりはるかに知らない 私たちは 学生時代 近松も 南北も 黙阿弥も読まないで ひたすらギリシャ悲劇 シェイクスピア イプセンやチェーホフに代表されるヨーロッパ近代劇 アメリカではオニールやウィリアムズの作品を読破したおかしな日本人なのだ 当時の私は 日本の伝統芸術に対する学習や理解がはなはだ浅かったことは否めない だが自国の芸術に対して アメリカ人も日本人も関心が低く 簡単に優劣をつけがたいと思う だが アメリカの教育の中で ( カリキュラムの中で ) 活用されるドラマティックな教材やテーチング メソッド 教育が取り上げる文化や伝統としての演劇芸術の評価と地位 パーフォーミング アーツとしての演劇の魅力などを検証すると 実に多様で 目の付けどころがいい 教育に関して素人の私が 日本と欧米の教育を比較して言えることは次の点だ 多言語多文化のヨーロッパやアメリカなどは 言語や文化がかかわる諸問題をすべての教科がそれぞれの専門領域にそくして カリキュラムの中で取り組んできた 私たちの専門分野であるパーフォーミング アーツやビジュアル アーツなどの教育も 自己発見 他者発見 主張と妥協 協働 コミュニケーションなどの意味とスキルを主体的かつ効率的に学ぶアイディアと手法を提供し 学校教育の中で評価を獲得してきた その重要性は 20 世紀中葉の日本では考えられなかったことだ この教育課題に応えられるプログラムを演劇という芸術が一番提供できたことと 演劇人たちが教育好きであったことだろう 特に演劇という芸術は 行動のモーチベーションの探り合いが対話であり 場面 ( シーン ) や登場人物の分析は人間 社会環境を自分がかかわる現実とみなす創造作業であり 稽古中も上演中もグループ アクテビティを必要とする例外のない特性を持っている さらに俳優養成プログラムの中のエクササイズが子どもたちの集中力 自己発見 協働 信頼感 ひびき合い ことばの実践的学習などに積極的に取り入れられ 高い評価を獲得したことから ドラマ教育という教育ジャンルが確立されてきたといってよい そもそも教育は社会のニーズや国の教育理念の求めに応じなければならない したがって教育内容や方法 ひいては目的までもが変化することを私たちは知っている 演劇が日本の学校教育の中で 積極的に取り込まれ 評価されたエポックが 3 回あった 第 1 回目のエポックは 鑑賞する演劇教育 (Application of commercial Theatre for Children and Youth, At the beginning of 20 century) と呼ぶことにする 日本の児童演劇のスタートは 1903 年川上音二郎一座がお伽芝居 狐の裁判 浮かれ胡弓 を上演したことに始まる 川上音二郎一座はさらにメーテルリンクやサルドゥーなどの作品を児童向けに翻案し 全国に旅公演を重ね 児童演劇の一つのあり方を作り出した これを契機として 多くの劇団がお伽芝居を制作し 児童演劇は明治末に一つのブームにまで高まった この芝居の製作意図は子供にもわかる物語 子供が楽しめる芝居 そし

て教育的配慮 ( 子供に人格形成や成長段階に応じた作品であることなど ) を掲げていたが 次第に子供に対する教育的な配慮よりも商業的な側面を重視する傾向をもつようになった それはちょうど今日のテレビの子供番組と同じように教育的であり 商業的であり 非実験的であり あらゆる点でつりあいのとれた作品へと変容していったと言われる 多くの論評は 川上音二郎の児童演劇が商業化したことへの言及に重点が置かれ 彼の偉大な実験性や興業的挑戦を評価することが少ない 彼は演劇教育者でも 児童演劇実践者でもない 彼は偉大な演劇実験者であり プロデューサであり 日本最初のグローバルな演劇人であった 今から 100 年前に 彼がアメリカ各地やパリで公演した興行力と政治力 ( コミュニケーション能力 ) は今日のわれわれでも真似できない 川上が 児童が見て楽しむ演劇のあり方の一つのテーゼを形にし 国内ツアーを可能にした実践は驚きである 演劇の地方巡業は 今日でも自立できる劇団は数えるほどしかない 多くの団体が国の助成で活動を維持しているといっても過言ではない 川上のプロデュース能力 演劇を実験する能力 管理能力によって 児童演劇が提示されたのである JAPANESE ACTORS IN CHICAGO October 15, 1899, CHICAGO, Ill., Oct. 14. -- Kawakami Otojiro, called in English Otto Kawakami, Japan's leading actor, and Mme. Yacco, the Sarah Bernhardt of the Japanese stage, are guests at the Grand Pacific Hotel. They head a Japanese dramatic cmpany that is on its way to Paris from Tokio. JAPANESE PLAYS IN BOSTON.; Actors and Dramatic Students from Tokio Present Two of Them. December 06, 1899, BOSTON, Dec. 5. -- An exposition of Japanese dramatic art was given at the Tremont Theatre yesterday afternoon by Otto Kawakami, Sada Yacco, and a company of dramatic students from Tokio. Two plays were given -- a farce, called "Zingoro," (a story of a statuemaker, which proved to be a Japanese version of "Pygmalion and Galatea,") and "The Geisha and the Knight," a three-act tragedy, by Mr. Kawakami. 第 2 のエポックにおいて 児童演劇に挑戦したのが坪内逍遥であった 彼は 1859 年に生まれ 1935 年に亡くなったが ちょうど世界の演劇が大きく変貌しつつある時代であった さて 第 2 回目は 子どもによる 子どものための演劇 (Theatre for Children performed by Children ) のエポックと私は名づける 1920-1930 という第 2 エポックはまさに 新教育運動 の最中であった この教育運動では 子ども中心 children centered の理念が高く掲げられていた 逍遥は演劇学者として 外国の演劇の進展を克明に調査した シェイクスピア ゴーリキー バーナード ショウ イプセンなどを積極的に紹介した 晩年 彼はアメリカの演劇教育に大きな関心を抱き児童演劇の改良に着手した 彼に強い刺激を与えたのは A.M. Hart が書いた The Children s Educational Theatre 子どもの教育演劇 であった A.M. Hart は 子供たちに知的でかつ精神的なアクティビティである演劇をどう教えるか 同時

に安全で健全な方法で演劇という楽しみを提供できるかをこの本の中で述べている 内容を梗概すれば 劇は子どもたちまかせではなく親や専門家などが支援する必要がある 子どものための演技指導法 戯曲を選ぶ方法 安い費用で上演する方法 舞台装置は子どもの想像力を育成する 役の人物を演じることによって人間への慈しみを学ぶ などが実践的な理論として語られている ただ学校の中で 子どもが発表する劇ではなく 子どもたちが舞台装置らしい舞台装置が飾られた舞台で 役にあった衣装を身に着け 専門家の照明クルー 専門家の音響クルー 専門家のステージ クルーの参加で上演される演劇である The Children s Educational Theatre には 15 枚の舞台写真が掲載されている たとえば 王子と乞食 ではスタッフとキャストを合わせて 130 人が参加したとあり (36 ページ ) その舞台装置や衣装は演劇公演としてあるべき条件を十分に満たしている 終演後の全員写真 ParentsParty には保護者 スタッフ 出演者が入り混じって写っている その数はまさに 100 名以上で数える気にならない これらの写真がなかったら学校内で発表する劇と誤解してしまうだろう 逍遥は大正期の芸術教育運動の中で 児童劇の脚本を書き 児童劇論に精力的に取り組み 自ら児童演劇の上演をも行った 逍遥が意図した児童演劇は A.M. Hart の演劇にかなり近かったはずだ 逍遙は 童話劇およびお伽芝居は子ども中心の演劇ではなく 大人の考えが加わり 大人が中心となって演じる演劇であり 子どものための教育的な演劇ではないと言う 彼は子どもの生活や感情を大切にして 彼らの創造本能や芸術的衝動を育成するような 子どもの楽しみのための子どもによる演劇を作ることを提唱する 坪内逍遙は執筆活動を行うとともに 積極的に演劇教育の実践運動に乗り出した 1922 年 11 月に帝劇技芸学校生徒による児童劇を有楽座で上演し 1924 年 ( 大正 12 年 ) から 1925 年 (13 年 ) にかけて 帝劇技芸学校生徒による児童劇を有楽座で上演した 関西の四大都市 大阪 京都 神戸 名古屋でも公演を行い さらに 1925 年 (13 年 ) の春には中国地方 九州の各地を巡演した この 子どものための教育的な演劇 運動は児童劇の発展を加速させ ひいては学校劇の改善に大きな影響を与えた 川上といい 逍遥といい 偉大なプロデューサであり 演出家であり 作家であり 大変にグローバルな演劇人であった 演劇教育にかかわる私たちは 教育という高みから二人の先人の実績を見下ろすのではなく 演劇という山を下りて 演劇教育という荒野に立ち 子どものための教育的演劇に挑戦した二人の演劇人のアティーブメントをポジティブに評価すべきだろう 最期に第 3 回目のエポックは 1947 年 敗戦後最初の学習指導要領が発行された時に始まる 教科 課程における表現的活動 芸術的教科としての音楽 美術 が脚光を浴びるようになった このような教育方針を受けて学校劇もはなばなしく復活した 国語科の教科書では 人形芝居 呼びかけ シナリオ 生活劇 など多彩な作品が取り上げられた 1951 年 ( 昭和 26 年 ) この学習指導が改定される 小学校における国語科学習指導の目標 の 話すこと の項目の中に やさしい文学作品の発表や 劇をすることができる

ことがあげられている そして次のような意味付けがなされている 劇表現への意欲は人間にとっては本能的なものといわれている 低学年児童の ごっこ遊び も 素朴な劇表現の一つである 自分たちで仕組んだ劇をする 読んだ物語を簡単な劇にする 学習内容を劇化する 幻灯 紙芝居 人形劇 児童劇などは現代生活で大きな位置をしめている映画や演劇の鑑賞や批判の力を増すばかりでなく 児童の言語経験に 大きな役割をもつものであることはいうまでもない このような劇表現を教育の手段として活用しようとする指針は多くの教科でも採択されていた 学習指導要領の方針は多くの劇研究活動を誕生させた 東京都中等学校演劇コンクール 和歌山県や福島県の小 中学校共同学校劇コンクール 日本児童文化協議会主宰学校劇コンクール 関東高校演劇コンクール等が挙げられる 教育活動の成果を競い合うコンクール形式に突き進み 劇教育の成果や評価を問うところまで成長しないままに保護者や社会から逆に評価を問われるようになった 劇教育 または表現教育が大きく盛り込まれた学習指導要領に対する批判が父母の間から高まり 戦後の教育では 漢字がよく書けない 計算力が低い などの指摘が行われ 全般に学力の低下をもたらしているのではないかという率直な疑問が投げかけられた 疑問 反対の声の高まりがつよいことから いろいろな機関が学力を調査した結果 国語の理解力や計算力の低下が明確になったために 学習指導要領 教科書 教育方法の再検討を余儀なくされた 1958 年 ( 昭和 34 年 ) に出された学習指導要領では 劇的な教育は極端に後退し 劇活動は 望ましい と記述されるに過ぎなくなった 1968 年 ( 昭和 43 年 ) の学習指導要領では 通称四六答申 (Report of 46) 教科書からは劇教材が削除された 今振り返ってみると 当時の演劇教育は学習指導要領が先行し 目標や方法や教材の研究が追いつかなかったのは確かだ 1. 劇教育は見せる劇活動へと傾いた 2. 劇教育に熱心な教師は芸術志向に進んだ 3. 一部の教師のみが熱心であり 他の教師は授業を運営できなかった 4. 教育界が劇教育の急激な発展を警戒した 劇教育の教育的成果が示されなかった 5. 教育界全体が学力中心の教育に傾いた 6. 受験競争が激化始めた 7. そういう教育環境の変化のなかで 劇の稽古に当てる時間が見出せなくなった 8. 戦後しばらくは 演劇は生活の中で芸術 教養 娯楽 文化として地位を少なからず占めていたが 価値観の多様化が進むにつれ演劇への関心は低下していた 9. 教員養成大学 演劇学会 演劇関係者が学校教育における演劇教育に無関心であった 10. 教師の閉鎖的環境は学校内での議論を形骸化した 11. 教育評価の工夫が必要であるという危機感が希薄であった 教師間の評価 生徒の評価 第三者の評価などが当時としては望むべくもなかった

12. 教育方法 教材研究の欠落いろいろな理由が考えられるが 戦後教育に導入された演劇を活用する教育は 上演中心 または発表中心の活動が目立った 教師の演劇教育に対する理解や授業を支える資質能力があるものと見なして進められた教育リフォームであったからだ だが一番の崩壊要因は 当時の教員が新しい授業を運営できる最低限の知識と技術を習得するための教員研修や教員養成大学の設置に合わせて教育演劇 (Creative Dramatic または Theatre in Education と今日では言い換えてもよい ) を担当する教員の養成課程が整備されないまま 新学習指導要領が導入されたことだ 本当に残念であり この間違いを再び繰り返してはならない 演劇が教育から急速に削除されるのを知りながらも 演劇研究者や演劇関係者は学校教育としての演劇の重要性を今日ほど認識していなかった おそらく彼らの大多数は 学校現場での 教育としての演劇 は彼らが従事する 芸術としての演劇 とは本質的に乖離したものであると思っていたし 教育に対して支援する積極的意義を見出すことができなかったに違いない 1950 年当時の演劇人はまさに Dionysus 神の攻撃性 好色 amorous 解放性 emancipation from morals 破壊への激情のシンボル的存在であり 演劇の魔力に魅せられるものの 多くの教育者は演劇人に距離をおいていた 平成 14 年度から全面実施となる完全学校週 5 日制のもとで行われる教育内容の骨格を示す幼稚園 小学校 中学校の新学習指導要領が平成 11 年末に文部科学省から示された その一つのねらいは教育内容の厳選による ゆとり ある教育と 生きる力 を育む 総合的な学習の時間 を新設することにあった 今回の改定の目玉である 総合的な学習の時間 では (1) 自ら課題を見つけ 自ら学び 自ら考え 主体的に判断し よりよく問題を解決する資質や能力を育てること (2) 学び方やものの考え方を身につけ 問題の解決や探求活動に主体的 創造的に取り組むことなどを指導のねらいにしている この 総合的な学習の時間 を設定した趣旨を 各学校は 地域や学校 児童の実態等に応じて 横断的 総合的な学習や児童の興味 関心等にもとづく学習など創意工夫を生かした教育活動を行うものとする こととし 地域や学校の特色に応じた課題などについて学校の実態に応じて学習活動を行うものとすると教育現場の主体性を尊重している これがプラスになるか マイナスになるかわれわれの教育力と責任感が問われているといってよい そこで新聞等の紙面に掲載された 3つの記事を紹介し その背景を探ってみよう 最初は 小学校および中学校の校長を経験された長須正文氏の朝日新聞に掲載された意見である 総合学習 演劇を導入し 人格育てよ元公立小中学校長長須正文いよいよ新学期 これから小中学校では新学習指導要領によってさまざまな新しい試みが実

践される なかでも注目されるのは教科の枠を超えた総合学習 この取り組みこそ 新教育の成果を左右する学校独自の活動として期待される そこで この総合学習に 演劇 を組み入れ 所期の教育目標を達成されることを提案したい というのも 戦後教育のなかで 演劇 学習はひととき隆盛を極め 大いに教育現場で成果を収めた経験を持つからである かつての国語教科書にはどの学年にも 劇教材 としての脚本やシナリオがあり その発表の機会として 学芸会 や 学習発表会 文化祭 ( 学園祭 ) などの学校行事が華々しく開催されていた ところが 学力向上や系統学習の世論に押され 学習指導要領改訂の度に この領域は影をひそめ 最近ではごく一部 特別活動としての 演劇クラブ に残されるだけになってしまった 演劇 は総合芸術である 脚本の選定や創作を手始めとして 役割分担や読み合わせの旨語活動は すばらしい生きた国語教育の実践である とりわけ 新要領がいう 通じ合い ( コミュニケーション ) には必須の体験だ さらに 上演 ( 発表 ) を巨指す活動では 舞台装置の工夫や音楽 音響の効果 役作りのための衣装考証 場合によっては照明効果などさまざまな芸術的 創造的表現活動が重視される ドラマ化の進行とともに人物の行動 ( しぐさ ) 化も必然的に要求され 身体によるパフォーマンスも試される そして演出の深化の過程では 人物ひとりひとりの自主性 主体性 協力的態度や創意工夫など 人格形成に必要な要素が自然に養われる ひとつの脚本を手がかりに 児童生徒の一集団が助け合い 協力し合って創造的な表現活動に専念するということはなんとすばらしい教育活動であろうか つくこうして創り上げられたドラマは 空き教室や体育館 講堂 あるいは野外で上演 ( 発表 ) される 場合によっては 他のグループ. との競演や 父母や地域の方々や施設で暮らす人々との交流の機会とすることもできる いまこそ 総合学習のカリキュラムに 演劇 を導入して 新教育の成果を上げてほしいと願うゆえんである 2 番目は日本経済新聞に掲載された NPO 舞台芸術環境フォーラム地域演劇マネジメントセンター 理事の柴田英杞杞氏の報告である 演劇通じ子どもいきいき 校内暴力 いじめなどの 荒れ や不登校の背景には 子ども同士 子どもと大人のコミュニケーション不足がある 出会い 語り合い 違いを理解して支え合う 豊かな人間関係作りのための訓練として演劇は大きな力を発揮する 共同作業を通して作品を創造し 観客と 対話 をする インターネット全盛だが 演劇は生で素朴なコミュニケーション能力を高め 想像力やプレゼンテーション能力を育てる だが 学校の授業では 演劇は国語の授業の中に押し込められ 簡単に触れる程度 各地で演劇ワークショップ ( 公演と実演 ) は急増したが 子どもを取り巻く問題や その背景にある地域や家庭の現状に目を向け 解決しようという試みはまだまだ少ない

舞台芸術環境フォーラムは 企業メセナ協議会 ( 東京 ) の若手有志の提案で演劇人や企業 行政関係者 学識経験者らで始めた勉強会が母胎だ地域社会のニーズに沿った公共的な活動を進める地域劇場の実現を目指している 文化行政の進行 演劇を媒介とした地域起こしなど活動内容は幅広いが 最近は教育分野に力を入れている その一環として3 月に札幌 金沢 東京で 子供たちの明日のために 2002 と題するセミナーとワークショップを開き 演劇が教育や地域の課題に果たす役割を議論した イベントの最大の目玉は 英国で先進的な教育プログラムを実践している地域劇場のスタッフを招いた公演と実演で 反響呼んだ この劇場は英国のリーズ市の ウエストヨークシャー プレイハウス 問題を織り込んだ演劇作品を制作して学校を回って上演 生徒を参加させるノウハウも豊富に持っている 授業などに取り入れてもらうために 台本や指導書 小道具も提供している 英国ではシアター エデュケーション ( 芸術的な教育プログラム ) が盛んだ 同劇場の スクール ツアリング カンパニー と呼ぶ方式は 英国随一といわれる成功を収めている 高齢者や失業者向けのプログラムも展開 本業の演劇公演も高い評価を受けている 今回のセミナーには教師の参加が目立った 養護教員や保育士 地域で地道な演劇活動をしている人たちもいて 日本でもこうしたプログラムを学び 実践すべきだ という声が多かった 関心のある人たちと連携して 日本でどう具体化するかを考え 実践していく契機にしたい この作業と平行して 来年 1 月に英国地域劇場ツアーも企画している 地域社会と劇場とが連携して演劇を教育現場に取り入れる試みは 日本でも始まっている 金沢市民芸術村ドラマ工房では キッズクルー という子どもを主役にした演劇プログラムが高い評価を得ている 長崎市でも市民グループが LD 児童や情緒不安定な子供たちのために演劇活動をして 成果を上げた例がある 第 3は朝日新聞に載った 国際人育成に歌舞伎の講座記事を紹介する 栃木 足利南高等学校 という 自分の進路や興味にあった科目を選択できる総合学科制の栃木県立足利南高校 ( 荒川浩校長 ) に4 月からユニークな授業が加わる 歌舞伎講座 日本の伝統や文化を身につけた国際人を育てたい学校側と 若い世代への伝統芸能の普及を望む関係者の考えが一致した形だ 講師はその道の一流どころが引き受けた 正規の授業で 歌舞伎講座が出来るのは全国でも初めてという 歌舞伎の授業は週 1 回で 50 分授業を2 時限続ける計 100 分 3 年生が対象で 現在 2 年生の7 人が受講する 授業は住民にも開放され公募のあった中から抽選した 21 人の市民も生徒と一緒に学ぶ 着物の着付けや立ち方座り方等基本的な所作に始まり 織田信長を討った明智光秀を扱う 絵本太閤記 の尼崎の場という演目を上演するのが最終的な目標だ いずれの報道内容も刺激的だったし すくなくとも演劇教育の方向性を示唆していた 今日の学校教育の中でも 地域の芸術 教育活動の中でも 三つの記事で語られた理念や

目的が継承され 展開されている 総合的な学習の時間 や地域教育活動の足跡は前向きに評価すべきだとわたくしは思っている 教育的な改革や試みは大胆に行われるべきだ 総合的な学習の時間 は参加者が多く 教育運動として予定以上に高まった そこで立ち止まり 次の課題を探す段階に到着していることを確認する必要があろう わたくしは教育学者でもないし 教育管理の経験もない しかしわが国の演劇がかかわる教育の歴史や外国の Drama / Theatre in Education や Creative Dramatic などの教育の歴史に学べば 今後のいくつかの課題が見えてくる わたしたちは ゆとり ある教育と 生きる力 を育む 総合的な学習の時間 を一〇年以上継承してきた ゆとり ある教育は失敗したというより 世界やアジアの教育が intensive な教育を目指したため ゆとり ある教育は持ちこらえきれなくなった だが 総合的な学習の時間 の (1) 自ら課題を見つけ 自ら学び 自ら考え 主体的に判断し よりよく問題を解決する資質や能力を育てること (2) 学び方やものの考え方を身につけ 問題の解決や探求活動に主体的 創造的に取り組むことの教育 これをどうすればいいのか わたくしはこのシステムを発展させるべきだと思う それには理念や目的をスリムにして 絞り込む必要がある この授業科目の目的は とりもなおさず教育全体の課題であり 教育の本質を言い換えているに過ぎない それを達成するために 総合的な学習の時間は 国語は 音楽は そしてできれば演劇は 何を どのような方法で どのくらいの時間をかけて 運用し どう評価するかということだ これから対応すべきことを二つ掲げておきたい 一つは 総合的な学習のコアに演劇をすえたいわれわれは 教師養成を具体的に検討する必要がある 家庭科の教師を一年間で養成した過去を忘れてはいまい 情報という科目の設定と同時に教師養成を開始したこと 英語という科目を導入するための学校教育法の改定などをわたしたちは学ばなければならない 人にものを作ってもらって不平を言えのではなく 自分たちで汗をかくべきだ 次に 学習指導要領に代替できる教育体系を構築し に公表する必要がある 演劇の先達である音楽 美術 書道 ダンスなどの要領はよくできている 細部の思想や方法論に稚拙であるとか 論理的破綻があると注文を付けることは素人でもできるが 体系はゆるぎなく構造されており 関係者でなくとも全体像がつかめる そしてこの要領で言っていることが 日本の音楽教育や美術教育のサーベイであると納得できる 以上の二点を検討し ミニマムの共通規範を創りだすだけでも われわれが考える演劇の教育の本質や実態が浮かび上がってくるだろう 教科の既存の時間枠やスタッフを奪い合う戦いは壮絶を極める 日本の教育の影は その背後に根付く既得権を守ろうとする学問の狭さにあると考えられる 過去 80 年の歴史の中で 演劇教育の重要性が求められた二回のチャンスは教育の目標と指導法の安易さ 教員の資質の未開発 カリキュラム開発と教材開発の遅れからついえた これらの間違いは システムの面から検討すれば 教師と演劇人と教員養成大学 すなわち教科専門と教科教育学といわれる演劇教育研究に責任がある教員養成大学との連携が抜け落ちていたからに他ならない 次のチャンスが巡って来るときのため 演劇という科目の指導内容と要

領のドラフト さらに教員養成のプログラムの基礎研究を今すぐ開始する必要があろう 教育としての演劇は やはり定かではない タレント育成の授業ではないといっても それ以外の演劇をイメージできない正常な人が多い われわれは自分たちが異端であることを忘れてはならない 学んだら どういう成果がもたらされるのかという問いに 真摯に答える理論と誠実さを倍加させ 新しいステージを目指そうではないか 2001 年に実施した 小 中学校九年一貫課程 ( 小学校 1 学年 :2001 年 9 月 中学校 1 学年 :2002 年 9 月に実施 ) の準備のさなかに立ち会った 藝術と人文 は Visual Art である 視覚芸術 Performing Arts である 演劇パフォーマンス 音楽 舞踊 等の学習活動から構成されている 児童 生徒の芸術 文化に対する素養を育成 芸術の伝承と創造 芸術 文化への関心のある国民を培う などが目的とされていた 2002 年の初夏 国立台湾芸術大学は 演劇パフォーマンス を担当する予定の教員であふれ ワークショップ レクチャー 討論 上演の巨大な会場となった 国外から三名の学者が招へいされた Nellie McCaslin( ニューヨーク大学 ) John Somers( エクセター大学 ) 小林志郎 ( 東京学芸大学 ) で それぞれが二つのフレームを担当した フレーム 1 では自国の演劇教育の歴史と展望を語り あわせて演劇教育 演劇についての持論を展開した フレーム 2 では John Somers は Theatre in Education の教材として地域と伝統を取り上げ 出演者たちはエクササイズとディスカッションを繰り返し 最後に観客をもディスカッションに巻き込んだ Neillie McCaslin はアメリカのドラマ教育とダンス教育のゆきちがい部分と融合部分について語ったが 彼女がダンス教師として出発した時期がアメリカのドラマ教育が緒に就いた時であったことが紹介された 名著といわれる Creative Drama in the Classroom の中で述べているようなドラマ教育は同世代の演劇教師とダンス教師の協力で理論の体系化が構築できたという裏面史を聞くことができた 坪内逍遥が児童演劇について参考にした The Children s Educational Theatre を Allice Herts は 1,911 年に出版しているが Neillie McCaslin が教員としてスタートする 10 年前に過ぎない Alice Herts の時代はすでに紹介したように 鑑賞する演劇教育の只中であった さて 民国 91 年 台湾で出版されて中学生用 藝術與人文 の教科書は 3 つの柱 博物館 美術館 ( での教育 ) 音楽ホール ( での教育 ) 劇場の旅 ( による教育 ) と区分している 劇場の旅 では ギリシャの円形劇場を世界最初の劇場としてしょうかいする 教科書を見て 高度だと批判する前に 2000 年以上前のギリシャの劇場をみた子どもはどう受け止めるのか 続けて台湾をふく各国の野外劇場 アリーナ スラスト ステージ プロセニアム劇場などを記載している パーフォーミング アーツの教材の中心は伝統演劇であり そのほかに現代劇 児童劇 北京人民藝術劇院なども取り上げられている シンポジウムでも 伝統芸術の扱いが問題になった 京劇は中国の伝統的な芸術であり 台湾の伝統的な舞台芸術は布袋劇 ( 人形劇 ) だと演劇学者たちが教えてくれた 布袋劇が誕生したのは 17 世紀 中国の福建泉州 ( あるいは漳州 ) と言われる 1980 年代 台湾に

おいて布袋劇が独特の発展を遂げ 子供たちの人気を獲得したという 台湾の布袋劇は日本の人形浄瑠璃とほぼ同じ長さの歴史を持っている 1980 年代にブレイクした新しい布袋劇は 外国の人形劇やショウ ビズの影響を受けているが いぜん素朴であった シンポジウムでは 布袋劇を演劇の伝統を学ぶ教材として活用する方向で議論をしていた Professor Nellie McCaslin at National Taiwan University of Arts Professor Hsiao-hua Chang 私たちが演劇教育のカリキュラムを構想するとき 教育的機能の研究は当然であるが 最も基本的な教材の研究にも相当の努力を払わなければならない まず世界に誇れる日本の演劇財産を正しく把握することが何よりも大切だ そのためには少しは勉強しなければなるまい 伝統芸術は なかなかとりつきにくいものが多い 石油 テレビ 自動車 原子力発電もなかった時代に作られた芸術を 今の社会のメカニズムや合理主義に当てはめるのは方法論としてよくない 芸術は 生活や生活する人間から生まれ 生活と人間に変革をもたらす その結果 芸術文化と科学技術文化との不均衡を照らし出す存在となる 教師と子どもは 芸術作品が作られた時代の文化や生活を学習し そのうえで芸術作品を享受するのは 私たちが目指すあたらしい演劇教育の方向ではない 私が考える演劇教育では 研究者や教員は芸術作品が作られた時代の文化や生活に みんなが後戻りする工夫をしなければならない 演劇を通して 過去の時代の人間環境を生きる体験をするためには 優れた教材の選択と指導方法を見つけ出す必要がある

平たく言えば 伝統芸術を学ぶ課程とは 1 出会う 真似る つくる 2 生活と人間を感じる 命と美を発見する 3 芸術のジャンルや時代別の特徴と価値 外国の芸術の特徴と価値を見つけ 日本の芸術と比較する の三つの学習テーマで構成されるのが望ましい 歌舞伎を取り上げてみよう 江戸の大歌舞伎は一つの歌舞伎だ 日本各地に元始的な歌舞伎や地域的な風土の下で個性的な発達した歌舞伎が残っている まず身近な歌舞伎を探してみる 意外な 出会い があるかもしれない 歌舞伎がなかったら 人形浄瑠璃でも 能狂言でもよい 演劇的なものがなかったら神楽でも獅子舞でもよい 真似る とは 作品を上手に真似て上演しようとしてはならない 観客に見せようとして上手に真似て演じたら 昔の生活や人間を感じにくくなる 真似しながら動作や動きの意味を感じ取ろうとすることが重要だ 演劇教育を実践しようとする教師は自学自習が必要となろう 伝統芸術の素養がないと思う人は 早急に伝統芸術の学習を自分のトレーニング プログラムに加えなければならない 次に地域の住民の中に伝統芸術に関わりのある人を見つけ 協力を要請することだ 教員は ヴォランティアやアドバイザー 資金や協力機関との連携をコーディネートする力を求められている 三つ目は 下記の だんまり や 見得 の演技を鑑賞できる DVD を調達することである まず だんまり を取り上げてみよう (1) だんまり 歌舞伎の だんまり とは 3 から 4 分の演技だ 真っ暗闇の中 人の気配を感じつつ手探りで歩く 危険な人間か 安全な人間かを探り合う演技だ 江戸時代にはオフィス 商店 工場がなかった 当然 闇を照らしてくれる 街灯やネオンサインなどなかった したがって市中といえども夜は真っ暗闇であり 町はずれは漆黒の闇の世界であった 武士も 百姓も 町人も暗闇を生きる術が必要であったはずだ だんまり はそういう環境から生まれた典型的な表現である だんまり は見て面白いし 皮相な想像力は闇のなかではどう動くべきか どこに危険があるかを教えてくれる だんまり の鑑賞が面白いのは 多くの人の想像力をほどほどに満足させてくれるからだ 今日 教育に新しい価値を付加するとしたら 受動的な知識や想像力によって獲得する人間の生きる力ではなく 心と身体が機能させながら学ぶ創造力の中の生活学習であろう 今日では貴重となった闇という自然環境を教員の指導力と工夫によって実感し 表現する 卓越した創造力と再現力が求められる 私は最高のエクササイズに位置付けている (2) 見得を切る 役の内的エネルギーや感情が頂点に達したときに 一時その動きを停止して その瞬間をタブローとして表現する この 見得 を聴覚的にフォローし よりドラマティックに表現するのが つけ である 見得 には種類がいろいろある 不動の見得 がある 勧進帳 の中で武蔵坊弁慶が切る 見得 である 富樫左衛門の求めで勧進帳を読み上げた後 巻物を右手に立てて持ち 左手には数珠を持って胸の

ところに構えて不動明王の形に決まることから 不動の見得 と称される 元禄見得 がある 柱巻( はしらまき ) の見得 がある 絵面( えめん ) の見得 がある 石投げの見得 がある (3) つけを打つ つけ を打つ動作を見て 音を聞けば 自己流に真似ることはほとんどの子どもはできる ところがクラスメートが 見得 を切るのに合わせて つけ を打とうとすると感性と腕はばらばらになり つけ を打つことはできない 理解したこと 説明できること イメージできること と 身体を使って表現できること はまったく別である できない ことを発見することは 教育にとっては大切な学習手続きである だんまり 見得 つけ は何十とある単元のどこかに挿入されたとしよう さっそく目標が定められ 教材研究や達成目標が定められ どう指導するか どう評価するか 私たちは考えなければならない 文化は 生きる勇気を与え 物心ともに平等 公平になるよう地ならしする知恵であると思う ところが芸術は 平等と公平 を地ならしされていない社会や生活を再現し 不条理を問いただすのが目的だ 演劇教育における伝統芸術の意義は 自国の伝統文化 芸術の一端に触れて なんとおどろおどろしいことやまがまがしいことを祖先たちは体験したかを知ることである 芸術創造の本質は 流れ去る運命にある表現の 時間 を引き留め 空間 を拡張し 消滅しようとするパーフォーミング アーツを自然の法則に逆らって存続させようとする あがきの行為 の中にある 文化や芸術として残っているものは あがき の繰り返しの結果生まれた プロダクツ products であり 学習とはその 経緯 process( 素朴で稚拙な表現から完成度の高い表現 ) の中の一つのステップを体験することにある そのとき あがき を無意識のうちに共有する それが肝要であると思う デューイが これまでの教育の中では子どもたちは形式にしばられて受動的におちいる 個性 感性 そして創造性は抑圧され, 行動は機械的なものになる と説いた 彼は 学校と社会 の中で 子どものもつ 4つの興味 (1コミュニケーションへの興味 2 発見する興味 3 構成する興味 4 芸術的表現への興味 を生かした教育を工夫すべきだと説く 下線部分の考え方は アメリカやオーストラリアなどのドラマ教育の中核的な考えとなっている 演劇教育と伝統芸術とのつながりは デューイのいう 2 3 4にこだわることであろう 2 だんまり や 見得 のおどろおどろしさを発見さる 3 次に単純な行為を時間的 空間的に拡大する または縮小させる 反復させる 時には逆転させる 4 芸術的表現への興味とは 自分たちにはエキサイティングな表現になったと思うが 第三者に自分

たちの興奮が伝わるか発表し 確認したいという意欲であろう これがシアターという表現行為であり 人間芸術学的に言えば コミュニケーションへの真の動機と言ってよい National Standards for Theatre Education というデータベースがある このウェブ サイトは the Consortium of National Arts Education Associations.( 全米芸術教育協会コンソーシアム ) によって運営されている アメリカの小学校 中学校 高等学校までを対象とする演劇教育の学習指導要領と言ってよい 演劇教育の範疇 領域を 8つに分割し 各範疇 領域にはそれぞれ 達成基準 が記述されている 第 6の範疇 領域の達成基準は 伝統芸術の美学的な価値と表現の内的 外的特性を学ぶ であり ここでは 古典と現代のテキスト論 フランス古典派戯曲の三一致 歌舞伎 が取り上げられている 彼らは歌舞伎という演劇を教育の中でどう料理するか 見てみよう 教育目的 : 生徒たちは 歌舞伎をパントマイムで演じることによって 観劇する機会が少ない歌舞伎が持つ演劇様式と人間社会との結びつき また美的なインパクトについて学ぶ 導入 : 生徒に歌舞伎の特徴について調べるよう宿題を出す たとえば 化粧 衣装 踊り プロット 音楽 観客のリアクション 型の歴史 立役と女形 仮面と隈取 小道具 舞台機構と舞台装置などを宿題のテーマとする 参考資料や DVD などを用意し 学習活動を支援することが大切だ 調らべた結果を発表させる 授業の展開は ステップ 1 からステップ 7までを紹介している ステップ 1 は ゲームまたはクイズを楽しむ手法で宿題の理解を深める作業を行う ( 詳細は省略する ) ステップ2 からステップ 4までは グループ活動になる クラスを 2チームに分ける 両チームは相手のチームの一人に演出を依頼する 教師から演出者に簡単な動作を書いた紙が渡される 演出者はチーム 1 から演技者を一人を選び 紙に書かれたアクションを演じさせる 演出者は歌舞伎の演技スタイルで演じることを要求し ダメをだす チーム 2 も演技者が選ばれ 別のアクションの稽古が始まる ステップ 4 で上演する 演じられた作品をもとに 歌舞伎の演技スタイルについて議論する ステップ 5 ではディスカッションを行う テーマは 歌舞伎は面白いか 面白くないときは なぜ面白くないか 歌舞伎はなぜ難しいか 簡単という答えには なぜ簡単なのか 等の質疑応答を行う ステップ 6 では即興演技を行う クラスを 4 チームに分ける 一つのチームを選んで 蝶々をつかまえる即興演技をさせる チームの内に蝶々の役を演じる子どもを決める ステップ 7 は即興劇を作る 4チームに以下のストーリーの一つを選んで即興劇を作らせる 1 獅子たちが遊んでいる 雨が降り出す 雨も役として演じられる 2 美しい姫が花を摘んでいる 竜神が現れる 3 漁師が魚を取っている 嵐がやってくる 波 雲 風も役として演じられる ( なぜアメリカの小中高の演劇の授業で 歌舞伎が気張らずに取り上げられるのか 一つ

はアメリカでは東西の演劇交流が 音楽や舞踊と同じように行われてきた 二つ目の理由は 歌舞伎や能狂言の DVD 教材が安価に入手できるからだ 松緑や梅幸がアメリカツアーで演じた映像や型 化粧 衣装 見得などについて答えたインタビュー映像が編集されて 優れた歌舞伎の視覚教材となっている また狂言の野村万作 能の松井彬なども登場する 日本では入手しにくい映像教材が 10 本以上見つけることができる 歌舞伎学者ジェームス ブランドン ( ハワイ大学名誉教授 ) も教材としての DVD を作り 学生 生徒向けに解説をしている まったくの素人にはアメリカの DVD を見せた方が分かり易いような気がしなくもない 市販されている DVD や Video は Kabuki for the West, Kabuki Techniques, The Tradition of Performing Arts in Japan, Noh: Classical Theatre of Japan, This Is Kyogen, Bunraku: Classical Japanese Puppet Art など ) さて ステップ 6 の 蝶をつかまえる 歌舞伎演技のエクササイズは 教師が 鏡獅子 や 連獅子 を知っているから誕生したに違いない また 2 美しい姫が花を摘んでいる 竜神が現れる の発想の下敷きは 鳴神 であることも想像がつく 底が割れるティーチング プランだと悪しざまに言うつもりはさらさらない 教材映像を最大限に活用した手法を高く評価したい また人間という登場人物と一緒に 蝶 雨 風 波 雲なども登場させる発想は歌舞伎的ですごくいい もちろん舞踊や音楽の中で 蝶 雨 風 波 雲などが大切なモチーフとして使われていることは誰しも知っている しかし演劇の授業の歌舞伎という単元で 雨 風 波 雲を取り上げると 歌舞伎を勉強した努力がにじみ出てくる 後見や大道具が操作する波布の動きと役者のからみは外国人にとっては刺激的なスペクタクルである 歌舞伎では雲や雷はデフォルメされは視覚効果であり 風 雨 雪は歌舞伎ならではの大切な演出である 一人の外国人教師は 歌舞伎や能狂言の中に見える日本的な表現に刺激を受け 真似しようとする 外国人は 歌舞伎の中の生活がおどろおどろしいことやまがまがしいことを感じ取る 今 私たちは日本の子どもに祖先たちが体験し 表現したことの意味を伝えることを求められている 伝統芸術の本質は 流れ去る運命にある表現 の 時間 を引き留め 空間 を拡張し 科学の法則に逆らって存続させようとする あがきの行為 であることを教師自らが学び 自然界の生命あるもの 生命のないものと舞台で共生する演劇を創造する超前衛的な手法と理論を伝統芸術から受け継がなければならない 短兵急に結論を急いだが 伝統芸術から何を学ぶか という問いの答えは私の中ではかなりクリアである 時間を留めること 空間を拡張すること 肉体の存在を誇示すること 自然界の生命のあるもの 生命のないものと舞台上で共生すること を学ぶことである しかし残る問題は 誰が教え 何を使ってどうやって教え どうやって評価するか である これは今も昔も変わっていないが 少し光明が見えてきているような気がする だんまり の闇より演劇教育の闇は明るい