[ 流体技術 : Room C ] STAR Japanese Conference 2016 YOKOHAMA JUNE 9-10, 2016 空気砲を用いた熱流体の輸送における 拡散および熱伝達特性の LES 解析 Large Eddy Simulation of the diffusion and heat transfer characteristics in transport of the thermal fluid using a vortex ring 福岡大学工学部機械工学 : 赤木富士雄 Fukuoka University, Department of Mechanical Engineering Ph D, Fujio Akagi
本講演の概要 研究目的 空気砲の正体である渦輪を用いて 熱流体を拡散抑制しながら輸送する方法の確立 検討内容 渦輪内の温度分布が渦輪の生成過程 粘性拡散 および対流熱伝達に及ぼす影響を調べた STAR-CCM+ を用いて熱流体を供給した渦輪を予測 ( 渦度分布 温度分布 密度分布 粘性分布 ) 計算は Large Eddy Simulation を実施 結果 渦核内では温度分布に起因した粘性分布と密度分布が形成 両者の分布は相互に作用して渦輪の拡散および熱伝達特性に影響
Contents 1. 研究背景 目的 2. 数値シミュレーション手法 3. 解析結果 結果の妥当性の確認 渦輪内への熱流体供給方法の検討 温度分布が渦輪に及ぼす影響 4. まとめ
1. 研究背景 渦輪の流体力学的特徴 煙のドーナツの正体 => 渦輪 渦核内に流体および微小粒子を閉じ込めた状態で自己の誘起速度によって移動できる 側面図 局所集中輸送法 としての利用 流体や微小粒子を拡散抑制しながら目標箇所までピンポイント輸送 目標箇所を輸送物で局所的に満たす 正面図 渦輪の可視化写真 (Akhmetov,D. G., Vortex Rongs,Springer) 特徴 輸送流体が粘性拡散することで生じる混合損失に起因した消費エネルギーの増大を抑えることができる
1. 研究背景 渦輪輸送に関する過去の取り組み 産業応用 : 空調機の送風方法 エンターテインメント応用 : 香り輸送, バーチャル ディスプレイ 基礎研究 : 流動 境界層制御 利用者周辺を選択的に積極冷却 渦輪送風 空調応用の概念図 空調 輸送方法として実用化されるまでには至っていない実用化の課題 (1) 輸送に適した渦輪の生成方法 条件が不明 (2) 輸送したい流体を渦輪内に格納する最適方法が不明 (3) 渦輪内の流体の粘性拡散 熱伝達特性が不明
1. 研究目的 課題 研究目的 渦輪を用いた熱流体の局所集中輸送法の開発 課題 1. 輸送に適した渦輪の生成方法 条件の解明 循環が大きい ( 拡散しにくい ) 渦核の体積 ( 輸送容積 ) が大きい 連続生成しても軸対称を維持 EFD 2. 熱流体 ( 輸送対象 ) を渦輪内に格納する最適手法 条件の解明 3. 渦輪内の温度分布が渦輪の生成過程 粘性拡散特性 および熱伝達特性に及ぼす影響の解明 CFD
Contents 1. 研究背景 目的 2. 数値シミュレーション手法 3. 解析結果 結果の妥当性の確認 渦輪内への熱流体供給方法の検討 温度分布が渦輪に及ぼす影響 4. まとめ
2. 数値シミュレーション手法 予備実験 実験結果を基に渦輪の生成過程の特徴を把握 計算格子および条件設定上の注意点を確認 U(t) U 0 0 U m =0 T t 図. 正弦波の流量変動 ( 脈動噴流 ) 粒子画像流速測定法 (PIV) 位相平均速度場を取得 [ 128 周期 ] 図. 実験領域の概略図
2. 数値シミュレーション手法 正弦波形 : Re 0 = 2370, α = 20.2, Str = 0.110 単発生成 Nozzle 渦輪 ζ * = ζ d n /U 0 連続生成 はく離渦輪 Nozzle 周期渦輪 図. 速度ベクトルおよび無次元渦度分布 噴出口では, 噴流のせん断層が巻き上がって渦輪が生成 ノズル内では, 吸い込み流れの境界層がはく離して, はく離渦輪が生成 はく離渦輪は, 周期渦輪の生成過程に影響を及ぼす
2. 数値シミュレーション手法 ζ * 周期短 Re 0 = 1300, α = 24.2, Str = 0.287 振幅大 Re 0 = 2370, α = 20.2, Str = 0.110 Re 0 = 1500, α = 13.9, Str = 0.082 Re 0 = 3250, α = 20.2, Str = 0.082 はく離渦輪の生成挙動 ( はく離境界層の長さ ) は, 脈動条件により異なる シミュレーションの重要ポイント : せん断層とはく離渦輪の再現性
2. 数値シミュレーション手法 ソルバーおよび解析条件 STAR - CCM+ Ver. 9.06 ~ 10.02 ( 倍精度 ) 三次元非定常非圧縮 Large Eddy Simulation (LES) 熱伝達 ( エネルギー式 ) 重力項 ( 浮力の影響 ) を考慮 空間離散化 時間進行 Sub-Grid-Scale モデル 二次精度中心差分 二次精度陰解法 Dynamic Smagorinsky model 時間ステップ dt = 2 10-4 sec (Cr < 0.5) Key Point 残差設定 1 10-5 ( 内部イタレーション :5 回 ) 瞬時の渦流れ場 せん断層の予測 : LES はく離流れの予測 : Dynamic Smagorinsky model クーラン数 Cr 0.5
6.7 5 1 2. 数値シミュレーション手法計算領域およびメッシュ ノズル内の 境界層 と せん断層 内にはメッシュを集中 (16 層 ) 壁面上には δy = 0.05mm (y+ < 1) トリムメッシュ部はアスペクト比 1.25 以下 Key Point: はく離長さの予測 Nozzle プリズム レイヤーメッシュ LayerCell region : 16 層トリムメッシュ TrimmedCell(Size:0.25) : 層 (0.2 mm) トリムメッシュ TrimmedCell(Size:0.5) : 15 層 (0.45 mm) 図. ノズル内のメッシュ配置図 Z 図. ノズル内のメッシュ図
2. 数値シミュレーション手法 計算領域 メッシュ外観図 流入境界 壁面境界 壁面境界 圧力境界 圧力境界 圧力境界 子午面断面図 [ 総メッシュ数 : 640 万 ] 外観図 (1/4 のみ表示 )
2. 数値シミュレーション手法 メッシュ生成からデータ解析までの流れ 計算領域メッシュ生成 数値計算 ポスト処理 データ解析 検証 予備計算本計算一次データ二次データ ( ワークステーション Intel Xeon 16 core ) Power Session STAR-CCM+ ( 九州大学 Primergy CX400 4 node) Post On Demand オリジナルコード 可視化ソフト 計算時間 : ( 例 ) 計算 step 数 100,000 ( 変動 10 周期 ) ワークステーション => 約 3 weeks Primergy CX400 => 約 1 weeks
Contents 1. 研究背景 目的 2. 数値シミュレーション手法 3. 解析結果 結果の妥当性の確認 渦輪内への熱流体供給方法の検討 温度分布が渦輪に及ぼす影響 4. まとめ
3. 解析結果 : 結果の妥当性の確認 単発渦輪 パルス状の流量変動による単発渦輪の生成の LES V 3 V 2 V 1 V 1 V 3 V 2 (a) EFD Gharib, M., et al., A universal time scale for vortex ring formation, 1998, Journal of Fluid Mechanics, 360, pp.121-140. (b) LES 図. 渦度分布 表. 渦輪の特性値の比較 D 1 (cm) D 2 (cm) D 3 (cm) Z 1 (cm) Z 2 (cm) Z 3 (cm) Γ (cm 2 /s) EFD 5.1 3.0 2.6 13.7 8.8 5.8 60.1 LES 4.7 2.7 2.6 13.6 8.8 6.2 60.0
3. 解析結果 : 結果の妥当性の確認 周期渦輪 : 正弦波形 - Re 0 = 2370, α = 20.2, Str = 0.110 (a) EFD ( 位相平均 ) 図. 無次元渦度分布 (LES は実験の計測点におけるデータを使用 ) (b) LES せん断層の巻き上がり過程を再現できている はく離渦輪の挙動もよく再現できている 定性的な再現性は良好
3. 解析結果 : 結果の妥当性の確認 1 1 0.8 PIV LES 0.8 PIV LES ω θ /ω max 0.6 0.4 0.2 ω r /ω max 0.6 0.4 0.2 0 0-3 -2-1 0 1 2 3 Jetside z * =r /a z core -3-2 -1 0 1 2 3 r * =r /a r core Upstream Fig.Comparison of vorticity distribution between LES and EFD Downstream ζ * peak 30 EFD (D g /d n =4.63) 25 EFD (D /d = ) g n CFD-Trimmed Cell Model 20 15 10 5 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 t * =t/t 図. 渦核中心点上の無次元渦度の時間変化 Z/d n 8 EFD (D g /d n =4.63) 7 EFD (D /d = ) g n 6 CFD-Trimmed Cell Model 5 4 3 2 1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 D v /d n 1 0.5 EFD (D /d =4.63) g n EFD (D /d = ) g n CFD-Trimmed Cell Model 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 t * =t/t t * =t/t 図. 渦輪の渦核中心位置の時間変化 図. 渦輪の直径の時間変化 2 1.5 >> LES の結果は定量的にも実験結果と良い一致
3. 解析結果 : 結果の妥当性の確認脈動条件と渦輪の循環 ( 強さ ) の関係 2 1.5 CASE:B EFD 水渦輪 : 実験 - 予測値 水渦輪 :CFD LES 全周モデル 空気渦輪 :CFD 全周モデル CASE: B Re Γ /Re 0 1 CASE:A CASE: A 0.5 0 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 Str = 0.05 Str 本 LES の結果は 渦輪の生成過程を精度よく再現している 渦輪の循環 ( 強さ ) の生成条件に対する変化は 水と空気で同じ 循環が極大となる条件が存在 Str = 0.05
3. 解析結果 : 結果の妥当性の確認 渦度層の等値面分布図 拡散に利用 図. はく離渦輪の影響が強い条件 輸送に利用 図. 強い渦輪が出来る条件
Contents 1. 研究背景 目的 2. 数値シミュレーション手法 3. 解析結果 結果の妥当性の確認 渦輪内への熱流体供給方法の検討 温度分布が渦輪に及ぼす影響 4. まとめ
3. 解析結果 : 渦核内への熱流体供給方法の検討熱流体の輸送試験 80 の温水を渦輪に供給して20 の水中を輸送 1. 熱流体を正弦波の脈動噴流として噴出する条件 ( 最も単純な方法 ) 2. ノズル内の壁面上に熱源を設置する条件 ( せん断層を加熱 ) 熱源をノズル内壁面に設置 熱源をノズル内外の壁面に設置 3. 熱流体を噴流のせん断層に供給する条件 ( せん断層に直接供給 ) 注入流路幅 :H = 0.5mm H = 1.5mm
3. 解析結果 : 渦核内への熱流体供給方法の検討 20 20 80 熱源 :80 (a) 熱流体を噴流として噴出 (b) 熱源をノズル内壁面に設置 20 20 熱源 :80 (c) 熱源をノズル内外の壁面に設置
3. 解析結果 : 渦核内への熱流体供給方法の検討 (d) 熱流体をせん断層に直接供給した条件 ( 流路幅 0.5mm の条件 ) 20 (a) 温度分布 80 70 熱水 :80 渦核中心温度 (K) 60 50 40 H = 1.5mm 30 H = 0.5mm (b) 渦度分布 20 0 1 2 3 4 5 6 7 8 渦核中心到達距離 z/d n 図. 渦核中心温度の変化 せん断層内に熱流体を直接供給する方法が最も有効 温度はすぐに低下 => 渦核内の熱容量と熱伝達との関係 渦核内に熱流体をどれだけ供給できるかが非常に重要
3. 解析結果 : 渦核内への熱流体供給方法の検討 供給条件 1 0.8 CFD EFD 1 0.8 CFD EFD 1 0.8 CFD EFD Q sup /Q id 0.6 0.4 Q sup /Q id 0.6 0.4 Q sup /Q id 0.6 0.4 0.2 0.2 0.2 0 1 2 3 4 5 6 A * = A sup /A noz 0 0 5 10 15 20 25 30 35 θ (deg) 0 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 U sup /U 0 供給条件には最適条件が存在 ( 最大で渦核体積の 57%) 実験結果との差が大きい ( 差の要因は不明 ) 更なる検討が必要
Contents 1. 研究背景 目的 2. 数値シミュレーション手法 3. 解析結果 結果の妥当性の確認 渦輪内への熱流体供給方法の検討 温度分布が渦輪に及ぼす影響 4. まとめ
3. 解析結果 : 温度分布が渦輪に及ぼす影響渦輪内による熱流体 ( 暖 冷 ) の輸送試験 渦核内に熱流体 ( 周囲との温度差 dt=20, -20 ) を供給 供給は せん断層に直接供給する方法 重力項 ( 浮力の影響 ) を考慮 単発渦輪を下向きに生成した条件で検討 0 Y Z U sup = 0.1 U 0 θ = 15 W = 10 mm Re 0 = 6250 α = 22.6 Str = 0.052
3. 解析結果 : 温度分布が渦輪に及ぼす影響 無次元渦度分布 温度分布 (a) dt = - 20 (b) dt = 0 (c) dt = + 20 冷 暖に関わらず温度差があると せん断層の渦度は強くなる 結果として渦輪の循環は大きくなる => 移動速度が高くなる 粘性拡散および熱伝達は 温度差によって異なる 粘性拡散の速度と熱伝達の速度は同程度
3. 解析結果 : 温度分布が渦輪に及ぼす影響 渦輪の循環 差なし dt=10 dt=-10 差なし dt=10 dt=-10 冷 暖に関わらず温度差があると せん断層の渦度は強くなり 結果として渦輪の循環が大きくなる この結果を利用すれば 温度差を利用して渦輪の強さを強めることができる 空調送風への利用の点では 有利な結果
Contents 1. 研究背景 目的 2. 数値シミュレーション手法 3. 解析結果 結果の妥当性の確認 渦輪内への熱流体供給方法の検討 温度分布が渦輪に及ぼす影響 4. まとめ
4. まとめ STAR-CCM+ を用いて Large Eddy Simulation により熱流体を供給した渦輪温度分布が渦輪の生成過程 粘性拡散 および対流熱伝達に及ぼす影響を調べた 渦輪の循環 ( 強さ ) の生成条件に対する変化は 水と空気で同じ 循環が極大となる条件が存在 Str = 0.05 熱流体の供給は せん断層内に直接供給する方法が最も有効 輸送の実現には 渦核内に熱流体をどれだけ供給できるかが非常に重要 渦核内では温度分布に起因した粘性分布と密度分布が形成 両者の分布は相互に作用して渦輪の拡散および熱伝達特性に影響 温度差を与えると渦輪の循環は大きくなる
謝 辞 本論文の完成までには, 多くの方々の多大なるご指導とご協力を賜りました. ここに, 衷心より御礼を申し上げます. 福岡大学教授山口住夫先生 准教授安東洋一先生 福岡大学流体工学実験室元修士生 川畑慶佑 瀬戸口翔太 林真一 本研究では 以下の援助を賜りました. ここに記して御礼を申し上げます. 2013 年度日本私立学校振興 共済事業団学術研究振興資金 2012 2014 年度原田記念財団研究助成