2014年5月30日 GFSIによる国際標準化の経緯と今後の展望について テュフ ラインランド ジャパン 株式会社 製品部 リテーラーサービス 食品安全グループ シニアエキスパート 岡 田 綾 子
本日 お話をする内容 1. GFSI- 民間による国際標準化 2. GFSI 承認スキーム 3. GFSI 承認スキームの今後の展望 63
1.GFSI- 民間による国際標準化 64
1-1. 国際規格と民間規格 WTO TBT協定 1979年GATT東京ラウンド貿易の技術的障害に関する協定 国際規格 ガイドライン等が存在する場合は WTO加盟国は その国際規格 ガイドライン等にもと づいて各国の規則策定およびその施行を進めるべきであると明記 WTO SPS協定 1994年GATTウルグアイラウンド衛生および植物検疫措置の適用に関する協定 コーデックス委員会 国際獣疫事務局 OIE および 国際植物保護条約 IPPC の枠組み内 で運営される関連国際および地域組織を含む関連国際機関によって開発された国際規格 ガイドライ ン および 提言を基礎とした加盟国間での調和のとれた衛生および植物検疫措置の利用をめざす ISOは国際規格 民間規格 民間規格 国際規格 1947年より国際標準を策定 例えば HACCPの場合 コーデックス CAC/RCP 1-1969 ISO22000 国 日本 食品衛生法 食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関す る指針 ガイドライン 地方自治体 条例 管理運営基準 任意 遵守義務 食品企業 任意 民間の持つスピードと 市場影響力で GFSIによる国際標準化が促進 65
1-2. コーデックス委員会による民間規格調査結果 2010年 2005年 WTO-SPS委員会において 民間規格の台頭に関する問題提起があった その後 さまざまな国際機関でこの問題について討議され コーデックス委員会では 民間規格の市場における重要性を認めた上で 以下のように結論づけた 民間食品規格は その範囲 所有 目的において大きく異なる それゆえ その影響を一般化する ことは不可能である 民間規格の普及の主な要因は多くの政府が食品産業に対して彼らの製造 販売する食品の安全性を 確実にすることを要求したことによる 民間規格がより処方箋的な指針を出していることについて 長所と短所の両方が示唆された 民間規格への認証が開発途上国の多くの食品事業者にとって市場開放の機会となったものの 認証 コストは特に中小事業者に対して過度な負担となりうる 開発途上国のコーデックス規格を実行する およびこれらが効果的に実施されていることを表明す る 能力はこれらの国々の生産者 加工者による民間規格の実施への困難をかなりの程度低減する コーデックスのプロセスは182か国に開放されており コーデックス規格策定プロセスに関わる民間 分野を組み入れるメカニズムがある ほとんどの民間規格およびそのスキームは 広いステークホルダーからのインプットに対して制限 がある 規格構築だけでなくその実施において透明性が必要である 国際機関 民間機関等ステークホルダーの協働の有用性を示唆している CX/CAC 10/33/13 抜粋 仮訳 66
2.GFSI 承認スキームについて 67
2-1. GFSI(Global Food Safety Initiative) とは ~ TCGF(The Consumer Goods Forum) によって運営されている機関 ~ 2000 年 TCGF( 旧 CIES) の会議において 食品事業者の CEO たちは 食品安全 は非競争分野として取り扱われるべき課題であるとし CIES の下位組織として GFSI を設置することに合意した The Consumer Goods Forum の前身である CIES(food Business Forum) は 1953 年に設立された 唯一の独立した国際食品業界ネットワークであり 現在では 3 大陸 70 ヶ国 650 以上の小売業者 製造業者等からなる機関 GFSI ウェブサイトより抜粋 加筆 68
2-2. GFSI設立 2000年 の背景 欧州 食品安全行政 BSEやダイオキシン等の食品事故の発生 遺伝子組換え作物問題等 食の安全 が議論されるなか 2000年 食品安全白書 が発行され 食品安全行政に対する指針が提言された 世界の食品安全行政の方向性を明確にした文書 食品安全に関する全ての点から独立した科学的助言 ラピッドアラートシステムの運営 及び リ スクコミュニケーションに責任をもつ機関の設立 農場から食卓まで の全ての食品の観点を網羅する 改良された法的枠組み 国による管理システムのさらなるハーモナイゼーション 消費者とその他ステークホルダーとのダイアログ 欧州 小売業界 消費者の食品安全を求める声が高まるとともに 消費者嗜好はさまざま多様化し 市場変化のスピー ドは速い そういったなか 欧州市場で寡占化した つまり市場で影響力をもつ 小売にとって 増加していくPB プライベートブランド 製品を効率的 効果的に管理していかなければならない という命題が背景にあった 69 食品安全への取組の必要性 さまざまな小売による さまざまな基準の存在 監査対応によって増えるサプライヤー負担
2-3. GFSI の目的および主な活動 以下 4 つの目的のもと 第三者認証スキームの承認 食品安全リスク低減 サプライチェーンのコスト管理 Once Certified, Accepted Everywhere 能力開発とキャパシティビルディング 知識共有及びネットワーキング 第三者認証前段階の組織むけ指針の策定 活用 70
2-4. GFSI承認スキーム ① 2014年5月現在 9スキーム ④ ⑦ ⑤ ⑧ ⑥ ⑨ ② ③ GFSIウェブサイトより 71
2-5. GFSI承認スキーム 概要 スキーム スキームオーナー マネジメントシステム 対象プロセス ①BRC Global Standard BRC 英国小売協会 HACCP GMPを含む食品品質 安 全マネジメントシステム 添加物等を含む一般食品 食品包装資材製造 ②CANADA GAP CanAgPlus カナダ HACCP GAPを含む食品安全マネ ジメントシステム 農産物生産 ③FSSC22000 食品安全認証財団 オラ ンダ HACCP GMPを含む食品安全マネ ジメントシステム 添加物等を含む一般食品 食品包装資材製造 ④Global Aquaculture Alliance Global Aquaculture Alliance (米国 HACCP GAPを含む食品安全マネ ジメントシステム 水産物加工 養殖は承認範囲外 ⑤Global GAP Food Plus ドイツ HACCP GAPを含む食品安全マネ ジメントシステム 農産物生産 取扱 ⑥Global Red Meat Standard Danish Agriculture & Food Council デンマーク HACCP GAP GMPを含む食品品 質安全マネジメントシステム 畜産 畜産製品加工 ⑦International Featured Standard HDE ドイツ小売協会 HACCP GMPを含む食品品質 安 全マネジメントシステム 添加物等を含む一般食品 食品包装資材製造 ⑧Primus GFS Azzule Systems 米国 HACCP GAP GMPを含む食品安 全マネジメントシステム 農産物生産 農産物加工 常温品含む ⑨SQF Safe Quality Food Initiative-SQFI ( Food Marketing Institute-FMI)米国 HACCP GAP GMPを含む食品品 質安全マネジメントシステム 農業 畜産業 一般食品 飼料 食品包装資材製造 保管 物流 72 72
2-6. GFSI小売系スキームと製造業系スキーム 小売系スキーム IFS,BRC, SQF GFSI設立初期段階に承認された規格として 英国小売協会に策定されたBRC ドイツ 小売協会がフランス イタリア小売協会と協働で策定したIFSの2つがあり これら は広く世界に普及している オーストラリア政府によって策定され 現在 米国FMI 食品マーケティング協会 の管理にあるSQFも 2005年に承認された 小売系スキームは ISO/IEC17065を認定規格に採用しており 小売によるPB製品の サプライヤー管理の色が強い また これらは品質要求事項を含む 製造業系スキーム FSSC22000 Dutch HACCPを運営している食品安全認証財団 オランダ が ダノン クラフト ユニリーバ ネスレ等で策定されたPAS220とISO22000を採用 し 規格化した 認定規格はISO17021 納入要件として活用する場合 二 者監査との併用で活用される傾向にある 2010年からGFSI承認スキームとして運営 90 登録認証機関 7000 被認証組織 144 ヶ国 トップ 5 国: 米国 中国 日本 インド オランダ 73
2-7. ISO17021とISO/IEC 17065比較 以下 IFSウェブサイトに掲載された BRC IFS SQFの3者連名で発行されている The Benefits of Choosing an ISO/IEC 17065 Managed Scheme ISO/IEC 17065管理スキームを選択する利点 より 抜粋 仮訳 尚 ISO/IEC17065管理スキームによる文書であるため その点は考慮した上での理解が必要である ISO 17021 ISO/IEC 17065 マネジメントシステムの文書化 実施 製品とその製造の適合性 契約への適合 特に関連法への準拠システムの有効性 広範な適用範囲選択プロセスの二段階審査 製品グループ及びプロセスに関するシステマ ティックな適用範囲選択 報告書内容細部は 各認証機関が独自に設定 顧客要求事項を含めた評価 3年の認証サイクル 製品及びプロセスに特定の監査員資格 スキーム オーナーによるサーベイランスの標 準化された規則 1年の認証サイクル ー 有益な一貫性の保証 を提供 http://www.ifs-certification.com/index.php/en/retailers-en/document-download/download-general-documents 74
3.GFSI 承認スキームの今後の展望 78
2-8. IFS が欧州大陸で機能している * と考えられる理由 ドイツを中心とした欧州大陸の小売が PB 製品をサプライヤーに製造委託する際の要求事項という観点から策定され そのスタンスが貫かれていること ( 小売協会が策定しているため 改訂の際も 小売の意見が反映される 要求事項は 安全だけでなく 品質要求事項 GMO 等の事項も含む ) ドイツを中心とした小売は サプライヤーに対して IFS の認証取得を要求している場合が多く また 認証取得だけでなく 高レベル合格を課している場合もある ( 第三者認証であるが 第二者監査的 ) スキーム設定当初から 厳格な監査員制度を維持し カリブレーション教育や短期間 (2 年間 ) での資格更新を求めていること 規格改訂頻度が頻繁 (2-3 年毎 ) であり 規格の改訂と改訂との間に 規格解釈やルールの徹底化のための文書が発行される ISO17065 にもとづく製品 プロセス認定認証に拘り 監査に伴う不確実性を可能な限り低減するスキームづくりを行っている 社会的背景 * 機能している :GFSI の設立目的であった 食品安全リスクの低減のための第三者認証の活用 という点から その目的の達成度が高いと判断したことを意味する 欧州小売は寡占化しており 影響力を行使しやすいこと 欧州の社会機構として 規格を策定して運用すること あるいは 第三者による監査に対して受容 活用する素地があること スキームをつくる組織 ( スキームオーナー ) と スキームを使う組織 ( 顧客 認定 認証機関 サプライヤー ) の関係が構築されている そして 関係者で目的達成のための継続的改善を進めている 75
2-9. GFSI承認スキーム認証関係図 ISO22000認証との比較 The Consumer Good Forum 国際認定フォーラム 参画 参 加 認 定 機 関 ISO17011 参 画 参画 参 照 認定 登録 審 ISO17021 ISO17065 査 機 関 関 国際規格策定機関 オブザーバー 参加 規格採用 契約 規格採用 GFSI系 ISO系 認 証 登 録 スキーム オーナー 安 に全 よ っ品 て質 異管 な理 る O 認定 登録 策 定 機 ベ ン チ マ ー ク 小売事業者 各社 S 規格採用 規 格 GFSI Global Food Safety Initiative 認 証 登録 食品企業 スキーム オーナーは民でも官でも可 76
2-10. BRC 英国小売協会 食品スキーム普及状況 認証取得数 世界 16,773工場 英国 2482 17% その他 4171 29% 中国 1,308工場 日本 3工場 イタリア 1554 11% 2014年5月20日現在 ポーランド 358 3% ドイツ 464 3% ベルギー 575 4% フランス 716 5% 中国 805 6% オランダ 1059 8% 米国 1044 7% スペイン 1043 7% グラフは2011年の認証数 世界で最も普及しているGFSI承認スキーム 食品製造 77
3-1. GFSI 承認スキームの今後の展望 今後も 世界の食品認証制度において GFSI 承認スキームがイニシアティブを持ち続けることは必至である 米国 FDA は 2013 年 7 月 26 日 ヒトや動物の消費する食品の輸入に対する外国供給業者検証プログラムの提案規則 ( 第 301 条 ) を発表して輸入業者による輸入食品の監督を大幅に強化するとともに 輸入食品の安全監査を実施する第三者監査人を認定するプログラムを規定する提案規則 ( 第 307 条 ) を公表した この制度において GFSI 承認スキームがどのような位置づけになるかの詳細は未定であるものの 今後 食品認証制度において 国際機関 国家 民間機関のさらなる協働の必要性は高まっていくものと思われる GFSI ガイダンス ドキュメント * は その改訂のたびに 詳細の規定化 厳格化がなされており それらの改訂を受け 既存 GFSI 承認スキームの改訂が行われているケースが散見される これらの改訂が それぞれ設立背景 ステークホルダー 社会環境が異なるスキームの効果的な発展につながるかどうか 注意深く監視されなければならない 同様に 監査員力量やスキームの完全性のためのペナルティを含むプログラム等の仕組みの強化が 第一義的な目的である 食品安全リスクの低減 を効果的に実現する範囲において展開されていくことへの監視も必要である 現在 GFSI では 食文化や PRP の違い等 ローカル要求を反映させた食品認証制度を検討する状況にはない そのため いままで独自のアプローチで食品安全を追及してきた日本の食品事業者が 今後 有効な国際標準化を果たすための最良の対策が議論されなければならない * スキームをベンチマークし 承認するために策定されている GFSI の基準書 79
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