UAE: アブダビ ドバイの外資参加プロジェクトで新たな動き 2006/10/18 調査部猪原渉 1 要旨 湾岸主要産油国の一翼を担うUAEの外資導入方針に変化の兆し? アブダビ : サワーガスプロジェクトで同国初の入札による鉱区公開実施へ 同国で活動中の企業及び新規企業の計 15 社程度を対象に入札プロセスが進行中の模様 急増するエネルギー需要が背景 ドバイ :DPC(ConocoPhillips 主導 ) が保有する沖合 4 油田の権益を5 年前倒しで国営企業に移管へ EOR 強化による生産回復を狙う 2
アブダビ サワーガスプロジェクト アブダビは これまで直接交渉によってきた石油 天然ガス権益の付与について 今後は入札方式で実施の方針との報道 最初の案件として 膨大な埋蔵量を持つが今まで未開発だったサワーガスの開発企業が選定される見込み サワーガス : 硫化水素 (H 2 S) 等の酸性ガスを含む可燃性ガス UAEのガス埋蔵量 215Tcfの約 93%(198Tcf) がアブダビに賦存し その多くがサワーガス 高コスト及び石油温存政策 ( 随伴ガス生産に影響 ) のためこれまで開発が進まず 3 約 15 社に入札参加打診 今回対象 : 陸上 2 油ガス田 (Bab Shah) ADNOCは石油会社 15 社程度に参加意思確認及び PQ 申請打診書類送付済み 少なくとも以下の12 社が含まれるとみられる (IOD WPA 等報道 ) 1 ExxonMobil Shell BP Total JODCO(INPEX) 2 Chevron Occidental Sinopec CNPC Lukoil ONGC Petro-Canada アブダビ上流で活動中の企業 ( 上記 1) 以外の企業にも幅広く打診している模様 ( 中露印企業等 ) PQ 審査の上 合格企業に入札関係書類が送付され 入札実施へ (12 月末締切り?) 近く第 2フェーズとして沖合フィールドについても各社への打診が実施される見込みとの報道もあり 4
アブダビ ( 及びドバイ ) の油田分布 5 需要に追いつかないガス供給 UAEは産業用 ( 石油化学 アルミ等 ) 燃料 発電 海水淡水化等のためのガス需要が増大し 今後 供給不足となる可能性大 UAE ガス生産実績内訳 販売ガス フレア 油田再圧入 ロス 合計 2000 383 13 75 34 505 2001 394 7 146 43 590 2002 434 5 152 47 638 単位 : 億 m3/ 年 2003 448 6 137 48 639 2004 458 6 141 49 654 1996 2005 2010 2015 2020 UAE ガス国内需要内訳実績と見通し 発電 / 造水産業用石油化学 70 13 21 134 84 177 100 212 130 255 162 その他 90 100 124 154 192 出所 :MEES 合計 194 341 424 519 632 6
サワーガス開発ニーズ高まる カタール North Field から UAE 向けの Dolphin ガスパイプラインプロジェクト (2007 年完成予定 ) への期待大だが 以下の要因から国内サワーガスの開発ニーズが急速に高まる 輸入ガス価格上昇 ( 油価高騰の影響 ) サウジによる同プロジェクトへの横やり ( 海域通過拒否 ) 問題 カタールガス開発の減速 ( ガスモラトリアム ) 等 7 8
アブダビの外資導入政策に変化? 今回のアブダビの動きは サワーガスプロジェクト限定とはいえ 長期利権契約締結企業以外に初めて門戸を開くものであり 注目される ZADCO の ExxonMobil への権益譲渡 (2006 年 ) も 当地操業企業 4 社 ( 同社及び BP Shell Total) がショートリストされ ExxonMobil が残ったもの ただし 入札 とはいえ ExxonMobil と Shell が Shah Bu Hasa 油田 BP Total が沖合油田のガス関連技術スタディー ( 油層調査等 ) を実施中であり 既存企業が有利な状況との見方もある 9 アブダビ主要各社の権益構成 10
アブダビの外資導入政策に変化? 当面投資環境の改善が見込めない他の湾岸主要産油国に対し アブダビが外資開放路線に舵を切ったとすれば特筆すべきこと オマーン イエメン バーレーンと並び積極的な外資導入に進むのか今後の動向を注視する必要あり 投資適格国 とはいえない湾岸産油国 サウジアラビア ( 国有化方針堅持 ) イラン ( 政治リスク ) イラク ( 治安 政治リスク ) クウェート ( プロジェクト クウェート停滞 ) 11 アブダビが外資開放に動き出した背景 最近原油生産能力増強計画関連で外資導入に言及するコメント 現在の270 万 b/dから2010 年までに350 万 b/dに引き上げ (06/5 Hamli 石油相 ) 増産実現にはマージナル油田( 能力 3~10 万 b/d) の開発が必要 新規外資参入も検討 (06/5 ADNOC 陸上担当マネージャー Juma 氏 ) 外資開放積極派ムハンマド皇太子の存在 ただし ハリーファ首長は慎重派であり 調整残る 今後は 主要油田の開発は既存企業優先 マージナル油田 ガス開発は外資開放路線か? < 参考 > 主要各社の能力増強計画 (06/5/1 IOD) < ADCO 1400 万 b/d 156 万 b/d <2014 年 > ADMA ー OPCO 60 万 b/d 66.5 万 b/d <2018 年 > ZADCO 55 万 b/d 75 万 b/d <2026 年 > > 内 : 権益期限 12
ドバイ DPC 他が保有権益前倒し返還へ ドバイの主要生産油田である沖合 4 油田 (Fateh 油田他 ) の権益を外資コンソーシアムがドバイ国営 DPE(Dubai Petroleum Establishment) に 2007 年 4 月に返還へ DPC(Dubai Petroleum Company ConocoPhillips100% 子会社 オペレーター ) 及び Total Repsol RWE Wintershall がコンソーシアムに参加 権益契約期限 (2012 年 ) より 5 年前倒し DPE はサービスカンパニー (Petrofac) と油田マネジメント契約締結済み ドバイはピーク時原油生産量 41 万 b/d(1991 年 ) から現在は 10-12 万 b/d に激減 (10 万 b/d 以下との見方も ) 国営企業主導により EOR 強化による生産維持 増強を目指す 13 新たなビジネスチャンスも ConocoPhillips にとって ドバイは非コアエリア ドバイの油田権益から得られる利益はわずかであり 今後 5 年間の権益保持 追加投資のメリットは非常に小さい サウジ フジャイラ (UAE) で相次ぎ大型製油所プロジェクト ( 能力 :40-50 万 b/d クラス ) を契約 今回の動きはいわゆる資源ナショナリズムの動きとは異なり 早期の追加投資により一定の石油収入を維持したいドバイ政府の長期戦略上 必要に迫られた動き DPC(45 年間操業 ) に対しては謝意を表し 円満な 解約 政府主導の開発とはいえ 今後 ドバイは 技術力のある外国石油企業との新たな協力関係構築を模索するとみられ EOR 事業に関心を持つ石油企業にとっては新たなビジネスチャンスの到来も予想される 14