1 / 5 発表日 :2019 年 6 月 18 日 ( 火 ) テーマ : 貯蓄額から見たシニアの平均生活可能年数 ~ 平均値や中央値で見れば 今のシニアは人生 100 年時代に十分な貯蓄を保有 ~ 第一生命経済研究所調査研究本部経済調査部首席エコノミスト永濱利廣 ( : )

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2 / 6 不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回 2014 年の消費税率 3% の引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった


タイトル

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タイトル

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

生活福祉研レポートの雛形

公 的 年金を補完して ゆとりあるセカンドライフを実 現するために は 計 画 的 な 資金準備 が必要です 老後の生活費って どれくらい 必要なんですか 60歳以上の夫婦で月額24万円 くらいかな? 収入は 公的年金を中心に 平均収入は月額22万円くらいだ 月額2万の マイナスか いやいやいや 税

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

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厚生年金の適用拡大を進めよ|第一生命経済研究所|星野卓也

事例検証 事例 1 37 歳の会社員の夫が死亡し 専業主婦の妻と子ども (2 歳 ) が遺される場合ガイドブック P10 計算例 1 P3 事例 2 42 歳の会社員の夫が死亡し 専業主婦の妻と子ども (7 歳 4 歳 ) が遺される場合 P4 事例 3 事例 3A 事例 3B 53 歳の会社員の夫

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係を決めよう (1) 班の意見をまとめて発表する班長 (2) 金額を計算し マネープランシートに記入する記録 計算係 (3) 思い出ポイントを管理する思い出係 (4) カードをひくカード係 5 人の班はカード係を 2 人にしましょう 1


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税・社会保障等を通じた受益と負担について

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TERG

(3) 可処分所得の計算 可処分所得とは 家計で自由に使える手取収入のことである 給与所得者 の可処分所得は 次の計算式から求められる 給与所得者の可処分所得は 年収 ( 勤務先の給料 賞与 ) から 社会保険料と所得税 住民税を差し引いた額である なお 生命保険や火災保険などの民間保険の保険料およ

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質問 1 企業 団体にお勤めの方への質問 あなたの職場では定年は何歳ですか?( 回答者数 :3,741 名 ) 定年は 60 歳 と回答した方が 63.9% と最も多かった 従業員数の少ない職場ほど 定年は 65 歳 70 歳 と回答した方の割合が多く シニア活用 が進んでいる 定年の年齢 < 従業

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別紙2

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企業年金ノート201810

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平成30年版高齢社会白書(概要版)(PDF版)

スライド 1

( 図表 1) 平成 28 年度医療法人の事業収益の分布 ( 図表 2) 平成 28 年度医療法人の従事者数の分布 25.4% 27.3% 15.8% 11.2% 5.9% n=961 n=961 n= % 18.6% 18.5% 18.9% 14.4% 11.6% 8.1% 資料出所

01 公的年金の受給状況

各位

人生100年時代の生活に関する意識と実態

図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

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いずれも 賃金上昇率により保険料負担額や年金給付額を65 歳時点の価格に換算し 年金給付総額を保険料負担総額で除した 給付負担倍率 の試算結果である なお 厚生年金保険料は労使折半であるが 以下では 全ての試算で負担額に事業主負担は含んでいない 図表 年財政検証の経済前提 将来の経済状

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質問 1 11 月 30 日は厚生労働省が制定した 年金の日 だとご存じですか? あなたは 毎年届く ねんきん定期便 を確認していますか? ( 回答者数 :10,442 名 ) 知っている と回答した方は 8.3% 約 9 割は 知らない と回答 毎年の ねんきん定期便 を確認している方は約 7 割

2. 繰上げ受給と繰下げ受給 65 歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金は 本人の選択により6~64 歳に受給を開始する 繰上げ受給 と 66 歳以降に受給を開始する 繰下げ受給 が可能である 繰上げ受給 を選択した場合には 繰上げ1カ月につき年金額が.5% 減額される 例えば 支給 開始年齢

質問 1 敬老の日 のプレゼントについて (1) 贈る側への質問 敬老の日 にプレゼントを贈りますか? ( 回答数 :11,202 名 ) 敬老の日にプレゼント贈る予定の方は 83.7% となり 今年度実施した父の日に関するアンケート結果を約 25% 上回る結果となった 敬老の日 父の日 贈らない

Economic Trends    マクロ経済分析レポート


図表目次 ([ ] 内は詳細結果表の番号 ) 表 1 貯蓄現在高の推移... 4 [8-4 表,8-3 表 ] 図 1 貯蓄現在高階級別世帯分布... 5 [8-1 表,8-3 表 ] 表 2 貯蓄の種類別貯蓄現在高の推移... 6 [8-4 表 ] 図 2 貯蓄の種類別貯蓄現在高及び構成比...

NIRA 日本経済の中期展望に関する研究会 家計に眠る過剰貯蓄国民生活の質の向上には 貯蓄から消費へ という発想が不可欠 エグゼクティブサマリー 貯蓄から消費へ これが本報告書のキーワードである 政府がこれまで主導してきた 貯蓄から投資へ と両立しうるコンセプトであるが 着眼点がやや異なる すなわち

2. 年金額改定の仕組み 年金額はその実質的な価値を維持するため 毎年度 物価や賃金の変動率に応じて改定される 具体的には 既に年金を受給している 既裁定者 は物価変動率に応じて改定され 年金を受給し始める 新規裁定者 は名目手取り賃金変動率に応じて改定される ( 図表 2 上 ) また 現在は 少

2 累計 収入階級別 各都市とも 概ね収入額が高いほども高い 特別区は 世帯収入階級別に見ると 他都市に比べてが特に高いとは言えない 階級では 大阪市が最もが高くなっている については 各都市とも世帯収入階級別の傾向は類似しているが 特別区と大阪市が 若干 多摩地域や横浜市よりも高い 東京都特別区

Ⅰ 調査目的 総合研究所では 新規開業企業の実態を把握するために 1991 年から毎年 新規開業実態調査 を実施し 開業時の年齢や開業費用など時系列で比較可能なデータを蓄積すると同時に 様々なテーマで分析を行ってきた 今年度は 高齢化が進展するなか開業の担い手として注目を集めているシニア起業家 (

2019年度はマクロ経済スライド実施見込み

冷え込む韓国のシニア消費

資料 5_ 世帯年収額 世帯消費支出額 1.23 区全体 図表 1 23 区全体でのひと月当たり平均世帯消費支出額の分布 1 万円未満 万円以上 2 万円未満 万円以上 3 万円未満 万円以上 4 万円未満 27 4 万円以上 5 万円未満 万円以上

b. 世帯主年齢階級別 負担率 図表 II- 6-4 墨田ブロックの世帯主年齢階級別 平均負担率 図表 II- 6-5 墨田ブロックの世帯主年齢階級別 負担率の分布 合計 5% 未満 % 以上 1% 未満

共働きは 収入源の分散化や世帯所得の増加をもたらすことから 基本的には消費に対する自由度を高めるものと予想される つまり 配偶者収入も含めて 収入が消費に結びつきやすくなる可能性があるということだ しかし 実際には 共働き世帯が増加しているにも拘わらず 家計は消費に対して慎重になっているようだ 世帯

1. 電子マネー 1 の保有状況等の推移二人以上の世帯について 電子マネーを持っている世帯員がいる世帯の割合をみると 電子マネーの調査を開始した平成 2 年以降 毎年上昇しています また 電子マネーを利用した世帯員がいる世帯の割合も上昇しており 平成 2 年には約 2 割でしたが 23 年には3 割

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家計調査からみた新潟の家計の収入・支出面の特徴

家計調査報告 ( 貯蓄 負債編 ) 平成 23 年平均結果速報 ( 二人以上の世帯 ) 目 次 Ⅰ 貯蓄の状況 1 概要 貯蓄の種類別内訳 貯蓄現在高階級別貯蓄の分布状況... 9 Ⅱ 負債の状況 Ⅲ 世帯属性別にみた貯蓄 負債の状況 1 世帯主の職業別の状況

第 7 章財政運営と世代の視点 unit 26 Check 1 保有する資金が預貯金と財布中身だけだとしよう 今月のフロー ( 収支 ) は今月末のストック ( 資金残高 ) から先月末のストックを差し引いて得られる (305 頁参照 ) したがって, m 月のフロー = 今月末のストック+ 今月末

ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

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(3) 消費支出は実質 5.3% の増加消費支出は1か月平均 3 万 1,276 円で前年に比べ名目 6.7% の増加 実質 5.3% の増加となった ( 統計表第 1 表 ) 最近の動きを実質でみると 平成 2 年は 16.2% の増加となった 25 年は 7.% の減少 26 年は 3.7% の

なお 夫の給与所得が高いほど 税制における配偶者控除の利用率も高くなる ( 注 4) 配偶者控除による税負担の軽減額は所得が高くなるにつれて大きくなり その恩恵に浴する人は高所得の人ほど多い つまり専業主婦世帯では夫の所得が高くなるほど配偶者控除や第 3 号被保険者制度による恩恵を その分 多く享受

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相対的貧困率の動向: 2006, 2009, 2012年

はじめに 定年後の生活を想像してみよう 1 定年退職後の自由時間 ~ 毎日が日曜日 ~ 定年退職は大きな環境の変化 人生の大きな節目です 在職中には待ち遠しかった日曜日 これからは約 20 年間という長い年月にわたって 毎日が日曜日 が続くことになります 皆さんはどのように過ごしますか なんとなく想

なお 夫の給与所得が高いほど 税制における配偶者控除の利用率も高くなる ( 注 4) 配偶者控除による税負担の軽減額は所得が高くなるにつれて大きくなり その恩恵に浴する人は高所得の人ほど多い つまり専業主婦世帯では夫の所得が高くなるほど配偶者控除や第 3 号被保険者制度による恩恵を その分 多く享受

エコノミスト便り

平成13年8月29日

係を決めよう (1) 班の意見をまとめて発表する班長 (2) 金額を計算し マネープランシートに記入する記録 計算係 (3) 思い出ポイントを管理する思い出係 (4) カードをひくカード係 5 人の班はカード係を 2 人にしましょう 1

 

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本資料は 様々な世帯類型ごとに公的サービスによる受益と一定の負担の関係について その傾向を概括的に見るために 試行的に簡易に計算した結果である 例えば 下記の通り 負担 に含まれていない税等もある こうしたことから ここでの計算結果から得られる ネット受益 ( 受益 - 負担 ) の数値については

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高齢者世帯の経済的余力を検証―社会保障と税の一体改革を進めるに当たって―

金のみの場合は年収 28 万円以上 1 年金収入以外の所得がある場合は合計所得金額 2 16 万円以上が対象となる ただし 合計所得金額が16 万円以上であっても 同一世帯の介護保険の第 1 号被保険者 (65 歳以上 ) の年金収入やその他の合計所得が単身世帯で28 万円 2 人以上世帯で346

現役時代に国民年金 厚生年金に加入していた者は 一部を除き6 歳以上で老齢基礎年金 老齢厚生年金を受給することができる 4 老齢基礎年金の額は 年度は満額で年額 78, 円 ( 月額 6,8 円 ) であるが 保険料を納付していない期間があればその期間に応じて減額される 一方 老齢厚生年金の額は現役

政策課題分析シリーズ16(付注)

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日韓比較(10):非正規雇用-その4 なぜ雇用形態により人件費は異なるのか?―賃金水準や社会保険の適用率に差があるのが主な原因―

つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

消費税増税等の家計への影響試算

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2016 年家計調査年報 家計収支編 家計消費傾向と品目別支出金額調査報告書 2017 年 9 月 東松島市商工会

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Economic Trends    マクロ経済分析レポート

III 世帯属性別にみた貯蓄・負債の状況

2 社会保障 2.1 社会保障 2.2 医療保険 2.3 年金保険 2.4 介護保険 2.5 労災保険 2.6 雇用保険 介護保険は社会保険を構成する 1 つです 介護保険制度の仕組みや給付について説明していきます 介護保険制度 介護保険制度は 高齢者の介護を社会全体で支えるための制度

( 高齢層では単身世帯が増加 ) 高齢化が進む中で高齢者の単身世帯が急増している 65 歳以上の単身世帯は 2000 年の 407 万世帯から 2016 年には 821 万世帯へと倍増している そして単身無職世帯では消費支出が可処分所得を月 4 万円程度上回り 貯蓄の取り崩しにより 生計を立てている

20 金融資産目標残高 今後の金融商品の保有希望 元本割れを起こす可能性があるが 収益性の高いと見込まれる金融商品の保有 日常的な支払い ( 買い物代金等 ) の主な資金決済手段 日常的な支払い ( 買い物代金等 ) の主な資金決済手段 ( 続き )

( ウ ) 年齢別 年齢が高くなるほど 十分に反映されている まあまあ反映されている の割合が高くなる傾向があり 2 0 歳代 では 十分に反映されている まあまあ反映されている の合計が17.3% ですが 70 歳以上 では40.6% となっています

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おカネはどこから来てどこに行くのか―資金循環統計の読み方― 第4回 表情が変わる保険会社のお金

Transcription:

1 / 5 発表日 :2019 年 6 月 18 日 ( 火 ) テーマ : 貯蓄額から見たシニアの平均生活可能年数 ~ 平均値や中央値で見れば 今のシニアは人生 100 年時代に十分な貯蓄を保有 ~ 第一生命経済研究所調査研究本部経済調査部首席エコノミスト永濱利廣 ( :03-5221-4531) ( 要旨 ) 最新の家計調査によれば 夫 65 歳以上 妻 60 歳以上の夫婦のみの無職世帯の場合 実支出が実収入を月 4.1 万円強上回っており 60 歳以上の高齢単身無職世帯の場合は 同様に月 3.8 万円強上回っている 一方 二人以上の世帯のうち世帯主が 60 歳以上の高齢者世帯の1 世帯あたり貯蓄現在高は平均 2,284 万円 中央値で 1,515 万円となる 高齢者世帯の貯蓄額中央値を基準に 現在の老後資金で高齢夫婦無職世帯の今の生活が何年継続できるかを単純計算すると 収支が不変であれば 30 年以上の生活持続が可能と試算される 更に 世帯主の年齢に伴う収支の変化を加味して生活可能期間を試算すると 二人以上の高齢無職世帯の収支が今後も不変であれば 33 年以上の生活持続が可能と試算される 我が国では 60 代後半男性の労働力率が世界でも格段に高い水準にある 実際 家計調査年報 (2018 年 ) をもとに世帯主が 65 歳以上の高齢勤労世帯の収支を見れば 月 34 万円弱の実支出に対して月約 42 万円の実収入になっており 月平均 8 万円以上の黒字となっている このため 仮に世帯主が 65~69 歳まで勤労が可能とすると 今後も収支が不変であれば 75 歳以降も 48 年以上の生活持続が可能と試算される ただ 今後は社会保障給付を中心とした実収入が減る可能性がある また 貯蓄額が 300 万円未満の高齢者世帯も全体の 15.9% を占めている 貯蓄額が減れば毎月の実支出も減ることが想定されるが 人生 100 年時代に十分な貯蓄を有していないシニア世帯が存在することも確か このため 今回の試算結果については家計調査における今のシニアの平均値 ( 貯蓄については中央値 ) を前提としたものであり 相当幅を持ってみる必要がある 二人以上高齢世帯の貯蓄額は平均 2,284 万円 中央値 1,515 万円 6 月 7 日に家計調査年報家計収支編 (2018 年 ) が公表された これによれば 夫 65 歳以上 妻 60 歳以上の夫婦のみの無職世帯の場合 実支出が実収入を月 4.1 万円強上回っており 60 歳以上の高齢単身無職世帯の場合は 同様に月 3.8 万円強上回っている また 家計調査貯蓄 負債編 (2018 年 ) によれば 二人以上の世帯のうち世帯主が 60 歳以上の高齢無職世帯の貯蓄現在高は平均値で 2,280 万円 また無職以外も含めた貯蓄現在高は平均 2,284 万円 中央値で 1,515 万円となっている そこで本稿では 最新の家計調査に基づいて現在の老後資金で今の生活が何年継続できるかを試算してみたい

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3 / 5 最新データに基づけば 30 年以上の生活可能家計調査 (2018 年 ) を見ると 高齢夫婦無職世帯の月間家計収支は 公的年金給付を中心とした実収入が月 22 万円強 消費支出を中心とした実支出が月 26 万円強で 差額分が月 4.1 万円強となっている 一方で 二人以上の高齢世帯の貯蓄現在高中央値 1,515 万円を用いれば 単純計算で 1,515 万円 / ( 月 4.1 万円 12 ヶ月 )=30.1 年の生活が可能ということになる そして 高齢夫婦無職世帯の定義が夫 65 歳以上 妻 60 歳以上であることからすれば 夫が 95 歳以上 妻が 90 歳以上までの生活持続が可能ということになる このように 2018 年時点の平均的な高齢夫婦無職世帯に基づけば 現在の収支状況が不変と仮定すれば 今のシニアは人生 100 年時代に十分な貯蓄を保有していることになる ( なお 単身世帯では貯蓄 負債データが存在しないため 計算不可能 ) 世帯主の年齢も加味すれば 33 年以上の生活が可能しかし 二人以上の高齢無職世帯の実支出は世帯主の年齢で異なることには注意が必要だ このため 毎月の差額分は世帯主の年齢によって変わってくる可能性が高い 実際 最新の家計調査年報 (2018 年 ) によると 二人以上の世帯のうち世帯主が 60 歳以上の無職世帯の実収入は平均で 22 万円強だが 65-69 歳で 23 万円強 70-74 歳で 22 万円強 75 歳以上で 22 万円弱と大きく変わらない ただ 実支出では平均で 27 万円弱だが 65-69 歳で 30 万円弱 70-74 歳で 28 万円強 75 歳以上で 24 万円強と大きく異なる このため 実支出 - 実収入の差額も 65-69 歳で 5.8 万円強 70-74 歳で 6.0 万円強 75 歳以上で 2.8 万円強と大きく異なる 従って シニアの収支は世帯主の年齢により大きく異なり これを加味した試算がより正確であろう そこで 世帯主の年齢に伴う実支出 - 実収入の差額の変化を加味して生活可能期間を試算すると 収支が今後も不変であれば 10 年 +(1515 万円 -(5.8 万円 5 年 +6.0 万円 5 年 ) 12 ヶ月 )/ ( 月 2.8 万円 12 ヶ月 )=33.8 年となる

4 / 5 60 代後半の勤労を前提とすれば 70 歳以降も 48 年以上の生活が可能更に 我が国では 60 代後半男性の労働力率が 2018 年時点で 54.7% と世界でも格段に高い水準にある 従って 老後の資金を判断するには 勤労 も重要であり 65 歳以降も勤労を前提とすれば 老後の生活に更に余裕が出てくることが想定される 実際 家計調査年報 (2018 年 ) を元に世帯主が 65 歳以上の高齢勤労世帯の収支を見れば 月 34 万円弱の実支出に対して月約 42 万円の実収入になっており 月平均 8 万円以上の黒字となっている このため 仮に 65~69 歳まで勤労が可能となれば 世帯主が 70 歳時点の平均貯蓄額は 1,515 万円 +8 万円 12 ヶ月 5 年 1,998 万円となり その後の生活可能期間は収支が不変であれば 75 歳以降の生活可能年数は (1,998 万円 - 月 6.0 万円 12 ヶ月 5 年 )/( 月 2.8 万円 12 ヶ月 ) 48.4 年となる 従って 勤労は老後の生活を考える上で非常に重要といえよう 平均値や中央値から外れた世帯の配慮も必要結局 最新の家計調査年報 (2018 年 ) で試算すれば 平均的な二人以上の高齢世帯の貯蓄額は中央値で 1,515 万円であるのに対し 高齢無職夫婦世帯は収入の 4.1 万円を上回る支出にとどめている このため 現在の収支が不変であれば 現時点での高齢夫婦無職世帯は夫が 95 歳以上 妻が 90 歳以上までの生活持続が可能ということになり 十分今の貯蓄で賄えることを示している また 二人以上の高齢無職世帯の年齢階層別に収支差額を分けて考えると 世帯主が 75 歳以上であれば実支出 - 実収入の差額は 2.8 万円強にとどまるため 社会保障給付が不変であれば 33 年以上の生活持続が可能という試算結果になる 更に 世帯主が 65 歳以上の高齢勤労者世帯の収支を見れば 月平均で8 万円以上の黒字となっている このため 69 歳まで勤労することを前提とすると 収支が不変であれば 70 歳以降も5 年 +48.3 年 =53 年以上の生活持続が可能という試算が重要だろう つまり 老後の生活を考えた場合は貯蓄もさることながら いかに健康で長く勤労できるかが重要であるといえる

5 / 5 ただし あくまで試算は 2018 年時点での平均的な二人以上の高齢無職世帯の収支を元に行ったものであり 今後は社会保障給付を中心とした実収入が減る可能性がある また 高齢者世帯の貯蓄額は平均 2,284 万円 中央値 1,515 万円だが 一方で 300 万円未満の世帯も全体の 15.9% を占めている 貯蓄額が減れば当然毎月の実支出も減ることが想定されるが 人生 100 年時代に十分な貯蓄を有していないシニア世帯が存在することも確かだ このため 今回の試算結果については家計調査における今のシニアの平均値 ( 貯蓄については中央値 ) を前提としたものであり 相当幅を持ってみる必要があるだろう 貯蓄現在高階級別世帯分布 ( 二人以上の高齢者世帯 ) 2500 万 ~ 32% ~300 万 16% 300~2500 万 52% ( 出所 ) 総務省家計調査 (2018 年 ) 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり 投資勧誘を目的としたものではありません 作成時点で 第一生命経済研究所調査研究本部経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが その正確性 完全性に対する責任は負いません 見通しは予告なく変更されることがあります また 記載された内容は 第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません