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2013.3 CareNet Continuing Medical Education 心 房 細 動 診 療 2 監修 藤田保健衛生大学 循環器内科 教授 渡邉 英一 先生 非 専 門 医 の た め の

目次 第 1 章これからの心房細動患者の治療の中心は Generalist 第 2 章脳梗塞発症予防の基本 第 3 章抗凝固療法のスタンダード 第 4 章塞栓症と出血のリスクスコアに基づく実践的抗凝固療法 1

心房細動は脳梗塞の大きな危険因子 (/1000 人 2 年 ) 50 有 脳卒中発症率 40 30 20 無 10 0 高血圧冠動脈疾患心不全心房細動 リスク比 3.4 2.4 4.3 4.8 Wolf PA, et al. Stroke. 1991; 22: 983-988. 2

脳梗塞の発症予防法は? 洞調律? 抗血栓治療? 3

1 洞調律の検討 ~ 抗不整脈薬 ~ 30 25 洞調律維持 心拍数調節 20 死亡 15 率 (%) 10 5 0 追跡期間 ( 年 ) n=4,060 p=0.08 0 1 2 3 4 5 抗不整脈薬による洞調律を目指した AFFIRM study において レートコントロールとリズムコントロールの間に イベント発症率の差が認められず むしろリズムコントロールは死亡率が高い傾向が認められた Wyse DG, et al. N Engl J Med. 2002; 347: 1825-1833. 4

① 洞調律の検討 心房細動カテーテルアブレーション 心房細動カテーテルアブレーションの開始から10年 大きな進歩を遂げた 有効性1) 発作性心房細動 根治率 90%以上 慢性心房細動 成功率 70 80 心房細動の再発による再アブレーションにより 根治されるケースも多い 1) 山根禎一 Mebio. 2012; 29: 84-88. ただし 上記は実績豊富な施設に限られた成績である 5

カテーテルアブレーションの安全性 重大な合併症の出現頻度 Worldwide survey I 1995 2002年 n 8,745 心タンポナーデ Worldwide survey II 2003 2006年 n 16,309 Japanese survey 2002 2006年 n 5,275 total 107 1.22 213 1.31 68 1.29 1.28% 0 3 0.05 0.02 0.01 食道関連合併症 左房 食道瘻 食道迷走神経傷害 6 0.04 脳梗塞 20 0.28 37 0.23 24 0.45 0.27% 肺静脈狭窄 53 0.74 48 0.29 1 0.02 0.34% 横隔神経傷害 10 0.11 28 0.17 9 0.17 0.15% 血管傷害 84 0.96 240 1.47 6 0.11 1.09% 1 0.02 0.10% 周術期死亡 4 0.05 25 0.15 日本循環器学会. カテーテルアブレーションの適応と手技に関するガイドライン 2012 6

心房細動カテーテルアブレーションの治療適応 ( 日本循環器学会 ) Class I Class IIa Class IIb Class III 1. 高度の左房拡大や高度の左室機能低下を認めず かつ重症肺疾患のない薬物治療抵抗性の有症候性の発作性心房細動で 年間 50 例以上の心房細動アブレーションを実施している施設で行われる場合 1. 薬物治療抵抗性の有症候性の発作性および持続性心房細動 2. パイロットや公共交通機関の運転手等職業上制限となる場合 3. 薬物治療が有効であるが心房細動アブレーション治療を希望する場合 1. 高度の左房拡大や高度の左室機能低下を認める薬物治療抵抗性の有症候の発作性および持続性心房細動 2. 無症状あるいは QOL の著しい低下を伴わない発作性および持続性心房細動 1. 左房内血栓が疑われる場合 2. 抗凝固療法が禁忌の場合 日本循環器学会. カテーテルアブレーションの適応と手技に関するガイドライン 2012 7

心房細動カテーテルアブレーションの治療適応 日本循環器学会 Class I 1. 高度の左房拡大や高度の左室機能低下を認めず かつ重症肺疾 患のない薬物治療抵抗性の有症候性の発作性心房細動で 年間 50例以上の心房細動アブレーションを実施している施設で行 われる場合 Class IIa 1. 薬物治療抵抗性の有症候性の発作性および持続性心房細動 2. パイロットや公共交通機関の運転手等職業上制限となる場合 3. 薬物治療が有効であるが心房細動アブレーション治療を希望す る場合 1. 高度の左房拡大や高度の左室機能低下を認める薬物治療抵抗性 の有症候の発作性および持続性心房細動 Class IIb 2. 無症状あるいはQOLの著しい低下を伴わない発作性および持続 性心房細動 Class III 1. 左房内血栓が疑われる場合 2. 抗凝固療法が禁忌の場合 心房細動による症状が強く QOLが低下する症例では アブレーションによる洞調律の維持を検討する 日本循環器学会. カテーテルアブレーションの適応と手技に関するガイドライン 8

2 抗凝固療法の検討 試験名 ( 報告年 ) 相対リスク減少率 (95%CI) AFASAK I(1989 1990) SPAF I(1991) BAATAF(1990) CAFA(1991) SPINAF(1992) EAFT(1993) 全試験 100% 50% 0-50% -100% ワルファリンがよい プラセボ / 対照群がよい メタ解析の結果 ワルファリンによる抗凝固療法は脳卒中発症を 66% 低下させると報告された Hart RG, et al. Ann Intern Med. 2007; 146: 857-867. 9

心房細動例の 脳卒中発症予防において 抗凝固療法はきわめて有用 Copyright Copyright 2013 2013 CareNet,Inc. All All rights rights reserved. 10

ところが 抗凝固薬の服用率は低い 心房細動症例の脳梗塞発症時の抗血栓薬内服状況 55.5% 22.1% 17.4% 抗血小板薬抗凝固薬併用未投与 4.9% 心房細動例の脳梗塞発症時の服薬率 抗血栓薬 39.5% 抗凝固薬 17.4% 11

なぜ 抗凝固療法が行われないのか? 発作性? 他疾患? 出血リスク? 12

医師が抗凝固療法を行わない最大の理由は 13

医師が抗凝固療法を行わない最大の理由は 発作性心房細動であるから 医師が脳梗塞予防 ( ワルファリン投与 ) を行わない理由 全例 (n=246) 塞栓症のリスクを有する症例 (n=159) 発作性心房細動 52.0% 47.2% 明白な理由なし 29.7% 30.2% 禁忌症例 コンプライアンス不良 12.2% 14.5% 肝機能障害 6.5% 4.4% 悪性腫瘍 5.7% 5.7% 活動性潰瘍 5.3% 6.9% 出血性素因 3.3% 4.4% 認知症 2.4% 3.1% 再発性転倒 2.4% 2.5% 動静脈奇形 0.8% 1.3% 上記の理由のうちいずれか 18.3% 22.6% Inoue H, et al. Circ J. 2004; 68: 417-421 より改変. 14

では 発作性心房細動は 脳梗塞発症リスクが低いのか? 発作性心房細動は 低リスク? 15

ペースメーカーの記録で発作性心房細動の持続時間と塞栓イベントを比較すると 16

ペースメーカーの記録で発作性心房細動の持続時間と塞栓イベントを比較すると 発作性心房細動は 塞栓イベント発症率が低い 発作性心房細動の持続時間と塞栓イベント ( ペースメーカー記録ベース ) 100 99 脳梗塞回避率 (%) 98 97 96 n=725 心房細動なし または持続時間が 1 日未満 1 日以上持続する心房細動 Log-Rank test p=0.03 95 0 6 12 18 24 30 36 追跡期間 ( 月 ) Capucci A, et al. J Am Coll Cardiol. 2005; 46: 1913-1920. 17

しかし 通常の診療では 2日以上持続する心房細動が あっても 発見しきれない 問診 心電図で判定された 発作性 持続性性心房細動患者数 ペースメーカー記録による再発 100 80 患 者 数 通常の診療で見逃された 2日以上持続する心房細動患者数 25 20 p<0.0001 患 者 数 60 40 ペースメーカー記録で発見された 48時間以上持続する無症候性心房細動 15 10 患者申告 ルーチン心電図による再発 20 0 ベース 1 ライン 5 3 6 9 12 15 18 21 追跡期間 概算月数 24 27 0 ベース 1 ライン 3 6 9 12 15 18 21 24 27 30 33 36 追跡期間 概算月数 Israel CW, et al. J Am Coll Cardiol. 2004; 43: 47-52. 18

そこで 医師の診断 による発作性心房細動患者と持続性心房細動患者の脳梗塞発症率を比較してみると 19

そこで 医師の診断 による 発作性心房細動患者と持続性心房細動患者の脳梗塞発症率を 比較してみると 両者で差が認められなかった 発作性心房細動患者と持続性心房細動患者の脳梗塞発症率 ACTIVE W trial 4 累 積 発 症 率 % 3 持続性心房細動 2 発作性心房細動 1 0 0 有リスク患者数 発作性 1,119 5,499 持続性 0.5 1.0 1,121 5,264 862 4,006 1.5 年 304 1,560 Hohnloser SH, et al. J Am Coll Cardiol. 2007; 50: 2156-2161. 20

発作性の心房細動患者も 持続性の心房細動患者と 同様の予防策が必要 Copyright Copyright 2013 2013 CareNet,Inc. All All rights rights reserved. 21

抗凝固療法を抗血小板薬で代替できるか? アスピリンで 代替可能か? 22

ワルファリンと抗血小板薬による脳卒中予防効果を比較したメタ解析結果では 23

ワルファリンと抗血小板薬による脳卒中予防効果を比較したメタ解析結果では 37% ワルファリンが勝っていた 脳卒中予防効果 : ワルファリン vs. 抗血小板薬 試験名 ( 報告年 ) AFASAK I(1989 1990) AFASAK II(1998) Chinese ATAFS(2006) EAFT(1993) PATAF(1999) SPAF II(1994) 年齢 75 歳年齢 >75 歳 Aspirin trials SIFA(1997) ACTIVE-W(2006) NASPEAF(2004) 全試験 相対リスク減少率 (95%CI) 100% 50% 0-50% -100% ワルファリンがよい 抗血小板薬がよい Hart RG, et al. Ann Intern Med. 2007; 146: 857-867. 24

そして わが国の研究で アスピリンには心房細動患者の脳梗塞発症を減少させる作用が認められず 逆に出血性事故を増やす可能性があることも示された (JAST 研究 ) 100 イベント回避率 (%) 90 アスピリン群 無投与群 p=0.26 80 0 400 800 1,200 1,600 追跡期間 ( 日 ) Sato H, et al. Stroke. 2006; 37: 447-451. 25

さらに 新規抗凝固薬アピキサバンは アスピリンとの直接比較試験において 大出血リスクに差がなく 脳卒中発症抑制効果が高いことが示された (AVERROES 試験 ) 脳卒中または全身性塞栓症 1.0 0.05 大出血 1.0 0.030 累積ハザード 0.8 0.8 0.4 0.04 0.03 0.02 0.01 アスピリン アピキサンバン 累積ハザード 0.8 0.8 0.4 0.015 0.010 0.005 アピキサンバン アスピリン 0.2 0.00 0.000 0 3 6 9 12 18 0.2 0 3 6 9 12 18 0.0 0.0 0 3 6 9 12 18 ( 月 ) 0 3 6 9 12 18 ( 月 ) アスピリンアピキサバン 2791 2808 2716 2758 2530 2566 2112 2125 1543 1522 628 615 アスピリン 2791 アピキサバン 2808 2738 2759 2557 2566 2140 2120 1571 1521 642 622 Connolly SJ, et al. N Engl J Med. 2011; 364: 806-817. 26

心房細動患者における脳梗塞発症予防は抗血小板薬ではなく抗凝固薬で実施しなければならない Copyright Copyright 2013 2013 CareNet,Inc. All All rights rights reserved. 27

第 2 章まとめ 発作性 持続性を問わず心房細動があれば 脳梗塞発症予防を考慮しなければならない 脳梗塞発症予防には 抗凝固療法を行う Copyright Copyright 2013 2013 CareNet,Inc. All All rights rights reserved. 28

次回は抗凝固療法のスタンダード ガイドライン リスク評価 抗凝固薬 29