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訪問先 :Mission Neighborfood Health Center(MNHC) 講師 :Dr. Neal Sheran 内容 : ラテン系コミュニティーにおける公立 HIV 診療所の取り組みに関する講話 訪問先 :Mission Neighborfood Health Center 内容 :MNHCにおける他職種 HIV 対策チームミーティングの見学 11 月 9 日 内容 :HIVケアにおける行動変容に関する講義と HIV 外来センターの見学 内容 : 第 1 週のまとめ テーマの進捗状況確認 米国の医療保険制度についての説明とディスカッション 11 月 12 日 ファシリテーター :Mr. David Wiesner 内容 : ドキュメントタリー映画 運命の瞬間/ そしてエイズは蔓延した.And the Band Played On 視聴, Mr. David Wiesner 内容 :HIV 陽性患者さんとの対話 11 月 13 日 訪問先 :Bridge HIV (San Francisco Department of Public Health) 講師 :Dr. Hyman Scott 内容 : 暴露前予防 PrEPに関する講義 訪問先 :San Francisco Community Health Center 内容 : アジア太平洋系コミュニティーにおける様々な取り組みやトランスジェンダー支援などの紹介 11 月 14 日 講師 :Dr. Annie Luetkemeyer (ZSFG, UCSF) 内容 :HIV Grand Rounds,HIV 合併 C 型肝炎の治療と現状についての講義 訪問先 :San Francisco Department of Public Health 講師 :Dr. Barry Zevin 内容 : 薬物依存 ホームレス トランスジェンダーなどのポピュレーションに対するHIVケアに関する講義 訪問先 : カストロストリートファシリテーター :Mr. David Wiesner, およびコミュニティーセンター職員の方内容 :LGBTQが集まる街の様子や 薬局 支援 NPOなどの見学 11 月 15 日 訪問先 :Dr. Howard Edelstein 宅講師 :Dr. Howard Edelstein (Chief of Adult Highland Immunology Clinic)

内容 :HIV 診療 ケア 予防などに関する講話 ディスカッション 講師 :Ms. Julie Russell (Doctor of Pharmacology) 内容 : 公立サンフランシスコ総合病院における院内薬局の見学 11 月 16 日 内容 : 研修のまとめ 各自テーマに基づいた発表とディスカッション 訪問先 :Dr. Mitchell D. Feldman 宅内容 : 研修の総括 修了証授与 4 研修の成果 感想今回の研修ではサンフランシスコ市を中心に実に様々な場に訪問させていただき 職種を超えて多くの方々の貴重な話を聴き 見て 感じることができた 研修中の歩数計カウントでは34 万歩に及んだ サンフランシスコは自由と寛容を特徴とする都市であり 移民の流入も多く 街の文化は多様性に溢れている 過去には偏見との闘いが繰り返されたが 当事者の人々の努力もあって 現在ではHIV 陽性者やLGBTのような性的マイノリティとされる人々も広く受け入れられている 偏見 差別が少なくなっており 日本とは環境が大きく異なっている 歴史的にはサンフランシスコは世界で初めてHIVが流行した都市の一つであり HIV 感染症が原因不明の死に直結する病であった当初から爆発的な感染拡大への対応に挑み 乗り越え続けてきた自負と気概が根底に感じられた HIV 流行の悲劇と歴史 心理 社会面を含めた複雑なHIVケアの経験に基づく積極的な情報発信により 例えばインフォームドコンセントの在り方など 日本を含め世界における保健医療全体の質の改善にも繋がってきたものと思われる HIV 感染は特別なものでなく 市内ではHIV 検査が毎年の定期検診の一項目として また事あるごとにオプトアウト方式で実施され HIV 感染の告知と同日から各職による支援と内服治療が始まる (RAPIDプログラム) 偏見が少ないからこそ可能な方策と思われるが 近年提唱されている 予防としての治療 (Treatment as prevention; TasP U = U; Undetectable = Untransmittable) や通院継続に繋げるといった観点から とても理に適っていると考えられる 各診療所では最新の抗ウイルス治療や情報提供が行われ 精神面や性的指向 パートナーへの配慮もきめ細やかになされており 受け入れ拒否などはあり得ないとのことであった 臨床薬剤師が各職と連携して非常に重要な役を担っていたことも特徴的であった また 定期検査を条件とした暴露前予防内服 (PrEP) も積極的に実施され 新規感染者数の低下に繋がり非常に功を奏していたが 期せずしてコンドーム着用率の低下や他のSTIの増加が問題となっている可能性も言及された さらに治癒が可能となったC 型肝炎の再感染についても問題視されつつあり HIVと合わせて定期検査や啓発が行われていた 各コミュニティーではNPOのボランティアやケースマネージャーなどが精力的に活動しており LGBT CSW 薬物乱用者などいわゆるキーポピュレーションへの啓発や検査勧誘 多職種連携によるHIVリンケージケア 通院中断者を探し拾い上げる活動 薬物依存者への支援などが各地区の特性に合わせて草の根的に実施され そこには潤沢に公的資金が投入されていた 様々なプログラムによる支援体制が整い 根付いていることに非常に驚き 感銘を受けた 日本ではこういった多職種が連携したアウトリーチ活動は十分でなく 学ぶべきことが大きい 一方で日

本と違い 不法滞在者やホームレスの増加 薬物依存やうつ病などによる通院中断 内服アドヒアランス不良などは課題として残っており またHIV 陽性者の高齢化による慢性期合併症の対応については日本や各国と同様に問題として顕在化しつつある このような困難例に対し 特にアドヒアランス向上や通院継続支援のために 鍵となるのはコミュニケーションの工夫であるということが強調された 訪問先の様々な職種の方が工夫しておられた点として Bio-Psyco-Social 支援アプローチ no judgementに ( 評価的にならず ) 生活を理解し支え続ける姿勢 (Super) Open-ended question 傾聴 モチベーションインタビューによる行動変容 そして医療ケアに携わる者自身が勇気をもって柔軟に変わろうとする姿勢などが挙げられ これらが複数の訪問先 多職種で共通して語られていたことがとても印象的であった ラテン系コミュニティーの Mission Naborfood Health Centerでは貧困層など他の公営 HIV 診療所と同様の対象 背景であるのにもかかわらず 特別な方法論やプログラムでなく 隔てなく患者さんに寄り添う姿勢 温かさ 信頼関係の構築から 患者 職員双方の極めて高い満足度と サンフランシスコ内でも突出して良好な治療成績 ( 診断率ほぼ100% ウイルス量抑制維持者 92%) を成し得ており このような基本的な姿勢がいかに重要か思い知ることができ 大変貴重な経験となった 私自身の診療や日常においても 今回学んだコミュニケーションスキルや態度をより意識して実践していきたいと思う 抗 HIV 薬が進歩し 簡便で副作用の少ない治療によって安定した長期生存が得られるようになり 世界ではHIV 流行の脅威を収束させ 更にはゼロを目指すという視点で議論がされ始めている 今回は新規 HIV 感染が減少傾向にあるサンフランシスコにおいて 様々な訪問先で 実感としてゼロを実現できそうか伺ってみたが そうなると良いが ワクチンや治療による治癒が達成できなければ難しいでしょうね という ある意味当然の返答が大半であった UCSFなどではワクチン開発や免疫療法などによる治癒への挑戦が続いており今後に期待したいが 現状で脅威を収束させていくためには UNAIDSのファーストトラック戦略に基づいたHIVケアカスケード 95-95-95( 全推定陽性者のうち86% のウイルス量を検出感度以下に維持する ) の早期達成が重要と思われる サンフランシスコでは徹底的な検査と即日治療開始 治療継続支援により 未診断のHIV 陽性者は6% に過ぎず 全推定陽性者のうちウイルス量抑制維持者は74% まで上昇しており 更にPrEP 導入により新規患者が減少している 一方 日本では迅速対応の名乗りを上げた都市はまだなく HIV 陽性者のうち未診断の人がまだ14%( 約 4000 人 ) 程度いると推測され 治療導入も比較的遅く 偏見もまだ多い 新規 HIV 陽性患者数や いわゆるいきなりエイズの例数も横ばいで明らかな減少傾向に転じていない しかし全推定陽性者のうちウイルス量抑制維持者は総じて70% にのぼるとも推定され サンフランシスコに大きく劣らない 特に治療導入後のウイルス抑制維持率はほぼ完全で誇るべきものがあり これは薬物依存や移民流入が少ないこと 真面目で几帳面な国民性 優れた保険保証制度などによる大きな 強み であると思われる これに加えて米国 サンフランシスコの積極性や迅速対応 多様性への理解と寛容 先進的な取り組みなどに習って 偏見やスティグマをなくし 各種教育 MSMなどを対象とした積極的な啓発活動 受け入れ先や検査機会の拡大 迅速な治療導入制度などが成熟すれば 95-95-95の達成によって脅威としてのHIV 流行の収束という目標を成し得るのでないだろうか 更に PrEPに関しても コストの懸念や日本文化には合いにくい面は当然あろうが 正確な情報を世間に広く発信したうえで 科学的に社会全体への意義を探り 適応 導入の是非や方法についてより真剣に議論を重ねるべきと思われる この度 貴重な研修の機会を与えて下さったエイズ予防財団の担当者各位 また研修中に大変お世話になりました 小林まさみ様 Mr.David Wiesner Dr. Feldman ほか多くの関係者すべ

ての皆様に深く感謝いたします