装置に組込可能なFTIRを実現、世界初の超小型FTIRエンジンを開発

Similar documents
「世界初、高出力半導体レーザーを8分の1の狭スペクトル幅で発振に成功」

NTTが開発した通信用レーザー技術を応用し医療用光源を新たに製品化

MEMS-FPI 分光センサ C14273 MEMS-FPI チューナブルフィルタと受光素子を一体化した近赤外用の超小型分光センサ MEMS-FPI 分光センサ C14273 は 印加電圧により透過波長を可変できる MEMS-FPI (Fabry-Perot Interferometer: ファブリ

フロントエンド IC 付光センサ S CR S CR 各種光量の検出に適した小型 APD Si APD とプリアンプを一体化した小型光デバイスです 外乱光の影響を低減するための DC フィードバック回路を内蔵していま す また 優れたノイズ特性 周波数特性を実現しています

C12CA/C13CA シリーズ 光学的特性 項目 TM-UV/VIS-CCD TM-VIS/NIR-CCD C12CA C12CAH C13CA C13CAH 単位 感度波長範囲 2 ~ 32 ~ 1 nm 波長分解能 ( 半値幅 )* 3 max. 1 typ. * 4 max. 1* 4 ty

推奨条件 / 絶対最大定格 ( 指定のない場合は Ta=25 C) 消費電流絶対最大定格電源電圧 Icc 容量性負荷出力抵抗型名 Vcc Max. CL 電源電圧動作温度保存温度 Zo (V) 暗状態 Min. Vcc max Topr* 2 Tstg* 2 Min. Max. (ma) (pf)

富士通セミコンダクタープレスリリース 2013/04/22

フォトダイオードモジュール C10439 シリーズ 精密測光用フォトダイオードと低ノイズアンプを一体化 フォトダイオードモジュール C10439 シリーズは フォトダイオードと I/V アンプを一体化した高精度な光検出器です アナログ電圧出力のため 電圧計などで簡単に信号を観測することができます ま

特長 01 裏面入射型 S12362/S12363 シリーズは 裏面入射型構造を採用したフォトダイオードアレイです 構造上デリケートなボンディングワイヤを使用せず フォトダイオードアレイの出力端子と基板電極をバンプボンディングによって直接接続しています これによって 基板の配線は基板内部に納められて

光変調型フォト IC S , S6809, S6846, S6986, S7136/-10, S10053 外乱光下でも誤動作の少ない検出が可能なフォト IC 外乱光下の光同期検出用に開発されたフォトICです フォトICチップ内にフォトダイオード プリアンプ コンパレータ 発振回路 LE

Microsoft PowerPoint - machida0206

放射線検出モジュール C12137 シリーズ 高精度で小型の高感度放射線検出モジュール C12137シリーズは シンチレータとMPPC (Multi-Pixel Photon Counter) を内蔵した 137 Cs ( セシウム137) などからのγ 線検出を目的とするモジュールです 入射したγ

p ss_kpic1094j03.indd

富士時報 第82巻第5号(2009年9月)

Pick-up プロダクツ 短波近赤外 (SWIR) 波長帯域における画像応用 株式会社ブルービジョン 当社は プリズムによる分光を用いた 400nm から 1,600nm の特殊波長カメラならびに専用レンズの製造販売を行っている 本稿では 900 2,500nm である SWIR 波長帯域 ( 短

電気的特性 (Ta=25 C) 項目 記号 Min. Typ. Max. 単位 電源電圧 Vdd V 電源電流 Ivdd ma サンプルホールド電圧 1 Vref V サンプルホールド電流 1 Iref ma サンプルホールド電

ここまで進化した! 外観検査システムの今 表 2 2 焦点ラインスキャンカメラ製品仕様 項目 仕 様 ラインセンサ 4K ラインセンサ 2 光学系 ビームスプリッター (F2.8) ピクセルサイズ 7μm 7μm, 4096 pixels 波長帯域 400nm ~ 900nm 感度 可視光 : 量子

偏光板 波長板 円偏光板総合カタログ 偏光板 シリーズ 波長板 シリーズ 自社製高機能フィルムをガラスで挟み接着した光学フィルター

ミニ分光器 マイクロシリーズ C12666MA MEMS 技術とイメージセンサ技術を融合した指先大の超小型分光器ヘッド C12666MAは MEMS 技術とイメージセンサ技術を用いて実現した超小型 ( 指先大 ) の分光器ヘッドです 新設計の光学系を採用することにより従来品のミニ分光器 MSシリーズ

フォト IC ダイオード S SB S CT 視感度に近い分光感度特性 視感度特性に近い分光感度特性をもったフォトICダイオードです チップ上には2つの受光部があり 1つは信号検出用受光部 もう1つは近赤外域にのみ感度をもつ補正用受光部になっています 電流アンプ回路中で2

Nov 11

Pick-up プロダクツ プリズム分光方式ラインセンサカメラ用専用レンズとその応用 株式会社ブルービジョン 当社は プリズムを使用した 3CMOS/3CCD/4CMOS/4CCD ラインセンサカメラ用に最適設計した FA 用レンズを設計 製造する専門メーカである 当社のレンズシリーズはプリズムにて

<4D F736F F D208CF595A890AB F C1985F8BB389C88F CF58C9F8F6F8AED2E646F63>

絶対最大定格 (T a =25 ) 項目記号定格単位 入力電圧 V IN 消費電力 P D (7805~7810) 35 (7812~7815) 35 (7818~7824) 40 TO-220F 16(T C 70 ) TO (T C 25 ) 1(Ta=25 ) V W 接合部温度

Microsoft Word - 仕様書:プレートリーダー (H )

ACモーター入門編 サンプルテキスト

等価回路図 絶対最大定格 (T a = 25ºC) 項目記号定格単位 入力電圧 1 V IN 15 V 入力電圧 2 V STB GND-0.3~V IN+0.3 V 出力電圧 V GND-0.3~V IN+0.3 V 出力電流 I 120 ma 許容損失 P D 200 mw 動作温度範囲 T o

化学結合が推定できる表面分析 X線光電子分光法

FT-IRにおけるATR測定法

ANJ-0005: 加速度センサーとは?

CMOS リニアイメージセンサ用駆動回路 C CMOS リニアイメージセンサ S 等用 C は当社製 CMOSリニアイメージセンサ S 等用に開発された駆動回路です USB 2.0インターフェースを用いて C と PCを接続

Microsoft Word - QEX_2014_feb.doc

ミニ分光器 TF シリーズ C13555MA 小型 薄型 高感度 CMOS イメージセンサ搭載 ミニ分光器 TFシリーズは 光学素子とイメージセンサと駆動回路を小型 薄型の筐体にまとめた分光器 ( ポリクロメータ ) です 測定光を光ファイバ経由で入光し 分光結果をUSB 接続でPCに取り込むことに

<4D F736F F D20838C A838B8A54944F8C9F93A28E64976C8F F76322E646F63>

高分子劣化/変色のメカニズムとその対策

スライド 0

平成 28 年 10 月 25 日 報道機関各位 東北大学大学院工学研究科 熱ふく射スペクトル制御に基づく高効率な太陽熱光起電力発電システムを開発 世界トップレベルの発電効率を達成 概要 東北大学大学院工学研究科の湯上浩雄 ( 機械機能創成専攻教授 ) 清水信 ( 同専攻助教 ) および小桧山朝華

Microsoft Word - MARSHAL-PressRelease_IRIE

Press Release                                   2011年1月25日

NJM78L00S 3 端子正定電圧電源 概要 NJM78L00S は Io=100mA の 3 端子正定電圧電源です 既存の NJM78L00 と比較し 出力電圧精度の向上 動作温度範囲の拡大 セラミックコンデンサ対応および 3.3V の出力電圧もラインアップしました 外形図 特長 出力電流 10

<4D F736F F D2091AA92E895FB964082C982C282A282C45F >

ベースライトのスタンダード 色を自然に引き立てる Ra95 スタンダードタイプも光束維持率を向上 HIDタイプは約 6 万時間のロングライフ 1

ミニ分光器 MS シリーズ C10988MA-01 C11708MA MEMS 技術とイメージセンサ技術を融合した超小型のミニ分光器 ミニ分光器 MSシリーズは MEMS 技術とイメージセンサ技術を融合し 親指大の超小型サイズ ( mm) を実現したモバイル測定機器組み込み用

The world leader in serving science OMNIC ユーザーライブラリベーシックマニュアル サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社

シャープ100年史:第7章

空間光変調器を用いた擬似振幅変調ホログラムによる光の空間モード変換 1. 研究目的 宮本研究室北谷拓磨 本研究は 中心に近づく程回折効率が小さくなるホログラムを作製し 空間光変調器 (spatial light modulator SLM) を用いて 1 次のラゲールガウスビーム (LG ビーム )

NJM78L00 3 端子正定電圧電源 概要高利得誤差増幅器, 温度補償回路, 定電圧ダイオードなどにより構成され, さらに内部に電流制限回路, 熱暴走に対する保護回路を有する, 高性能安定化電源用素子で, ツェナーダイオード / 抵抗の組合せ回路に比べ出力インピーダンスが改良され, 無効電流が小さ

Microsoft PowerPoint - 電装研_2波長赤外線センサを用いた2波長融合処理について

Crystals( 光学結晶 ) 価格表 台形状プリズム (ATR 用 ) (\, 税別 ) 長さ x 幅 x 厚み KRS-5 Ge ZnSe (mm) 再研磨 x 20 x 1 62,400 67,200 40,000 58,000

電気的特性 (Ta=25 C) 項目 記号 条件 Min. Typ. Max. 単位 読み出し周波数 * 3 fop khz ラインレート * Hz 変換ゲイン Gc ゲイン =2-5 - e-/adu トリガ出力電圧 Highレベル Vdd V -

Microsoft Word - note02.doc

国土技術政策総合研究所 研究資料

平成 28 年 6 月 3 日 報道機関各位 東京工業大学広報センター長 岡田 清 カラー画像と近赤外線画像を同時に撮影可能なイメージングシステムを開発 - 次世代画像センシングに向けオリンパスと共同開発 - 要点 可視光と近赤外光を同時に撮像可能な撮像素子の開発 撮像データをリアルタイムで処理する

PowerPoint プレゼンテーション

CCD リニアイメージセンサ S11491 近赤外高感度 高速ラインレート 近赤外域で高感度を実現した裏面入射型 CCD リニアイメージセンサです マルチポート読み出し (1 ポート当たり 25 MHz max.) により 70 khz の高速ラインレートを実現しました 特長 用途 近赤外高感度 Q

(Microsoft Word - \216\374\224g\220\224\212g\222\243\203A\203_\203v\203^QEX.doc)

MIR シリーズの概要 MlRシリーズは受光面積 2.2mmX2.2mm の高感度赤外線サ-モパイルです サ-モパイルは 半導体製造技術により 100 対の熱電対を受光部に集積したものです サ-モパイルは 熱起電力型素子ですので バイアス電圧や 内蔵トランジスタ用電源といったものを必要と致しません


Layout 1

2 色式熱画像カメラシステム Thermera の二色温度計測原理 二色温度測定法 レシオ温度測定法 または比温度測定法 1

最新保全技術 ジェイ パワーシステムズ 先月号の総論では 光ファイバを用いたセンシング技術全般について説明しているが ここでは Raman 散乱光の原理を応用した分布型温度センサ (ROTDR) について詳しく説明する こ の ROTDR は DTS(Distributed Temperature

Microsoft Word - 【変換アダプタ】400-VGA007_008.doc

USB

Microsoft Word - Aセンサプレスリリース原稿 _校正2__FD改.doc

indd

ochem2_30

株式会社イマダロードセル LMU/LU/ZD シリーズ ロードセル LMU/LU/ZD シリーズ 小型 軽量で狭いスペースにも対応 センサー両端にねじ留め可能で 設備への組み込み サンプルの固定が容易 表示器 ZT シリーズと組み合わせて使用します P.3 をご参照ください 型式 超小型 :LMU

<4D F736F F F696E74202D C834E D836A834E83588DDE97BF955D89BF8B5A8F F196DA2E >


NJM78M00 3 端子正定電圧電源 概要 NJM78M00 シリーズは,NJM78L00 シリーズを更に高性能化した安定化電源用 ICです 出力電流が 500mA と大きいので, 余裕ある回路設計が可能になります 用途はテレビ, ステレオ, 等の民生用機器から通信機, 測定器等の工業用電子機器迄

SD32Mシリーズ 補足説明書

_AV1_FrontCover_Base

仕様書

富士通セミコンダクタープレスリリース 2009/05/19

CCD リニアイメージセンサ用駆動回路 C CCD リニアイメージセンサ (S11155/S ) 用 C は 当社製 CCDリニアイメージセンサ S11155/S 用に開発された駆動回路です S11155/S11156-

エラー動作 スピンドル動作 スピンドルエラーの計測は 通常 複数の軸にあるセンサーによって行われる これらの計測の仕組みを理解するために これらのセンサーの 1つを検討する シングル非接触式センサーは 回転する対象物がセンサー方向またはセンサー反対方向に移動する1 軸上の対象物の変位を測定する 計測

Microsoft PowerPoint - 多核NMRへの応用_提出版.pptx

20 戸井田昌宏 図 1. ラマン励起測定部の概要. 縮小レンズへ導光され, 細径平行ビームに変換され, シリンドリカルレンズにより, 後段の分光器へ導光される. 分光器はダブルモノクロメーターを用い, 分光器出射スリット部に光ファイバー導光部を設け, 光ファイバーを介して光検出器へラマン散乱光を導

TC74HC00AP/AF

untitled

TX M - / T TX M - 20 / T X Y TXMTX

5989_5672.qxd

機器仕様構造 : プラグイン構造接続方式 入出力信号 供給電源 :M3.5 ねじ端子接続 ( 締付トルク 0.8N m) NestBus RUN 接点出力 : コネクタ形ユーロ端子台 ( 適用電線サイズ :0.2~2.5mm 2 剥離長 7mm) 端子ねじ材質 : 鉄にクロメート処理ハウジング材質

線形システム応答 Linear System response

Microsoft Word - NJM7800_DSWJ.doc

スライド 1


新技術説明会 様式例

推奨端子電圧 (Ta=25 C) 電源電圧 Vdd V クロックパルス電圧 Highレベル 3 Vdd Vdd 0.25 V V() Lowレベル V スタートパルス電圧 Highレベル 3 Vdd Vdd 0.25 V V() Lowレベル V ブロ

スライド 1

2.4GHz デジタル信号式一体型モニター ワイヤレスカメラ 4 台セット 取り扱い説明書 ~ 1 ~

00_testo350カタログ貼込.indd

Microsoft PowerPoint - tpms_session_matsuura

ヘッド分離型・デジタル圧力センサ 気体用 DP5 SERIES DPH SERIES

Yamaha News Release

TITAN マルチコンタクト プローブ TITAN マルチコンタクト プローブは MPI の独自の TITAN RF プロービング技術をさらに発展させた RF/ マイクロ波デバイス特性評価用プローブです 最大 15 コンタクトまでのプロービングが可能で 各コンタクトは RF ロジック バイパス電源の

Datenblatt

LEDの光度調整について

PRT技術による距離測定VDMシリーズ


Transcription:

NEWS RELEASE 装置に組み込み可能 小型で安価な FTIR を実現する世界初 MEMS 技術で指先サイズにまとめた超小型 FTIR エンジンを開発 2013 年 1 月 29 日 本社 : 浜松市中区砂山町 325-6 代表取締役社長 : 晝馬明 ( ひるまあきら ) 当社は 世界で初めて MEMS( 微小電気機械システム ) 技術で 光干渉計と赤外線検出素子の光学機構を指先サイズにまとめた 超小型 FTIR エンジン を開発しました 新たな応用の可能性を見つけるため 本エンジンを装置に組み込み可能な小型で安価なフーリエ変換型赤外分光器 ( 以下 FTIR) にまとめ 6 月から国内外の各種装置メーカーにサンプル出荷を開始 今年秋には MEMS-FTIR として製品化を予定しています なお 本開発品は 2 月 5 日 ( 火 ) から 3 日間 米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催される光学部品 装置の世界最大級の展示会 フォトニクス ウエスト (Photonics West)2013 に出展します また 本装置の開発にあたり ( 独 ) 新エネルギー 産業技術総合開発機構 (NEDO) のイノベーション助成事業を利用しました < 開発品の概要 > 超小型 FTIR エンジンは マイケルソン干渉計と赤外線検出素子の光学機構を MEMS チップにまとめたもので FTIR を小型で低価格にするものです 本開発品は 電気制御系と共に装置に組み込める筐体にまとめた FTIR で パソコンに USB 接続することで 赤外分光器としてスペクトル測定や吸光度測定が可能になります 1.1 マイクロメートル ( 以下 μm) から 1.7μm 範囲において波長分解能 10 ナノメートル ( 以下 nm) を達成しています 今後は 2μm 帯から 10μm 帯まで感度波長を伸ばし 信号雑音 (S/N) 比などの基本性能も高めていく予定です FTIR では複雑な信号処理を必要としますが 近年では 低価格なパソコンで十分な信号処理速度が得られるようになり 価格やサイズを決定する要素は 信号処理以外の部分に大きく依存するようになりました これまで FTIR は 据置き型で高価な分析装置でしたが 本技術により 自動車運転時での飲酒などの呼気判別やスーパーマーケットでのプラスティック選別 農業分野等では農作業現場でリアルタイムな成分測定が可能になるなど これまで大型プラントや研究室で行われていた測定が 身近な場所で簡易に行えるようになることが期待されます

本技術は アナログや混合信号 IC のファブレス企業であるエジプトのシリコン ウエア システムズ社 (Si-Ware Systems) と提携し MEMS 技術をライセンス契約して共同開発し たものです 入射光光ファイバ コリメートレンズ マイケルソン干渉計 固定ミラー ビームスプリッタ 赤外線検出素子可動ミラー 検出器信号端子 静電アクチュエータ アクチュエータ制御端子 MEMS- FTIR エンジンの内部構成 入射光 ビームスプリッタ 固定ミラー 赤外線検出素子 超小型 FTIR エンジン - + Si 弾性力 ( バネ ) 可動ミラー 静電気力 ( クーロン力 ) 静電アクチュエータの動作原理 静電アクチュエータ マイケルソン干渉計部の SEM 画像 * デモ機には 波長範囲の異なる検出素子に変更できるように 赤外線検出素子を FTIR エンジンの外側に接続しています 2

<FTIR の仕組み > FTIR で重要となる要素は 光干渉計 ( マイケルソン干渉計 ) 赤外光源 検出器 パソコンとなります 一般的な FTIR では 赤外光源からの光を光干渉計で干渉光信号に変換し その干渉光を測定試料に入射して 試料により吸収あるいは反射された光を検出器で電気信号にして パソコンで信号処理することで 吸収スペクトルを得ます 動作原理は以下の通りです 赤外光源より出射された赤外光は レンズにより平行光に変換され 光干渉計に入射されます 光干渉計内部では 入射された赤外光がビームスプリッタにより 2 つの光に分けられ 一方は 固定ミラーへ もう一方は 可動ミラーへ向かい 反射されてビームスプリッタに戻ってきます ビームスプリッタに戻ってきた 2 つの光は 再び 一つの光となり 出射光として試料に向かいます この出射光は 光干渉計内部の可動ミラーの位置により 変化する干渉光となっており 試料には この干渉光が照射されることになります 試料を透過あるいは反射した干渉光は 検出器で電気信号に変換され 干渉光の強度信号としてパソコンに送られます 一方 光干渉計内部の可動ミラーの位置は レーザー光を利用した変位計でモニタされ その位置情報もパソコンに送られます パソコンでは 可動ミラーの位置情報と干渉光の強度信号をフーリエ変換することで スペクトルの強度分布を得ます 赤外分光分析では 被測定光の光路に存在する大気や水蒸気等により吸収を受けるため 光源のスペクトル分布の補正の目的だけでなく 光路上の光吸収も補正するために 試料のない状態でのスペクトル分布と 試料挿入時のスペクトル分布の差分を計算して 試料のみの吸収スペクトルを分析する差スペクトル法が一般的に用いられています <MEMS-FTIR の各部構造と特長 > 本 FTIR エンジンは 光干渉計 ( マイケルソン干渉計 ) と干渉信号を検出する近赤外線検出素子 (InGaAs フォトダイオード ) がシリコン ウェハ レベル パッケージング技術により気密封じされています 一般的な FTIR とは異なり 先に赤外光源からの光を試料に照射し 試料で吸収あるいは反射された光を本 FTIR エンジンに導入して光干渉信号を得る構成です 試料への光照射が 干渉光かそうでないかの違いはありますが スペクトル測定の基本原理としてはどちらも同じです マイケルソン干渉計は 静電アクチュエータと 入射ミラー ビームスプリッタ 固定ミラー 可動ミラーの光学系で構成し 半導体リソグラフィプロセスによる MEMS 技術で形成されており 位置調整が不要で安価に作成されています 静電アクチュエータは 可動ミラーを駆動するもので 静電気力を発生させる 2 組のくし歯電極と呼ばれる平行に並んだ複数の平板と 静電気力とバランスさせて可動ミラーを任意の場所に安定させる薄く長い板で作られたバネから構成した 電気制御可能な微小機械となっています MEMS 技術の深堀りドライエッチング技術を用いて 1 枚のシリコンウェハ上にモノリシックに形成しています 本 FTIR エンジンのミラー可動距離は250μmです 本 FTIR エンジンの各光学系は 250μm に深堀りされたシリコンの側壁面を利用し コア径 200μm の光ファイバに対応した光学サイズにしています 今後は S/N 比を高めるため 500μm 程度の深さを目指しています FTIR では 干渉信号と連動した可動ミラーの位置精度が分光性能を大きく左右します 本 FTIR エンジンでは 静電アクチュエータの静電力発生部分がコンデンサと等価であるこ 3

とを利用し その静電容量値をリアルタイムに測定することで 可動ミラーの正確な変位を求めています 定期的にデータ取得することで MEMS アクチュエータを校正し 高精度な分光スペクトルを取得できます 本 FTIR エンジンの赤外線検出素子は 当社製非冷却 InGaAs フォトダイオードで 波長 0.9μm から 1.7μm に感度を持ち 低暗電流 高感度が特長です 検出波長範囲は 1.1μm から 1.7μm を保証波長範囲としています 光ファイバなどを経由せずに干渉光を直接検出することで 出力側のロスを低減しています FTIR は 回折格子型分光器と異なり 検出器に高価なイメージセンサが不要で 波長に応じた回折格子も不要です そのため 単素子の検出器を置き変えるだけで 感度波長範囲を容易に変更できます 当社には 幅広い波長域に対応した各種検出器があり 将来的には ガス分析等で有用となる 波長 2μm から 10μm の範囲に対応できる MEMS-FTIR を製品化していく予定です MEMS-FTIR は 測定時間として 50 ミリ秒から 2 秒を選択でき 測定時間を長くすることで S/N 比を良くできます 通常の測定では 500 ミリ秒または 1 秒での測定時間を採用します 赤外分光分析に不可欠な光源の開発も進めています 光源としては 高輝度な量子カスケードレーザー (QCL) や 波長範囲の広い熱型光源の 2 種類を用意し 様々なアプリケーションに対応できるようにします 今後 MEMS-FTIR と光源をセットにした赤外分光分析器として製品提供できるよう開発を進める予定です 本 FTIR エンジンは ファイバからの光を効率よくコリメートしているため 入射光用光ファイバを直接 本 FTIR エンジンに取り付けることが可能で 組立コストを低減します 光ファイバの仕様は コア径 200μm のステップインデックスタイプの石英光ファイバですが 光学サイズの改良により コア径 400μm にも対応していく予定です なお サンプルは MEMS-FTIR の可能性を探ることを目的としているため 検出器を FTIR エンジンに内蔵せずに 赤外線検出素子 (1.1μm ~1.7μm) を FTIR エンジンの外側に接続して 変更できるようにします < 用語解説 > 赤外分光法測定する物質に赤外線を照射し 透過光または反射光を回折格子などで分光することで 波長ごとの強度の分布 ( スペクトル ) を得ます 参照光から分子の振動や回転の状態遷移によって分子に吸収されたエネルギーの差を検出し 物質の分子構造や状態を知る方法です 赤外吸収スペクトルは 分子に固有の形を示すため 他の分光法に比べて感度が高く 特に有機化合物の特定に用いられます FTIR: フーリエ変換赤外分光法赤外分光法の一つで 2 光束干渉計で得た干渉信号をフーリエ変換することでスペクトルを得る方法です 回折格子を用いた分光器と比べて以下の特長があります 全波数域の信号を同時に測定できるため 高 S/N 比を実現できる 分散型分光 ( 回折格子を使用する分光 ) と比較し 同じ分解能を得るための入射瞳 ( 入射スリット ) のサイズを大きくでき 光の利用効率が高い 波数軸をレーザー光の波長安定性を利用してモニタしているため 波数の精度および再現性が高い 4

主な仕様項目 仕様 単位 感度波長範囲 1.1 ~ 1.7 μm 波長分解能 (FWHM) 10(1.7μm) nm 入力換算雑音電力 0.2 nw cm 光ファイバコア径 φ200 μm 動作温度 +5 ~ +40 保存温度 -20 ~ +70 サイズ 10( 縦 ) 10( 横 ) 3.5( 高さ ) cm 発売時期 製品予定価格 販売目標金額 本年秋頃 20 万円程度 3 年後 5 億円 / 年 開発した MEMS-FTIR の筐体内 この件に関するお問い合わせ先 報道関係の方浜松ホトニクス株式会社広報室海野賢二 430-8587 浜松市中区砂山町 325-6 日本生命浜松駅前ビル TEL053-452-2141 FAX053-456-7888 E-mail:k-unno@hq.hpk.co.jp 時間外は 携帯電話 090-4080-3501 へお願いします 一般の方浜松ホトニクス株式会社固体事業部営業推進部渥美利久 435-8558 浜松市東区市野町 1126-1 TEL053-434-3311 FAX053-434-5184 E-mail: toshi-a@ssd.hpk.co.jp 5