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12(144) 症例 FDG-PET で集積亢進を認め, 肺癌を疑われた非結核性抗酸菌症の1 例 岡田 英, 廣野達彦, 渡辺健寛 要 旨 71 歳女性.09 年の検診で胸部異常影を指摘され前医を受診した. 胸部 CT で右 S 3 の胸膜直下に1.8 cm 大の結節を認め, 気管支鏡検査では細胞診, 細菌培養ともに陰性であった.FDG-PET で同部位に SUVmax3.82 の集積を認め肺癌が疑われたため, 手術目的に当院に入院した. 手術は術中細胞診で悪性所見を認めなかったため右上葉部分切除を施行した. 切除組織の抗酸菌検査で直接塗抹陽性,Mycobacterium intracelularepcr 陽性となり非結核性抗酸菌症と診断した. 本邦では孤立性肺結節として発見され, 肺癌との鑑別が困難な非結核性抗酸菌症の報告が散見される. 多くは手術で切除され組織の抗酸菌検査から確定診断に至っている. 肺腫瘍性病変の良悪性の鑑別に有用といわれる FDG-PET は, 活動性の炎症性疾患でも集積亢進することがあり, 結果の判断には注意が必要である. 索引用語 : 非結核性抗酸菌症, 孤立性肺結節 FDG-PET,SUVmax,nontuberculousmycobacterium,solitarypulmonarynodule はじめに 症 例 我が国の非結核性抗酸菌症罹患率はこの 年で約 2 倍に上昇したと推定され 1), 一般医療機関でも診療する機会が増加している. また画像診断の向上により, 検診などで発見される症状のない症例も増加しており, 近年非結核性抗酸菌症の典型的画像所見とは異なる孤立性肺結節影を呈する症例の報告が散見される 2-6). 孤立性結節を示す肺の腫瘍性病変に対しては fluorodeoxyglucose-positron emission tomography(fdg- PET) が良悪性の鑑別に有用と報告されている. しかし良性疾患でも集積亢進を認めることもあり 7), 万能な検査法ではないとも言われている. 今回 FDG-PET 検査により肺癌が疑われ, 術後に非結核性抗酸菌症と診断された1 例を経験したので報告する. 国立病院機構西新潟中央病院呼吸器外科原稿受付 年 8 月 18 日原稿採択 年 月 4 日 症例 :71 歳, 女性. 主訴 : 胸部異常影. 既往歴 :50 歳時に急性肝炎,69 歳から不眠症, 骨粗鬆症. 家族歴 : 特記事項なし. 職歴 :58 歳まで歯科助手, その後 68 歳まで保育補助員. 現在は無職. 喫煙歴 : なし. 現病歴 :09 年の検診で胸部異常影を指摘され近医受診. 胸部 CT で右 S 3 に 1.8 cm 大の結節影を認め, 気管支鏡検査を施行されたが細胞診, 培養ともに陰性であった.FDG-PET 検査で同部位に集積亢進を認めたため肺癌が疑われ, 手術目的に12 月当院紹介となった. 入院時現症 : 身長 4.6 cm, 体重 53.5 kg, 血圧 140 /90 mmhg, 脈拍 87/min, 体温 36.5,Performance Status0. 結膜に貧血黄疸なし. 表在リンパ節腫大なし. 心音, 呼吸音異常なし. 入院時検査所見 : 血液, 生化学検査では異常を認め

PET 陽性の肺非結核性抗酸菌症の 1 例 13(145) Fig.2 Chestcomputedtomographicimagesshowed asmalnoduleintherights 3 ofthelung. Fig.1 A chestradiographshowedanabnormal shadow(arow)inthemiddleareaofthe rightside. ず, 腫瘍マーカーも正常範囲内であった. 入院時胸部 X 線写真 (Fig.1): 右中肺野に径 2.0 1.7 cm の結節影を認めた. 胸部 CT(Fig.2): 右 S 3 に径 1.8 1.6 cm の境界明瞭, 辺縁不整, 内部不均一な結節影を認めた. 周囲や他肺葉に異常陰影は認めなかった. FDG-PET 検査 (Fig.3): 右 S 3 の結節影に一致して Standardizeduptakevalue(SUV)max3.82 の集積亢進を認めた. 以上より原発性肺癌を強く疑い09 年 12 月に手術を施行した. なお FDG-PET 検査で強い集積を認め肺癌が強く疑われたこと, および腫瘍径は小さいが広く胸膜に接しており胸膜浸潤の可能性もあることから開胸手術の方針とした. 手術所見 : 後側方切開で開胸し右 S 3 胸膜に接する腫瘤を確認して穿刺細胞診を行ったところ陰性であり, 同部を自動縫合器で部分切除した. 腫瘤を切開すると黄白色の膿汁が流出し一部壊死を伴っていた. 細胞診では悪性所見は認めなかった. 術後経過 : 切除組織の抗酸菌検査で直接塗抹陽性, Mycobacterium(M.)intracelularePCR 陽性となり非 結核性抗酸菌症と診断した. 病理組織検査でも, 乾酪壊死を伴った肉芽腫性病変と抗酸菌を認め, 悪性所見は認められなかった (Fig.4). 抗菌薬の内服を開始し, 第 9 病日に退院した. 外来経過観察中であるが再発は認めていない. 考察一般に肺非結核性抗酸菌症は3つの代表的な病型に分類される 8). 上葉に好発し大きな結節影と内部の空洞形成を特徴とする結核類似型と, 中高年女性の中葉 舌区に好発し胸膜直下の小結節の集簇と潅流気管支の肥厚 拡張を特徴とする小結節 気管支拡張型, そして AIDSによる免疫不全などのため全身の諸臓器に菌が播種する全身播種型である. しかし, 周辺散布巣を伴わない境界明瞭な孤立性結節影を呈し肺癌との鑑別が困難な肺非結核性抗酸菌症が近年報告されるようになってきた.08 年の日本結核病学会による肺非結核性抗酸菌症診断に関する指針でも 臨床画像所見として結節性陰影, 小結節性陰影や分枝状陰影の散布, 均等性陰影, 空洞性陰影, 気管支または細気管支拡張所見のいずれか ( 複数可 ) を示す とし, より広範な事象に適応しうる画像基準が示された 9). これまでに我が国で報告された孤立性結節影を呈する肺非結核性抗酸菌症は, 検索し得た範囲では本症例を含めて 例であった (Table1) 2-6,8,-17). 男性 例, 女性 例, 平均年齢 67.7 歳で, 発生部位は右上葉 7 例,

14(146) (a) Fig.4 Histopathologicalexaminationoftheresected specimen demonstrated agranuloma,composedofepithelioidcelsandlanghans-type giant cels with caseous necrosis (HE staining, ). 6.8) と肺悪性腫瘍のカットオフ値とされる2.5 18) をいずれも超えていた (Table1). 肺結節性病変の良悪性鑑別における FDG-PET 検査の精度は, メタ解析によると感度 96%, 特異度 73.5% とこれまでの CT 検査単独と比較して高く 7), かつ視覚評価と SUV を用いた半定量的評価で診断能に差がないことも示され 19), 実際に肺癌と非結核性抗酸菌症の鑑別に有用だったという報告もある ). しかし原理として組織の糖代謝を利用した検査法であるため, 活動性の結核や肺膿瘍, サル (b) Fig.3 a,b,fdg-pet scan revealed FDG accumulationatthelesionoftheright lung. 左上葉 6 例, 左下葉 3 例, 右下葉と中葉が2 例ずつと上葉に多いものの一定の傾向を示さなかった. 大きさは 1.0~5.5 cm で, 平均 2.6 cm であった. 起因菌は 14 例, M.intracelulare4 例で,2 例は M. avium complex と記載されていた. 診断は喀痰や気管支鏡, 経皮肺生検によって確定できたものもあるが, 11 例は診断がつかず手術を実施し, 切除標本で非結核性抗酸菌症と診断されていた. この11 例中 6 例には術前に FDG-PET 検査が施行されており, その6 例の SUVmax は 3.8~13.2( 平均 コイドーシス,Wegener 肉芽腫といった炎症性疾患で偽陽性を示すことや,BAC や高分化腺癌, また腫瘍径の小さい肺癌では集積亢進がみられない可能性があるなど 18),FDG-PET 検査のみでは良悪性鑑別に限界があると言われている. 術前診断が困難な孤立性肺結節で肺癌が強く疑われる場合は, 全身麻酔手術がハイリスクで無ければ積極的に手術を実施し術中迅速診断を利用するのが適切と思われる. 肺非結核性抗酸菌症の外科治療の適応については, 1 排菌源または排菌源となりうる主病巣が明らかで, かつ化学療法にても排菌が停止しない, または再排菌があり, 画像上病巣の拡大または悪化傾向がみられるか予想されるもの, 排菌が停止しても空洞性病巣や気管支拡張病変が残存し, 再発再燃が危惧されるもの, 大量排菌源病巣からのシューブを繰り返し, 病勢の急速な進行があるもの,2 排菌状況にかかわらず喀血,

PET 陽性の肺非結核性抗酸菌症の 1 例 (147) Table1 SolitaryPulmonaryNodulesDuetoNontuberculousMycobacterium ReportedinJapan CasePublished Author Age/ Gender Size Location (mm) Diagnosticexamination Organism SUV 1 1993 Murata ) 75/F rt.s4 Bronchoscopy MAC 2 75/M rt.s9 40 Transcutaneouslungbiopsy Lobectomy 3 1995 Suzuki 11) 43/F lt.s5 4 1996 Matsumoto 12) 55/M lt.s1+2 Sputum,Bronchoscopy Segmentectomy 5 1998 Yokomura 13) 56/M lt.s8 25 6 00 Shimomoto 14) 79/F 0 MAC 7 00 Soma ) 73/M lt.s6 N/A 8 01 Yamazaki 16) 72/M 55 VATSsegmentectomy 9 04 Kobashi 2) 56/M rt.s5 55 04 Matsuyama 3) 70/F lt.s4 M.intracelulare 5.1 11 06 Nagai 4) 68/M rt.s2 40 Bronchoscopy 8 12 07 Inoue 6) 49/M lt.s8 Transcutaneouslungbiopsy Segmentectomy 13 66/F lt.s3 Transcutaneouslungbiopsy 14 74/F lt.s2 Transcutaneouslungbiopsy 75/F rt.s5 Transcutaneouslungbiopsy 16 75/M Transcutaneouslungbiopsy M.intracelulare 17 07 Konishi 5) 69/F lt.s1+2 6.1 18 09 Nakagawa 8) 71/F rt.s2 M.intracelulare 4.8 19 Fuji 17) 81/M 35 13.2 ourcase 71/F rt.s3 18 M.intracelulare 3.8 SUV:Standardizeduptakevalue,MAC:Mycobacterium avium complex,:notdone,n/a:notavailable. 繰り返す気道感染, アスペルギルスの混合感染例など, 370 歳以下, あるいは元気であり手術により症状改善が期待できる70 歳代,4 耐術であること,5 対側や同側他葉の散布性小結節や粒状影は必ずしも切除対象としない, とされている ). 術式に関しては, 病巣が経気道的に拡がることから区域切除以上を勧めているが, 周辺散布巣を伴わない境界明瞭な孤立性結節では肺部分切除を実施した報告が多く, また術後の予防的な化学療法は行わず経過観察のみで再発はないという報告が多い.Gribetz ら 21) も病巣を完全に切除してあれば術後化学療法は不要と報告しているが, 現時点では肺非結核性抗酸菌症に対する術式と術後化学療法についてはまだ十分なエビデンスはなく, 今後も症例の集積が必要である ). 結語 FDG-PET 陽性の孤立性肺結節に対して原発性肺癌を疑い手術したが, 非結核性抗酸菌症であった1 例を経験したので文献的考察を加えて報告した. 文献 1. 坂谷光則, 倉島篤行, 佐藤滋樹, 鈴木克洋. 肺非結核性 抗酸菌症の診断と治療. 呼吸 05;24:6-117. 2.KobashiY,YoshidaK,MiyashitaN,NikiY,Matsushima T.Pulmonary Mycobacterium avium disease with a solitarypulmonarynodulerequiringdiferentiationfrom recurenceofpulmonaryadenocarcinoma.intern Med 04;43:855-60. 3. 松山航, 山元滋樹, 大中原研一, 他. 18 F-fluorodeoxyglucose-positronemissiontomography(18FDG-PET) にて集積を認めた肺非結核性抗酸菌症の 1 例. 日呼吸会誌 04;42:970-4. 4. 永井明日香, 岩元徳全, 加藤博一, 桑平一郎. 孤立性腫瘤状陰影を呈し 18 FDG-PET にて強い集積を認めた M. avium による肺非結核性抗酸菌症の 1 例. 日内会誌 06;95:13-5. 5. 古西満, 宇野健司, 笠原敬, 他. 肺癌との鑑別を要した肺 Mycobacterium avium 感染症の 1 例. 日胸 07; 66:62-6. 6. 井上祐一, 澤井豊光, 土井誠志, 他. 肺野孤立結節影を呈した肺非結核性抗酸菌症 (NTM) の検討. 日呼吸会誌 07;45:655-60. 7.AsadS,AquinoSL,PiyavisetpatN,FischmanAJ.FalsepositiveFDG positronemissiontomographyuptakein nonmalignantchestabnormalities.am J Roentgenol 04;182:983-9. 8. 仲川奈緒子, 谷野功典, 猪腰弥生, 他.FDG-PET で集積亢進を認めた M.intracelurare 肺感染症の 1 例. 日呼吸会誌 09;47:122-7. 9. 日本結核病学会非結核性抗酸菌症対策委員会, 日本呼吸

16(148) 器学会感染症 結核学術部会. 肺非結核性抗酸菌症診断に関する指針 08 年. 結核 08;83:525-6.. 村田嘉彦, 草島健二, 大石不二雄, 他. 肺に孤立性結節影を呈した complex 感染症の 2 例. 日胸疾会誌 1993;31:1313-6. 11. 鈴木克洋, 橋本徹, 田中栄作, 他. 左下肺野に孤立性結節影で発見され肺癌が疑われた肺 Mycobacterium avium Complex 症の 1 手術例. 結核 1995;70:25-9. 12. 松本博之, 辻忠克, 高橋啓, 他. 孤立性結節影を呈した Mycobacterium avium complex 症の 1 手術例. 日胸 1996;55:945-9. 13. 横村光司, 安田和雅, 佐藤雅樹, 千田金吾. 肺野末梢に孤立結節影を呈した Mycobacterium avium による一次型肺非定型抗酸菌症の 1 例. 感染症誌 1998;72:4-3. 14. 下元博史, 藤井滋樹, 山内晶司, 中塩達明, 森良雄. 孤立性結節影を呈した Mycobacterium avium complex 症の 1 例. 日胸 00;59:62-5.. 杣知行, 竹田雄一郎, 田辺正樹, 他. 肺多発性病変の診断に 18 F-fluorodeoxyglucose-positronemissiontomography が有用であった 1 症例. 日呼吸会誌 00;38:854-9. 16. 山崎泰宏, 松本博之, 小笠寿之, 他. 急速に増大する腫瘤影を呈した Mycobacterium avium 肺感染症の 1 例. 日呼吸会誌 01;39:1-5. 17. 藤井まりえ, 河野匡, 藤森賢, 吉屋智晴.FDG-PET で SUVmax が高値を示し, 臨床病期 IV 期肺癌との鑑別を要した非結核性抗酸菌症の 1 例. 日呼外会誌 ; 24:753-8. 18.PortJL,AndradeRS,LevinMA,etal.Positronemission tomographicscanninginthediagnosisandstagingof non-smalcellungcancer2cm insizeorless.jthorac CardiovascSurg05;1:1611-5. 19.Gould MK,Maclean CC,KuschnerWG,Rydzak CE, OwensDK.Accuracyofpositronemissiontomography fordiagnosisofpulmonarynodulesandmasslesions:a meta-analysis.jama01;285:914-24.. 日本結核病学会非結核性抗酸菌症対策委員会. 肺非結核性抗酸菌症に対する外科治療の指針. 結核 08;83: 527-8. 21.Gribetz AR,DamskerB,Botone EJ,KirschnerPA, TeirsteinAS.Solitarypulmonarynodulesduetonontuberculousmycobacterialinfection.Am JMed1981;70:39-43. A caseofnontuberculousmycobacterialpulmonaryinfection showingintenseuptakeonfluorodeoxyglucose-positron emissiontomography AkiraOkada,TatsuhikoHirono,TakehiroWatanabe DepartmentofThoracicSurgery,NationalHospitalOrganizationNishi-N igatachuonationalhospital A 71-year-oldwomanconsultedadoctorbecauseofanabnormalshadow oftherightlungfoundonachest radiograph taken during amedicalcheck.computed tomographyrevealed a1.8-cm nodulein therights 3. Bronchoscopy yielded no specific histologicalor bacterialfindings.fluorodeoxyglucose-positron emission tomography(fdg-pet)showedapositiveuptakeatthelesionsite,witha3.82maximum standardizeduptakevalue. Shewasreferedtoourhospitalfortreatmentofthetumor,withthepossibilityoflungcancer.Sinceatumorneedle biopsybythoracotomyrevealednomalignancy,wedgeresectionofthes 3 wasundertaken.thehistopathological examinationoftheresectedspecimenrevealedanepithelioidgranulomawithcaseousnecrosis.acid-fastbaciliwere detectedinasmearofpus,andmycobacterium intracelularewasidentifiedbythepolymerasechainreactionmethod. Shewasdischargedonthe9 th dayaftersurgerywithanti-tuberculousagents,andhasexperiencednorecurence.a solitarypulmonarynodulecausedbym.intracelulareisrare,anditshouldbeconsideredinthediferentialdiagnosis oflungcancer,evenwithuptakeonfdg-pet.