研究論文 01646 013 * - 噴射圧力が熱流束に及ぼす影響 - 巽 健 ) 前田 篤志 ) 宮田 哲次 ) 小橋 好充 ) 桑原 一成 松村 恵理子 千田 二郎 A Study on the Wall Heat Loss from Diesel Spray Flame -Effects of Injection Pressure on the Heat Flux- Takeshi Tatsumi Shigeyuki Maeda Satoshi Miyata Yoshimitsu Kobashi Kazunari Kuwahara Eriko Matsumura Jiro Senda Diesel engines have a high thermal efficiency, but 0-30% of the input heat quantity is lost as the cooling loss. It is important to investigate the mechanism of wall heat transfer with impinging flame on the wall in improving the thermal efficiency. Therefore, in order to investigate the correlation of diesel flame and the wall heat loss, chemiluminescence photography, luminous flame photography and measurement of heat flux were carried out by using a wall insertion type constant volume vessel. KEY WORDS: Heat Engine, Compression Ignition Engine, Spray Combustion, Flame Characteristics, Lower Heat Loss (A1). 緒 言 近年, 燃費規制の厳格化が進められており, 内燃機関には更なる熱効率向上が求められている (1). ディーゼル機関は % 程度の熱効率を有しており, 最大熱効率 50% を達成する燃焼技術の開発が進められている. 熱勘定の内, 冷却損失は 3 割程度と大きな割合を占めているため, 冷却損失の低減は重要である (). 冷却損失低減に向けて現在多段噴射を用いて時空間的に火炎を制御する方法や遮熱膜を用いて壁面温度を制御する方法など様々な方法が提案されている (3). ディーゼル機関における壁面熱損失は対流熱伝達の原理を基礎としているため, 噴霧火炎の衝突により壁面付近の温度場や流れ場が大きく変化し壁面への熱伝達に寄与する. 対流熱伝達による熱損失量はニュートンの冷却則に従い, 熱伝達率, 火炎温度, 壁面温度, 火炎の接触面積および接触時間の物理因子により決定される. しかしながら, 噴霧燃焼において各物理因子間にはトレードオフの関係があるため, 熱損失の低減は困難である. 熱損失を低減するためには, 各物理因子と噴射条件およびノズル諸元等の制御パラメータの相関を詳細に把握する必要がある. そこで, 本研究では実機において適用される条件の内, 噴 *016 年 6 月 1 日受理.016 年 5 月 7 日自動車技術会春季学術講演会において発表. 1) ) 3) 同志社大学大学院 (610-0394 京都府京田辺市多々羅都谷 1-3) 4) 北海道大学 (060-868 札幌市北区北 13 条西 8) 5) 大阪工業大学 (5-8585 大阪府大阪市旭区大宮 5-16-1) 6) 7) 同志社大学 (610-0394 京都府京田辺市多々羅都谷 1-3) 射圧力について着目してパラメータスタディを行なった. そして, 衝突噴霧火炎による熱損失のメカニズムを解明し, 制御パラメータおよび火炎における物理因子の相関性の把握を試みた. これまで急速圧縮膨張装置にて噴射圧力が熱流束に及ぼす影響は調査されているが (4), 壁面挿入型定容燃焼容器にて高圧噴射の熱流束計測を行なった例はない. そこで本実験では衝突噴霧火炎による熱損失に着目し, 壁面挿入型定容燃焼容器を用いて熱流束を計測した. また, 化学種自発光計測および輝炎の同時撮影, 画像相関法および二色法温度解析により, 壁面近傍における噴霧火炎の流動および温度を計測した.. 実験装置および実験条件 実験装置および実験方法本実験では高温 高圧のディーゼル雰囲気場における噴霧火炎の壁面衝突を模擬できる壁面挿入型定容燃焼容器を用い Timing control unit Common rail system Injector Pressure Spark plug transducer Wall-insert type PC constant volume vessel Amp. Mixer Coaxial Pressure indicator thermocouple Vacuum pump Heating medium Data logger Mixed Heating gas tank Amp. tank Pressure pick up Oil pump C H O N Mixer Fig.1 Experimental setup Vol.47,No.6,November 016. 191
た. 図 1 に実験装置の概略図を示す. 本実験における実験装 置は壁面挿入型定容燃焼容器, 可燃混合気を作製する混合容器, 燃料噴射装置および制御装置, 壁面加熱装置により構成される. まず, 混合容器内においてアセチレン, 酸素および窒素を組成とする可燃予混合気を作製し, 定容燃焼容器内に充填した. その後, スパークプラグを用いて可燃予混合気を点火 燃焼させ雰囲気場を高温 高圧にし, 雰囲気圧力が任意の圧力まで低下した際に燃料を噴射した. なお, 定容燃焼容器には雰囲気場を均一にするため, 攪拌機を設置した. また, 燃料噴射装置にはコモンレール式燃料噴射装置 (DENSO: HP-7 システム ) を用いて, 単噴孔ホールノズル (DENSO:G3P インジェクタ ) により燃料を噴射した. 噴霧火炎の壁面衝突を観測するために, ノズル直下にアルミ壁面 (A017) を挿入した. アルミ壁面を加熱するために, ヒータを用いて加熱した熱媒体 (Soken Tecnix:NeoSK-OIL 330) を壁面内部に循環させた. 定容燃焼容器内の圧力測定には圧力センサ (KISTLER:615C) を用い, チャージアンプ (KISTLER:type5011) を介してデータロガー (GRAPHTEC:GL900) により取得した圧力データを PC に取り込んだ. なお, データロガーのサンプリング間隔は 10µs であり, アルミ壁面の表面粗さ (Ra) は 1.6µm である. 熱流束の測定手法熱流束の計測には同軸型熱電対 (Medtherm:11443) を用いた. 同軸型熱電対の構成は壁面と同一材料であるアルミを母材とし, 熱電対の頂面および頂面から 3.9mm 下方の底面にはクロメルおよびアルメルからなる K 型熱電対を埋め込み接点を形成している. それぞれの冷接点からの起電力をデータロガー (GRAPHTEC:GL900) により取り込み, 冷接点補償を行ないそれぞれの温度を計測した. 本実験における熱流束の算出では熱電対頂面と底面の間の熱流れを一次元と仮定し, 陽解法により非定常一次元熱伝導解析を行なっている (5). 非定常一次元熱伝導の基礎式はフーリエの一次元熱伝導微分方程式から次式で求められる. T T T (1) x c. x p 熱電対の頂面から底面までを n 分割し, 頂面を i=0, 底面を i=n として, 式から前進差分形差分式を用いると次式が導かれる. Tik (, 1) Tik (, ) xti ( 1, k) Ti ( 1, k) Tik (, ) () なお, 収束条件は次式となる. xa 1 ( x) (3) ここで,i は深さ方向の刻み,k は時間方向の刻みを示しており,T(i,k) は時刻 k における深さ i の温度を示している. また,α は熱拡散率であり,Δx および Δt はそれぞれ刻み方向と時間方向の分割幅となっている. 境界条件として i=0 および n における温度に熱電対の頂面および底面における計測温度を 与えている. 熱流束の算出には以下の階差式を使用した. ( ) q k ht T flame wall xt(0, k1) T(0, k) T(0, k) T(1, k) Cp (4) x ここで,λ は熱伝導率,CP は比熱,ρ は密度を示している. また, 図 に示すように熱電対を壁面にノズル直下から半径方向へ 10mm ごとに直線上に埋め込んだ.Point1 は最も中心の測定点を示し,Point4 は最も外縁の測定点を示す. 各測定点から算定した熱流束を壁面中心に対して同心円状に面積 時間積分することで熱損失量を算定した. 面積積分において Point1 は 0-5mm,Point は 5-15mm,Point3 は 15-5mm, Point4 は 5-mm の同心円を代表させて測定した熱流束を積分している. 化学種自発光計測および輝炎同時撮影における光学系図 3 に化学種自発光計測および輝炎の同時撮影で用いた光学系の概略図を示す. 噴霧燃焼の非定常性を考慮して同時撮影を行なうために, ダイクロイックミラーを用いて定容燃焼容器内の火炎からの発光を波長 30nm で分光を行なった. 化学種自発光計測では, 高温酸化反応において観察される中間生成物の OH ラジカルからの自発光を撮影した. ダイクロイックミラーの反射光を透過中心波長 309nm, 半値幅 8.98nm のバンドパスフィルタを介してイメージインテンシファイアユニット (Hamamatsu Photonics:C10880-03) を取り付けたハイスピードカメラ (Phantom:V011) により撮影を行なった. 輝炎の撮影ではダイクロイックミラーの透過光をカラーハイスピードビデオカメラ (Phantom:V511C) により撮影を行なった. 30mm 0mm 10mm P4 P3 P P1 Fig. Sensor position of coaxial thermocouple Luminous flame photography Color high speed video camera UV/IR cut filter Dichroic mirror(30nm) Chemiluminesce photography Bandpass filter OH radical (309nm) Image intensifier with image booster High speed video camera Constant volume combustion vessel Fig.3 Optical setup for chemiluminescense photography and luminous flame photography 19 自動車技術会論文集
また, 次章で述べる二色法温度解析における温度計測上の誤差を減らすため,UV/IR カットフィルタを使用し波長 650nm 以上の発光を除いた. なお, 両カメラの撮影速度は 6015fps とし, ハイスピードカメラおよびカラーハイスピードカメラの露光時間はそれぞれ 8µs および 1µs とした. 実験条件表 に実験条件を示す. 本実験では実機における高負荷運転時を想定し実験条件を設定した. 供試燃料には軽油の代替燃料であるノルマルトリデカン (nc13) を使用した. 雰囲気条件は実機における高負荷運転時のシリンダ内を想定し, 雰囲気圧力 (Pa) は 7MPa, 雰囲気密度 (ρa) は 7.8kg/ m3, 雰囲気温度 (Ta) は 1050K とし, 雰囲気酸素濃度 (XO) は 1mol.% とした. 壁面温度 (Tw) は実機におけるピストンの表面温度を想定し 473K とし, ノズル先端から壁面までの距離 (Zw) は mm とした. また, 燃料温度 (Tf) は 0K とした. 本実験では噴射圧力 (Pinj) を変更した際の衝突噴霧火炎における熱損失量の変化を把握するために,Pinj を 50MPa から 00MPa まで 50MPa ずつ変更した. 燃料噴射量 (Qf) は 5.3mg とし, 噴孔径 (dn) が 0.13mm の単噴孔ホールノズルにより噴射した.. 解析手法 画像相関法本実験では火炎の濃度により変化する輝度むらをとらえ, 画像相関法を用いて解析した. 画像相関法とは微小時間差を持つ二画像の輝度むらから任意の探査領域内の相互相関係数を求め, その値が極大となる位置からその微小時間内における対象の移動量を知るものである. ある時間 t における撮影画像の位置 (R,Z) での画像濃度を I(R,Z), その微小時間後 t+δt の撮影画像の位置 (R,Z) での画像濃度を I (R,Z) とすれば, 座標 (R,Z) を中心とする時間 t の処理領域とその微小時間後 t+δt の処理領域との相互相関係数 S(ζ,η) は次式となる. I II I RZ, R, Z S, (5) 1/ 1/ I, I I, I RZ R Z ここで,ζ および η はそれぞれ微小時間内における,R および Table 1 Experimental conditions Test fuel nc13 Ambient pressure Ambient density P a [MPa] ρ [kg/m 3 a ] 7.0 7.8 Ambient temperature T a [K] 1050 O concentration Wall temperature X O [mol.%] T w [K] 1 473 Impingement distance Z w [mm] Injection heat quantity Fuel temperature Q f [mg] T f [K] 5.3 0 Injection pressure P inj [MPa] 50,100,150,00 Injection nozzle diameter d n [mm] 0.13 Injection nozzle configuration l n /d n [-] 6.5 Injection equipment Single hole nozzle Rate of heat release [J/ ms] Z 方向の移動量である.Ī および Ī はそれぞれの時間における座標 (R,Z) および (R+ζ,Z+η) を中心とする処理領域内の空間濃度平均,[ ] は処理領域の総和を示す. 解析には PIV 解析ソフトウェア ( 西華産業 :KoncertoⅡ) を使用し, 直接相関法を用いた. なお, 検査領域は 3 3 ピクセルであり, オーバーラップ率は 75% である. 二色法温度解析二色法は物体からの異なる二波長における輻射輝度を計測することで, 物体の表面温度を非接触で算出する方法である. 計測した輻射輝度の比をとることで未知数を消去できるため, 放射率による補正を実施せずに真温度に近い温度計測が可能である. 煤粒子群の単色輻射率 ελに対して Hottel-Broughton の式が成り立つものと仮定すると次式が表される. KL, T 1exp (6) ここで,K は吸収係数,L は火炎の光学的長さとする. 以上の式を KL について解くと次式となる. C 1 1 KL 1 exp (7) Ta T 二波長 λ1,λ について輝度温度 Ta1,Taを測定し, 上式に代入して つの式を KL について等置すれば次式が得られる. 1 1 C 1 1 C 1 1 1 Ta 1 T Ta T 1 exp 1 exp (8) 指数 α は煤粒子径や煤の複素屈折率の関数であり, 本実験では α は 1.39 とする. これを について解き, 火炎の温度を求める. 解析には二色温度計測システム (Mitsui Photonics: Thermera-HS) を使用し, 輝炎画像から火炎温度を算出した.. 実験結果および考察 噴射圧力が燃焼特性に及ぼす影響図 にPinjを変化させた場合の熱発生率および累積熱発生量の時間履歴を示す. 図 より Pinj が上昇するに伴い, 熱発生率の最大値が増加し, 燃焼期間が短縮している. これは Pinj の上 00 160 10 1.0 P 80 inj 0.5 Q 1 =Q f H u =33 J 0.75 00 0 160 10 80 0.1 50 100 150 00 0 Injection pressure P X - O =1mol.% inj [MPa] 0.0 1.0.0 3.0 4.0 5.0 Time after start of injection [ms] Total heat release[j] Ignition delay [ms] Fig.4 Apparent heat release rate, total heat release and ignition delay for various Pinj Vol.47,No.6,November 016. 193
昇により燃料噴射率が増加し, 燃焼率が増加したためと考えられる. また, 図 4 より Pinj の上昇に伴い累積熱発生量が増加している. これは Pinj の上昇により, エントレインメントが増加するとともに噴霧の微粒化が進み, 燃料と周囲気体との混合が促進されたため, 燃焼が改善したと考えられる. 図 4 にPinjを変化させた場合の着火遅れ期間 (τ) を両対数グラフに示す. ここで,τ は燃料噴射開始から熱発生率が正に転じるまでの期間と定義した. 図 4 より Pinj が上昇するにつれて, τ が短期化している. また,τ に対する Pinj の指数値は δ=-0.75 となった.Pinj の上昇による噴射率の増加および微粒化促進の効果により早期に可燃混合気が形成されたため, 物理的着火遅れが短くなったと考えられる. 噴射圧力が壁面熱流束に及ぼす影響図 5 にPinjを変化させた場合の各測定点における熱流束の時間履歴を示す. 図 5 より,Pinj が上昇するにつれて各測定点における熱流束のピーク値が高くなっている. また, 各測定点における熱流束ピーク値は Point1 から Point4 に向かうにつれて減少している. 図 6 に Pinjを変化させた場合の熱損失量 (Qloss) を示す.15ms まで (000rpm 下死点到達時間 ) の熱損失量を示している. 図 6 より,Pinj が上昇するにつれて 15ms までの熱損失量は増加している. また図 6 の右に Pinj が 150MPa の場合の火炎半径方向に対する熱流束を示す. その結果,Zw が mm では壁面中心での熱流束が最も大きい結果となった ここで制御パラメータである Pinj が熱損失に与える影響を定量的に評価するため,15ms までの熱損失に対する Pinj の指 Local heat flux q [MW/m ] Local heat flux q [MW/m ] Point1 Time after start of injection[ms] Point3 Time after start of injection[ms] Local heat flux q [MW/m ] Local heat flux q [MW/m ] Point Time after start of injection[ms] Point4 Time after start of injection[ms] Fig.5 Local heat flux for various Pinj Fig.6 Local heat loss for various Pinj 数相関を算出した. 図 7 から熱損失に対する指数値 a は a=0.15 となる. 熱流束および熱損失に対する物理因子が及ぼす影響について 4.5 節以降で考察する. 噴射圧力が火炎流速に及ぼす影響図 8 に各熱流束測定点直上の 3mm 3mm の領域における空間平均火炎流速 (u) の時間履歴を示す. ここで,Point4 に関しては輝炎が到達していないため,Point1 から Point3 における結果を示す. 図 8 より, 全ての測定点において,Pinj が上昇するにつれて火炎流速が高い値を示している. これは Pinj の上昇による燃料噴出速度の上昇によるものであると考えられる. また, 各測定点に注目すると火炎流速は Point1 から Point3 に向かうにつれて減少している. これは壁面による摩擦および周囲気体との運動量交換により, 速度が減衰したためと考えられる. 図 8 右下に各測定点において火炎が存在する時間での時間平均を行なった火炎流速 (u) と Pinj の関係を示す. また, 図 9 に時間平均を行なった火炎流速に対して空間平均を行なった火炎流速 (uave.) を示す. 図 9 より壁面近傍おける空間および時間平均火炎流速に対する Pinj の指数値は b=0.73 となった. ここで, 流速と Pinj の関係はベルヌーイの式より,b=0.50 となる. しかし,Pinj の上昇に伴う火炎温度の上昇により, 火炎がガス膨張するため uave. とPinjとの指数相関が b=0.73 になったと考えられる. Time after injection-15ms(000rpm bottom dead center) 500 a Qloss Pinj Total heat loss Q loss [J] 0 300 00 100 a 0.15 X O =1mol.% 50 50 100 150 00 Injection Pressure P inj [MPa] Fig.7 Index correlation between total heat loss and Pinj Point1 Point Area averaged flame velocity u [m/s] Area averaged flame velocity u [m/s] Time after start of injection[ms] Time after start of injection[ms] Point3 30 b uave. Pinj b 0.89 0 b 0.60 10 b 0.68 X 1.0 O =1mol.% 50 100 150 00 Time after start of injection[ms] Injection Pressure P inj [MPa] Area averaged flame velocity u [m/s] Time averaged flame velocity u ave. [m/s] Fig.8 Local area averaged flame velocity for various Pinj and index correlation between flame velocity and Pinj 194 自動車技術会論文集
噴射圧力が火炎温度に及ぼす影響 図 9 に Pinj を変化させた場合の各熱流束測定点直上の 3mm 3mm の領域における空間平均火炎温度 (Tflame) の時間履歴を示す. ここで,Point4 に関しては 4.3 項と同様に輝炎が到達していないため,Point1 から Point3 における結果を記載する. 図 9 より, 全ての測定点において,Pinj が上昇するにつれて火炎温度は上昇している. これは 4.1 項で述べたように Pinj の上昇に伴う燃料噴射率の増加により, 燃焼率が増加したためと考えられる. また, 各測定点における火炎温度は Point1 から Point3 に向かうに従って上昇しており, 時間経過に対しても上昇している. これは火炎外縁部において周囲気体を活発に取り込み, 燃焼が促進されたためと考えられる. 図 10 右下に各測定点において火炎が存在する時間での時間平均を行なった火炎温度 (Tflame) と Pinj の関係を示す. また, 図 11 に時間平均した火炎温度に対して空間平均を行なった火炎温度 (Tflame,ave.) と Pinj の関係を示す. 図 11 より壁面近傍おける空間および時間平均火炎温度 (Tflame,ave.) に対するPinjの指数値は c=0.07 となった. そのため, 火炎温度に対する Pinj の影響度は低いことが推測される. 噴射圧力が火炎接触面積 時間に及ぼす影響 図 1 に Pinj を変化させた場合の OH ラジカルおよび輝炎の撮影画像を示す. 図 1 より, 周囲気体との混合が促進さ れる火炎の巻き上がりで不輝炎が生じていることが分かる. また,Pinj が高くなるにつれて, 不輝炎領域が大きくなっている. これは Pinj の上昇による火炎流速の上昇により周囲気体との混合が促進されたためと考えられる. また図 1 より, 輝炎が観測されなくなった後も不輝炎が壁面近傍で対流している. このことから輝炎画像では火炎の壁面上の接触面積および時間を評価することが困難であるため, 主に高温反応領域である OH ラジカルに着目し, 不輝炎領域を含めた燃焼反応領域について評価した. 図 13 に OH ラジカルの撮影画像より算出した火炎の壁面上の接触面積 (Area) の時間履歴を示す. ここで, 接触面積は火炎を噴霧軸に対して軸対象と仮定し, 火炎が壁面に接している領域を同心円状に面積積分した. 図 13 より,Pinj の上昇により接触時間は減少するが. 接触面積の最大値が増加する傾向にある. また, 図 10 より算出した火炎の壁面上の接触面積の時間積分値 (Area と Pinj の関係を図 13 に示す. 図 13 より火炎の壁面上の接触面積の時間積分値 (Area に対する Pinj の指数値 d は d = -0.7 となった. そのため, 火炎の壁面上の接触面積および時間に対する Pinj の影響度は大きな負の相関になることが推察される. 熱流束および熱損失量に関する総合考察 図 3 の各測定点における熱流束の時間履歴に関して,Pinj Area and time averaged flame velocity u ave. [m/s] 30 0 10 1.0 uave. P b 0.73 b inj X O =1mol.% 50 100 150 00 P inj [MPa] Injection Pressure Fig.9 Index correlation between flame velocity and Pinj Area and time averaged flame temperature T flame, ave. [K] 300 00 100 000 1900 T flame, ave. c Pinj c 0.07 X O =1mol.% 50 100 150 00 P inj [MPa] Injection Pressure Fig.11 Index correlation between flame temperature and Pinj Area averaged flame Area averaged flame Point1 Point Time after start of injection[ms] Time after start of injection[ms] Point3 300 c c 0.06 Tflame, ave. Pinj 00 c 0.030 100 c 0.05 000 X O =1mol.% 1900 50 100 15000 Time after start of injection[ms] Injection Pressure P inj [MPa] Area averaged flame Time averaged flame Fig.10 Local Area averaged flame temp. for various Pinj and index correlation between flame temp. Injection pressure P inj [MPa] 150 100 50 00 10 0 0 10 0 0 10 0 0 0 10 0 Wall Time after start of injection [ms] 0.6 1. 1.8.4 (Upper : OH radical images, Lower : Luminous flame images) Fig.1 OH radical images in high temperature region and visible luminous flame for various Pinj 3 7 3 7 3 7 3 7 3 7 3 7 3 7 3 7 Distance from nozzle tip [mm] Vol.47,No.6,November 016. 195
の上昇に伴い, 各測定点における熱流束のピーク値が高くなっている. これは 4.3 項の図 9 および 4.4 項の図 11 の結果より,Pinj が上昇するに従って, 火炎流速が大きく, 火炎温度が高いため, 熱流束のピーク値が高くなると考えられる. また, 図 5 より Point1 から Point4 に向かうにつれて熱流速の最大値が減少している.4.3 節以降の結果を考慮すると, 火炎温度に関しては図 10 および図 11 より火炎外縁部において燃焼が活発に行われており, 火炎温度が高い結果となっている. しかし, 火炎流速は図 8 および図 9 より, Point1 から Point4 に向かうにつれて減少している. このことから, 熱流束は火炎流速が支配因子であることが考えられる. また, 図 6 より 15ms までの熱損失は point4 が大きな割合を占めている. この結果から燃焼終了後に高温ガスが残存した流動により外縁部で熱伝達を行い, 熱損失に大きく寄与することがわかる. 次に, 図 7 の熱損失量に対する Pinj の指数値 a (=0.15) に対して Newton の冷却則における各物理因子が及ぼす影響について考察する. 図 14 に熱損失を支配する各物理因子に対する Pinj の指数値を示す. ここで, ニュートンの冷却則を考慮したときに, 熱損失量と熱損失を支配する各物理因子の関係は次式のように表される. Qloss h( Tflame Tw ) Area Re ( Tflame Tw ) Area u ( Tflame Tw ) Area (9) 4. および 4.3 節の指数相関を式 (9) に適用すると, Flame contact area Area [mm ] Time after start of injection [ms] Effectiveness for heat loss[-] 0.6 0.4 0. 0-0. 0.15 a Q loss 0.45 b u Time integration of flame contact area Area [mm ms] 10000 d T 8000 Area P a =1050K inj 6000 X O =1mol.% 00 d -0.7 3000 000 1000 ab' cd 0.07 c T flame 30 50 70 100 00 Injection Pressure P inj Trade-off d Area Δτ [MPa] Fig.13 The flame contact area and index correlation between time integration of flame contact area and Pinj -0.4-0.7 Fig.14 Empirical constant of Pinj, flame velocity (uave.), flame temperature (Tflame), time integration of flame contact area (Area τ) P P P P P P P (10) a ( b ) c d b c d inj inj inj inj inj inj inj 以上から ab cd が成立する. ここで, レイノルズ数 Re の指数値である γ は噴流群の衝突する平板の強制対流熱伝達で用いられる Gardon Cobonpue の実験式の指数値 0.65 (7) を用いると, 指数値 b は 0.45 となる. 本実験の結果では a=0.15 で, 一方 b +c+d=0.07 となり, おおよそ同様の値になっている. 図 14 に着目すると Pinj を変更させた場合において火炎流速および火炎の壁面上接触面積および時間が熱損失の指数相関に対してトレードオフの関係となるものの, 火炎流速による影響が支配的となり, 最終的に熱損失量に対する Pinj の影響度は正の相関になると考えられる.. 結 言 制御パラメータである噴射圧力が熱損失に与える影響を定量的に評価するため, 指数相関 Qloss P inj を算出し, 指数値 a=0.15 を得た. 火炎流速および火炎の接触面積 接触時間が熱損失に対してトレードオフの関係となる. また Pinj に対する熱損失の支配因子は火炎流速であると考えられる. 謝 辞本研究は, 総合科学技術 イノベーション会議の SIP( 戦略的イノベーション創造プログラム ) 革新的燃焼技術 ( 管理法人 :JST) によって実施された. ここに記して謝意を表する. 参 考 文 献 内閣府, 革新的燃焼技術研究開発計画, http://www8cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/keikaku/1_nenshou.pdf 参照日 年 月 日 樋口健治, 横森求, 自動車工学, 第 版,, 東京電機大学出版局. 小坂英雅ほか, 壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減, 自動車技術,,,. 李世文ほか, 衝突ディーゼル火炎の熱伝達に関する研究, 日本機械学会論文集 (B 編 ),,,. 榎本良輝ほか, 内燃機関の燃焼室壁面の瞬時熱流束解析に関する研究 熱的物性値の温度依存性および蓄熱項を考慮した場合の検討, 日本機械学会論文集 (B 編 ),,,. (6) H. C. Hottel and F. P. Broughton, F.P. determination of true temperature and total radiation from luminous gas flames, Industrial and Engineering Chemistry, Vol.4, No., pp. 166-175. (193) 甲藤好郎, 伝熱概論, 養賢堂,,. 196 自動車技術会論文集