地方衛生研究所におけるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌検査の現状 薬剤耐性研究センター 第 1 室 鈴木里和

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腸内細菌科細菌 Enterobacteriaceae Escherichia coli (大腸菌) Klebsiella sp. (K. pneumoniae 肺炎桿菌など) Enterobacter sp. (E. cloacaeなど) Serratia marcescens Citrobacte

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よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

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緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

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染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

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地方衛生研究所におけるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌検査の現状 薬剤耐性研究センター 第 1 室 鈴木里和

感染症発生動向調査で報告を求めている 薬剤耐性菌感染症 AMRを公衆衛生学的な問題として認識させた薬剤耐性菌 5類全数 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 CRE 感染症 バンコマイシン耐性腸球菌 VRE 感染症 薬剤耐性アシネトバクター MDRA 感染症 バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌 VRSA 感染症 5類基幹定点 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症 薬剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症 ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症 2

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 CRE はなぜ脅威なのか JANIS 検査部門年報より 腸内細菌科細菌 尿路感染症 胆道感染症 肺炎など様々な細菌感染症を引き起こす 分離頻度が高い 市中感染症の原因となりうる

b-ラクタム薬の開発と薬剤耐性菌 グラム陰性桿菌感染症においてカルバペネムは最終兵器 β-ラクタム薬の開発 セファロスポリン ペニシリン 第一世代 第二世代 第三世代 カルバペネム 第四世代 次が30年以上発売 β-ラクタム耐性菌の出現 ペニシリン耐性菌 セフェム耐性菌 カルバペネム耐性菌 緑膿菌 もともと第二 第三世代に耐性 日和見感染症 大腸菌 肺炎桿菌などの腸内細菌科 尿路感染 胆嚢炎 健常人も罹患する 腸内細菌科 第二世代以降は 感性だった されていない 基質拡張型 βーラクタマーゼ ESBL 産生菌 カルバペネム 耐性菌 CRE 4

JANIS 2016年検査部門年報 1653施設の集計 保菌者もふくめた分離患者数 MRSA 約18万人 VRE 約650人 PRSP 約1.5万人 MDRP 約1650人 MDRA 130人 CRE 約8000人 *NESID 患者報告約1500人 感染症発生動向調査 全数把握疾患のなかでCRE感染症は分離数が最も多い

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 CRE と カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌 CPE カルバペネム耐性腸内細 菌科細菌(CRE) 届け出基準 メロペネム耐性 または イミペネム+セフメタゾール耐性 の腸内細菌科細菌 薬剤感受性試験のみで判定可能 カルバペネマーゼ産生 腸内細菌科細菌(CPE) 鑑別には主に遺伝子検査が必要 カルバペネマーゼ 非産生菌 non-cpeの方が多い 薬剤耐性アシネトバクター MDRA)ではカルバペネム耐性 カルバペネマーゼ産生菌 薬剤耐性緑膿菌 MDRP)も多くがカルバペネマーゼ IMP型 産生菌 *カルバペネム耐性のみの場合 カルバペネマーゼ非産生菌が多く含まれる メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 MRSA のほとんどがmecA陽性 meca β ラクタム薬 耐性を担う遺伝子 バンコマイシン耐性腸球菌 VRE のほとんどがバンコマイシン耐性遺伝子陽性 これまでの 感染症法届出対象の 薬剤耐性菌は薬剤感受性試験の基準で責任遺伝子 の有無を高率に予測可

なぜ カルバペネマーゼ産生菌が重要なのか カルバペネマーゼはほとんどの β- ラクタム剤を分解することが多い カルバペネマーゼ遺伝子の多くがプラスミド上に存在する 他系統の抗菌薬に対する耐性遺伝子と共存することが多い 接合により腸内細菌科内の多菌種に拡散しうる 多剤耐性傾向が強い カルバペネマーゼ産生以外のカルバペネム耐性他の β- ラクタム剤には感性をしめすことがある染色体性 自然耐性院内感染の事例報告が少ない 2010 年以降の AMR 問題の契機となった報告 報道 NDM 型カルバペネマーゼ遺伝子を持つ腸内細菌科細菌の急速な広まりへの懸念

カルバペネマーゼの種類によって明確な地域性がある 海外型カルバペネマーゼ NDM型 NDM インド 南アジア 東南アジア 輸入感染症と同様の考え方が必要 OXA-48 ヨーロッパ 特に地中海諸国 インド KPC 北米 中国 P. Nordmann L. Poirel. Clinical Microbiology and Infection(2014), 20, 821-830 国内型カルバペネマーゼ より図を引用 一部改変 IMP型メタロ-β-ラクタマーゼ blaimp-6陽性株の分布 n=25) blaimp-1陽性株の分布(n=26) 近畿 中国四国に限定 全国からくまなく分離 メロペネムに耐性であっても イミペネムには感性となる イミペネムとメロペネムの MICがほぼ同等 5株以上 5株以上 3-4株 1-2株 3-4株 1-2株

CRE病原体サーベイランスの重要性 カルバペネム耐性腸 内細菌科細菌(CRE) カルバペネマーゼ産生 腸内細菌科細菌(CPE) 臨床上問題になる 多剤耐性 院内感染の原因となる 国 地域によって遺伝子型が異なる 疫学が異なる 治療薬の選択が異なる 最適な検査法が異なる 有効な抗菌薬があることが多い 院内感染の原因となりにくい 鑑別には主に遺伝子検査が必要 カルバペネマーゼ 非産生菌 感染症法上の基準を 医療機関 が薬剤感受性試験で判定 カルバペネマーゼ遺伝子の検出による確認 実施可能な医療機関は乏しい 地方衛生研究所における遺伝子解析検査の必要性大 地域おけるCPEの割合 同じ遺伝子型のCPEの地域内拡散の有無 海外型CPEの分離状況

CRE 病原体サーベイランス体制の整備 2014 年 9 月 CRE 感染症が5 類全数把握疾患となる 2015~2016 年感染症発生動向調査に年約 1500~1600 例の報告 2017 年 3 月 28 日厚生労働省健康局結核感染症課長通知 CRE 感染症等に係る試験検査等の実施について CRE 感染症の届け出があった際には当該症例から分離された菌株の耐性遺伝子等の検査を実施しその結果をNESID 病原体検出システムに報告する 地方衛生研究所向け薬剤耐性菌研修の実施開始 2018 年 1 月国立感染症研究所薬剤耐性研究センターおよび薬剤耐性菌リファレンスセンターが地方衛生研究所 保健所に向けて病原体検出システムへの CRE 耐性遺伝子検査結果の入力方法指針を提示 毎年 9 月地方衛生研究所向け薬剤耐性菌研修 ( 基本 実践 タイピングの各コース ) 陽性コントロールの配布 taiseikin@nih.go.jp で問い合わせ受付

CRE検査法 通知 別添 原則として実施する検査項目 1. 推奨される検査項目 耐性遺伝子の検出 1. PCR法耐性遺伝子の検出 IMP型 NDM型 KPC型 OXA-48 型 VIM型 GES型 IMI型 KHM型 SMB型 β-ラクタム耐性機序確認のため 非カルバペネマーゼ遺 伝子 ESBL遺伝子 AmpCβ-ラクタマーゼ遺伝子 2. 阻害剤を用いたβ-ラクタマーゼ産生性の 確認 2. 阻害剤を用いたβ-ラクタマーゼ産生性の確認 メルカプト酢酸ナトリウム SMA /EDTA クラブラン酸 ESBL阻害 ボロン酸+クロキサシリン AmpC b-ラクタマーゼ阻害 メタロ β ラクタマーゼ阻害 ボロン酸 KPC型カルバペネマーゼ阻害 3 カルバペネマーゼ産生性を確認する他の方法 Carba NP テスト CIM 地域における特定のCREの伝搬が疑われる場合 PFGE解析 プラスミドゲノムおよび染色体ゲノム解析

NESID 登録方法のルール化 - 統一したフォーマット ( テキスト形式 ) - 入力支援ツールを配布 ( エクセルシート ) - 薬剤耐性菌レファレンスセンターを通じて周知 該当する試験の未実施と陰性を区別シークエンス結果も入力可

精度管理 問い合わせ対象 2018年7月19日登録済検体 対応状況 2018年8月3日現在 問い合わせ対象 入力形式が異なる 該当数 対応状況 理由など 22自治体 すべて修正済 137例 入力方法の周知不足 検査者と入力者が異なる場合 入力すべき内容が分かりにくい 海外型カルバペネマーゼ陽性 かつ 渡航歴なし シークエンス確認を依頼 NDM型 5例 全て確認済 KPC型 4例 確認済3例 PCR非特異バンドのため修正1例 OXA-48型 1例 PCR非特異バンドのため修正 必須検査未実施 遺伝子検査未実施 該当なし 表現型検査未実施 9自治体 71例 修正2例 7自治体 69例 実施なし 通知発出前の検査 予算不足 遺伝子検査と表現型の不一致 カルバペネマーゼ遺伝子陽性 かつ MB陰性 (IMP型3例, NDM型1例 4例 カルバペネマーゼ遺伝子陰性 かつ 表現型陽性 (MB 6例, BA 1例 7例 修正10例 確認中1例 判定に苦慮する株の存在 検査 判定方法の周知不足

2017年 検体採取 CRE 病原体検出情報システムへの検査結果登録状況 感染症発生動向調査に報告されたCRE感染症 1660例 診断日で抽出, データ取得日 2018年5月1日 病原体検出システムに登録されたCRE 865株 検体採取日で抽出 発生動向調査への報告対象と考えられる有症状の報告

病原体検出情報システム登録検体(n=865)の検査実施状況と陽性数 少なくとも1つのカルバペネマーゼ遺伝子検出 239株 28% 陽性数 %* 検査項目 検査実施 % IMP型 865 (100) 227 (26) NDM型 865 (100) 8 (0.9) 865 (100) 3 (0.3) 865 (100) 2 (0.2) メタロ-β-ラクタマーゼ試験 813 (94) 218 (27) ボロン酸試験 798 (92) 292 (37) VIM型 520 (60) 0 (0) 42自治体実施 GES型 331 (38) 0 (0) 32自治体実施 IMI型 137 (16) 0 (0) 12自治体実施 推奨 KHM型 75 (9) 0 (0) 10自治体実施 SMB型 86 (10) 0 (0) 12自治体実施 原則 KPC型 実施 OXA-48型 *検査実施数に対する陽性% CarbaNP test** PPV100%,NPV99% 184 (21) 49 (27) 12自治体実施 CIM** PPV96%,NPV100% 195 (23) 45 (23) 22自治体実施 CarbaNP testとcim testともに実施 38例 いずれも結果は一致 6自治体 **精度管理問い合わせ対象外 陽性的中率 PPV カルバペネマーゼ遺伝子陽性 / 検査陽性 陰性的中率 NPV) カルバペネマーゼ遺伝子陰性 / 検査陰性 判定不能

2017 年検体採取病原体検出情報システム登録 CRE 検体別報告数 検体別 IMP 型カルバペネマーゼ検出割合 (n=865. うち重複検体 23) 穿刺液 : 腹水 胸水 関節液

2017 年検体採取病原体検出情報システム登録 CRE (n=865) 菌種別 IMP 型カルバペネマーゼ検出株の割合 (%) ( 各菌種における IMP 型カルバペネマーゼ検出株数 / 各菌種の総登録数 ) sp. sp. sp. Other 各 1 株の報告菌種うち Raoultella ornithinolytica から IMP 型カルバペネマーゼ検出

2017 年検体採取病原体検出情報システム登録 CRE 地区別 IMP 型カルバペネマーゼ検出株の検出状況 (n=865)

2017 年検体採取病原体検出情報システム登録 CRE IMP 型カルバペネマーゼ遺伝子検出株地区別の菌種の内訳 (n=227)

2017 年検体採取病原体検出情報システム登録 CRE IMP 型カルバペネマーゼ塩基配列報告状況 ( 塩基配列解析の記載のある報告 n=100) IMP-1 β- ラクタマーゼ遺伝子陽性株 (N=44) を報告した 13 県 IMP-6 β- ラクタマーゼ遺伝子陽性株 (N=56) を報告した 1 府 4 県

海外型カルバペネマーゼ遺伝子検出状況 海外渡航歴 無 海外渡航歴 有 (地域 報告自治体数 菌種 NDM型 (n=8) 5 2自治体 3 東南アジア E. coli K. pneumoniae KPC型 (n=3) 3 1自治体 0 K. pneumoniae OXA-48型 (n=2) 0 2 (東南アジア 南アジア K. pneumoniae 10 海外渡航歴のない症例からの検出数 8 海外型カルバペネマーゼの国内事例が増加傾向 渡航歴のない症例発生時には疫学調査を検討 水面下にひろまっていないか 症例の過去の入院歴 他施設の入院歴など NDM型 6 4 KPC型 OXA-48型 2 0 2010 (n=153) 2015 (n=100) 2017 年 (n=826) (検査株数) データ出典 2010年 我が国における新たな多剤耐性菌の実態調査 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/onegai.html 2015年 国立感染症研究所薬剤耐性研究センターと国立病院機構との共同研究 松井真理ら 第28回日本臨床微生物学会総会O-013

まとめ CRE は CPE と non-cpe の鑑別が臨床的 疫学的に重要であり 病原体サーベイランスの情報が他の薬剤耐性菌にくらべても重要が高い 地方衛生研究所における CRE 病原体サーベイランス体制がおおむね整備された 我が国の現状 CRE の届け出基準を満たす菌株の約 3 割 (28%) が CPE カルバペネマーゼ型は IMP 型が 95% を占め 渡航歴のない国内例 IMP-1 は全国で分離され E. cloacae が多い IMP-6 は近畿中国に偏り E. coli, K. pneumoniae が多い E. aerogenes の CPE は稀 CPE の場合は症例の疫学背景を確認 海外型カルバペネマーゼ (KPC 型, NDM 型, OXA-48 型 ) の動向 渡航歴の確認できない国内例が増加傾向 分離時には疫学背景を確認 全国の分離状況および地域の分離状況から 特定の CPE が施設内や地域内に広まっていないかの評価を行う

謝辞 CRE 病原体サーベイランスにご協力いただきました全国の地方衛生研究所および保健所の皆様に深く感謝申し上げます