振動分析計 VA-12 を用いた精密診断事例 リオン株式会社 振動分析計 VA-12 を用いた精密診断事例を紹介します 振動分析計 VA-12 は 振動計と高機能 FFT アナライザが一体となったハンディタイプの測定器です 振動計として使用する場合は加速度 速度 変位の同時計測 FFT アナライザとして使用する場合は 3200 ライン分解能 20kHz の連続リアルタイム分析が可能です また カラー液晶に日本語表示がされます 今回紹介するデータは 殆どが回転機械の異常現象を人工的に作り出す故障シミュレータ ミニマスタ を使った典型的な精密診断事例ですが 最後に 実機を 3200 ラインの FFT 分析によって精密診断した事例を少し紹介します 振動分析計 VA-12 分析画面例 目次 1. 転がり軸受の診断外輪傷内輪傷転動体傷 2. アンバランスの診断 3. ミスアライメントの診断 4. 歯車の異常の診断 5.3200ラインによる診断事例あれこれ 故障シミュレータミニマスタ 1
1. 転がりがり軸受軸受の診断 外輪傷の診断診断事例軸受番号 NSK#1302 転動体個数 10 個 転動体直径 6.4mm ピッチ円直径 27.6mm 接触角 10 度 軸回転数 1200rpm ( 外輪通過周波数 77.2Hz) 1 振動計による測定 ( 振動の大きさ ) 異常の場合 速度や変位は正常値に比べて変化が少ないが 加速度が非常に大きくなっている ま た 波高率 (C.F.) も 10 を超えるような大きな値となる 振動計測定値 ( 正常 ) 振動計測定値 ( 異常 ) 2 時間波形と周波数分析加速度時間波形 : 転動体が傷に衝突する時の連続した衝撃波形が観測される 衝撃波形の最大振幅はあまり変動しない 加速度周波数分析 :3kHz 以上の高い周波成分が非常に大きい : 外輪通過周波数 77.2Hz に近い 77.8Hz が発生している 衝撃波形の振幅はあまり変動しない 外輪通過周波数 高周波成分が大きい 加速度時間波形 加速度周波数分析 2
内輪傷の診断診断事例軸受番号 NSK#1302 転動体個数 10 個 転動体直径 6.4mm ピッチ円直径 27.6mm 接触角 10 度 軸回転数 1200rpm ( 内輪通過周波数 122.8Hz) 1 振動計による測定 ( 振動の大きさ ) 異常の場合 速度や変位は正常値に比べて変化が少ないが 加速度が非常に大きくなっている ま た 波高率 (C.F.) も 10 を超えるような大きな値となる 振動計測定値 ( 正常 ) 振動計測定値 ( 異常 ) 2 時間波形と周波数分析加速度時間波形 : 転動体が傷に衝突する時の連続した衝撃波形が観測される 衝撃波形の最大振幅が変動しており 何らかの振幅変調を受けていることを示している 加速度周波数分析 :3kHz 以上の高い周波成分が非常に大きい : 内輪通過周波数 122.8Hz に近い 122.9Hz が発生している また 20Hz のサイドバンドが出ており軸回転周波数の変調を受けていることを示している 衝撃波形の振幅が変動している 高周波成分が大きい 内輪通過周波数 回転数による振幅変調 加速度時間波形 加速度周波数分析 3
転動体傷の診断診断事例軸受番号 NSK#1302 転動体個数 10 個 転動体直径 6.4mm ピッチ円直径 27.6mm 接触角 10 度 軸回転数 1200rpm ( 転動体欠陥周波数 81.8Hz) 1 振動計による測定 ( 振動の大きさ ) 異常の場合 速度や変位は正常値に比べて変化が少ないが 加速度が非常に大きくなっている ま た 波高率 (C.F.) も 10 を超えるような大きな値となる 振動計測定値 ( 正常 ) 振動計測定値 ( 異常 ) 2 時間波形と周波数分析加速度時間波形 : 転動体が傷に衝突する時の衝撃波形が観測される 衝撃波形の最大振幅が変動しており 何らかの振幅変調を受けていることを示している 加速度周波数分析 :1.5kHz 以上の高い周波成分が非常に大きい : 転動体欠陥周波数 81.8Hz に近い 81.9Hz が発生している また 転動体公転周波数である約 8Hz のサイドバンドが出ており変調を受けていることを示している 衝撃波形の振幅が変動している 高周波成分が大きい 転動体欠陥周波数 転動体公転周期による振幅変調 加速度時間波形 加速度周波数分析 4
2. アンバランスの診断現象 : アンバランス 軸回転数 1200rpm( 軸回転周波数 20Hz) 1 振動計による測定値 ( 振動の大きさ ) 正常な状態と比較して加速度はそれほど増加しないが 速度や変位は大きく増加する 振動計測定値 ( 正常 ) 振動計測定値 ( アンバランス ) 2 時間波形と周波数分析 速度時間波形 : 正弦波に近い波形となる 速度周波数分析 : 軸回転数に相当する周波数成分が支配的で 他の周波数成分は非常に少ない 正弦波に近い 軸回転周波数 速度時間波形 速度周波数分析 (1200rpm で回転 ) 5
3. ミスアライメントの診断現象 : 心ずれ 軸の結合部は3 分割カップリング使用軸回転数 1200rpm( 軸回転周波数 20Hz) 1 振動計による測定値 ( 振動の大きさ ) 正常な状態と比較して速度や変位が大きく増加する 加速度もアンバランス例に比べて増加する 振動計測定値 ( 正常 ) 振動計測定値 ( ミスアライメント ) 2 時間波形と周波数分析速度時間波形 : 軸回転数成分と高調波が複合された波形となる 速度周波数分析 : 軸回転数に相当する周波数成分以外に 高調波成分が多数存在する この例では 3 分割カップリングを使用しているため 3 次と 6 次の高調波成分が発生している 軸回転数と高調波による複合波形 軸回転周波数 3 次高調波 6 次高調波 速度時間波形 速度周波数分析 (1200rpm で回転 ) 6
4. 歯車の診断現象 : 偏心 歯数 44 駆動軸回転数 1725rpm( 軸回転周波数 28.75Hz 噛み合い周波数 1265Hz 変調周波数 28.75Hz) 加速度時間波形 : 回転数の周期で振幅が変動している : 駆動軸の噛み合い周波数の両側にサイドバンドが多数出ている こ れは軸の回転数による振幅変調を受けていることを示している 軸回転周波数 噛み合い周波数 加速度時間波形 ( 周波数スパン 2000Hz) 軸回転周波数 噛み合い周波数 回転数による振幅変調 ( 回転周波数付近を拡大 ) ( 噛み合い周波数付近を拡大 ) 7
5.3200 ラインによるによる診断事例診断事例あれこれ 誘導電動機の回転子回転子の滑りの測定 この画面は 50Hz 電源で運転している誘導電動機 (2 極 ) の振動速度を 3200 ラインで FFT 分析したスペクト ルである 電源周波数の 2 倍に相当する 100Hz の振動 が 回転磁界によって発生している また 電動機の 回転周波数の 2 倍に相当する 99.56Hz が分離されて観 測されており この周波数の差が回転子の滑りに相当する 周波数分解能を 3200 ラインにすることで 明確 に滑りを測定できる 遠心ポンプポンプの精密診断この画面は羽根枚数が 5 枚 回転数が 2987rpm の遠 心ポンプの軸受箇所の振動速度のスペクトルである インペラーの通過周波数 249Hz が明確に確認できるが 実は転がり軸受の内輪に損傷があるため その繰り返 し周波数が 356.9Hz に現れ その上下に回転周波数 49.8Hz のサイドバンドが複数確認できる エンベロー プスペクトルを使わなくても損傷が確認できた例であ る 減衰波形の測定 この画面は打撃加振によって得られた減衰波形で ある この波形から簡単に対数減衰率 δ や 減数比 ζ の算出ができる FFT 分析に使用する時間波形は ライン数の 2.56 倍のサンプル個数が必要である つ まり ライン数が大きいほど時間波形を長時間サンプルすることになる 加振実験において減衰率が小 さい波形を測定する場合に 1 回の現象がフレーム 内に入りきらないことがよく発生する このような 現象でも ライン数を 3200 ラインにすることにより 測定が可能になる 8