平成 29 年度第 4 回 JOGMEC 金属資源セミナー バイオリーチング技術開発 平成 29 年 8 月 29 日 金属資源技術部生産技術課古川創

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平成 29 年度第 4 回 JOGMEC 金属資源セミナー バイオリーチング技術開発 平成 29 年 8 月 29 日 金属資源技術部生産技術課古川創

事業概要 1 背景 1 次硫化銅鉱は乾式により製錬されているが 鉱石の低品位化が進んでおり 製錬コストが上昇している 一方 酸化鉱や低品位 2 次硫化鉱はコストが安く 環境不可も少ない湿式で処理されている 目的低品位 1 次硫化銅鉱からの経済的な銅回収を可能とするリーチング技術開発 事業の流れ 第 1 期 H17~H19 第 2 期 H20~H24 Rodrigo Toro, CODELCO(March, 2012) 25th International Copper Conference in Hamburg 第 3 期 H25~

使用した鉱石の特徴 2 35 IOCG 型鉱石の鉱物組成 (wt%) 30 含有割合 [%] 25 20 15 10 5 0 一次硫化鉱である黄銅鉱が主な銅鉱物 銅品位 :0.8% 程度 鉄 ( 磁鉄鉱 黒雲母など ) の含有率が高い 酸化鉱からの銅浸出は非常に早く進む 一次硫化鉱の浸出は二次硫化鉱に比べても遅い

硫酸濃度 温度 バクテリアの影響 3 100 30 g/l 60 80 AT-A.f.- 通常量 AT-A.f.-1/10 AT-A.f.-1/100 AT-A.f.- 無し 鉄酸化細菌 Aciditiobacillus ferrooxidans では 栄養塩を加えると浸出率向上 10 g/l 60 銅浸出率 (%) 60 40 3 g/l 60 20 0 0 100 Time(days) 200 300 アク ロメレーション無 アク ロメレーション有ハ クテリア有 100 80 AT-A.t.- 通常量 AT-A.t.-1/10 AT-A.t.-1/100 AT-A.t.- 無し 硫黄酸化細菌 Aciditiobacillus caldus では 銅浸出効果が高い アク ロメレーション有ハ クテリア無 銅浸出率 (%) 60 40 20 0 0 100 200 300 Time(days)

浸出モデル 4 黄銅鉱 (Chalcopyrite) の反応式 CuFeS 2 +4Fe 3+ Cu 2+ +5Fe 2+ +2S 難溶性鉱物 鉱物組成 易溶性鉱物 Sulfobacillus thermosulfidooxidans ph1.5-5.5 温度 20~60 Aciditiobacillus ferrooxidans ph1.3-4.5 温度 10~37 利点 欠点 硫黄酸化細菌 Aciditiobacillus caldus 生育可能域 ph1.0-3.5 温度 32~52 酸との反応熱で加温 酸化剤 (Fe 3+ ) を供給 リーチング時の酸消費が多くなる 鉄が沈殿しやすい 実証試験の主な方針 蓄熱のためには鉱石は高く積む 5m 温度上昇と鉄除去のため 最初に 1M 硫酸をワンパス散布 バクテリアが生育でき 鉄沈殿抑制する ph1~2 で循環散布

実証試験の流れ 5 アグロメレーション <10mm 鉱石を水 硫酸で団鉱化 1M 硫酸でワンパス浸出 45 cm 間隔 (121 穴 ) 流量 10 L/h/m 2 鉱石積込踏圧によう圧密を避けるため 上から落とすように鉱石を投入 循環散布 1M 硫酸散布で PLS の濃度が 0.1M 程度まで下がった後 0.1M 硫酸を循環散布濃度は散布前の ph で制御鉱石層内の温度次第で液を加温 PLS 中の濃度から浸出率を計算 高さ 5m まで約 200t の鉱石を投入 浸出終了後の調査浸出中は PLS を分析 浸出終了後 鉱石層内の確認 試料採取

微粒子による閉塞 6 6.8% 微粉有り 0.1M 循環 100 80 積算網下重量 [%] 60 40 20 0 0.01 0.1 1 10 粒径 [mm]

微粒子除去の浸出率と蓄熱への影響 7 カラム試験 58.9% 微粉除去 0.3M ワンパス 31.8% 微粉除去 0.1M 循環 1M 硫酸散布中の鉱石層内温度推移 6.8% 微粉有り 0.1M 循環 循環液の一部交換液中の金属イオン濃度 ( 特に鉄 ) が 20g/L 近くなるとバクテリアの活性が落ちるため 1M 硫酸散布中 循環散布中の銅の浸出率が改善 循環散布中の浸出の速度はかなり遅い 脈石と硫酸との反応も増え 温度も上昇する 液の通りがよくなり 温められた液が流れ出ることから 保温性は下がった

鉄沈殿物とバクテリア 8 粗鉱のフラスコリーチングでほぼ鉄沈殿が生じない場合に PLS 中の濃度比 Fe:Al=4:1 カラム 0.3M ワンパス散布 沈殿したと考えられる鉄 1M ワンパス 0.1M 循環 カラムは [g] バクテリアについて試験では硫黄酸化細菌である At.caldus も含めて バクテリアは添加していなかったが At.caldus や鉄酸化細菌 At.ferroxidans も PLS に見られた 硫黄酸化細菌 鉄酸化細菌は自生する 沈殿抑制を目的に 浸出液の硫酸濃度を上げて試験を行う 散布時 0.1M 0.3M で循環散布

鉄沈殿物抑制の結果 9 36.5% 微粉除去 0.3M 循環 沈殿抑制で改善 31.8% 微粉除去 0.1M 循環 浸出時間は短縮できたが 循環散布中の銅浸出率は大きく改善せず 35% 程度で停滞した 循環散布中の鉄沈殿物の生成は前条件よりは抑えられた 1M 硫酸散布中の鉄沈殿物の生成が その後の浸出を停滞させていると思われた

鉄沈殿物の影響 10 もと鉱石 (-2360+850μm) カラム残渣 (-2360+850μm) カラム試験残渣にはジャロサイト 鉄沈殿物はほとんどなく 易溶性鉱物もあまり見られない 実証試験残渣ではジャロサイト 鉄沈殿物が鉱石を覆うように見られ 易溶性鉱物や黄銅鉱が内包されている様子も観察される 実証試験残渣 (-2360+850μm) 微粉除去でほぼない 易溶性鉱物を溶かすことで黄銅鉱を露出することが 沈殿物により阻害され 銅浸出が停滞する

高さごとの各鉱物の傾向 (MLA による分析 ) 11 沈殿物だけを除く方法がないため MLA による鉱物組成から残渣中の鉱物割合を求める もと鉱石 0-0.5m 0.5-1.0m ヒープの高さごとの平均銅品位 [%] 0 0.2 0.4 0.6 0.8 もと鉱石 ジャロサイト割合 [wt %] 0 2 4 6 8 難溶性鉱物 Chlcopyrite 黄銅鉱 易溶性鉱物 1.0-1.5m 1.5-2.0m 2.0-2.5m 沈殿物生成 鉱物溶解 2.5-3.0m 3.0-3.5m 3.5-4.0m 4.0-4.5m 4.5-5.0m 鉄沈殿物が発生している下部でも 黄銅鉱の浸出は進んでいるように見える 沈殿物ができれば相対的に黄銅鉱の割合は小さくなる 鉱物溶解が進めば相対的に黄銅鉱の割合は大きくなる 銅品位をもと鉱石と比較するためには 補正が必要

沈殿物及び鉱物溶解分の補正 12 1 沈殿物分の補正沈殿物分を除す 2 鉱物溶解分の補正不溶性鉱物である石英の割合は変化しないとして 石英割合をもと鉱石と同じにする 鉱物組成 [wt %] 銅品位 [wt %] 140 1.20 1.07 0.80 120 0.74 1.00 100 80 60 40 25.2 1 2 0.80 0.60 0.40 20 29.3 49.5 34.0 34.0 0.20 0 0.00 もと鉱石 残渣 沈殿物分 鉱物溶解分 もと鉱石 銅品位 (ICP) (MLA) の補正 の補正 (MLA) 黄銅鉱 不溶性鉱物 難溶性鉱物 易溶性鉱物 沈殿物 銅品位 ( 石英 ) ( 黄鉄鉱など ) ( 黒雲母など ) ( ジャロサイトなど )

残渣の銅品位 ( 高さごとの平均 ) 13 ヒープ高さ 0.5 m 分 垂直方向の銅品位 頂部 上部 下部 水平方向の銅品位 頂部 散布のパイプが近いため 不均一な流れができ 溶出に差があった もと鉱の銅量を 1 としたときの残渣の銅量 [-] 0-0.5m 0.5-1.0m 1.0-1.5m 1.5-2.0m 2.0-2.5m 2.5-3.0m 3.0-3.5m 3.5-4.0m 4.0-4.5m 4.5-5.0m 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0.58 0.53 0.45 上部 0.37 0.54 0.61 0.57 0.59 0.65 0.60 頂部 下部 1~2m の上部で黄銅鉱の溶解は進んでいた 上部 下部 一様に溶けた 頂部よりバラつきが大きい 流れが不均一

液の流れのシミュレーション 14 リチウムをトレーサーとして鉱石層に散布して 排出液中のリチウム濃度の推移から 鉱石層内の液流れを調査した 無次元 Li 濃度 [-] 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 Li 濃度の推移 均一な流れのとき 無次元時間 1.0 に単一ピークがでる 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 無次元時間 [-] ヒープ開始ヒープ終了カラム終了 鉄沈殿がほぼないと考えられるカラム試験の終了時にも単一ピークが見られるが 実証試験終了時はピークが見られない カラム終了 ( 銅浸出率 59%) ヒープ終了 ( 銅浸出率 37%) 流速モデル (u: 流速 S: 面積 ) 実証試験では流速が異なる流れがあり 下部の鉄沈殿物によってもたらされている

鉄沈殿物による浸出の阻害 15 1. 鉱石層上部と浸出液が流れていた箇所での阻害 ( ジャロサイトが主な沈殿物 ) 易溶性鉱物の溶けた箇所 粒子表面に生じた沈殿物により黄銅鉱が覆われ 浸出液が届かなくなる 硫酸により溶けやすい磁鉄鉱や黒雲母は消失する 循環散布を続けることで 内部が埋まり また 粒子表面も覆われる 2. 鉱石層下部での阻害 ( 水酸化鉄が主な沈殿物 ) 1M 硫酸散布時に 磁鉄鉱 黒雲母の溶解が一気に進み 鉄イオン濃度が高くなった液が 下部へ移動するにつれて PH が上昇するために 鉱石粒子間を埋めるほどに沈殿し 流路を閉塞する 浸出液がほとんど流れなくなり 易溶性鉱物も残存する

実証試験のまとめ 16 IOCG 型鉱石特徴利点欠点 鉄品位が高い 易溶性鉱物の割合が高い 鉄酸化細菌と硫黄酸化細菌が自生 酸との反応熱で蓄熱 酸化剤 (Fe 3+ ) を自給 リーチング時の酸消費が多く ph 上昇が大きい 鉄が沈殿する 黒雲母や磁鉄鉱と硫酸との反応で酸化剤 Fe 3+ が溶出し 黄銅鉱の酸化溶解が期待された ヒープ内を流れる鉄イオンの増大 易溶性鉱物の割合が高く 中和熱の発生で黄銅鉱浸出が促進される 鉱石層内の ph が急上昇 利点と考えていた化学的性質の結果生じる沈殿物が物理的に浸出を阻害した 化学的利点を活かしたまま 沈殿による物理的阻害を抑制できればカラムと同程度 (60%) の銅浸出率は達成できると言える 1 つの可能性は 鉱石層を低くすること

IOCG 型鉱石での浸出方法の改善策 17 1M 硫酸散布中から鉱石層内に鉄沈殿物は発生しており 下部の流路閉塞をもたらしていた可能性 1M 硫酸で溶出した鉄が沈殿する前に鉱石層外へ出す 鉱石層を低くすることで流路が短くなり ph 上昇 ( 沈殿生成 ) が抑えられる 高さ 3.5m では 1M 硫酸散布中の鉄沈殿物生成をかなり抑制 循環散布中の鉄沈殿も硫酸濃度が低いが抑制 0.1M 循環散布でも浸出率はほぼ同等 浸出期間同じ 150 日間でも大きく劣らない 高さ 3.5m 高さ 5m 36.5% 0.3M 循環 35.2% 0.1M 循環

浸出コスト低下への期待 18 1M 硫酸散布中 循環散布の場面 1M 硫酸 0.1M 硫酸切替後 浸出速度が変わらない 洪水被害で長期中断したため沈殿が生じ 浸出速度落ちた 0.80 0.70 0.60 0.50 0.40 0.30 0.31 46.43 0.34 23.70 69.68 0.59 34.47 58.61 80 70 60 50 40 30 0.20 14.26 20 0.10 10 硫酸使用量がもっと少なかった可能性 0.00 循環散布期間を短くすることに繋がり 加温する場合は加温コスト にも繋がる 第 3 条件第 4 条件第 5 条件 銅浸出量 [t-cu] 左軸 硫酸使用量 [t] 右軸 硫酸使用量 [t/ t-cu] 右軸 問題点鉱石層を低くするため 同じ鉱石量を処理するためにより広い面積を要する 0

今後の方針 ( ポーフィリー型鉱石を対象 ) 19 難溶性鉱物 易溶性鉱物 鉄を含む鉱物 易溶性鉱物の割合が少ない 石英が非常に多い 酸消費量が少ない 酸との反応性は温度に依存しない IOCG に比べて 銅浸出停滞の原因であった鉄沈殿物の発生が起こりにくい 石英などの難溶性鉱物に覆われている黄銅鉱が多いと予想される 黄銅鉱の浸出に必要な酸化剤 (Fe 3+ ) と温度が足りない恐れがある 今後 浸出に適した粒度 鉄酸化細菌による溶出した鉄を酸化剤として再利用するモデルの再検討 常温でも黄銅鉱からの銅浸出が比較的早い酸化剤の利用などを検討し 低品位ポーフィリー型鉱石からの効率的な銅浸出方法を見出す

浸出率 20 第 1 条件第 2 条件第 3 条件第 4 条件第 5 条件カラム 粒度 <10 mm <10 mm <10 mm <7 mm <7 mm <7 mm 鉱石 処理 アグロメレーション ( 水 ) アグロメレーション ( 水 + 硫酸 ) 水洗いにより微粉除去 水洗いにより微粉除去 水洗いにより微粉除去 水洗いにより微粉除去 浸出液 鉱石量 169 t 197 t 142 t 182 t 208 t 10 kg 高さ 4 m 5 m 3.5 m 5 m 5 m 1 m 散布流量 6.8L/h/m 2 10L/h/m 2 10L/h/m 2 10L/h/m 2 10L/h/m 2 10L/h/m 2 1 M 硫酸 19 日間 30 日間 17 日間 36 日間 37 日間 157 日間 循環散布 0.1 M 0.1 M 0.1 M 0.1 M 0.2 M~ 0.3 M バクテリア接種なしありありなしなしなし - エアレーションなし適宜適宜なしなしなし 銅浸出率 2.3% / 101 日 6.8% / 294 日 35.2% / 250 日 31.8% / 232 日 36.5% / 154 日 58.9 % / 157 日 結果 鉱石層の閉塞 鉱石層の閉塞 浸出率は改善したが バクテリア接種の効果見られず バクテリアが自生するも浸出液の流れの阻害あり 浸出期間の短縮 鉄沈殿なし