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2010 年 1 月 28 日 IASB Sir David Tweedie 議長 当協会 (JLA) は 国際会計基準審議会 (IASB) 及び米国財務会計基準審議会 (FASB) ( 以下 両審議会 という ) におけるリースプロジェクトの動向に強い関心と懸念を持っています 両審議会は ディスカッション ペーパー リース予備的見解 ( 以下 借手 DP という ) に対するコメントの取りまとめ後 リース会計に関する検討を進め 2010 年第 2 四半期に 借手と貸手両方の会計処理を網羅したリース会計の公開草案を公表することとしています しかしながら 当協会は 貸手の会計処理に関するディスカッション ペーパーが公表されないまま 公開草案へと進むことを強く危惧し 両審議会は 公開草案公表前に 貸手の会計処理に関するディスカッション ペーパーの作成及び公表というデュープロセスを経るべきであると考えています 当協会のみならず 世界各国の関係者も同様に考えているものと確信しています また 当協会は IASB に対して借手 DP に対するコメントを提出しましたが これまでの両審議会における審議からは 当協会を含めた多くのコメントに対する検討状況が必ずしも明らかではありません 以上のことから 当協会は 両審議会のプロジェクトについて現時点でコメントする正式な機会が与えられているわけではありませんが 別添のとおりリースプロジェクトに対するコメントを提出することとしました 両審議会が当協会のコメントに対して前向きに検討されることを強く期待致します 社団法人リース事業協会会長陶浪隆生

リースプロジェクトに対する JLA コメント 1. デュープロセス 1.1 国際会計基準審議会 (IASB) 及び米国財務会計基準審議会 (FASB)( 以下 両審議会 という ) が公表したディスカッション ペーパー リース予備的見解 ( 以下 借手 DP という ) に対するコメントの大半は 貸手の会計処理の検討の延期に反対し 貸手と借手の両方の側面から同時に検討されるべきとし また 公開草案 ( 以下 ED という ) の公表前に貸手の会計処理に関するディスカッション ペーパー ( 以下 貸手 DP という ) を別途公表することを強く求めている (2009 年 9 月 IASB/FASB 会議 :IASB Agenda Reference 6A の 13,16) 1.2 当協会は 新基準を公表する際には 借手と貸手の両方の会計処理が含まれるべきであり 借手 DP の公表に続いて 両審議会は 貸手 DP を公表し これらに対するコメントを踏まえ 借手と貸手の両方の会計処理を含む DP を公表した後 公開草案 それに続く新基準を公表すべきであると主張した ( 借手 DP に対する JLA コメント 6.1, 29) 1.3 一方 2009 年 11 月 5 日に公表された FASB と IASB の共同声明 FASB と IASB による覚書 (MOU) に対するコミットメントを再確認 (FASB and IASB Reaffirm Commitment to Memorandum of Understanding, A Joint Statement of the FASB and IASB: November 5, 2009) のうち 付録 A:MOU プロジェクトの完成への道筋 (Appendix A: Pathway to Completion of MoU Projects) において リースプロジェクトのマイルストーンの目標 ( 借手及び貸手のリース会計の公開草案及び最終基準の公表時期 ) が示された 1.4 借手 DP では 両審議会が借手の会計モデルの開発を優先し 貸手の会計モデルについて詳細な議論を行っていないために 2 つのアプローチを紹介するに留まっていた 借手 DP 第 10 章の記述内容は 貸手の会計処理に関する質問に対してコメントするには不十分であることから 当協会は その段階で貸手の会計処理の内容に関して言及しないこととした ( 借手 DP に対する当協会コメント 28) 1.5 その後 両審議会は貸手の会計モデルの検討を進め 履行義務アプローチ の採用を暫定的に決定したが このアプローチは 現行の貸手の会計処理と全く異なるばかりでなく 借手の会計モデルとの整合性の面や この会計処理をすべてのリースに適用することに多くの問題を含んでいる ( 2. 貸手の会計処理 参照 ) 1.6 貸手の会計モデル開発にあたっては 当然ながら ED 公表前に貸手 DP が公表されるものと期待していたが そうしたプロセスを経ずに いきなり借手の会計処理とあわせて ED という形で公表するプロセスは 決して適正とは言えない 現行のリ 1

ース会計基準に代わり 世界の大多数が採用する新しいリース会計モデルを開発するという観点からも 当協会は 両審議会が貸手 DP を作成及び公表し 幅広くコメントを求めるというデュープロセスを経て そのコメントを踏まえた慎重かつ十分な議論を行ったうえで 借手と貸手の双方について整合性を確保した DP の公表 そして ED の公表という手続きを踏まれることを強く要望する 2. 貸手の会計処理 2.1 履行義務アプローチの問題両審議会が暫定的に決定している貸手の会計処理 ( 履行義務アプローチ ) には 次のような問題が含まれている (a) 新たな義務の創設の問題借手の使用権モデル ( 使用権資産及びリース料支払義務に係る負債の認識 ) を採用した根拠の一つに リース物件の引渡しによって貸手の義務が履行されていることがあげられる そのことは 借手には無条件のリース料支払義務があると結論付けている ( 貸手がリース物件の使用を許可しない限り借手のリース料支払義務はないとするもう一方の考えを否定している ) ことから明らかである ( 借手 DP para.3.18,3.19) また 認識中止アプローチに関する記述においても 貸手はリース資産の使用を許可する負債を負わないとしている (2009 年 5 月 IASB/FASB 会議 :IASB Agenda Paper 11 の 22,23) 当協会は リース物件の引渡しによって必ずしも貸手の履行義務が完了するとは考えていないが 履行義務アプローチにおいて 貸手は借手に対してリース期間中のリース物件の使用を許可することが義務付けられている という説明は ( 同 Paper の 32.) 無条件のリース料支払義務があるとして借手の使用権モデルを採用したことと矛盾する すなわち 借手の会計処理でリース契約の未履行性を否定し 貸手の会計処理でそれを認めるという矛盾に関して 両審議会は ED 公表の前に広くコメントを求めるべきである (b) 新たな権利の創設の問題貸手が借手からリース料を収受する権利は アプローチの違いによって異なる性質のものではないと思われる (2009 年 5 月 IASB/FASB 会議 :IASB Agenda Paper 11 の 14,15) しかし リース料を収受する権利は 認識中止アプローチの下では借手のリース物件を使用する権利との交換として位置付け ( 同 Paper の 18.) 履行義務アプローチの下では 借手にリース物件の使用を許可する絶対的な義務 ( 履行義務 ) に対応して新たに創設する権利として位置付けている ( 同 Paper の 35.) 仮に貸手のリース物件の使用を許可する絶対的な義務がリース期間にわたって継続するような性質のものであれば この新たな権利の創設という考え方も有り 2

得るかも知れない しかしながら そうであれば 上記 (a) で指摘したとおり 貸手にリース期間にわたってリース物件の使用を許可する絶対的な義務があり リース料の回収にあわせ当該義務が履行されていくとの考え方が適切か 両審議会は ED 公表の前に広くコメントを求めるべきである (c) リース資産とリース債権両方を認識する問題履行義務アプローチの下では リース物件を経済資源として取扱い 貸手は リース期間中もリース資産に対する支配を失わず リース物件を引続き認識することとしている (2009 年 5 月 IASB/FASB 会議 :IASB Agenda Paper 11 の 32.) この 支配 の定義について 11 月会議までのペーパーに明確な記述は見当たらないが 原資産の購入 / 販売の検討の中で 原資産の支配が移転しているかどうかでリース会計基準の適用の範囲か除外かを判断することとしている (2009 年 12 月 IASB/FASB 会議 :IASB Agenda Reference 4D の 15) 収益認識プロジェクトにおける検討とも関連するのであろうが 貸手はリース資産の支配を失わないというこの 支配 と 一方でリース料を収受する絶対的な権利を有することとの関連 すなわちリース期間中のリース資産とリース料を収受する権利の関連性 これらの資産を同時に認識することについて より明確に説明する必要がある 表示については 今後検討される予定であるが 収益認識プロジェクトとの整合性を考えると 債権と履行義務はネットで表示されることになろう しかしながら ネット表示かグロス表示かの暫定的決定がなされてない現時点において 例えば 現行のファイナンス リースのようなリースについては 経済的便益の流入とリスクを遥かに上回る資産が計上されることになる ( 単純に表現すれば 2 倍の資産が計上されることになる ) この資産の情報は何を目的として財務諸表利用者に提供するか疑問である リース資産とリース債権の両方を認識することによる総資産の増加を通じて 投資判断等に重要な自己資本比率 ROA といった財務指標に大きな影響を与え リ- ス事業を行う会社と行わない会社の比較可能性を損ねることになる 結果として 投資家ほか財務諸表利用者は 比較可能性を保つために 財政状態報告書の修正を迫られることになり また 誤解を誘発する原因にもなりかねない 履行義務アプローチは こうした表示の観点からも関係者からの意見を聴取する必要がある グロス表示は 当協会を含むすべての貸手関係者にとって受け入れ受け難いものである 更に 転リース取引における中間貸手にとっては 使用権資産とリース債権という 2 つの資産を認識するという問題があり 十分な検討が必要である 2.2 借手の会計モデルを含めたアプローチの是非当協会は 借手 DP に対して すべてのリースに現行のファイナンス リースと同様の会計処理を適用することは適切でなく 却って新たな問題が生じること また 3

サービス的性格の強いリースについては むしろリース期間中に借手が支払うべきリース料の合計額で使用権資産を認識するのが適切であり したがって 現行基準のように一定の線引きを行い サービス的性格の強いリースについては支払リース料の合計額で使用権資産とリース料支払義務を当初に認識できることを認めるべきであると主張した ( 借手 DP に対する JLA コメント 3.1,3.2, 8, 10, 11) 両審議会は 使用権モデルの貸手への適用にあたり 履行義務アプローチのほか 認識中止アプローチ オペレーティング リースアプローチ 二元的アプローチについても検討している (2009 年 10 月 IASB/FASB 会議 :IASB Agenda Reference 10C) 両審議会は 履行義務アプローチを採用し他のアプローチを採用しないことについても ED 公表の前に貸手 DP において明らかにし 広くコメントを求めるべきである 履行義務アプローチの問題点については 2.1 のとおり指摘したところであるが 当協会は 認識中止アプローチについても すべてのリースにこのアプローチの適用を求めることは 膨大かつ多様な形態のリースを取扱う貸手にとって 実務上 極めて対応困難であると考えている 多様なリース契約形態が存在し 財務諸表利用者のニーズのみならず借手 貸手の財務諸表作成者の実務及びコスト ベネフィットをも考慮すると 単一の会計処理の適用が必ずしも望ましいとは言えない このような観点から 借手と貸手の会計処理の整合性を考慮しながら 借手については 使用権モデルの原則 当協会が提案するアプローチ オペレーティング リースアプローチ 貸手については 認識中止アプローチ 履行義務アプローチあるいはオペレーティング リースアプローチといったさまざまなアプローチの適用可能性を検討すべきである 3. その他の重要な問題 3.1 随時解約可能なリースについての会計処理上記 2.2 のコメントとも関連するが 当協会は 借手 DP に対して 使用権モデルは解約不能リースに限定して適用し 解約不能リース以外のリース ( 解約可能リース ) については現行のオペレーティング リースに適用されている会計処理を規定すべきであると主張した ( 借手 DP に対する JLA コメント 2.2, 4) 借手 DP において 随時解約可能なリースに係る使用権資産の資産性及びリース料支払義務の負債性は明記されていないが 当協会は 随時解約可能なリースについては当然にオペレーティング リースアプローチが適用されるものと考える 3.2 当初に認識するリース期間両審議会は オプションの取扱いについて暫定的な決定を行い 借手と貸手はすべての関連する要素を考慮し 可能性の高い最長リース期間に基づいて認識することとしている (2009 年 11 月 IASB/FASB 会議 :IASB Agenda Reference 5D の 37,41 5G の 5,28,33) 4

オプションの取扱いについては 実務上の問題はもちろんのこと 借手にとっての負債性 貸手にとっての資産性について十分な検討がなされていない 当協会は 資産及び負債の認識において 選択権のような不確実な要素は考慮されるべきではなく 選択権の価額が 行使に対する大きなインセンティブを借手に与えるものでない限り ( 例えば 現行基準で規定されている 割安購入選択権 がこれに該当する ) 借手は 契約上のリース期間に基づいてリース料支払義務及び使用権資産を当初測定すべきと主張した ( 借手 DP に対する JLA コメント 4.1, 19, 20 参照 ) 借手が解約可能期間のリース料支払の可能性について 財務報告基準日現在において負債計上することの妥当性についても疑問がある 当協会は 貸手に対するオプションの取扱いに関する考え方も同様であり むしろ膨大なリース契約を取扱う貸手が契約毎に可能性の高い最長リース期間を見積もり これを債権として計上することは 借手以上に実務上不可能であり その資産性にも疑問がある したがって 当初に認識するリース期間は 借手 貸手双方に整合性がとれる 契約上の解約不能リース期間 に限られるべきである 3.3 非中核資産に対する適用除外について両審議会は 12 月会議で適用範囲について検討している スタッフは 一報告期間またはそれ未満を短期リースとして定義付け 借手はこの短期リースについて新基準の適用除外とすることを提案し また非中核資産については適用除外としないことを提案している (2009 年 12 月 IASB/FASB 会議 :IASB Agenda Reference 4F の 35,36,48) 両審議会は 12 月会議において 短期リースの取扱いに関しては暫定的決定を行っていないが 非中核資産についてはスタッフ提案に暫定的に合意している 当協会は リース期間が 1 年以内の短期リース取引のもとで生じる権利と義務の認識及び測定に伴うコストは便益を上回り また当該リース取引に係る資産は借手にとって重要性が乏しい資産である場合が多いことから 1 年以内のリース取引について 現行のオペレーティング リースに適用されている会計処理を適用すべきであると主張した ( 借手 DP に対する JLA コメント 5, 6) 更に当協会は 非中核資産とは 借手の事業内容に照らして重要性が乏しい資産であり 借手が あるリース資産を重要性が乏しい資産として判断した場合には 現行のオペレーティング リースに適用されている会計処理を適用すべきあると主張した ( 借手 DP に対する JLA コメント 5, 6) 借手 DP は 非中核資産の定義の困難性や 財務諸表利用者の比較可能性の減少を指摘しているが ( 借手 DP para.2.17) 新基準の適用にあたってのコストとベネフィットの分析が十分にされていない したがって 両審議会は ED 公表前に借手と貸手双方の会計処理を網羅した DP の中で当該分析を行い それを明らかにしたうえで 両審議会の考え方に対して広くコメントを求めるべきである 以上 5