Similar documents
<4D F736F F D AAE90AC94C B835794D48D8682C882B5816A915395B68CB48D652E646F63>

B 農場は乳用牛 45 頭 ( 成牛 34 頭 育成牛 7 頭 子牛 4 頭 ) を飼養する酪農家で 飼養形態は対頭 対尻式ストール 例年 BCoV 病ワクチンを接種していたが 発生前年度から接種を中止していた 自家産牛の一部で育成預託を実施しており 農場全体の半数以上の牛で移動歴があった B 農場

< F2D382E8D9596D198618EED82C982A882AF82E98B8D94928C8C9561>

Microsoft Word - 宮崎FMDマニュアル⑦ 指針別紙(評価)

(Taro-09\221S\225\ \221S\225\266\217\274\226{.jtd)

ナショナルショウ開催要項 (2001年)

13. 申込期限平成 28 年 4 月 22 日 ( 金 ) まで事務局 ( ホル協 ) へ申込むものとする 申込み締切り後は 申込牛及び7 部のリードマンの入替えは認めない 14. 申込の方法出品希望者は 申込書に登録証明書の写し ( 登録申請中のものは 登録申請書写し ) と出品申込料を添えて各

A 農場の自家育成牛と導入牛の HI 抗体価の と抗体陽性率について 11 年の血清で比較すると 自家育成牛は 13 倍と 25% で 導入牛は 453 倍と % であった ( 図 4) A 農場の個体別に症状と保有している HI 抗体価の と抗体陽性率を 11 年の血清で比較した および流産 加療

又 真菌症等の皮膚病に罹患していないこと及びイボ等体表 ( 乳房も含む ) に異常のないこと 11. 出品者の資格 ホルスタイン種牛又はジャージー種牛を所有する者 ただし 同一農家の親子関係にあっては その限りでない (2) 農業高校出品牛も含む ただし 農林水産祭には参加しない 12. 出品申込所

Taro-19増田

<4D F736F F D A4A8DC CC B681408BE695AA>

コラム 口蹄疫とは 口蹄疫とは 口蹄疫ウイルスにより 牛 豚等の偶蹄類が感染する伝染病です O 型や A 型等の様々なタイプ (7 種類 ) がありますが すべて同様の症状を示します すいほう発症すると 牛 豚等の口や蹄に水疱 ( 水ぶくれ ) 等の症状を示し 産業動物の生産性 を低下させます 口蹄

13 プール法 県北 藤井

ph

★1-8

Taro-H26-01○【差替】 (佐藤)

背景 消費者の食品の安全性に対する関心 要求は 平成 7 年の腸管出血性大腸菌 O157による食中毒事件を機に一気に高まり 消費者は 安心して食べられる安全な食品 を強く求めています このような消費者の要望に応えるため 食品業界では食品の安全性の確保のため世界的に有効な衛生管理手法として認められてい

家畜共済の特長 家畜共済は 畜産農家 特長 1 低額な掛金 NOSAI の家畜共済は 国の政策保険です 掛金の約半分を国が負担するので 生産者様の負担はぐっと小さくなります 搾乳牛 100 頭あたり 5 割補償約 473 万円 肥育牛 100 頭あたり 5 割補償約 172 万円 繁殖牛 100 頭

( 欠席 ) 松岡隆介 厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課課長補佐 関係省庁( オブザーバー 荻窪恭明 農林水産省消費 安全局畜水産安全管理課課長補佐 山野淳一 農林水産省消費 安全局動物衛生課課長補佐 本会 山根義久 会長 近藤信雄 副会長 矢ヶ崎忠夫 専務理事 Ⅳ 議事 1 職域別部会の運

< F2D8E94977B897190B68AC7979D8AEE8F80967B91CC2E6A7464>

2 報告事項 (1) 家畜所有者の氏名 ( 名称 ) 及び住所 ( 当該所有者以外の管理者がある場合にあっては 当該管理者の氏名 ( 名称 ) 及び住所 ) (2) 農場 ( 家畜の飼養場所 ) の名称 ( 無い場合は記入不要 ) 及び所在地 ( 飼養場所は必ず記載してください ) (3) 飼養して

地域における継続した総合的酪農支援 中島博美 小松浩 太田俊明 ( 伊那家畜保健衛生所 ) はじめに管内は 大きく諏訪地域と上伊那地域に分けられる 畜産は 両地域とも乳用牛のウエイトが最も大きく県下有数の酪農地帯である ( 表 1) 近年の酪農経営は 急激な円安や安全 安心ニーズの高まりや猛暑などの

< E816A95CA8B4C976C8EAE91E631348D E88AFA95F18D908F91976C8EAE816A2E786C7378>

成 21~22 年にかけて農林水産省の委託事業において動物衛生研究所 ( 現農業 食品産業技術総合研究機構動物衛生研究部門 ) が中心となり, 約 30 年ぶりに BLV 浸潤状況に関する全国調査を実施した. 本調査では, 移行抗体が消失する 6ヶ月齢以上の乳用牛 11,113 頭, 肉用牛 9,7

Taro-H19BLV(修正済み)成績書

Taro-H23.08

記 1. 牛 豚等の飼養農場における飼養衛生管理の確認及び指導の徹底について家畜防疫員は 法第 51 条の規定に基づき 家畜 ( 牛 水牛 鹿 めん羊 山羊 豚及びいのししをいう 以下同じ ) の大規模所有者 ( 家畜伝染病予防法施行規則 ( 昭和 26 年農林省令第 35 号 ) 第 21 条の2

北海道 1. 家畜の飼養に係る衛生管理の状況 (1) 報告農場数及び頭羽数 牛乳用肉用報告数報告数報告数 うち大規模 うち小規模 うち左記以外 うち大規模 うち小規模 うち左記以外 うち大規模 うち小規模 うち左記以外 うち大規模 うち小規模 うち左記以外 うち大規模 うち小規模 うち左記以外 うち

鳥取県 1. 家畜の飼養に係る衛生管理の状況 (1) 報告農場数及び頭羽数 牛乳用肉用報告数報告数報告数 うち大規模 うち小規模 うち左記以外 うち大規模 うち小規模 うち左記以外 うち大規模 うち小規模 うち左記以外 うち大規模 うち小規模 うち左記以外 うち大規模 うち小規模 うち左記以外 うち

第 3 節水田放牧時の牛白血病ウイルス対策 1. はじめに水田放牧のリスクの一つとして, 感染症があります 放牧場で広がりやすい牛の感染症の中でも, 牛白血病は近年わが国で非常に問題となっています この節では, 牛白血病の概要説明とともに, 水田放牧を行う際に取るべき牛白血病対策について紹介します

狂注調査依頼文書

最近の動物インフルエンザの発生状況と検疫対応

2 被検材料逆転写反応は AI ウイルス陽性 RNA(H3 H5 H7eu H7am) を鋳型とし 酵素に M-MuLV Reverse Transcriptase プライマーに Random 6 mers を使用し相補鎖 DNA( 以下 cdna) を合成した 反応条件は 37 で 15 分 85

Taro-79号.jtd

現在 本事業で分析ができるものは 1 妊娠期間 2 未経産初回授精日齢 3 初産分娩時日齢 / 未経産妊娠時日齢 4 分娩後初回授精日 5 空胎日数 6 初回授精受胎率 7 受胎に要した授精回数 8 分娩間隔 9 供用年数 / 生涯産次 10 各分娩時月齢といった肉用牛繁殖農家にとっては 極めて重要


< F2D915395B68CB48D65288D828E52816A2E6A7464>

る 飼料は市販の配合飼料を使用している 発生場所である肥育豚舎エリアの見取り図を図 1に示した 今回死亡豚が発生したのは肥育舎 Aと肥育舎 Dで 他の豚舎では発生していないとの事であった 今回病性鑑定した豚は黒く塗りつぶした豚房で飼育されていた なお この時点では死亡例は本場産の豚のみで発生しており

家畜保健衛生所における検査の信頼性確保にむけて 湘南家畜保健衛生所 田村みず穂駒井圭浅川祐二太田和彦 矢島真紀子中橋徹松尾綾子稲垣靖子 はじめに 家保の検査の中には 鳥インフルエンザやヨーネ病等の 社会的 経済的影響の大きい検査が含まれている 食の安全 安心を得るためには生産から消費に至る食品供給の

12 牛白血病対策のため考案したアブ防除ジャケットの実用化試験 東青地域県民局地域農林水産部青森家畜保健衛生所 菅原健 田中慎一 齋藤豪 相馬亜耶 水島亮 林敏展 太田智恵子 森山泰穂 渡部巌 小笠原和弘 1 概要わが国では近年 牛白血病の発生が増加しているが その原因である牛白血病ウイルス (BL

学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot

6-1 指定食肉 ( 豚肉及び牛肉 ) の安定価格肉用子牛の保証基準価格等算定概要 生産局 平成 27 年 1 月

資料 6-1 指定食肉 ( 豚肉及び牛肉 ) の安定価格肉用子牛の保証基準価格等算定概要 生産局 平成 27 年 12 月

第 3 回北海道食の安全 安心委員会 BSE 専門部会 次第 とき平成 25 年 4 月 24 日 ( 水 )10:00~ ところ北海道第二水産ビル 8 階会議室 1 開 会 2 挨 拶 3 議 題 (1) 検討事項 ア イ 非定型 BSE について 都府県に対する BSE 検査の方針に関するアンケ

Welcome to Adobe GoLive 5


2 肉用牛肥育経営安定特別対策事業 ( 牛マルキン ) について 牛マルキンとは 肉用牛肥育経営の安定を図ることを目的として 肉用牛肥育経営の収益性が悪化した場合に 生産者の拠出と機構の補助により造成した基金から 粗収益と生産コストの差額の8 割を補塡する事業である 粗収益は期間中に食肉卸売市場また

動物衛生研究所が「牛疫ウイルス所持施設」に認定

Taro-handbook2.jtd

ウルグアイからの生鮮牛肉の輸入に係るリスク評価報告書 ( 案 ) 概要 平成 30 年 3 月 22 日消費 安全局動物衛生課 Ⅰ 経緯 1. ウルグアイは かつては口蹄疫非接種清浄国として OIE に認定されていたが 2000 年の口蹄疫の発生を受け ワクチン接種による防疫手法に切り替え 2003

< F2D8CFB92FB897591CE8DF493C195CA915B AD68C578270>

農林畜産食品部 ( 長官イ ドンピル ) は口蹄疫 高病原性鳥インフルエンザなどの家畜疾病防疫体系改善を反映した家畜伝染病予防法が 2015 年 6 月 22 日付けで改正 公布されたことをうけ 後続措置として 家畜伝染病予防法施行令及び施行規則 の立法手続きが完了し 2015 年 12 月 23

「牛歩(R)SaaS」ご紹介

システムの構築過程は図 1 に示すとおりで 衛生管理方針及び目標を決定後 HAC CP システムの構築から着手し その後マネジメントシステムに関わる内容を整備した 1 HACCP システムの構築本農場の衛生管理方針は 農場 HACC P の推進により 高い安全性と信頼を構築し 従業員と一体となって

られる 3) 北海道での事例報告から 100 頭を超える搾乳規模での発生が多かった (33 例 82.5%) 冬から春にかけての発生がやや多い傾向 2006 年は 9 例 2007 年は 6 例が発生 全道的にも増加していると推察された 発生規模は 5~20% と一定で 搾乳規模に相関しなかった 発

Ⅰ 本ガイドラインの目的及び位置付け牛白血病のうち牛白血病ウイルス (bovine leukemia virus 以下 BLV という ) により引き起こされる地方病性牛白血病 ( 以下 本病 という ) は 近年 我が国での発生が増加しており 生産現場での被害も増加傾向にある このガイドラインは

スライド 1

Taro-H28.11

参考1中酪(H23.11)

受精卵移植に関する登録取扱要項

重要事項説明書(家畜)

<4D F736F F D2095BD90AC E93788E968BC68C7689E62E646F6378>


<4D F736F F F696E74202D F18F6F817A E338C8E816A97418F6F93FC8BA68B6389EF835A837E B2E >

埼玉県調査研究成績報告書 ( 家畜保健衛生業績発表集録 ) 第 57 報 ( 平成 27 年度 ) 9 牛白血病ウイルス感染が生産性に及ぼす影響 中央家畜保健衛生所 畠中優唯 Ⅰ はじめに牛白血病は散発性と地方病性 ( 成牛型 ) の2つに分類される 牛白血病ウイルス (BLV) 感染を原因とする地

H28年度 業績発表会抄録

(Microsoft Word -

平成 26 年度 ~27 年度施策評価票 評価する施策下記施策の体系による 総合計画との関連 施策の体系 2 - 肉用牛の振興酪農の振興養豚の振興養鶏の振興家畜防疫と環境保全食肉流通体制の充実 施策の内容と現況 (1) (2) (3) (4) (1) (2) (3) (4) (5) (6) 中分類畜

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール

Microsoft Word - ★TSE検査実施要領(H20.12_.doc

事業番号 0296 平成 23 年行政事業レビューシート ( 厚生労働省 ) 事業名 BSE 対策など食肉の安全確保対策推進事業 担当部局庁 医薬食品局食品安全部 作成責任者 事業開始 終了 ( 予定 ) 年度平成 14 年度担当課室監視安全課滝本浩司 会計区分一般会計施策名 - 根拠法令 ( 具体

褐毛和種(熊本系)の遺伝的能力の推移について

<4D F736F F F696E74202D2091E F181408E9197BF B7982D CC8A C689DB91E8>

特集 : 世界の牛肉需給と肉牛 牛肉産業の状況 EU の牛肉需給と肉牛 牛肉産業の状況 調査情報部国際調査グループ 要約 EU は 世界第 3 位の牛肉生産量を誇る 28 の加盟国では 多様な気候や文化 歴史により 牛肉の生産や消費形態に大きな違いはあるものの 生産については 酪農部門の強い影響を受

Title 日本における牛白血病ウイルスの浸潤状況と伝播に関する疫学的研究 ( 本文 (Fulltext) ) Author(s) 小林, 創太 Report No.(Doctoral Degree) 博士 ( 獣医学 ) 乙第 139 号 Issue Date Type 博士

第 2,883 号島根県報 告 示 島根県告示第 90 号介護保険法 ( 平成 9 年法律第 123 号 ) 第 41 条第 1 項の指定居宅サービス事業者及び同法第 53 条第 1 項の指定介護予防サービス事業者から当該指定居宅サービスの事業又は当該指定介護予防サービスの事業の廃止の届出があったの

PowerPoint プレゼンテーション

出生の届出のページ画面 6 一行取消選択中の行を削除します 7 農家コード 届出する農家コードを表示します 個体識別番号から種別までのいずれかのデータを入力した行に 2で表示されている農家コードが自動入力されます 8 個体識別番号 届出する牛の個体識別番号を入力します 13 に表示されている個体識別

Microsoft Word - ä¿®æ�£612ï¼›å®¶çŁœè¡łçfl�ㆨㆉㆡ(H30.ï¼Łæœ‹å‘·).docx


はじめに 家畜保健衛生所が実施する事業 検査 調査等の業績は 各都道府県並びにブロックで毎年度に開催される家畜保健衛生業績発表会で発表 討議されている この全国家畜保健衛生業績抄録は 各都道府県の平成二十三年度の発表会の抄録を編集したものであり 発表された全ての演題が収載されている 抄録の配列は家畜

Microsoft Word 村田.doc

<4D F736F F D DC58F4994C5817A8D4C93878CA782C982A882AF82E989C6927B947282B982C295A882CC CC91A F0907D82E982BD82D

< F2D946E8AB490F58FC D836A B C>

H27年度 業績発表会抄録

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

安全な畜産物の生産と生産性の向上適正な飼養管理家畜の健康の維持 家畜のアニマルウェルフェア (Animal Welfare) とは 国際獣疫事務局 (OIE) のアニマルウェルフェアに関する勧告の序論では アニマルウェルフェアとは 動物が生活及び死亡する環境と関連する動物の身体的及び心理的状態をいう

< F2D915395B68CB48D BD816A2E6A7464>

スライド 1

日本中医師会家畜衛生委員会報告(素案)

平成 30 年度 家畜共済 ( 種豚 肉豚 ) NOSAI 岩手

家畜衛生ニュース-中央

国外の発生状況 アジア地域中国 韓国 台湾 ベトナム タイ及びフィリピンにおいて 本病の流行が確認されています 北米地域米国では 昨年 月のオハイオ州の発生以降 急速に発生が拡大し 今年 月 30 日時点 9 州 6,6 件の発生が確認されています また カナダにおいては 今年 月 ~ 月 アメリカ

11 年度以降 これまでに採択した新規参入者は215 者である 道県別にみると 宮崎県が38 者と最も多く 次に鹿児島県の34 者 北海道の31 者 長崎県の26 者となって いる ( 図 1) なお 直近の採択となった 26 年度は 5 県 7 事業実施主体で 新規参入者 10 者を採択した 図

第2号議案 平成24年度事業計画並びに収支予算案について

Microsoft Word - ani_app_12_40

主な内容 腸管出血性大腸菌とは 2 肉用牛農場における全国的な保有状況調査 3 継続的な保有状況調査 4 乳用牛農場における STEC O7 及び O26 保有状況調査 5 消化管内容物 肝臓 胆汁調査 2

(Microsoft Word - \221S\225\266\214\264\215e \222\206\223\207.doc)

長野県主要農作物等種子条例 ( 仮称 ) 骨子 ( 案 ) に関する参考資料 1 骨子 ( 案 ) の項目と種子の生産供給の仕組み 主要農作物種子法 ( 以下 種子法 という ) で規定されていた項目については 長野県主要農作物等種子条例 ( 仮称 ) の骨子 ( 案 ) において すべて盛り込むこ

報告風しん

Transcription:

1 管内の牛ヨーネ病検査と患畜の発生状況 県央家畜保健衛生所 池田暁史仙波裕信 横澤こころ前田卓也 はじめに 牛ヨーネ病は 昭和 年に家畜伝染病予防法 ( 以下 法 という ) の 家畜伝染病に指定されて以降 発生頭数が増加し 平成 1 年の法改正に伴い撲滅対象疾病として全国的に定期検査を行っている 1) 本県では法第 5 条の規定に基づく牛ヨーネ病検査を平成 11 年度から開始した その後 当所管内においては 平成 3 年 1 月までに 17 頭のヨーネ病患畜が摘発された 全国の年次の牛ヨーネ病発生頭数を図 1 で示す 法第 5 条に基づく検査が開始された平成 11 年以降 頭以上で推移している 平成 年以降は スクリーニング法を組み合わせた検査法に変更 され 5 頭以下で推移している 本県の発生頭数は 平成 5 年に下痢を発症した牛 頭が摘発されて以降 患畜は摘発されていなかったが 検査開始後は 1 頭以下で推移している 管内は 5 頭以下で推移しており 検査開始当初と平成 17 年にピークがあり 平成 年以降は摘発されていない 頭数 1, 1, 1, 11 1 13 1 15 1 17 1 19 1 3 年次 図 1 全国の牛ヨーネ病発生頭数 本県の検査体制 本県の牛ヨーネ病検査は 県内を 地域にわけ実施している 平成 11 年から 年間は悉皆検査で 平成 13 ~ 1 年度は 過去 5 年以内の法第 条に基づく検査の証明がある牛は検査を省略する抽出検 - 1 -

査で 平成 17 年からは再び悉皆検査で行った 検査対象は 1 ヶ月齢以上の牛で 搾乳の用に供し または供する目的で飼養している雌牛 種付けの用に供し または供する目的で飼養している雄牛 3 繁殖の用に供し または供する目的で飼養している雌牛 改良増殖の用に供し または供する目的で輸入した牛のうち検疫終了 1 年未満の牛及び1またはの同居牛等となっている このほか 県内乳牛育成牧場入牧予定牛のような検査対象が ヶ月齢未満の場合は分離培養検査を行っている 成 績 県内の牛ヨーネ病検査頭数と発生頭数を図 に示す 悉皆検査を行った平成 11 年度及び平成 1 年度の検査頭数はそれぞれ, 頭を超えているが 抽出検査に変更した平成 13 年度からは, 頭程度に半減し 再び 平成 17 年度に悉皆検査となった段階で 頭数が増加し 平成 1 検査頭数 1,,,,, 検査頭数患畜頭数 11 1 13 1 15 1 17 1 19 1 年度 図 県内の牛ヨーネ病検査頭数と発生頭数 1 1 摘発頭数 年度以降 徐々に減少している こ の検査頭数の推移に連動し 発生頭数が変動しており 平成 13 年度に向けて減少傾向であったが 悉皆検査を行うと再び発生頭数が増加している 管内の患畜は 17 頭であり その品種は 県外から出荷されと畜場で発見された黒毛和種の 1 頭を除 く 1 頭 (11 戸 ) がホルスタイン種であった この黒毛和種 1 頭は本県での飼養歴がないため ホルスタイン種 1 頭について調査した ( 図 3) 1 頭の患畜の月齢は 1 ~ 97 ヶ月で平均 53. ヶ月で うち自家産 (1 頭 ) の平均は ヶ月で 県外導入 ( 頭 ) の 7 ヶ月より有意に若齢であった (p=.39 図 ) 頭 5 3 1 11 1 13 1 15 1 17 1 19 1 3 年次図 3 管内の牛ヨーネ病発生頭数 - -

当所管内で摘発された 1 頭のうち組織病変が認められた牛は 7 頭 (3. %) ヨーネ菌が分離された牛は 3 頭 (1. %) だった 組織病変および抗酸菌がともに確認された牛は 頭 (1.5 %) ともに認められなかった牛は 頭 (5 %) だった 1 頭のうち 自家産の患畜 1 頭で 組織病変が認められた牛は半数の 5 月齢 1 自家産県外産図 牛ヨーネ病患畜の月齢 頭 ヨーネ菌が分離された牛は 頭だった ヨーネ菌が分離されず 組織病変が認められた 3 頭のう ち 1 頭は預託歴があった また 抗酸菌及び組織病変とも認められなかった 5 頭のうち 頭は 飼養 していた農場が 県外導入もしくは県外預託を実施している農場であった 患畜が摘発されるまでに受けた検 1 査回数をみると 1 回目の検査で摘発された患畜は 頭 回目 頭 3 回目 頭で 半数の患畜が複数回の 頭 検査開始当初 順目以降 検査で摘発されていた ( 図 5) しか し 1 回目の検査で摘発された 頭 のうち 頭は検査開始当初の検査であったため これを除くと複数回の検査で摘発された患畜の割合はより 1 3 図 5 患畜の受検回数 高くなる 患畜が確認された農場の検査体制は 平成 1 年 1 月までは 神奈川県牛ヨーネ病防疫対策実施要領に基づき 患畜発生直後に全頭の糞便からのヨーネ菌の分離培養を行い 1 年目までは 飼養牛全頭について 回のエライザ法による検査 3 年目までは 1 年おきにエライザ法による検査を実施し すべてにおいて陰性を確認した場合 清浄化としていた 平成 1 年 11 月以降は 農林水産省が公表した牛のヨーネ病防疫対策要領に基づき発生後の検査頻度を高め 1 年で清浄化できることとなった さらに 平成 年 9 月からは 発生直後の検査等に迅速かつ高感度診断法であるリアルタイム PCR を用いた遺伝子検査が導入され まん延防止対策の強化が図られた - 3 -

発生頭数あたりの戸数は 患畜が 1 頭だけ摘発された農場が 戸 頭摘発された農場が 戸 頭摘発された農場が 1 戸であった ( 図 ) 頭摘発された農場は 平成 11 年の検査開始当初に 3 頭が同時に摘発され その 年後に導入牛 1 頭が摘発された 頭摘発された農場のうち 1 戸は 1 度の検査で 頭同時に摘発さ 戸数 1 1 3 図 1 農場あたりの発生頭数 れた事例で 他方の 1 戸は発生後の清浄性確認検査で 年後に摘発された事例であった 考 察 牛ヨーネ病患畜の発生頭数は 近年減少している これは患畜の早期摘発 とう汰と発生農場における清浄性確認検査が機能していることによると考えられる 患畜の月齢は 自家産が有意に若齢だったが 乳用牛では 受胎した未経産牛を導入することが多いことから 検査時点での平均月齢を押し上げていると考えられる また 摘発までに時間がかかっていると解釈するならば 導入牛は導入時のなるべく早い時期に検査する必要があると考えられる 自家産でも患畜が認められた 当該患畜を飼養していた農場の多くは県外導入や県外預託を実施していたことからすでに県内に 牛ヨーネ病患畜が侵入しており 自家産牛にも感染が広がっていたのではないかと考えられる 患畜が複数回の検査で摘発されたのは 牛ヨーネ病の病態の性質上 抗体の上昇に時間がかかること 排菌が初期には間欠的であること等が原因として考えられる ) そのため 複数の検査法で繰り返し検査を行う必要がある 牛ヨーネ病は 法に基づく検査および防疫対策要領に基づくまん延防止対策の強化により全国的に清浄化が推進されたものと考えられる 管内も平成 19 年 7 月を最後に患畜は摘発されておらず 現行の悉皆検査は 患畜摘発に有効であり 引き続き実施することにより 患畜の早期摘発に努め 管内の清浄性を維持したいと考えている 参考文献 - -

1) 小林創太臨床獣医.Jul.Vol.,No.7 15-19 チクサン出版社 ) 横溝祐一動薬研究 1.11.No.1 35- バイエルメディカル株式会社 - 5 -