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エクリズマブ ソリリス点滴静注 300mg 第 2 部 CTD の概要 2.4 非臨床試験の概括評価 アレクシオンファーマ合同会社

目次 2.4 非臨床試験の概括評価... 3 2.4.1 非臨床試験計画概略... 3 2.4.2 総括及び結論... 5 2.4.3 参考文献... 7 頁 2 / 7

2.4 非臨床試験の概括評価 2.4.1 非臨床試験計画概略 非臨床試験に関する情報は 2010 年のソリリス ( エクリズマブ ) 初回承認時の CTD M2 及び M4 により提出済である 本申請では M2.4 で述べる公表文献及びアレクシオン社が実施した in vitro における薬物間相互作用試験の内容を除き 非臨床データに関する追加情報はない エクリズマブは特異性が高く ヒト補体成分 C5(C5) にのみ結合するモノクローナル抗体で あることから 検討した範囲では他のほ乳類動物由来 C5 との結合を示さなかった したがって 重症筋無力症 (MG) の非臨床モデル系によるエクリズマブの直接的な検討は不可能であった MG 発症に対する補体の関与は初期の研究で明らかにされ 補体の全身的な分解亢進に伴って 補体蛋白質 C3 及び C4 の血清中レベルの低下が示された (Nastuk W.L 1960) さらに 変性した 神経筋接合部のシナプス後膜のひだ状の陥没構造に免疫グロブリンと補体成分 ( 沈着物 ) が認められたが 両者共に神経筋接合部のシナプス後膜に存在しており 接合部のアセチルコリン受容体 (AChR) 含量と相関が認められた (Engel 1977; Sahashi 1980) 最終的に 血清中に高力価の抗 AChR 抗体を有する患者では C3 及び C4 の血清中レベルが低いことが示され 補体の古典的経路の活性化反応の促進が示唆された (Romi 2005; Liu 2009) 様々な免疫抑制剤 [ シクロスポリン A シロリムス タクロリムス ミコフェノール酸( ミコフェノール酸モフェチルの活性代謝産物 ) CTLA-4Ig リツキシマブ ダクリズマブ バシリキシマブ及びアザチオプリン 抗胸腺細胞グロブリン及び免疫グロブリン ] がエクリズマブを介した溶血阻害に及ぼす影響を 感作ニワトリ赤血球を用いた溶血アッセイによって in vitro で評価した エクリズマブがリツキシマブを介した抗体依存性細胞介在性細胞傷害 (ADCC) 作用及び補体依存性細胞傷害 (CDC) 作用に及ぼす影響を リツキシマブによる細胞毒性の評価において標的細胞としてよく用いられるヒトバーキットリンパ腫由来細胞株の Daudi 細胞を用いて評価した 本項では 以下を要約する 1) 公表文献 Anti-C5 Antibody Treatment Ameliorates Weakness in Experimentally Acquired Myasthenia Gravis (Zhou 2007) に記載された試験結果 本試験では ヒト (MG 患者 ) におけるエクリズマブ評価の理論的根拠となるげっ歯類の実験的重症筋無力症 (EAMG) モデルを用いて C5 の阻害を検討した MG では 補体経路の活性化により膜侵襲複合体が形成され それにより 神経筋接合部のシナプス後膜のひだ状の陥没構造が破壊される その結果 神経伝達の障害と深刻な筋力低下が生じる 本研究では 抗 C5 モノクローナル中和抗体による C5 の機能阻害が EAMG モデルラットで筋力低下及びその進行を完全に抑えるということが示されている 2) アレクシオン社が実施した試験 Exploration of Interactions Between Eculizumab and Other Therapies ( M 4.2.1.4) の結果 一連の試験で検討した上記の様々な免疫抑制剤のうち in vitro で感作ニワトリ赤血球の補体介在性溶解のエクリズマブによる阻害に影響を及ぼす免疫抑制剤はなかった In vitro の ADCC アッセイ及び CDC アッセイで エクリズマブがリツキシマブの活性に影響を及ぼす可能性も評価した エクリズマブはリツキシマブが介在する ADCC 作用には変化をもたらさないことが示されたものの 予想されたとおり in vitro での CDC 作用を阻害することが示された これらの予備的な実験結果から 一般的に用いられる免疫抑制薬剤はエクリズマブの生物学的活性プロファイルに影響を及ぼさないこと しかし エクリズマブは リツキシマブ 3 / 7

のような治療用抗体に対して 特にこの 2 剤が同時期に重複して投与される状況下では 少なくとも CDC の阻害により その生物学的活性に影響を与える可能性があることが 示された 4 / 7

2.4.2 総括及び結論 Lewis 系の EAMG モデルラットで MG の症状発現を抑えるため 抗 C5 モノクローナル抗体の 前投与を試みた 本試験はアレクシオン社が実施したものではなく 論文として公表されたものである (Zhou 2007) ラットの抗マウス筋 AChR モノクローナル抗体 (IgG2b イソタイプ ;McAb3) を Lewis ラットに腹腔内投与し EAMG モデルラットを作製した McAb3 投与により Lewis ラットは 24 時間以内に円背姿勢をとり 歩行時に脚を引きずるようになった ( 障害の強さはグレード 3 の筋力低下 ) さらに ラットは 48 時間以内に瀕死状態に至ったため ( グレード 4 の筋力低下 ) 安楽死処置を施した これに対して 抗 C5 モノクローナル抗体を前投与された Lewis ラットでは McAb3 が投与された後に筋力低下の徴候を全く示さなかった ( 筋力低下のグレードは 0) 抗 C5 モノクローナル抗体による EAMG 進行の阻害についてさらに検討するため ラットを用いて以下の実験を行った ラットに対して McAb3 投与による EAMG 誘発処置を行い (Day 0) 24 時間後に治療群のラットには抗 C5 モノクローナル抗体を投与した モノクローナル抗体を投与する時点で 無治療群及び治療群の筋力スコアは同じであった ( ともにグレード 2 の筋力低下 ) が EAMG 誘発処置から 48 時間後に 抗 C5 モノクローナル抗体を投与されたラットは 対照群ラットと比較して明らかな改善を示した 抗 C5 モノクローナル抗体を投与されたラットは 72 時間までにさらに改善を示し Day 7 には正常 ( グレード 0 の筋力低下 ) に戻った 対照群のラットは EAMG がさらに進行したため ( グレード 3~4 の筋力低下 ) 安楽死処分を行った 第 3 の実験では 抗 C5 モノクローナル抗体による治療効果が 特異的な補体阻害によるものかを検討した ラットを 3 つのグループに分け それぞれ 1) 中和能のない抗 C5 モノクローナル抗体を投与 2) 中和能を有する抗 C5 モノクローナル抗体を投与 3) モノクローナル抗体の投与なしの処置を行い 4 時間後に McAb3 を投与した 24 時間の時点で対照ラット ( モノクローナル抗体投与なし ) と中和能のない抗 C5 モノクローナル抗体を投与されたラットは脱力を呈し さらに Day 7 までこの症状が次第に悪化した 中和能を有する抗 C5 モノクローナル抗体を投与されたラットは 24 時間時点で正常 さらに Day 7 まで正常な状態を維持した 中和能を有する抗 C5 モノクローナル抗体の単回投与により 投与後 48 時間及び 72 時間の時点で血清中の C5 活性は消失した Day 7 までに C5 活性は通常レベルに復したが 中和能のない抗 C5 モノクローナル抗体を投与されたラットでは 補体活性に変動は認められなかった EAMG を発症したラットの神経筋接合部を免疫蛍光染色法で調べた結果 中和能を有する抗 C5 モノクローナル抗体の投与により C9 の沈着が減少した一方で 中和能のない抗 C5 モノクローナル抗体の投与による C9 沈着の減少は認められなかった 神経筋接合部の C3 に対する免疫反応性に変化は認められず これは抗 C5 抗体により C3 活性化以降の段階で補体カスケードが阻害されたことと一致する 対照ラットにおける横隔膜の神経筋接合部の微細構造解析では シナプス後膜のひだ状構造の単純化 シナプス間隙の拡大 シナプス膜の脱落片と思われる電子密度の高い残渣等 重度の EAMG を示す病像が示された これに対して 中和能を有する抗 C5 モノクローナル抗体を投与されたラットでは 横隔膜神経筋接合部にこのような変化はほとんど認められず また その横隔膜切片画像は 中和能のない抗 C5 モノクローナル抗体を投与されたラット及び抗体の投与なしのラットの切片画像と比較して EAMG 誘発ラットに典型的にみられる炎症性細胞の数が有意に減少したことを示した 以上のように 中和能を有する抗 C5 モノクローナル抗体の投与により C5 機能を阻害した場合 神経筋接合部で C9 の沈着が顕著に減少した その結果 被験動物において EAMG の発症が完全に抑えられ また すでに筋力低下が存在する場合にはその進行が完全に抑えられた (Zhou 2007) 5 / 7

さらに 抗 C5 抗体投与により 神経筋接合部の構造破壊の防止 筋肉組織における炎症性細胞 の浸潤低下がもたらされた 本研究が示したデータは 終末補体反応に関わる C5 活性の抗 C5 モノクローナル抗体による阻害が MG 患者に対する現実的な治療手段であることを裏付けるものである 6 / 7

2.4.3 参考文献 Engel AG, Lambert EH, and Howard FM. Immune complexes (IgG and C3) at the motor end-plate in myasthenia gravis: ultrastructural and light microscopic localization and electrophysiologic correlations. Mayo Clin.Proc. 1977 May;52(5):267-280. Liu A, Lin H, Liu Y. Correlation of C3 level with severity of generalized myasthenia gravis. MUSCLE & NERVE. 2009 Nov;40(5):801-808. Nastuk W.L., Plescia O.J., and Osserman K.E. Changes in serum complement activity in patients with myasthenia gravis. Proc.Soc.Exp.Biol.Med. 1960 Oct;105(177-184). Romi F, Kristoffersen EK, Aarli JA. The role of complement in myasthenia gravis: serological evidence of complement consumption in vivo. J.Neuroimmunol. 2005 Jan;158(1-2):191-194. Sahashi K, Engel AG, Lambert EH. Ultrastructural localization of the terminal and lytic ninth complement component (C9) at the motor end-plate in myasthenia gravis. J.Neuropathol.Exp.Neurol. 1980 Mar;39(2):160-172. Zhou Y, Gong B, Lin F. Anti-C5 antibody treatment ameliorates weakness in experimentally acquired myasthenia gravis. J.Immunol. 2007 Dec;179(12):8562-8567. 7 / 7