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2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 8 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 GABA 抑制の促進がアルツハイマー病の記憶障害に関与 - GABA 受容体阻害剤が モデルマウスの記憶を改善 - 物忘れに始まり認知障害へと徐々に進行していくアルツハイマー病は 発症すると究極的には介護が欠か

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 脳内のグリア細胞が分泌する S100B タンパク質が神経活動を調節 - グリア細胞からニューロンへの分泌タンパク質を介したシグナル経路が活躍 - 記憶や学習などわたしたち高等生物に必要不可欠な高次機能は脳によ

報道発表資料 2004 年 9 月 6 日 独立行政法人理化学研究所 記憶形成における神経回路の形態変化の観察に成功 - クラゲの蛍光蛋白で神経細胞のつなぎ目を色づけ - 独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事長 ) マサチューセッツ工科大学 (Charles M. Vest 総長 ) は記憶形

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

生物 第39講~第47講 テキスト

サカナに逃げろ!と指令する神経細胞の分子メカニズムを解明 -個性的な神経細胞のでき方の理解につながり,難聴治療の創薬標的への応用に期待-

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

第6号-2/8)最前線(大矢)

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

学位論文の要約

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

4. 発表内容 : 1 研究の背景 先行研究における問題点 正常な脳では 神経細胞が適切な相手と適切な数と強さの結合 ( シナプス ) を作り 機能的な神経回路が作られています このような機能的神経回路は 生まれた時に完成しているので はなく 生後の発達過程において必要なシナプスが残り不要なシナプス

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報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

生理学の基礎:神経伝達と神経修飾

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統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

Microsoft Word - 【確定】東大薬佐々木プレスリリース原稿


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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

胞運命が背側に運命変換することを見いだしました ( 図 1-1) この成果は IP3-Ca 2+ シグナルが腹側のシグナルとして働くことを示すもので 研究チームの粂昭苑研究員によって米国の科学雑誌 サイエンス に発表されました (Kume et al., 1997) この結果によって 初期胚には背腹

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

報道発表資料 2007 年 4 月 11 日 独立行政法人理化学研究所 傷害を受けた網膜細胞を薬で再生する手法を発見 - 移植治療と異なる薬物による新たな再生治療への第一歩 - ポイント マウス サルの網膜の再生を促進することに成功 網膜だけでなく 難治性神経変性疾患の再生治療にも期待できる 神経回

研究の背景社会生活を送る上では 衝動的な行動や不必要な行動を抑制できることがとても重要です ところが注意欠陥多動性障害やパーキンソン病などの精神 神経疾患をもつ患者さんの多くでは この行動抑制の能力が低下しています これまでの先行研究により 行動抑制では 脳の中の前頭前野や大脳基底核と呼ばれる領域が

報道発表資料 2007 年 11 月 16 日 独立行政法人理化学研究所 過剰にリン酸化したタウタンパク質が脳老化の記憶障害に関与 - モデルマウスと機能的マンガン増強 MRI 法を使って世界に先駆けて実証 - ポイント モデルマウスを使い ヒト老化に伴う学習記憶機能の低下を解明 過剰リン酸化タウタ

り込みが進まなくなることを明らかにしました つまり 生後 12 日までの刈り込みには強い シナプス結合と弱いシナプス結合の相対的な差が 生後 12 日以降の刈り込みには強いシナプス 結合と弱いシナプス結合の相対的な差だけでなくシナプス結合の絶対的な強さが重要であることを明らかにしました 本研究成果は

M波H波解説

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( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

4. 発表内容 : 研究の背景 イヌに お手 を新しく教える場合 お手 ができた時に餌を与えるとイヌはまた お手 をして餌をもらおうとする このように動物が行動を起こした直後に報酬 ( 餌 ) を与えると そ の行動が強化され 繰り返し行動するようになる ( 図 1 左 ) このことは 100 年以

報道発表資料 2002 年 8 月 2 日 独立行政法人理化学研究所 局所刺激による細胞内シグナルの伝播メカニズムを解明 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 細胞の局所刺激で生じたシグナルが 刺激部位に留まるのか 細胞全体に伝播するのか という生物学における基本問題に対して 明確な解答を与えま

報道発表資料 2001 年 12 月 29 日 独立行政法人理化学研究所 生きた細胞を詳細に観察できる新しい蛍光タンパク質を開発 - とらえられなかった細胞内現象を可視化 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 生きた細胞内における現象を詳細に観察することができる新しい蛍光タンパク質の開発に成

論文の内容の要旨

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< 研究の背景 > 運動に疲労はつきもので その原因や予防策は多くの研究者や競技者 そしてスポーツ愛好者の興味を引く古くて新しいテーマです 運動時の疲労は 必要な力を発揮できなくなった状態 と定義され 疲労の原因が起こる身体部位によって末梢性疲労と中枢性疲労に分けることができます 末梢性疲労の原因の

報道発表資料 2008 年 11 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 メタン酸化反応で生成する分子の散乱状態を可視化 複数の反応経路を観測 - メタンと酸素原子の反応は 挿入 引き抜き のどっち? に結論 - ポイント 成層圏における酸素原子とメタンの化学反応を実験室で再現 メタン酸化反応で生成

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Microsoft Word - 運動が自閉症様行動とシナプス変性を改善する

2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

INTRODUCTION 各人が被験者となり 脳波の測定を実際に経験することで 測定方法や 得られたデータの評価方 法などを学ぶ METHODS 頭部の皮膚の所定の部位をアルコールでよく拭き ペーストをつけて電極を接着する 電極の位置は国際 法に従う 増幅器の時定数は 0.3 秒にする

Microsoft Word - 【広報課確認】プレスリリース原稿(乘本)池谷‗RIKEN最終版

報道発表資料 2006 年 6 月 5 日 独立行政法人理化学研究所 独立行政法人科学技術振興機構 カルシウム振動が生み出されるメカニズムを説明する新たな知見 - 細胞内の IP3 の緩やかな蓄積がカルシウム振動に大きく関与 - ポイント 細胞内のイノシトール三リン酸(IP3) を高効率で可視化可能

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のとなっています 特に てんかん患者の大部分を占める 特発性てんかん では 現在までに 9 個が報告されているにすぎません わが国でも 早くから全国レベルでの研究グループを組織し 日本人の熱性痙攣 てんかんの原因遺伝子の探求を進めてきましたが 大家系を必要とするこの分野では今まで海外に遅れをとること

マスコミへの訃報送信における注意事項

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生物時計の安定性の秘密を解明

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

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糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

フィードバック ~ 様々な電子回路の性質 ~ 実験 (1) 目的実験 (1) では 非反転増幅器の増幅率や位相差が 回路を構成する抵抗値や入力信号の周波数によってどのように変わるのかを調べる 実験方法 図 1 のような自由振動回路を組み オペアンプの + 入力端子を接地したときの出力電圧 が 0 と

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

Microsoft Word - プレス原稿_0528【最終版】

( 図 ) 自閉症患者に見られた異常な CADPS2 の局所的 BDNF 分泌への影響

電気生理学実習解説第4版

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化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

背景 私たちの体はたくさんの細胞からできていますが そのそれぞれに遺伝情報が受け継がれるためには 細胞が分裂するときに染色体を正確に分配しなければいけません 染色体の分配は紡錘体という装置によって行われ この際にまず染色体が紡錘体の中央に集まって整列し その後 2 つの極の方向に引っ張られて分配され

PRESS RELEASE (2016/11/22) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

漢方薬

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Microsoft Word - 【確定】プレスリリース原稿(坂口)_最終版

「ゲノムインプリント消去には能動的脱メチル化が必要である」【石野史敏教授】

1. 背景コンピュータが目覚ましく進歩し 演算速度や記憶容量の大きさでは人の脳を凌駕するスーパーコンピュータも出現してきました しかし 言語を用い 直観を働かせ 抽象や概念を形成し 問題への解答を見いだし 自分自身を改善する 人間のような思考能力を持つ人工知能の実現にはまだ遠い道のりがあるように見え

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

( 様式乙 8) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 米田博 藤原眞也 副査副査 教授教授 黒岩敏彦千原精志郎 副査 教授 佐浦隆一 主論文題名 Anhedonia in Japanese patients with Parkinson s disease ( 日本人パー

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報道発表資料 2008 年 7 月 17 日 独立行政法人理化学研究所 単語やメロディーの切れ目に対応する脳活動の記録に成功 - 分節化進行過程の神経活動を 世界で初めて生理学的手法で観察 - ポイント 連続音声に含まれる単語やメロディーの切れ目だけに出現する脳波を発見 脳波の強さは音声分節化と統計

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リリース先 大阪科学 大学記者クラブ 枚方市政クラブ 報道解禁日(日本時間) Web 11 月 20 日 金 午前 2 時 新聞 11 月 20 日 金 付朝刊 報道機関各位 2015 年 11 月 16 日 本学附属生命医学研究所 小早川研究員ら 恐怖を引き起こす 匂い を開発し 恐怖の制御メカニ

PowerPoint プレゼンテーション

報道発表資料 2001 年 3 月 8 日 独立行政法人理化学研究所 脳内の食欲をつかさどるメカニズムの一端を解明 - ムスカリン性受容体欠損マウスはいつでも腹八分目 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 脳の食欲をつかさどる情報伝達にはムスカリン性受容体が必須であることを世界で初めて発見し

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

2. PQQ を利用する酵素 AAS 脱水素酵素 クローニングした遺伝子からタンパク質の一次構造を推測したところ AAS 脱水素酵素の前半部分 (N 末端側 ) にはアミノ酸を捕捉するための構造があり 後半部分 (C 末端側 ) には PQQ 結合配列 が 7 つ連続して存在していました ( 図 3

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

報道発表資料 2007 年 8 月 1 日 独立行政法人理化学研究所 マイクロ RNA によるタンパク質合成阻害の仕組みを解明 - mrna の翻訳が抑制される過程を試験管内で再現することに成功 - ポイント マイクロ RNA が翻訳の開始段階を阻害 標的 mrna の尻尾 ポリ A テール を短縮

KASEAA 52(1) (2014)

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PRESS RELEASE (2012/9/27) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

平成16年6月  日

統合失調症といった精神疾患では シナプス形成やシナプス機能の調節の異常が発症の原因の一つであると考えられています これまでの研究で シナプスの形を作り出す細胞骨格系のタンパク質 細胞同士をつないでシナプス形成に関与する細胞接着分子群 あるいはグルタミン酸やドーパミン 2 系分子といったシナプス伝達を

現し Gasc1 発現低下は多動 固執傾向 様々な学習 記憶障害などの行動異常や 樹状突起スパイン密度の増加と長期増強の亢進というシナプスの異常を引き起こすことを発見し これらの表現型がヒト自閉スペクトラム症 (ASD) など神経発達症の病態と一部類することを見出した しかしながら Gasc1 発現


統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

2 成果の内容本研究では 相関電子系において 非平衡性を利用した新たな超伝導増強の可能性を提示することを目指しました 本研究グループは 銅酸化物群に対する最も単純な理論模型での電子ダイナミクスについて 電子間相互作用の効果を精度よく取り込める数値計算手法を開発し それを用いた数値シミュレーションを実

aeeg 入門 この項は以下のウェブサイトより翻訳 作成しています by Denis Azzopardi aeeg モニターについて Olympic CFM

研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

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28 年 3 月 25 日国立大学法人名古屋大学独立行政法人理化学研究所 大脳皮質の抑制性シナプス伝達効率が睡眠 覚醒で異なることを発見 - 睡眠の働きの解明に向けた新しい糸口となる知見 - 本研究成果のポイント 睡眠 覚醒時の神経細胞の膜電位変化が 抑制性シナプス伝達効率を両方向に調節 伝達効率の調節は GABA A 受容体のシナプス部への挿入 除去で実現 睡眠 覚醒に伴う生理現象の機能解明に向けた新しい研究手法確立につながる可能性 国立大学法人名古屋大学と独立行政法人理化学研究所は 睡眠時に発生する特異的な神経活動パターンが大脳皮質の抑制性シナプスの伝達効率 1 を高めることを世界で初めて発見しました 本研究は名大環境医学研究所神経系分野の黒谷亨 前講師 ( 現独立行政法人理化学研究所総合研究センター脳皮質機能構造研究チーム研究員 ) が山田和政研究員 吉村由美子准教授 小松由紀夫教授と共同し 理研と米エール大学の協力を得て達成した成果です 睡眠中の脳の活動は 記憶 学習などの高次脳機能に多大な影響を与えることが報告されていますが 睡眠時に特異的に見られる大脳皮質神経細胞の活動パターンが 脳の情報処理に対して具体的にどのような影響を与えるかはよくわかっていませんでした 睡眠中の哺乳類の脳波パターンは 睡眠の種類に依存して変化します 睡眠には REM (Rapid Eye Movement) 睡眠 と それ以外の non REM 睡眠 がありますが REM 睡眠時には覚醒時に近い 比較的周波数の高い低振幅の脳波が また non REM 睡眠時には ゆっくりとした振幅の大きな脳波が出現します 2 こうした大振幅徐波が発生するのは non REM 睡眠時に 大脳皮質の多数の神経細胞の膜電位 3 が同期して低周波 (.5 から 1Hz) 振動していることが原因であるとされています また覚醒時には この膜電位の低周波振動は消失し やや脱分極 3 した状態で連続的に活動電位が生じます このような神経細胞の活動パターンの違いは 睡眠 覚醒に付随的に生じる現象だと従来は考えられてきました 今回研究グループは この活動パターンの違いが 脳の情報処理に何らかの影響を与えている可能性について検討しました 研究グループは これまでに ラットの脳切片標本を用い 覚醒状態に似た活動パターンを 1 個の大脳皮質の神経細胞に生じさせると その細胞に入力する抑制性シナプスの伝達効率が長期的に減弱する現象が発生することを報告しています 今回 さらに 徐波睡眠時に似た活動パターンが 抑制性シナプスの伝達効率に長期増強を引き起こすことを発見しました また 実際に睡眠中の大脳皮質の抑制性シナプス応答が 覚醒時のそれよりも大きいことも明らかにしました さらに 研究グループはその分子メカニズムについて調べ GABAA 受容体 4 がシナプス後部に挿入 あるいは除去されることが長期抑圧 増強の実体であることを解明しました これにより 睡眠の働きを解明する上での新しい手がかりが得られます 本研究成果は 文部科学省科学研究費補助金特定領域研究 神経回路機能 ( 領域代表 : 狩野方伸 ) の一環として行われ 米国の科学雑誌 Neuron (3 月 27 日号 ) に掲載されます 1

1. 背景ヒトは 人生の約 3 分の 1 を眠って過ごします しかしながら ヒトを含めた多くの動物がなぜ眠るのか 眠らなければならないのか という問いに対する明確な答えを 私たちはいまだ得ていません 睡眠の働きとして エネルギーの節約 活動により高まった脳の温度を下げる あるいは活動により蓄積した老廃物の除去 など種々の仮説が提唱されてきました 近年 睡眠が脳の可塑性現象 5 に関与していると注目されており 例えば 睡眠中には覚醒時に体験した事柄の記憶の定着が起こること また 学習した内容が睡眠時に時間圧縮された状態でリプレイされていることなどが報告されています さらに 徐波睡眠 2 時に脳波と同じ周波数の刺激を被験者に与えると 記憶の定着効率が高まるという報告があり 睡眠が記憶 学習といった脳の高次機能に影響を与えうる 積極的な過程であることを示唆しています 研究グループは 大脳皮質の 錐体細胞 と呼ばれる出力細胞 6 に現れる 睡眠 覚醒時に特異的な膜電位の活動パターンの違いに着目し それらが錐体細胞へ入力する抑制性シナプス伝達に及ぼす影響を ラットの大脳皮質スライス標本において 主に電気生理学的手法を用いて調べてきました その結果 錐体細胞を覚醒時のパターンで強制的に活動させると その後抑制性伝達が長期的に減弱することを発見しました (Kurotani et al., Neurosci. Lett. 23) この長期抑圧には L 型の電位依存性カルシウムチャネル 7 の活性化が必要であることも同時に明らかにしましたが その分子メカニズムや 睡眠時の活動パターンの効果については未解明でした 2. 研究手法と成果 (1) 大脳皮質錐体細胞の抑制性シナプス伝達の違い研究グループは ラットの大脳皮質視覚野第 5 層にある大型の錐体細胞の細胞体部に生じる抑制性シナプス後電流 (inhibitory postsynaptic current: IPSC) を記録しました テスト刺激として 覚醒状態の活動パターンに似た電気刺激を記録細胞に与えると IPSC の振幅が長期的に小さくなる 長期抑圧 が起こりました これに対し 徐波睡眠状態の活動パターンに似た電気刺激を与えた場合には IPSC の振幅が大きくなる 長期増強 が誘発されました ( 図 1) このことから 睡眠状態にあるラットの大脳皮質では 覚醒時に比べて抑制性応答が増強している状態にあることが明らかとなりました (2) 徐波睡眠状態と覚醒状態の抑制性シナプス伝達効率次に 実際に徐波睡眠状態 あるいは覚醒状態にあるラットを急速に麻酔し スライス標本を作製して 両者で IPSC の大きさに差があるか否かを測定しました 徐波睡眠状態と覚醒状態のラットには 同じ日に生まれた兄弟のペアを用いました 覚醒時と睡眠時の 4 組のペアを調べた結果 徐波睡眠状態にあった標本の方が 覚醒状態にあった標本よりも IPSC の振幅が有意に大きいことが明らかになりました ( 図 2) つまり 徐波睡眠下では大脳皮質錐体細胞は 覚醒時より強い抑制を受けていることになります 結果として 徐波睡眠時の大脳皮質からの出力は 覚醒時より低下していると考えられます (3) 抑制性シナプス伝達効率を調節する分子メカニズムの解明こうした睡眠 覚醒時の差を引き起こす分子メカニズムを調べるために 研究グループは 2

L 型と R 型という 2 種類の電位依存性カルシウムチャネルについて 薬理学的な解析を行いました ( 図 3) 長期抑圧に関与している L 型チャンネルを 特異的阻害剤 ニフェジピン を投与して阻害した後 覚醒タイプの活動パターンで錘体細胞を発火させると 長期抑圧ではなく長期増強が現れました 一方 R 型チャンネル特異的阻害剤 SNX-482 を投与した後 徐波睡眠タイプの活動パターンを与えると 長期増強ではなく長期抑圧が現れました このことから 長期増強には R 型の電位依存性カルシウムチャネルの活性化が必要であることが判明しました ニフェジピンと SNX-482 の両方を投与した場合は 覚醒 徐波睡眠いずれの活動パターンを与えても長期的変化は生じませんでした これらの結果から IPSC の長期抑圧 長期増強はそれぞれ L 型 R 型チャンネルで独立して制御されていることが明らかとなりました さらに それぞれのチャンネルからカルシウムイオンが流入した後のメカニズムを調べると 長期抑圧 増強の発現には 抑制性シナプスの後細胞膜から 伝達物質であるγアミノ酪酸 (GABA) を受け取る GABAA 受容体が取り除かれたり 挿入されたりする過程が関与していることも明らかになりました ( 図 4) GABAA 受容体が後細胞膜から取り除かれるのを阻害し 後細胞膜にある GABAA 受容体の密度が高いままだと 長期増強が誘発されました 逆に GABAA 受容体が後細胞膜へ挿入されるのを阻害し 後細胞膜にある GABAA 受容体の密度が低いままだと 長期増強が阻害されました このことから 覚醒時には後細胞膜にある GABAA 受容体の密度が減少し 徐波睡眠時には逆に密度が増大することが 長期抑圧 長期増強発現の実体であることがわかりました 以上の結果から 覚醒 睡眠時の抑制性シナプス伝達効率のメカニズムが明らかとなりました ( 図 5) 覚醒時 錐体細胞の膜電位はやや脱分極し 持続的な発火をしています このときは L 型カルシウムチャネルの活性化が優位になり GABAA 受容体のシナプス後膜から細胞内への取り込みが多くなり 結果として抑制性応答は減弱します 徐波睡眠時には 錐体細胞の膜電位は低周波で振動し その振動の頂点で繰り返し発火が起こります この場合 L 型も活性化しますが R 型カルシウムチャネルの活性化が起こり その経路が優位になると GABAA 受容体が細胞内からシナプス後膜へ挿入され 抑制性応答の増強が起こります 3. 今後の期待本研究により 睡眠 覚醒時の錐体細胞の活動パターンが その細胞に入力する抑制性シナプスの伝達効率を 長期増強 長期抑圧の両方向に制御していることが明らかとなりました こうした両方向性の制御は 脳の情報処理にとっても妥当なメカニズムであると考えられます 覚醒時には 脳は外界から多数の入力を受け それに対処するためにさまざまな出力をしなければなりません そのために 錐体細胞への抑制性シナプスの入力を抑えて興奮性を上昇させる必要があります 逆に徐波睡眠時には 抑制性シナプスの入力を強めることで出力を下げ 局所的な細胞群で同期することにより 覚醒時とは異なる情報処理を行っている可能性があります 事実 徐波睡眠時は大脳からの出力が低下し 刺激に対する反応もほとんど消失することが知られています 徐波睡眠時に 私たちは意識を失っていますが 錐体細胞が強く抑制されているためにこのような状態になる とも考えられます 今年に入り 他の研究グループにより 睡眠 覚醒状態に応じて興奮性シナプス伝達効率も変化していることが報告されました これは 私たちの知見と相補的な関係にあると考えら 3

れます 睡眠 覚醒時の抑制性シナプスおよび興奮性シナプスの伝達効率についての知見がそろったことは 睡眠の働きを解明する上での新しい手がかりとなります このような新しい知見を通じ 睡眠が脳の情報処理過程をダイナミックに制御 統合あるいは整理していることが明らかになりつつあります ( 問い合わせ先 ) 独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター脳皮質機能構造研究チーム研究員黒谷亨 ( くろたにとおる ) TEL:48-462-1111 内線 7119 7346 FAX:48-467-642 ( 報道担当 ) 国立大学法人名古屋大学広報室 TEL:52-789-216 FAX:52-788-6272 独立行政法人理化学研究所広報室 TEL: 48-467-9272 FAX: 48-462-4715 4

< 補足説明 > 1 抑制性シナプス伝達と興奮性シナプス伝達神経細胞は 興奮性細胞と抑制性細胞の 2 種類に大別される ある神経細胞が活動した時に その細胞がシナプス結合した相手の神経細胞の活動を高めるように働くものを 興奮性細胞 逆に相手の活動を抑えるように働く細胞を 抑制性細胞 と呼ぶ それらの細胞が作るシナプスがそれぞれ 興奮性シナプス 抑制性シナプス であり そこでの伝達を 興奮性シナプス伝達 抑制性シナプス伝達 と呼ぶ 2 睡眠 覚醒に伴う脳波の波形変化脳内の神経細胞集団の活動に伴う集合電位は 頭部に配した電極で記録することができ これを 脳波 と呼ぶ 脳波は下図のように 睡眠 覚醒の状態により振幅や周波数が特徴的に変化する また non REM 睡眠の内 振幅が大きく ゆっくりとした脳波が観測されるステージ 3 4 を特に徐波睡眠 (Slow wave sleep: SWS) と呼ぶ 睡眠 覚醒時に記録されるヒトの脳波 Hobson JA ( 澤口俊之訳 21) 意識と脳 日経サイエンスより改変 3 膜電位と脱分極 過分極神経細胞に限らず 一般に細胞の内側は外側に比べてマイナスに帯電している その大きさは 細胞外をゼロ ( 基準 ) として-4 から-7mV 程度で これを 静止膜電位 と呼ぶ 細胞内外が等電位ではない状態を電気化学の用語で 分極状態 と言う 神経細胞の膜電位が 何らかの原因で静止状態からゼロに近づく現象を 分極状態から脱するという意味で 脱分極 と呼び 逆にさらにマイナスの値が大きくなることを 過分極 と呼ぶ 神経細胞の膜は 脱分極するとナトリウムイオンに対する透過性が一過性に増大し 活動電位 が発生する 活動電位が神経線維を伝わることで その終末部のシナプスから伝達物質が放出し 次の神経細胞に信号が伝達する 4 GABA A 受容体と IPSP IPSC 5

大脳皮質の抑制性シナプスでは 伝達物質として γ アミノ酪酸 (GABA) が使われている シナプスの受け手側 ( シナプス後細胞 ) には GABA を受け取る 受容体 が存在し 送り手側 ( シナプス前終末 ) から放出した GABA が結合すると 塩素イオンを通す穴が開き 受け手側に電位変化 ( 抑制性シナプス後電位 Inhibitory post synaptic potential: IPSP) が生じる この時流れる電流が 抑制性シナプス後電流 (Inhibitory postsynaptic current: IPSC) 5 可塑性現象脳の神経回路が外界からの刺激により結合性や反応性を変化させ 外部刺激を取り除いた後もその影響が長く残るような現象 例えば 海馬の神経線維に 1 秒程度高頻度刺激を加えると その後にシナプス伝達効率が長期間増大する 長期増強 が生じる これは 記憶の形成に対応するシナプスレベルの変化であると考えられている 6 出力細胞脳は外界からの刺激を感覚情報として受け取り それに適切に応答しなければならない 刺激に対する脳からの応答の指令を末梢に送る経路 運動神経系 へ 最終的に指令を出す役割を担った神経細胞を出力細胞という 広義には 脳内の特定部位から脳の他の部位へ信号を送る細胞を出力細胞と呼ぶ 大脳皮質 5 層には こうした出力を担う大型の 錐体細胞 が多数存在する 7 電位依存性カルシウムチャネル神経細胞の膜電位が脱分極することで開くイオンチャネルのうち カルシウムイオンを選択的に通すイオンチャネルのこと 前述の GABAA 受容体も塩素イオンを通すイオンチャネルだが 電位依存性はなく GABA が結合することで開く リガンド結合性イオンチャネル にあたる 電位依存性カルシウムチャネルには 電位変化に対する応答性の違いにより L N P Q R T 型のサブタイプがある それぞれのチャネルには 個々の神経細胞での発現部位や密度に相違があり 異なる役割を果たしている 錐体細胞の細胞体部には L 型と R 型が多く分布しているが 本研究でもそれらの機能の相違が明らかになった 6

A 抑制性シナプス伝達の長期抑圧 覚醒時の神経活動を模した刺激 -6 2 mv 5 ms 2 1 1 pa 1 ms IPSCの振幅変化 IPSC amplitude (%) 15 1 5 1-1 1 2 3 4 2 IPSCの振幅が長時間小さくなる B 抑制性シナプス伝達の長期増強 -5-9 2 mv 1 s 3 4 2 pa 1 ms IPSCの振幅変化 徐波睡眠時の神経活動を模した刺激 IPSC amplitude (%) 3 2 1 3 4-1 1 2 3 4 IPSC の振幅が長時間大きくなる 図 1 大脳皮質錐体細胞の抑制性シナプス伝達の神経活動パターン依存性 A: 覚醒時の活動パターンに似た電気刺激で 錐体細胞を2Hzで発火させると その細胞への抑制性入力が長期的に減弱する ( 長期抑圧 ) B: 徐波睡眠時の活動パターンに似た電気刺激 (.5Hzでの膜電位振動 + 発火 ) を与えると 抑制性入力に長期増強が生じる 7

A 脳波 B IPSC C 覚醒 徐波睡眠 D 覚醒 徐波睡眠 2 μv 2 s 微小 IPSC 5 pa 2 ms E Mini amplitude (pa) 2 pa 2 ms -5-4 -3-2 -1 Arousal SWS IPSC amplitude (pa) -4-3 -2-1 Arousal SWS 図 2 覚醒 睡眠状態のラットから作製した脳切片標本での IPSC および微小 IPSC の振幅の比較 A : 覚醒および徐波睡眠 (Slow Wave Sleep:SWS) 時のラットの脳波パターン B : それに対応する切片標本から記録した IPSCの平均波形 徐波睡眠時の方が振幅が大きいことに注意 C : 全 4 例の平均振幅の比較データ 全例で徐波睡眠時の方が振幅が有意に大きい D : 同様に記録した微小 IPSC の例 E : 全 6 例の平均振幅の比較データ 微小 IPSC も全例で有意に徐波睡眠時の方が大きい 8

A B C GABA response amplitude (%) 2 1 覚醒徐波睡眠覚醒徐波睡眠 ニフェジピン ニフェジピン +482-1 1 2 3 4 15 1 5 ニフェジピン +482 SNX-482-1 1 2 3 4 Magnitude of change (%) 2 1-1 Nifedipine Mixture SNX-482 Mixture 図 3 L 型 R 型電位依存性カルシウムチャネルの寄与 A :L 型チャネルの特異的阻害剤 ニフェジピン 存在下で 覚醒タイプの活動パターンで錐体細胞を発火させると 長期抑圧ではなく長期増強が誘発される B :R 型チャネルの特異的阻害薬 SNX-482 を投与し 徐波睡眠タイプの活動パターンを与えると 長期増強ではなく 長期抑圧が生じる A Bともに ニフェジピンとSNX-482を同時に投与した場合は 長期的変化は全く生じない C : 個々の細胞で どの程度反応が変化したかをまとめたヒストグラム 9

A GABA response amplitude (%) 2 15 1 5 P4 ペプチド 不活性化した P4-1 1 2 3 4 覚醒 B 2 15 1 5 不活性化したボツリヌス毒素 ボツリヌス毒素 -1 1 2 3 4 徐波睡眠 C Magnitude of change (%) 2 1-1 覚醒 P4 Scr. P4 徐波睡眠 BoNT/D Inact. BoNT/D 図 4 GABA A 受容体のシナプス後膜からの除去 あるいは挿入が関与する証拠 A :GABAA 受容体取り込み過程の特異的阻害剤 P4ペプチド 存在下で 覚醒タイプの活動パターンで錐体細胞を発火させると 長期抑圧ではなく長期増強が誘発されるが 不活性型のP4では阻害効果が認められず コントロール群と同様の長期抑圧が生じる B :GABAA 受容体挿入の特異的阻害薬 ボツリヌス毒素 を投与し 徐波睡眠タイプの活動パターンを与えると 長期増強誘発が阻害される 不活性化したボツリヌス毒素は効果がなく コントロール群と同様の長期増強が生じる C : 個々の細胞で どの程度反応が変化したかをまとめたヒストグラム 1

脱分極 + 繰り返し発火 覚醒時 徐波睡眠時 低周波振動 + 発火 Ca 2+ Ca 2+ Ca 2+ Ca 2+ エンドサイトーシス > エクソサイトーシス GABA エンドサイトーシス < エクソサイトーシス 細胞内ストア GABA A 受容体 L- 型 Ca チャネル 細胞内ストア R- 型 Ca チャネル 抑制伝達の長期抑圧 抑制伝達の長期増強 図 5 本研究で明らかにした 睡眠 覚醒状態依存性の長期増強 抑圧のメカニズム 11