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資料 6 電力 ガス分野のグローバル化について 2017 年 12 月 20 日資源エネルギー庁

本日の御議論 1 東日本大震災後 電力 ガス分野のシステム改革が進められており 事業者間の競争が激しさを増している 他方 国内のエネルギー需要は伸び悩んでおり 新たな市場を求め 大手のエネルギー各社はグローバル化を志向 需要の拡大する海外市場の獲得を中期経営計画の柱に据え これまで以上に積極的に国外での事業展開を図っている 同時に 電力 ガス分野のシステム改革が進められる中で 国外での事業展開としてのグローバル化だけでなく 海外企業の新規参入といった国内市場のグローバル化も進みつつある 振り返れば 欧米においても 自由化を契機に電力 ガス事業者は国外での事業展開を進めており 国内の支配的事業者がグローバル企業に成長している例も多い 一方 必ずしも成功事例のみではなく 期待した成果を得られていない事例も少なからずある こうした状況を踏まえ エネルギーシステムの自由化の下でのグローバル化の意義や 世界市場における状況変化を踏まえた官民の役割分担の在り方 更には今後の政策の在り方等について御議論いただくと共に 海外から見た国内市場の現状と課題について 併せて御議論いただく

グローバル化の意義 国内のシステム改革が進展する中 電力 ガス分野のグローバル化は 事業者にとって新たな市場の獲得という意義を有すると共に 人材育成や技術継承等の意義を併せ持つ 特に 国内市場の拡大が見込めない中 急速に拡大するグローバル市場の獲得は 競争力の強化に欠かせないものである 加えて エネルギー市場の自由化や再エネ導入の拡大が進展する海外での事業展開は 国内のシステム改革に先駆け 海外市場で経験を積むという意義も有する 他方 電力 ガス事業者の国際展開は エネルギー産業の競争力強化という産業政策的な意義に加え 事業者の経営基盤の強化を通じた安定供給の確保や 技術力の維持 向上を通じた多様なエネルギー源の確保というエネルギー政策的な意義を有する 例えば LNG 市場において圧倒的な地位を占める JERA には その調達力を活かした低価格でのエネルギー調達が期待される また 海外の海底送電事業の運営に携わる事業者には 将来的な国内事業の高度化への寄与が期待される また 発電 小売市場への外資参入や国際調達の推進など 国内市場のグローバル化も進みつつある 海外のノウハウや技術が持ち込まれることは 国内市場の高度化や競争活性化 需要家選択肢の拡大等へ資するものと言える したがって 電力 ガス産業の国際展開は エネルギー政策の観点からも大きな意義を有するものであり 他産業以上に 競争力ある エネルギー産業を育てることに政策的意義があるのでないか 3

( 参考 ) 海外での経験を国内の安定供給等へ活かす事例 1 火力 水力 送配電等の多様な分野において 海外事業で得る先駆的ノウハウを国内事業へ活かし 安定供給や多様な電源確保等へ貢献することが想定される 海外送電事業への参画 ( 中部電力 ) 海外石炭火力事業への参画 ( 電源開発 ) 海外水力事業への参画 ( 関西電力 ) 海外 IPP 事業への参画 ( 大阪ガス ) 中部電力等によるドイツ国 洋上風力発電向け送電事業への参画 2017 年 中部電力及び三菱 UFJ リースは海底送電事業を行う三菱商事の子会社の株式 49% を取得 北海洋上の風力発電を結ぶ 4 つの海底送電線の運営及び保守へ参画 同社は 同国での海底送電事業のノウハウを国内にフィードバックし国内送電事業の高度化を目指す予定 電源開発等によるインドネシア国 高効率石炭火力発電への参画 2011 年 電源開発等が設立した現地事業会社は 尼国中部ジャワ石炭火力 IPP に係る長期売電契約を締結 超々臨界圧技術及び環境対策技術を導入した発電方式により 優れた環境対応 (NOx,SOx の低減 ) を実現する予定 新規大規模地点の建設 運営を通じた人材育成 技術継承を企図 技術力向上 人材育成への寄与 海外事例に学び国際的な技術力をつけた上で 建設現場では日本流の改良を加え さらに高い水準を目指している ( 中略 ) 一つ一つクリアしていくことで技術者個人 組織の両方にノウハウが蓄積される (2016.3.10 電気新聞抜粋 ) ベテランと若手の技術者を同時に投入し 貴重な新設案件を次世代への技術継承に生かしている (2016.3.6 電気新聞抜粋 ) 大阪ガスによる IPP 事業への参画 大阪ガスは 米国を中心に 6 カ国 13 プロジェクトに参画し 発電所持分容量は 140 万 kw( 国内 180 万 kw) 自由化やエネルギーの市場取引が進んでいる米国等の電力ビジネスに関するノウハウを蓄積 国内の電力市場の活性化への寄与も期待される 図.BorWin1 洋上変電所 ( 出典 :TenneT 社ホームページ ) 図. セントラルジャワ石炭火力完成イメージ ( 出典 : 電源開発ホームページ ) 図. ラオスナムニアップ水力の主ダム建設地点 ( 出典 : 関西電力提供資料 ) 図. 米国 IPP 案件所在地 ( 一部 ) ( 出典 : 大阪ガス提供資料 ) 4

( 参考 ) 海外での経験を国内の安定供給等へ活かす事例 2 国内外での天然ガスの利用拡大は グローバルな地球温暖化問題への解決に資することに加えて 流動性の高い LNG 市場の実現に繋がることから 日本のエネルギーセキュリティ向上にも資する Gas to Power への参画検討 (JERA) 調達力を生かした競争力ある価格でのエネルギーの安定供給 JERA は 電力需要急増や国産ガス枯渇に直面する国々に対し LNG 供給 + 受入設備建設 運営 + 発電所建設 運営のパッケージ開発を推進 流動性が高く透明なアジア LNG 市場創出に貢献することで 市場流動性の向上によるエネルギー安全保障の向上や 市場間裁定による価格収斂といった国内への裨益が期待されている 海外 LNG 導入事業への参画 ( 東京ガス ) 東京ガスによるアジアの LNG 導入事業への参画 2016 年 7 月 東京ガスは ペトロベトナムガス社およびビテクスコ社と LNG の調達 販売及び LNG 受入基地の建設 運営への事業参画を目指して LNG ベトナム社を設立 現地政府や企業と連携し エネルギーインフラの構築や天然ガスの普及促進 高度利用支援を通じた経済成長 環境問題解決に貢献していく ( 出典 :JERA ホームページ ) 写真.LNGベトナム社の設立 ( 出典 : 東京ガス提供資料 ) 5

6 官民の役割分担 新たな市場の獲得を目指したグローバル展開は 各事業者の経営戦略の一環として 一義的には民間の事業者が担うものである 他方 エネルギー分野において 世界的にも政府が国内事業者のグローバル展開を支援する例は少なからずあり 特に途上国のエネルギー市場を巡る各国間の競争はよりし烈になってきている また 各国の政治経済に密接に関連するエネルギー分野では 時に一民間事業者では対応しきれない政治リスクがあり 政府による対応が求められるケースも少なくない こうした点を踏まえ 民間事業者のニーズやリスク等を踏まえつつ 国としては エネルギー政策上の意義を踏まえつつ 民間事業者の取組を後押しする事業環境の整備を中心に行っていくことが求められるのではないか

( 参考 ) これまでの御議論 7 < 第 1 回電力 ガス基本政策小委員会 :2016 年 10 月 18 日 > 今後の議論の展開については 政府と事業者の役割を分けるべき 政府は事業環境整備をすることは重要だが 事業活動について干渉しすぎないことが肝要 秋元委員 産業政策は規制下でのあるべき論とは異なる議論 積極的に企業再編を促すことと 海外進出を進めるために障壁を取り除くなどの事業環境整備を行うこと 前者は企業判断であり 事業者主体で考えて行くことである 一方 後者の環境整備は重要な国の役割 それぞれの役割を切り分けたうえで今後議論いただきたい 秋元委員 < 第 3 回電力 ガス基本政策小委員会 :2017 年 4 月 21 日 > 政府のやることと企業のやることは分けるべき 結局政府はリスクをとれない 政府は干渉しすぎないことが重要 特に電力 ガス分野は利幅が小さく かつ 各国政府の規制や政策動向に影響を受けるため リスクが高く 進出は容易でない 電気 ガスだけでなく産業全体含めた中での政府間の関係づくりが重要 これが企業の進出チャンスにつながる 秋元委員 海外の状況をみると フランスは自国に体力があって外に出ている ドイツやスウェーデンは国内の経済が好況であえて外に出てリスクをとるよりも国内で競争していくという動きとなっている 各企業の事情が反映された中での違いであるため政府が方向性をひくべきではない ただ 情報提供は重要であるため引き続きお願いしたい 政府が介入しすぎることは避けつつも バックグラウンドとしての産業政策 政府間連携はしっかり進めていただきたい 秋元委員 他方で政府の役割が重要となることもあると考えている 例えば 農業では GAP 認証に準拠していることが重要視されており 日本の優れた製品が売れるわけではない GAP 認証に日本の製品が評価される基準をいかに入れ込んでいくかは一事業者では不可能で 政府の支援が必要となってくるところ ただ どこまで電力分野に応用できるかは不明 大橋委員 海外展開では現地の規制への準拠が必要 現地の規制や法律を変えることは難しい 規制が未整備のミャンマーなどに 政府から働きかけをすることで日本式の規制を整備させ 日本企業の参入をしやすくするという道筋であれば大局的に意味がある これは国にしか出来ないこと 村松委員

10 ( 参考 ) グローバル市場における政治リスクの例 近年 国内事業者も多く進出しているアジアのエネルギー市場において 制度変更等の政治リスクが発生 民間事業者にとって想定することが困難な事業リスクとなっている インドネシア 外資電力会社への新規制導入 (2017) インドネシア政府は 海外企業による電力事業について新規制を導入 日本の電力会社からは 進出の障害になるとして懸念の声が上がっている テイクオアペイの期間をローン期間中のみに限定 完工遅延時の長期売電契約上の遅延損害金を高額に設定 現在 在尼大使館を中心に 同国政府へ改善のための働きかけを行っている ベトナム 通貨ドンでの取引強制の導入 (2011~) ベトナム政府は 電力事業についてベトナム通貨のドンで行う義務を貸す新規制を導入 ドンは変動が大きく 兌換時に損失が発生する可能性 通常はドルで取引を行う 併せて 兌換時の政府保証についても上限を規定された ことから 個別案件ごとに在ベトナム大使館 政府系金融機関を中心に 同国政府へ改善のための働きかけを行っている ドン建て売電収入の 30% 分のみ外貨交換を保証 (2011 年 9 月 12 日付け首相レター第 1604 号 ) 外国人ビザ規制の導入 (2017) オーストラリア 2017 年 4 月に 豪政府はこれまでの長期就労ビザを廃止し 発給条件 ( 売上規模 雇用人数など ) を厳格化することを発表 在豪大使館を中心に状況の改善に向けた要望を提出し 2017 年 7 月 1 日に豪州側から英語要件の緩和等を含む改訂案が示された

11 グローバル展開の現状と課題 従来 発電分野におけるグローバル展開は商社が中心であったが 近年 電力 ガス会社によるグローバル展開も徐々に増えてきている 地域別には アジア地域への進出が中心であったが 近年は北米や中南米への進出も増えている 他方 欧州や中東 アフリカなど その他の地域への進出は限定的である また 送配電分野のグローバル展開は ごく一部で始まったにとどまる こうした中で 国内電力会社等のグローバル展開を加速するため 本年 10 月の経協インフラ戦略会議において 鉄道及び情報通信と並ぶ重点分野の 1 つとして 電力分野についての海外展開戦略が取りまとめられた 今後 同戦略に基づき 国内事業者の有する発電所の運転 環境対策 人材育成等のノウハウを最大限活用しつつ コスト競争力を意識した新たなビジネスモデルの下でのグローバル展開を政策的に後押ししていくこととしている 同時に 高い技術力を有する国内事業者に有利となるような国際ルールの形成や 国内事業者のグローバル展開を後押しする国内制度の構築など 内外の基盤整備を進めていく方針

( 参考 ) 研究会の開催 ( 電力 ガス分野から考えるグローバルエネルギーサービス研究会 ) 本年 3 月より 電力 ガス分野におけるグローバル化の現状 課題の分析等を行う研究会を開催 電力会社 ガス会社 政府系機関 (JBIC NEXI JICA) 有識者等を交え 分析を深めている 17

18 国内市場のグローバル化 エネルギーシステムの改革は これまで独占的に事業が営まれてきた地域間の壁を取り払うのみならず 国内外の壁も取り払うものである 例えば 電力分野においては 発電 小売分野への外資系企業の参入が広がりつつあり これらの企業は 自国で培ったビジネスノウハウを元に 日本市場への展開を目指している こうした動きは 国内のエネルギー市場を活性化し 事業者の競争力の強化や新たなサービスの創出につながることが期待される また 外国人居住者の増加に伴い 大手電力 ( 旧一般電気事業者 ) 各社及び大手ガス会社は各種情報発信や契約手続等の外国語対応を進めると共に 調達コストの低減に向けて 国際調達にも取り組み始めている

( 参考 ) 外資系企業の参入 自由化以降 発電 小売分野への外資系企業 の参入が広がっている ( 発電 : 数十社 小売 :4 社 ) 外国資本 50% 以上の事業者 発電分野は 特に再エネ ( 風力 太陽光 ) の開発 運営を担う事業者が中心 小売分野は 自国での小売ビジネスノウハウを強みにしようとしている事業者が多い 外資系企業の参入事例 発電 ( インベナジー ジャパン合同会社 ) 米国大手風力発電事業社であるインベナジーが 日本での風力発電事業 太陽光発電事業を実施するべく 2013 年 5 月に設立 風力発電事業では茨城県 岩手県 北海道等でプロジェクトを進めている 太陽光発電事業では 福島県 長野県においてメガソーラーの開発から運営までを共同で手がけるとして 2017 年 4 月に SB エナジー社とパートナーシップを締結 小売 ( ズームエナジージャパン合同会社 ) 2016 年 12 月 事業開始 販売電力量は 4,092 千 kwh/ 月程度 (2017 年 8 月実績 ) 出身国である米国では 協力会社と連携したマーケティングが特徴の 1 つ アメリカでは 19 州とワシントン DC カナダ 2 州において電気及びガスの小売を行っており 全体で約 35 万世帯に供給を行っている 現時点では 日本でも同様に 協力会社と提携したマーケティングを実施している 19

今後の検討の方向性 国内エネルギー市場の自由化を契機に 国内事業者がこれまで以上に積極的にグローバル展開を進める一方 国内市場のグローバル化も徐々に進みつつある こうしたグローバル化は 新たな収益源の確保に加え 海外の先駆的なノウハウの取り込みや 国内で培ったノウハウや人材の継承につながるものであり 中長期的に 安定的かつ低廉なエネルギー供給を通じて国内の需要家に利益をもたらすこととなる 同時に グローバル化の進展は 電力 ガス分野の需給 産業構造に変化をもたらす可能性を秘めており エネルギー政策の立案においても 考慮に入れるべき重要な要素の 1 つになりつつある 以上の点を踏まえつつ グローバル化のエネルギー政策上の意義や位置づけ その実現に向けた具体的な政策手段等について 更に検討を深めることとしてはどうか その際 具体的な政策手段については 官民の役割分担を大前提としつつ 国際ルールの形成や国内制度の構築といった内外の基盤整備を中心に検討を行っていくこととしてはどうか 21