JapaneseSociety Society of ofpsychosomatic Psychosomatic Medicine JpnJ of Psychosom Med 820-27, 978 eell-wt-llii at =" P"9 AofiJ}Z bl za cwf ;Y rt?i -* rs E}-ii pt m 4i?teft tfita' JEicaJ Original A Cinical Study of Egogramsby Means ofquestionnaires *Koichi wai Yuriko shikawa MoritaHitoshi Takenori Kikuchi Abstract TransactionalAnalysisis now being used quite extensively as one of the therapeutic methods in psychosomatic medieine, The egogram is of great usefulness in transactional analysis, A profileof an individualis shown on an egogram, where egostates are classified as PaternalParent, Adult,Free Child and Adapted Child This dlagram is useful in showing which egostates dominate the individual'spersonality We made a clinical applicstion of egograms which had been drawn up from questionnaires fiedin by the patients,mre adopted the theories of Sugita,M, MS W in most of the items of the questionnaires, although slight modifications were made in them, Egograms were drawn up for each of 2 normal subjects and 08 patients with psychosomatic diseases The results were as follow$ () There was no marked differencebetween male and female subjects (2) Ne marked differencewas found according to ages (3) Compared with the egograms of normal subjects, those ef the patients showed higher readings on the Adapted Child scale, (4) However, in some cases,the Adapted Child scales gradually fellas the result sornatic treatment such as autogenic training and behaviortherapies of psycho- We think that the egogram can perform a useful function in inking intellectual awareness aquired through transaetienal analysis with the desired behaviormodifications by means of behaviortherapies, ' 976 rp 2 A 3 HNee * ptftbi MJLiasffXg (Xli i tt- Tl2 eerass]rkxgrtlk Tekyo Univ Branch Hospital Address Dr Keichi waidept, ef Psychosematic Bunkyo-kuTokyo, 2 Japan 3-28-6MJklheejbffnFP), Dept Medicine,Tokyo Univ Branch of?sychosomatic Hospltal,Mejirodai Medieine, 3-28-6, Jdxfiee 978 ft6 H ca 8 ig su 3 k' N-Electronic Library Service
Japanese Japar ユ Soclety Society of Psychosomatic Psychosomatlc Medlclr Medicine ユe 2 L はじめに 交流分析は, 米国の Eric Berne により 954 年に創始され, 本邦では, 97 年以来, 九州大学心療内科をはじめとして, 心身医学的療法の一 つとして応用されっっある エゴグラム ( Egogram ) は, 親 (Parent ), 大 人 (Adult ), 子供 (Child ) の自我状態をグラフ に表わすこ とにより定量化しようとする試みであ る その創始者 Dusay,JM は, エゴグラムと は, 各個人は, 00 % ( 一定 ) の精神的なエネル ギーを持っており, それは, 批判的な Parent, 養 育的な Parent,Adult, 自由な Child, 順応した Child に分割されるという仮定に基づいた個人の プロフィールであるとしている 彼は, エネル ギー一一定の仮説 し, (Constancy Hypothesis ) を提示 治療を通じて自我状態が変化した後も, その エネルギーの合計は, 常に 00 % ( 一定 ) である 解答を (2 点 ), ( 点 ), (0 点 ) として 求め, それらの加算法により, おのおのの自我状 態を 0 点から 点の範囲に点数化し, 折れ線グ ラフで表わした グラフは, 自我状態を横軸に, 得点を縦軸にとっている 対象として, 当科外来患者 08 名 ( 男性 49 名, 女性 59 名, 平均年齢 30 歳 ) に, ほぼ初診時に施 行した また, 健康対象者として, 某会社社員 68 名, 学生 名, 某講習会参加者 32 名の平均 2 名 ( 男性 65 名, 女性 56 名, 平均年齢 36 歳 ) に施行した 結果 健常者と患者の比較 ( 図 ) 健常者 2 名のエゴグラムの平均値と, 患者 08 名のエゴグラムの平均値の比較は図 に示す とおりである 両者の著明な相違は AC に見られる 患者群の AC は, 健常者群のそれに比較して としている 本邦においては, 九大杉田ら 2 ) による試みがある われわれは, 主観的直観的なエゴグラムから, より客観的定量的なエゴグラムを志向し, 質問紙法によるエゴグラムを試みてきた 質問項目は, 主に杉田らの項目に従い, 若干の変法を試み 高得点をとり, 統計的に有意の差が認められた FC と AC のグラフの傾きは, 健常者群では右 下りであるが, 患者群では右上りで, 患者群の AC は FC に比較して高径煮をとっている 両 者の FC には, 統計上の有意の差は認められなか つた た なお, 両群の問に著明な性羌, 年齢差は認めら L 方法と対象 れなかった われわれは, 杉田らに従い, 自我状態を次のよは, 父親的 Parent うに 5 つに区別した Parent (FP ) と母親的 Parent ( MP ) に区別される FP の特徴は, 厳格な自我傾向に代表され, MP の特徴は, 保護的なやさしい 自我傾向に代表され る Adult ( A ) の特徴は, 事実に基づいて判断 5 健常者 (2 例 ) 一 患者 (los 例 ) トー噂 し, 冷静に計算する合理的な自我傾向に代表され a 竄 る Child は, さらに, 自山な Child ( FC ) と 頁 応した Child ( AC ) に区別される FC の特微 は, 感情を臼由に衷現する自由な了 供としての自の特徴は, 真の感情を 0 h 我傾向に代表される AC 5 抑えて岡囲に順応する, いわゆる優等生的な自我 傾向に代表される われわれは, 表 のように, 以上 5 っの自我伏 FP MP A FC AC 態にっき, それぞれ 0 項目の質間文を作成し, 図 健常者 外来患者の比較 心身医 978 年 6 月 第 8 巻第 3 号
Japanese Society of Psychosomatic Medicine N-Electronic Library Service Japanese Society of Psychosomatic Medicine 2/2 ouo 寸ー 甲ー o 噂 Q く Qh < 翫 Σ 高 OoQ 〇 N 一嵩筥曽 b 民, 冖三鞄ゼ 再進冂コリ [ 晋奪翼軸誕由ヤ 二抑 刷二枢細卜膳察譜属毒思卜駆敏電 L 制妊 O 砲 卩雫 細ぐぜ eq 如一り灸も 愚呎勲慧 縄崢二冒 嵩蜷 f 戚 余皿 q 爿椅 コ 肛 ぺ争日 L 憚諢 9 冖嘗 ム セ叡袴 溏為響恥紫煢赫 をい腫伊価 O 耐量姻鯉 麺釁 皿 療献 慢 細 R 灘栖 幅呵は朽い曝冂 } 準冥釁く皐翻十ム ( 魅 轡択い桶 一犁縲 並 9 盤二 ( e る 晩 悩 噌煢るり 辰為週冂いに 母劇愚 S < 鐸食樞タニ岨暇紺弓ゆ ヤ墨蹴 一経恒論司姻劇恥 念皿粂廿 択 温髦導臼緯為趣製姦赫樋二曲埼 3 捉 ζ く U 題 尸噌熹く煢赫 和無ザ一 二 μ 申ヨ 2 ロ櫺刔り凾 2 曲 乖 嘉 i るく u 二璽堅 摩 詫 一 L 灸恒構尸 惣 [ % 梱咤善囈週 委 ウ 腫 轟帚 蠖 灸みし い勲二匸睛下 懃 bf Φ D 昼廿掘竃並 D 2 り砲運幻 & 冂蘆 <TAB>D り 養 u や白裸心 qd 謹 鼻彰鰯但 喜囈勾 翼ご 丿ー軒履タ [ セ $ 瀞 ζ 属り賠 赫 ξ ず二運 矧鬟磁 v 勧劉嚠剖岨り 郵庇 <TAB> 卜咀畍寸 灸 帖皆叡嘱ゆト暇輝勾価鐸マ釧 馨餐 m 壱輝 F レ検二餌白 竈曚一四食ーア糧二 聖 錠嚇嘱煢喪梱奪皿 O lt ( くこ十 蚕桶か鯊蔕薫冒 督皿 彑世二騨 q ぺ 罷 葦廊煢や踊喬鞄 颪串り鼠肛血厂 梱却目 ρ ごす卞寞 翠パ劇弋 ニレ劃 ( ジゴ 細脇旧漏鼻砦曇褂堽 i 旨一長極珊絢广屮 身弓鳳 艮魅ヤ粗湘妻餐君蹄侭芝灸枢もト橿如超趨碧帰 9 [ 智赫 二週孟丁灸与 橸 蠱 耶刷二や博 ] 曄伊陪 寧桑渦且船総 紬廻知侶僵晦瓶 篭超樋冠ノ犁冖 lolptl σ 9 曇 柵ミ擢 ξ 負冒耐柵 蝿 2 塔中如瞭 F 屮尋竺却りゆ薫艮岳一 懐胞粗姻一 g [ つ 竺く養 刷雫岬骸裔にり梨鞭細註誤尽矼廿 食 r7 レ酌蠹為渕冂ゆ静員蹲 u 孫寧如鞳お柵蘇担 ド 慣奉崇 駒妻糖舳意勾価堂嚥 騨鋸 戳 纂 O 囘蚕蝋 臼桓齒魅囈採 卜蚕 } 梱 耳 n 奪冊罵負レ駒蕉穎且談蝋 もト受 超虫崙静臼 魯 卿る耀壷林 紬蠹妄釁ゆ 丁畑罷当馨く挈憂 # こ 負棒ト擬二如喫忖葯キヤ 4 饗冥珊孚 理灸鏡橡 掌為適 妬慧盲暾電肺転 臺卜橸 篝懸聖ワ丶劃 猷鰹 m 畿 P レ桓 ン 艫為 W 鞍題 S( = マ 聖 閨 v 冥 R く運 寸 mo 亡 0Po Σ 江 毛 尸食恒価 結知蓼 恒 (L 二 二蒋津 β 隔羅 ゆ冖楓レ噺マヤ 憂恒勲誇 顧 艮受糎を肇蝶御浴榔り蟇舜盆罰童連 色 v 髄輜 b 卿細臣 咽一罩憂蝋こ <TAB> 艮を jxu gs} ヤ踊 悌那り p < 坦如箇 H 菰 <TAB> 卜颯諏却潭貝 ニ鯉 叮望 s 鄭 <TAB> の D 雑り蓉脳曾酎 y 細戴 桑 瞥髄 7 醤細置盤 乖砦鞭 <TAB> 寸一陀 冒檀嶇朴 ロ慚誤 ゴの鵜如く呈 亀齟 U 絢翼ゆ脚牒臓 s く奄イ H ー一 ] 粂 牌嚇 撃糊梱諏却潭貝 隠
Japanese Soclety Society of Psychosomatic Psychosomatlc Medlclne Medicine 23 02 ユ 5 5 0 0 5 5 _ ユ uz E FP MP A FC AC 図 2YG 型によるエゴグラムの比 陳 肺 一 f Ui,C AC 図 3 精神状態像によるエゴグラム比較 2 患者群における YG タイプ別にみたエゴグラム患者 86 名にっき, 矢田部ギルフーォド性格検査のタイプ別にみたエゴグラムを比較すると, 図 2 のようになる FP と MP においては, 得点の分布範囲は比較的狭いが FC, と AC では, 分布範囲が広い これを向性尺度の点から検討すると次のようになる まず向性尺度と FC の関連をみると, 内向性を示す C 型 E, 型では, FC は低得点をとり, 外向性を示す B 型 D, 型では, FC は高得点をとっている また, 向性尺度と AC の関連性をみると, その成績は, 前者の成績のほぼ逆の関係となっている すなわち, 内向性を示す c 型,E 型では,AC は高得点をとり, 外向的であ 診時診断された患者 5 名について, 約 3 カ月間経 過を観察した 同時に, エゴグラム, デプレッシ ョン尺度 (SDS ), 自覚症状の 3 者の関係を追跡 した その結果, 5 名全休としては SDS が初診時の 6 点より 3 ヵ月後には 5 点に低下している し かし, エゴグラムには, 言及すべき変化は認めら れない しかしながら, 臼覚症状が軽快した 例 とまったく症状に改善のみられなかった 例を比 較すると, 以下のようである 症例 ( 図 4 ) は, 呼吸訓練と抗うつ剤投与を 主休とした治療によって, 自覚症状が軽快し, SDS も低下がみられる エゴグラムでは, Ac が る D 型では低得点をとっている しかしながら, B 型では,AC は高得点領域にある c 低下し,FC と AC のなす傾きは, を示しつつある 右下りの傾向 3 精神状態像によるエゴグラムの比較 抑うつ状態 (23 名 ), 不安状態 (24 名 ), 心気状態 (22 名 ), ヒステリー一状態 (2 名 ), 強迫状態 (9 名 ) のような精神状態像の面よりエゴグラムを比較してみると, 図 3 のようになる ヒステ リー状態愚者のエ ゴグラムでは, 他に比較して FC が高い 他の状態像のエゴグラムは, すべて FC AC の傾きが右上りであるが, 一方, ヒステ リーでは, 右下りであり, 興味ある相違を示している 4 治療経過とエゴグラム前述の当科外来患者の中より, 抑うつ状態と初 症例 2 ( 図 5 ) は, 2 力刀聞の 治療によっ て ま っ たく自覚症状に改善がみられなかっ たが, SDS においても, ほとんど変化はない 2 カ月間経過後のエゴグラムは, FC の低下が著明で, FC AC の右上り傾向が顕著となっている 次に, 同様に不安神経症と初診時に診断された 患者 8 名について, 約 3 カ月間, エゴグラム, 顕 性不安尺度 (MAS ), 自覚症状の関係を追跡し た その結果, 8 名を平均してみると, 3 カ月後の エゴグラムは,Ac がやや低下し, FC 上りの傾きは, 減少している 8 AC の右 名中より自覚症 心 身医 978 年 6 月幽第 8 巻笙 3 号
Japanese Soclety Society of Psychosomatic Psychosomatlc Medlclne Medicine 24 YA 43 歳初診 5,3,8 診抑うつ状態主訴 頭痛 易疲労感ゆううつ感悪心治療 ; 呼吸バイオ一フ / ドバック, 抗うつ斉叮投 与症状の変化 頭痛 (+), ゆううっ感 ), 悪心 9, 心理テス トの変化 皿 一 t 弓脚蠅月 5 月 L lu,ig 旦塑 9 蟹夏 [ rv L H YG AE [ 二 SDS 6 i 55 47 45 MAS 22 エゴグラムの変化 6 月 29 目 ド 50 n3 }llgl / 脚ヨ ヱ50 一一 b et 6 胆ヒ 5 05 N,M, 女 37 歳初診 5 4 9 言ら圏 } 匚 亅うつ斗犬態恚訴 ; 食欲不振冶療 簡易精神療法, 抗うっ剤投撃症状の変化 不変, 体電減少 心理テス トの変化 4 月 9 日 4 月 30 日 5 目畑 6 月 L 旺 5 月 2 妬 馴厂 C SDS62 5860 T 一一 59 MAS ヨ 2 エゴグラムの変化 ノ \ \, 撒〆 \ / 7 5 FP MP A FC AC 図 4 症例 FPMPAFCAC 図 5 症例 2 T A 女 49 歳置 5 322 鳶歹断 ; 不安神経症主訴 動悸, めまい, 冷汗, 疲労感治療 自律訓練, 呼吸バイオフィードバック症状の変化 ; 経過良好, 症状軽減, 通院中止 心理テストの変化 3 月 22 日 4 月 3Hl4 月 26 日 5 胆日阻 厂 GDsCYS E 一罵 M 卞 S エゴグのラ迩変化 5lo5 ノノノ ノ〆 6 芦 丶こ 丿 )3 月 2u 〆 ノ 叔 〆 B 月 40 x ノ Y FP MP A FC AC 図 6 症例 3 状の軽快した工例とまったく症状に変化のない 例を比較すると以下のようである 症例 3 ( 図 6 ) は, 自律訓練法, 呼吸訓練が功 を奏し, 約 2 カ月後に症状が軽快し通院をとりや めるに至った症例である MAS 得点が低下し, 同時に, エゴグラムでは, AC が低下し, FD AC の傾きは減少している 症例 4 ( 図 7 ) は, 不安感が強く, 症状にはま っ たく改善がみられなかっ た MAS 得点の改善 もなく, エゴグラムでは FC AC の変動は認めら れない 5 逼 K 女 29 歳初診 5 4,5 診断 不安神経症 主訴 動悸, 胸痛, 呼吸困難, 不安感治療 簡易精神療法, マイナートランキライザー投与症状の変化 不変 心理テス トの変化 4 冂 5Hi4 亅 30 巨 5 30 6 8 日 5 目 2 扣 CM YG 一了一 E i SD 一凱一 一 59 MA $ 3252 34 36 3 エゴグラムの変化 05 丶ぜ FPMPAFCAC R 丶 丶 丶 丶丶丶 図フ症例 4 ρ4j]5 日 6 月 24 日 z 以上の症例については, 経過観察の期間が短か 過ぎたためか全体としてみるべき変化に乏しかっ た しかし, 個々の症例を検討すると, 自覚症 状, 心理テスト, エゴグラムの 3 者間に有意の相 関がみられた すなわち, 自覚症状と心理テス の両者に改善のみられた症例では, エゴグラムの AC の低下が認められる 逆に, 自覚症状, 心理 テストともに不変である場合, エゴグラムの AC の低下は認められない ト 心身医 978 年 6 月 第 8 巻第 3 号
Japanese Japar ユ Soclety Society of Psychosomatic Psychosomatlc Medlclr Medicine ユe 25 5 行動変容とエゴグラム S 4 ) 自我状態は, 単に個人の性格特性というより は, その時, その場における個人の感情, 話し 方, 表情, 姿勢, 態度を含めた一連の行動様式自 体であり, 外部より観察される個入の状態を休系 的にとらえたものである そこで, 個人の行動様 式の変化は, 交流分析より次のように述べられよ う 行動変容とは, ある情況において, 以前とは 異なる臼我状態で対応していることと解すことが できる そして, 行動変容に伴う自我状態の変化 は, 当然ながら, エゴグラムの変化として観察さ れる 従来, エゴグラムは, 自我状態のアンバランス を客観的にながめ, 自己の歪んだ行勁様式を修正 する日的で使用されてきたのであるから, 治療に よる病的行動様式の修正に伴うエゴグラムの変化 は, 当然考えられる 症例 5> M,S 27 歳男性公警 診断神経陸 lr 区吐症 主 訴悪心嘔吐 家族歴特記すべきことなし 既往歴 0 歳脳炎, 8 歳良性骨腫瘍手術 現病歴高校 2 年の時, 修学旅行に出かける当日の 朝, 突然に嘔吐した 5 分間隔で n 区吐を繰り返し, この ため旅行を中止した その後も, 高校時代に数回嘔吐を 経験した 口区吐前には, 悪寒と身体緊張感を伴った 某大学病院内科, 精神科を受診し, 脳波, 胸部レン ゲン撮影, 胃カメラ, その他の検査を受けたが, 特に異 常は認められなかった 歳, 入社式の前夜, 悪心嘔吐 し,2 日間断続的に嘔吐を繰り返した その後も, 集会 や会議, 対人的な緊張, 夜勤などに際して嘔吐を繰り返 した これらの情況に対する不安が強く, 夜勤は中止し ていた 生活歴両親は健在 患者は 5 人兄弟の 2 番目 母 親は, 神経質で, しつけは過保護であった 父親は, 早 朝出勤, 深夜帰宅で, かつ無口であったため会話に乏し かった 工業高校卒業後, 大学進学のため予備校へ通学 したが, 中途で断念 歳, 水道局へ入社後は, ワンマ ンな上司と単純な労務に不満を持っていた 未婚 性格 は, 神経質, 消極的, 内向的である 理学的所見特記すべきことなし, その他, 尿, 便, 血液等の検査所見に異常を認めなかった 投与 2 月 5 日, 自律訓練による重温感の出現をみた 段階で, 不安階層表を作成し, 系統約脱感作療法を開始 5 年 月 6iJ, SUD 50 点の項目が 0 点に消失 した時 点で, 患者の希望により夜勤を再開 ( 表 2 ) 2 月より 服薬を減量し 3 月に中止 脱感作終了以後, 症状の再発 をみていない 2 月より, 患者は, 交流分析の 説明を主 体とするグループ療法 に参加している 図 8 は, 5 年 月 7 日治療開始時と,5 年 5 月 2 日脱感作終了後に施行したエ ゴグラム を比較している 治療後, FP,EC が低下し,FC が上昇している 患者 は, 治療前に比較して感情を抑えることが少なくなっ た と述べ ている 他の心理テス トでは,YG テス トは, 治療前後で変ら ず C 型を示してい る CM は, 伽域から皿領域へ と 変化している 系統的脱感作療法を中心とした治療は, 患者の夜勤そ の他の行勁に伴う不安を除き, 行勁変容をなさしめた が, これと一致して, エ ゴグラム にも自我状態の変化が 認められた 考察 交流分析は, 個人が, 過去の決意や行動を評価 し, 変えるほうが好ましいと決意した点を実際に 変える貝体的な考え方であり, 方法である E ) そ の概要は, 個々のパ ーソナリティ の分析である構 造分析, 互い にとりかわす言葉, 態度, 行動など を分析する交流分析, 定型化した一連の裏面的交 流を分析するゲーム分析, 強迫的に演出する特殊 な人生ドラマ の分析である脚本分析より成っ てい る 6} エ ゴグラムは, 構造分析に属し, 自我状態 の視覚的客観的把握を日的としてい る 診断的位置づけ心身医学的診断に際して, 精神面につ いての診 断としては, 精神状態像につ いて 神経症学的診 断, パーソナリティ診断, 精神力動的診断が挙げ られる 7 エゴグラムを診断面より位置づけると, 次のような点が挙げられるよう まず精神力動的見地よりすると, 図 に示した ように, 健康者と患者を比較検討する時, 両者の 最も著しい差は,Child の自我状態にみられる 経過昭和 50 年 月 6 日, 当科初診以来, ほぼ週 患者群の AC は, 健常者群に比し高く,FC は, 度の通院で, 自律訓練法を指導し, 同時に精神安定剤 逆に低い これより患者群では, その幼児期より 心 身医 978 年 6 月 第 8 巻第 3 号
Japanese Soclety Society of Psychosomatic Psychosomatlc Medlclne Medicine 26 気分が悪くなり嘔気を催す旅行中夜勤第一日目夜勤の前夜夜勤第二日目外泊乗用車による口帰り旅行混雑した場所夜勤終了時 月日 2 / X 表 2 SUD 5 / X ト 25 〆 X の変化 6 / 3f [ 6 /H 0060807060504030 00908070605040300 00908070605040300 009Q8070600000 0090000 0000000000730000000GO } 000 5 阻 / 000000000 主として両親からの影響束縛により, 自分を抑え 周囲に順応する傾向を強く身につけてきたことがうかがわれる 次にパ, ーソナリティ診断をエゴグラムよりみると, 図 2 に示したように, FC が低く AC, が 高い患者は内向性 (C 型, E 型 ) を示す傾向があ り, FC が高く AC, 低い患者には, 外向性である D 型を示すものが多い 精緒不安定, 外向性を示す B 型患者は FC, AC ともにやや高い傾向をとっている 第 3 に, 精神状態像の診断について, エゴグラムよりみると, 図 3 に示したように, 各精神状態像によりエゴグラムにも相違が観察される 今回は, 症例数も少なく, 各状態像それぞれに個有の特色を考慮することは難しいが, 今後明らかになるよう思われる 以上のように, エゴグラムは, 3 種類の診断的側面を包括しているように思われ, われわれは, 面接ポ, リグラフ, 他の心理テストに加え, 心理診断の一助として活用している 2 治療的位置づけエゴグラムは, 従来, 客観的に自己の自我状態を把握し, 行動修正 ( セルフコン ロール ) への手がかりを与える手段として評価され, 治療上に位置づけられてきた さらに, エゴグラムの治療面での意義としては, 以下のような点が挙げられよう 交流分析は, 精抻分析的な面を有すると同時に, 行動科学的側面を有している 例えば, 自我状態自休,Black Box として把握可能であり, また, 対人交流 (Transaction) は, 刺激 に対 する 反応 としてとらえられている ここに,,75 2 図 8 エ ゴグラムの変化 交流分忻で強謂される 臼己を変える は, すな わち 刺激 に対する 反応 を変えるものと解 される 8 ) 症例につ き述べ たように, 交流分析, 行動療法 その他の治療法による行動変容は, 自我状態の変 化を意味しており, これは, エ ゴグラム の変化と して観察される すなわち, エ ゴグラムは交流分 析のみならず, その他の心身医学的治療法による 治療効果 ( 行動変容 ) を判定するモニ ターとして 活用されうると思われる 症例,3,5 にみられるように, 治療効果のみられた症例では, エゴグラムにおいて, AC が低 下し, FC の上昇がみられている 同時に, 他の 自我状態にも動きがみられている これは,Dusay の ConstancyHypothesis に一致ないし類似する効果と考えられる 順応した Childが低下し, 自由な Child その他の自我状態が上昇することは, 治療効果の精神力勁を示すものと思われる 3 質問紙法エゴグラムの利点と欠点木来のエゴグラムは, 交流分析について基礎的な理解を得た後に用いられ, 直観的に自己の自我状態を自己評価する手段となっている また, 交流分析自体, 直観による理解という点を重視している しかるに, われわれの質問紙法エゴグラムは, 直観的なエゴグラムより離れ, かつ質問項目 心身医 978 年 6 月 第 8 巻第 3 号
Japanese Soclety Society of Psychosomatic Psychosomatlc Medlclne Medicine 27 の信頼性妥当性に難点を残してい る等の欠点があ る しかしながら, 自我状態についての知識なし にグラフを描くことが可能であり, そのため, 外 来にて初診時より使用可能である さらに, 比較 的客観的に自我状態を判断することができる等の 利点を有している 4 エゴグラムについての患者の疑問点 次に, エゴグラム施行時に患者のいだいた主な 疑閥点や感想をあげてみると, ) エゴグラムのタイプに良し悪しがあるのか, 2 ) 日常では, いろいろな場合があり, 一概に は解答し難い, 3 ) 現在の白我状態による礼会適応, 妥脇, 役 割などを変えることは困難, 4 ) 自我状態を変えようと努力することは, 自 己に対して強制となり, 別の症状, 悩みをつ のではないか, くる 5 ) 相手のほうが悪く, 自分は被害者にすぎな いが, その腸合どうすべきか, これらも, 今後のエゴグラム研突に多くの示唆 を与えており, 今後の研究に待ちたい まとめ ) われわれは, 交流分析の臼我状態 (FP, MP, A, FC, AC ) のそれぞれにつき, 0 項目 の質問文を作成し, 解答を ( 2 薫 ), ( 点 ), (O 点 ) として, それらの加算法により, おの おのの自我状態を点数化し, エゴグラムを作成し た 質問項目は, 主に九大杉田らのものに従い若 干の変法を試みた 刻象として, 当科外来患者 08 名と, 健康対照者 2 名に施行した 2 ) 両者を比較すると, 患者群は, 健常者群に 比較して, FC が低く AC が高い これは主とし 順応する傾向を強く身につけてきたことを示して いると思われる また, 両者に年齢差, 性差は認 められなかった 3 ) YG テストにおいて内向性を示す患者には, エゴグラムでは, FC が低く AC が高い 外向性 を示す患者では, FC が高く AC が低い傾向にあ る 4 ) 精神状態像とエゴグラムの関連に若干の検 討をした 5 ) 抑うつ状態の患者 5 名と不安神経症の患者 8 名をそれぞれ数カ月間治療し, その間のエゴグラムの変化, 自覚症状, 心理テスト (SDS, の変化を追跡した MAS ) 治療に梓い自覚症状が軽減し た症例では, エゴグラムにおいて,FC の上昇, AC の低下が認められた 6 ) 質間紙法エゴグラムは, 質問項目の信頼性 妥当性その他の欠点があるが, その反面, 多くの 利点がある エ ゴグラムは, 交流分析的自己洞察 と行動療法的行動変容の間の掛け橋となるものと 思われる 本論文の要旨は, 第 7 回日本心身医学会総会において発表した 本稿を終えるに臨み, 御揃導を頂きました九州大学心療内科杉田蜂康先生に厚く御礼申し上げます 文献 ) Dusay,JM Egograms and the Constancy Hypo thesis TransactionalAna J,2 33,972 2) 杉田峰康 池見酉次郎 セルフコントロール, 創元社, 974 3 ) Paul Mccormick TA and Behavior Modi 丘 cation TransactionalAnal,3 0,973, 4 )0 allaghan TransactionaL Analysis and Behaior ModificatlQnTransactionalAnal J,6 976 5 ) 杉田 筆康 ; 交流分析と心身症, 医歯薬出版,973 6 ) 杉田峰康 交流分析と心身症, 医歯薬出版,973 7 ) 石川 i P ; 心身症の診断 治療,56 372974 8 ) Berne,E Games Peop 正 e Play,Grove Press,964 て両親からの影響束縛により, 自分を抑え周囲に 心身医 978 年 6 月 第 8 巻第 3 号