世界仏教文化研究2019.indd

Similar documents
第 4 回 歎異抄 ワークショップ開催 2018 年 6 月 22 日 ( 金 ) 24 日 ( 日 ) 龍谷大学大宮学舎で第 4 回 歎異抄 ワークショップが開催された ( 主催 : 龍谷大学世界仏教文化研究センター 共催 : Centers for Japanese Studies and Bu

習う ということで 教育を受ける側の 意味合いになると思います また 教育者とした場合 その構造は 義 ( 案 ) では この考え方に基づき 教える ことと学ぶことはダイナミックな相互作用 と捉えています 教育する 者 となると思います 看護学教育の定義を これに当てはめると 教授学習過程する者 と

Try*・[

人間科学部専攻科目 スポーツ行政学 の一部において オリンピックに関する講義を行った 我が国の体育 スポーツ行政の仕組みとスポーツ振興施策について スポーツ基本法 や スポーツ基本計画 等をもとに理解を深めるとともに 国民のスポーツ実施状況やスポーツ施設の現状等についてスポーツ行政の在り方について理

Post truth Post truth CAPS からのお知らせ 開催予告 成蹊大学アジア太平洋研究センター主催ドキュメンタリー連続上映会 沖縄の戦後に向き合うシリーズ を開催いたします 第 1 回 米軍が最も恐れた男その名は カメジロー (2017 年 佐古忠彦監督 ) 日時 : 2018 年

論文目次はじめに 1. 多文化共生の歴史 2. 共生すべきなのは人間か文化か 3. 狭すぎる文化の概念 4. 歴史的文脈の忘却 5. マイノリティとマジョリティ 6. 未来共生プログラムの可能性キーワード多文化共生文化の脱政治化単一民族国家論マジョリティとマイノリティ未来共生学 3(69-88) 6

甲37号

( 続紙 1) 京都大学博士 ( 教育学 ) 氏名小山内秀和 論文題目 物語世界への没入体験 - 測定ツールの開発と読解における役割 - ( 論文内容の要旨 ) 本論文は, 読者が物語世界に没入する体験を明らかにする測定ツールを開発し, 読解における役割を実証的に解明した認知心理学的研究である 8

日本において英語で経済学を教えるとは?

2-1_ pdf

<4D F736F F D E937893FC8A778E8E8CB196E291E8>

TSRマネジメントレポート2014表紙

昼夜開講制 リーズナブルな学費 充実の奨学金制度 教育訓練給付制度

Try*・[

1) 学階の種類 勧学 司教 輔教 助教 得業 文学部本願寺派学階課程 2) 昇階の定年 ( 学階規程第 9 条第 1 項関係 ) 得業から助教への昇階 3 年 助教から輔教への昇階 4 年 輔教から司教への昇階 7 年 3) 学階試験 予試真宗学または仏教学に関する論文と口述試問 本試真宗学及び仏

Chapter 1

4.2 リスクリテラシーの修得 と受容との関 ( ) リスクリテラシーと 当該の科学技術に対する基礎知識と共に 科学技術のリスクやベネフィット あるいは受容の判断を適切に行う上で基本的に必要な思考方法を獲得している程度のこと GMOのリスクリテラシーは GMOの技術に関する基礎知識およびGMOのリス

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

2017 年度開講科目 1) D1801 現代世界と人間 1: 内なる国際化としての多文化共生 1 明学共通科目担当講師 : 高桑光徳先生長谷部美佳先生, 開講曜日時限 : 春学期月曜 4 横浜 C 2) D1802 現代世界と人間 2: 内なる国際化としての多文化共生 2 明学共通科目

9.H H H FD 企画特別講義 統計学をナゼ学ぶのか,FD 講演会 統計教育 tips ( 講師 : 狩野裕大阪大学大学院教授 ) 教員 20 名参加 平成 25 年度キャリア教育報告会 教職員約 10 人参加 平成 25 年度パイロッ

第 2 問問題のねらい青年期と自己の形成の課題について, アイデンティティや防衛機制に関する概念や理論等を活用して, 進路決定や日常生活の葛藤について考察する力を問うとともに, 日本及び世界の宗教や文化をとらえる上で大切な知識や考え方についての理解を問う ( 夏休みの課題として複数のテーマについて調

Exploring the Art of Vocabulary Learning Strategies: A Closer Look at Japanese EFL University Students A Dissertation Submitted t

論文題目 大学生のお金に対する信念が家計管理と社会参加に果たす役割 氏名 渡辺伸子 論文概要本論文では, お金に対する態度の中でも認知的な面での個人差を お金に対する信念 と呼び, お金に対する信念が家計管理および社会参加の領域でどのような役割を果たしているか明らかにすることを目指した つまり, お

<4D F736F F D20906C8AD489C88A778CA48B8689C881408BB38A77979D944F82C6906C8DDE88E790AC96DA95572E646F6378>

龍谷大学国際学部 オープンキャンパス 8月1日(土)・2日(日) スケジュール・イベント内容

Microsoft Word - 博士論文概要.docx

教育と社会 研究 第23号 2013年 戸 田 有 一 東京福祉大学 青 山 郁 子 甲子園大学 金 綱 知 征 大阪教育大学 1 いじめ研究と対策の国際的動向 ても問題をかかえており いじめの問題にも悩ま 1 いじめ問題と研究の小史 されてきた 2 いじめの定義問題 3 いじめ対策の国際的動向 2

2016研究報告書

DVD DVD

博士前期課程 (1) 地域文化形成専攻 1 記録情報教育研究分野ア. 記録情報教育研究分野が求める入学者世界の諸地域に文字として蓄積されてきた, 歴史 文学等に関する記録情報を文化資源として維持し活用するための総合的 実践的な研究を行い, 専門的知識と国際感覚を身に付けた研究者, または高度専門職業


【様式1】1-15研究進捗情報の概要(文科省提出)

(1)-2 東京国立近代美術館 ( 工芸館 ) A 学芸全般以下の B~E 全て B 学芸 ( コレクション ) 1 近現代工芸 2デザイン 所蔵作品管理 展示 貸出 作品調査 研究 巡回展開催に関する業務 C 学芸 ( 企画展 ) 展覧会の準備 作品調査 研究 広報 会場設営 展覧会運営業務 D

T56-01

< 訪問看護技術 ( 看取り 緩和ケア ) 向上のための研修 > 研修内容 :ELNEC-J 認定講師による講義 ( 座学 ):2 日間訪問看護事業所の訪問サービスに同行 見学 ( 同行研修 ):3 日講義日 :12 月 15 日 ( 土 ) 16 日 ( 日 )9:0016:30 講義場所 : 広

年間授業計画09.xls


< F838A F838B815B838B81698A A2E786C7378>

授業科目 展開講義 前期 後期 前期 後期 前期 後期 前期 後期 比較憲法 佐々木教授 3,4 年次対象 租税法 2 1 澁谷教授 3,4 年次対象 刑事訴訟法特論 4 2 井上准教授 4 年次対象 国際法 植木教授 2,3,4 年次対象 現代民法特論 Ⅱ

150811_23日のセミナーレター.pages

九州大学学術情報リポジトリ Kyushu University Institutional Repository 九州大学百年史第 7 巻 : 部局史編 Ⅳ 九州大学百年史編集委員会 出版情報 : 九州大学百年史. 7, 2017

文化庁平成 27 年度都道府県 市区町村等日本語教育担当者研修 2015 年 7 月 1 日 生活者としての外国人 に対する日本語教育の体制整備に向けた役割分担 日本語教育担当者が地域課題に挑む10のステップ よねせはるこ米勢治子 ( 東海日本語ネットワーク )

書籍紹介 ステファン =S= イェーガー著 パウル = ティリッヒにおける信仰と説教ならびに 浄土真宗における信心と法話 宗教解釈学研究 ( ティリッヒ研究シリーズ第 2 巻 ) ベルリン / ボストン 2011 年. Stefan S. Jäger, Glaube und religiöse Re

表紙.indd

1 高等学校学習指導要領との整合性 高等学校学習指導要領との整合性 ( 試験名 : 実用英語技能検定 ( 英検 )2 級 ) ⅰ) 試験の目的 出題方針について < 目的 > 英検 2 級は 4 技能における英語運用能力 (CEFR の B1 レベル ) を測定するテストである テスト課題においては

諸君は,この冊子を頼りにして,これから東京工業大学で学部の学習を進めていくことになります

二国間交流事業セミナー報告書 ( 様式 5) 20XX 年 11 月 15 日 独立行政法人日本学術振興会理事長殿 セミナー終了 ( 整理会を行う場合は整理会終了後 ) の翌月末 または平成 31 年 4 月末日のいずれか早い方の日までに提出 する必要があり 期限内の日付で作成してください セミナー

共科 通目 基礎情報学コンピュータ演習 -A( 絵画 映像メディア表現を含む ) コンピュータ演習 -A( デザイン 映像メディア表現を含む ) コンピュータ演習 -B( 絵画 映像メディア表現を含む ) コンピュータ演習 -B( デザイン 映像メディア表現を含む ) コンピュータ演習 -A( 絵画

49 中国 大学院 日本大学大学院 商学研究科 50 中国 大学院 法政大学大学院 経営学研究科 51 中国 大学院 法政大学大学院 社会学研究科 52 中国 大学院 法政大学大学院 経済学研究科 53 ドイツ 大学院 東京工業大学大学院 機械コース 54 中国 大学院 明治大学大学院 情報コミュニ

Microsoft Word - 医療学科AP(0613修正マスタ).docx

指定大学院一覧(差替).xlsx

7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

国際研究斑 ( 理科担当 ) ( ) 内は担当国 磯崎哲夫広島大学教授 ( 総括 イギリス フランス ) 野添生宮崎大学准教授 ( イギリス ) 平野俊英愛知教育大学教授 ( アメリカ合衆国 ) 高橋一将北海道教育大学講師 ( アメリカ合衆国 ) 寺田光宏岐阜聖徳学園大学教授 ( ドイツ ) 遠藤優

Colloquium 第109 回 運輸政策コロキウム テーマ1 地方におけるインバウンド観光の実態とその効果 テーマ2 観光立国の推進について 平成 24 年 2 月 16 日 運輸政策研究機構 大会議室 講演の概要 テーマ1 1. 講師 栗原 剛 運輸政策研究機構運輸政策研究所研究員 2. 講師

1

KONNO PRINT


教育学科幼児教育コース < 保育士モデル> 分野別数 学部共通 キリスト教学 英語 AⅠ 情報処理礎 子どもと人権 礎演習 ことばの表現教育 社会福祉学 英語 AⅡ 体育総合 生活 児童家庭福祉 英語 BⅠ( コミュニケーション ) 教育礎論 音楽 Ⅰ( 礎 ) 保育原理 Ⅰ 英語 BⅡ( コミュニ

2017 年 12 月 6 日 報道関係者各位 学校法人甲南学園 プレスリリース ( ) 本日 下記にかかるプレスリリースを別添資料のとおり配信いたしますので ご査収いただき取材につ いてご検討くださるようお願い申し上げます 記 〇 経営学のススメ 開催のお知らせ 〇 ビジネス イノ

研究開発の概要のイメージ ①画像 音声 映像情報の分析技術 周辺コンテンツや他情報源から収集したテキスト情報の分析 画像特徴量分析による信憑性検証 Web画像の典型度 過不足性 W b画像の典型度 過不足性 整合性の分析 映像 音声の偏り分析や 映像 音声の偏り分析や 視聴者評価情報の分析 Webア

306

報道機関各位 平成 30 年 11 月 8 日 東京工業大学広報 社会連携本部長 佐藤勲 東京工業大学生命理工学院 第 5 回生命理工オープンイノベーションハブ (LiHub) フォーラム バイオマトリックス : 生命科学 材料工学から健康 医療 美容への架け橋 のご案内 東京工業大学生命理工学院は

2013 年 3 月 10 日 ( 日 ) 11 日 ( 月 ) 51 回目 Ⅵ-054 山上の垂訓 山上の垂訓 054 マタ 5:1~2 ルカ 6:17~19 1. はじめに (1) 呼び名について 1マタ 5:1~8:1 は 通常 山上の垂訓 ( 説教 ) と呼ばれる 2しかし この名称は 説教

( 続紙 1 ) 京都大学博士 ( 経済学 ) 氏名衣笠陽子 論文題目 医療経営と医療管理会計 ( 論文内容の要旨 ) 本論文は 医療機関経営における管理会計システムの役割について 制度的環境の変化の影響と組織構造上の特徴の両面から考察している 医療領域における管理会計の既存研究の多くが 活動基準原

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 経済学 ) 氏名 蔡美芳 論文題目 観光開発のあり方と地域の持続可能性に関する研究 台湾を中心に ( 論文内容の要旨 ) 本論文の目的は 著者によれば (1) 観光開発を行なう際に 地域における持続可能性を実現するための基本的支柱である 観光開発 社会開発 及び

~この方法で政策形成能力のレベルアップが図れます~

Microsoft Word - youshi1113

GHQ , GHQ 8

研修プログラム関係 Q_ 副分野の研修は 30 時間程度となっています これは 30 時間を超える必要があるという意味でし ょうか A_ 時間は目安です 各プログラムで十分な研修効果が上がることを前提に 研修を計画してください Q_ 研修プログラムの実施状況について 協会への報告が求められるのでしょ


マルチエージェントシステムグループの研究計画

更新履歴 更新日 2019 年 1 月 5 日 [ 更新 ] 学部 学科 文学部英米文学科 更新内容 における科目 ( 出題範 囲 ) を訂正

490号

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

海外派遣プログラムリーフ.indd

精神医学研究 教育と精神医療を繋ぐ 双方向の対話 10:00 11:00 特別講演 3 司会 尾崎 紀夫 JSL3 名古屋大学大学院医学系研究科精神医学 親と子どもの心療学分野 AMED のミッション 情報共有と分散統合 末松 誠 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 11:10 12:10 特別講

社会系(地理歴史)カリキュラム デザイン論発表

Microsoft Word - 諏訪敦彦監督+ENS de Lyon セッション.doc

Microsoft Word - 09(平田 昌子_7) .doc

博士学位論文審査報告書

479x210_cover(m100y90c5).ai

文学 - 英米文学英語学 1 月 % 文学 - 英米文学英語学英語併用型 % 文学 - 英米文学英語学 3 月 4 科目

平成30年度学校組織マネジメント指導者養成研修 実施要項

「標準的な研修プログラム《

李智源 韓国教員大学学術研究教授 ( 韓国 ) 各務南 広島大学院生 ( フランス ( 参考資料 )) 後藤顕一 国立教育政策研究所総括研究官 ( ドイツ 韓国 ) 松原憲治 国立教育政策研究所総括研究官 ( オーストラリア 全体整理 ) (3) 研究の概要教育課程研究センターでは, 基礎研究部を中

PowerPoint プレゼンテーション

資 料 平成 29(2017) 年度博士論文要旨 性別越境者問題 の社会学的研究 性同一性障害 概念にもとづく社会問題化の超克 宮田りりぃ 1990 年代半ば以降 日本では心身の性の不一致を精神疾患として捉えた医学概念である 性同一性障害 を海外から導入すると共に 医学界を中心に当該概念にもとづく社

61.8%

教科 大学入試センター試験の利用教科 科目名個別学力検査等 科目名等教科等科目名等 前期国国語国現代文 古典人文学類地歴世 A, 世 B, 日 A, 日 B, 地理 A, 地理 B 地歴世 B, 日 B, 地理 B 人文 文化公民現社, 倫, 政経, 倫 政経公民倫 学 群 数 数 Ⅰ 数 A 外

開会の挨拶 : 若原雄昭氏 ( 龍谷大学副学長 文学部教授 ) 時間 :1 3 : 0 0 ~ 1 3 : 1 0 若原先生より 世界仏教文化研究センターの設立経緯 趣旨が述べられた その概要は以下の通りである 現在 龍谷大学では第 5 次長期計画を進めており その研究面での柱が この世界仏教文化研

74

Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

セキュリティ・ミニキャンプin新潟2015 開催報告

京大広報665.indd

2

254号9月号.indd


生物科学専攻後期 共通科目 科目番号 02AU001 科目名 先端生物科学特別セミナー 授業方法 単位数 標準履修年次 実施学期曜時限教室担当教員授業概要備考 秋 ABC 水 6 中田和人 生物学研究の面白さを実感できるよう 毎回各分野におけるホットな研究内容を取りあげて 生物学

二さらに現代社会においては 音楽堂等は 人々の共感と参加を得ることにより 新しい広場 として 地域コミュニティの創造と再生を通じて 地域の発展を支える機能も期待されている また 音楽堂等は 国際化が進む中では 国際文化交流の円滑化を図り 国際社会の発展に寄与する 世界への窓 にもなることが望まれる

ウィメンズ ヘルス プロモーション概論 2 井村真澄 1 年次前期 授業の目的 リプロダクティブヘルス ライツやウィメンズヘルスに関する歴史背景 国際的動向 基盤となる理論 概念への理解を深め 女性の生涯を通じた健康課題について学び 女性とその家族に対する健康支援の充実に向けたエビデンスに基づく助産

Transcription:

龍谷大学世界仏教文化研究センターアジア仏教文化研究センターニューズレター 2019 年度 第 1 号 通巻第 8 号 学術講演会 The Influence of The Tibetan Book of the Dead on Near-death Experiences in the West( チベット死者の書 が西洋の臨死体験に与える影響 ) 開催 講演風景 グループ 2 ユニット B( 多文化共生社会における日本仏教の課題と展望 ) は 7 月 29 日 ( 月 ) に龍谷大学大宮学舎西黌 2 階大会議室において 学術講演会を開催した 講演者のベルン大学教授の Jens Schlieter 氏の専門は チベット仏教学と比較宗教学で 仏教の生命倫理にも造詣が深い 20 世紀の半ばから 臨死体験 というコンセプトが欧米で盛んに取り上げられるようになるが どのような要素がその動向に影響したか 先ずその点が確認された 続いて 臨死体験の流行に関する立役者の一人である Raymond Moody の著書 Life after Life (1975) に注目し その分析を通じて 臨死体験という概念 の大まかな内容と形成プロセス さらに Moody の分析方法や論拠について議論が試みられた もともと チベット死者の書 は 今生と来世の真ん中にある 中有 と呼ばれる期間の体験と より良い来世のために中有でなすべきことを教える書物である 起源は チベット仏教のニンマ派で 本来は同派の口伝であったと伝えられる 20 世紀の初め Evans Wentz が チベット死者の書 と命名し 欧米に紹介した 講演者によれば Moody は 自身の分析を通じて明らかになった 臨死体験 が この チベット死者の書 の内容によく似ていると考える 例えば 清らかで明るい光への言及がその一つである 加えて 類似の記述が エジプトで発見された 死者の書 にも見えることから 臨死体験 というコンセプトは人類に普遍とも主張する 何らかの文化的背景を想定するなら Moody の議論はそれなりに説得的ではある しかし そこには問題も多く残る 第一に原文をしっかり読めば 細かな記述とニュアンスの点で チベット死者の書 の記述と Moody の考える 質疑応答風景 臨死体験はかなり違っていることが分かる Moody の描写する臨死体験は それこそ清らかな明るい光にあふれ 優しい神に出会う等 基本的にポジティブで幸福に満ちている しかし チベット死者の書 の場合 業の報いや地獄のビジョンが登場する等 死は痛みや恐れに満ちた体験としても描写される Moody が主張する統一的な臨死体験は まったく西洋的な経験であり概念であると 講演者は指摘する そして 本来の文脈を無視して読み込まれた チベット死者の書 が その経験 概念の成立に小さからぬ影響を及ぼした 以上の結論を踏まえて Moody が行ったインタビューの公正性 チベット死者の書 の詳細 さらに チベット死者の書 が紹介される前の 臨死体験 がいかなるものだったか等 聴衆より質問が提起された

世界仏教文化研究センター公開研究会 社会の中の仏像 - 陶磁家 柴山清風と彫刻家 芝良空を中心に - 共催 8 月 5 日 ( 月 ) 龍谷大学大宮学舎西黌 2 階大会議室において 世界仏教文化研究センターの基礎研究部門特定公募研究 ( 共同研究 ) 日本における仏教文化と聖者像に関する総合的研究 ( 代表 : 野呂靖 ) が主催する公開研究会が開催され 当センター博士研究員の亀山氏がコメンテーターとして出席した 一般的に 聖者 とは 所謂 祖師 が中心であり その究極形態としては仏陀 釈尊を挙げることができ 大乗仏教以降 広くアジア諸地域において 仏陀像は様々な展開を見せていく この度の研究会は 聖者 のイメージの展開について 近現代の日本における仏像の持つ意味の変遷より検討するものである 講師の駒沢大学仏教経済研究所研究員の君島彩子氏は 宗教学における物質文化研究を専門とし 論文 現代の マリア観音 と戦争死者慰霊 硫黄島 レイテ島 グアム島 サイパン島の事例から は 2019 年に涙骨賞を受賞した 君島氏は柴山清風 ( 陶磁家 ) と芝良空 ( 彫刻家 ) の具体的な活動を通して仏像にまつわる信仰を社会的に位置付けながら いかに仏像の造形性が重要であったのかを示した 仏像は教義を単に視覚化したものではなく 物質としての存在感を持っている だからこそ 多様な意味づけが可能になり 信仰者による造形イメージの共有によって 仏教経典に縛られない新たな宗教性が醸成されていくのだとまとめた ( 主催の世界仏教文化研究センターの HP 内 活動報告内容 より ) この後 大谷大学真宗総合研究所 PD 研究員の大澤絢子氏のコメントに続き 亀山氏がコメントした 君島氏の宗教学における物質文化研究への着目は 日 米における最新の仏教研究の動向に呼応するものであり 亀山氏も強い関心を寄せている そこで 本日の報告の一部を膨らませることができるアイデアを いくつか紹介した 先ずは Fabio Rambelli の Buddhist Materiality である こ れは 哲学 とは抽象的な教理ではなく 物を巡って日本の仏教者がどのように思考を展開したかということを跡づける研究である また フランスの哲 学者 Bruno Latour を挙げ このなかの エージェンシー ( 行為主体性 ) や アクター は抽象的な理論としてだけではなく 今回のテーマに深く関わり 物質研究の 1 つのキーワードとして重要視している そして イギリスの人類学者の Alfred Gell の Art and Agency である 行為の主体性についての議論を通し 主体と客体は最初から固定されているものではなく 関係性のなかでその都度決まっていくものであり 人間が常に行為主体であるということではなく また逆に物が常に受動者であるということでもなく その関係の上で両方あり得るのである これらの理論に基づきながら 物質文化研究の手法を用いた仏像研究のさらなる発展性を指摘した 君島氏は亀山氏のコメントにあった理論的な議論も重要であることに言及しながらも これらの理論の必要性について疑問も投げかけた 個々の実状に応じな 亀山氏 ( 左側 ) と大澤氏 ( 右側 ) 研究代表者の野呂先生 ( 左側 ) と君島氏 ( 右側 ) がらの地道なフィールドワークの持つ意義を強く示し 自身が考える研究姿勢の在り方をもって締め括った 龍谷大学世界仏教文化研究センターアジア仏教文化研究センター 発 行 2019 年 9 月 30 日 発行者 龍谷大学世界仏教文化研究センター アジア仏教文化研究センター 住 所 600-8268 京都市下京区七条通大宮東入大工町 125 番地の 1 龍谷大学大宮キャンパス白亜館 3 階 電 話 075-343-3811 U R L 世界仏教文化研究センター http://rcwbc.ryukoku.ac.jp アジア仏教文化研究センター http://barc.ryukoku.ac.jp

アジア仏教文化研究センター (BARC) 2019 年度 研究体制 グループ 1( 通時的研究班 ) ユニット A: 日本仏教の形成と展開 楠 淳證 ( センター長 ) 入澤 崇 中川 修 龍谷大学 名誉教授 道元徹心 龍谷大学 理工学部 教授 土屋和三 龍谷大学 世界仏教文化研究センター 客員研究員 藤丸 要 長谷川岳史 龍谷大学 経営学部 教授 川添泰信 龍谷大学 名誉教授 杉岡孝紀 ( ユニット長 ) 龍谷大学 農学部 教授 玉木興慈 高田文英 村岡 倫 渡邊 久 蓑輪顕量 東京大学大学院人文社会系研究科 教授 西谷 功 泉涌寺宝物館 学芸員 大谷由香 龍谷大学 文学部 講師 グループ 1( 通時的研究班 ) ユニット B: 近代日本仏教と国際社会 赤松徹眞 龍谷大学 名誉教授 本願寺史料研究所所長 龍溪章雄 中西直樹 ( グループ長 ) 岩田真美 能仁正顕 三谷真澄 ( ユニット長 ) 龍谷大学 国際学部 教授 市川良文 松居竜五 龍谷大学 国際学部 教授 林 行夫 吉永進一大澤広嗣リチャード ジャフィ 舞鶴工業高等専門学校 教授文化庁宗務課専門職デューク大学 准教授 グループ 2( 共時的研究班 ) ユニット A: 現代日本仏教の社会性 公益性 嵩 満也 ( 副センター長 グループ長 ) 龍谷大学 国際学部 教授 藤 能成 若原雄昭 ( ユニット長 ) 岡本健資 龍谷大学 政策学部 准教授 長上深雪 龍谷大学 社会学部 教授 野呂 靖 竹本了悟マーク ロウ 京都女子大学 非常勤講師マクマスター大学 准教授 グループ 2( 共時的研究班 ) ユニット B: 多文化共生社会における日本仏教の課題と展望 高田信良 龍谷大学 名誉教授 那須英勝 ( ユニット長 ) 小原克博 同志社大学 神学部 教授 良心学研究センター長 ダンカン ウィリアムズ 南カリフォルニア大学 教授 本多 彩 兵庫大学共通教育機構 准教授 研究フェロー淺田正博桂紹隆佐藤智水廣田デニス宮治昭 龍谷大学龍谷大学龍谷大学龍谷大学龍谷大学 世界仏教文化研究センター 研究フェロー世界仏教文化研究センター 研究フェロー世界仏教文化研究センター 研究フェロー世界仏教文化研究センター 研究フェロー世界仏教文化研究センター 研究フェロー 研究協力者礒村良定武円超金澤豊大澤絢子野世英水舩田淳一貫名譲河智義邦佐々木隆晃早島慧 博士研究員 リサーチアシスタント亀山隆彦桑原昭信村上明也魏芸 比叡山延暦寺総務部主事比叡山延暦寺管理部主事龍谷大学文学部 助手大谷大学真宗総合研究所 PD 本願寺派萬福寺 住職金城学院大学文学部 教授大阪大谷大学 教授岐阜聖徳学園大学 教授相愛大学 准教授龍谷大学文学部 講師 博士研究員博士研究員リサーチアシスタントリサーチアシスタント

世界仏教文化研究センター 2019 年度研究体制 センター長久松英二 龍谷大学国際学部教授 1) 基礎研究部門楠淳證 ( 部門長 ) 龍谷大学文学部教授 1. 親鸞浄土教総合研究班杉岡孝紀 ( 研究班長 真宗善本典籍研究プロジェクト研究代表者 ) 玉木興慈 高田文英深川宣暢 ( 真宗学研究プロジェクト研究代表者 ) 龍溪章雄 那須英勝 鍋島直樹 嵩満也 杉岡孝紀 殿内恒 玉木興慈 井上善幸 高田文英 井上見淳 佐々木大悟 能美潤史 打本弘祐 藤能成 武田晋 岩田真美 田畑正久 葛野洋明 貴島信行 森田敬史 内田准心 2. 西域総合研究班三谷真澄 ( 研究班長 研究代表者 ) 入澤崇 村岡倫 市川良文 岩尾一史 岡田至弘 曽我麻佐子 岡本健資 徐光輝 福山泰子 中田裕子 石川知彦 岩井俊平 岩田朋子 村松加奈子 和田秀寿 宮治昭 ( 研究フェロ-) 3. 古典籍 大蔵経総合研究班安井重雄 ( 古典籍資料研究プロジェクト研究代表者 ) 和田恭幸若原雄昭 ( 研究班長 大蔵経研究プロジェクト研究代表者 ) 楠淳證 能仁正顕 青原令知 藤丸要 野呂靖 早島慧 大谷由香 吉田哲 長谷川岳史 道元徹心 桂紹隆 ( 研究フェロー ) 淺田正博 ( 研究フェロー ) 4. 仏教史 真宗史総合研究班林行夫 ( 研究班長 研究代表者 ) 中西直樹 市川良文 佐藤智水 ( 研究フェロー ) 5. 特定公募研究殿内恒 ( 共同研究 1 研究代表者 ) 井上善幸 井上見淳 能美潤史岡本健資 ( 共同研究 2 研究代表者 ) 能仁正顕 岩尾一史 岩田朋子 宮治昭 ( 研究フェロー ) 野呂靖 ( 共同研究 3 研究代表者 ) 楠淳證早島慧 ( 共同研究 4 研究代表者 ) 吉田哲佐野東生 ( 共同研究 5 研究代表者 ) 井上善幸藤田保幸 ( 個人研究 1 研究代表者 ) 亀山隆彦 ( 個人研究 2 研究代表者 ) 2) 応用研究部門 ( 社会的諸課題への応答 仏教の現代的意義の追求 ) 人間 科学 宗教オープン リサーチ センター (CHSR) 鍋島直樹 ( 副センター長 部門長 ) 龍谷大学文学部教授若原雄昭 藤丸要 田畑正久 龍溪章雄 深川宣暢 那須英勝 武田晋 殿内恒 玉木興慈 森田敬史 貴島信行 葛野洋明 吾勝常行 高田文英 岩田真美 能美潤史 打本弘祐 井上善幸 井上見淳 猪瀬優理 嵩満也 黒川雅代子 内田准心 佐々木大悟萌芽的公募研究龍溪章雄 ( 共同研究研究代表者 ) 中西直樹 嵩満也 岩田真美大澤絢子 ( 個人研究研究代表者 ) 3) 国際研究部門 ( 国際的な発信と研究者交流 ) 嵩満也 ( 部門長 ) 龍谷大学国際学部教授那須英勝 久松英二 佐野東生 廣田デニス ( 研究フェロー ) 博士研究員菊川一道 ( 国際研究部門 ) 日髙悠登 ( 応用研究部門 ) リサーチ アシスタント坂知尋 ( 国際研究部門 ) 李曼寧 ( 基礎研究部門 ) 内手弘太 ( 応用研究部門 ) アジア仏教文化研究センター (BARC) 右表参照

2019 年度前期世界仏教文化研究センター主要活動報告 4 月 18 日 ( 木 ) 花岡尚樹氏 ( あそかビハーラ病院院長補佐 ビハーラ室長 ビハーラ僧 本願寺派布教使 ) による特別講義 緩和ケアにおけるビハーラ僧とは が開催された 花岡氏より ビハーラ僧の役割について あそかビハーラ病院での臨床経験に基づいた講義が行なわれた 患者を理解するためには 常に相手の目で見て 耳で聞いて 心で感じること 主語を相手におく ことが重要であるという あそかビハーラ病院のビハーラ僧は こうした姿勢を保ちながら 患者からの解放 をめざし 出来る限り 生活者 として 一人の人間としての尊厳を守ることを大事にしていることが説明された 緩和ケアにおけるビハーラ僧の役割は 常に相手と共に悩み そこから紡ぎだされる 問い によって お互いに人生を深めることである 講義では涙を流して聴く受講生もおり 講義後 花岡氏に感謝の気持ちや自分の思いを伝える受講生もいた 講師の花岡尚樹氏 5 月 22 日 ( 水 ) Johnathan Silk 氏 ( オランダ ライデン大学教授 ) による講演会 A Window into Sino-Tibetan Pure Land Practices at Dunhuang ( 敦煌における中国 チベット浄土教研究のために ) が開催された Silk 氏は 敦煌写本中に見られるチベット文字表記の実例を取り上げ テキストの内容把握と併せて言語学的 書誌学的分析を加えることで 中国浄土教的な信仰や実践がどのようにチベット語圏へ受容されたかについて議論した 講演で紹介された事例のいくつかを挙げると チベット語と漢文を対照講演者の Johnathan Silk 氏させる形で仏教経典名が記され翻訳の際に使用されたとみられるリストや中国浄土経典のチベット語訳 中国語発音で読誦するために書かれたのであろう 阿弥陀経 のチベット文字による転写などがあった また 寸法や筆跡などが異なるにもかかわらず 内容が継続していて 一つの経典書物を形作っていると考えられるチベット語写本群も示された この写本群について Silk 氏は 複数の写経者が各々の紙と筆を使用して制作した集団的写経実践の産物である可能性を指摘した このような考察を通して 8 ~ 10 世紀頃の敦煌において チベット語教育を受けた人々が 東側の仏教 すなわち中国仏教の影響を受けつつ 浄土的な信仰や実践を行っていたという一 面が浮き彫りとなった Silk 氏の文献調査によって 敦煌写本にはいわゆる浄土的な信仰の側面が反映されていることが解明された 5 月 28 日 ( 火 ) 米国仏教大学院 (IBS Institute of Buddhist Studies) と当センターの学術協定を記念して 講演会 Midcentury Transnational Japanese American Buddhism (20 世紀中庸の越境する日系アメリカ仏教 ) が開催された 講師を務めた IBS 教授の Scott A. Mitchell 氏は 浄土真宗本願寺派のバークレー仏教会 ( カリフォルニア州 ) が所蔵する仏教青年会の機関誌 Berkeley Bussei(1939-1956) を手がかりに 日系二世のアイデンティティや仏教の問題等について論じた Mitchell 氏によれば 米国生まれの日系二世たちは 戦前には人種差別や反日感情の煽りのなかで 戦後には 日本 と アメリカ そして 仏教 という三つの要素のなかで揺れ動きつつ アイ講演者の Scott A. Mitchell 氏デンティティを確立していったという 戦後 仏教青年会の日系二世たちは 自身を日本とアメリカの架け橋と捉え 日本仏教をアメリカに伝えることで 人生をより豊かにできると考えた その際 とくに重要な役割を担ったのが 日本へ留学した日系人であった 彼ら越境者たちが日本の歴史や文化 仏教に関する情報を Berkeley Bussei に定期的に提供し 読者は親の祖国 日本 と 受け継がれてきた 仏教 への理解と想像を深めた ただし 仏教 について彼らが抱いた関心は 信仰問題よりも むしろ仏教を紐帯としたコミュニティが提供する社会的側面に向けられていた 事実 Berkeley Bussei にはスポーツや芸能 パーティ情報の他 大学ゴシップ情報などが掲載されており こうした面に日系人の アメリカ 的側面を見出すことが出来る 従来 アメリカ仏教は西洋知識人の仏教理解などとの関連で論じられ また そうした研究の多くが 戦前 を中心に取り上げきた Mitchell 氏はそれらの先行研究を参照しつつも 知識層とは異なる 戦後の日系アメリカ仏教の諸相をローカルな領域から再検討することで アメリカにおける仏教近代化の新たな側面に着目した 学術協定の記念撮影

2019 年度前期世界仏教文化研究センター主要活動報告 6 月 5 日 ( 水 ) 特別公演とびだせビャクドー! ジッセンジャー! が開催された ジッセンジャーは実践真宗学研究科大学院生有志によって製作された劇である ジッセンジャーの公演は 世界の苦悩に向き合う仏教の智慧と慈悲 について考えさせるものであり 報道メディアなどでも 昨今注目されている 公演に先立ち 鍋島直樹教授からジッセンジャーの紹介とジッセンジャープロジェクト 6 代目代表となる大学院生の宗本さんから 活動目的について説明が行なわれた 登場するヒーローのビャクドーと悪役のジャカツは それぞれの立場から主人公の願いを叶えようと戦い合う 公演では 参加者に相互理解の難しさについて考えさせ 善悪とは何かをも問いかける また 登場人物の誰もが 阿弥陀さま に見守られているというものである 公演後は 大学院生の宇野さんから物語を振り返る法話が行なわれ 鍋島教授から質問を受けた受講生から ビャクドーとジャカツへの応援メッセージが贈られた ビャクドー ( 左 ) とジャカツ ( 右 ) 6 月 28 日 ( 金 ) 小島敬裕氏( 津田塾大学准教授 ) による研究セミナー 戦前 戦後における日本とミャンマーの仏教交流史 が開催された 講演では 1940 年代にミャンマーに渡った仏教研究者 上田天瑞や世界平和パゴダ建立に尽力した市原瑞麿を紹介しつつ 戦後日本とミャンマー各地に建立された戦没者パゴダ供養塔をめぐる問題などについての議論がなされた 上田天瑞は南方仏教研究のためタイへ渡航するも 直後に太平洋戦争が勃発 日本陸軍のミャンマーでの作戦に合流することになった 当時の上田の手記には 不殺生戒を理由に直接的な戦争協力を避けるミャンマー僧侶らの姿勢を批判する記述が目立つ しかし 戦後には一転して 戒律厳守を評価するようになった この変化について 小島氏は 上田の戦後の経験が影響していたと指摘する 上田は戦後 ミャンマーでの日本人戦没者の遺骨収集を通して戦争の悲惨な現実を目の当たりにした そして帰国後 自身が住職を務める寺に戦没者供養塔を建設し パゴダ納骨堂の建立も検討することとなる また 上田と共に遺骨収集に参加した市原瑞麿は ミャンマー連邦仏教会と交渉し 世界平和パゴダの建設を進めた この際 戦没者の遺骨を釈尊像と一緒にパゴダに祀る構想をめぐり ミャンマー側と諍いがあったものの 1958 年にミャンマー政府と日本人の寄進によって 戦没者出兵の地である福岡県北九州市門司区に世界平和パゴダが完成した 以降 日本人が同様のパゴダ型の戦没者供養塔を国内外に建立した 6 月 21 日 ( 金 ) から 23 日 ( 日 ) にかけて 大谷大学を会場に第 6 回 歎異抄 ワークショップが開催された 本ワークショップは 学術交流協定を結ぶ大谷大学真宗総合研究所と米国カリフォルニア大学バークレー校東アジア研究所 龍谷大学世界仏教文化研究センターの三研究機関が主催するもので 今回で 6 回目となる この度も円智 歎異抄私記 (1662 年 ) 寿国 歎異抄可笑記 (1740 年 ) 香月院深励 歎異抄講義 (1801-8 年 ) 妙音院了祥 歎異抄聞記 (1841 年 ) という四つのテキストごとに班にわかれ 各註釈書の精読と英訳作業が行われた また期間中には 親鸞仏教センターの東真行氏が Kaneko Daiei s Understanding of the Tannishō と題して 大谷大学の鶴留正智氏が Ryōshō s Methodology と題して英語で講演した アメリカ カナダ 韓国 中国 日本 ミャンマーなど 世界各国から研究者が参集し 活発な議論が交わされた なお次回のワークショップは 2020 年 3 月 アメリカ Berkley の浄土真宗センターを会場に行われる予定である 講演者の小島敬裕氏講演後半では パゴダ型供養塔に対するミャンマー人仏教徒の認識や 供養塔の存在意義の変遷 世話人たちの高齢化にともなう供養塔の維持困難な現状などが報告された 翻訳作業の様子