第 4 章 水 位 放 流 方 式 適 用 性 の 検 証 と 改 良 4.1 水 位 放 流 方 式 と VR 方 式 の 必 要 性 第 3 章 で 述 べた WRF による 降 雨 予 測 を 利 用 したダム 洪 水 調 節 手 法 は WRF による 降 雨 予 測 誤 差 のリスク 管 理 が 極 めて 重 要 であり 一 定 の 数 の 洪 水 を 対 象 とした 解 析 を 試 み たが 現 場 における 導 入 にあたっては 今 後 その 上 限 誤 差 下 限 誤 差 の 設 定 について 多 くのデータに 基 づいた 詳 細 な 検 討 を 行 う 必 要 がある さらには 洪 水 発 生 の 初 期 段 階 における 放 流 量 の 増 加 について 下 流 河 道 上 昇 速 度 制 限 ( 通 常 30 分 30cm 又 は 50cm を 採 用 )を 守 れない 課 題 や 超 過 洪 水 が 発 生 したにもかかわらず WRF による 降 雨 予 測 に おいて 予 測 できなかった 場 合 における 円 滑 な 操 作 手 法 の 開 発 など 解 決 すべき 課 題 が 残 されている これらの 課 題 の 解 決 手 法 として 今 村 の 提 案 した 水 位 放 流 方 式 1) や 裏 戸 の 提 案 した VR 方 式 2) が 有 力 と 考 えられるが 両 者 ともに 考 案 されてから それぞれ 12 17 年 が 経 過 しているものの 未 だ 現 場 のダムにおける 導 入 は ほとんど 行 われていない さらには 現 行 の 操 作 規 則 に 則 って 操 作 を 行 う 場 合 にあっても 迎 洪 水 位 が 低 い 状 況 で 洪 水 が 襲 来 した 場 合 のすり 付 け 操 作 や 超 過 洪 水 が 発 生 した 場 合 の 但 し 書 き 操 作 に 代 わる 円 滑 な 操 作 手 法 の 開 発 は 多 くのダム 管 理 技 術 者 において 切 実 な 問 題 として 待 たれ ているところである これらの 状 況 を 踏 まえ 第 4 章 では 水 位 放 流 方 式 の 適 用 について 第 5 章 では VR 方 式 の 適 用 について それぞれ 検 証 を 行 うとともに 課 題 を 明 らかにし 改 良 の 検 討 を 行 った 4.2 ダムによる 洪 水 調 節 の 現 状 と 問 題 点 4.2.1 すり 付 け 操 作 の 現 状 ゲートによる 洪 水 操 作 を 行 う 多 目 的 ダムにおいて 迎 洪 水 位 が 制 限 水 位 よりも 相 当 低 い 状 況 で 洪 水 が 発 生 した 場 合 には 貯 留 回 復 に 努 めつつ 放 流 量 を 流 入 量 に 漸 近 させる すり 付 け 操 作 を 行 う 必 要 がある 3) が ダム 操 作 規 則 には 具 体 的 な 操 作 方 法 について 規 定 されておらず 放 流 の 開 始 時 期 については ダム 管 理 者 の 判 断 に 委 ねられてきた 現 実 には 一 部 のダムにおいて 降 雨 予 測 に 基 づく 流 出 予 測 とダム 地 点 の 流 入 量 予 測 を 行 い 4) 放 流 開 始 時 期 を 決 定 しているが 大 部 分 のダム 管 理 者 は 過 去 の 経 験 や 勘 に 基 づ き 放 流 開 始 時 期 を 決 定 しているのが 現 状 である この 問 題 は 適 切 な 洪 水 操 作 と 利 水 容 量 の 回 復 の 両 方 にまたがる 問 題 でもあり とりわけ 発 電 容 量 については 無 効 放 流 が 発 生 した 場 合 に 減 電 が 確 実 であることから 一 般 的 には 利 水 安 全 度 を 確 保 すべく ぎり ぎりまで 利 水 容 量 の 回 復 を 優 先 した 操 作 が 実 施 されてきた このため 大 規 模 かつシャ 105
ープな 洪 水 が 襲 来 した 場 合 にあっては すり 付 け 操 作 が 追 いつかず ダムの 水 位 が 制 限 水 位 以 上 に 達 しても 操 作 規 則 で 定 められた 所 要 の 放 流 量 を 放 流 できない すなわち 治 水 容 量 内 に 余 分 な 流 量 を 貯 留 してしまうケースが 散 見 された 本 章 では すり 付 け 操 作 を 円 滑 かつ 確 実 に 実 施 する 上 で 有 力 な 手 法 である 今 村 が 提 案 した 水 位 放 流 方 式 の 現 場 への 適 用 性 を 検 証 した すなわち 国 土 交 通 省 管 轄 ダム 等 において 水 位 が 低 い 状 況 で 大 規 模 な 洪 水 が 襲 来 した 過 去 の 事 例 を 基 に 水 位 放 流 方 式 を 適 用 した 場 合 のシミュレーションを 行 い 過 貯 留 下 流 河 川 水 位 上 昇 速 度 超 過 等 の 発 生 状 況 について 調 査 した さらに 明 らかになった 問 題 点 を 解 決 すべく 水 位 放 流 方 式 の 改 良 策 を 提 案 した 4.2.2 洪 水 調 節 方 式 と 操 作 規 則 第 2 章 で 述 べたように ダムによる 洪 水 調 節 は 下 流 河 川 の 被 害 を 防 止 し 又 は 軽 減 す ることを 目 的 としているため 洪 水 を 適 切 に 制 御 する 必 要 がある このため 安 定 して 確 実 に 効 果 を 発 揮 することが 必 要 であり ヒューマンエラーを 防 止 する 観 点 からも 適 切 な 操 作 規 則 の 制 定 と 操 作 員 による 確 実 な 操 作 が 求 められる その 前 提 条 件 として 人 為 操 作 により 住 民 の 生 命 財 産 が 危 険 にさらされることは 避 けるべきであり 洪 水 調 節 は 慎 重 かつ 安 全 に 行 う 必 要 がある さらには ダム 本 体 や 関 連 構 造 物 の 安 全 性 を 確 保 し なければならないことも 重 要 であり 確 実 性 安 全 性 即 応 性 の 原 則 を 遵 守 することが 求 められる 具 体 的 な 洪 水 調 節 の 操 作 手 法 は 特 定 多 目 的 ダムにあっては 特 定 多 目 的 ダム 法 第 31 条 水 資 源 機 構 ダムにあっては 水 資 源 機 構 法 第 23 条 治 水 ダムや 河 川 法 に 基 づく 兼 用 工 作 物 としての 多 目 的 ダムにあっては 河 川 法 第 14 条 に 基 づく 操 作 規 則 において 定 められている しかしながら 制 限 水 位 以 下 に 迎 洪 水 位 がある 場 合 は ダムからの 放 流 量 について 具 体 的 に 規 定 されていなく ダム 管 理 者 の 判 断 に 委 ねられている このため 多 くのダム 管 理 者 は 過 去 の 洪 水 における 経 験 や 勘 を 基 に ダム 操 作 細 則 において 定 められた 下 流 河 川 の 水 位 上 昇 速 度 を 勘 案 しつつ 放 流 量 を 決 定 しているのが 実 情 である ここに 下 流 河 川 の 水 位 上 昇 速 度 を 考 慮 した 放 流 については 早 明 浦 ダムを 例 にとれ ば 次 のように 実 施 されている 一 放 流 を 開 始 してから 1 時 間 を 経 過 するまでは ゲート 操 作 の 時 間 間 隔 を 10 分 と し かつ 下 流 吉 田 橋 地 点 における 水 位 の 上 昇 が 30 分 に 50 センチメートルを 超 えないように 行 う 二 前 号 の 期 間 を 経 過 した 後 は ゲート 操 作 の 時 間 間 隔 を 10 分 15 分 又 は 20 分 とし かつ 下 流 吉 田 橋 地 点 における 水 位 の 上 昇 が 30 分 に 1 メートルを 超 えな いように 行 う 以 上 の 放 流 の 原 則 を 基 に 時 間 と 放 流 量 の 関 係 は 図 -4.2.1のとおり 定 められている 106
このように 操 作 規 則 や 操 作 細 則 において 下 流 河 川 水 位 上 昇 速 度 やゲート 開 度 に 基 本 的 に 制 限 を 課 されていることも 相 まって 放 流 開 始 の 初 動 対 応 が 遅 れた 場 合 には 洪 水 時 には 図 -4.2.2に 示 すような 過 貯 留 が 発 生 する 場 合 がある ここに 過 貯 留 とは ダムの 水 位 が 制 限 水 位 以 上 に 到 達 した 際 に 所 定 のダム 放 流 量 を 放 流 することができ ず 治 水 容 量 内 に 余 分 な 流 水 ( 図 の2~4の 部 分 )を 貯 留 してしまうことを 指 し 治 水 計 画 を 策 定 する 上 で 必 要 な 治 水 容 量 として 計 上 されていないものである 現 実 には 治 水 計 画 上 必 要 な 容 量 に 計 上 されていながら 利 水 容 量 内 に 貯 留 されている5の 部 分 に より 過 貯 留 量 は 軽 減 されるが 安 全 のため ここでは 5の 効 果 は 考 慮 しないものとす る 特 に 治 水 計 画 を 上 回 るような 洪 水 が 発 生 した 場 合 においては 但 し 書 き 操 作 に 入 り 計 画 最 大 放 流 量 を 上 回 る 放 流 量 が 発 生 するが 本 来 の 洪 水 調 節 前 に 過 貯 留 によって 治 水 容 量 の 一 部 を 消 費 してしまっていた 場 合 には ダム 下 流 への 最 大 放 流 量 を 増 大 させ 下 流 で 発 生 する 被 害 を 助 長 することとなる 特 に 計 画 放 流 量 の 大 きなダムにおいては 放 流 量 が 計 画 放 流 量 に 達 するまでに 時 間 を 要 するため 結 果 的 に 規 定 どおりの 放 流 を 行 え ないままダムが 満 水 となる 事 態 も 生 ずる 可 能 性 もある このように 過 貯 留 の 容 量 が 大 きくなるような 場 合 は 貯 留 の 方 法 が 適 切 でなく 放 流 開 始 が 遅 れていることとなり 治 水 上 の 観 点 から 非 常 に 大 きな 危 険 を 伴 うことになる 5) 以 上 に 示 した 危 険 性 を 少 しで も 避 けるために 通 常 の 管 理 水 位 を 制 限 水 位 よりも 下 に 設 定 しているダムも 見 られ 例 えば 大 雪 ダムにあっては 0.5 メートルを 設 定 している なお 図 の5の 部 分 は 計 画 上 治 水 容 量 として 必 要 な 部 分 として 計 算 されているが 実 際 の 操 作 においては 迎 洪 水 位 が 低 いことから 利 水 容 量 内 に 貯 留 され 治 水 計 画 上 は 余 裕 の 部 分 となる 図 -4.2.1 累 積 時 間 と 放 流 量 の 関 係 107
11) 図 -4.2.2 水 位 放 流 方 式 による 擦 り 付 け 操 作 の 模 式 図 4.3 水 位 放 流 方 式 の 考 え 方 水 位 放 流 方 式 は 今 村 により 提 案 されたダム 放 流 方 式 であり 貯 水 池 情 報 を 基 に 放 流 開 始 時 期 および 放 流 量 を 決 定 するダム 操 作 方 法 である 1) 放 流 の 開 始 時 期 は ダムの 空 き 容 量 下 流 河 川 の 水 位 上 昇 速 度 から 求 められる 限 界 流 入 量 を 指 標 とし 限 界 流 入 量 が 流 入 量 と 等 しくなった 時 点 で 放 流 を 開 始 することとされている これにより 放 流 開 始 時 点 を 一 意 的 に 決 定 する 6) 7) 8) 9) とともに 治 水 容 量 内 への 過 貯 留 を 相 当 程 度 小 さくできる( 図 -4.2.2の2の 部 分 のみ)ものと 期 待 される 水 位 放 流 方 式 において 一 般 的 に 使 用 されている 具 体 的 な 手 法 は 次 のとおりである すなわち 放 流 量 は 空 容 量 比 率 の 2 乗 に 比 例 した 放 流 量 となるよう 設 定 した 放 流 関 数 により 水 位 に 対 して 一 意 的 に 決 定 する そして 貯 水 位 が 制 限 水 位 時 に 達 した 際 に 放 流 量 が 洪 水 調 節 開 始 流 量 となるよう 放 流 関 数 を 設 定 する その 模 式 図 を 図 -4.3.1に 示 す 以 下 に 維 持 流 量 や 発 電 などの 放 流 量 がない 場 合 の 限 界 流 入 量 放 流 関 数 の 求 め 方 を 示 す 108
11) 図 -4.3.1 水 位 放 流 方 式 の 模 式 図 放 流 関 数 を(4.3.1) 式 に 示 す V(t)の 2 次 式 下 流 河 道 の 水 位 と 流 量 の 関 係 を (4.3.2) 式 により 規 定 する 治 水 容 量 内 の 貯 留 量 V(t)は 放 流 量 と 流 入 量 の 差 で (4.3.3) 式 のように 表 される (4. 3. 1) (4. 3. 2) (4. 3. 3) 以 上 3 つの 式 により 下 流 の 水 位 上 昇 速 度 は 次 の 式 により 示 される 109
(4. 3. 4) (4.3.1) 式 において 貯 水 位 が 制 限 水 位 時 に 放 流 量 が 洪 水 調 節 開 始 流 量 となるよう 定 数 A を 決 定 し 次 のように 表 される (4. 3. 5) これを(4.3.4) 式 に 代 入 し 下 流 河 道 の 水 位 上 昇 速 度 dh(t)/dt について 解 くと 次 式 のように 示 される (4. 3. 6) dh(t)/dt が 下 流 河 道 における 水 位 上 昇 速 度 の 制 限 Hc よりも 小 さくなる 必 要 があること からその 限 界 流 入 量 Qic は 次 式 で 示 される (4. 3. 7) 具 体 的 な 放 流 操 作 の 手 順 は 以 下 のとおりである (1) H c K を 定 める (2) V w (t)から Q ic (t)を 計 算 する (3) Q i (t)<q ic (t)の 場 合 には (4.3.2) 式 の 計 算 を 繰 り 返 す (4) Q i (t)=q ic (t)となった 段 階 で V w (t)=v w を 確 定 し (4.3.5) 式 の 放 流 関 数 を 決 定 する (5) 上 記 (4)で 決 定 した 放 流 関 数 に 基 づいて 貯 留 量 V(t)に 対 応 する 放 流 量 Q 0 を 放 流 し これを 貯 水 位 が 制 限 水 位 付 近 に 達 するまで 継 続 する 4.4 実 績 洪 水 による 水 位 放 流 方 式 適 用 の 検 証 今 村 は 水 位 放 流 方 式 の 洪 水 への 適 用 性 の 検 証 として 三 角 ハイドロの 様 々な 波 形 の 洪 水 を 定 義 して 解 析 し その 有 効 性 を 示 している しかしながら その 後 現 在 において もダム 管 理 の 現 場 における 導 入 状 況 は 県 管 理 の 一 部 のダムにおいて 活 用 するに 留 まっ ているのが 実 情 であり その 理 由 の 一 つとして 過 去 に 発 生 した 実 際 の 洪 水 ダム 貯 水 位 を 想 定 したシミュレーションが 十 分 には 実 施 されておらず 操 作 実 績 と 比 べた 優 位 性 問 題 点 が 明 らかにされていないことが 挙 げられる また 大 谷 ら 10) は 過 去 に 発 110
生 した 洪 水 について 最 低 水 位 を 条 件 として 設 定 した 水 位 放 流 方 式 によるシミュレーシ ョンを 行 い その 有 効 性 を 確 認 しているが 実 際 に 発 生 した 迎 洪 水 位 とは 異 なる 条 件 の シミュレーションとなっており 同 様 の 問 題 点 を 有 している 本 研 究 では 迎 洪 水 位 が 低 い 状 況 で 比 較 的 大 きな 洪 水 が 発 生 したダムを 対 象 として 水 位 放 流 方 式 によるダム 操 作 のシミュレーションを 現 場 の 水 位 流 量 をそのまま 使 用 し て 実 施 し 実 際 に 洪 水 時 に 行 われた 操 作 との 比 較 を 行 ってその 有 効 性 を 確 認 した 11) 検 討 対 象 ダムの 選 定 にあたっては 次 の 観 点 を 考 慮 して 12 ダムを 選 定 し 19 洪 水 に ついてシミュレーションを 実 施 した 国 土 交 通 省 ( 独 ) 水 資 源 機 構 都 道 府 県 土 木 部 が 管 理 する 多 目 的 ダム( 治 水 容 量 と 利 水 容 量 を 有 するダム) ゲート 操 作 により 洪 水 調 節 を 実 施 しているダム 迎 洪 水 位 が 低 い 状 態 で 比 較 的 大 きな 洪 水 が 発 生 したダム 洪 水 調 節 に 当 たり 治 水 容 量 内 に 過 貯 留 が 発 生 したダム 選 定 した 各 ダムの 諸 元 を 表 -4.4.1に 示 す シミュレーション 結 果 は 表 -4.4.2に 示 すとおりである 11) 図 -4.4.1に 四 十 四 田 ダムにおけるすり 付 け 操 作 のハイドログラ フを 示 す この 洪 水 における 実 績 操 作 では すり 付 け 操 作 が 遅 れたため 規 定 の 放 流 量 に 達 する 前 に 洪 水 ピークを 迎 える 結 果 となった また 過 貯 留 量 は 比 較 的 大 きな 貯 水 量 に 達 しており 仮 に 襲 来 した 洪 水 がもう 少 し 大 きければ 但 し 書 き 操 作 に 移 行 した 可 能 性 がある 但 し 水 位 放 流 方 式 の 活 用 により これらの 問 題 は 解 決 されている 表 -4.4.1 水 位 放 流 方 式 シミュレーション 選 定 ダム 11) 111
112
11) 図 -4.4.1 四 十 四 田 ダム H16 年 9 月 洪 水 シミュレーション 結 果 図 -4.4.2は 市 房 ダムにおけるハイドログラフであるが すり 付 け 操 作 が 遅 れた 結 果 但 し 書 き 水 位 を 上 回 り 計 画 最 大 放 流 量 を 約 200m 3 /s 上 回 る 放 流 を 行 っている 水 位 放 流 方 式 の 採 用 により 但 し 書 き 操 作 は 回 避 できないものの 最 大 放 流 量 を 約 120m 3 /s 低 減 することができる シミュレーションを 実 施 した 12 ダム 全 般 については 次 のとおりである すなわち 4.2.2で 述 べた 治 水 計 画 上 下 流 に 悪 影 響 をもたらす 治 水 容 量 内 の 過 貯 留 は 表 -4.4.2に 示 す 実 績 の 操 作 においては 表 -4.4.2に 示 すように 国 土 交 通 省 管 理 1 ダム 水 機 構 管 理 ダム 県 管 理 4 ダムにおいて 治 水 容 量 の 20~50%を 占 める 結 果 となった 113
これに 対 して 表 -4.4.2に 示 すように 水 位 放 流 方 式 を 導 入 することにより 過 貯 留 は 大 幅 に 縮 小 され 最 大 でも 治 水 容 量 の 5% 程 度 に 抑 えることが 可 能 となる なお 早 明 浦 ダムの 場 合 は 利 水 容 量 が 極 めて 大 きく また コンジットゲートがなく 低 い 貯 水 位 での 放 流 能 力 が 不 足 するために 円 滑 なすり 付 け 操 作 が 困 難 であり 過 貯 留 が 発 生 する 特 殊 な 条 件 である 11) 図 -4.4.2 市 房 ダム S57 年 7 月 洪 水 シミュレーション 結 果 また 貯 水 位 が 制 限 水 位 に 達 した 時 点 で 放 流 量 は 洪 水 調 節 開 始 流 量 となる 必 要 がある が 実 績 の 操 作 では 1~3 時 間 程 度 最 大 で 11 時 間 遅 れている 水 位 放 流 方 式 の 採 用 に より この 遅 れ 時 間 についても 皆 無 とすることができる すり 付 け 操 作 を 開 始 した 時 刻 については 直 轄 ダムについては 実 績 操 作 の 方 が 水 位 放 流 方 式 よりも 早 いダムが 多 い これはダム 管 理 所 職 員 が 慎 重 を 期 して 早 めの 操 作 に 入 っていること 流 域 面 積 が 比 較 的 大 きく 洪 水 末 期 の 貯 留 により 利 水 容 量 を 貯 水 することが 容 易 であるため 洪 水 初 期 に 114
利 水 容 量 への 貯 留 操 作 を 行 う 必 要 性 が 小 さいことが 経 験 的 に 知 られていることによる と 推 察 される 水 資 源 機 構 ダムについては 両 者 概 ね 同 じであり 県 管 理 のダムについ ては まちまちである 四 十 四 田 ダム 市 房 ダム S55.6 洪 水 S57.7 洪 水 など 実 績 操 作 の 方 が 遅 いケースも 見 られ これらのケースにおいては 治 水 容 量 の 20%を 超 える 過 貯 留 が 発 生 しており 水 位 放 流 方 式 の 採 用 により これらを 大 幅 に 改 善 することが 可 能 である 一 方 下 流 の 水 位 上 昇 速 度 については 河 道 の 条 件 や 利 用 状 況 などにより 原 則 として 30cm/30min または 50cm/30min 以 内 に 抑 えることと 規 定 されているが 県 管 理 3 ダム 全 てを 含 む 14 ケースにおいて 原 則 を 遵 守 できず また 土 師 ダム 弥 栄 ダムなど 12 ケース において 放 流 実 績 よりも 水 位 上 昇 速 度 が 大 きくなることが 認 められる これは 水 位 放 流 方 式 の 構 造 上 ダム 流 入 量 が 限 界 流 量 に 達 した 以 降 は (4.3.5) 式 の 放 流 関 数 すなわち 空 き 容 量 と 洪 水 調 節 開 始 流 量 のみによって 放 流 量 を 決 定 してお り 流 入 量 を 考 慮 していないことによる 特 にシャープな 洪 水 等 大 きな 流 量 がダム 貯 水 池 に 流 入 したケースでは 大 量 の 流 水 の 流 入 により 貯 留 量 V(t)が 短 時 間 に 急 激 に 大 きく なり これに 対 応 して 大 量 の 流 水 の 放 流 を 実 施 することとなるため 下 流 水 位 上 昇 速 度 が 大 きく 規 定 値 を 上 回 るものと 考 えられる ダム 操 作 細 則 においては 下 流 水 位 上 昇 速 度 が 規 定 値 を 上 回 る 場 合 所 長 は 次 の 各 号 の 一 に 該 当 する 場 合 においては 規 則 第 条 の 規 定 により 関 係 機 関 に 通 知 するとともに 一 般 への 周 知 を 行 うものとする と 定 められており サイレン 等 警 報 による 周 知 やパトロールを 入 念 に 実 施 することにより このような 放 流 を 実 施 す ることは 可 能 である 図 -4.4.3に 下 流 水 位 上 昇 速 度 の 最 大 値 とすり 付 け 期 間 中 の 10 分 間 ダム 最 大 流 入 量 / 最 大 流 入 時 点 の 空 き 容 量 V w (t) の 関 係 を 示 す さらに 図 -4.4.4に 水 位 上 昇 速 度 の 平 均 値 と 10 分 間 ダム 最 大 流 入 量 / 空 き 容 量 V w (t)の 関 係 を 示 す 空 き 容 量 に 対 するピーク 流 量 の 比 が 大 きいほど Δ t の 間 の 流 入 量 が 大 きいことから V w (t)に 基 づいて 算 出 した 放 流 量 が 過 小 となり これに 伴 って 空 き 容 量 が 小 さくなって 放 流 量 Q o (t+δ t)と 下 流 水 位 上 昇 速 度 が 大 きくなるものと 考 えられる 図 -4.4.5に 下 流 河 道 水 位 上 昇 速 度 の 最 大 値 とすり 付 け 期 間 中 の 流 入 量 増 大 比 率 最 大 値 の 比 較 を 図 -4.4.6に 下 流 河 道 水 位 上 昇 速 度 の 平 均 値 とすり 付 け 期 間 中 の 流 入 量 増 大 比 率 最 大 値 の 比 較 をそれぞれ 示 す これらのことから 急 激 な 流 入 量 の 増 大 に 対 し て 水 位 放 流 方 式 が 十 分 な 対 応 ができず 下 流 河 道 水 位 上 昇 速 度 の 規 定 を 守 れないこと がわかる 115
11) 図 -4.4.3 10 分 間 ダム 流 入 量 最 大 値 /V w (t)~ 水 位 上 昇 速 度 最 大 値 11) 図 -4.4.4 10 分 間 ダム 流 入 量 最 大 値 /V w ~ 水 位 上 昇 速 度 平 均 値 11) 図 -4.4.5 流 入 量 増 大 比 率 最 大 値 ~ 水 位 上 昇 速 度 最 大 値 116
11) 図 -4.4.6 流 入 量 増 大 比 率 最 大 値 ~ 水 位 上 昇 速 度 平 均 値 4.5 水 位 放 流 方 式 の 評 価 と 改 良 4.5.1 水 位 放 流 方 式 の 評 価 前 節 では 水 位 放 流 方 式 のメリット デメリットについて 述 べた 現 場 における 活 用 を 考 えた 場 合 少 なくともすり 付 け 操 作 を 開 始 する 時 刻 の 判 断 に 限 界 流 入 量 を 活 用 する ことは その 後 の 放 流 を 従 来 どおりの 手 法 に 基 づいて 行 う 限 り 全 く 問 題 は 発 生 しない 四 十 四 田 ダムや 市 房 ダムのように 限 界 流 入 量 発 生 から 約 3 時 間 遅 れて 実 際 の 操 作 に 入 った 経 験 のあるダムなどを 中 心 に その 活 用 価 値 は 大 きく ダム 管 理 に 携 わる 技 術 者 を 支 援 する 意 義 は 大 きいものと 思 われる すり 付 け 操 作 開 始 以 降 の 放 流 量 を 水 位 放 流 方 式 により 実 施 する 場 合 は 過 貯 留 の 発 生 が 削 減 される 一 方 で 下 流 河 道 水 位 上 昇 速 度 が 増 大 する 可 能 性 があるというトレードオ フ 関 係 にある 2 種 類 のリスクを 管 理 することとなる リスクアセスメント 12) の 考 え 方 は 図 -4.5.1に 示 すとおりであり 発 生 確 率 が 小 さくともその 被 害 が 大 きなリスクは リスク 低 減 させるべきとされ 発 生 確 率 が 大 きいがその 被 害 が 小 さなリスクはリスク 保 有 (リスクにより 被 害 が 発 生 することを 許 容 範 囲 内 として 受 容 すること)が 適 切 と 考 え られている 過 貯 留 は 計 画 を 超 える 大 洪 水 が 発 生 した 場 合 下 流 での 氾 濫 を 増 大 させ 莫 大 な 被 害 を 発 生 させる 可 能 性 があることから リスク 低 減 が 適 切 であり 一 方 の 下 流 河 道 上 昇 速 度 の 増 大 は サイレン 等 による 警 報 パトロールを 適 切 に 実 施 することによ り 河 川 利 用 者 に 対 する 大 きな 被 害 を 回 避 することは 可 能 と 考 えられ リスク 保 有 もひ とつの 選 択 肢 と 思 われる しかしながら ダム 放 流 は 天 然 現 象 である 洪 水 を 人 工 的 に 制 御 することから 水 位 放 流 方 式 による 副 作 用 とも 言 える 水 位 上 昇 速 度 の 増 大 は 極 力 小 さくすることが 望 まし い そこで 本 研 究 では 水 位 上 昇 速 度 増 大 の 改 善 を 目 指 して 次 のように 水 位 放 流 方 式 の 改 良 を 試 みた 11) 117
12) 図 -4.5.1 リスクアセスメントの 考 え 方 4.5.2 水 位 放 流 方 式 の 改 良 (1) 限 界 流 入 量 等 の 縮 小 すり 付 け 操 作 を 早 期 に 開 始 することにより 貯 留 量 に 余 裕 ができ 水 位 上 昇 速 度 の 抑 制 に 繋 がると 考 えられることから 次 の 2 とおりの 改 良 案 を 考 えた 1) 水 位 上 昇 速 度 の 規 定 値 H c を 規 定 よりも 小 さく 設 定 する 案 2) 限 界 流 入 量 Q ic を 算 出 された 値 よりも 小 さく 設 定 する 案 以 上 の 2 案 について 改 良 の 効 果 を 検 証 する 対 象 として 前 節 に 示 したシミュレーショ ンのうち 水 位 上 昇 速 度 の 規 定 値 を 守 れなく 速 度 が 比 較 的 大 きな 6 ダム 7 洪 水 を 選 定 した また 規 定 値 よりも 小 さな 値 として 1/2 1/3 に 相 当 する 値 をそれぞれ 検 討 した 結 果 は 表 -4.5.1に 示 すとおりである 図 -4.5.2に 市 房 ダムにおけるハイドログラ フを 示 す 規 定 値 を 縮 小 しても 水 位 上 昇 速 度 低 下 の 感 度 は 悪 いが 10~50% 程 度 の 低 減 が 確 認 できた (2) 放 流 関 数 の 改 良 今 村 の 提 案 した 水 位 放 流 方 式 においては (4.3.5) 式 に 示 した 放 流 関 数 により 放 流 量 が 決 定 されている すなわち 限 界 流 入 量 に 達 した 時 点 の 空 き 容 量 に 対 する 各 時 点 の 空 き 容 量 比 の 2 乗 により 放 流 量 を 規 定 している 実 績 の 流 入 波 形 によっては この 放 流 関 数 の 適 合 性 が 悪 く 下 流 河 川 水 位 上 昇 速 度 を 規 定 値 よりも 大 きくする 現 象 に 係 わっ ている 可 能 性 がある このため 本 研 究 では 改 良 案 としてこのべき 乗 を 1 から 3 まで 0.5 刻 みで 放 流 関 数 を 設 定 し 早 明 浦 ダムの 4 洪 水 について 下 流 河 川 水 位 上 昇 速 度 と 治 水 容 量 内 過 貯 留 量 がどのような 挙 動 を 示 すか 感 度 分 析 を 行 った 11) 118
11) 表 -4.5.1 水 位 上 昇 速 度 規 定 値 限 界 流 入 量 の 縮 小 の 効 果 図 -4.5.2 すり 付 け 操 作 改 良 の 結 果 ( 市 房 ダム S57 年 7 月 12 日 洪 水 ) 11) 119
結 果 は 図 -4.5.3 図 -4.5.4に 示 すとおりである 早 明 浦 ダムにあっては べき 数 を 1.5 から 3 に 増 加 させるに 従 って 下 流 の 河 川 水 位 上 昇 速 度 ( 最 大 値 )は 大 きくなる が 河 川 水 位 上 昇 速 度 ( 平 均 値 )については 大 きな 差 はない 図 -4.5.3 放 流 関 数 と 過 貯 留 量 水 位 上 昇 速 度 ( 最 大 値 ) 11) 図 -4.5.4 放 流 関 数 と 過 貯 留 量 水 位 上 昇 速 度 ( 平 均 値 ) 11) 120
すなわち 放 流 関 数 のべき 乗 を 1.5 乗 に 設 定 した 場 合 が 最 も 下 流 河 川 水 位 上 昇 速 度 ( 最 大 値 )を 抑 えることができた 4 洪 水 ともにべき 乗 を 1 から 3 に 増 加 するに 従 って 治 水 容 量 内 への 過 貯 留 は 減 少 していき 特 に 2.5 までは 過 貯 留 量 が 低 下 する 感 度 が 良 い よって 早 明 浦 ダムにあっては 放 流 関 数 のべき 乗 として 2.5 を 採 用 する 方 が 河 川 管 理 上 より 適 切 と 思 われる 但 し 放 流 関 数 の 形 は ダムの 流 入 特 性 によって 変 わるもの と 考 えられ 管 理 への 導 入 にあたっては ダム 毎 に 多 くの 洪 水 データを 試 算 して 決 定 す るとともに 水 位 放 流 方 式 を 採 用 することについて 操 作 規 則 に 反 映 する 必 要 がある (3) 操 作 規 則 と 水 位 放 流 方 式 を 組 み 合 わせた 操 作 手 法 4.5.1で 述 べたように 水 位 放 流 方 式 は 過 貯 留 量 の 減 少 という 大 きなメリットが あるものの 下 流 河 道 上 昇 速 度 の 増 大 というデメリットが 発 生 し 本 項 (1) (2)の 改 良 により デメリットを 縮 小 させることができたものの 依 然 として 小 さな 問 題 点 として は 残 されたところである このため 本 研 究 では この 問 題 点 の 完 全 な 解 決 を 図 るため やや 操 作 は 煩 雑 になるも のの 新 たな 操 作 手 法 を 考 案 した 11) 3.4.2に 述 べたように 河 道 において 河 川 利 用 者 が 歩 行 可 能 な 水 深 は 70cm までと 考 えられる よって これを 切 り 上 げて 1m として 河 川 利 用 者 が 河 川 区 域 内 に 存 在 する 可 能 性 のある 水 深 と 見 なした 下 流 河 道 水 位 が 1m に 達 するまでは 下 流 河 道 上 昇 速 度 制 限 ( 通 常 30 分 30cm 又 は 50cm)を 遵 守 し た 放 流 量 とし 1m 以 上 の 水 深 にあっては 水 位 放 流 方 式 の 放 流 関 数 に 従 った 放 流 とす る すり 付 け 操 作 開 始 時 刻 は 当 然 ながら 流 入 量 が 限 界 流 入 量 に 達 した 時 刻 となる 渡 川 ダムにおいて 実 施 したシミュレーションの 結 果 は 図 -4.5.5に 示 すとおりであ り 下 流 河 道 の 水 深 が 1m 以 下 の 状 況 にあっては 本 方 式 の 採 用 により 水 位 上 昇 速 度 が 最 大 で 23.6cm/30 分 と 守 ることができ 過 貯 留 量 も 514 千 m 3 と 一 般 の 水 位 放 流 方 式 によった 場 合 の 650 千 m 3 よりも 縮 小 できた 水 深 が 1m 以 上 に 上 がってからの 河 道 水 位 上 昇 速 度 については 最 大 で 103cm/30 分 と 通 常 の 水 位 放 流 方 式 や 実 績 操 作 と 比 べて 大 きくなるが 河 川 内 に 河 川 利 用 者 が 存 在 する 可 能 性 は 無 いことから 問 題 ないものと 判 断 できる 本 方 式 の 導 入 により すり 付 け 操 作 について 過 貯 留 量 の 減 少 と 水 位 上 昇 速 度 の 遵 守 という 2 つの 課 題 について 同 時 に 守 りながら 円 滑 に 操 作 を 実 施 すること が 可 能 となる この 他 前 節 で 述 べたように ダムによってはコンジットゲートがない あるいはあ っても 低 い 貯 水 位 での 放 流 能 力 が 不 足 するなど 水 位 放 流 方 式 を 採 用 したとしても 円 滑 なすり 付 け 操 作 がハード 的 に 対 応 できない 場 合 も 想 定 され 今 後 の 気 候 変 動 による 洪 水 波 形 の 増 大 に 対 する 既 存 施 設 の 機 能 強 化 の 観 点 からも 十 分 な 検 討 に 基 づく 早 期 の 改 造 が 望 まれるところである また 本 研 究 においては 大 規 模 な 洪 水 についてシミュレーションを 実 施 したが 中 小 洪 水 に 終 わった 場 合 は 水 位 放 流 方 式 の 適 用 による 早 期 のすり 付 けにより 利 水 容 量 すらも 充 足 できない 恐 れも 完 全 には 否 定 できないため これらの 分 析 も 必 要 である 121
図 -4.5.5 渡 川 ダム H16 年 10 月 洪 水 4.6 まとめ 本 章 では 迎 洪 水 位 が 制 限 水 位 よりも 低 い 状 態 で 大 きな 洪 水 を 迎 えた 場 合 の 適 切 なす り 付 け 操 作 の 実 施 について 実 際 に 発 生 した 洪 水 によりその 有 効 性 を 検 証 するとともに 問 題 点 を 明 らかにし 併 せてその 改 良 策 の 検 討 を 行 った 得 られた 結 論 は 以 下 のとおり である (1) 水 位 放 流 方 式 の 限 界 流 入 量 により すり 付 け 操 作 開 始 時 期 を 判 断 することは その 後 の 放 流 量 が 適 切 に 設 定 される 限 り 有 効 であり ダム 管 理 者 の 判 断 を 支 援 する ア ラーム としての 活 用 が 期 待 される 但 し 国 土 交 通 省 管 理 の 多 くのダムにおいて 実 施 されているより 早 期 のすり 付 け 操 作 を 妨 げるものではない (2) 今 村 が 提 案 した(4.3.5) 式 の 放 流 関 数 を 活 用 した 放 流 を 実 施 することにより 実 績 操 作 においてしばしば 起 こっている 治 水 容 量 内 の 過 貯 留 について 大 幅 に 低 減 することが 可 能 であり 超 過 洪 水 が 発 生 した 場 合 などに 必 要 以 上 の 最 大 放 流 量 を 122
発 生 させない 点 で 有 効 である (3) 下 流 河 道 における 水 位 上 昇 速 度 については 既 定 値 を 守 れない 場 合 や 実 績 の 操 作 よ りも 悪 化 させる 場 合 が 見 られるが 丁 寧 な 警 報 やパトロールの 実 施 によりリスクは 小 さくできるものと 考 えられる (4) 水 位 上 昇 速 度 の 制 限 値 や 限 界 流 入 量 を 既 定 値 よりも 小 さく 設 定 することにより 下 流 水 位 上 昇 速 度 をより 小 さく 抑 えることが 可 能 である また 操 作 はやや 煩 雑 にな るが 下 流 河 道 水 深 1m までは 河 道 水 位 上 昇 速 度 を 守 る 放 流 とし 水 深 1m 以 上 にあっては 水 位 放 流 方 式 の 放 流 関 数 に 基 づいた 放 流 とすることにより 過 貯 留 量 の 減 少 と 河 道 水 位 上 昇 速 度 の 遵 守 という 二 つの 課 題 を 達 成 することが 可 能 となる (5) 放 流 関 数 の 設 定 にあたっては 必 ずしもべき 乗 2 とする 必 然 性 はなく ダム 毎 に 多 くの 洪 水 データにより 適 合 性 を 確 認 することが 望 ましい (6) 低 標 高 部 における 放 流 施 設 能 力 が 不 足 しているダムにあっては 本 方 式 を 適 用 して も 物 理 的 にすり 付 け 操 作 が 不 可 能 であり 遅 れ 操 作 となって 過 貯 留 量 が 発 生 する ことが 不 可 避 である このようなダムにあっては コンジットゲートの 新 設 等 の 改 造 を 行 うことにより 遅 れ 操 作 を 回 避 することが 望 まれる (7) 本 研 究 では 大 規 模 な 洪 水 が 流 入 した 場 合 の 適 用 性 について 検 討 を 行 ったが 中 小 洪 水 が 流 入 した 場 合 においては すり 付 け 操 作 を 行 うことにより 利 水 容 量 が 回 復 できない 状 況 が 発 生 することも 想 定 される 今 後 は 現 場 における 本 方 式 の 導 入 に 向 けて 中 小 洪 水 を 含 むさまざまな 規 模 の 洪 水 について 検 証 を 行 う 必 要 がある 参 考 文 献 1) 今 村 瑞 穂 ダム 貯 水 池 における 洪 水 調 節 の 工 学 的 特 性 の 分 析 と 改 善 に 関 する 研 究 九 州 大 学 博 士 論 文 1998. 2) 裏 戸 勉 洪 水 時 のダム 操 作 について ダム 技 術 No.86 pp.4-12 1993. 3) ( 財 )ダム 技 術 センター 多 目 的 ダムの 建 設 第 7 巻 管 理 編 pp.76-84 2005. 4) ( 財 )ダム 水 源 地 環 境 整 備 センター ダム 管 理 の 実 務 pp.58-60 2000. 5) ( 財 )ダム 水 源 地 環 境 整 備 センター ダムの 管 理 例 規 集 pp.151-154 2006. 6) 今 村 瑞 穂 洪 水 時 のダム 操 作 について ダム 工 学 会 第 16 回 学 術 講 演 会 2006. 7) 今 村 瑞 穂 ダム 貯 水 池 による 洪 水 調 節 の 合 理 化 に 関 する 2 3 の 考 察 ダム 工 学 Vol.8 No.2 pp.102-116 1998. 8) 今 村 瑞 穂 ダム 操 作 について 考 えること ダム 技 術 No.193 PP.3-9 2002.10 9) 今 村 瑞 穂 日 野 徹 芳 地 廉 征 日 本 における 多 目 的 ダムの 新 たな 操 作 方 法 の 提 案 大 ダム No.190 PP.121~126 2005.1 10) 大 谷 知 樹 一 ノ 瀬 泰 彦 竜 澤 宏 昌 水 位 放 流 方 式 に 基 づく 低 貯 水 位 条 件 下 でのダム 放 流 操 作 シミュレーション 第 15 回 水 資 源 機 構 関 東 ブロック 技 術 研 究 発 表 会 2003. 123
11) 三 石 真 也 角 哲 也 尾 関 敏 久 松 木 浩 志 水 位 放 流 方 式 によるダム 操 作 の 適 用 性 に 関 する 検 討 ダム 工 学 Vol.20 No.1 pp.6-15 2010.3 12) ( 社 ) 日 本 技 術 士 会 技 術 士 制 度 における 総 合 技 術 監 理 部 門 の 技 術 体 系 ( 第 2 版 ) pp.134-135 2004. 124