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文化政策情報システムの運用等

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リスクプレミアムかミスプライシングか R&D 投 資 がもたらすアブノーマルリターンの 検 証 久 田 祥 子 Risk Premium versus Mispricing: Empirical Analysis of Abnormal Stock Returns to R&D Investments Shoko HISADA Abstract This paper examines the interpretation of abnormal stock returns caused by R&D investments ( expenditures ), which is risk premium or mispricing. Comparing significances of each interpretation using same sample, it is conformed that the mispricing is superior to the risk premium in Japan market. Additionally, analyzing the relevance of R&D investmentʼs accounting treatment from a point of view of stock market, the capitalizing R&D is better than the expensing. These results suggest that stock market regards R&D investments as R&D capital partially. 1. はじめに Basu[1977]が 初 めて 株 式 アノマリーの 存 在 を 報 告 して,はや30 年 超 が 過 ぎた この 間, 株 式 アノマリーを 巡 っては,バリュー 効 果 や 小 型 株 効 果 等 を 示 す 検 証 が 数 多 く 報 告 さ れてきた 特 に1990 年 代 に 入 ると,バリュー 効 果 に 対 する 解 釈 を 巡 って,Fama and French[ 1993,1997 ],Lakonishok, Shleifer and Vishny[ 1994 ],Daniel and Titman [1997,2006] 等 の 実 証 研 究 が 相 次 ぎ 発 表 され,リスクプレミアムかあるいはミスプライシ ングかという 対 峙 はファイナンス 研 究 のメインストリームとなってきた しかし, 現 在 に 至 るまで, 両 説 の 優 劣 については 結 論 が 出 ていない R&D 投 資 ( 支 出 )は, 企 業 の 持 続 的 成 長 にとって 必 要 不 可 欠 な 企 業 活 動 である しか 東 海 大 学 紀 要 政 治 経 済 学 部 第 44 号 (2012) 235

久 田 祥 子 し,リスクが 高 く 収 益 となるまでの 期 間 も 長 期 に 及 ぶことから, 支 出 時 に 全 額 費 用 計 上 さ れており, 資 産 化 されない こうしたなかでは,R&D 投 資 の 価 値 や 効 果 を 財 務 諸 表 から 把 握 することは 困 難 を 極 めるため, 市 場 は R&D 投 資 情 報 に 対 して 過 剰 に 反 応 し,その 結 果 R&D 投 資 の 前 後 の 期 間 にアブノーマルリターンが 発 生 していることがよく 知 られてい る このアブノーマルリターンの 解 釈 を 巡 っても,その 発 生 メカニズムの 解 明 やディスク ローズ 制 度 の 再 構 築 を 見 据 え,リスクプレミアムかあるいはミスプライシングかという 実 証 研 究 が 数 多 く 行 われている しかし, 現 在 に 至 るまで, 両 説 を 直 接 比 較 した 研 究 は 存 在 しない 本 稿 の 目 的 は, 日 本 市 場 を 対 象 に 両 説 の 説 明 力 を 直 接 比 較 し, 上 記 議 論 に 決 着 をつける ことにある 以 下, 第 2 章 で R&D 投 資 に 関 するリスクプレミアム 説 とミスプライシング 説 の 先 行 研 究 について 整 理 し, 第 3 章 で 本 稿 の 分 析 方 法 と 使 用 するデータ, 第 4 章 で 分 析 結 果, 第 5 章 で 結 論 を 述 べる 2. 先 行 研 究 本 章 では,R&D 投 資 とアブノーマルリターンの 関 係 について,リスクプレミアム 説, ミスプライシング 説 の 主 要 な 研 究 動 向 を 整 理 する リスクプレミアム 説 は Fama and French[1993]に 依 拠 する 学 説 で, R&D 投 資 前 後 に 発 生 するアブノーマルリターンは, 企 業 規 模,BM 効 果 では 捉 えられない 別 の 差 別 的 リ スク 要 因 に 起 因 する と 考 える Bens,Hanna and Zhang[2004]は,RDC/TA 1) を R&D 集 約 度 とした10 分 位 のポートフォリオを 構 築 し,Fama and French[1993]の3フ ァクターモデル(1) 式,および(1) 式 に RDHML ファクター 2) を 組 み 込 んだ4ファク ターモデル(2) 式 の 推 計 結 果 を 比 較 した 結 果 は, 定 数 α は3ファクターモデルの RDC/TA の 高 い 分 位 ポートフォリオでは 有 意 なプラスの 値 をとっていたものの,4ファク ターモデルではゼロ 近 辺 で 有 意 性 も 消 滅 し,RDHML の 推 計 係 数 も 有 意 なプラスの 水 準 にあった さらに,RDHML の 係 数 と RDC/TA の 間 には 正 の 相 関 関 係 がある(R&D 投 資 の 規 模 が 大 きい 企 業 ほど 事 前 の 期 待 リターンが 高 くなる)こと,RDHML を 組 み 入 れ ることでモデルの 説 明 力 adj_r 2 が 向 上 したことも 併 せて 確 認 し,リスクプレミアム 説 の 成 立 を 報 告 している r r =α +b r r +s SMB +h HML + ε (1) r =t 月 のポートフォリオ P のリターン r =t 月 のリスクフリーリターン( 有 担 保 コール 翌 月 物 月 中 平 均 値 ) r =t 月 のマーケットポートフォリオリターン(TOPIX 配 当 込 みリターン) 236 東 海 大 学 紀 要 政 治 経 済 学 部

SMB =t 月 の 企 業 規 模 ( 小 型 ポートフォリオ 大 型 ポートフォリオ)のリターン HML =t 月 の BM( 高 BM ポートフォリオ 低 BM ポートフォリオ)のリターン r r =α +b r r +s SMB + h HML + rd RDHML + ε (2) RDHML =t 月 の RD( 高 RD ポートフォリオ 低 RD ポートフォリオ)のリターン 日 本 市 場 においては, 鄭 [2005]が Bens et al.[2004]とほぼ 同 様 の 分 析 方 法 を 用 いて 実 証 を 行 った この 結 果, 米 国 市 場 に 近 い 結 果 を 得 て,リスクプレミアム 説 成 立 の 可 能 性 が 高 いことを 報 告 している 他 方 ミスプライシング 説 は, 投 資 家 は, 不 確 実 性 の 高 い R&D 投 資 情 報 を 正 しく 評 価 できず,バイアスのかかったあるいは 間 違 った 将 来 利 益 を 予 想 する,もしくは 与 えられた 将 来 利 益 に 対 して 株 価 を 過 大 / 過 小 に 評 価 する と 考 える 学 説 で,R&D 投 資 情 報 に R&D 投 資 額 や R&D 投 資 成 長 率 を 用 いた 検 証 が 行 われている Chan, Lakonishok and Sougiannis[2001]は,R&D 投 資 額 が 大 きいほど 投 資 前 の 株 式 リターンは 低 いが, 投 資 後 は 逆 に 高 くなることを 実 証 し,R&D 投 資 額 が 市 場 にミスプラ イシングを 発 生 させていることを 報 告 した 彼 らは,この 現 象 を R&D 集 約 度 の 高 い 企 業 の 経 営 者 は, 過 去 リターンが 低 迷 しコストカットプレッシャーが 強 いにもかかわらず, 売 上 高 の 多 くの 部 分 を R&D に 投 資 する R&D 支 出 は 直 接 利 益 を 押 し 下 げるため, 市 場 は 企 業 評 価 額 をディスカウントし, 期 待 修 正 に 対 する 反 応 が 遅 くなる と 解 釈 した( 情 報 の 非 対 称 性 説 ) 一 方 Lev and Sougiannis[2005]は,R&D 投 資 成 長 率 を 使 った 検 証 を 行 った 彼 らは, R&D 投 資 が 資 産 化 されない 場 合,R&D 投 資 成 長 率 と 利 益 成 長 率 の 水 準 の 違 いにより, 報 告 利 益 が 実 態 よりも 過 大 / 過 小 に 表 示 される 報 告 バイアス 3) が 発 生 することに 注 目 した 投 資 家 は 報 告 利 益 に 対 して 過 度 に 固 執 する 習 性 があるので,R&D 投 資 成 長 率 の 多 寡 によ り 報 告 バイアスが 発 生 すれば 市 場 にミスプライシングが 発 生 し,その 後 報 告 バイアスが 解 消 されるとミスプライシングも 修 正 されることを 確 認 し,R&D 投 資 成 長 率 がミスプライ シングを 引 き 起 こしていると 結 論 付 けた( 機 能 的 固 定 化 仮 説 ) 日 本 市 場 においては, 野 間 [2005]が Chan et al.[2001]に 倣 った 分 析 を 行 い,R&D 投 資 額 と 事 後 の 株 式 超 過 リターンの 間 に 正 の 相 関 関 係 があることを 報 告 している ( 情 報 の 非 対 称 性 仮 説 ) 上 記 から,リスクプレミアム 説 の 検 証 は 方 法 論 的 に 概 ね 終 了 したと 言 ってよいが,ミス プライシング 説 については, 今 のところ 方 法 論 を 含 めその 発 生 メカニズムや 解 釈 につい て, 意 見 の 一 致 をみていない ましてや, 両 説 を 比 較 する 検 証 は, 全 く 手 付 かずの 状 況 に ある そこで 本 稿 では, 同 一 の 分 析 期 間 とサンプルを 用 いて, 両 説 の 説 明 力 を 直 接 比 較 す ることにした リスクプレミアムかミスプライシングか 第 44 号 (2012) 237

久 田 祥 子 3. 分 析 方 法 とデータ 3.1 分 析 方 法 RD/TA 4) を 基 準 に5 分 位 ポートフォリオを 構 築 し, 事 前 の 期 待 リターン 5) の 水 準 と RD/TA との 関 係,リスクプレミアム 説 とミスプライシング 説 の 比 較 などを 行 う 両 説 の 比 較 は, 慣 習 的 なファイナンス 論 の 方 法,つまり 事 前 の 期 待 リターンの 事 後 リターンに 対 する 説 明 力 を 用 いて 行 う 以 下 では,リスクプレミアム 説 とミスプライシング 説 の 事 前 の 期 待 リターン er 5) の 推 計 方 法 と 比 較 方 法 等 について 説 明 する 3.1.1 期 待 リターンの 推 計 方 法 リスクプレミアム 説 の 期 待 リターンの 推 計 方 法 リスクプレミアム 説 の 事 前 の 期 待 リターン fr は, 上 述 の Fama and French[1993]と Bens et al.[2004]に 基 づいて 推 計 する 推 計 には,(1),(2) 式 中 のファクターリター ン((r r ),SMB,HML,RDHML)とファクターローディング(b,s,h, rd )が 必 要 になる ファクターリターンは, 東 京 証 券 取 引 所 1,2 部 に 上 場 している 全 企 業 を 対 象 に, 分 析 期 間 の 毎 月 末 値 を 使 って 算 出 する 6) まず 全 企 業 を 各 年 度 6 月 末 時 点 で, 企 業 規 模 ( 時 価 総 額 )に 基 づいてソートして 企 業 数 により2 分 割 し,その2 個 のポートフォリオにおいて さらに BM に 基 づきソートして 上 位 30%, 下 位 30%を 基 準 に3 分 割 し, 合 計 6 個 のポー トフォリオを 構 築 する 次 にこの6 個 のポートフォリオを 基 準 とし, 以 降 12ヶ 月 間 にわた り 月 次 の 時 価 加 重 ポートフォリオリターンを 計 算 する SMB リターンは, 最 初 の 企 業 規 模 に 基 づく2 分 割 ポートフォリオのうち, 小 型 ポートフォリオリターンから 大 型 ポートフ ォリオリターンを 差 し 引 いたリターン,HML リターンは, 企 業 規 模 とBM により 分 割 さ れた 合 計 6 個 のポートフォリオのうち, 大 型 ポートフォリオと 小 型 ポートフォリオにおけ るそれぞれ2 個 の 高 BM ポートフォリオ 平 均 リターンから2 個 の 低 BM ポートフォリオ の 平 均 リターンを 差 し 引 いて 求 める RDHML リターンについては, 企 業 規 模 とBM を 基 準 に6 分 割 されたポートフォリオを,HML リターンと 同 様 の 手 順 でRD/TA を 基 準 に してさらに3 分 割 し, 合 計 18 個 のポートフォリオを 構 築 する 最 後 に,それぞれ6 個 の 高 RDHML ポートフォリオ 平 均 リターンから6 個 の 低 RDHML ポートフォリオ 平 均 リター ンを 差 し 引 いて 算 出 する 次 に,ファクターローディングを 推 計 する RD/TA を 基 準 とした5 分 位 毎 の 月 次 時 価 238 東 海 大 学 紀 要 政 治 経 済 学 部

リスクプレミアムかミスプライシングか 加 重 ポートフォリオリターンと 上 記 ファクターリターンを(1),(2) 式 に 代 入 して 月 次 で 時 系 列 回 帰 分 析 を 行 い, 分 位 別 の 定 数 α, 各 変 数 の 推 計 係 数 b,s,h,rd の 平 均 値 および t 値,adj_R 2 を 求 める( 表 2) 月 次 の 時 系 列 回 帰 分 析 は, 直 近 5 期 間 (60ヶ 月 ) リターンのローリングベースの OLS で 行 い,adj_R 2 は 各 分 析 期 間 における 時 系 列 回 帰 分 析 の 自 由 度 修 正 済 み 決 定 係 数 の 平 均 値 を 求 める 期 待 リターン fr は, 上 記 で 求 めた 月 次 のファクターリターンとファクターローディン グを 基 に 算 出 する その 際 期 待 リターンの 水 準 は,どのようなサンプル 期 間 を 採 るかによ り, 大 きく 変 動 する 先 行 研 究 の 大 半 は, (ⅰ) 分 析 期 間 平 均 :fr (ⅱ) 直 近 5 期 間 移 動 平 均 :fr のどちらかを 設 定 している 本 稿 では 両 方 のサンプル 期 間 を 採 用 し,それぞれ3ファクタ ーFF 期 待 リターン fr と4ファクター FF 期 待 リターン fr を 推 計 する つまり 推 計 す るリターンは,(ⅰ) 全 期 間 平 均 のファクタープレミアムとファクターローディングによ り 算 出 した 期 間 平 均 3ファクターリターン fr, 期 間 平 均 4ファクターリターン fr, (ⅱ) 直 前 5 期 間 移 動 平 均 のファクタープレミアムとファクターローディングにより 算 出 した5 期 平 均 3ファクターリターン fr,5 期 平 均 4ファクターリターンfr,とい う4 種 類 のFF 期 待 リターン fr である ミスプライシング 説 の 期 待 リターンの 推 計 方 法 本 稿 では,ミスプライシング 説 の 事 前 の 期 待 リターンに,インプライドリターン ir 7) を 採 用 する インプライドリターン ir は, 現 時 点 の 予 想 利 益 と 株 価 を 前 提 に 推 計 された リターンで,ファイナンス 論 でいう 株 主 要 求 リターン(= 金 利 + 株 式 リスクプレミア ム),つまり 事 前 の 期 待 リターンと 同 義 になる 効 率 的 市 場 下 においては, 将 来 利 益 は 正 しく 予 想 されることが 前 提 となるので,すべての 企 業 のリスク 調 整 後 のインプライドリタ ーン ir は 同 一 の 水 準 に 決 定 される もし 水 準 にバラツキがみられる 場 合 は, 市 場 の 過 剰 反 応 等 が 要 因 となりミスプライシングが 発 生 していることを 示 している つまり, RD/TA を 基 準 とした 分 位 ポートフォリオとその 期 待 リターンの 水 準 との 間 に 何 らかの 関 係 がある 場 合,R&D 投 資 がミスプライシングを 引 き 起 こしている 可 能 性 があると 解 釈 で きる 費 用 化 インプライドリターン ir は, 下 記 (3),(4) 式 のオルソンモデル 8) を 前 提 とし, 各 年 度 6 月 末 時 点 の 利 益 予 想 と 株 価 を 用 いて 推 計 する P =BVE + BVE ROE ir 1+ir (3) 第 44 号 (2012) 239

久 田 祥 子 ROE ROE = ROE *ROE (4) P =t 期 i 企 業 の 株 価 ir =i 企 業 のオルソンモデルに 基 づいた 費 用 化 インプライドリターン BVE =t 期 i 企 業 の1 株 当 り 株 主 資 本 ROE =t 期 i 企 業 の 税 引 後 経 常 利 益 予 想 ROE ROE= 定 常 税 引 後 経 常 利 益 ROE(=6.5%) 次 に,リスクプレミアム 説 の4ファクターモデルに 相 当 する,R&D 投 資 の 価 値 効 果 を 反 映 した 資 産 化 インプライドリターン ir を 算 出 する 資 産 化 インプライドリターン ir は, 下 記 (5),(6) 式 のオルソンモデルにより, 推 計 する P =BVE + BVE ROE ir (5) 1+ir ROE ROE = ROE *ROE (6) ir =i 企 業 のオルソンモデルに 基 づいた 資 産 化 インプライドリターン BVE =t 期 i 企 業 の 資 産 化 1 株 当 り 株 主 資 本 ROE =t 期 i 企 業 の 資 産 化 予 想 ROE 上 記 式 中 の R&D 投 資 を 資 産 化 した BVE と ROE は,Lev and Sougiannis[1996]を 参 考 に,R&D 投 資 を 投 資 時 点 で 全 額 資 産 化 し,その 翌 年 から5 年 間 にわたり 均 等 償 却 す ることを 前 提 に 推 計 している 下 記 (7),(8) 式 で 求 めた RDA と RDC を,それぞれ 経 常 利 益, 株 主 資 本 に 加 算 して 算 出 する RDA =0.2 RD +RD +RD +RD +RD (7) RDC =RD +0.8 RD +0.6 RD +0.4 RD +0.2 RD (8) RDA =t 期 i 企 業 の R&D キャピタル 償 却 費 用 RDC =t 期 i 企 業 の R&D キャピタル 両 説 の 期 待 リターンの 調 整 上 記 で 推 計 された 両 説 の 事 前 の 期 待 リターン er は, 表 1が 示 すとおり, 推 計 対 象 の 単 位 や 期 間 に 違 いがある そこで, 両 説 の 平 仄 を 合 わせるために, 期 待 リターンの 調 整 を 行 う 推 計 対 象 の 単 位 は,リスクプレミアム 説 において 個 別 企 業 毎 のファクターローディン グ b,s,h,rd を 求 めたうえで, 個 別 銘 柄 別 の 期 待 リターンを 推 計 する また 期 間 は,リスクプレミアム 説 の 各 年 度 6 月 末 時 点 の 月 次 FF 期 待 リターンを 年 率 換 算 する 240 東 海 大 学 紀 要 政 治 経 済 学 部

リスクプレミアムかミスプライシングか 表 1 両 説 における 事 前 の 期 待 リターンの 違 い リスクプレミアム 説 ミスプライシング 説 (FF 期 待 リターン fr) (インプライドリターン ir) 推 計 対 象 単 位 分 位 ポートフォリオ 別 個 別 銘 柄 別 期 間 月 次 年 次 ( 出 所 ) 筆 者 作 成 ( 以 下 の 表 すべて 同 じ) 3.1.2 リスクプレミアム 説 における 事 前 検 証 両 説 を 比 較 する 前 に,リスクプレミアム 説 について, 本 稿 のデータセットを 用 いた 分 位 ポートフォリオ 別 の 検 証 を 行 う 本 稿 のリスクプレミアム 説 の 検 証 は,ミスプライシング 説 との 比 較 のため, 上 述 のように 個 別 銘 柄 単 位 で 分 析 を 行 うが, 慣 習 的 には,リスクプレ ミアム 説 の 成 立 を 報 告 した 先 行 研 究 Bens et al.[2004]も 含 め, 分 位 ポートフォリオ 単 位 で 検 証 を 行 う このため,あらかじめ 慣 習 的 な 分 位 ポートフォリオによる 検 証 を 行 い, 本 稿 で 得 られる 結 果 の 解 釈 をより 強 固 なものにする 結 果 は 表 2のとおりで,まず 定 数 α について,3ファクターモデルと4ファクターモデ ルを 比 較 すると,RDHML を 加 えることにより,RD/TA の 高 い 分 位 を 中 心 に 低 下 してい る 4ファクターモデルの RDHML の 係 数 と RD/TA を 分 位 別 にみると,RD/TA が 高 い( 低 い) 分 位 では RDHML の 係 数 も 高 く( 低 く)なり, 正 の 相 関 関 係 が 認 められる また,RDHML を 加 えることですべての 分 位 において adj_r 2 が 改 善 している 以 上 の 結 果 は Bens et al.[2004]と 齟 齬 がなく,RDHML はリスクファクターとして 有 効 で,さらにリスクプレミアム 説 が 成 立 している 可 能 性 があることを 示 している したが 表 2 RD/TA を 基 準 とした 分 位 別 ポートフォリオの 推 計 係 数,t 値,Adj_R 3ファクターモデル 定 数 R -R SMB HML Adj_R Non_R&D 0.005 0.950 0.046 0.052 0.876 3.48 26.22 2.06 4.23 第 一 分 位 -0.002 0.836-0.032-0.067 0.624 1.36 23.32-0.971.66 第 二 分 位 0.013 0.873 0.256-0.028 0.698 1.77 27.06 1.82-0.80 第 三 分 位 0.013 1.104 0.233-0.017 0.792 1.95 19.44 2.71-0.41 第 四 分 位 0.011 1.077 0.073 0.037 0.695 1.50 29.13 2.10 1.07 第 五 分 位 0.006 0.971-0.110 0.051 0.762 1.09 20.76-3.19 1.44 4ファクターモデル 定 数 R -R SMB HML RDHML Adj_R -0.001 0.857-0.158-0.026-0.484 0.756 1.11 30.62-10.12-0.69-4.26 0.002 0.891 0.175 0.010-0.145 0.787 0.84 26.93 1.25 0.24-2.01 0.001 0.981 0.201 0.027 0.120 0.877 0.75 28.83 2.23 1.10 3.39-0.001 0.994 0.055 0.053 0.225 0.798-0.4735.07 3.82 2.04 2.43-0.000 0.906-0.061 0.039 0.454 0.828-0.1723.91-2.78 1.41 5.54 分 位 はRD/TA が 低 い( 高 い) 方 から 第 一 ( 五 ) 分 位 ( 以 下 の 表 すべて 同 じ) 各 行 下 段 はt 値 第 44 号 (2012) 241

久 田 祥 子 って, 以 下 の 検 証 においてミスプライシング 説 よりもリスクプレミアム 説 の 説 明 力 が 低 い との 結 果 を 得 た 場 合, 慣 習 的 な 分 析 方 法 を 使 った 場 合 には 成 立 していたと 考 えられている リスクプレミアム 説 が, 同 一 サンプルを 用 いたミスプライシング 説 との 比 較 においては 成 立 していない 可 能 性 を 示 唆 していることになる 3.1.3 リスクプレミアム 説 とミスプライシング 説 の 比 較 検 証 方 法 両 説 の 優 劣 は, 各 期 待 リターンの 水 準 や 変 動 ( 標 準 偏 差 ), 説 明 力 (t 値 等 )を 検 証 し たうえで, 総 合 的 に 評 価 する 最 初 に, 個 別 企 業 ベースで 推 計 された6つの 期 待 リターン er の 平 均 値 と 標 準 偏 差 を, RD/TA を 基 準 に5 分 位 で 整 理 する( 表 3) 期 待 リターン 別 の 平 均 値 と 標 準 偏 差 の 状 況, 分 位 別 の 各 期 待 リターン 水 準 とRD/TA の 関 係 等 を 調 べる 続 いて,これら6つの 期 待 リターン er のうち,4 種 類 のFF 期 待 リターン fr につい て, 各 リターンに 占 めるファクター 毎 の 寄 与 度 を 分 位 別 に 算 出 する この 分 析 は, 後 述 の 慣 習 的 ではない 個 別 銘 柄 別 の 分 析 においても RDHML はリスクファクターとして 有 効 と の 結 果 を 得 たため,RDHML に 実 際 にプレミアムが 付 いているか 否 か, 確 認 するために 行 う( 表 4) 最 後 に, 上 記 で 推 計 された 各 事 前 の 期 待 リターン er を, 事 後 的 リターン r と 比 較 し, 両 説 の 説 明 力 を 検 証 する 個 別 企 業 ベースで 推 計 した6つの 事 前 の 期 待 リターン er と1 年 先,2 年 先,3 年 先 の 事 後 リターン R (j =1,2,3)とを, 分 位 別 に(9) 式 を 用 いて 回 帰 分 析 し,β について Fama=MacBeth 法 によりt 検 定 を 行 う( 表 5) R =α+β er +ε (9) R =j 年 後 の 年 次 ( 事 後 )リターン(j=1,2,3) 3.2 データ 本 稿 の 上 記 (1) (9) 式 のなかで 使 うデータは, 研 究 開 発 費, 試 験 研 究 費, 株 主 資 本, 株 価, 修 正 株 式 リターン,1 期 先 予 想 ( 税 引 後 ) 経 常 利 益, 発 行 済 み 株 式 総 数 である 研 究 開 発 費, 試 験 研 究 費, 株 主 資 本, 発 行 済 み 株 式 総 数 は, 財 務 CD-ROM( 日 本 経 済 新 聞 社 )と 会 社 財 務 カルテ CD-ROM( 東 洋 経 済 新 報 社 )のデータを 使 用 した 1 期 先 予 想 経 常 利 益 は 会 社 四 季 報 ( 東 洋 経 済 新 報 社 ), 株 価 は 株 価 CD-ROM( 東 洋 経 済 新 報 社 ), 修 正 株 式 リターンは 株 式 投 資 収 益 率 ( 日 本 証 券 経 済 研 究 所 )を 使 った なお, 財 務 データは, 1998 年 度 までは 単 独 ベース,1999 年 以 降 は 連 結 ベースを 使 った 分 析 対 象 は, 下 記 の 条 件 を 満 たす 企 業 とした 242 東 海 大 学 紀 要 政 治 経 済 学 部

リスクプレミアムかミスプライシングか (ⅰ) 東 京 証 券 取 引 所 1,2 部 上 場 の12 月,3 月 決 算 で, 事 前 5 期 間 にわたり 決 算 月 の 変 更 がない 企 業 ( 銀 行, 証 券 商 品 先 物 取 引, 保 険,その 他 金 融 業 を 除 く) (ⅱ) 事 前 5 期 間 にわたり 財 務 データがある 企 業 (ⅲ) 事 前 5 期 間 および 事 後 3 期 間 の 株 価 データがある 企 業 (ⅳ)1 期 先 予 想 データがあり,かつ1 期 先 予 想 税 引 後 経 常 利 益 が 黒 字 の 企 業 (ⅴ) 事 前 5 期 間 にわたり R&D 関 連 データ( 研 究 開 発 費 および 試 験 研 究 費 )がある 企 業 である なお, 以 下 の 分 位 分 析 においては,(ⅰ) (ⅳ)までの 条 件 に 合 致 するが(ⅴ) の R&D 関 連 データのない 企 業 について,Non-R&D と 定 義 している 分 析 期 間 は,1988-2004 年 度 とした 研 究 開 発 費 等 に 係 る 会 計 基 準 が 施 行 された1998 年 度 以 前 の 期 間 においては, 多 くの 企 業 は 財 務 諸 表 上 に 研 究 開 発 費 を 計 上 していないの で, 本 稿 では1998 年 度 以 前 の 期 間 において 研 究 開 発 費 の 計 上 がない 企 業 については, 試 験 研 究 費 から 研 究 開 発 費 を 推 計 している 9) なお, 分 析 期 間 のサンプル 数 は, 全 サンプル 企 業 は 延 べ14,782 社, R&D 実 施 企 業 サンプル は8,951 社 である 4. 結 果 結 果 は, 以 下 のとおりである 4.1 期 待 リターンの 平 均 値 と 標 準 偏 差 表 3は, 個 別 企 業 ベースで 推 計 した6つの 期 待 リターン er について,RD/TA 基 準 の 表 3 RD/TA を 基 準 とした 分 位 別 期 待 リターン er の 期 間 平 均 値 と 標 準 偏 差 1. 期 間 平 均 値 RD/TA ir ir fr fr fr fr R&D 実 施 企 業 0.81% 1.66% 10.98% 11.27% 0.45% 1.80% 全 サンプル 0.89% 1.49% 11.20% 11.50% 0.68% 1.62% 第 一 分 位 0.19% 1.92% 2.06% 11.50% 14.31% 0.03% 2.08% 第 二 分 位 0.66% 1.19% 1.56% 12.48% 12.55% 1.19% 1.90% 第 三 分 位 1.40% 0.75% 1.42% 11.60% 11.39% 0.72% 1.36% 第 四 分 位 2.45% 0.38% 1.51% 10.79% 10.00% 0.94% 2.00% 第 五 分 位 5.39% -0.03% 1.88% 8.48% 8.04% -0.57% 1.69% Non_RD 1.13% 1.13% 11.55% 11.55% 1.05% 1.05% 2. 標 準 偏 差 RD/TA ir ir fr fr fr fr R&D 実 施 企 業 4.41% 4.57% 1.73% 1.72% 8.34% 8.29% 全 サンプル 4.50% 4.67% 1.70% 1.75% 8.41% 8.31% 第 44 号 (2012) 243

久 田 祥 子 5 分 位 毎 にリターンの 期 間 平 均 値 と 標 準 偏 差 を 整 理 している まず, 期 待 リターンの 平 均 値 の 水 準 を 比 較 する インプライドリターン ir と5 期 平 均 ファクターリターン fr は0 1% 台 にあるが, 期 間 平 均 ファクターリターン fr は 10 11% 台 と 一 桁 高 い 水 準 にあり, 推 計 方 法 によって 大 きな 差 が 生 じている 次 に, 分 位 別 の 期 待 リターンと RD/TA の 関 係 について 調 べる インプライドリター ン ir をみると, 費 用 化 インプライドリターン ir, 資 産 化 インプライドリターン ir, RD/TA との 間 に 負 の 相 関 関 係,つまり RD/TA が 高 い( 低 い) 分 位 ほどリターンは 低 く ( 高 く)なる 関 係 が 概 ね 認 められ,R&D 投 資 がミスプライシングを 誘 発 させている 可 能 性 を 示 唆 している 加 えて,すべての 分 位 において, 資 産 化 した 方 が 費 用 化 した 場 合 より もリターン 水 準 が 高 く,その 上 昇 幅 はRD/TA が 高 い 分 位 ほど 大 きくなっている 期 間 平 均 ファクターリターン fr についても,3ファクターリターン fr,4ファク ターリターン fr 共 に,RD/TA との 間 に 負 の 相 関 関 係 が 認 められる また R&D 実 施 企 業 全 体 でリターンの 水 準 をみると,3ファクターリターン fr よりも4ファクターリタ ーン fr の 方 が 高 いが, 分 位 別 に 詳 細 にみると,RD/TA が 高 い( 低 い) 分 位 では,4 ファクターリターン fr よりも3ファクターリターン fr の 方 が 高 く( 低 く)なってい る つまり,RDHML を 加 えることにより,RD/TA の 高 い 分 位 の 期 待 リターンが 低 下 し ているこの 現 象 は,RDHML にマイナスのプレミアムが 付 いている 可 能 性 があることを 示 している 最 後 に5 期 平 均 ファクターリターン fr においては,3ファクターリターン fr, 4ファクターリターン fr ともに RD/TA との 間 に, 明 らかな 関 係 は 認 められない そ の 一 方 で,すべての 分 位 において,3ファクターリターン fr よりも4ファクターリタ ーン fr の 方 が 高 い 水 準 にあることは, 注 目 に 値 する つまり,もし RDHML ファク ター 寄 与 度 と RD/TA の 間 に 正 の 相 関 関 係 が 認 められれば,R&D 投 資 がプラスのリスク プレミアムをもたらしている 可 能 性 が 出 てくる 標 準 偏 差 は, 期 間 平 均 ファクターリターン fr が1% 台 と 最 も 小 さく, 次 にインプラ イドリターン ir が4% 台,5 期 平 均 ファクターリターン fr は8% 台 の 水 準 となってい る 5 期 平 均 ファクターリターン fr は,リターン 平 均 が0 1% 台 の 水 準 にあること を 考 えると, 相 対 的 に 変 動 が 激 しいと 言 える 4.2 寄 与 度 分 析 表 4は, 上 述 のリスクプレミアム 説 の 検 証 に 用 いた4つの FF 期 待 リターン fr につい て, 各 リターンに 対 する 変 数 毎 の 寄 与 度 を 示 している ここで,RDHML にプラスのプ 244 東 海 大 学 紀 要 政 治 経 済 学 部

リスクプレミアムかミスプライシングか 表 4 RD/TA を 基 準 とした 分 位 別 ファクターリターンの 寄 与 度 分 析 1. 期 間 平 均 ファクターリターンfr fr R R -R SMB HML 第 一 分 位 11.50% 1.90 2.68 5.68 1.24 第 二 分 位 12.48% 1.90 2.86 6.50 1.22 第 三 分 位 11.60% 1.90 2.85 5.91 0.94 第 四 分 位 10.79% 1.90 2.92 4.50 1.47 第 五 分 位 8.48% 1.90 2.92 2.26 1.40 Non_RD 11.55% 1.90 2.65 5.74 1.25 fr R R -R SMB HML RDHML 第 一 分 位 14.31% 1.90 2.92 8.39 1.02 0.07 第 二 分 位 12.55% 1.90 2.73 6.90 0.90 0.12 第 三 分 位 11.39% 1.90 2.68 5.78 0.95 0.08 第 四 分 位 10.00% 1.90 2.67 4.36 1.00 0.06 第 五 分 位 8.04% 1.90 2.82 2.32 0.95 0.06 Non_RD 11.55% 1.90 2.65 5.74 1.25 2.5 期 平 均 ファクターリターンfr fr R R -R SMB HML 第 一 分 位 0.03% 1.90-2.74-1.24 2.11 第 二 分 位 1.19% 1.90-2.62 0.30 1.61 第 三 分 位 0.72% 1.90-2.84 0.50 1.15 第 四 分 位 0.94% 1.90-2.97-0.03 2.03 第 五 分 位 -0.57% 1.90-3.05-0.80 1.37 Non_RD 1.05% 1.90-2.61 0.24 1.52 fr R R -R SMB HML RDHML 第 一 分 位 2.08% 1.90-2.57 0.87 1.20 0.67 第 二 分 位 1.90% 1.90-2.86 0.39 1.22 1.25 第 三 分 位 1.36% 1.90-2.82-0.15 1.26 1.17 第 四 分 位 2.00% 1.90-2.75 0.12 1.39 1.34 第 五 分 位 1.69% 1.90-2.71-0.40 1.29 1.61 Non_RD 1.05% 1.90-2.61 0.24 1.52 レミアムが 付 いていることが 確 認 できた 場 合 には,リスクプレミアム 説 が 成 立 している 可 能 性 がある 期 間 平 均 ファクターリターン fr の 水 準 は, 上 記 表 3において3ファクターモデルと 4ファクターモデルを 比 較 すると,RD/TA の 高 い( 低 い) 分 位 でリターンが 低 下 ( 上 昇 )していることを 確 認 した この 原 因 について 表 4をみると,RD/TA の 低 い 分 位 の 期 待 リターン fr 上 昇 には SMB ファクターの 上 昇 が 大 きく 寄 与 しているが,RD/TA の 高 い 分 位 でみられる 期 待 リターン fr の 低 下 は,HML ファクターの 低 下 により 引 き 起 こ されている さらに,RDHML 寄 与 度 と RD/TA の 間 には, 明 確 な 相 関 関 係 は 認 められ ない 従 って, 期 間 平 均 ファクターリターン fr においては,RDHML にプレミアムが 付 いている 可 能 性 は 低 い 5 期 平 均 ファクターリターン fr の 水 準 については,RDHML を 加 えることにより, 4ファクターモデルにおけるすべての 分 位 の 期 待 リターン fr が 上 昇 することを, 表 3 で 確 認 した そこで,この 原 因 について, 表 2と 表 4を 使 って 考 察 する まず 表 2では, RD/TA の 高 い( 低 い) 分 位 ほど RDHML の 係 数 が 高 く( 低 く)なることを 検 証 し, RDHML がリスクファクターとして 有 効 性 であることを 確 認 している このことを 前 提 に 表 4をみると,RD/TA の 高 い 分 位 ほど 概 ね RDHML の 寄 与 度 が 高 くなる 傾 向 があり, この 結 果 期 待 リターンが 上 昇 している 以 上 を 勘 案 すると,5 期 平 均 ファクターリターン 第 44 号 (2012) 245

久 田 祥 子 fr では RDHML にプラスのプレミアムが 付 いている 可 能 性 があると 言 える 4.3 検 定 と 評 価 表 5は,6つの 期 待 リターン er の 事 後 リターン R に 対 する 説 明 力 を, 分 位 別 に 整 理 している まず,インプライドリターン ir の t 値 について,R&D 実 施 企 業, 全 サンプルの 分 類 別 にみると,どちらも 概 ね 有 意 な 水 準 にある 続 いて R&D 実 施 企 業 について 分 位 別 に 調 べ ると, 一 部 で 有 意 な 水 準 にないものの, 全 般 的 にt 値 の 水 準 は 高 い また,R&D 投 資 を 全 額 費 用 化 した 場 合 と 全 額 資 産 化 した 場 合 とを 比 較 すると, 費 用 化 したインプライドリタ ーン ir よりも 資 産 化 したインプライドリターン ir の 方 が, 大 差 はないものの 高 い 水 準 にある 期 間 平 均 ファクターリターン fr の t 値 について,R&D 実 施 企 業, 全 サンプルの 区 分 でみると,いずれも 統 計 的 有 意 な 水 準 にない また 分 位 別 にみても, 全 般 的 にt 値 は 低 い 水 準 にある 5 期 平 均 ファクターリターン fr について,R&D 実 施 企 業, 全 サンプルの 分 類 でt 値 をみると, 統 計 的 有 意 な 水 準 にない しかし, 分 位 別 にみると,4ファクターリターン fr において 一 部 有 意 な 結 果 が 検 出 されている さらに, 市 場 は R&D 投 資 の 価 値 効 果 を 織 り 込 んでいるのかという 視 点 から,3ファクターリターン fr と4ファクターリ ターン fr を 比 較 すると, 総 じて 水 準 は 低 いものの,4ファクターリターン fr のt 値 の 方 が 高 い 水 準 にある 以 上 から, 事 後 リターンに 対 する 説 明 力 が 最 も 高 く, 期 待 リターンの 水 準 も 相 対 的 に 安 定 推 移 しているのは,インプライドリターン ir であることがわかった 加 えて, 市 場 は R&D 投 資 を 費 用 あるいは 資 産 のどちらとみなしているのかという 観 点 から, 費 用 化 イン プライドリターン ir と 資 産 化 インプライドリターン ir を 比 較 したところ, 大 差 はな いものの 資 産 とみている 傾 向 が 強 いことが 確 認 された 一 方, 期 間 平 均 ファクターリターン fr については, 期 待 リターンは 安 定 的 に 推 移 し ているものの, 事 後 リターンに 対 する 説 明 力 は 低 い さらに,RDHML にプレミアムが 付 いている 可 能 性 も 低 い 5 期 平 均 ファクターリターン fr の 場 合 は, 事 後 リターンに 対 する 説 明 力 は 一 部 で 有 意 性 が 認 められ, 市 場 は 幾 分 か R&D 投 資 の 価 値 効 果 を 織 り 込 んでいることもわかっ た 加 えて,RDHML に 正 のプレミアムが 付 与 されている 可 能 性 があることも 確 認 され ている しかし, 多 くの 部 分 で 説 明 力 に 有 意 性 が 認 められないこと,リターンの 変 動 が 大 246 東 海 大 学 紀 要 政 治 経 済 学 部

リスクプレミアムかミスプライシングか 表 5 期 待 リターンと 事 後 リターンの 検 定 1. 期 待 リターンの 係 数,t 値,adj. R2 1 年 先 リターン 2 年 先 リターン 3 年 先 リターン ir ir fr fr fr fr ir ir fr fr fr fr ir ir fr fr fr fr R&D 実 施 企 業 係 数 0.535 0.607 0.055 0.021 0.000 0.072 0.438 0.516-0.095 0.019 0.026 0.025 0.490 0.577-0.130 0.044 0.021 0.001 t 値 1.68 2.04 0.24 0.33 0.00 1.53 2.09 2.77-0.63 0.45 0.16 0.87 3.32 4.31-0.97 1.41 0.12 0.02 adj. R 0.033 0.032 0.052 0.003 0.033 0.004 0.044 0.042 0.042 0.004 0.026 0.004 0.054 0.056 0.043 0.004 0.031 0.003 全 サンプル 係 数 0.576 0.621 0.093 0.058-0.055 0.020 0.488 0.545-0.068-0.010-0.001 0.004 0.502 0.567-0.120-0.026-0.010-0.012 t 値 2.01 2.30 0.42 0.64-0.21 0.28 2.82 3.54-0.48-0.18-0.01 0.13 3.99 4.83-0.97-0.56-0.06-0.43 adj. R 0.028 0.027 0.047 0.008 0.031 0.006 0.039 0.038 0.041 0.007 0.023 0.003 0.049 0.052 0.042 0.007 0.031 0.004 2.RD/TA を 基 準 とした 分 位 別 期 待 リターンの 係 数,t 値,adj. R2 1 年 先 リターン 2 年 先 リターン 3 年 先 リターン ir ir fr fr fr fr ir ir fr fr fr fr ir ir fr fr fr fr 第 一 分 位 係 数 0.366 0.374 0.084-0.050-0.020-0.031 0.340 0.326-0.074 0.044 0.056-0.015 0.432 0.426-0.133-0.006 0.147 0.039 t 値 1.48 1.54 0.31-0.52-0.05-0.36 2.65 2.44-0.46 0.79 0.25-0.22 3.81 3.74-1.20-0.09 0.68 0.72 adj. R 0.026 0.026 0.086 0.006 0.061 0.008 0.027 0.028 0.063 0.009 0.047 0.013 0.037 0.037 0.054 0.013 0.058 0.015 第 二 分 位 係 数 0.834 0.835 0.003 0.000 0.021 0.149 0.558 0.563-0.105-0.049 0.102 0.121 0.462 0.470-0.076 0.045 0.091 0.096 t 値 3.01 2.77 0.02 0.00 0.12 1.34 3.19 3.10-0.85-0.47 0.89 1.81 4.30 4.09-0.74 0.77 0.78 2.39 adj. R 0.035 0.037 0.042 0.014 0.025 0.022 0.050 0.052 0.034 0.019 0.026 0.011 0.047 0.049 0.030 0.011 0.018 0.008 第 三 分 位 係 数 0.702 0.704 0.095 0.086-0.001 0.076 0.425 0.402-0.011 0.027-0.012 0.096 0.500 0.505-0.057 0.083-0.019 0.045 t 値 1.93 1.81 0.43 1.20 0.00 0.97 1.56 1.33-0.07 0.61-0.07 1.90 2.72 2.40-0.43 1.96-0.12 0.88 adj. R 0.049 0.052 0.042 0.005 0.031 0.007 0.055 0.063 0.029 0.006 0.017 0.009 0.066 0.074 0.041 0.006 0.032 0.007 第 四 分 位 係 数 0.325 0.350 0.245 0.100-0.278 0.014 0.473 0.495 0.033 0.025-0.091 0.003 0.393 0.407-0.047 0.057-0.043-0.008 t 値 0.67 0.74 0.90 0.75-1.02 0.15 2.14 2.17 0.19 0.35-0.61 0.08 2.29 2.26-0.31 1.88-0.27-0.21 adj. R 0.044 0.044 0.055 0.011 0.038 0.010 0.047 0.050 0.050 0.008 0.034 0.006 0.046 0.049 0.050 0.004 0.035 0.005 第 五 分 位 係 数 0.696 0.601-0.057-0.074 0.099 0.091 0.719 0.607-0.184 0.002-0.039-0.016 0.851 0.805-0.223 0.049-0.122 0.000 t 値 1.90 1.72-0.25-0.74 0.47 1.28 2.54 2.17-1.01 0.03-0.24-0.25 4.23 4.38-1.26 0.83-0.61 0.01 adj. R 0.048 0.046 0.060 0.010 0.037 0.012 0.070 0.066 0.061 0.016 0.034 0.016 0.095 0.090 0.065 0.010 0.032 0.009 Non_RD 係 数 0.628 0.626 0.166 0.117-0.122-0.029 0.533 0.540-0.014-0.037-0.029-0.008 0.503 0.521-0.088-0.105-0.055-0.018 t 値 2.36 2.32 0.74 0.73-0.40-0.18 3.87 3.86-0.10-0.41-0.17-0.10 4.76 4.74-0.82-1.44-0.36-0.22 adj. R 0.027 0.027 0.045 0.032 0.032 0.018 0.034 0.035 0.040 0.021 0.020 0.008 0.045 0.049 0.041 0.024 0.031 0.014 第 44 号 (2012) 247

久 田 祥 子 きいこと 等 を 勘 案 すると, 市 場 ではリスクファクターであってもプラスのプレミアムは 付 与 されておらず,リスクプレミアム 説 は 成 立 していないと 考 えるのが 妥 当 であろう 5. 結 論 R&D 投 資 に 対 する 市 場 の 過 剰 反 応 は,リスクプレミアムか,あるいはミスプライシン グか 本 稿 では, 日 本 市 場 を 対 象 に 同 一 の 分 析 期 間 とサンプルを 使 い, 分 析 方 法 を 統 一 し たうえで 両 説 を 直 接 比 較 検 証 した この 結 果, 日 本 市 場 では, 先 行 研 究 において 成 立 が 報 告 されていたリスクプレミアム 説 よりも, 発 生 メカニズムや 解 釈 について 未 だ 意 見 の 一 致 をみていないミスプライシング 説 の 説 明 力 の 方 が 高 いことを 確 認 した さらに,R&D 投 資 の 会 計 処 理 について, 全 額 費 用 化 した 場 合 と 全 額 資 産 化 した 場 合 を 比 較 すると, 大 差 はないものの 全 額 資 産 化 した 場 合 の 方 が 説 明 力 は 高 かった これは, 市 場 はある 程 度 R&D 投 資 を 資 産 とみなしていることを 示 している 本 稿 の 結 果 は,R&D 投 資 について 現 行 会 計 は 全 額 費 用 化 を 採 用 しているものの, 市 場 は 部 分 的 には 資 産 とみなしており,ディスクローズ 制 度 と 市 場 の 間 には 矛 盾 があることを 示 唆 している 今 後 は, 分 析 期 間 を 拡 大 したうえで, 未 だ 解 決 されていないミスプライシ ングの 発 生 メカニズムや 解 釈 について 研 究 を 進 めるとともに, 企 業 の R&D 投 資 を 的 確 に ディスクローズする 会 計 制 度 のあり 方 について, 考 察 を 深 めて 行 きたい 注 1) RDC/TA は,R&D 投 資 ( 支 出 )を 資 産 化 した R&D キャピタルを 総 資 産 で 割 った 数 値 R&D キャピタルは, 後 述 (8) 式 で 算 出 する 2) R&D 投 資 の 価 値 効 果 を 示 すリスクファクター 算 出 方 法 の 詳 細 は,3. 分 析 方 法 とデ ータ で 後 述 する 3) R&D 投 資 は, 会 計 上 は 原 則 支 出 時 に 全 額 費 用 計 上 されるが,その 便 益 は 複 数 期 間 にわた って 持 続 する 性 質 をもつ そのため,R&D 投 資 を 機 械 的 に 全 額 費 用 計 上 した 場 合, 財 務 諸 表 は 企 業 実 態 を 的 確 に 表 示 できないことになる ここで,R&D 投 資 を 資 産 化 し,その 便 益 に 対 応 する 費 用 を 会 計 期 間 ごとに 償 却 した 場 合 の 利 益 と 全 額 費 用 化 した 場 合 の 報 告 利 益 の 表 示 差 異 を, 報 告 バイアスという 4) RD/TA は,R&D 投 資 を 総 資 産 で 割 った 数 値 筆 者 の 検 証 によれば, 日 本 市 場 において は Bens et al.[2004]が 採 用 した RDC/TA よりも 説 明 力 が 高 い 5) 事 前 の 期 待 リターン er は, 以 下 で 推 計 するリスクプレミアム 説 の 期 待 リターン fr とミス プライシング 説 の 期 待 リターン ir を 総 称 している 6) ファクターリターンは 本 稿 の 分 析 期 間 に 対 応 し,1983-2004 年 度 について 算 出 する サン プルは,SMB,HML については 延 べ24,471 社,RDHML は16,269 社 である 7) インプライドリターン ir は, 以 下 で 推 計 する R&D 投 資 を 全 額 費 用 化 した 費 用 化 インプ 248 東 海 大 学 紀 要 政 治 経 済 学 部

リスクプレミアムかミスプライシングか ライドリターン ir, 全 額 資 産 化 した 資 産 化 インプライドリターン ir を 総 称 している 8) オルソンモデルの 前 提 条 件 である 利 益 の 収 束 速 度 の 検 証 については, 久 田 [2006]を 参 照 ここでは,2004 年 6 月 末 時 点 で 東 証 1 部 に 上 場 する 企 業 を 対 象 に,1978 年 度 から2002 年 度 にわたり 分 析 を 行 い, 日 本 企 業 の 税 引 後 経 常 利 益 ROE は,13 年 後 に 定 常 水 準 である 6.5%に 収 束 する ことを 報 告 している 9) 推 計 方 法 の 詳 細 については, 久 田 [2006]を 参 照 参 考 文 献 1) 鄭 義 哲 [2005], R&D 企 業 の 株 式 パフォーマンス 異 常 リターンと R&D ファクター, 証 券 アナリストジャーナル 第 43 巻 第 10 号,98-108 2) 野 間 幹 晴 [2005], 研 究 開 発 投 資 に 対 する 株 式 市 場 の 評 価, 日 本 会 計 研 究 学 会 特 別 委 員 会 最 終 報 告 無 形 資 産 会 計 報 告 の 課 題 と 展 望,247-259 3) 久 田 祥 子 [2006], 無 形 資 産 が 資 本 コストに 与 える 影 響 について 成 長 企 業 の 資 本 コスト は 過 小 評 価 されている, 証 券 アナリストジャーナル 第 44 巻 第 4 号,71-85 4 ) Basu, S. [1977 ], Investment Performance of Common Stocks in Relation to their Price-Earnings Ratios, Journal of Finance 32, 663-682. 5) Bens, D.A., J. D. Hanna and X. F. Zhang[2004], Research and Development, Risk and Stock Returns, Working paper, Graduate School of Business, University of Chicago. 6) Chan, L., J. Lakonishok and T. Sougiannis[2001], The Stock Market Valuation of Research and Development Expenditures, The Journal of Finance 56(6),2431-56. 7 ) Daniel, K. and S. Titman [ 1997 ], Evidence on the characteristics of cross-sectional variation in stock returns, Journal of Finance 52,1-33. 8) Daniel, K. and S. Titman [2006], Market reaction to tangible and intangible returns, Journal of Finance 74,1605-1643. 9) Fama, E. and K. French[1993], Common risk factors in the returns on stocks and bonds, Journal of financial economics 33(1),3-56. 10 ) Fama, E. and K. R. French [ 1997 ], Industry costs of equity, Journal of Financial Economics 43,153-193. 11)Lakonishok, J., A. Shleifer, and R.W.Vishny[1994], Contrarian Investment, Extrapolation and Risk, Journal of Finance 49,1541-1578. 12)Lev,B. and T. Sougiannis[1996], The Capitalizalion, Amortization, and Value-relevance of R&D, The Journal of Accounting and Economics 21(1),107-38. 13 )Lev, B. and T. Sougiannis [ 2005 ], R&D Reporting Biases and Their Consequences, Contemporary Accounting Research 22(4),997-1026. 第 44 号 (2012) 249