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EU 競 争 法 に お け る 競 争 制 限 の 解 釈 同 志 社 大 学 法 学 部 嘱 託 講 師 鞠 山 尚 子 要 旨 EU 競 争 法 1 0 1 条 は, 競 争 制 限 行 為 に つ い て 1 項 と 3 項 と い う 二 段 階 で 評 価 す る 構 成 と な っ て い る た め, 正 当 化 理 由 と な り 得 る 事 実 効 果 を 持 つ 行 為 を 評 価 す る 際, 各 項 に お い て, 何 を ど の よ う に 考 慮 す べ き か, 混 乱 し て 理 解 さ れ る こ と が あ っ た そ こ で 本 稿 は, 1 項 に い う 競 争 制 限 の 解 釈 分 析 を 示 す こ と で, こ の 混 乱 を 整 理 す る こ と を 目 的 と し た 1 0 1 条 1 項 に おいて, あ る 行 為 が 競 争 を 制 限 す る か ど う か は, 以 下 の よ う に 分 析 さ れ る そ の 行 為 は, 当 該 行 為 の 存 在 す る 市 場 の 文 脈 に 照 ら し て, また, 当 該 行 為 が な か っ た 場 合 と 比 較 し て, 分 析 さ れ な け れ ば な ら な い ま た, 正 当 な 目 的 に 必 要 と さ れ る 競 争 制 限 行 為 は, そ の 目 的 に 直 接 関 連 し 必 要 で, そ れ に 釣 り 合 っ た も の で あ る 限 り 1 項 の 競 争 制 限 に は 該 当 し な い と さ れ る 競 争 制 限 の 解 釈 に つ い て は, 競 争 制 限 効 果 と 競 争 促 進 効 果 の 比 較 衡 量 が 1 項 の 競 争 制 限 の 分 析 で 行 わ れ る べ き か に つ い て 長 ら く 争 い が あ っ た し か し, こ の 比 較 衡 量 は, 3 項 の 分 析 で 行 わ れ る こ と が 裁 判 所 や 委 員 会 に よ っ て 明 ら か に さ れ て い る 本 稿 で は, 1 項 で 比 較 衡 量 を 採 用 し た と 指 摘 さ れ た 判 決 は, 1 項 で 比 較 衡 量 を 行 っ た も の で は な く, 上 述 の 分 析 に 従 ったも の で あ る こ と を 示 す 本 稿 における 誤 謬 は 言 うまでもなくすべて 筆 者 の 責 めに 帰 すものである

E U 競 争 法 に お け る 競 争 制 限 の 解 釈 同 志 社 大 学 法 学 部 嘱 託 講 師 鞠 山 尚 子 第 一 章 は じ め に 欧 州 連 合 機 能 条 約 ( Treaty on Functioning European Union 以 下 E U 条 約 と い う )の 1 0 1 条 ( 2 0 0 9 年 1 2 月 よ り, 以 前 の E C 条 約 8 1 条 は E U 条 約 1 0 1 条 に 名 称 が 変 更 さ れ た し か し, 内 容 の 変 更 は な い 以 下 で は, 以 前 の 8 1 条, さ ら に そ れ 以 前 は 8 5 条 と 呼 ば れ て い た も の を す べ て 1 0 1 条 という )は, 複 数 事 業 者 に よ る 競 争 制 限 行 為 を 禁 じ る 規 定 で あ る EU 条 約 1 0 1 条 は 以 下 の よ う に 規 定 す る 1 項 は, 加 盟 国 間 取 引 に 影 響 を 与 え, 共 同 体 市 場 に お け る 競 争 を 妨 害, 制 限, 歪 曲 す る ( 以 下 競 争 を 妨 害, 制 限, 歪 曲 す る を 合 わ せ て, 競 争 を 制 限 す る あ る い は 競 争 制 限 と い う ) 目 的 あ る い は 効 果 を 持 つ 事 業 者 間 の 協 定, 事 業 者 団 体 の 決 定, 協 調 行 為 ( 以 下 で は, 協 定, 事 業 者 団 体 の 決 定, 協 調 行 為 を ま と め て, 協 定 と い う ) を 禁 じ る 2 項 は, 1 項 の 禁 止 に 該 当 す る 行 為 を 自 動 的 に 無 効 と す る 3 項 は, 一 定 の 要 件 を 充 た す も の に つ い て,1 項 の 適 用 を 免 除 す る す な わ ち, 1 0 1 条 は, 1 項 で 競 争 を 制 限 す る 行 為 を 禁 止 す る 一 方, 3 項 で そ の よ う な 競 争 制 限 行 為 で あ っ て も, 一 定 の 要 件 を 充 た せ ば 1 項 の 適 用 を 免 除 す る と す る 2 段 階 構 成 と な っ て い る 1 0 1 条 の 規 制 対 象 と 同 じ 行 為 を 規 制 す る も の と し て, 米 国 の シ ャ ー マ ン 法 1 条 や 日 本 の 独 占 禁 止 法 3 条 後 段 ( 日 本 法 に つ い て は 運 用 上 垂 直 的 制 限 の 規 制 が 行 わ れ て い な い と い う 実 態 が あ る の で 1 0 1 条 よ り も 適 用 範 囲 が 狭 い こ と に 留 意 す る 必 要 が あ る ) が あ る が,こ れ ら は,1 0 1 条 と は 異 な る 条 文 構 成 と な っ て い る シ ャ ー マ ン 法 1 条 や 独 占 禁 止 法 3 条 後 段 の 適 用 に は, 1 0 1 条 3 項 の よ う な 規 定 は 存 在 し な い 特 定 行 為 が 違 反 と 扱 わ れ な い こ と を 示 す 規 定 ( 適 用 除 外 規 定 ) が 別 に 存 在 す る も の の, そ の 扱 い は 限 定 的 で あ り, 常 に 例 外 を 考 慮 し な け れ ば な ら な い 1 0 1 条 3 項 の よ う な 規 定 は な い こ の 点 で, 1 0 1 条 は, わ が 国 や 米 国 の 法 律 と は 明 ら か に 規 定 の 構 成 が 異 な っ て い る 本 稿 は, E U 条 約 1 0 1 条 1 項 に 言 う 競 争 制 限 の 解 釈 に つ い て 論 じ 1

る EU 条 約 1 0 1 条 1 項 の 競 争 制 限 の 解 釈 に は 議 論 が あ り, 1 0 1 条 にい う 競 争 制 限 が ど う い う こ と か を 明 ら か に す る こ と が EU 競 争 法 上 も っ と も 難 し い 問 題 の 一 つ と も 言 わ れ る 1 競 争 法 違 反 と な る 場 合 の 反 競 争 効 果 を ど の よ う に 分 析 し, そ の よ う な 効 果 を 持 つ 行 為 を 禁 じ る 規 定 を ど の よ う に 解 釈 す る か は, ど の 国 に お い て も 共 通 の 課 題 で あ る た だ し, 前 述 の よ う に 1 0 1 条 が 独 特 の 規 定 構 造 を 持 つ こ と か ら 生 じ る, E U 競 争 法 に 独 自 の 課 題 も あ る 1 0 1 条 の 競 争 制 限 の 解 釈 が 困 難 に な る の は, 以 下 の 理 由 に よ る EU 競 争 法 に 限 ら ず 他 の 競 争 法 領 域 に も 共 通 す る 理 由 と し て, 反 競 争 効 果 をも つ 行 為 が, 同 時 に, 何 ら か の プ ラ ス 効 果 や 競 争 促 進 効 果 も 持 ち 得 る ため, 相 反 す る あ る い は 様 々 な 効 果 を 持 つ 行 為 を ど の よ う に 評 価 す る か が 問 題 と な る か ら で あ る 例 えば, 複 数 の ラ イ バ ル メ ー カ ー が 共 同 研 究 開 発 を す る 場 合 に は, 競 争 者 同 士 が, 研 究 開 発 競 争 を や め て し ま う と い う 意 味 で 反 競 争 効 果 が あ る し か し, そ の 共 同 研 究 開 発 が 下 位 メ ー カ ー 同 士 のも の で あ る な ら ば, 上 位 の 競 争 メ ー カ ー へ の 有 効 な 牽 制 力 と な り, むしろ, 当 該 市 場 の 競 争 を 活 発 に す る か も し れ な い 一 方, 主 要 な 競 争 者 す べ て が 参 加 す る 共 同 研 究 開 発 な ら ば, 当 該 市 場 で の 競 争 は, ほ と ん ど 期 待 で き な く な る か も し れ な い が, そ れ に よ っ て こ れ ま で に な い 環 境 保 護 技 術 が 開 発 さ れ る な ど 社 会 全 体 に と っ て の プ ラ ス 効 果 が も た ら さ れ る か も し れ な い こ の よ う に 反 競 争 効 果 を 持 つ 行 為 が, 同 時 に, プ ラ ス 効 果 も, 持 ち 得 る そ れ ゆ え, 反 競 争 効 果 を 持 つ か ら と い っ て す べ て の 行 為 を 一 律 に 禁 止 す る の は 不 合 理 で あ る し た が っ て, こ の よ う な 場 合 に, 行 為 の 持 つ プ ラ ス 効 果 と マ イ ナ ス 効 果 を ど の よ う に 評 価 す る か が 問 題 と な る こ の 問 題 は, 米 国 法 に お い て は, 当 然 違 法 原 則 と 合 理 の 原 則 の 適 用, 日 本 法 に お い て は 公 共 の 利 益 要 件 の 解 釈 や 正 当 化 事 由 の 解 釈 の 中 で 処 理 さ れ る そ の 際 に, 反 競 争 効 果 の 分 析 認 定, 競 争 促 進 効 果 の 分 析 認 定, 競 争 以 外 の 社 会 的 正 当 化 要 因 の 分 析 認 定, 事 業 上 の 正 当 化 事 由 の 分 析 認 定 等 と い う 作 業 が 考 え ら れ, ど の よ う な 行 為 に つ い て ど の よ う な 分 析 認 定 が 許 容 さ れ, ど の 要 件 の 問 題 と し て 検 討 を 行 う の か, と い う よ う な こ と が 争 わ れ る こ と に な る 一 方, E U 競 争 法 で は, さ ら に, こ れ ら の 作 業 を 1 0 1 条 の 1 項 と 3 項 1 J O N E S = S U R F I N, E C C O M P E T I T I O N L AW a t 1 4 9. 2

と い う 二 つの 規 定 間 で 割 り 振 ら な け れ ば な ら な い こ と か ら, プ ラ ス 効 果 と マ イ ナ ス 効 果 を い か に 評 価 す る の か と い う 問 題 に 加 え て, こ れ ら の 効 果 を 1 0 1 条 1 項 と 3 項 と い う 枠 組 み で ど の よ う に 振 り 分 け て, 評 価 す べ き か が 問 題 と な る こ の よ う な 割 り 振 り 作 業 は, 包 括 的 規 定 を も つ 日 米 に は な い E U 競 争 法 に 特 有 の も の で あ り, 1 0 1 条 の 1 項 と 3 項 と の 間 に 混 乱 を 生 じ さ せ, E U 条 約 1 0 1 条 1 項 の 解 釈 を 難 し い も の と し て い る す な わ ち, 1 項 と 3 項 の 間 で こ れ ら 作 業 を ど の よ う に 割 り 振 る の か, そ も そ も そ れ ぞ れ の 規 定 の 趣 旨 や 文 言 は, こ れ ら の 作 業 を 許 容 し て い る の か と い う よ う な 議 論 が 行 わ れ る また, 初 期 の EU 競 争 法 に 特 有 の 競 争 制 限 の 解 釈 も, 1 0 1 条 1 項 と 3 項 の 役 割 分 担 の 議 論 に お け る 混 乱 の 一 因 と な っ て き た 1 0 1 条 1 項 の 競 争 制 限 と は 何 を 指 す の か に つ い て, 初 期 の 1 0 1 条 の 解 釈 運 用 で は, 現 在 の 米 国 法 や 日 本 法 の 姿 勢 ( あ る い は 現 時 点 で の EU 競 争 法 の 解 釈 運 用 姿 勢 と い っ て よ い か も し れ な い )か ら み る と 極 め て 特 異 と 評 価 し て よ い と 思 わ れ る 解 釈 が 採 用 さ れ て い た こ れ も ま た, 1 項 の 競 争 制 限 の 解 釈 で 評 価 さ れ る べ き 内 容 と 3 項 の 適 用 除 外 の 文 脈 で 評 価 さ れ る べ き 内 容 が 混 乱 し て 理 解 さ れ る 原 因 の 一 つと な っ た 本 稿 で は, E U 条 約 1 0 1 条 1 項 に い う 競 争 を 制 限 す る の 解 釈 に つ い て 以 下 の 観 点 か ら 検 討 す る 第 一 に, 1 0 1 条 1 項 の 競 争 制 限 の 解 釈 に お い て, 競 争 促 進 効 果 と 競 争 制 限 効 果 と の 比 較 衡 量 を 採 用 す べ き と 主 張 さ れ て き た 一 方 で, 裁 判 所 は こ の 主 張 を 否 定 し て き た 両 者 の 見 解 の 相 違 は い か に 整 理 さ れ る の か で あ る 第 二 に, E U 競 争 法 で は, わ が 国 や 米 国 と は 異 な り, 競 争 制 限 行 為 が, 1 0 1 条 1 項 と 3 項 の 2 段 階 で 評 価 さ れ る と こ ろ か ら, 行 為 評 価 に お け る 両 項 の 線 引 き は ど こ に あ る の か 第 三 に, 1 項 に お け る 競 争 制 限 の 評 価 に つ い て 欧 州 委 員 会 や 裁 判 所 が 示 し て き た 基 準 と は 具 体 的 に ど う い う も の な の か で あ る 本 稿 は こ れ ら 問 題 意 識 に 従 い, 以 下 の と お り 構 成 す る まず, 第 二 章 で, 競 争 制 限 目 的 を 持 つ 行 為 の 評 価 を 述 べ る 1 0 1 条 1 項 は 競 争 制 限 目 的 あ る い は 効 果 を 持 つ 行 為 を 禁 じ て い る 競 争 制 限 目 的 を 持 つ 行 為 と は い か な る 行 為 か を 論 じ る 第 三 章 で は, E U 競 争 法 の 伝 統 的 解 釈 を 見 る ド イ ツ オ ル ド ー 学 派 の 3

影 響 を 受 け た E U 競 争 法 に お い て は, ほ と ん ど す べ て の 行 為 が 1 0 1 条 1 項 の 禁 止 に 該 当 す る と さ れ て い た こ の よ う な 解 釈 が, 1 0 1 条 1 項 の 競 争 制 限 の 評 価 に お い て, 後 述 す る 合 理 の 原 則 を 採 用 す べ き と い う 主 張 の 引 き 金 と な っ た し か し, 現 在 に お い て は, こ の よ う な 伝 統 的 解 釈 は と ら れ て い な い と い う こ と を 述 べ る 第 四 章 に お い て は, 1 0 1 条 1 項 の 競 争 制 限 効 果 に つ い て の 裁 判 所 と 委 員 会 が 行 っ て き た 解 釈 分 析 ア プ ロ ー チ を 紹 介 す る と と も に, 合 理 の 原 則 に つ い て の 議 論 を 整 理 す る 第 三 章 で 述 べ た 伝 統 的 解 釈 へ の 批 判 か ら, 1 0 1 条 1 項 の 競 争 制 限 の 解 釈 に お い て 合 理 の 原 則 を 採 用 す べ き こ と が 主 張 さ れ た し か し, 伝 統 的 解 釈 は 否 定 さ れ た も の の, 合 理 の 原 則 は 採 用 さ れ な か っ た 合 理 の 原 則 を 採 用 し た と 言 わ れ た 判 決 も, 結 局 の と こ ろ, 四 章 で 示 す 解 釈 ア プ ロ ー チ の ど れ か に あ て は ま る も の で あ り, 1 項 の 競 争 制 限 の 評 価 は, こ れ ら の 解 釈 ア プ ロ ー チ に 従 っ て 行 わ れ て き た こ と を 示 す 第 五 章 で は, 1 0 1 条 1 項 と 3 項 と の 線 引 き が, い か に 行 わ れ る か べ き か 1 0 1 条 の 文 言 と ガ イ ド ラ イ ン, 立 証 責 任 の 観 点 か ら 分 析 す る そ こ で の 分 析 は, こ れ ま で の 裁 判 所 判 決 や 委 員 会 決 定 な ど と 整 合 的 で あ る 第 二 章 競 争 制 限 目 的 を 持 つ 行 為 EU 条 約 1 0 1 条 1 項 は, 競 争 制 限 目 的 あ る い は 効 果 を 持 つ 協 定 な ど を 禁 じ る と し て い る す な わ ち, 競 争 を 制 限 す る 目 的 あ る い は 効 果 の い ず れ か を 持 てば1 0 1 条 1 項 の 禁 止 に 該 当 す る 2 あ る 行 為 が,1 0 1 条 1 項 に 違 反 す る か が 評 価 さ れ る 場 合, 順 序 と し て, まず, そ の 目 的 が 評 価 さ れ る 行 為 が 競 争 制 限 目 的 を 持 た な い, あ る い は 持 つ こ と が 明 ら か で な い と さ れ た 場 合 に, 当 該 行 為 の 効 果 が 評 価 さ れ る 競 争 制 限 目 的 を 持 つ と さ れ る 行 為 に つ い て は,そ の 効 果 を 評 価 す る 必 要 は な い す な わ ち, 競 争 制 限 目 的 を 持 つ と さ れ た 行 為 は, そ の 効 果 を 評 価 す る こ と な く 1 0 1 条 1 項 に 違 反 す る と い う こ と が で き る では, ど の よ う な 行 為 が 競 争 制 限 目 的 を 持 つ と さ れ る の か ここで 2 C a s e 5 6 / 6 5, S o c i é t é Te c h n i q u e M i n i è r e v M a s c h i n e n b a u U l m [ 1 9 6 6 ] E C R 2 3 5, 2 4 9 ; [ 1 9 6 6 ] C M L R 3 5 7, 3 7 5. 4

い う 競 争 制 限 目 的 を 持 つ か ど う か は, 当 事 者 の 主 観 的 意 図 3で な く, 協 定 の 内 容 と 客 観 的 目 的 に 基 づ い て 評 価 さ れ る 4 競 争 制 限 目 的 を 持 つ と さ れ る の は, 本 質 的 に 競 争 を 制 限 す る 可 能 性 の あ る 行 為 で あ り, 例 えば, 価 格 協 調, 市 場 分 割, 産 出 制 限 な ど で あ る 5 委 員 会 は,こ れ ら の 行 為 が 資 源 配 分 の 効 率 性 を 阻 害 し, 消 費 者 厚 生 の 減 尐 を 招 く と し 6,そ れ 自 体 と し て, 競 争 制 限 目 的 を 持 つ と す る 7 ま た, 各 種 ガ イ ド ラ イ ン や 告 示, 適 用 除 外 規 則 な ど 8 で, ハ ー ド コ ア 制 限 も し く は 黒 条 項 と し て 列 挙 さ れ る 行 為 も, 原 則 と し て 競 争 制 限 目 的 を 持 つ と 考 え ら れ る 9 こ の よ う な 行 為 が 競 争 制 限 効 果 を 評 価 す る こ と な く, 1 0 1 条 1 項 違 反 と さ れ る こ と か ら, 米 国 反 ト ラ ス ト 法 で 言 う と こ ろ の 当 然 違 法 と 同 じ よ う に 思 わ れ る こ と が あ る し か し, こ れ は, 米 国 反 ト ラ ス ト 法 に い う 当 然 違 法 とは 異 なる 10 米 国 反 トラスト 法 では, 一 定 の 行 為 類 型 に 該 当 すれば, そ の 効 果 を 考 慮 す る こ と な く, また, 事 業 上 の 効 率 性 に つ い て の 抗 弁 も 認 め ら れ る こ と な く, 違 法 と な る 一 方,E U 競 争 法 で は, 競 争 制 限 目 的 3 こ こ で い う 当 事 者 の 主 観, す な わ ち, 当 事 者 が 競 争 制 限 的 目 的 を 持 っ て 行 為 を 行 っ た か 否 かについて, 委 員 会 ( E u r o p e a n C o m m i s s i o n, C O M M U N I C AT I O N F R O M T H E C O M M I S S I O N N o t i c e G u i d e l i n e s o n t h e a p p l i c a t i o n o f A r t i c l e 8 1 ( 3 ) o f t h e Tr e a t y ( 2 0 0 4 / C 1 0 1 / 0 8 ), O J C 1 0 1 / 9 7( 以 下,G u i d e l i n e s o n A r t i c l e 8 1 ( 3 ) と い う ), p a r a 2 2 )も 司 法 裁 判 所 ( J o i n e d C a s e s C - 5 0 1 / 0 6 P, C - 5 1 3 / 0 6 P a n d C - 5 1 9 / 0 6 P G l a x o S m i t h K l i n e S e r v i c e s v C o m m i s s i o n, p a r a 5 8 ) も, そ れ は 競 争 制 限 目 的 を 考 え る 上 で の 必 須 の 考 慮 要 素 で は な い と し て い る し か し, もち ろん, 当 事 者 が 反 競 争 目 的 を も っ て ( す な わ ち, 競 争 を 制 限 す る 意 図 で ) 行 っ た こ と は, 考 慮 要 素 の 一 つ で あ る し ( G u i d e l i n e s o n A r t i c l e 8 1 ( 3 ) p a r a 2 2 ), そ の よ う な 意 図 が あ れ ば, 競 争 を 制 限 す る 可 能 性 が 高 い と も 考 え ら れ る ( O D U D U, T H E B O U N D A R I E S O F E C C O M P E T I T I O N L AW T H E S C O P E O F A R T I C L E 8 1 a t 1 2 0-1 2 3 ) 4 G u i d e l i n e s o n A r t i c l e 8 1 ( 3 ) p a r a 2 2 ; C a s e 2 9 & 3 0 / 8 3 C R A M & R h e i n z i n k v. C o m m i s s i o n [ 1 9 8 4 ] E C R 1 6 7 9, [ 1 9 8 5 ] 1 C M L R 6 8 8, p a r a s 2 5-26) 目 的 の 評 価 に お い て も, 協 定 が 適 用 さ れ る 状 況 と 市 場 に お け る 当 事 者 の 実 際 の 行 為 が 考 慮 さ れ る ( G u i d e l i n e s o n A r t i c l e 8 1 ( 3 ) p a r a 2 2 ) 5 G u i d e l i n e s o n A r t i c l e 8 1 ( 3 ), p a r a 2 1. 6 I b i d. 7 I b i d. 8 C o m m i s s i o n R e g u l a t i o n 4 6 1 / 2 0 1 0 o n t h e a p p l i c a t i o n o f A r t i c l e 1 0 1 ( 3 ) o f t h e Tr e a t y o n t h e F u n c t i o n i n g o f t h e E u r o p e a n U n i o n t o c a t e g o r i e s o f v e r t i c a l a g r e e m e n t s a n d c o n c e r te d p r a c t i c e s i n t h e m o t o r v e h i c l e s e c t o r O J L 1 2 9, 2 8. 5. 2 0 1 0, p. 5 2 A r t i c l e 5 ; C o m m i s s i o n R e g u l a t i o n N o / o f 14 D e c e m b e r 2 0 1 0 o n t h e a p p l i c a t i o n o f A r t i c l e 1 0 1 ( 3 ) o f t h e Tr e a t y o n t h e F u n c t i o n i n g o f t h e E u r o p e a n U n i o n t o c a t e g o r i e s o f r e s e a r c h a n d d e v e l o p m e n t a g r e e m e n t s, A r t i c l e 5 ; C o m m i s s i o n R e g u l a t i o n N o / o f 1 4 D e c e m b e r 2 0 1 0 o n t h e a p p l i c a t i o n o f A r t i c l e 101 ( 3 ) o f t h e Tr e a t y o n t h e F u n c t i o n i n g o f t h e E u r o p e a n U n i o n t o c a t e g o r i e s o f s p e c i a l i s a t i o n a g r e e m e n t s, A r t i c l e 4 ; C o m m i s s i o n R e g u l a t i o n 3 3 0 / 2 0 1 0 o f 2 0 A p r i l 2 0 1 0 o n t h e a p p l i c a t i o n o f A r t i c l e 1 0 1 ( 3 ) o f t h e Tr e a t y o n t h e F u n c t i o n i n g o f t h e E u r o p e a n U n i o n t o c a t e g o r i e s o f v e r t i c a l a g r e e m e n t s a n d c o n c e r t e d p r a c t i c e s O J L 1 0 2, 2 3. 4. 2 0 1 0, p. 1 A r t i c l e 4 ; C o m m i s s i o n R e g u l a t i o n ( E C ) N o 7 2 2 / 2 0 0 4 o f 2 7 o f A p r i l 2 0 0 4 o n t h e a p p l i c a t i o n o f A r t i c l e 8 1 ( 3 ) o f t h e Tr e a t y t o c a t e g o r i e s o f t e c h n o l o g y t r a n s f e r a g r e e m e n t s O J L 1 2 3, 2 7. 4. 2 0 0 4, A r t i c l e 4 など 9 G u i d e l i n e s o n A r t i c l e 8 1 ( 3 ), p a r a 2 2. 10 W h i s h は, 米 国 の L e e g i n 判 決 (L e e g i n C r e a t i v e L e a t h e r P r o d u c t s I n c v P S K S I n c 5 5 1 U S 2 0 0 7 ) が 再 販 売 価 格 維 持 を 当 然 違 法 で は な く, 合 理 の 原 則 の 下 で 判 断 せ ね ば な ら な い と し た こ と を も っ て, む し ろ 米 国 の 基 準 が E U の 判 断 基 準 に 近 づ い た と す る ( W H I S H, C O M P E T I T I O N L AW 6 th. e d. 11 8 ) 5

を 持 つ と し て, そ の 効 果 を 評 価 す る こ と な く, 1 0 1 条 1 項 に 当 然 に 違 反 す る と さ れ た 行 為 で あ っ て も, 1 0 1 条 3 項 の 要 件 を 充 た せ ば, 禁 止 さ れ な い 競 争 制 限 目 的 を 持 つ か ら と い っ て, 1 0 1 条 3 項 の 適 用 除 外 を 受 け ら れ な い と ま で は い え な い の で, 必 ず し も 違 法 と は 言 え な い 委 員 会 の 8 1 条 3 項 の 適 用 に 関 す る ガ イ ド ラ イ ン ( 以 下 3 項 ガ イ ド ラ イ ン とい う )も, 事 前 の 基 準 と し て 3 項 の 要 件 を 満 た し 得 な い 種 類 の 協 定 は な い と 述 べ て い る 11 普 通 裁 判 所 ( リ ス ボ ン 条 約 に よ り Court of First Instan ce ( 第 一 審 裁 判 所 ) の 名 称 は General Court ( 普 通 裁 判 所 ) に 変 更 さ れ た 以 下 で は, Court of First Instance あ る い は General Court を さ す 場 合, 統 一 し て GCという )も 同 様 の 判 示 を し て お り,ど の よ う な 効 果 を 持 つ 協 定 で あ れ,1 0 1 条 3 項 の 適 用 除 外 の 要 件 を 充 た す の で あ れ ば, 生 来, 適 用 除 外 を 受 けられない 協 定 はないとする 12 さらに, 垂 直 的 制 限 ガ イ ド ラ イ ン で は, ハ ー ド コ ア 制 限 で あ っ て も, 例 外 的 に, 1 0 1 条 1 項 の 禁 止 に 該 当 しない 場 合 13(すなわち, ハ ー ド コ ア 制 限 で あ っ て も 1 0 1 条 1 項 に いう 競 争 制 限 目 的 及 び 効 果 を 持 た な い 場 合 が 例 外 的 に 存 在 す る ), 101 条 3 項 の 適 用 除 外 を 充 たし 得 る 場 合 が 具 体 的 に 例 示 さ れ る 14 ただ し, 基 本 的 に, 委 員 会 は, ハ ー ド コ ア 制 限 を 含 む よ う な 協 定 が 1 0 1 条 3 項 の 要 件 を 充 た す と は 考 え に く い と し て い る 15 こ れ を ま と め る と, 競 争 制 限 目 的 を 持 つ 行 為 は, 競 争 制 限 効 果 を 評 価 す る こ と な く, 1 0 1 条 1 項 に 違 反 す る た だ し, だ か ら と い っ て, 当 然 違 法 と は 言 え な い 1 0 1 条 3 項 の 要 件 を 充 た せ ば, 適 用 除 外 を 受 け る こ と 11 G u i d e l i n e s o n A r t i c l e 8 1 ( 3 ), p a r a 4 6. 12 M a t r a H a c h e t t e v C o m m i s s i o n, C a s e T- 1 7 / 9 3 [ 1 9 9 4 ] E C R Ⅱ - 5 9 5, p a r a 8 5. 13 ハ ー ド コ ア 制 限 で あ っ て も, 例 外 的 に 一 定 タ イ プ の 製 品 に 客 観 的 に 必 要 な 場 合 が あ る と さ れ,( E u r o p e a n C o m m i s s i o n, C O M M I S S I O N N O T I C E G u i d e l i n e s o n Ve r t i c a l R e s t r a i n t s, O J C 1 3 0, 1 9. 0 5. 2 0 1 0, p. 1, ( 以 下, G u i d e l i n e s o n Ve r t i c a l R e s t r a i n t s という) p a r a 6 0 ), 具 体 的 には, メ ー カ ー が 新 規 市 場 に 参 入 す る 場 合 の 2 年 以 内 の 絶 対 的 地 域 制 限, 新 製 品 の テ ス ト 販 売 に お け る 絶 対 的 地 域 制 限 な ど が 例 示 さ れ る ( I d., po i n t 6 1, 6 2 ) こ の 2 0 1 0 年 6 月 1 日 より 発 効 し た 新 し い 垂 直 的 制 限 ガ イ ド ラ イ ン 規 則 の 特 徴 と し て は, オ ン ラ イ ン に よ る 再 販 売 制 限 に つ い て 規 定 し た こ と と, 垂 直 的 協 定 の セ ー フ ハ ー バ ー 基 準 に 買 い 手 の 市 場 シ ェ ア に つ い て の 基 準 を 導 入 し た こ と が あ る ( M a g d a l e n a B r e n n i n - L o u k o, A n d r e i G u r i n, L u c P e e p e r k o r n a n d K t a j a V i e r t i o, Ve r t i c a l a g r e e m e n t s : n e w c o m p e t i t i o n r u l e s f o r t h e n e x t d e c a d e, C o m p e t i t i o n P o l i c y N e w s l e t t e r 2 0 1 0-2, p. 8 ) 14 G u i d e l i n e s o n Ve r t i c a l R e s t r a i n t s, p a r a s 6 2 ~ 6 4. 具 体 的 には, 再 販 売 価 格 維 持 行 為 で あ って も, 新 規 参 入 メ ー カ ー が 販 売 業 者 に 自 社 製 品 の 販 売 促 進 を さ せ る た め の も の, フ ラ ン チ ャイ ズ な ど で の 統 一 的 な 販 売 方 法 の た め の も の, 複 雑 な 製 品 の 販 売 前 サ ー ビ ス に 対 す る フ リ ー ラ イ ド を 避 け る た め の も の が 示 さ れ る こ こ か ら い え る の は, E U 競 争 法 に お い て ハ ー ド コ ア 制 限 と は, 米 国 法 で 言 わ れ る 当 然 違 法 原 則 の よ う な, 行 為 類 型 と し て 当 然 に 違 法 な 行 為 と い う よ り む し ろ, 特 に 悪 質 な 行 為 で, 競 争 制 限 目 的 を 持 つ と し て そ の 効 果 を 評 価 す る こ と な く 違 法 で あ る と 原 則 的 に 考 え ら れ る 行 為 で は あ る が, 例 外 的 に は 適 法 に な る 場 合 も 認 め ら れ る 行 為 と 考 え ら れ て い る よ う に 思 わ れ る 15 G u i d e l i n e s o n A r t i c l e 8 1 ( 3 ) p a r a 4 6 ; G u i d e l i n e s o n Ve r t i c a l R e s t r a i n t s p a r a 4 7. 6

も 可 能 だ か ら で あ る だ が, こ の よ う な 行 為 が 適 用 除 外 の 要 件 を 充 た す 場 合 は 限 定 さ れ た 場 合 な の で, 違 法 と な る 可 能 性 が 高 い 一 方, 競 争 制 限 目 的 を 持 つ こ と が 明 ら か で な い 行 為 は, そ の 効 果 が 評 価 さ れ る こ と に な る 第 三 章 伝 統 的 解 釈 前 述 の 競 争 制 限 目 的 を 持 つ と さ れ る 行 為 以 外 の 行 為 は, ど の よ う に 競 争 制 限 効 果 を 評 価 さ れ る の で あ ろ う か 初 期 の E U 競 争 法 の 解 釈 で は, ほ と ん ど す べ て の 協 定 を 1 0 1 条 1 項 に い う 競 争 制 限 に 該 当 す る と し, 実 際 の 協 定 の 効 果 の 評 価 は 1 0 1 条 3 項 で 行 っていた 16 これは, EU 競 争 法 がドイツのオルドー 学 派 の 流 れをくん で い る こ と に 由 来 す る オ ル ド ー 学 派 で は, 事 業 者 の 経 済 的 自 由 の 制 限 を 競 争 制 限 であると 考 える 17 ど ん な 契 約 で あ れ, 契 約 はある 程 度, 当 事 者 の 行 為, 経 済 的 自 由 を 制 限 す る し た が っ て, オ ル ド ー 学 派 の 影 響 を 受 け た EU 競 争 法 の 伝 統 的 考 え 方 に 従 え ば, ほ と ん ど の 契 約 が 競 争 制 限 に 該 当 す る こ と に な る し か し, こ の よ う な 伝 統 的 な 解 釈 に 対 し て は, 多 く の 批 判 が 寄 せ ら れ た 18 なぜなら, この 解 釈 によれば, 競 争 に ほ と ん ど あ る い は 全 く 悪 影 響 を 及 ぼさない 協 定 まで 広 く101 条 1 項 の 禁 止 に 該 当 することになる 19 から で あ る こ の た め, 現 在 で は, こ の よ う な 伝 統 的 解 釈 を 取 り 続 け る べ き と 16 M O N T I, E C C O M P E T I T I O N L AW a t 2 7 ( 2 0 0 7 ) f o o t n o te 2 5 の 文 献 参 照 17 裁 判 所 に よ る EU 条 約 1 0 1 条 1 項 解 釈 の 根 底 に も, 同 様 に, 各 経 済 主 体 が 独 立 し て そ の 政 策 を 決 定 し な け れ ば な ら な い こ と が あ っ た と 委 員 会 は ガ イ ド ラ イ ン で 述 べ て い る ( G u i d e l i n e s o n A r t i c l e 8 1 ( 3 ) p a r a 1 4 ) 18 こ の よ う な 批 判 が 多 く 寄 せ ら れ た 理 由 の ひ と つ と し て, 以 前 の 手 続 き 規 則 の 難 点 が あ っ た 以 前 の 規 則 に よ れ ば, 協 定 が1 0 1 条 1 項 に 該 当 す る か, 1 0 1 条 3 項 の 適 用 除 外 を 受 け る かが, 現 在 よ り 企 業 に と っ て 重 大 な 関 心 事 と な っ て い た と い う の も, 以 前 の 規 則 で は, 委 員 会 のみが1 0 1 条 3 項 の 適 用 除 外 を 与 え る 権 限 を 持 っ て い た か ら で あ る 委 員 会 は, 101 条 3 項 の 個 別 適 用 除 外 は め っ た に 出 さ ず, た い て い は, 簡 易 な コ ン フ ォ ー ト レ タ ー で す ま し て い た し か し, コ ン フ ォ ー ト レ タ ー は, 国 内 裁 判 所 や 国 内 当 局 を 拘 束 し な い た め 法 的 確 実 性 に 欠 け る も の で あ っ た ま た, 適 用 除 外 を 得 る た め の 手 続 き は 煩 雑 で 費 用 と 時 間 が か か る も の で あ っ た こ の た め, い っ た ん, 協 定 が1 0 1 条 1 項 に 該 当 す る と な る と, 協 定 締 結 事 業 者 に と っ て は 大 き な 負 担 が か か る こ と に な っ て い た し か し, こ の 手 続 規 則 に 由 来 す る 難 点 に つ い て は 新 手 続 き 規 則 2 0 0 3 年 1 号 の 制 定 に よ り 解 消 さ れ た た だ し, 現 在 で も, 1 0 1 条 1 項 の 解 釈 は 大 き な 関 心 事 で あ る な ぜ な ら, 1 0 1 条 1 項 の 立 証 責 任 は, 違 反 を 主 張 す る も の ( 多 く は 委 員 会 ) に あ り, 3 項 の 立 証 責 任 は, 適 法 を 主 張 す る も の ( 協 定 締 結 事 業 者 ) に あ る か ら で あ る そ れ ぞ れ の 立 証 責 任 の 範 囲 を 明 ら か に す る と い う 意 味 で, 1 0 1 条 1 項 の 解 釈 は 重 要 な 意 味 を 持 つ 19 C o m m i s s i o n G r e e n P a p e r o n Ve r t i c a l R e s t r a i n t s i n E C C o m p e t i t i o n P o l i c y C O M ( 9 6 ) 7 2 1 F i n a l [ 1 9 9 7 ] 4 C M L R 5 1 9, e x e c u t i v e s u m m a r y p a r a 3 7. 7

いう 考 え 方 は, あまり 見 られない 20 裁 判 所 に お い て も こ の よ う な 考 え 方 は 明 確 に 否 定 さ れ て い る 欧 州 司 法 裁 判 所 ( 以 下 ECJ と い う )は, Wouters 事 件 で, 協 定 の 当 事 者, あ る い は 当 事 者 の う ち の 一 人 の 行 為 の 自 由 を 制 限 す る す べ て の 事 業 者 間 の 協 定, 事 業 者 団 体 に よ る 決 定 が 1 0 1 条 1 項 の 禁 止 に 該 当 す る わ け で は な い 21 と し て い る 裁 判 所, 委 員 会, 多 く の 学 説 が 述 べ る よ う に, 現 在 で は, 1 0 1 条 に い う 競 争 制 限 と 行 為 制 限 が 同 義 で あ る と い う こ と は で き な い で あ ろ う こ の よ う に 伝 統 的 解 釈 が 否 定 さ れ た こ と か ら, ほ と ん ど す べ て の 行 為 が 1 0 1 条 1 項 に い う 競 争 制 限 に 該 当 す る と さ れ な い こ と は 明 ら か で あ る では, ど の よ う な 場 合 に 1 0 1 条 に い う 競 争 制 限 効 果 を 持 つ と い え る の か 以 下 で は, そ れ を 見 て い く 第 四 章 競 争 制 限 効 果 の 分 析 第 一 節 競 争 制 限 効 果 分 析 の ア プ ロ ー チ 前 章 で 述 べ た よ う に, 現 在 で は, 1 項 に い う 競 争 制 限 が 行 為 制 限 で あ る とは, と ら え ら れ て い な い む し ろ, 1 項 の 競 争 制 限 は, 市 場 に お け る 競 争 要 因 に 認 知 可 能 な マ イ ナ ス 効 果 を 与 え る 場 合, あ る い は, 市 場 支 配 力 を 形 成 維 持 強 化 す る 場 合 に 生 じ る と 考 え ら れ て い る 22 前 章 の 伝 統 的 解 釈 に 対 し て は 多 く の 批 判 が あ っ た す な わ ち, ほ と ん ど す べ て の 協 定 が 1 項 の 競 争 制 限 効 果 を 持 つ と す る べ き で は な く, 競 争 を 実 質 的 に 制 限 す る 場 合 に の み 1 項 に 該 当 す る と す べ き で あ る と 主 張 さ れ た そ の よ う な 主 張 の 中 で, 1 項 に お け る 競 争 促 進 効 果 と 競 争 制 限 効 果 の 比 較 衡 量 ( い わ ゆ る 合 理 の 原 則 ) の 採 用 が 提 案 さ れ た そ の 採 用 を 主 張 す る 論 者 ら は, 複 数 の 判 決 を 示 し, そ れ ら 判 決 が 1 項 の 競 争 制 限 効 果 認 定 の 際 に 比 較 衡 量 を 採 用 し て い る と 主 張 し た し か し, 後 述 の よ う に 現 在 では, 1 項 に お け る 合 理 の 原 則 は 明 確 に 否 定 さ れ, 反 競 争 効 果 と 競 争 促 進 効 果 の 比 較 衡 量 は 1 0 1 条 3 項 で 行 わ れ る こ と が 示 さ れ て い る 一 部 論 者 が, 1 項 で 合 理 の 原 則 を 採 用 し た と 紹 介 し た 判 決 も, 次 の 1 か ら 4 の い ず 20 ただし, 現 在 で も, 伝 統 的 解 釈 に こ だ わ り 続 け よ う と す る 見 解 も, 中 に は 見 受 け ら れ る ( M O N T I, E C C O M P E T I T I O N L A W a t 3 0-31) 21 C - 3 0 9 / 9 9, Wo u t e r s, S a v e l b e r g h a n d P r i c e Wa t e r h o u s e v A l g e m e n e R a a d v a n d e N e de r l a n d s e O r d e v a n A d o v o c a t e n [ 2 0 0 2 ] E C R Ⅰ - 1 5 7 7, [ 2 0 0 2 ] 4 C M L R 9 1 3, [ 2 0 0 2 ] C E C p a r a 9 7. 22 G u i d e l i n e s o n A r t i c l e 8 1 ( 3 ) p a r a s 1 6, 2 5. 8

れ か の 分 析 に あ て は ま る と い え る も の で あ っ た 1 0 1 条 1 項 の 競 争 制 限 効 果 を い か に 評 価 す る か は, 委 員 会 決 定 や 裁 判 所 判 決 の 積 み 重 ね に よ っ て 示 さ れ て き た 委 員 会 は 裁 判 所 の 判 示 を 踏 ま え て, 3 項 ガ イ ド ラ イ ン で 1 0 1 条 1 項 の 競 争 制 限 の 評 価 方 法 を 示 し て い る そ れ に よ れば, 協 定 が 競 争 を 制 限 す る か ど う か は, 問 題 と な る 協 定 が な か っ た 場 合 に 生 じ た で あ ろ う 実 際 の あ る い は 潜 在 的 な 競 争 を 制 限 し た かどうかによって 評 価 されねばならない 23 この 評 価 においては, ブラン ド 内 競 争 とブランド 間 競 争 の 双 方 が 考 慮 されねばならない 24 競 争 制 限 効 果 を 持 つ か ど う か が 評 価 さ れ る 協 定 は, そ の 現 実 の 効 果 だ け で な く, 潜 在 的 な 効 果 も 同 様 に 考 慮 されねばならない 25 競 争 制 限 効 果 を 持 つというた め に は, 関 連 市 場 に お け る 価 格, 産 出 量, 技 術 革 新, サ ー ビ ス や 品 質 の 種 類 へ の マ イ ナ ス 効 果 が, あ る 程 度 の 可 能 性 を も っ て 予 想 さ れ る 程 度 に, 現 実 のあるいは 潜 在 的 な 競 争 に 影 響 を 与 えなければならない 26 また, その マイナスの 効 果 は 認 知 可 能 な 程 度 でなければならない 27 101 条 の 禁 止 が 適 用 さ れ る の は, 適 切 な 市 場 分 析 に 基 づ い て 協 定 が 市 場 に 反 競 争 効 果 を 与 え る 可 能 性 が あ る 場 合 の み で あ る そ の た め に は, 関 連 市 場 を 確 定 し, 製 品 の 性 質, 当 事 者 の 市 場 で の 地 位, 競 争 者 の 市 場 で の 地 位, 買 い 手 の 市 場 で の 地 位, 潜 在 的 競 争 者 の 存 在, 参 入 障 壁 の 程 度 な ど が 検 討 さ れ る 必 要 がある 28 また, 反 競 争 的 な 制 限 条 項 であっても, 競 争 制 限 的 ではない 主 た る 協 定 に 含 ま れ る も の で, そ れ に 客 観 的 に 必 要 と さ れ る 限 り に お い て, 101 条 1 項 に い う 競 争 制 限 に 該 当 し な い と さ れ る 29 こ れ ら を 整 理 す る と, 1 0 1 条 1 項 の 競 争 制 限 効 果 の 分 析 に は, 以 下 の 1 か ら 4 が 必 要 と い う こ と が で き る 1 協 定 が 競 争 制 限 的 で あ る か ど う か は, 協 定 が 存 在 す る 市 場 の 文 脈 で 評 価 さ れ ね ば な ら な い こ れ は, 競 争 制 限 効 果 の 評 価 の み な ら ず, 競 争 制 限 目 的 の 評 価 に お い て も 同 様 で あ る ( 第 二 節 市 場 の 文 脈 の 考 慮 ) 2 競 争 制 限 的 で あ る い う の は, 問 題 と な る 協 定 が な か っ た 場 合 と 比 べ て 23 I d., p o i n t 1 7-1 8. 24 I b i d. 25 G u i d e l i n e s o n A r t i c l e 8 1 ( 3 ) p a r a 2 4 ; C a s e C - 7 / 9 5, J o h n D e c r e e, [ 1 9 9 8 ] E C R Ⅰ - 3 111, p a r a 7 7. 26 G u i d e l i n e s o n A r t i c l e 8 1 ( 3 ) p a r a 2 4. 27 I b i d. 28 G u i d e l i n e s o n A r t i c l e 8 1 ( 3 ) p a r a 27. 29 I d., 2 8-31. 9

競 争 制 限 的 で あ る と い う こ と で あ る そ の た め, 協 定 が な か っ た 場 合 の 競 争 状 況 が そ も そ も ど の よ う な も の で あ っ た か を 確 認 し た う え で 現 在 の 競 争 状 況 が よ り 制 限 的 で あ る こ と を 示 す 必 要 が あ る ( 第 三 節 反 事 実 分 析 ) 3 こ こ で い う 競 争 制 限 的 で あ る と い う た め に は, そ れ が 認 知 可 能 な 程 度 で な け れ ば な ら な い ( 第 四 節 認 知 可 能 性 ) 4 反 競 争 的 な 制 限 が, 一 定 の 目 的 を 達 成 す る 協 定 を 構 成 す る も の と して 存 在 す る 場 合 が あ る ( 例 え ば, フ ラ ン チ ャ イ ズ 協 定 に 含 ま れ る 購 入 制 限 な ど) そ の 場 合, 競 争 制 限 的 で な い と 評 価 さ れ る 主 た る 協 定 ( 例 え ば,フラ ン チ ャ イ ズ 協 定 ) に 含 ま れ る 個 別 の 制 限 条 項 ( 例 え ば, フ ラ ン チ ャ イ ザ ー 以 外 か ら の 購 入 制 限 ) は, 主 たる 協 定 に 付 随 す る 制 限 で あ る と 判 断 さ れ る 限 り に お い て, 1 0 1 条 1 項 に 違 反 し な い と 評 価 さ れ る ( 第 五 節 付 随 的 制 限 ) 以 下 で は, こ れ ら 1 か ら 4 に つ い て, E C J と G C の 判 決, そ し て 委 員 会 決 定, ガ イ ド ラ イ ン と を 合 わ せ て み て い く そ の 後, 合 理 の 原 則 を 採 用 し た と 指 摘 さ れ た 判 決 が 結 局 の と こ ろ, 1 ~ 4 の い ず れ か に 含 ま れ る こ と を 示 す 第 二 節 市 場 の 文 脈 の 考 慮 E C J は, 初 期 の 判 決 で あ る Société Techinique Minière 事 件 に お い て, 問 題 と な る 協 定 が そ の 目 的 あ る い は 効 果 に よ っ て 禁 止 さ れ る か を 評 価 す る 際 に は, 様 々な 要 因 が 考 慮 さ れ ね ば な ら な い と し た 30 具 体 的 に は, 協 定 の 範 囲 と な る 製 品 の 性 質 と 量, そ の 製 品 範 囲 が 限 定 的 で あ る か ど う か, 関 連 製 品 市 場 における( 協 定 当 事 者 の) 地 位 やその 重 要 性 31 な ど が 考 慮 さ れ ね ば な ら な い と し た また, Brasserie de Haecht 事 件 で E C J は, 次 の よ う に 述 べ, 協 定 を 評 価 す る 際 に 協 定 が 存 在 す る 文 脈 を 考 慮 し な け れ ば な ら な い と し た す な わち, 協 定 が 機 能 し て い る と 思 わ れ る 市 場 を, 協 定 の 効 果 と は 別 個 に 取 り 上 げ る な ら, そ の 効 果 に よ っ て 協 定 を 考 慮 す る こ と は 意 味 が な い で あ ろ う し た が っ て( 1 0 1 条 1 項 )に 該 当 す る か ど う か を 検 討 す る た め に 協 定 は 文 脈, すなわち, 競 争 の 妨 害 制 限 歪 曲 を 引 き 起 こ し た 実 際 30 C a s e 5 6 / 6 5, S o c i é t é Te c h n i q u e M i n i è r e v M a s c h i n e n b a u U l m [ 1 9 6 6 ] E C R 2 3 5, 2 5 0. 31 I b i d. 10

の 状 況 や 法 的 状 況 か ら 離 れ て 検 討 さ れ え な い 32 さ ら に,Delimitis 事 件 で,E C J は, 問 題 と な る 協 定 を 評 価 す る 際 に, そ の 協 定 と 類 似 す る 協 定 が 市 場 に 複 数 存 在 す る 際 に は, そ の よ う な 類 似 の 協 定 の 存 在 を 考 慮 にいれなければならないとした 33 この 事 件 は, ビール 醸 造 所 と パ ブ 経 営 者 と の 間 の 協 定 に 関 す る も の で あ る 当 該 協 定 に よ る と, 醸 造 所 は, パ ブ 経 営 者 に パ ブ の 建 物 を 貸 し, 一 方, パ ブ 経 営 者 は, 毎 年, 決 めら れ た 量 以 上 の ビ ー ル を そ の 醸 造 所 か ら 購 入 し な け れ ば な ら な い 問 題 と な っ た 市 場 に は, 同 じ よ う な 醸 造 所 と パ ブ 経 営 者 と の 間 の 協 定 が 複 数 存 在 し て い た こ の よ う な 協 定 が 市 場 に 多 数 存 在 す る と, 新 規 参 入 者 が パ ブ で ビ ー ル を 販 売 し た り, そ の 市 場 で シ ェ ア を 伸 ば し た り す る こ と が 難 し く な る 可 能 性 が あ る そ の た め, 類 似 の 協 定 が 市 場 に 複 数 存 在 す る 場 合, 問 題 と な る 協 定 が 1 0 1 条 1 項 に 違 反 す る か ど う か の 評 価 に お い て, 類 似 の 協 定 の 存 在 が 考 慮 さ れ な け れ ば な ら な い す な わ ち, 法 的 経 済 的 文 脈 を 考 慮 し て, 同 様 の 複 数 の 協 定 の 累 積 的 効 果 が, 当 該 市 場 へ の ア ク セ ス を 妨 害 す る か を 評 価 す る 協 定 の 累 積 的 効 果 に よ っ て, 当 該 市 場 へ の ア ク セ ス が 妨 害 さ れ て い る と 示 さ れ た な ら ば, 問 題 と な る 協 定 が, そ の 妨 害 に 重 要 ( significant ) な 貢 献 を し て い る か が 分 析 さ れ る そ の 分 析 に お い て は, 当 該 協 定 当 事 者 の 市 場 で の 地 位 や 契 約 の 期 間 が そ の 法 的 経 済 的 文 脈 で 考 慮 さ れ ね ば な ら な い 複 数 の 協 定 の 累 積 的 効 果 に よ っ て 市 場 へ の ア ク セ ス が 妨 害 さ れ て い る 状 況 で, 当 該 協 定 が そ の 累 積 的 効 果 に 重 要 な 貢 献 を 果 た し て い る な ら ば, 当 該 協 定 は 1 0 1 条 1 項 に 違 反 す る と い え る 1 0 1 条 1 項 の 競 争 制 限 の 評 価 に お い て 市 場 の 文 脈 を 考 慮 す べ き こ と は Société Technique Mini ère 事 件 以 降, 多 く の 判 決 で 述 べ ら れ て き た が, European Night Service 事 件 34で, GCは, 適 切 な 市 場 分 析 な く 1 0 1 条 1 項 に い う 競 争 制 限 が あ る と す る こ と は で き な い と し た 35 こ の 事 件 で は, イ ギ リ ス, ド イ ツ, オ ラ ン ダ, フ ラ ン ス の 鉄 道 会 社 が, 英 国 と 欧 州 大 陸 間 の 海 峡 横 断 夜 行 列 車 サ ー ビ ス を 提 供 す る た め に 設 立 し た ジ ョ イ ン ト ベ ン チ ャ ー の 設 立 協 定 が, 1 0 1 条 1 項 に 該 当 す る か が 問 題 と な っ た そ の 判 決 32 C a s e 2 3 / 6 7, B r a s s e r i e d e H a e c h t v Wi l k i n [ 1 9 6 7 ] E C R 4 1 5, [ 1 9 6 8 ] C M L R 4 0. 33 C a s e C - 2 3 4 / 8 9, D e l i m i t i s v H e n n i n g e r B r ä u A G [ 1 9 9 1 ] E C R Ⅰ - 9 3 5, [ 1 9 9 2 ] 5 C M L R 2 1 0, p a r a s 1 9-2 7. 34 C a s e s T- 3 7 4 / 9 4, E u r o p e a n N i g h t S e r v i c e v. C o m m i s s i o n [ 1 9 9 8 ] E C R Ⅱ - 3 1 4 1, [ 1 9 9 8 ] 5 C M L R 7 1 8. 35 I d., p a r a 9 3. 11

の 中 で,G C は 以 下 の よ う に 述 べ て い る 1 0 1 条 1 項 の も と で 協 定 を 評 価 す る と き に 注 意 し な け れ ば な ら な い の は, そ れ が 機 能 す る 現 実 の 状 況 が 考 慮 さ れ な け れ ば な ら な い こ と で あ る 特 に, 事 業 者 が 操 業 す る 経 済 的 文 脈, 協 定 の 範 囲 と な る 製 品 や サ ー ビ ス, 当 該 市 場 に 関 連 す る 現 実 の 構 造 36 を 考 慮 し な け れ ば な ら な い と し,また, 競 争 条 件 の 検 討 は, 関 連 市 場 に 既 に 存 在 す る 事 業 者 間 の 現 在 の 競 争 だ け で な く, 潜 在 的 競 争 に も 基 づ い た も のでなければならない 37 と す る G C は, 委 員 会 の 分 析 が, 1 0 1 条 1 項 の 禁 止 に 該 当 す る と い う た め の 十 分 な 理 由 を 提 供 し て お ら ず, また, そ の た め に 適 切 な 市 場 画 定 も し て い な い と し て, 委 員 会 決 定 を 破 棄 し た こ れ ら 一 連 の 事 件 で 強 調 さ れ て き た の は, 協 定 の 法 的 経 済 的 文 脈 に お け る 分 析 が, 協 定 が 競 争 制 限 的 で あ る と 主 張 す る の に 必 要 で あ る こ と で あ る こ れ ら の 分 析 が 十 分 で な け れ ば, 当 該 協 定 を 競 争 制 限 的 で あ る と い う こ と は で き な い 判 決 の 中 で 示 さ れ て き た の は, 協 定 の 範 囲 と な る 製 品 の 性 質 や 量 を 考 慮 し て, 市 場 が 画 定 さ れ な け れ ば な ら ず, そ の う え で, 関 連 市 場 に お け る 協 定 当 事 者 の 地 位 や 競 争 者 の 地 位 が 考 慮 さ れ ね ば な ら な い こ と で あ る ま た, 当 該 市 場 に 同 様 の 協 定 が 複 数 存 在 す る 場 合 に は, そ の よ うな 複 数 の 協 定 の 中 で 当 該 協 定 の 占 め る 地 位 な ど が 考 慮 さ れ ね ば な ら な い さ らに, 競 争 状 況 の 検 討 に お い て は, 現 実 の 競 争 と 潜 在 的 競 争 の 双 方 が 考 慮 さ れ ね ば な ら な い と い う こ と で あ る 第 三 節 反 事 実 分 析 前 述 の よ う に, 市 場 の 文 脈 を 考 慮 し て, 競 争 が 制 限 さ れ て い る か ど う か は 評 価 さ れ る わ け だ が,こ こ で の 競 争 が 制 限 さ れ て い る と は, 当 該 協 定 が な か っ た 場 合 と 比 べ て 競 争 が 制 限 さ れ て い る と い う こ と で あ る 前 述 し た, 複 数 の ラ イ バ ル メ ー カ ー に よ る 共 同 研 究 開 発 を 例 に と れ ば, 次 の よ う に 言 う こ と が で き る ラ イ バ ル 関 係 に あ る メ ー カ ー が 共 同 し て 開 発 す る 新 製 品 が 各 メ ー カ ー 単 独 で は 作 り え な い も の で あ る な ら, そ の よ う な 共 同 研 究 開 発 は, 当 該 新 製 品 の 研 究 開 発 競 争 や 当 該 新 製 品 市 場 で の 競 争 を 制 限 す る も の と は い え な い な ぜ な ら, 各 社 単 独 で の 新 製 品 開 発 が 不 可 能 で あ る こ と が 前 提 だ か ら で あ る し た が っ て, 新 製 品 開 発 も, 新 製 品 市 場 も, 新 36 I d., p a r a 1 3 6. 37 I d., p a r a. 1 37. 12

製 品 市 場 で の 競 争 も, 共 同 研 究 開 発 が あ っ て 初 め て 存 在 す る も の で あ る か ら, 共 同 研 究 開 発 が な い と き と 比 べ て 競 争 が 制 限 さ れ て い る と は, い え な い か ら で あ る これについて, ECJは, 前 述 のEU 競 争 法 初 期 の 判 決 である Société Technique Minière 判 決 で 競 争 は, 問 題 と な る 協 定 が な い 場 合 の 現 実 の 状 況 の 中 で 理 解 されねばならない 38 特 に, 当 該 協 定 が 事 業 者 の 新 分 野 参 入 に あ た っ て 必 要 と 思 わ れ る 場 合 に は, 競 争 へ の 妨 害 が 疑 わ し い だ ろ う と し た 39 そ の 後 も,こ の 協 定 が な か っ た 場 合 の 競 争 分 析 の 必 要 性 が, 様 々 な 判 決 で 繰 り 返 し 示 さ れ て き た 40 そ し て, 近 年 のO2 事 件 41で, こ の 分 析 の 重 要 性 が 再 確 認 さ れ た O 2 事 件 で は, 問 題 と な る 協 定 が な い 場 合 の 状 況 分 析 が な か っ た こ と を 理 由 と し て, 委 員 会 決 定 が 無 効 と さ れ た か ら で あ る こ の 事 件 は, ド イ ツ 携 帯 電 話 市 場 で 首 位 の T モ バ イ ル と 最 下 位 の O2と の サ ー ビ ス 提 供 協 力 協 定 に 関 す る も の で あ る 両 者 は, ド イ ツ で 第 三 世 代 携 帯 電 話 サ ー ビ ス が 開 始 さ れ る に 際 し, 同 サ ー ビ ス の 提 供 に お い て 協 力 す る た め 協 定 を 締 結 す る こ と と し た こ の 協 定 に つ い て, 欧 州 委 員 会 は, 以 下 の よ う に 決 定 し た す な わ ち, O 2 と T モ バ イ ル と の 協 力 は, 競 争 者 間 の 協 力 で あ り, 競 争 者 数 が 尐 な い 携 帯 電 話 サ ー ビ ス 市 場 で, 競 争 制 限 効 果 を 持 つ も の で あ る か ら, 1 0 1 条 1 項 に 該 当 す る が, 1 0 1 条 3 項 の 適 用 除 外 は 受 け る こ と が で き る と し た こ の 委 員 会 決 定 に 対 し, O 2 は, 本 件 協 定 は, 1 0 1 条 1 項 に 該 当 し な い と し て G C に 提 訴 し た こ れ を 受 け, G C は 以 下 の よ う に 判 示 し た T モ バ イ ル と の 協 力 が な け れ ば, O2が, 第 三 世 代 サ ー ビ ス 開 始 当 初 か ら 有 効 な 競 争 者 と し て 事 業 を 行 う こ と が 困 難 で あ っ た こ と は, 委 員 会 も 認 め て い る 欧 州 委 員 会 は, O 2 と T モ バ イ ル と の 協 力 が な か っ た 場 合 に 比 べ て 競 争 が 制 限 さ れ た と い う こ と を 立 証 し て い な い そ れ ゆ え, G C は, 当 該 協 定 を 1 0 1 条 1 項 に 該 当 す る と し た 委 38 C a s e 5 6 / 5 6, S o c i é t é Tec h n i q u e M i n i è r e v M a s c h i n e n b a u U l m [ 1 9 6 6 ] E C R 2 3 5, [ 1 9 6 6 ] C M L R 3 5 7, p a r a 1 4. 39 I b i d. 40 C a s e 3 1 / 8 5, E TA v D K I, [ 1 9 8 5 ] E C R 3 9 3 3, p a r a 11 ; C a s e 4 2 / 8 4, R e m i a v C o m m i s s i o n [ 1 9 8 5 ] E C R 2 5 4 5, p a r a 1 8 ; C a s e 9 9 / 7 9, L a n c o m e v E t o s [ 1 9 8 0 ] E C R 2 5 1, p a r a 2 4 ; C a s e 3 1 / 8 0, L O r e a l v A M C K [ 1 9 8 0 ] E C R 3 7 7 5, p a r a 1 8, 1 9 ; C a s e C - 7 / 9 5 P, J o h n D e e r e v C o m m i s s i o n [ 1 9 9 8 ] E C R 3 111, p a r a 7 6 ; C a s e C - 5 5 1 / 0 3 P, G e n e r a l M o t o r s a n d O p e l v C o m m i s s i o n [ 2 0 0 6 ] E C R 3 1 7 3. 41 C a s e T- 3 2 8 / 0 3, O 2 ( G e r m a n y ) G m b H & C o. v C o m m i s s i o n [ 2 0 0 6 ] E C R Ⅱ - 1 2 3 1. 13

員 会 決 定 を 破 棄 し た 42 こ の よ う な 分 析 が 問 題 に な る の は, 1 0 1 条 の 適 用 が 1 項 と 3 項 の 2 段 階 に 分 か れ て い る こ と に 由 来 す る 2 段 階 に 分 か れ て い な い 法 体 系 の 場 合, O2 事 件 で 問 題 と な っ た よ う な 協 定 は, 協 定 が な け れ ば 新 規 市 場 に 参 入 で き な い 事 業 者 を 当 該 市 場 に 参 入 さ せ る も の で あ る か ら, 競 争 制 限 的 で は な い と お そ ら く 結 論 付 け ら れ た で あ ろ う 委 員 会 決 定 も そ の 点 を 考 慮 し て, 3 項 の 適 用 除 外 を 与 え て い た し か し, 1 項 と 3 項 の 2 段 階 で 分 析 さ れ る E U 競 争 法 の も と で, 協 定 当 事 者 は, 当 該 協 定 が 1 項 の 禁 止 に 該 当 す る が 3 項 の 適 用 除 外 を 受 け ら れ る も の で は な く, そ も そ も 1 項 の 禁 止 に も 該 当 し な い も の で あ る と し て 争 っ た G C は, こ の 主 張 を 是 認 し, こ の よ う な 協 定 を 1 項 の 反 事 実 分 析 に よ り, そ も そ も 1 項 に 違 反 し な い も の と 結 論 付 け た す な わ ち, 当 該 協 定 を, 3 項 の 競 争 制 限 効 果 と 競 争 促 進 効 果 の 比 較 衡 量 に よ っ て 評 価 し, 新 規 参 入 を 促 す 競 争 促 進 効 果 を 持 つ か ら 3 項 の 適 用 除 外 を 受 け ら れ る と す る の で は な く, そ も そ も 当 該 協 定 が な け れ ば こ こ で 問 題 と な る 競 争 も 存 在 し え な か っ た の だ か ら, 1 項 に い う 競 争 制 限 が あ る と は い え な い と し た の で あ る 第 四 節 認 知 可 能 性 1 0 1 条 1 項 に い う 競 争 制 限 が あ る と い う た め に は, そ の 目 的 あ る い は 効 果 と し て 競 争 が 認 知 可 能 な 程 度, 妨 害 さ れ 制 限 さ れ 歪 曲 さ れ て き た こ と を 認 定 す る 必 要 が あ る と さ れ る 認 知 可 能 性 の 代 表 的 判 例 で あ る Vӧlk 事 件 43は, 協 定 当 事 者 の 市 場 で の 地 位 が 弱 い 場 合 に, 当 該 協 定 が 認 知 可 能 な 効 果 を 持 た な い と し た こ の 事 件 では, 排 他 的 販 売 協 定 の 1 0 1 条 該 当 性 が 争 わ れ た こ の 協 定 に お い て, ド イ ツ の 洗 濯 機 メ ー カ ー Völk は,ベ ル ギ ー と ル ク セ ン ブ ル グ で の 販 売 に つ い て あ る 販 売 業 者 に 絶 対 的 な 地 域 保 護 を 与 え る こ と と し, 一 方, そ の 販 売 業 者 は, Völk 製 品 の み 扱 う こ と を 引 き 受 け た 本 件 で, Völk の ド イ ツ で のシェアは 0. 2 %~0. 5 % 程 度 のものであった 裁 判 所 は, 関 連 当 事 者 の 当 該 製 品 市 場 で の 弱 い 地 位 を 考 慮 し て, 協 定 が 重 大 で な い ( insignificant) 効 果 し か 持 た な い 場 合 に は 1 0 1 条 1 項 の 禁 止 の 範 囲 外 42 I d., p a r a s 7 0, 11 6. 43 C a s e 5 / 6 9, V ö l k v Ve r v a e c k e [ 1 9 6 9 ] ECR 2 9 5. 14

と な る と し た 44 こ の 事 件 の 後, 委 員 会 は, 当 事 者 の 地 位 が ど の よ う な 場 合 に 重 大 で な い も し く は 認 知 可 能 で な い 効 果 し か 持 た な い の か に つ い て, デ ミ ニ ム ス 告 示 45を 公 表 し, そ の 基 準 を 示 し て い る 46 一 方, 水 平 的 協 力 ガ イ ド ラ イ ン は, 当 事 者 の シ ェ ア で は な く, 協 定 の 内 容 に よ っ て 認 知 可 能 に は 競 争 を 制 限 し な い 場 合 が あ る こ と を 示 す 例 えば, 重 要 で な い 製 品 特 性 を 標 準 化 す る も の な ど は, 関 連 市 場 に お け る 競 争 に 影 響 を 与 え る 主 な 要 素 に 重 大 で な い 影 響 し か 持 た な い と し て, 認 知 可 能 な 制 限 が な い と さ れ 得 る 47 裁 判 所 委 員 会 と も に, 1 項 の 競 争 制 限 の 評 価 の 際 に は, 認 知 可 能 性 を そ の 要 件 と し, 当 事 者 の シ ェ ア, 協 定 内 容 等 を 検 討 す べ き 要 因 と し て い る 第 五 節 客 観 的 に 必 要 な 制 限 第 一 款 E U 競 争 法 に お け る 付 随 的 制 限 法 理 の 適 用 例 え ば, ジ ョ イ ン ト ベ ン チ ャ ー が 設 立 さ れ る 場 合 に, 当 該 ジ ョ イ ン ト ベ ン チ ャ ー 自 体 は, 競 争 制 限 的 で な く と も,そ の 設 立 協 定 に 含 ま れ る 条 項 が, 競 争 制 限 的 で あ る と し て,1 0 1 条 に 違 反 す る か が 問 題 と な る 場 合 が あ る その 場 合, 問 題 と な る 条 項 が, 競 争 制 限 的 で な い ジ ョ イ ン ト ベ ン チ ャ ー に 付 随 す る も の か,す な わ ち, 付 随 的 制 限 の 要 件 を 充 た す か ど う か が,1 01 条 1 項 に お い て 評 価 さ れ る 付 随 的 制 限 の 評 価 は, 1 項 と 3 項 と い う 二 段 階 で 評 価 さ れ る E U 条 約 1 0 1 条 で, 3 項 で は な く 1 項 の 枠 組 み で 行 なわ れ る 主 た る 取 引 が 1 項 に 違 反 し な け れ ば, そ れ に 付 随 す る 競 争 制 限 条 項 44 I d,, 5 / 7. 45 E u r o p e a n C o m m i s s i o n, C o m m i s s i o n N o t i c e o n a g r e e m e n t s o f m i n o r i m p o r t a n c e w h i c h d o n o t a p p r e c i a b l y r e s t r i c t c o m p e t i t i o n u n d e r A r t i c l e 8 1 ( 1 ) o f t h e Tr e a t y e s t a b l i s h i n g t h e E u r o pe a n C o m m u n i t y ( d e m i n i m i s ) OJ C 3 6 8, 1 3-15. 46 競 争 者 間 の 協 定 の 場 合, 協 定 当 事 者 の 合 計 市 場 シ ェ ア が 1 0 % を 超 え な い 場 合, 非 競 争 者 間 の 協 定 で は 協 定 当 事 者 の 合 計 シ ェ ア が 1 5 % を 基 準 と す る た だ し 上 述 の デ ミ ニ ム ス 告 示 では,V ö lk 事 件 の よ う な 絶 対 的 地 域 制 限 は ハ ー ド コ ア 制 限 と し て,デ ミ ニ ム ス 基 準 の 範 囲 外 と し て い る ま た, こ れ ら の 基 準 は, 超 え た か ら と い っ て, 1 0 1 条 1 項 の 禁 止 に 該 当 す る と す る も の で は な い こ れ ら の 基 準 は 超 え な け れ ば, 1 0 1 条 1 項 の 禁 止 に 該 当 し な い こ と が 推 定 さ れ る の み で あ る 各 行 為 類 型 に つ い て の 基 準 は, 基 準 を 超 え た 場 合, 1 0 1 条 の 禁 止 に 該 当 す る 又 は 3 項 の 適 用 除 外 も 受 け ら れ な い と す る 基 準 で は な く, 基 準 を 超 え た 場 合, 1 0 1 条 1 項 の 禁 止 に 該 当 す る か, 8 1 条 3 項 の 適 用 除 外 の 対 象 と な る か に つ い て 個 別 の 評 価 が 必 要 と な る 基 準 で あ る 47 C o m m i s s i o n N o t i c e - G u i d e l i n e s o n t h e a p p l i c a b i l i t y o f A r t i c l e 8 1 t o h o r i z o n t a l co- o p e r a t i o n a g r e e m e n t s, O J C 3 o f 0 6. 0 1. 2 0 0 1, p a r a 1 6 4. こ こ で 取 り 上 げ た 質 的 な 認 知 可 能 性 の 基 準 に つ い て, 武 田 邦 宣 EC 競 争 法 原 理 の 生 成 阪 大 法 学 56 号 1 4 3 7 頁 ( 2 0 0 7 年 ) 15

も 1 項 に 違 反 せ ず, 主 た る 取 引 が 1 項 に 違 反 す る が 3 項 の 適 用 除 外 を 受 け る こ と が で き る な ら ば そ れ に 付 随 す る 制 限 も 同 様 に 判 断 さ れ る ほ と ん ど す べ て の 協 定 を 1 0 1 条 1 項 に 違 反 す る と し て い た 伝 統 的 解 釈 から 離 れ, 現 在 で は, 本 章 で 述 べ て き た 評 価 手 法 に よ り, 多 様 な 行 為 が 101 条 1 項 に 違 反 し な い と さ れ る よ う に な っ て い る 付 随 的 制 限 法 理 も そのような 処 理 を 可 能 と し た 解 釈 法 理 の 一 つ で あ る こ の 法 理 は, 拡 大 し て 解 釈 さ れ る こ と で,よ り 多 様 な 行 為 を 1 0 1 条 1 項 に お い て 処 理 す る( す な わ ち,3 項 の 評 価 を 必 要 と し な い )こ と を 可 能 に し た 以 下 で は,まず, EU 競 争 法 に お け る 付 随 的 制 限 の 定 義 か ら み て い く ジ ョ イ ン ト ベ ン チ ャ ー 設 立 協 定 に 含 ま れ る 非 競 争 条 項 が 問 題 と な っ た Métropole Télévision 事 件 判 決 に お い て, G Cは, 付 随 的 制 限 を 以 下 の よ う に 定 義 し た 付 随 的 制 限 と は, E U 競 争 法 に お い て 主 た る 事 業 の 実 行 実 施 に 直 接 関 連 し 必 要 な あ ら ゆ る 制 限 を い う そ の よ う な 制 限 が 必 要 で あ る と い う た め に は 二 つ の 基 準 を 充 た さ な け れ ば な ら な い 第 一 に, 制 限 が 主 な 事 業 の 履 行 に 客 観 的 に 必 要 で あ る こ と で あ り, 第 二 に, そ の 制 限 が 事 業 の 履 行 に 釣 り 合 うものであることである 48 主 な 事 業 に 関 連 して 制 限 が 客 観 的 に 必 要 で あ る か ど う か は, 関 連 市 場 に お け る 競 争 状 況 の 観 点 に お い て, 制 限 が 主 な 事 業 の 商 業 的 成 功 に 不 可 欠 で あ る か ど う か で は な く, 主 な 事 業 に 特 有 の 文 脈 で 制 限 が そ の 事 業 の 実 行 に 必 要 で あ る か ど う か で あ る 制 限 が な け れ ば 主 な 事 業 の 実 行 が 困 難 で あ る か, あ る い は 不 可 能 で あ る な らば, 当 該 制 限 は 主 な 事 業 の 実 行 に 客 観 的 に 必 要 で あ る と み な し う る と さ れる 49 また, 制 限 が 主 な 事 業 の 実 行 に 客 観 的 に 必 要 であるとしても, そ の 期 間, そ の 構 成 要 素, 地 理 的 範 囲 が そ の 事 業 の 実 行 に 必 要 で あ る 範 囲 を 超 え な い か を さ ら に 確 認 す る 必 要 が あ る 制 限 の 期 間 や 範 囲 が そ の 事 業 の 実 行 の た め に 必 要 で あ る も の を 超 え る の で あ れ ば, 1 0 1 条 3 項 の 下 で 分 けて 評 価 されねばならない 50 制 限 が 主 な 事 業 の 実 行 に 直 接 関 連 し, 必 要 で あ る こ と が 立 証 さ れ た な ら ば,そ の 制 限 が 競 争 法 に 違 反 す る か ど う か は, 主 な 事 業 の 違 法 性 と 共 に 分 析 されねばならない 51 すなわち, こ の 条 件 を 48 C a s e T- 11 2 / 9 9, M é t r o p o l e T é l é v i s i o n ( M 6 ) a n d O t h e r s v C o m m i s s i o n, [ 2 0 0 1 ] E C R Ⅱ - 2459, [ 2 0 0 1 ] 5 C M L R 3 3, p a r a s 1 0 4-1 0 6. 49 I d., p a r a 1 0 9. 50 I d., p a r a 11 3. 51 I d., p a r a 11 5. 16

充 た す 付 随 的 制 限 の 場 合, 主 な 事 業 が 1 0 1 条 1 項 の 禁 止 に 該 当 し な い な ら, そ れ に 付 随 す る 制 限 も 1 項 に 該 当 せ ず, 他 方, 主 な 事 業 が 1 0 1 条 1 項 に 該 当 す る が 3 項 の 適 用 を 受 け る な ら ば, そ れ に 付 随 す る 制 限 も 3 項 の 適 用 を 受 け る こ と と な る 52 付 随 的 制 限 が 争 点 と な っ た 事 件 と し て,R emia 事 件 が あ る こ の 事 件 で は, 食 品 メ ー カ ー が そ の 子 会 社 の 事 業 を 第 三 者 に 売 却 す る 協 定 に 含 ま れ て い た 競 業 禁 止 条 項 が, 101 条 1 項 に 該 当 す る か が 争 わ れ た 競 業 禁 止 条 項 と は, 事 業 の 売 主 が, そ の 売 却 直 後 に 売 却 し た 事 業 と 同 様 の 事 業 を 始 め る こ と を 制 限 す る も の で あ る 当 該 事 業 に 詳 し い 売 主 が 売 却 後 す ぐ に 同 様 の 事 業 を 始 め れ ば, 買 手 は, 事 業 買 収 に よ る 利 益 を 十 分 に 得 ら れ な い で あ ろ う 事 業 売 却 協 定 に 含 ま れ る 競 業 禁 止 条 項 は, そ の よ う な リ ス ク へ の 買 手 の 懸 念 を 払 拭 す る こ と で, 事 業 売 却 を 円 滑 に 進 め る 効 果 が あ る だ か ら と い っ て,こ の 条 項 が 常 に 1 0 1 条 1 項 の 禁 止 に 該 当 し な い わ け で は な い 競 業 禁 止 条 項 が 1 0 1 条 1 項 に 該 当 し な い と い う た め に は, 事 業 移 転 と い う 目 的 を 可 能 に す る た め に 必 要 な も の で な け れ ば な ら ず, 期 間 と 範 囲 も そ の 目 的 に 厳 密 に 限 定 されたものでなければならない 53 本 件 では, 期 間 と 範 囲 が 過 度 で あ る と し た 委 員 会 決 定 を E C J が 是 認 し た 一 方, 委 員 会 は, 付 随 的 制 限 に つ い て, 3 項 ガ イ ド ラ イ ン で 以 下 の よ う に 述 べ て い る そ れ に よ れ ば, 協 定 の 主 要 部 分 が, 競 争 制 限 目 的 効 果 を 持 た な い な ら ば, そ の 取 引 に 直 接 関 連 し 必 要 な 制 限 は 1 0 1 条 1 項 の 範 囲 外 になる 54 制 限 が, 主 たる 取 引 の 履 行 に 従 属 し, それと 不 可 分 に 結 びつ いているならば, その 取 引 に 直 接 関 連 し 必 要 である 55 主 た る 取 引 に 必 要 で あ る と い う 基 準 は, 制 限 が 主 た る 取 引 の 履 行 に 客 観 的 に 必 要 で あ り, そ れと 釣 り 合 ったものでなければならないことを 意 味 する 56 これは, 前 述 の Métropole Télévision 事 件 判 決 を 踏 襲 し た も の で あ る さ ら に, 同 ガイ ド ラ イ ン に よ れ ば, 付 随 的 制 限 の 評 価 は, 特 に, 競 争 制 限 的 で な い 主 た る 52 I d., p a r a 11 6. た だ し, こ の 事 件 で は, 問 題 と な っ た 制 限 条 項 は, 他 の 事 業 者 が 同 じ 市 場 で 当 該 制 限 条 項 な し に 同 様 の 事 業 を 行 っ て い る こ と か ら も, 客 観 的 必 要 性 が あ る と は い え ず ( I d. p a r a 1 2 2 ), た と え 客 観 的 必 要 性 が あ る と し て も, 当 該 制 限 条 項 は 当 該 事 業 の 実 行 に つ り あ い の と れ た も の と は い え な い ( I d. p a r a 1 2 3 ) と して, 付 随 的 制 限 と は い え な い と さ れ, こ の よ う な 制 限 は, 3 項 で 考 慮 さ れ る べ き ( I d. p a r a 1 2 1 ) と さ れ た 53 C a s e 4 2 / 8 4, R e m i a B V a n d N v Ve r e n i g d e B e d r i j v e n N u t r i c i a v C o m m i s s i o n [ 1 9 8 5 ] E C R 2 5 4 5, [ 1 9 8 7 ] 1 C M L R 1, p a r a 2 0. 54 G u i d e l i n e s o n A r t i c l e 8 1 ( 3 ) p a r a 2 9. 55 I b i d. 56 I b i d. 17

取 引 あ る い は 活 動 の 履 行 に, 特 定 の 制 限 が 必 要 で あ る か, そして, 釣 り 合 いのとれたものであるかを 決 定 することに 限 定 される 57 客 観 的 要 素 を 基 準 と し て, 制 限 が な け れ ば 主 た る 競 争 制 限 的 で な い 取 引 の 履 行 が 困 難 あ る い は 不 可 能 で あ る な ら ば, 当 該 制 限 は そ の 履 行 に 客 観 的 に 必 要 で 釣 り 合 い の 取 れ た も の と み な さ れ 得 る と い う 58 3 項 ガイドラインでは 付 随 的 制 限 の 例 として, 前 述 の Métropole Télévision 事 件 の ほ か に, Pronuptia 事 件 59が 例 示 さ れ る フ ラ ン チ ャ イ ズ 協 定 に 関 す る こ の 事 件 で は, フ ラ ン チ ャ イ ズ シ ス テ ム に お い て, 競 争 制 限 を 主 た る 目 的 と し な い フ ラ ン チ ャ イ ズ 協 定 に 付 随 す る 制 限 は, そ の 協 定 を 適 切 に 機 能 さ せ る の に 必 要 で あ る な ら ば, 101 条 1 項 の 範 囲 外 と な る と さ れ た 60 第 二 款 付 随 的 制 限 法 理 の 範 囲 ~ 客 観 的 に 必 要 な 制 限 前 款 で 述 べ た 付 随 的 制 限 の 判 決, 定 義 は, 委 員 会 あ る い は 裁 判 所 が 明 示 的 に 付 随 的 制 限 と し て 示 し た も の で あ る し た が っ て, そ れ ら を, 付 随 的 制 限 の 判 例, 定 義 と 呼 んでも 差 し 支 えないだろう 61 さらに, 以 下 で 述 べ る 適 法 な 目 的 を も つ 団 体 の 規 則 に 関 す る 判 決 も, 付 随 的 制 限 と 類 似 し た あ る い は 付 随 的 制 限 の 法 理 に 従 っ た も の と 思 わ れ る た だ し, こ れ ら を 付 随 的 制 限 法 理 を 採 用 し た も の と 呼 ぶ か ど う か は 論 者 に よ っ て 意 見 が 分 か れ る こ れ ら す べ て に つ い て, 付 随 的 制 限 法 理 を 採 用 し た と す る 意 見 が あ る 一 方 62, 後 述 す る 判 決 の 一 つである Wouters 判 決 63は, 付 随 的 制 限 法 理 を 採 用 し た 例 で は な い と 明 確 に 否 定 す る 意 見 も あ る 64 57 I d, p a r a 3 1. 58 I b i d. 59 C a s e 1 6 1 / 8 4, P r o n u p t i a d e P a r i s v S c h i l l g a l i s [ 1 9 8 6 ] E C R 3 5 3, [ 1 9 8 6 ] 1 C M L R 4 1 4. 60 G u i d e l i n e s o n A r t i c l e 8 1 ( 3 ) p a r a 3 1. 61 中 に は, フ ラ ン チ ャ イ ズ 協 定 の 事 件 で あ る P r o n u p t i a 事 件 は 付 随 的 制 限 と 類 似 す る ( c o u n t e r p a r t で あ る ) 内 在 的 制 限 で あ る と 分 類 す る 論 者 も あ る こ の 論 者 に よ れ ば, 本 稿 で 取 り 上 げ る 判 例 の う ち, G ø t t r u p - K l i m 事 件 と P r o n u p t i a 事 件 は 内 在 的 制 限 を 取 り 扱 っ た 事 件 であり, R e m i a 事 件 と M é t r o po l e T é l é v i s i o n 事 件 は 付 随 的 制 限 の 事 件 で あ る と い う ( V O G E L A A R, T H E E U R O P E A N C O M P E T I T I O N R U L E S L A N D M A R K C A S E S O F T H E E U R O P E A N C O U R T S A N D T H E C O M M I S S I O N 2 n d e d. a t 4 0-50) 62 G O Y D E R = A L B O R S - L L O R E N S, G O Y D E R S E C C O M P E T I T I O N L AW 5 th. e d. a t 1 2 3-1 2 6 ; E Z R A C H I, E C C O M P E T I T I O N L AW A N A N A LY T I C A L G U I D E T O T H E L E A D I N G C A S E S a t 6 8-7 5. 63 C a s e C 3 0 9 / 9 9 Wo u t e r s v A l g e m e n e R a a d c a n d e N e de r l a n d s c h e O r d e v a n A d c o v a t e n, [ 2 0 0 2 ] E C R Ⅰ - 1 5 7 7, [ 2 0 0 2 ] 4 C M L R 9 1 3, 評 釈 と し て, 村 田 淑 子 専 門 職 業 団 体 の 自 主 規 制 と E C 競 争 法 公 正 取 引 6 3 7 号 1 0 5 頁 参 照 64 K O R A H, A N I N T R O D U C T O R Y G U I D E T O E C C O M P E T I T I O N L AW A N D P R A C T I C E 9 t h. 8 3 ( 2 0 0 7 ). 18

そ の よ う な 判 決 の 一 つで あ る, Gøttrup-Klim 事 件 は, デ ン マ ー ク の 農 家 の 協 同 組 合 で あ る D L G が 制 定 し た, 他 の 協 同 組 合 に 参 加 す る 組 合 員 を D L G か ら 排 除 す る と い う 組 合 規 則 の EU 条 約 1 0 1 条 1 項 該 当 性 が 争 わ れ た も の で あ る D L G は, 農 家 の 利 益 を 代 表 し て, 農 家 に 必 要 な 肥 料 と 農 薬 を 低 価 格 で 供 給 す る 協 同 組 合 で あ る E C J は こ の 規 則 に つ い て 以 下 の よ う に 判 示 す る す な わ ち, 注 文 量 に よ っ て 製 品 価 格 が 変 わ る 市 場 で の 協 同 組 合 に よ る 購 入 は, 大 規 模 メ ー カ ー に 対 抗 す る 契 約 力 と な り, よ り 効 果 的 な 競 争 手 段 と な り 得 る 65 組 合 員 が 二 つ の 協 同 組 合 に 参 加 す る こ と は, 低 価 格 で 購 入 す る と い う 組 合 の 適 切 な 機 能 と, メ ー カ ー に 対 抗 す る 契 約 力 の 双 方 を 危 う く す る そ れ 故, 組 合 員 が 二 つ の 組 合 に 参 加 す る こ と を 禁 じ ること 自 体 は101 条 1 項 に 違 反 しない 66 また, 本 件 の 組 合 規 定 は, 組 合 の 適 切 な 機 能 を 保 障 し, メ ー カ ー と の 契 約 力 を 維 持 す る の に 必 要 で あ る 範 囲 を 超 え て お ら ず, さらに, そ の 規 定 に 従 わ な か っ た 場 合 の ペ ナ ル テ ィ も そ の 目 的 に 照 ら し て 不 均 等 で は な い た め, 1 0 1 条 1 項 の 禁 止 に は 該 当 し な い 67 Wouters 判 決 で は, 弁 護 士 と 会 計 士 と が パ ー ト ナ ー と な る こ と を 禁 じ る オ ラ ン ダ 弁 護 士 会 規 則 が,EU 条 約 1 0 1 条 に 違 反 す る か が 問 題 と な っ た E C J は, 会 計 士 と 弁 護 士 が パ ー ト ナ ー と し て 組 む こ と を 禁 じ る 規 則 は, 顧 客 の 望 む 会 計 サ ー ビ ス と 法 律 サ ー ビ ス の 統 合 な ど を 阻 む も の で あ り, 競 争 制 限 的 であるという 68 さらに, こ の 規 則 が 加 盟 国 間 取 引 に 影 響 を 与 え ること 69, 認 知 可 能 な 程 度 に 影 響 を 持 つ こ と 70 も 認 定 し て い る そ れ に も か か わ ら ず, E C J は, こ の よ う な 規 則 を 法 律 専 門 職 の 適 切 な 活 動 を 保 証 す る の に 合 理 的 に 必 要 であるとして,1 0 1 条 1 項 に 違 反 し な い と し た 71 こ の 判 決 は, 問 題 と な っ た 規 則 が 競 争 制 限 的 で あ る と 認 定 し な が ら, 101 条 1 項 に 違 反 しないと 判 断 をしたため, 多 くの 議 論 を 呼 んだ 72 例 え ば, 本 件 が, Métropole Télévision 事 件 判 決 の 示 し た 1 0 1 条 1 項 で 65 C a s e C - 2 5 0 / 9 2, G ø t t r u p - K r i m v D a n s k l a n d b r u g s G o v v a r e s e l s k a b A m b A, [ 1 9 9 4 ] E C R Ⅰ - 5 6 4 1, [ 1 9 9 6 ] 4 C M L R 1 9 1, p a r a 3 2. 66 I d., p a r a s 3 2, 3 4. 67 I d., p a r a s 4 0, 4 5. 68 C a s e C 3 0 9 / 9 9 Wo u t e r s v A l g e m e n e R a a d c a n d e N e de r l a n d s c h e O r d e v a n A d c o v a t e n, [ 2 0 0 2 ] E C R Ⅰ - 1 5 7 7, [ 2 0 0 2 ] 4 C M L R 9 1 3, p a r a s 8 7-94. 69 I d., p a r a 9 5. 70 I d., p a r a 9 6. 71 I d., p a r a s 9 7-11 0. 72 K O R A H, s u p r a n o t e ( 6 4 ) a t 8 3 ; W H I S H, s u p r a n o t e ( 1 0 ) a t 1 2 7. 19

反 競 争 効 果 と 競 争 促 進 効 果 の 比 較 衡 量 を 行 わ な い と い う 判 断 を 覆 し て, 1 0 1 条 1 項 で 比 較 衡 量 を 行 っ た と す る 意 見 が あ る 73 し か し, Wouter s 判 決 で 行 わ れ た の は, 反 競 争 効 果 と 競 争 促 進 効 果 の 比 較 衡 量 で は な い 同 判 決 で 示 さ れ た の は, 問 題 と な っ た 規 則 が 制 定 さ れ た 文 脈 を 考 慮 す る こ と であり, 特 に, 規 則 の 制 定 目 的 を 考 慮 す る こ と で あ る 74 そ の 目 的 と は, 法 サ ー ビ ス の 最 終 消 費 者 と 正 義 の 健 全 な 執 行 に, 高 潔 さ と 経 験 に 関 す る 必 要 な 保 証 が 提 供 さ れ る よ う 確 保 す る こ と で あ る 75 そ し て, 競 争 を 制 限 す る 結 果 的 な 効 果 が, こ れ ら 目 的 の 追 求 に 内 在 す る か ど う か が 考 慮 さ れ ねばならない とするのである 76 す な わ ち, 消 費 者 に 適 正 な 法 サービス が 提 供 さ れ, 適 正 な 基 準 を み た す 司 法 が 実 施 さ れ る こ と を 保 障 す る と い う 目 的 の 追 求 に 内 在 す る な ら, そ の よ う な 制 限 は 認 め ら れ る と い う こ と で あ る Wouters 判 決 が, 付 随 的 制 限 法 理 を 採 用 し た も の か 否 か に つ い て は, 評 価 が 分 か れ る が, 付 随 的 制 限 法 理 を 採 用 し て い な い と す る 根 拠 は 以 下 の よ う な も の で あ る 第 一 に, Wouters 判 決 が 付 随 的 制 限 の 代 表 的 判 例 で あ る Métropole Télévision 判 決 を 全 く 参 照 し な か っ た か ら で あ る と い う 77 第 二 に, 本 件 規 則 が, オ ラ ン ダ 弁 護 士 会 の 設 立 に 直 接 合 理 的 に 必 要 で は な い か ら で あ る と い う 78 す な わ ち, Métropole Télévision 判 決 に よ れ ば, 制 限 が な け れ ば 主 た る 取 引 の 履 行 が 困 難 で あ る か, あ る い は 不 可 能 で あ る な らば, 制 限 は そ の 取 引 履 行 に 客 観 的 に 必 要 で あ る と み な し 得 る そ れ に 対 し て, 本 件 で は 問 題 と な る 規 則 が な か っ た と し て も, 弁 護 士 会 自 体 の 存 在 が 難 し く な る わ け で は な い 実 際, 他 の 加 盟 国 で は, 会 計 士 と 弁 護 士 と が パ ー ト ナ ー に な る こ と が 認 め ら れ て い る と い う の で あ る 確 か に, 第 一 の 根 拠 に い う よ う に, 本 件 は, Métropole Télévision 判 決 を 参 照 し て い な い が, 第 二 の 根 拠 に つ い て は, 以 下 の よ う に, 反 論 が 可 能 で あ る す な わ ち, 他 の 加 盟 国 で 本 件 の よ う な 規 則 な し に, 弁 護 士 会 が 機 能 し て い る か ら と い っ て, オ ラ ン ダ で も 当 該 規 則 な し に 弁 護 士 会 が 適 正 に 73 K O R A H, s u p r a n o t e ( 6 4 ) a t 8 3. また, K o r a h は, 本 判 決 は, 国 家 に よ っ て 弁 護 士 会 に 委 託 さ れ た 職 務 に 必 要 な も の と し て, 1 0 6 条 2 項 で 説 明 さ れ る べ き で あ っ た と い う ( I d., 8 3-85) 74 C a s e C 3 0 9 / 9 9 Wo u t e r s v A l g e m e n e R a a d c a n d e N e de r l a n d s c h e O r d e v a n A d c o v a t e n, [ 2 0 0 2 ] E C R Ⅰ - 1 5 7 7, [ 2 0 0 2 ] 4 C M L R 9 1 3, p a r a 9 7. 75 I b i d. 76 I b i d. 77 K O R A H, s u p r a n o t e ( 6 4 ) a t 8 3. 78 I b i d. 20

機 能 し 得 る と は 限 ら な い そ の た め, 他 国 の 事 情 を 理 由 に, 当 該 規 則 が オ ラ ン ダ 弁 護 士 会 に と っ て 直 接 合 理 的 に 必 要 で な い と は 言 う こ と は で き な い つ ま り, E C J に よ れ ば, 各 加 盟 国 は 原 則 と し て そ の 分 野 に お け る 法 専 門 職 の 行 為 を 自 由 に 規 制 できるので 79, た と え 弁 護 士 と 会 計 士 が パ ー ト ナ ー と な る こ と が い く つ か の 国 で 認 め ら れ て い る と し て も, オ ラ ン ダ 弁 護 士 会 は, そ の 規 則 の 目 的 を オ ラ ン ダ で は, よ り 制 限 的 で な い 方 法 に よ っ て 達 成 できないと 考 えることができるという 80 したがって, 何 が 各 加 盟 国 の 弁 護 士 会 の 存 在 に と っ て 必 要 不 可 欠 か は, 各 加 盟 国 が 決 定 で き る の で, 他 の 加 盟 国 に と っ て 必 要 不 可 欠 で な い か ら と い っ て, オ ラ ン ダ で も 必 要 不 可 欠 で は な い と い う こ と は で き な い そ れ 故, E C J は, こ の 規 則 を 法 律 専 門 職 の 適 切 な 活 動 を 保 障 するために 合 理 的 に 必 要 81と 認 める すなわち, 法 律 専 門 職 の 適 切 な 活 動 の 保 障 を 目 的 と す る オ ラ ン ダ 弁 護 士 会 に と っ て, こ の よ う な 規 則 が 必 要 で あ る と い う の で あ る Wouters 判 決 に つ い て, ほ か に は, 競 争 制 限 効 果 と 公 益 目 的 の 比 較 衡 量 が, 認 められたという 意 見 もある 82 同 判 決 が, 弁 護 士 会 規 則 について, そ の 競 争 制 限 効 果 を 認 め な が ら, 適 切 な 弁 護 士 活 動 の 保 障 と い う 目 的 の た めに 必 要 という 理 由 で, 同 規 則 を1 0 1 条 1 項 に 該 当 しないとした 83 こと から, 比 較 衡 量 で あ る と い う し か し, 前 述 の よ う に, 判 決 は, 競 争 制 限 効 果 と 公 益 目 的 を 比 較 衡 量 し た わ け で は な く, 競 争 制 限 的 な 規 則 が, 適 法 な 規 則 の 目 的 に 必 要 で あ る か を 考 慮 し た の で あ る 同 様 の 評 価 は, 3 項 ガ イ ド ラ イ ン パ ラ グ ラ フ 1 8 ( 2 ) の ブ ラ ン ド 内 競 争 の 評 価 で も 示 さ れ る こ こ で, 委 員 会 は, す べ て の 販 売 業 者 に 課 せ ら れ る 一 定 類 型 の 最 終 消 費 者 に 販 売 し な い と い う 禁 止 ( 条 項 ) は, 当 該 製 品 の 持 つ 危 険 な 性 質 と 関 連 し て 安 全 や 健 康 の た め に 客 観 的 に 必 要 で あ る な ら, ( 101 条 1 項 にいう) 競 争 制 限 とはならないだろう 84 と い う す な わ ち, 安 全 や 健 康 と い う 公 益 目 的 に 客 観 的 に 必 要 な ブ ラ ン ド 内 競 争 制 限 で あ 79 C a s e C 3 0 9 / 9 9 Wo u t e r s v A l g e m e n e R a a d c a n d e N e de r l a n d s c h e O r d e v a n A d c o v a t e n, [ 2 0 0 2 ] E C R Ⅰ - 1 5 7 7, [ 2 0 0 2 ] 4 C M L R 9 1 3, p a r a 9 9 80 I d., p a r a 1 0 8 81 I d., p a r a 1 0 7. 82 E Z R A C H I, s u p r a n o t e ( 6 2 ) a t 7 5. 83 Wo u t e r 判 決 に つ い て, M o n t i は, 国 内 の 法 シ ス テ ム の 規 範 を 維 持 す る た め に 必 要 で あ る 場 合 には, E C 法 の 適 用 は 制 限 さ れ る と い う 考 え 方 が 競 争 法 に も 適 用 さ れ た も の で あ る と い い, 国 内 法 と 共 同 体 法 と の 衡 量 が 行 わ れ た も の で あ る と し, こ の よ う な 比 較 衡 量 を 欧 州 型 合 理 の 原 則 と 呼 ん だ ( M o n t i, A r t i c l e 8 1 E C a n d P u b l i c P o l i c y ( 2 0 0 2 ) 3 9 C o m m o n M a r k e t L. R e v. 1 0 5 7 ) 84 G u i d e l i n e s o n A r t i c l e 8 1 ( 3 ) p a r a 1 8 ( 2 ). 21

る な ら, 1 0 1 条 1 項 の 競 争 制 限 に 該 当 し な い と し て い る Wouters 判 決 に せ よ, 3 項 ガ イ ド ラ イ ン の ブ ラ ン ド 内 競 争 制 限 の 評 価 に せ よ, 競 争 制 限 的 効 果 と 公 共 的 な 目 的 と の 比 較 衡 量 を 示 し て い る の で は な く, 競 争 制 限 的 な 行 為 が 公 共 的 目 的 の 達 成 に 客 観 的 に 必 要 か を 示 し た も の と 考 え る べ き で あ ろ う Wouters 判 決 に 続 く Meca Medina 判 決 は, ド ー ピ ン グ を 禁 止 す る 国 際 オ リ ン ピ ッ ク 委 員 会 ら の 定 め る 規 則 を 以 下 の よ う な 理 由 で, 1 0 1 条 1 項 に 違 反 しないとした 85 すなわち, そ の 規 則 で 定 め ら れ る 制 限 は, 競 技 ス ポ ー ツ の 組 織 と そ の 適 正 な 運 営 に 内 在 す る も の で あ り, そ の 目 的 は 運 動 選 手 間 の 健 全 な 競 い 合 い を 確 保 す る こ と で あ る か ら 当 該 規 則 は 1 0 1 条 1 項 の 競 争 制 限 に 該 当 し な い と い う 86 委 員 会 も ま た Wouters 判 決 に 従 っ た 決 定 を 出 し て い る E N I C / U E FA 委 員 会 決 定 で, 委 員 会 は, サ ッ カ ー チ ー ム の 複 数 所 有 を 禁 じ る U E F A ( 欧 州 サ ッ カ ー 協 会 連 盟 ) の 規 則 に つ い て, 以 下 の よ う に 述 べ て い る こ の 事 件 で 答 え る べ き 問 題 は, そ の 規 則 の 結 果 と し て の 効 果 が, 信 用 さ れる 全 欧 州 サッカー 競 技 の 存 在 に 内 在 するかどうかである 87 そ の よ う な 規 則 が な け れ ば, チ ー ム が 経 済 活 動 を 展 開 す る 市 場 の 適 切 な 機 能 が 脅 か さ れ る な ぜ な ら, 土 台 と し て, そ の ス ポ ー ツ 競 技 は 公 正 で, う そ 偽 り の な い も の で あ る と 一 般 に 認 識 さ れ て い る こ と が, そ の ス ポ ー ツ の 利 益 と 市 場 性 を 維 持 す る た め に 必 要 不 可 欠 な 前 提 で あ る か ら で あ る も し, U E F Aの 競 技 が 信 用 で き ず, 消 費 者 が そ の ゲ ー ム を ち ゃ ん と し た ス ポ ー ツ 競 技 であると 認 知 しないなら, その 競 技 は 価 値 を 失 っていくであろう 88 こ の よ う な 規 則 は ゲ ー ム の 公 正 さ と 真 正 さ に つ い て の 消 費 者 の 信 頼 を 維 持 す る た め に 必 要 で 釣 り 合 い の と れ た も の で あ る 89 そ し て, そ の よ う な 規 則 はU E F A の 競 技 に 内 在 す る も の で あ る か ら 1 0 1 条 1 項 の 範 囲 外 で あ る 90 こ の 決 定 に つ い て, 当 時 の 競 争 担 当 欧 州 委 員 で あ っ た Monti がプ レ ス リ リ ー ス で 以 下 の よ う に 述 べ て い る そ の よ う な 規 則 は, 理 論 的 に は 1 0 1 条 1 項 の 禁 止 に 該 当 し 得 る か も し れ な い が, ス ポ ー ツ 競 技 が 公 正 で 85 C a s e C - 5 1 9 / 0 4 P D a v i d M e c a - M e d i n a a n d l o g o r M a j c e n v C o m m i s s i o n, [ 2 0 0 6 ] E C R Ⅰ - 6 9 9 1, [ 2 0 0 6 ] 5 C M L R 1 0 2 3, p a r a 4 5. 86 I b i d. 87 C o m m i s s i o n d e c i s i o n C a s e C O M P / 3 7 8 0 6 : E N I C U E FA p o i n t 3 2 88 I b i d. 89 I d., p o i n t 3 8. 90 I d., p o i n t 4 0. 22