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為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

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1

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している 5. これに 対 して 親 会 社 の 持 分 変 動 による 差 額 を 資 本 剰 余 金 として 処 理 した 結 果 資 本 剰 余 金 残 高 が 負 の 値 となるような 場 合 の 取 扱 いの 明 確 化 を 求 めるコメントが 複 数 寄 せられた 6. コメントでは 親

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3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

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Transcription:

ボアソナード 帝 国 民 法 草 案 註 解 ⑴ Boissonade, Projet de Code Civil pour l ʼempire du Japon accompagné d ʼun commentaire, tome ₁~₄ (₁) ボアソナード 民 法 研 究 会 ( 代 表 清 水 元 ) * 訳 清 水 元 は じ め に ボアソナードによる 旧 民 法 典 が 現 行 法 に 大 きな 影 響 を 与 え,また, 現 行 法 の 構 造 的 な 理 解 が 旧 民 法 の 理 解 なくしてはありえないことは, 現 在 の 学 界 の 共 通 の 認 識 であることはいまさら 強 調 するまでもないことであろう ボアソナードは 旧 民 法 の 準 備 草 案 を 起 草 するにあたり, 詳 細 な 注 解 書 (Boissonade, Projet de Code Civil pour l ʼempire du Japon accompagné d ʼun commentaire, tome ₁~₄)を 残 しており, 同 書 は 今 なお 参 照 する 機 会 が 多 い 重 要 な 資 料 である ところが, 同 書 の 翻 訳 についてはボアソナード 滞 朝 中 に 作 られたと 見 ら れる 再 閲 修 正 民 法 草 案 注 釈 ( 刊 行 年 不 詳 )があるのみであり,しかも, 法 律 用 語 または 法 概 念 が 定 着 していない 時 代 思 潮 を 反 映 して, 日 本 語 とし ても 分 かりやすいものとは 言 いがたい 同 書 が 現 在 かならずしも 入 手 可 能 な 図 書 とは 言 いがたい 状 況 で,あえてボアソナードの 同 書 を 現 代 文 に 翻 訳 * 所 員 中 央 大 学 法 科 大 学 院 教 授 205

比 較 法 雑 誌 第 46 巻 第 3 号 (2012) することも,それなりの 意 義 があるのではないかと 愚 考 し,ここに 訳 出 す ることにする テキストとしての Projet には1989 年 の 版 と1991 年 新 版 ( 訂 正 と 増 補 cor- rigée et augmenté の 表 記 がある)があるが,ここでは 標 準 とされる 新 版 によることにした ただし, 旧 版 も 随 時 参 照 し, 必 要 なかぎり 両 者 の 異 同 にも 言 及 する なお,[ ] 内 の 文 章 は 筆 者 が 文 意 を 損 ねない 限 りで 補 っ たものであり, 訳 語 として 重 要 であるものには 原 語 を 残 した また, 原 文 では 各 節 ごとに 条 文 が 並 べられた 後 に, 注 解 がなされているが,ここでは, 逐 条 ごとに 注 解 につき 翻 訳 作 業 をすることにした 訳 出 は, 債 権 担 保 篇 第 2 部 物 的 担 保 tome 4. Livre IV,Des Sûretés の う ち 第 5 章 抵 当 権 CHAPITRE IV.DES HYPOTHÈQUES から 始 め, 以 後, 留 置 権 DROIT DE RÉTENTION ( 第 1 章 ), 動 産 質 権 GAGE OU NANTISSEMENT MOBILIER ( 第 2 章 ), 不 動 産 質 権 NANTISSEMENT IMMOBILIER ( 第 3 章 ), 先 取 特 権 PRIVILÉGES ( 第 4 章 )へと 進 める 予 定 である なお, 参 考 までに, 当 時 のフランス 民 法 典 および 旧 民 法 典 の 条 文 もあげ た ( 清 水 元 ) 債 権 担 保 篇 第 一 部 物 的 担 保 DES HYPOTHÈQUES De la nature et des objets de l hypothèque Art.1201. Lʼhypothèque est un droit réel sur les immeubles affectés. par la loi ou la volonté, à lʼacquittement de certaines obligations par préférence aux autres, sans quʼil y ait besoin de nantissement. [2114,1 er al.] 206

ボアソナード 帝 国 民 法 草 案 註 解 ⑴ 抵 当 権 は, 他 の 債 務 に 優 先 して 特 定 の 債 務 の 弁 済 のために, 質 入 れを 要 1) することなく, 法 律 または 意 思 によって 設 定 される 不 動 産 上 の 物 権 であ る Nº 393 hypothèque というフランス 語 は, 債 権 の 担 保 を 指 示 するため の 支 持, 支 柱 を 意 味 するギリシア 語 に 由 来 し,ラテン 語 を 経 てきた [ものである] 他 にも 多 数 の 担 保 が 存 在 するのであるから,その 意 味 はこ の 点 では 十 分 に 正 確 ではないであろう 抵 当 という 用 語 は, 担 保 が 物 的 な ものであることをも 説 明 するものではなく, 仮 にそのようなものであると しても, 同 じく 物 的 なものとして 前 章 に 規 定 した 担 保 と 区 別 し[え]ない からである 本 条 で 与 えられた 抵 当 権 の 定 義 は,こうした 困 難 を 修 正 するためのもの である そこで, 以 下 のように 示 される 第 1 に, 抵 当 権 は 物 権 であり, 3 種 の 人 的 担 保 [ 保 証 連 帯 債 務, 不 可 分 債 務 ]と 区 別 される 第 2 に, 抵 当 権 は 不 動 産 の 上 にのみ 設 定 され, 動 産 の 上 にも 生 じうる 先 取 特 権 と 区 別 される 第 3 に, 抵 当 権 は 人 の 意 思 により 生 じるが, 法 律 の 権 威 によっても 生 じ, この 点 で, 法 律 によってのみ 担 保 が 生 じるという 先 取 特 権 とは 区 別 される 第 4 に, 質 入 れの 必 要 がなく,その 点 で, 同 様 に 人 の 意 思 から 生 じる 不 動 産 質 権 nantissement immobilier と 区 別 される 第 5 に, 抵 当 権 は 債 権 者 に, 1) 不 動 産 とは, 土 地 を 指 し, 建 物 は 独 立 の 不 動 産 ではなく, 土 地 に 定 着 するこ とによって 不 動 産 と 一 体 になる(Boissonade, Projet, t. 1, Nº 17.) これがフラ ンス 法 の 伝 統 的 な 観 念 であり,ボアソナードもこれを 当 然 に 踏 襲 したのである 現 行 民 法 の 起 草 過 程 でも, 起 草 者 の 梅 謙 次 郎 は 土 地 と 建 物 を 一 体 視 する 立 場 で あった( 法 典 議 事 速 記 録 ( 二 )856 頁, 梅 謙 次 郎 土 地 ト 建 物 トノ 関 係 法 学 志 林 8 巻 8 号 [1906 年 ] 9 頁 ) 民 法 86 条 1 項 が, 不 動 産 を 土 地 及 びその 定 着 物 と 規 定 したのみで, 建 物 との 関 係 が 明 確 でないのはそのためである と ころが, 抵 当 権 の 目 的 物 に 関 する370 条 の 審 議 過 程 に 差 しかかったところでは じめて, 異 論 が 続 出 して 論 議 が 紛 糾 し,その 結 果 建 物 が 土 地 とは 別 個 の 不 動 産 として 確 定 することになったのである 207

比 較 法 雑 誌 第 46 巻 第 3 号 (2012) 他 の 債 権 者 に 優 先 する 権 利 を 付 与 するものである しかし,この 定 義 は, 優 先 の 程 度 がどのようなものであるかについては[ここで] 述 べることは できない Nº 394 フランスではしばしば 抵 当 権 が 所 有 権 の 支 分 権 démembrement であるか 否 か,また, 抵 当 権 は 動 産 権 droit mobilier か 不 動 産 権 droit immobilier かが 争 われている 抵 当 権 が 所 有 権 の 支 分 権 であることを 否 定 し, 抵 当 権 に 動 産 権 としての 性 格 を 認 める,とする 2) のが 多 数 の 学 説 ではない とすれば,われわれはためらうことなく, 抵 当 権 は 不 動 産 権 の 性 格 を 有 し, したがって, 所 有 権 の 支 分 権 であると 言 おう 第 一 に, 本 [ 草 ] 案 において( 2 条 )のみならず,フランス 民 法 典 (2114 条 )においても 抵 当 権 が 物 権 であることは 疑 いを 容 れない さて, 不 動 産 の 上 の 物 権 は 不 動 産 権 でないということがありうるであろうか 用 益 権 usufruit, 賃 貸 借 bail, 地 役 権 servitude も 不 動 産 ではないのであ ろうか Nº 395 次 のような 異 論 がある すなわち, 抵 当 権 は, 金 銭 債 権 créance de somme dʼargent のように,しばしばその 目 的 物 によって 動 産 である 債 権 droit personnel を 担 保 する 従 たる 権 利 droit accessoire であり,それゆえ, 従 たる 権 利 は 主 たる 権 利 と 別 個 の 性 質 を 有 するものではなく,それゆえ 抵 当 権 は 不 動 産 権 ではないし, 抵 当 権 が 不 動 産 たる 債 権 を 担 保 するならば, それはまれであろう,と しかし, 従 たる 権 利 が 主 たる 権 利 と 同 一 の 運 命 にあるがために, 主 たる 権 利 と 同 一 の 性 格 を 有 する 必 要 がある,ということには 異 議 がある 不 動 産 質 権 がその 証 拠 である すなわち, 不 動 産 質 権 は, 動 産 [ 権 ]たる 債 権 を 担 保 する 場 合 に, 債 権 とともに 移 転 し,かつ, 債 権 とともに 消 滅 するけ れども, 目 的 による 不 動 産 と 同 様 に, 性 質 上 の 不 動 産 として 考 えないこと は 無 理 である 抵 当 権 が, 不 動 産 質 権 と 同 様 に, 不 動 産 であるにもかかわ らず, 付 着 した 債 権 を 譲 渡 する 能 力 ある 者 によって 譲 渡 することができる 2) Pont, Explication théorique et pratique du code civil, t.10, 1878. がその 立 場 に 立 つと 言 われている( 藤 原 明 久 ボアソナード 抵 当 法 の 研 究 [1995 年 ]14 頁 参 照 208

ボアソナード 帝 国 民 法 草 案 註 解 ⑴ のは,その 付 従 性 の 結 果 によるのである さらに,すべての 動 産 の 受 遺 者 は, 動 産 [ 権 ]たる 債 権 を 有 するものであるが, 不 動 産 の 受 遺 者 が 同 時 に 存 在 していたとしても, 同 様 に, 抵 当 権 もしくは 不 動 産 質 権 を 得 るであろ う Nº 396 抵 当 権 の 不 動 産 [ 権 ]たる 性 格 については 他 にも 異 論 がある すなわち, 抵 当 権 は 債 権 者 に 対 して, 不 動 産 の 売 却 代 金 から 代 価 を 得 る 権 利 を 与 えるに 過 ぎず, 動 産 [たる 金 銭 ]を 得 ようとするものであるゆえに, 抵 当 権 は 動 産 に 過 ぎない,というのである しかし, 用 益 権 も, 賃 貸 借 も, 不 動 産 質 権 も,その 権 利 者 に 対 して, 動 産, 果 実 しか 得 させるものではな いが,これらの 権 利 が 不 動 産 であることは, 否 定 されていない これらの 果 実 は, 第 三 取 得 者 に 対 しても 行 使 することのできる 物 に 対 する 訴 権 に よって 得 られるからであり,また, 第 三 取 得 者 に 対 して 不 動 産 を 追 及 する 権 利 も 有 する 抵 当 債 権 者 はまさに 不 動 産 [ 権 ]を 有 するのである Nº 397 最 後 に, 抵 当 権 が 不 動 産 物 権 であることは 否 定 しないが, 所 有 権 の 支 分 権 たる 性 格 を 疑 う 者 がいる しかし, 所 有 権 の 支 分 権 とはつまるところなんであろうか [ 支 分 権 に ついての] 法 律 上 の 定 義 があるとすれば, 抵 当 権 がこうした 定 義 にあては まるかどうか 検 証 することは 容 易 であろう しかし,ここにあるのは, 法 律 上 というよりは 学 説 上 の 表 現 であって,それゆえこれに 与 えられた 射 程 についてはさまざまでありうる われわれによれば, 所 有 権 が 支 分 されるのは, 所 有 権 を 構 成 し,そこか ら 派 生 する 権 利 のすべてが, 同 一 人 の 上 には 集 結 されていない 場 合 である では,その 全 体 が 所 有 権 を 構 成 する 権 利 とはなんであろうか 日 本 の 草 案 (31 条 )は,フランス 民 法 典 と 同 様 に(544 条 ), 所 有 権 を, もっとも 絶 対 的 なしかたで 物 を 利 用 し, 収 益 し, 処 分 する 権 利 である,と 定 義 している ところで, 自 己 の 土 地 の 上 に 抵 当 権 を 設 定 した 債 務 者 は, 使 用 する 権 利 を 失 わず, 収 益 する 権 利 も 処 分 する 権 利 も 失 わない しかし, 財 貨 に 抵 当 権 を 付 した 者 は,これらの 3 つの 権 利 の 全 部 を, 絶 対 的 なしか たで 保 持 しているわけではなく, 所 有 権 がその 損 失 において 支 分 化 されて 209

比 較 法 雑 誌 第 46 巻 第 3 号 (2012) いることは, 容 易 に 明 らかにできる まさに, 土 地 の 上 に 質 権 を 設 定 した 者 とことなって, 抵 当 権 を 設 定 した 者 が 占 有 と 収 益 を 保 持 するのである しかし,かれは 使 用, 収 益 する 絶 対 的 権 利 を 保 持 しているのであろうか かれは, 用 益 権 者 について, 収 益 の 濫 用 と 考 えられる 行 為 をなしうるのであろうか 衆 目 一 致 して,かれはそれをなしえないと 答 えるであろう また, 建 築 物 または 重 要 な 植 栽 を 除 去 することができないことを 認 める 場 合, 譲 渡 は 買 主 を 追 及 権,すなわち, 差 押 えおよび 債 務 弁 済 のための 売 却 (フランス 民 法 2182 条 2 項 参 照 )に 晒 すことを 認 める 場 合,かれは 処 分 する 絶 対 的 権 利 を 保 持 していると 言 ってよいであろうか それゆえ 結 論 としては,われわれによれば, 抵 当 権 はつねに 不 動 産 [ 権 ] であり, 動 産 [ 権 ]たる 債 権 に 従 たるものであってもそうであって, 所 有 権 の 支 分 権 を 構 成 するということになる われわれは, 同 一 の 理 由 により, 不 動 産 の 上 への 先 取 特 権 についても, 同 様 にいうことができるであろう 2114 条 1 項 [= 現 行 2393 条 1 項 ] 抵 当 権 とは, 債 務 の 履 行 のために 設 定 された 不 動 産 の 上 への 物 権 である 195 抵 当 ハ 法 律 又 ハ 人 意 ニ 因 リテ 或 ル 義 務 ヲ 他 ノ 義 務 ニ 先 タチテ 弁 償 スル 為 メニ 充 テ タル 不 動 産 ノ 上 ノ 物 権 ナリ Art.1202. Lʼhypothèque est indivisible, activement et passivement, sʼil nʼy a convention contraire, comme il est dit du gage et du nantissement immolilier [2114,2 er al.] 抵 当 権 は 反 対 の 合 意 がないかぎり, 動 産 質 権 および 不 動 産 質 権 について 述 べたと 同 様 に, 積 極 的 にも 消 極 的 にも 不 可 分 である 210

ボアソナード 帝 国 民 法 草 案 註 解 ⑴ Nº 398 この 積 極, 消 極 の 不 可 分 性 の 効 果 について 繰 り 返 す 必 要 はな い 3) それはすべての 物 的 担 保 sûretés réelles に 共 通 のものだからである( 第 1097 条, 第 1110 条, 第 1128 条 及 び 第 1137 条 ) ただ, 他 の 担 保 に 関 してすでに 述 べた 点,すなわち,この 不 可 分 性 が 抵 当 権 の 性 質 上 のものであり,その 意 味 で 合 意 されることを 要 するものでは 3) 不 可 分 性 の 定 義 は, 動 産 質 権 および 不 動 産 質 権 について 示 されているので, ボアソナードはここであえて 説 明 を 繰 り 返 すことはしないと 述 べる ところ が,ここで 想 定 されている 不 可 分 性 は 現 行 民 法 372 条 によって 準 用 される296 条 とは 意 味 あいを 異 にしているように 思 われる 同 条 は, 留 置 権 者 [= 抵 当 権 者 ] は 債 権 の 全 部 の 弁 済 を 受 けるまでは, 留 置 物 [= 抵 当 不 動 産 ]の 全 部 について その 権 利 を 行 使 することができる と 規 定 しているが,それは, 第 一 に, 目 的 物 の 全 部 をもって 被 担 保 債 権 を 担 保 し,また, 被 担 保 債 権 の 一 部 は 目 的 物 全 体 で 担 保 されるものと 解 されている したがって, 債 務 の 一 部 弁 済 によって 抵 当 権 設 定 登 記 の 変 更 はできない( 大 判 明 治 42 年 5 月 19 日 民 録 15 輯 263 頁 )ものの, これは 一 個 の 不 動 産 について 抵 当 権 が 設 定 された 場 合 を 前 提 とするものであっ て, 複 数 の 不 動 産 について 設 定 されたときは, 複 数 の 抵 当 権 が 成 立 するのが 一 物 一 権 の 原 則 の 帰 結 である 共 同 抵 当 制 度 (392 条 )は 不 可 分 性 の 例 外 ではなく, あくまでも 複 数 の 抵 当 権 相 互 の 関 係 を 規 律 するものなのである ところが,フランス 民 法 は 抵 当 目 的 物 が 複 数 個 存 在 することを 前 提 として 規 定 している( Elle est en entier sur tous les immeubles affectés, ) ボ アソナードもまたこのような 立 場 を 踏 襲 した 一 物 一 権 の 原 則 はフランス 民 法 においても,また, 旧 民 法 においても 明 文 の 規 定 がなく, 当 然 視 されていたと は 考 えられない 少 なくとも 担 保 に 関 する 限 りこの 原 理 は 貫 徹 されていないよ うに 思 われる ボアソナードが 援 用 している 留 置 権 droit de rétention に 関 する 1097 条 の 文 言 は, 留 置 する 権 利 を 有 する 複 数 の 物 des choses quʼil avait le droit de retenir,また, 動 産 質 権 gage に 関 する1110 条 の 文 言 も, des objets donnés en garantie と 規 定 されており,さらに, 不 動 産 質 権 nantissement immobilier は, 動 産 について 述 べたように 不 可 分 である,1137 条 も, 動 産 質 権 および 不 動 産 質 権 について 述 べたように 不 可 分 である と 規 定 しているからである しか し, 現 行 法 の 起 草 過 程 でも,この 変 改 はまったく 意 識 されなかったようである ( 民 法 修 正 案 理 由 書 参 照 ) ここでは 詳 論 することはできないが, 物 権 の 客 体 と しての 物 の 一 個 性 は, 集 合 物 の 議 論 とも 関 連 して 検 討 されるべき 問 題 であるよ うに 思 われる 211

比 較 法 雑 誌 第 46 巻 第 3 号 (2012) ないということを 想 起 しておこう ただし, 合 意 によって 排 除 されること ができるという 点 で,それは 本 質 上 de son essence のものではない 法 文 もこれを 明 示 する フランス 民 法 典 が, 抵 当 権 は, 性 質 上 不 可 分 である ( 第 2114 条 2 項 ) と 述 べているのは,おそらくこの 意 味 ではない フランス 民 法 典 は, 抵 当 権 は 地 役 権 と 同 じように, 物 の 性 質 上 不 可 分 であると 言 おうとしたように われわれには 思 われる [しかし]それは 正 確 ではなかろう フランス 民 法 典 がこうした 表 現 をしている 意 味 はともかくとして, 抵 当 権 の 不 可 分 性 は 当 事 者 の 意 思 から 生 じるということができる 法 律 はこの 意 思 を 推 定 す るが,それは 反 対 の 証 明 がないかぎりに 過 ぎない かくて, 草 案 20 条 3 号 が 法 律 の 規 定 による 不 可 分 である ものの 中 に 抵 当 権 をあげているのは, この 趣 旨 である 2114 条 [= 現 行 2393 条 ] 2 抵 当 権 は 性 質 上 不 可 分 であり,かつ,それが 設 定 されたすべての 不 動 産 全 体 の 上 に,その 不 動 産 のそれぞれに,および,それぞれの 部 分 につき 存 在 する 3 抵 当 権 はそれを 移 転 する 者 がいかなる 者 の 手 中 に 移 転 しても 追 及 することがで きる 196 抵 当 ハ 動 産 質 及 ヒ 不 動 産 質 ニ 付 キ 記 載 シタル 如 ク 働 方 及 ヒ 受 方 ニテ 不 可 分 ナリ 但 反 対 ノ 合 意 アルトキハ 此 限 ニ 在 ラス Art.1203. Lʼhypothèque peut être constituée non seulement sur la pleine propriété des immeubles, mais encore sur lʼusufruit, autre que lʼ usufruit légal des père et mère, et sur les droits de bail, dʼemphytéose et de superficie, et aussi su la nue propriété ou sur le fonds démembré de ces droits. [v.2118.] Toutefois, le pleine propriétaire ne peut hypothéquer séparément, soit la nue propriété, soit lʼusufruit, ni pareillement le sol sans 212

ボアソナード 帝 国 民 法 草 案 註 解 ⑴ les constructions ou plantatitons, ou celles-ci sans le sol. Il peut, au contraire, hypothéquer une part divise ou indivise de son fonds. Les servitutdes foncières ne peuvent être hypothéquées séparément du fonds dominant, ni les immeubles par destination séparément du fonds auquel ils sont attachés. Dans le cas où lʼexploitation dʼune mine est concédée, même au propriétaire du sol, lʼhypothèque ne peut portrer que sur la surface. Les marnières, turbières et carrières ne peuvent être hypothéquées séparément du sol que lorsquʼelles sont Iʼobject dʼun droit de bail. 抵 当 権 は, 不 動 産 の 完 全 な 所 有 権 の 上 のみならず, 父 母 の 法 定 用 益 権 を 除 く 用 益 権 の 上 にも, 賃 借 権, 永 借 権, 地 上 権, 虚 有 権 およびこれらの 権 利 の 支 分 した 不 動 産 の 上 にも 設 定 することができる ただし, 完 全 所 有 権 を 有 する 者 は, 虚 有 権 または 用 益 権 を 分 離 して 抵 当 権 を 設 定 することができず,また, 建 物 または 植 栽 なしに 土 地 に,あるい は 土 地 なしにこれらの 物 に 抵 当 権 を 設 定 することはできない これに 反 して, 土 地 の 分 割 された 部 分 または 不 可 分 の 部 分 について 抵 当 権 を 設 定 することができる 地 役 権 は 要 役 地 と 分 離 して 抵 当 権 を 設 定 することができず, 用 法 による 不 動 産 は,それに 付 着 した 不 動 産 から 分 離 して 抵 当 権 を 設 定 することがで きない 鉱 山 の 開 発 権 が 授 与 された 場 合,その 地 表 の 所 有 者 も, 地 表 上 にのみ 抵 当 権 を 設 定 することができる 泥 灰 地, 泥 炭 地, 採 石 場 は,それらが 借 地 権 の 目 的 となっているかぎり, 213

比 較 法 雑 誌 第 46 巻 第 3 号 (2012) 地 表 と 分 離 して 抵 当 権 を 設 定 することができる 4) Nº 399 ここでは, 抵 当 権 を 設 定 しうる 物 と 設 定 できない 物 を 問 題 とす るものである 5) 原 則 では,すべての 不 動 産 物 権 に 抵 当 権 を 設 定 することができ, 二, 三 4) 本 条 は 旧 版 では 5 項 から 成 っていたが, 冗 長 と 考 えられたためであろうか, 214 新 版 では 簡 素 化 された なお, 新 たに 第 6 項 を 起 こしている 参 考 までに, 旧 版 での 訳 文 を 示 しておく [ 5 項 ] 鉱 山 の 開 発 権 を 授 与 された 場 合, 鉱 山 およびその 地 表 が 同 一 の 所 有 者 に 属 するかいなかをとわず, 同 一 債 権 者,あるいは 他 の 債 権 者 のため, 抵 当 権 は 鉱 山 およびその 地 表 を 分 離 して 設 定 することができる 5) 1ボアソナードは 抵 当 権 の 目 的 物 について 詳 細 な 規 定 を 置 いており,フラン ス 民 法 と 異 なるボアソナードの 独 創 といってよい 抵 当 権 が 不 動 産 およびすべ ての 不 動 産 物 権 に 設 定 できる 原 則 を 明 らかにするとともに, 疑 義 を 生 じさせな いため, 重 ねて 抵 当 権 の 目 的 物 となる 物 権 について 規 定 し, 次 条 とともに 例 外 的 に 抵 当 権 の 設 定 が 許 されない 場 合 を 列 挙 したのである ボアソナードによれば, 抵 当 権 の 目 的 物 となる 物 権 は 所 有 権, 虚 有 権 nue propriété, 賃 借 権, 永 借 権, 地 上 権, 要 役 地 と 分 離 していない 地 役 権 である 以 下,これらの 権 利 について, 概 説 する cf. Cornu, Vocabulaire Juridique. 2 用 益 権 usufruit とは,フランス 民 法 (578 条 )を 基 礎 としてボアソナードが 導 入 した 制 度 であり, 他 人 に 属 する 物 ( 動 産 または 不 動 産 )について,その 用 法 にしたがい, 性 質 および 実 体 を 変 えることなく 善 良 な 管 理 者 として 有 期 に 使 用 および 収 益 をする 物 権 的 権 利 である( 草 案 47 条 ) ボアソナードは,すでに 草 案 71 条 1 項 において, 用 益 権 に 服 する 物 に 抵 当 権 を 設 定 しうるときは, 用 益 権 に 抵 当 権 を 設 定 することができるものと 規 定 していた 3ボアソナードはフランス 民 法 とは 異 なり(1708 条 以 下 ), 賃 借 権 を 物 権 とし た( 草 案 2 条 3 項 ) ただし, 賃 借 権 への 抵 当 権 の 設 定 は 譲 渡 転 貸 が 賃 借 人 に 禁 止 されていない 場 合 にかぎられる( 草 案 133 条 ) 4 虚 有 権 nue propriété とは, 所 有 権 が 支 分 されて, 用 益 権, 使 用 権, 居 住 権 な どの 権 利 がすべて 第 三 者 の 利 益 のために 設 定 されている 期 間, 所 有 者 になお 留 保 されている 名 目 的 な 所 有 権 を 指 す 表 現 である 5 永 借 権 emphytéose は, 期 間 30 年 以 上 50 年 以 下 の 賃 貸 借 である( 草 案 166 条 1 項, 2 項 ) フランス 民 法 は 永 借 権 の 規 定 を 有 さず,その 抵 当 権 設 定 については 議 論 があるところである( 藤 原 前 掲 書 21 頁 ) 現 行 民 法 の 永 小 作 権 の 原 型 であ るが, 賃 借 権 と 概 念 的 に 異 なる 物 権 ではなく, 賃 借 権 の 特 殊 な 類 型 とされ

ボアソナード 帝 国 民 法 草 案 註 解 ⑴ のものが 例 外 となる しかし, 物 権 はその 数 が 少 ないので, 法 律 は 抵 当 権 を 設 定 しえないものと 同 じく, 抵 当 権 を 設 定 しうるものを 列 挙 した フラ ンス[ 民 ] 法 典 は,これとは 異 なっている すなわち,あたかも, 物 にとっ て 抵 当 権 を 設 定 可 能 であることが 例 外 的 な 状 況 であるかのように, 抵 当 権 を 設 定 することのできるクラスの 物 だけをあげているに 過 ぎない( 第 2118 条 ) ただし,まず 第 一 に 取 引 上 の 物 たる 不 動 産 をあげており,かくして, [こうした] 制 限 的 な 形 式 が 拡 張 されているのである 草 案 では,まず, 抵 当 権 を 設 定 しうる 物 をあげている 第 一 に, 完 全 ま たは 用 益 権 に 支 分 される 所 有 権, 次 いで, 用 益 権 はいうまでもないが,た だし, 父 母 の 法 定 用 益 権 はこれの 例 外 である [この 用 益 権 は]もっぱら 一 身 に 専 属 し, 弁 済 がなくても 競 売 することはできない また, 不 動 産 賃 借 権 も 草 案 では 物 権 であるから 同 様 である[= 設 定 することができる] 最 後 に 長 期 の 賃 貸 借 である 永 借 権,および 特 殊 な 所 有 権 である 地 上 権 があ る Nº 400 抵 当 権 を 設 定 する 権 利 が 用 益 権 者 ( 第 71 条 ), 賃 借 人 ( 第 143 条 ) にあることは,すでに 以 前 において 認 められているところであり,また, ている したがって, 賃 借 権 の 規 定 が 準 用 される( 草 案 168 条 ) 6 地 上 権 superficie は, 他 人 の 所 有 に 属 する 土 地 の 上 において 建 物 または 竹 木 の 完 全 な 所 有 権 である フランス 民 法 には 規 定 はないが, 判 例 学 説 上 承 認 さ れてきた 制 度 であり,ボアソナードもこれを 当 然 に 踏 襲 している しかし, 現 行 法 における 地 上 権 とは 趣 を 異 にするものである 点 に 注 意 しなければならな い 土 地 と 建 物 を 別 個 の 不 動 産 とするわが 民 法 の 構 成 と 異 なって,フランス 民 法 およびボアソナード 草 案 では,ローマ 法 以 来 の 地 上 物 は 土 地 に 服 する 原 則 により, 建 物 等 は 土 地 所 有 権 に 吸 収 されて 独 立 の 所 有 権 客 体 とはならない(フ ランス 民 法 553 条 ) しかし, 例 外 として, 地 上 権 設 定 によって 建 物 等 が 地 盤 か ら 独 立 した 不 動 産 となるのである しかし,これらに 当 然 に 抵 当 権 の 設 定 が 認 められるわけではない ボアソナードは 注 意 深 く, 2 つの 場 面 を 区 別 する 1 つは,あらかじめ 完 全 所 有 権 が 支 分 されて 他 人 のために 地 上 権 が 設 定 されてい る 場 合 であり,もう 1 つは 完 全 所 有 権 を 有 する 者 が 土 地 を 支 分 して 虚 有 権 と 用 益 権 を 生 じさせる 場 合 である 前 者 については, 抵 当 権 を 設 定 することは 許 さ れるが, 後 者 については 許 されない 215

比 較 法 雑 誌 第 46 巻 第 3 号 (2012) 通 常 の 賃 貸 借 の 原 則 の 一 般 的 な 援 用 の 結 果 として, 永 借 権 にも 黙 示 的 に[ 抵 当 権 設 定 の 権 利 が] 認 められているとして, 異 論 があるところかもしれな い しかし, 同 じような 異 論 について 答 えたように,ある 理 論 はそれ 自 体 完 全 なものにしておくのが 良 い とりわけそれは, 用 益 権 のように, 日 本 では 多 かれ 少 なかれ, 新 しいものであるからである 法 律 の 中 で 用 益 権 者 の 権 利 だけを 学 ぼうとする 者 が, 用 益 権 者 がその 権 利 に 抵 当 権 を 設 定 する ことができることをそこに 見 いだすことは 有 用 である 抵 当 権 [の 章 ]で しか 問 題 にしないならば, 容 易 にこれを 見 つけることはできまい 賃 借 権 についても 同 様 である 物 権 性 が 賃 借 権 に 認 められたのは,ひとつの 革 新 である しかし,この 権 利 に 抵 当 権 を 設 定 できることは 疑 われるかもしれ ない これを 知 るためには,われわれがそこに[= 抵 当 権 を 論 じる 箇 所 の 説 明 をするところまで] 至 るまで 待 つ 必 要 はなかろう もしも, 地 上 権 者 について,その 権 利 に 抵 当 権 を 設 定 する 資 格 について 3 3 の 言 及 がないとしても, 地 上 権 は 建 物 または 植 栽 の 上 への 真 正 の 所 有 権 で あり, 疑 いの 余 地 はない しかし, 本 条 は 明 文 で,このことを 説 明 するも のであり,そしてこの 場 で, 用 益 権 と 同 様 に,この 権 利 と 結 びついた 禁 止 事 項 をあげる Nº 401 完 全 な 所 有 権 を 有 する 者 は, 用 益 権 や 地 上 権 を 設 定 することに より,その 権 利 を 支 分 しうるが, 虚 有 権 を 離 れて 用 益 権 の 上 に 抵 当 権 を, また, 土 地 とは 別 個 に 建 物 の 上 に,あるいは 同 様 に, 用 益 権 を 離 れて 虚 有 権 の 上 に,または 地 上 権 を 離 れて 土 地 の 上 に 抵 当 権 を 設 定 することもでき ると 考 えられよう 間 違 いなく,こうした 組 み 合 わせ combinaisons は 物 の 性 質 への 障 害 と なるものではない 抵 当 債 権 者 は, 抵 当 権 について 要 求 される 公 示 がなさ れるかぎり, 弁 済 のないときはその 支 分 [ 権 ]fraction,すなわち, 制 限 的 権 利 を 差 し 押 さえ, 売 却 する 権 利 をもちえよう しかし,それは[これ らの] 諸 権 利 者 の 間 に 紛 争 を 醸 成 させるため, 法 律 はこうした 所 有 権 の 支 分 化 を 助 長 すべきではない それゆえ, 本 条 では,これらの 所 有 権 の 支 分 権 があらかじめ 設 定 されて 216

ボアソナード 帝 国 民 法 草 案 註 解 ⑴ いるとき 以 外 は, 抵 当 権 は, 虚 有 権 と 別 個 に 用 益 権 の 上 にも,また, 用 益 権 とは 別 個 に 虚 有 権 の 上 にも,また, 土 地 と 別 個 に 地 上 権 の 上 にも, 地 上 権 と 別 個 に 土 地 の 上 にも, 設 定 することはできないものとした [ 原 註 1 ] [ 原 註 1 ] 公 式 の 法 典 [フランス 民 法 典 ]では,こうした 二 重 の 禁 止 に 言 及 し ていない 所 有 者 が 土 地 とは 別 に 建 物 に 抵 当 権 を 設 定 することも,また,あき らかに, 建 物 ぬきで 土 地 の 上 に 抵 当 権 を 設 定 することもできることが 望 まれた のである そのため, 抵 当 差 押 え saisie hypothécaire あるいは 建 物 または 土 地 の 売 却 の 効 果 によって 2 種 類 の 所 有 権 が 別 人 のもとに 帰 する 場 合,かれに 課 せ られる,あるいはかれによって 課 せられる 負 担 の 混 在 について 重 大 な 難 問 が 生 じることになろう ここに 禁 止 を 提 案 するわれわれの 理 由 があった それゆえ に, 競 売 のとき, 支 払 われるべきあるいは 受 領 されるべき 負 担 の 数 額 を 物 件 明 細 書 に 記 載 しなければならないであろう しかし, 所 有 権 が 建 物 ぬきで 土 地 に 抵 当 権 を 設 定 しようとする 場 合,どの 時 点 から,かれらは 地 上 権 者 に 過 ぎないものになるのであろうか?いつ,かれは ( 地 上 権 者 を 発 生 させうるものたる) 建 物 を 支 える 権 能 を 失 うのであろうか? あきらかに,これは 差 押 えのとき,そして 差 押 えが 生 じたときにかぎられよう これこそ,おそらく, 避 けなければならないであろう 不 明 確 な 状 況 なのである Nº 402 所 有 権 の 分 割 化 された 部 分,すなわち, 物 理 的 な 限 界 によって 画 された 部 分,それによって,いわば 別 個 の 所 有 権 となる 部 分 についても, また, 2 分 の 1, 3 分 の 1 あるいは 4 分 の 1 というような 不 可 分 の 割 合 部 分 についても, 抵 当 権 [の 設 定 ]は 障 害 となるものではない 前 の 場 合 に は, 弁 済 のないときは, 抵 当 権 が 設 定 されている 部 分 が 競 売 に 付 され, 以 後,その 部 分 から 切 り 離 されたものとは 別 個 の 不 動 産 となる 後 の 場 合, 競 買 人 は, 残 部 を 留 保 して 不 可 分 の 部 分 の 上 に 抵 当 権 を 設 定 した 債 務 者 と の 共 有 者 になる Nº 403 第 4 項 は 地 役 権 に 関 して 第 2 項 と 同 様 の,かつ,さらにより 顕 著 な 理 由 によって 解 決 を 与 えるものである 思 うに, 能 動 的 な 地 役 権 は 要 役 地 と 切 り 離 すことは 想 像 できない それは,いわば,ローマの 法 学 者 の 言 うように,[ 地 役 権 の] 特 質 des qualités であり,そもそも, 弁 済 のない 217

比 較 法 雑 誌 第 46 巻 第 3 号 (2012) とき, 競 売 の 時 に 地 役 権 [のみの] 買 主 を 見 いだしえないであろう 用 法 による 不 動 産 の 上 への 抵 当 権 の 設 定 の 禁 止 については,その 理 由 は 同 じではない それは,この 用 法 による 不 動 産 が 土 地 と 結 びついた 不 動 産 に 過 ぎず,かつ,この 付 着 が 継 続 するかぎりのものであることによる し たがって, 競 売 がなされるときは,それはもはや 通 常 の 動 産 以 外 のもので はないことになる Nº 404 国 によって 譲 与 された 鉱 山 mines et minères は, 抵 当 権 の 設 定 を 許 していない 特 別 法 に 服 する 譲 与 concession は 私 的 なものであるからで ある 地 表 と 鉱 山 が 同 ーの 所 有 者 に 属 する 場 合 でも,この 者 が 抵 当 権 を 設 定 できるのは 地 表 についてだけであって, 鉱 山 についてではない 地 表 の 所 有 者 は, 地 表 から 切 り 離 された 泥 灰 地 manière, 泥 炭 鉱 tourbière, 採 石 場 carrière の 上 にも 抵 当 権 を 設 定 することはできない なぜな らば, 抵 当 差 押 えや 売 却 の 場 合 に, 競 落 人 の 権 利 の 範 囲 と 期 間 について 恣 意 的 なしかたによらずに 決 定 することは 難 しいからである しかし, 地 表 が 賃 貸 されるときは, 賃 借 入 はまったく 他 の 賃 借 権 のように 抵 当 権 を 設 定 できようし, 競 落 人 は 当 初 の 契 約 でかれに 与 えられた 範 囲 と 期 間 をもった 権 利 を 行 使 することになるであろう 2118 条 [= 現 2397 条 ] 抵 当 権 の 目 的 物 は 以 下 のものとする 一 取 引 される 不 動 産 および 不 動 産 とみなされるその 付 従 物 accessoires 二 その 存 続 期 間 中 の 果 実 および 付 従 物 2119 条 [= 現 2398 条 ] 動 産 は 抵 当 権 によって 追 求 されない 2120 条 [ 現 2399 条 ] 船 舶 抵 当 権 に 関 する 海 事 法 の 規 定 は,この 法 律 によってなんら 変 更 されない 197 抵 当 ハ 不 動 産 ノ 完 全 所 有 権 ノ 上 ノミナラス 用 益 権, 賃 借 権, 永 借 権 及 ヒ 地 上 権 ノ 上 ニモ 此 等 ノ 権 利 ヲ 支 分 シタル 所 有 権 ノ 上 ニモ 之 ヲ 設 定 スルコトヲ 得 218

ボアソナード 帝 国 民 法 草 案 註 解 ⑴ 2 然 レトモ 完 全 ノ 所 有 権 ヲ 有 スル 者 ハ 虚 有 権 又 ハ 用 益 権 ノミヲ 分 離 シテ 之 ヲ 抵 当 ト 為 スコトヲ 得 ス 3 之 ニ 反 シテ 所 有 者 ハ 其 不 動 産 ノ 限 界 ニ 因 リテ 定 マリタル 部 分 又 ハ 其 不 分 ノ 幾 部 ヲ 抵 当 ト 為 スコトヲ 得 4 地 役 ハ 要 役 地 ヨリ 分 離 シテ 之 ヲ 抵 当 ト 為 スコトヲ 得 ス 又 用 法 ニ 因 ル 不 動 産 ハ 其 附 着 スル 不 動 産 ヨリ 分 離 シテ 之 ヲ 抵 当 ト 為 スコトヲ 得 ス Art.1204. Ne peuvent être hypothéqués: Les droits dʼusage et dʼhabitation, ni les autres biens inaliénables ou insaisissables; Les créances immobilières prévues aux nº s 2 et 3 de lʼarticles 11; Les rentes sur lʼetat et autres créances immobillisées, comme il est prévu au nº4 deduit article 11, si la loi qui en autorise lʼimmobilisation nʼen permet pas lʼhypothèque. Les meubles, sauf ce qui est dit des navires et bateaux dans les lois spéciales portées à ce sujet. [2119,2120; L.fr.des 10 22 déc.1874.] 以 下 のものには 抵 当 権 を 設 定 することができない 使 用 権 および 居 住 権 および 譲 渡 できず,または 差 押 えのできないその 他 の 財 産 第 11 条 2 項 および 3 項 に 定 めた 不 動 産 債 権 国 家 に 対 する 定 期 金 債 権 その 他 第 11 条 第 4 項 に 規 定 する 不 動 産 債 権 た だし, 不 動 産 化 を 許 与 する 法 律 が 抵 当 権 の 設 定 を 許 すときはこのかぎりで はない 動 産 ただし, 特 別 法 において 船 舶 につき 規 定 するものを 除 く Nº 405 第 1204 条 は 他 のより 直 接 的 な 抵 当 権 の 設 定 禁 止 をあげている 第 一 のものは, 用 益 権 に 次 いで 当 然 想 起 される 2 個 の 権 利,すなわち, 使 用 権 droit d ʼusage および 居 住 権 droit d ʼhabitation に 関 する これらの 権 利 はその 設 定 を 受 けた 者 の 利 益 のために 譲 渡 することができない( 第 119 219

比 較 法 雑 誌 第 46 巻 第 3 号 (2012) 条 参 照 ) 6) これにより, 抵 当 権 が 同 様 に 不 可 能 であることは 明 らかである 抵 当 権 は 競 売 に 帰 することになるが,この 売 買 は 禁 じられているからであ る 法 律 はこうした 特 別 の 禁 止 に 付 け 加 えて, 譲 渡 または 差 押 えのできない 財 貨 について 抵 当 権 を 設 定 することを 一 般 的 に 禁 じている Nº 406 第 二 に, 法 律 は 第 11 条 第 2 項 に 記 載 した 次 の 3 つの 不 動 産 債 権 の 上 に 抵 当 権 を 設 定 することを 禁 止 している 第 一 の 場 合 取 得 すべき 不 動 産 が 確 定 物 un corps certain ではなく, 量 のみが 定 められた 物 une quantité であるときの 不 動 産 物 権 の 取 得 を 目 的 と する 債 権 たとえば, 広 範 な 量 の 中 から 選 択 される 土 地 の 一 定 部 分 tsou- bos のようなものがそれである この 場 合 に, 所 有 権 が 同 意 のみで 移 転 す ることができないことは 明 らかである 要 約 者 は 債 権 しか 取 得 することが できず, 所 有 権 は 引 渡 し,または 双 方 の 一 致 あるいは 合 意 された 方 法 によっ てしか 取 得 されないからである( 第 352 条, 第 633 条 ) ただし,その 債 権 は 不 動 産 の 取 得 を 目 的 とするものであるから, 不 動 産 [ 権 ]である それが 抵 当 権 を 設 定 できる 理 由 であろうか 草 案 ではこれを 認 めない 債 権 が, 実 際 に 約 束 された 土 地 の 取 得 を 実 現 することになるかは 十 分 に 確 実 ではない 諾 約 者 は 土 地 の 約 束 した 分 量 を 有 せず, 最 終 的 に,しかもおそらくはその 支 払 いをすることすらできない 損 害 賠 償 を 命 じられることがあるかもしれない したがって, 確 実 には 目 的 を 達 することのできないようなことを 当 事 者 に 約 束 させるごときは 抵 当 権 の 目 的 に 悖 るものであろう そのうえ,こうした 抵 当 権 に 必 要 な 公 示 を 与 えるには 重 大 な 困 難 があろう 第 二 の 場 合 抵 当 としえない 第 二 の 不 動 産 債 権 は, 不 動 産 を 取 り 戻 すこ 6) 使 用 権 および 居 住 権 の 上 に 抵 当 権 を 設 定 しえないことはフランス 民 法 上, 明 文 の 規 定 は 存 しないが, 譲 渡, 賃 貸 をなしえない(フランス 民 法 631 条,634 条 ) ことから, 学 説 上 抵 当 権 を 設 定 しえないと 解 されている 藤 原 前 掲 書 27 頁 ボアソナードもこれに 従 い, 譲 渡 賃 貸 をなしえない 旨 の 規 定 を 置 く( 草 案 119 条 )とともに, 本 条 で 抵 当 権 設 定 禁 止 を 明 らかにしたのである 220

ボアソナード 帝 国 民 法 草 案 註 解 ⑴ とを 目 的 とするものである 7) この 場 合 はまれであり, 隣 接 する 他 のもの と 混 同 されてはならない 不 動 産 の 譲 渡 の 解 除 訴 権 action en résolution, 取 消 訴 権 action en rescision, 廃 罷 訴 権 action en révocation を 有 する 場 合, 不 動 産 を 回 復 しようとす る 訴 権 を 有 しているということになるが, 現 実 には,すでにこの 者 は 不 動 産 上 の 権 利 を 有 しているということができる ただ,それに 必 要 な 証 明 を する[という] 条 件 があるに 過 ぎない かれは,むしろ, 譲 渡 の 有 効 な 条 件 が 満 たされていないがゆえに, 不 動 産 の 上 に 以 前 の 権 利 を 保 持 している のである こうした 場 合 には, 譲 渡 人 は, 訴 権 の 目 的 となっている 不 動 産 の 上 に, あるがままの 権 利 として,すなわち, 条 件 付 なものとして 勝 訴 に 服 するも のとして, 抵 当 権 を 設 定 することができよう 事 実, 明 示 的 または 黙 示 的 に 解 除 条 件 付 で 財 貨 を 譲 渡 した 者 は, 停 止 条 件 付 で 所 有 権 を 留 保 するので あり, 第 430 条 が 述 べるところによれば, 両 当 事 者 がその 権 利 を,その 割 り 当 てられたのと 同 一 の 条 件 で 処 分 しうるが,これには 抵 当 権 を 設 定 する 権 利 を 含 んでいるのであって,そもそも 抵 当 権 はそれ 以 外 の 障 害 に 遭 うも のでない 解 除 権 についてわれわれが 述 べることは, 譲 渡 を 取 り 消 し,あるいは 廃 罷 する 権 利 についても 同 一 の 理 由 によって 適 用 される 条 件 付 抵 当 権 は, 訴 権 の 効 力 によって 回 復 される 権 利 に 対 して 許 容 される 訴 権 はそれ 自 体 物 的 [= 物 的 訴 権 ]であり,かつ 不 動 産 であからである しかし, 本 条 の 禁 止 は 詐 欺 によってなされた 譲 渡 の 取 消 訴 権 にも 適 用 さ れることになる この 特 殊 な 場 合 においては, 訴 権 は 全 く 人 的 なものであ る 草 案 は 明 文 でこれを 定 める( 第 333 条 第 3 項, 第 4 項 ) 譲 渡 人 は 停 止 条 件 付 でその 所 有 権 を 保 持 するのではない それが 第 三 者 の 手 中 に 移 れ ば,かれは 賠 償 réparation として 回 復 できるに 過 ぎない それゆえ, 法 律 7) フランス 民 法 526 条 3 項 は 不 動 産 の 回 復 recouvrer を 請 求 することを 目 的 とす る 訴 権 を 不 動 産 と 規 定 するが,ボアソナードはこれを 物 的 訴 権 action réelle と 解 している 221

比 較 法 雑 誌 第 46 巻 第 3 号 (2012) はこうした 不 動 産 所 有 権 に 導 くことのない 人 的 な 権 利 の 上 には 抵 当 権 を 設 定 することを 許 さないものと 考 えられる それが 第 663 条 ないし 第 665 条 の 扱 う 片 務 的 であれ, 双 務 的 であれ, 売 買 の 予 約 promesse はこの 場 合 に 接 近 しうるものである すなわち, 予 約 は 条 件 付 物 権 を 与 えるものであるが,しばしば, 物 権 にあてはまるものとし て 抵 当 権 も 可 能 であり,また, 債 権 すなわち 人 的 権 利 のみを 与 えるときは, その 現 物 履 行 の 不 確 実 性 が 抵 当 権 の 障 害 となろう 第 三 の 場 合 法 律 が 抵 当 権 の 設 定 を 禁 じる 第 三 の 不 動 産 債 権 は, 建 築 者 の 材 料 をもって 建 物 の 建 築 を 目 的 とする 債 権 である [ 原 註 a] その 目 的 は, 履 行 後 は 新 しい 建 物 が 債 務 者 の 資 産 の 中 にあることになるから,たしかに 不 動 産 であり,そして, 法 律 が 材 料 は 建 築 者 に 属 するものでなければなら ないと 仮 定 することは 理 由 のないことではない そうでなく, 注 文 者 に 属 さなければならないとすると,かれは 建 築 そのものをさせる 権 利 しか 有 せ ず, 新 しい 財 貨 ではなく,この 材 料 の 変 形 を 求 める 権 利 を 得 るに 過 ぎない ことになろう こうした 債 権 が 抵 当 となしえない 理 由 については, 第 一 に, 前 の 二 つと 同 様 に,また,それ 以 上 に, 不 確 実 性, 新 たな 不 動 産 を 注 文 者 の 資 産 とし て 加 えることになる 現 実 の 履 行 の 蓋 然 性 の 小 さいことがある 債 務 は 損 害 賠 償 に 帰 する 恐 れがきわめて 大 きい 次 に, 建 築 は, 現 実 にそれが 履 行 さ れたとしても,つねに 抵 当 としうる 地 上 権 を 設 定 するとはかぎらない こ のためには, 注 文 者 がその 上 に 建 物 が 建 てられた 土 地 所 有 者 ではないこと が 必 要 となろう なぜならば, 前 条 にみたように, 注 文 者 は 土 地 および 建 物 双 方 を 有 しているときは, 他 と 切 り 離 して 抵 当 権 を 設 定 することはでき ないからである [ 原 註 a] 新 版 では 削 除 されているが, 旧 版 に 以 下 のような 註 が 付 されていた この 債 権 は 以 後, 第 11 条 第 3 項 [ 法 の 規 定 による 不 動 産 は 以 下 のものとす る 3º 建 築 者 の 材 料 をもってする 建 物 の 建 築 を 目 的 とする 債 権 ]が 形 造 るもの であるが, 原 規 定 では 示 されていなかった 改 訂 のときに 付 け 加 えられたもの である 222

ボアソナード 帝 国 民 法 草 案 註 解 ⑴ Nº 407 第 四 の 不 動 産 債 権,すなわち 第 11 条 第 4 項 に 示 したものについ ては,ここでは, 抵 当 権 設 定 を 禁 止 も 承 認 もしない まず 第 一 に, 国 に 対 する 年 金 権 rente その 他 国 または 日 本 銀 行 のようないくつかの 勢 力 ある 会 社 を 主 債 務 者 あるいは 従 たる 債 務 者 とする 債 権 を 不 動 産 化 することを 許 す のは,きわめて 例 外 的 なものに 過 ぎないであろう 次 に,それらを 不 動 産 としたときでも,そのことはこうした 不 動 産 の 抵 当 を 許 した 理 由 とはなら ないであろう しばしば,これらの 債 権 は 譲 渡 することができず, 同 時 に, 差 し 押 えることもできないと 宣 言 されるであろうが,それは 抵 当 を 妨 害 す るに 十 分 であろう [ 原 註 b] しかし 特 別 法 により 抵 当 をなしえる 日 が 来 るな らば,この 法 律 はそれを 公 示 する 方 策 もできなければならない それは 明 らかに 通 常 の 仕 方 ではなかろう 年 金 権 や 類 似 の 債 権 は 形 ある 不 動 産 のよ うな 物 理 的 な 場 をもつものではないからである 明 らかに, 国 または 債 務 者 たる 会 社 の 帳 簿 上 になされた 届 出 において, 抵 当 債 権 者 の 氏 名, 付 与 さ れた 権 利 およびこれによって 担 保 される 債 権 額 を 証 書 上 記 載 して, 公 示 が 存 在 していなければならない [ 原 註 b] 第 11 条 の 第 一 草 案 以 来,われわれがこの 規 定 の 有 用 性 について 示 し てきた 予 想 が, 実 行 されている 日 本 の 新 たな 華 族 の 創 設 に, 真 の 世 襲 財 産 majorat すなわち, 貴 族 の 長 男 にのみ 世 襲 される 財 産 をなす 国 に 対 する 年 金 基 金 が 結 びつけられた この 年 金 は, 長 子 への 承 継 を 確 実 なものとするため, 譲 渡 できず 差 し 押 えることはことはできないものと 宣 言 されている ただし, 厳 密 に 言 えば,そもそも 不 動 産 化 されないのである ここは, 世 襲 財 産 制 度 の 評 価 および 倫 理 的 経 済 的 秩 序 におけるその 不 都 合 を 示 すところではない もっとも,われわれが 述 べたことは,フランスについて は, 私 の Histoire de la Réserve héréditaire et son influence morale et économique, Paris 1872 で 参 照 することができる Nº 408 不 動 産 上 の 物 権 とされる 抵 当 権 という 定 義 自 体 で, 動 産 [ 抵 当 権 ]を 排 除 するに 十 分 であろう ただし,これによって, 動 産 を 抵 当 に 入 れることに 対 する 禁 止 には 例 外 があることは,まず 禁 止 が 原 則 であるこ とから 出 発 するものでなければならない 223

比 較 法 雑 誌 第 46 巻 第 3 号 (2012) 例 外 は 船 舶 に 関 するものであり,それが 本 質 的 に 動 産 であるとしても, 多 大 な 価 値 を 有 して,その 所 有 者 らの 信 用 手 段 でありえる 確 かに, 動 産 としては 質 入 れをすることもできる しかし,そこでは, 債 務 者 は 占 有 を 債 権 者 のために 放 棄 しなければならず,そこから 収 益 を 得 ることを 妨 げる すでにフランスや 他 の 諸 国 においては, 債 権 者 に 質 入 れすることなく, 船 舶 を 抵 当 に 入 れることが 考 えられている この 抵 当 権 に 対 して, 公 示 は 船 舶 の 碇 泊 港 の 登 録 簿 へ 記 入 するという 特 別 の 方 法 によってなされてい る 滌 除 もまた, 特 別 の 方 式 に 服 する(フランス1874 年 12 月 10 日 法 参 照 ) 日 本 にも 同 様 の 抵 当 権 を 認 める 必 要 があることが 感 じられる それは 少 なくとも 黙 示 的 に,19 世 紀 の 特 別 法 により 明 治 の 年 に 認 められてきたので あるが,ただ, 実 地 経 験 により 法 律 への 多 少 の 付 加 をすることになるかも しれないものである Nº 409 これら 2 個 の 規 定, 原 則 と 例 外 はフランス 法 典 [= 民 法 典 ] 法 から 借 用 したようである( 第 2119 条 及 び 第 2120 条 ) しかし, 2 個 の 法 律 の 間 には 完 全 な 同 一 性 はない フランスの 法 典 では, 動 産 は 抵 当 権 によっ て 追 及 することができない としているが,それは, 動 産 は 債 権 者 間 の 優 先 権 については 抵 当 となしうるが, 第 三 取 得 者 tiers détenteurs に 対 する 追 及 権 についてはそうではないことを 意 味 するものと 考 えられよう しかし ながら,それは,その 定 式 をパリの 旧 慣 習 法 から 借 用 したこれらの 規 定 の 沿 革 上 からも 明 らかであり,その 慣 習 自 体 パリのシャトレの 裁 判 例 に 倣 っ たものであって,そこでは, 古 くから 動 産 は 抵 当 に 入 れることができず, いずれの 効 果 も 生 じないことを 示 すものと 解 されていたのである それは 特 定 の 先 取 特 権 の 対 象 でありうるものであった ただし,せいぜい,それ が 債 務 者 の 占 有 下 にあるかぎり, 債 務 者 の 手 中 から 詐 欺 によって 逸 出 した ときは, 第 三 者 に 対 して 回 復 請 求 することができるにとどまる しかし, それは 先 取 特 権 の 効 果 でも 抵 当 権 の 効 果 でもなく, 廃 罷 訴 権 [= 詐 害 行 為 取 消 訴 権 ]の 通 常 の 効 果 によるものである フランスの 法 典 は 船 舶 に 関 する 海 事 法 の 規 定 を 留 保 している ただし, 224

ボアソナード 帝 国 民 法 草 案 註 解 ⑴ 船 舶 抵 当 権 には 言 及 はない それは 近 年 の 制 度 である そこに 船 舶 の 上 へ の 種 々の 先 取 特 権 ( 商 法 典 第 190 条 ~ 第 196 条 参 照 )に 言 及 がある 2120 条 は,それゆえ, 動 産 に 関 する 特 別 の 先 取 特 権 の 章 に 置 かれるべきものであ ろう 2119 動 産 は 抵 当 権 によって 追 求 されない 2120 条 海 上 船 舶 に 関 する 海 事 法 の 規 定 は,この 法 律 によって 何 ら 変 更 されない 198 1 左 ニ 掲 クルモノハ 之 ヲ 抵 当 ト 為 スコトヲ 得 ス 第 一 使 用 権, 住 居 権 其 他 譲 渡 スコトヲ 得 ス 又 ハ 差 押 フルコトヲ 得 サル 財 産 第 二 財 産 編 第 十 条 第 二 号 及 ヒ 第 三 号 ニ 掲 ケタル 如 キ 不 動 産 債 権 第 三 同 条 第 四 号 ニ 掲 ケタル 如 キ 不 動 産 ト 為 シタル 債 権 但 之 ヲ 不 動 産 ト 為 コト ヲ 許 可 スル 法 律 カ 其 抵 当 ヲ 許 ササルトキニ 限 ル 2 船 舶 ノ 抵 当 ニ 付 テハ 商 法 ノ 規 定 ニ 従 フ Art.1205. Les dispositions du présent Code sont applicable aux hypothèques établies par le Code de Commerce et par les lois spéciales, sur tous les points qui ne sont pas réglés autrement par lesdites lois. 本 法 典 の 諸 規 定 は, 商 法 典 および 特 別 法 により 定 められた 抵 当 権 に 対 し て,これらの 特 別 法 に 別 段 の 定 めをしていないすべての 点 において 適 用 さ れる Nº 410 本 条 は 前 条 の 最 後 の 部 分 [ 船 舶 抵 当 権 ]に 類 似 するものであり, 本 章 の 準 則 が 抵 当 権 の 一 般 法 をなし, 商 法 によって 不 動 産 上 に 設 定 される ことのある 抵 当 権 を[も] 規 律 するものであることを 定 める 事 実, 債 権 者 集 団 のための 破 産 者 の 財 産 上 への 一 般 法 定 抵 当 権 がありえる(フランス 225

比 較 法 雑 誌 第 46 巻 第 3 号 (2012) 商 法 第 490 条 2 項 参 照 ) この 抵 当 権 は 若 干 の 特 則 を 有 することがあろう ただし,それは, 別 段 の 定 めがないすべての 点 につき,なお 本 法 典 に 服 す るのである 199 此 章 ノ 規 定 ハ 商 法 其 他 特 別 法 ニ 於 テ 異 例 ヲ 設 ケサル 限 リハ 此 等 ノ 法 律 ヲ 以 テ 設 定 シタル 抵 当 ニ 之 ヲ 適 用 ス Art.1206. Lʼhypothèques sʼétend, du plein droit, aux augmentations, ou améliorations qui peuvent survenir au fonds, soit par des causes fortuites et gratuites, comme lʼalluvion, soit par le fait et aux frais du débiteur, comme par des constructions, plantations ou autres ouvrages, pourvu quʼil nʼy ait pas fraude à lʼégard des autres créanciers et sauf le privilége des architetctes et enrepreneurs de travaux, sur la plus-value, tel quʼil est réglé au Chapitre précédent.[2133.] Elle ne sʼétend pas aux fonds contigus que le débiteur aurait acquis, même gatuitement, encore quʼil les ait incorporés au fonds hypothéqué, au moyen de nouvelles clôtures ou par la suppression des ancinennes. 抵 当 権 は, 堆 積 地 のような 偶 然 かつ 無 償 の 原 因 であれ, 建 築, 植 栽 その 他 の 工 作 のような 債 務 者 の 行 為 および 費 用 によるものであれ, 土 地 に 生 じ ることのある 増 加 または 改 良 の 上 に 当 然 におよぶ ただし, 前 章 に 規 定 し たような 増 価 分 について, 他 債 権 者 に 対 する 詐 欺 がないことを 要 し,かつ, 建 築 家 および 工 事 請 負 人 の 先 取 特 権 は 除 外 される 抵 当 権 は, 債 務 者 が 取 得 することのある 隣 接 地 には, 無 償 であれ, 新 た な 囲 障 または 旧 囲 障 の 撤 去 によって 抵 当 地 と 合 体 した 場 合 であってもおよ ばない Nº 411 本 条 は,おそらくは 簡 潔 に 過 ぎて 疑 義 を 生 じているフランス 法 226

ボアソナード 帝 国 民 法 草 案 註 解 ⑴ 2133 条 を 発 展 させる 点 で 異 なるものである すなわち, 抵 当 権 は 抵 当 不 動 産 に 生 じる 一 切 の 改 良 に 及 ぶ と 言 うが, 増 価 については 沈 黙 しており, 生 じうる 改 良 の 原 因 については 説 明 をしていない われわれの 考 えでは,ここで 提 案 された 解 決 はフランス 法 にしたがって 与 えられなければならないものである 第 一 に, 土 地 に 生 じた 偶 然 的 な 改 良 は 異 議 なく 抵 当 債 権 者 の 利 益 となる それは, 法 文 が 入 念 にそれを 示 しているように, 無 償 であるためである 近 隣 での 道 路 や 運 河, 鉄 道 の 開 設, 橋 梁 の 設 置 等 の 工 事 から 生 じた 増 価 が それである 堆 積 のように, 偶 然 かつ 無 償 の 性 質 を 有 する 取 得 についても 同 様 である これは 本 条 の 与 えた 例 示 である Nº 412 次 に, 建 築, 植 栽 その 他 の 工 事 のような, 債 務 者 の 行 為 によ り,かつ,その 費 用 によって 得 られた 改 良 が 来 る ここでは, 疑 義 が 生 じ うるであろう 債 務 者 がその 財 産 から 支 出 したものは, 債 権 者 の 一 人 の 利 益 を 増 加 させるため[ 総 ] 債 権 者 の 一 般 担 保 を 減 縮 させるものだからであ る しかしながら, 費 用 の 重 要 性 においては 多 くのバラエティがあり,ま た, 法 律 が 費 用 が 抵 当 債 権 者 に 利 益 を 与 えることを 原 則 に 据 える 多 くの 場 合, 費 用 は 適 法 なものでありうる 他 方 で, 濫 用 がありうるから, 同 時 に それを 防 ぐために,ただちに 措 置 をとるべく, 法 律 はまず 他 債 権 者 への 詐 欺 の 場 合 を 除 外 する 次 いで, 建 築 及 びその 他 の 工 事 は 第 1178 条 及 び 第 1180 条 に 規 定 する 建 築 家 および 工 事 請 負 人 の 先 取 特 権 の 原 因 となりうるこ とを 想 起 させているのである かくして, 抵 当 権 の 拡 張 はこれらの 者 が 弁 済 された 後 の 増 価 について 残 存 する 分 についてのみ 生 じることになろう Nº 413 最 後 に, 法 律 は, 債 務 者 が 抵 当 地 に 隣 接 する 土 地 を 取 得 したこ とを 想 定 している ここでは, 準 則 は 逆 になる すなわち, 抵 当 権 は 拡 張 されず, 例 外 は 存 しない 新 たに 取 得 されたものが 抵 当 権 に 服 する 場 合 で あっても,それはしばしば,まず 第 一 に 売 主 の 先 取 特 権 に 服 することにな る ただし, 代 金 が 債 務 者 の 金 銭 で 支 払 われていれば, 一 般 債 務 者 を 侵 害 することになる 交 換 の 場 合, 交 換 された 不 動 産 は 同 様 に 一 般 担 保 から 除 外 されてしまうことになり, 本 来 の 合 意 の 外 で[ 債 権 者 ] 全 体 masse を 害 227

比 較 法 雑 誌 第 46 巻 第 3 号 (2012) する 行 為 によって 増 加 した 担 保 を, 抵 当 債 権 者 が 受 け 取 るというこの 結 果 は 受 け 入 れがたいであろう 最 後 に, 法 律 は, 債 務 者 が 新 旧 不 動 産 を, 新 たに 一 個 の 障 壁 で 取 り 囲 む ことにより,あるいは 内 部 の 障 壁 を 撤 去 することにより, 新 たな 不 動 産 と 従 来 の 不 動 産 をできるかぎり 密 着 させることによって 合 体 させた 場 合 で も, 抵 当 権 が 及 ばないことを 明 らかにする ここでは 意 思 の 問 題 に 関 せず, 法 と 正 義 の 理 由 に 関 するから, 多 かれ 少 なかれ 債 務 者 の 明 白 な 行 為 が 解 決 に 変 化 をもたらさないことは 当 然 であ る 2113 取 得 された 抵 当 権 は 抵 当 不 動 産 について 生 じたすべての 改 良 に 及 ぶ 2ある 者 が 他 人 の 土 地 の 上 に 自 己 のために 建 築 することができる 現 実 の 権 利 を 有 するときは, 建 築 が 開 始 され,または 単 に 計 画 された 建 物 に 抵 当 権 を 設 定 すること ができる 建 物 の 損 壊 の 場 合 には,この 抵 当 権 は 同 一 の 敷 地 に 建 設 される 新 たな 建 築 物 の 上 に 法 律 上 当 然 に 移 される 200 抵 当 ハ 意 外 及 ヒ 無 償 ノ 原 因 ニ 由 リ 或 ハ 債 権 者 ノ 所 為 及 ヒ 費 用 ニ 因 リテ 不 動 産 ニ 生 スルコト 有 ル 可 キ 増 価 又 ハ 改 良 ニ 当 然 及 フモノトス 但 他 ノ 債 権 者 ニ 対 シテ 詐 害 ナキ コトヲ 要 シ 且 前 章 ニ 規 定 シタル 如 キ 工 匠 技 師 及 ヒ 工 事 請 負 人 ノ 先 取 特 権 ヲ 妨 ケス 2 抵 当 ハ 債 務 者 ガ 縦 令 無 償 ニテ 取 得 シタルモノナルモ 其 隣 接 地 ニ 及 ハサルモノト ス 但 新 囲 障 ノ 設 立 又 ハ 旧 囲 障 ノ 廃 棄 ニ 因 リテ 隣 接 地 ヲ 抵 当 不 動 産 ニ 合 体 シタルトキ モ 亦 同 シ Art.1207. Les pertes, diminutions ou détériorations des biens hypothéqués, provenant de causes fortuites ou majeures, ou du fait dʼun tiers, sont au détriment du créancier, sauf son droit sur lʼindeminité, sʼ il y a lieu, comme il est dit à lʼarticle 1138, au sujet des priviléges. Si les biens hypothéqués ont subi des diminutions ou détériora- 228

ボアソナード 帝 国 民 法 草 案 註 解 ⑴ tions par le fait du débiteur ou par défaut dʼentretien, de telle sorte que la garantie du créancier soit devenue insuffisante, le débiteur est tenu de donner au créancier un supplément dʼhypothèque.[v.2131.] En cas dʼimpossibilité de le faire, il est tenu de rembourser la dettte, même avant lʼéchéance, dans la mesure où la garantie du créancier est devenue insuffisante.[1188.] 偶 然 または 不 可 抗 力 の 原 因 による,あるいは 第 三 者 の 行 為 による 抵 当 物 の 滅 失, 縮 減 または 損 傷 は 債 権 者 の 損 失 となる ただし, 先 取 特 権 に 関 す る 第 1138 条 に 規 定 したように, 必 要 な 場 合 に 債 権 者 の 損 害 賠 償 の 権 利 を 妨 げない 抵 当 物 が 債 権 者 の 行 為 または 保 存 の 瑕 疵 によって 縮 減 または 損 傷 をこう むり,それによって 債 権 者 の 担 保 が 不 十 分 となったときは, 債 権 者 は 債 権 者 に 抵 当 権 の 補 充 を 供 与 する 義 務 を 負 う [ 第 2131 条 参 照 ] これが 不 可 能 であるときは, 債 権 者 は 弁 済 前 であっても, 債 権 者 の 担 保 が 不 十 分 となったかぎりで 債 務 を 償 還 する 義 務 を 負 う Nº 414 本 条 は 前 条 の 裏 面 である すなわち, 抵 当 物 件 が 縮 減 または 損 傷 を 被 った 場 合 である まず, 偶 発 的 または 不 可 抗 力 あるいは 第 三 者 の 行 為 から 生 じた 場 合,そ れらが 債 務 者 にとり, 偶 然 的 または 不 可 抗 力 であることを 想 定 する これ らの 場 合 には, 滅 失 は 債 権 者 [の 側 ]にあるが, 第 三 者 に 負 担 させる 損 害 賠 償 の 権 利 を 妨 げるものではない ただし,この 損 害 賠 償 は 不 法 行 為 の 結 果 としての 通 常 の 損 害 賠 償 でありうる 公 益 を 原 因 とする 収 用 の 補 償 につ いても 同 様 であろう そこでは 第 三 者 は 国 または 国 の 権 利 の 専 売 特 許 会 社 compagnie concessionnaire d ʼun droit de l ʼEtat とは 別 のものである Nº 415 次 に 法 文 は 抵 当 物 件 が 縮 減 または 損 傷 ( 保 存 の 瑕 疵 もこの 場 合 の 一 つである)をこうむったのが 債 務 者 の 過 失 によるものであること,そ して,その 結 果 債 務 者 の 担 保 が 不 十 分 となったことを 想 定 している この 229

比 較 法 雑 誌 第 46 巻 第 3 号 (2012) 場 合 債 権 者 はそれを 甘 受 すべきではなく, 債 権 者 は 他 の 財 産 について 抵 当 権 の 補 充 を 供 与 しなければならない この 新 しい 抵 当 権 は 明 らかに 先 のも のと 同 順 位 ではなかろう 供 与 された 財 貨 がまだ 抵 当 に 付 せられていない ときはそれは 優 先 権 をもつであろうが,これと 反 対 の 場 合 には,その 順 位 は 劣 後 することになろう 債 務 者 が 抵 当 権 の 補 充 を 供 与 することができないときは, 救 済 は 一 般 原 理 によって 示 される すなわち, 債 務 者 が 期 限 の 利 益 を 失 い, 債 務 はただ ちに 請 求 しうるものとなる( 第 425 条 第 3 号 参 照 ) しかし, 債 務 の 全 部 が 請 求 可 能 となるのは 行 き 過 ぎであろう 債 権 者 の 担 保 が 不 十 分 となる 限 度 であれば 足 りる こうした 規 律 のしかたは, 抵 当 権 の 補 充 よりも 単 純 であるものの, 債 権 者 に 課 することはできないであろう なぜならば, 債 務 者 が 弁 済 期 前 に 債 務 を 償 還 する 権 利 を 有 する 場 合 であっても,それは 債 権 者 の 意 思 に 反 して 一 部 弁 済 をする 権 利 を 認 めるものではないからである(459 条 ) Nº 416 債 務 者 の 過 失 と 偶 然 的 または 不 可 抗 力 による 原 因 との 区 別 に 基 づくこれらの 草 案 の 解 決 は,フランス[ 民 ] 法 典 ( 第 2131 条 )を 導 いてい るそれとは 異 なっているようである 法 典 の 表 現 の 一 般 性 からすれば,そ れは, 担 保 が 不 十 分 となった 場 合 はすべて 債 務 者 は 抵 当 権 の 補 充 を 要 求 す ることを 許 しているものと 大 多 数 の 学 者 を 信 じさせるものである われわ れはこうした 物 権 法 の 危 険 理 論 theórie des risques の 一 般 原 理 に 反 する 解 釈 の 正 確 さに 対 する 疑 問 をもつ 要 するに,われわれは 日 本 においてこれ を 維 持 することを 提 案 するものである 2131 抵 当 権 を 付 された 一 個 または 数 個 の 不 動 産 が 滅 失 し,または 損 傷 し, 債 権 を 担 保 するために 不 足 となったときは, 債 権 者 はただちに, 債 務 の 償 還 を 請 求 し,または 抵 当 権 の 補 充 を 得 ることができる 201 意 外 若 シクハ 不 可 抗 ノ 原 因 又 ハ 第 三 者 ノ 所 為 ニ 出 タル 抵 当 財 産 ノ 滅 失, 減 少 又 ハ 230

ボアソナード 帝 国 民 法 草 案 註 解 ⑴ 毀 損 ハ 債 権 者 ノ 損 失 タリ 但 先 取 特 権 ニ 関 シ 第 百 三 十 三 条 ニ 記 載 シタル 如 ク 債 権 者 ノ 賠 償 ヲ 受 ク 可 キ 場 合 ニ 於 テハ 其 権 利 ヲ 妨 ケス 2 若 シ 抵 当 財 産 カ 債 務 者 ノ 所 為 ニ 因 リ 又 ハ 保 持 ヲ 為 ササルニ 因 リテ 減 少 又 ハ 毀 損 ヲ 受 ケ 之 カ 為 債 権 者 ノ 担 保 カ 不 十 分 ト 成 リタルトキハ 債 務 者 ハ 抵 当 ノ 補 充 ヲ 与 フル 責 ニ 任 ス 3 此 補 充 ヲ 与 フルコト 能 ハサル 場 合 ニ 於 テハ 債 務 者 又 ハ 担 保 ノ 不 十 分 ト 成 リタル 限 度 応 シ 満 期 前 ト 難 モ 債 務 ヲ 弁 済 スル 責 ニ 任 ス 231