第 1 章 パソコンの 基 本 設 定 1.2 パソコンの 内 部 1.2.1 マザーボード マザーボード マザーボードは CPU やメモリなど パソコンの 構 成 要 素 を 実 装 するための 基 盤 です メ インボード と 呼 ばれることもあります 省 略 して M/B と 書 かれることもあります マザーボードには さまざまなパーツを 取 り 付 けるためのスロット ケーブルを 接 続 するため のコネクタなどが 付 いています これらのスロットやコネクタは マザーボードによって 対 応 す る 範 囲 が 異 なります たとえば CPU やメモリは マザーボードによって 対 応 する 種 類 が 限 定 されます また ノートパソコン 用 のマザーボードには COM ポートやプリンタポートが 付 い ていないものもあります どのような 機 器 が 利 用 できるかは マザーボードによって 異 なります 次 に 一 般 的 なマザーボードの 外 観 を 示 します PCI 拡 張 スロット PCIe 拡 張 スロット 各 種 ポート CPUソケット メモリスロット (DIMM) SATA 拡 張 スロット チップセット 電 源 コネクタの 挿 し 込 み 口 写 真 1.2-1 マザーボードの 外 観 14
1.2 パソコンの 内 部 フォームファクタ フォームファクタとは マザーボードの 形 状 のことです フォームファクタによって マザー ボードのサイズや マザーボード 上 のパーツやコネクタやネジ 穴 の 配 置 などが 異 なります そ のため フォームファクタは マザーボードだけなく パソコンの 筐 体 や 電 源 ユニットも 規 定 し ます 代 表 的 なフォームファクタと そのマザーボードのサイズを 示 します メーカー 製 のパソコン では 独 自 のフォームファクタも 利 用 されています 第 1 章 パ ソ コ ン の 基 本 設 定 表 1.2-1 代 表 的 なフォームファクタ 名 称 マザーボードのサイズ 特 徴 ATX 305mm 244mm 拡 張 スロットが 多 く 拡 張 カードを 多 数 使 用 する 利 用 者 向 け microatx 244mm 244mm ATX より 拡 張 スロットが 少 なく 省 スペースパソコン 向 け FlexATX 229mm 191mm microatx のサブセット Mini-ITX 170mm 170mm 小 さく 高 密 度 な 実 装 を 意 図 したもので 小 型 デバイス 向 け 拡 張 機 能 パソコンの 特 徴 のひとつが 機 能 の 拡 張 ができる 点 です マザーボードには 機 能 拡 張 のた めの 拡 張 スロットやポートが 付 いています 利 用 者 は 必 要 に 応 じて 拡 張 カードや 周 辺 機 器 を 接 続 することにより 機 能 を 拡 張 できるようになっています もともと マザーボードには 次 のような 機 能 は 実 装 されず 拡 張 カードの 形 態 で 提 供 されて いました ディスプレイ 出 力 ネットワーク サウンド ディスプレイへの 出 力 は パソコンとしては 必 須 の 機 能 ですが 利 用 形 態 によって 要 求 され る 表 示 性 能 や 解 像 度 が 異 なります そのため マザーボードから 機 能 を 切 り 離 して 拡 張 カー ドの 形 で 提 供 されていました また ネットワークを 利 用 しないスタンドアロン 環 境 であれば ネットワーク 機 能 は 不 要 です ビジネス 用 アプリケーションだけの 利 用 ならば サウンド 機 能 は 必 須 ではありません そのため これらの 機 能 はパソコンの 基 本 構 成 には 入 っていませんでした しかし 最 近 では マザーボードとは 別 途 に 提 供 されていたこれらの 機 能 が マザーボードに 標 準 で 実 装 されています 以 前 は ネットワーク 機 能 やサウンド 機 能 は 必 須 機 能 ではありませ んでしたが 最 近 では 事 実 上 必 須 機 能 となっています そのため これらの 機 能 を 拡 張 カード の 形 で 提 供 することは コスト 面 だけでなく 利 用 者 にとって 取 り 付 け 作 業 などの 負 担 増 加 につ 15
第 1 章 パソコンの 基 本 設 定 ながります そのため 上 記 の 機 能 を 標 準 で 実 装 するようになりました 拡 張 機 能 を 使 用 する 例 としては ゲーム 用 の 高 性 能 グラフィックボードや TV チューナーボ ードの 利 用 などがあります マザーボード 取 り 扱 い 上 の 注 意 マザーボードを 取 り 扱 うときは 2 つの 注 意 点 があります 1 点 目 は 物 理 的 破 壊 についての 注 意 です CPU やメモリの 取 り 付 けの 際 に マザーボード に 必 要 以 上 の 力 や 無 理 な 方 向 への 力 をかけないようにします マザーボードはきわめてデリケ ートであり 内 部 の 回 路 が 破 損 しやすいからです これは 近 年 のマザーボードは 回 路 が 複 雑 化 していることに 起 因 しています 複 雑 化 した 回 路 を 実 装 するため マザーボードは 複 数 枚 の 基 盤 を 重 ね 合 わせて 回 路 を 4 層 や 6 層 にしています そのため 外 見 的 には 異 常 がなくても 基 盤 内 部 の 回 路 が 破 損 していることもあります 2 点 目 は 静 電 気 への 注 意 です 人 間 の 体 は 常 に 静 電 気 を 帯 びています この 静 電 気 によ って マザーボード 上 の 電 子 部 品 が 電 気 的 に 破 壊 されることがあります マザーボードに 触 れ る 場 合 は ケースの 金 属 部 分 に 触 れるなどして 体 の 静 電 気 を 逃 がし 静 電 気 が 起 きやすい 服 装 を 避 けなくてはなりません 1.2.2 CPU CPU の 機 能 CPU は 演 算 処 理 や 制 御 処 理 を 行 う 中 枢 部 品 です 中 央 演 算 処 理 装 置 とも 呼 ばれます パソコンで 使 われる CPU のメーカーには Intel 社 や AMD 社 などがあります 両 社 の 主 な CPU のブランド 名 には 次 のようなものがあります 表 1.2-2 CPU のブランド 名 メーカー 名 Intel 社 AMD 社 CPU のブランド 名 Core i3/i5/i7 Pentium Dual-Core Celeron Dual-Core Atom Xeon Itanium FX A-Series E-Series Athlon Sempron Opteron 両 社 とも 高 性 能 のサーバ 向 け CPU や 省 電 力 に 優 れたノートパソコン 向 け CPU などを 提 供 しています NOTE CPU:Central Processing Unit 16
1.2 パソコンの 内 部 クロック 周 波 数 クロック 周 波 数 は CPU に 限 らずコンピュータやネットワークでの 処 理 性 能 を 示 す 場 合 に 使 われる 指 標 のひとつです クロックとは 動 作 のタイミングをとるための 信 号 のことです クロ ック 周 波 数 とは 1 秒 間 に 何 回 のクロックがあるかを 示 す 数 値 です たとえばクロック 周 波 数 が 2GHz とは 1 秒 間 に 2 10 の 9 乗 = 20 億 回 のクロックがあることを 示 しています CPU の 性 能 も クロック 周 波 数 で 示 されます クロック 周 波 数 は 他 のハードウェアでも 使 われる 言 葉 です したがって 正 確 には CPU のクロック 周 波 数 と 呼 ぶべきです しかし パソコン 全 体 を 話 題 にしている 場 合 は 通 常 クロック 周 波 数 は CPU のクロック 周 波 数 を 示 します クロック 周 波 数 を 省 略 して クロック や 周 波 数 と 呼 ぶこともあります CPU では 複 雑 な 処 理 を 命 令 と 呼 ばれる 単 純 な 処 理 を 組 み 合 わせて 実 行 しています CPU はクロックのタイミングに 合 わせて 命 令 を 実 行 します たとえば 2GHz の CPU では 1 秒 間 に 2 10 の 9 乗 = 20 億 回 のクロックに 合 わせて 命 令 が 実 行 されます ただし 1つの 命 令 が 1 クロックで 処 理 されるとは 限 りません 1 つの 命 令 が 何 クロックで 処 理 を 完 了 するかは 命 令 によって 異 なります 命 令 によっては 2 クロック 以 上 を 要 する 場 合 があります CPU はクロックのタイミングで 命 令 を 実 行 するため クロック 周 波 数 が 上 がれば CPU の 命 令 の 実 行 性 能 は 向 上 します CPU の 処 理 は パソコン 内 部 での 処 理 の 大 きな 部 分 を 占 めますの で クロック 周 波 数 の 向 上 はパソコンの 処 理 性 能 の 向 上 に 大 きく 寄 与 します しかし CPU の クロック 周 波 数 は パソコンの 処 理 性 能 のすべてではありません たとえば CPU がどんなに 高 性 能 でも 入 出 力 装 置 での 処 理 性 能 が 低 ければ パソコン 全 体 の 性 能 はあまり 向 上 しません CPU が 入 出 力 装 置 の 処 理 待 ち 状 態 になる 時 間 が 増 えてしまうためです パソコンの 性 能 を 向 上 させるためには CPU 以 外 での 性 能 向 上 も 欠 かせません 第 1 章 パ ソ コ ン の 基 本 設 定 外 部 クロックと 動 作 倍 率 CPU のクロック 周 波 数 は 内 部 クロック とも 呼 ばれます これに 対 して 外 部 クロック と 呼 ばれる 数 値 があります これは CPU がメモリや 拡 張 スロットなどの 外 部 とデータをやり とりするときのクロック 周 波 数 です CPU が 外 部 とデータをやりとりする 回 路 のことを FSB や QPI と 呼 ぶので 外 部 クロックを 言 い 換 えれば FSB や QPI のクロック 周 波 数 になります そして 内 部 クロックと 外 部 クロックの 間 には 次 の 関 係 式 があります 内 部 クロック = 外 部 クロック 動 作 倍 率 NOTE FSB QPI:Intel 社 の Core i シリーズを 代 表 とするメモリコントローラ 統 合 CPUでは QPI 接 続 方 式 が 使 われており そ れ 以 前 の CPU ではFSB 接 続 方 式 が 使 われていました 17
第 1 章 パソコンの 基 本 設 定 これは パソコンの 性 能 を 評 価 する 上 で 重 要 な 関 係 式 です 同 じ 内 部 クロックであっても 外 部 クロックが 異 なる 場 合 があります たとえば 次 のような 場 合 です 2GHz = 400MHz 5.0 2GHz = 800MHz 2.5 CPU の 内 部 の 処 理 だけならば 上 の 2 つの 性 能 差 はありません しかし パソコンの 処 理 で CPU 内 部 だけで 完 了 するものはありません 必 ず メインメモリや 他 の 周 辺 機 器 とデータをや りとりします これらのデータのやりとりは すべて FSB や QPI を 介 して 行 われます したが って 同 じ 2GHz の CPU であっても 外 部 クロック 800MHz の 方 が 性 能 が 高 くなります CPU のビット 数 CPU には 32 ビット CPU や 64 ビット CPU などの 種 類 があります このビット 数 が 何 を 示 すかには はっきりとした 定 義 はありません ビット 数 の 値 が 大 きい CPU には 次 のような 特 長 があります 内 部 計 算 の 性 能 が 向 上 する CPU が 外 部 とデータをやりとりする 性 能 が 向 上 する CPU が 扱 えるメインメモリのサイズの 上 限 が 大 きくなる CPU のビット 数 の 違 いが 影 響 する 範 囲 は ハードウェアだけではありません たとえば Windows にも 32 ビット 版 と 64 ビット 版 があり 64 ビット CPU を 利 用 するためには 64 ビッ ト CPU に 対 応 した OS が 必 要 になります コラム:CPU のビット 数 は 何 を 示 していたか? 8 ビット CPU や 16 ビット CPU が 主 流 のころ CPU のビット 数 の 意 味 については 多 くの 人 に 認 められていた 定 義 がありました そのビット 数 の 意 味 は 次 のビット 数 の 最 小 値 を 示 すというものです レジスタ 幅 データバス 幅 メモリバス 幅 1 点 目 のレジスタ 幅 は 計 算 性 能 に 影 響 するビット 数 です レジスタとは CPU 内 部 で 計 算 用 のデー タを 一 時 的 に 格 納 する 領 域 です レジスタが 大 きいほど 1 度 に 計 算 できるデータ 量 が 増 えます このレ ジスタが 格 納 できるビット 数 を 示 した 数 値 が レジスタ 幅 です 2 点 目 のデータバス 幅 は CPU が 外 部 とのデータのやりとりをする 際 の 性 能 に 影 響 する 数 値 です デ 18
1.2 パソコンの 内 部 第 ータバスとは CPU と 外 部 を 結 ぶデータの 通 り 道 です この 通 り 道 が 何 本 あるかを 示 したものが デー タバス 幅 です データバス 幅 が 大 きければ 1 度 にやりとりできるデータ 量 が 大 きくなります 3 点 目 のメモリバス 幅 は 利 用 可 能 なメインメモリのサイズに 影 響 します メインメモリはバイト 単 位 で 番 号 が 振 られ メモリ 上 の 場 所 を 管 理 しています メモリバスとは メインメモリの 格 納 場 所 の 番 号 を 指 定 するためのものです もし メモリバスが 16 ビットならば 2 の 16 乗 = 65,536 バイトま でしかメインメモリを 扱 えません 32 ビットならば 2 の 32 乗 で 約 40 億 バイトのメインメモリを 扱 えます 代 表 的 な 16 ビット CPU に 8086 があります そして この 8086 の 廉 価 版 として データバス 幅 だけを 8 ビットにした 8088 という CPU がありました この 8088 は 上 で 説 明 したビット 数 の 定 義 に 従 って 8 ビット CPU に 分 類 されていました 演 算 処 理 についてはまったく 同 じであるにもかかわ らずデータバス 幅 の 違 いで 8086 は 16 ビット CPU で 8088 は 8 ビット CPU だったのです こ のように 当 初 の CPU のビット 数 は 多 少 違 和 感 がある 使 われ 方 でもありました そのような 中 で ビット 数 は 別 の 意 味 で 使 われるようになりました 現 在 使 われている ビット 数 を 正 確 に 理 解 するためは CPU の 内 部 構 造 に 関 する 知 識 が 求 められますが ここでは 詳 細 な 説 明 は 省 き ます CPU のビット 数 が 何 を 示 すかということよりも ビット 数 が 違 うことが 何 に 影 響 するかを 整 理 す ることが 重 要 です 1 章 パ ソ コ ン の 基 本 設 定 CPU の 高 速 化 技 術 Pentium 以 降 の CPU では さまざまな 高 速 化 技 術 が 採 用 されてきました これらの 高 速 化 技 術 は 利 用 者 が 直 接 意 識 せずに 済 む 技 術 でした ハードウェアや OS が 対 応 していれば 十 分 だったのです しかし 最 近 は 利 用 者 レベルで 違 いが 見 える 高 速 化 技 術 が 登 場 しました そ れは Hyper Threading(ハイパースレッディング)とマルチコアです どちらも 1 個 の CPU が ソフトウェアからは 複 数 の CPU に 見 える 点 では 共 通 しています パソコンの 高 速 化 のために 複 数 の CPU を 搭 載 したマルチプロセッサ 構 成 を 利 用 することがあ ります しかしこの 構 成 は CPU が 複 数 必 要 なためコストが 高 くなるのが 難 点 でした Hyper Threading とマルチコアは CPU が 1 個 のままで 見 かけ 上 のマルチプロセッサ 構 成 を 実 現 し 高 速 化 を 図 るものです Hyper Threading は CPU 内 部 のレジスタなどを 二 重 化 しています レジスタとは 計 算 用 のデータを 一 時 的 に 格 納 する 領 域 です 演 算 回 路 は 1 個 分 のままです CPU は 内 部 の 演 算 回 路 などを 100% 使 い 切 っているわけではありません メモリの 読 み 書 き 時 や 外 部 I/O へのア クセス 時 など 内 部 では 完 了 待 ちとなっていると 演 算 処 理 回 路 が 空 いている 状 態 となりま す この 空 いた 時 間 を 有 効 に 利 用 して 他 の 処 理 を 行 わせるのが Hyper Threading です 演 19
第 1 章 パソコンの 基 本 設 定 算 処 理 を 行 う CPU は 1 個 なので 物 理 的 に 2 個 の CPU を 使 った 場 合 ほど 性 能 の 向 上 は 望 めま せんが CPUが1 個 なので 低 コストです マルチコアは 1つの CPU パッケージ 内 に 複 数 の CPU を 実 装 したものです 正 確 には CPU の 2 次 キャッシュを 除 く コア と 呼 ばれる CPU の 主 要 な 機 能 を 司 る 部 分 が 複 数 個 実 装 されています そのため マルチコア と 呼 ばれます コアが 2 つであればデュアルコア (Dual-core) 4 つであればクアッドコア (Quad-core) 6 つであればヘキサコア (Hexa-core) 8 つではオクタルコア (Octal-core) 又 はオクタコア (Octa-core) オクトコア (Octo-core) と 呼 ばれ ます 通 常 の CPU デュアルコアの CPU CPU コア 2 次 キャッシュ CPU コア 2 次 キャッシュ CPU コア 図 1.2-1 デュアルコア CPU どちらの 技 術 も 利 用 するには マザーボードや OS の 対 応 も 必 要 です Intel の 最 新 CPU Core i シリーズでは コアが 最 大 6 個 実 装 されています 1.2.3 メインメモリ メインメモリの 役 割 メインメモリは 動 作 中 のや 処 理 中 のデータを 格 納 する 場 所 です 主 記 憶 装 置 とも 呼 ばれます CPU が 直 接 処 理 できるやデータは メインメモリ 上 のものだけです ハードディ スク 上 のやデータを CPU はそのままでは 処 理 できません 必 ず メインメモリ 上 にコピーしてから 処 理 します このメインメモリ 上 にコピーすることを ロード と 呼 びます アプリケーションを 起 動 すれば がメインメモリにロードされます データのファイ ルを 開 けば データがメモリ 上 にロードされます NOTE 2 次 キャッシュ: 1.2.4 キャッシュメモリ を 参 照 20
1.2 パソコンの 内 部 メインメモリには 揮 発 性 という 弱 点 があります つまり パソコンの 電 源 が 切 られると メ インメモリの 内 容 は 失 われてしまいます したがってメインメモリは やデータの 保 存 には 向 いていません やデータを 保 存 するためには ハードディスクなどの 記 憶 装 置 を 利 用 しなければなりません これらの 記 憶 装 置 は 不 揮 発 性 つまりパソコンの 電 源 を 切 っても 内 容 が 失 われることはありません ハードディスクなどの 記 憶 装 置 は メインメモリの 主 記 憶 装 置 に 対 して 補 助 記 憶 装 置 と 呼 ばれます パソコンを 利 用 する 人 間 にとっては ハードディスクが 主 の 記 憶 装 置 で メインメモリが 補 助 の 記 憶 装 置 に 見 えます 主 記 憶 装 置 と 補 助 記 憶 装 置 という 言 葉 は 人 間 本 位 ではなく CPU 本 位 の 見 方 をした 言 葉 です CPU から 見 れば CPU 自 身 が 直 接 扱 えるメインメモリが 主 の 記 憶 装 置 であり その 内 容 を 保 存 するハードディスクなどが 補 助 の 記 憶 装 置 なのです 第 1 章 パ ソ コ ン の 基 本 設 定 半 導 体 メインメモリには DRAM と 呼 ばれる 半 導 体 が 使 われます この DRAM には いくつかの 種 類 があります どのような 半 導 体 のメインメモリが 利 用 できるかは マザーボードによって 異 なります 主 な 半 導 体 の 種 類 は 次 のとおりです 表 1.2-3 半 導 体 の 種 類 半 導 体 EDO DRAM SDRAM Direct RDRAM DDR SDRAM DDR2 SDRAM DDR3 SDRAM 概 要 Pentium 登 場 以 前 の 頃 の 標 準 タイプ Pentium が 主 流 の 頃 の 標 準 タイプ かつての SDRAM 後 継 候 補 SDRAM の 高 速 化 を 図 ったタイプ DDR SDRAM の 高 速 化 を 図 ったタイプ Intel Corei シリーズの CPU 世 代 から 主 流 になったタイプ SDRAM は 以 前 の 主 流 でしたが 今 は 改 良 版 の DDR SDRAM が 主 流 になっています Direct RDRAM は Rambus 社 が 開 発 した 技 術 を 使 ったメモリ 用 半 導 体 です SDRAM の 後 継 NOTE DRAM:Dynamic Random Access Memory ディーラム と 読 みます 記 憶 内 容 を 保 持 するためには 一 定 時 間 毎 に 記 憶 保 持 のための 再 書 き 込 みが 必 要 後 述 す る SRAM と 比 べると 低 価 格 で 大 容 量 の 用 途 に 向 いています EDO:Burst Extended Data Out SDRAM:Synchronous DRAM RDRAM:Rambus DRAM DDR:Double Data Rate 21
第 1 章 パソコンの 基 本 設 定 と 期 待 されていましたが パソコンのメインメモリ 用 としては 普 及 しませんでした そのため 現 在 パソコンで 利 用 されているメインメモリ 用 の 半 導 体 は SDRAM とその 高 速 版 だけにな っています メモリモジュール メインメモリを 構 成 する 半 導 体 集 積 回 路 を 基 盤 の 上 に 実 装 して パソコンのパーツとして 利 用 できる 形 態 にしたものを メモリモジュール と 呼 びます モジュール とは 部 品 の 意 味 です メモリモジュールは マザーボードに 直 接 装 着 されます メモリモジュールの 挿 し 込 み 口 のこと を メモリスロット または メモリソケット と 呼 びます メモリモジュールには 形 状 の 違 いがあります メモリモジュールの 形 状 の 違 いは 同 時 に メモリスロットの 形 状 の 違 いでもあります 主 な 形 状 には 以 下 のものがあります 表 1.2-4 メモリモジュールの 形 状 メモリモジュールの 形 状 用 途 SIMM EDO DRAM RIMM Direct RDRAM DIMM SDRAM, DDR SDRAM, DDR2 SDRAM, DDR3 SDRAM (デスクトップ PC 用 ) S.O. DIMM SDRAM, DDR SDRAM, DDR2 SDRAM, DDR3 SDRAM (ノート PC 用 ) Micro DIMM このようにメモリの 半 導 体 が 異 なると メモリモジュールの 形 状 も 異 なります また 同 じ DIMM でも 半 導 体 が 異 なると メモリモジュールのピン 数 が 異 なっています 表 1.2-5 メモリモジュールのピン 数 半 導 体 SDRAM DDR SDRAM DDR2 SDRAM DDR3 SDRAM DIMM のピン 数 168pin 184pin 240pin 240pin NOTE SIMM:Single Inline Memory Module RIMM:Rambus Inline Memory Module DIMM:Dual Inline Memory Module S.O. DIMM:Small Outline Dual Inline Memory Module 22
1.2 パソコンの 内 部 そのため 半 導 体 が 異 なっていると メモリスロットに 挿 し 込 むことができません DDR2 と DDR3 は 共 に 240pin ですが 基 盤 にある 誤 装 着 防 止 用 の 切 り 欠 きの 位 置 が 異 なります このように 半 導 体 ごとにメモリモジュールの 形 状 を 変 えて 種 類 の 異 なる 半 導 体 のメモリモジュールが 誤 って 装 着 されないようになっています SDRAM の 仕 様 SDRAM には 仕 様 を 示 す 2 つの 数 値 があります 1 つは PC100 や PC133 と 書 かれる 数 値 です この 数 値 は メモリバスのクロック 数 を 示 し ています メモリバスとはメインメモリが 外 部 とデータをやりとりするための 伝 送 路 です この 数 値 が 大 きいほど メインメモリのアクセス 性 能 が 高 まります しかし 高 いクロック 数 で 動 作 するためには SDRAM も 高 性 能 が 要 求 されます SDRAM が 対 応 できるクロック 周 波 数 の 上 限 値 が PC100 や PC133 という 形 で 表 示 されます PC100 ならば 100MHz PC133 ならば 133MHz が それぞれ 上 限 値 となります PC100 や PC133 は 上 限 値 を 示 すため 高 性 能 のもの で 低 性 能 のものを 代 替 できます 具 体 的 には PC100 の 代 わりに PC133 を 使 用 しても 問 題 はあ りません この 他 に CL と 呼 ばれる 指 標 があります この 値 が 大 きくなると アクセスを 開 始 するまで のタイミングを 合 わせる 時 間 が 長 くなります そのため CL は 値 が 小 さい 方 が 高 速 です CL の 値 についても 高 性 能 のもので 低 性 能 のものを 代 替 できます 具 体 的 には CL=3 が 要 求 さ れる 場 合 に CL=2 の SDRAM を 利 用 しても 問 題 はありません ただしアクセスタイミングが 異 なるものを 混 在 して 使 用 した 場 合 遅 い 方 に 合 わせられること また 不 安 定 の 要 因 になる 事 もあるので 出 来 れば 同 じものを 使 用 してください これらの 値 は マザーボードやパソコンが 要 求 するレベルに 合 わせます 第 1 章 パ ソ コ ン の 基 本 設 定 DDR SDRAM DDR2 SDRAM DDR3 SDRAM の 仕 様 DDR SDRAM DDR2 SDRAM DDR3 SDRAM( 以 下 DDR SDRAM 等 ) に も SDRAM と 同 様 に PC に 続 く 数 値 で メモリの 仕 様 を 示 しています しかし 意 味 は SDRAM の 場 合 と 異 なります DDR SDRAM 等 では PC に 続 く 数 値 はメモリの 転 送 性 能 を 示 します そして メモリバスのクロック 周 波 数 は DDR DDR2- DDR3- に 続 く 数 値 で 示 しています たとえば 次 の 2 つは 同 じ 仕 様 を 示 しています PC3200 NOTE CL:CAS (Column Address Strobe) Latency キャス レイテンシ と 読 みます 23
第 1 章 パソコンの 基 本 設 定 DDR400 PC に 続 く 数 値 は 転 送 性 能 を MB/s 単 位 で 示 しています DDR に 続 く 数 値 は メ モリバスのクロック 周 波 数 です バスの 性 能 は 次 のようにバス 幅 とクロック 周 波 数 から 求 め られます DDR SDRAM のバス 幅 は 64 ビットです したがって DDR400 の 転 送 性 能 は 次 のようになります 64 ビット 400MHz = 64 400 M ビット /s = 64 400 8 MB/s = 3200MB/s PC の 値 = DDR の 値 8 と 覚 えておくと 便 利 です DDR2 や DDR3 の 場 合 も 同 じです たとえば 次 の 2 つは 同 じ 意 味 です DDR2 であることを 明 示 するために 先 頭 は PC2 や DDR2 になっています PC2-5300 DDR2-667 これも 同 じように DDR677 から 転 送 性 能 を 計 算 してみます 64 ビット 667MHz = 64 667 M ビット /s = 64 667 8 MB/s = 5336MB/s 正 確 に 5300 ではありませんが 約 5300 という 意 味 で PC2-5300 と 表 示 されます なお 厳 密 には 両 者 の 間 に 意 味 の 違 いがあります PC 以 降 の 数 値 はメモリモジュールの 仕 様 を 示 し DDR 以 降 の 数 値 は 半 導 体 の 仕 様 を 示 しています しかし 利 用 者 にとっては 両 者 の 違 いを 意 識 する 必 要 はありません コラム:1K 1000? コンピュータの 世 界 では キロ が 1,000 を 意 味 しない 場 合 があります これは コンピュータが 0 と1の2 進 数 ですべてのものを 処 理 していることに 関 係 しています NOTE バスの 性 能 :バス 幅 とクロック 周 波 数 の 関 係 については 1.2.5 バスとチップセット で 説 明 します 24
1.2 パソコンの 内 部 第 メモリサイズを 示 す 場 合 の キロ は 1,000 ではなく 1,024 です 1,024 は 2 の 10 乗 で 2 進 数 的 に 扱 いやすい 単 位 なのです そのため 容 量 を 示 す 場 合 には キロ= 2 の 10 乗 つまり 1K=1,024 がよく 使 われます メモリサイズもこのルールで 計 算 するので 1KB=1,024B なのです たとえば パソコンによっては 起 動 時 に 認 識 されたメモリサイズが 表 示 されるものがあります そのようなパソコンで 256MB のメモリを 搭 載 している 場 合 に 256,000KB と 表 示 されずに 262,144KB と 表 示 されることがあります これは 1MB=1,024KB で 表 示 しているためです しかし 一 方 で キロ を 1,000 で 計 算 する 場 合 もあります 単 位 が bps の 場 合 の 通 信 速 度 は 1kbps = 1,000bps です このように 1k=1,000 の 場 合 もあります 実 は 以 前 は 大 文 字 と 小 文 字 を 使 い 分 けていました 1k=1,000 1K=1,024 です これにより ど ちらの 計 算 方 法 かを 明 示 していました しかし 現 在 は キロ の 上 の メガ や ギガ を 使 うこと が 増 えました これらは 元 々 大 文 字 の M や G で 示 していたので 区 別 の 付 けようがなくなってし まいました そのため キロ の 大 文 字 と 小 文 字 を 使 い 分 けるケースは 減 っています そして 両 方 が 混 在 して 使 われているのは 記 憶 装 置 の 容 量 です もともと 容 量 は 1K = 1,024 で 計 算 していました ところが ハードディスクドライブを 販 売 する 側 は 少 しでも 容 量 を 多 く 見 せよう とします そこで 換 算 ルールを 注 意 書 きに 載 せた 上 で 1K=1,000 で 計 算 することが 増 えました た とえば 1K=1,024 ならば 1,000,000,000B=0.93GB です これを 1K=1,000 で 表 示 すれば 1,000,000,000B=1GB となるのです しかし その 一 方 で 容 量 を 1K=1,024 で 表 示 するケースも ありま す こ れ は Windows でド ラ イ ブ の 利 用 状 況 を 表 示 さ せ た 画 面 で す 数 値 を 見 れ ば 1K=1,024 であることが 確 認 できます 1 章 パ ソ コ ン の 基 本 設 定 このように キロ がいくつを 示 すかは 状 況 によって 異 なります 数 値 的 には 大 きな 差 ではありま せんが 持 ち 運 び 用 の 媒 体 にデータを 入 れる 場 合 など 微 妙 な 容 量 の 差 で 入 れられるはずのデータが 入 れられなくなるケースもあります 25
第 1 章 パソコンの 基 本 設 定 メモリ 不 足 とスワップ メインメモリの 容 量 が 不 足 すると パソコンの 性 能 が 低 下 します これは なぜでしょうか これを 理 解 するためには スワップ というしくみを 理 解 する 必 要 があります メインメモリは 動 作 中 のや 処 理 中 のデータをすべて 格 納 する 必 要 があります 次 の 図 のような 状 態 で さらにやデータをロードすることを 考 えます ハードディスク( ライブラリ) ( 実 行 中 ) ( 実 行 中 ) メインメモリ ( 物 理 メモリ) 図 1.2-2 メインメモリ 容 量 不 足 によるロードの 失 敗 この 場 合 メインメモリの 容 量 が 足 りないので ロードに 失 敗 します 特 別 なしくみがない 限 り メモリ 不 足 で 処 理 が 中 断 されます しかし Windows ではメモリ 不 足 で 処 理 を 中 断 され るケースはあまり 見 かけません 実 は Windows ではこのような 状 況 でも 処 理 を 継 続 できるし くみが 用 意 されています Windows では メモリ 不 足 で 必 要 なロードの 処 理 ができない 場 合 メインメモリ 上 で 即 時 に 必 要 のないやデータを 探 します そして そのやデータの 内 容 を メイン メモリ 上 からハードディスクへと 一 時 待 避 させます そして 空 いたスペースへ 必 要 なプロ グラムやデータをロードします 26
空 いた 領 域 へロード 1.2 パソコンの 内 部 第 ( 実 行 中 ) ( 中 断 ) 丸 ごとハードディスクへ 退 避 (スワッピング) ハードディスク ( 中 断 ) 1 章 パ ソ コ ン の 基 本 設 定 仮 想 メモリ メインメモリ ( 物 理 メモリ) 図 1.2-3 スワップ 処 理 一 時 待 避 したやデータが 必 要 になったら 同 じように 即 時 に 必 要 のないものをハ ードディスクへ 一 時 待 避 させ 空 いたスペースへやデータを 再 ロードします このように 即 時 に 必 要 なものはメインメモリ 上 にあるように 一 時 待 避 と 再 ロードを 繰 り 返 します この 処 理 を スワップ と 呼 びます Windows をはじめとする 多 くの OS では メインメモリが 不 足 しても 処 理 が 継 続 できるよう にスワップを 行 い メモリ 不 足 を 回 避 しています OS にとっては スワップで 利 用 されるハー ドディスク 上 の 領 域 の 分 だけメインメモリが 増 えているのと 同 じです そのため このハードデ ィスク 上 のスワップ 用 の 領 域 を 仮 想 メモリ と 呼 びます なお 仮 想 メモリ という 言 葉 は スワップによりメモリ 不 足 を 回 避 するしくみの 名 称 としても 使 われます そして 実 際 のメイン メモリを 仮 想 メモリと 明 示 的 に 区 別 するときは 物 理 メモリ と 表 現 します 更 に 実 行 中 のを 中 断 することなく 空 きスペースを 作 るために を ペー ジ という 単 位 に 分 割 し ページ 単 位 でスワップ 処 理 を 行 っています 27
第 1 章 パソコンの 基 本 設 定 ハードディスク 不 要 なページを ページアウト 必 要 なページを ページイン メインメモリ ( 物 理 メモリ) 実 行 に 必 要 な ページをロード 仮 想 メモリ 図 1.2-4 ページ 単 位 のスワップ 処 理 スワップ 処 理 は 物 理 メモリの 不 足 による 処 理 中 断 を 回 避 するメリットがあります しかし その 一 方 でパソコンの 処 理 性 能 を 大 きく 低 下 させる 欠 点 があります これは ハードディスク へのアクセスがメインメモリへのアクセスに 比 べ 低 速 で 負 荷 が 大 きいからです そのため ス ワップが 頻 発 すると キーボード 操 作 やマウス 操 作 をパソコンが 受 け 付 けなくなるほどに 負 荷 が 高 まってしまいます したがって パソコンの 性 能 が 低 下 しないように できる 限 りスワップ 処 理 が 起 きないようにする 必 要 があります スワップ 処 理 を 起 こさないようにするための 対 策 は 物 理 メモリの 増 設 です スワップは 物 理 メモリが 不 足 すると 起 きます 物 理 メモリが 不 足 しなければスワップは 起 きません そのため 物 理 メモリを 増 やせば パソコンの 性 能 が 改 善 されるのです ここで 注 意 しなくてはならないのは 物 理 メモリの 増 設 が 性 能 改 善 につながらない 場 合 があ る 点 です 物 理 メモリ 増 設 の 効 果 があるのは スワップが 起 きている 場 合 だけです スワップ が 起 きていない 状 態 で 物 理 メモリを 増 設 しても 空 きメモリが 増 えるだけで 性 能 改 善 につなが りません したがって 物 理 メモリ 増 設 を 検 討 する 際 は メモリ 不 足 が 発 生 しているのかを 確 認 する 必 要 があります Windows でメモリの 使 用 状 況 を 確 認 するには タスクマネージャを 利 用 します 28
1.2 パソコンの 内 部 第 1 章 パ ソ コ ン の 基 本 設 定 画 面 1.2-1 タスクマネージャ メモリの 増 設 メインメモリを 増 設 する 際 には マザーボードで 利 用 できるメモリモジュールについての 確 認 が 必 要 です 確 認 すべき 点 は 以 下 の 点 です マザーボードで 利 用 できるメモリモジュールの 種 類 や 性 能 マザーボードの 最 大 メモリ 容 量 マザーボードで 許 可 されるメモリ 容 量 の 組 み 合 わせ 特 に 3 点 目 は 見 落 としがちなので 注 意 が 必 要 です マザーボードによっては 特 定 の 組 み 合 わせが 許 可 されない 場 合 があります そのような 場 合 増 設 する 容 量 によっては 既 存 のメモ リモジュールが 使 えなくなることもあります メモリモジュールの 増 設 作 業 で 特 に 注 意 すべき 点 は 静 電 気 です メモリモジュールは 静 電 気 に 対 して 脆 弱 です 必 ず 自 分 の 体 の 静 電 気 をアースしてから 作 業 を 始 めます そして メ モリモジュールを 取 り 扱 う 際 には 端 子 部 分 には 手 を 触 れないようにします 端 子 部 分 とは メモリスロットに 挿 し 込 まれる 部 分 です ここには 電 気 が 流 れるため 指 先 の 脂 が 付 着 すると 腐 食 を 招 き 通 電 不 良 を 起 こすこともあります なお メモリの 増 設 は 物 理 的 な 取 り 付 け 作 業 だけで 終 了 します BIOS や Windows での 設 定 作 業 は 不 要 です 29