平 成 25 年 6 月 10 日 467 巻 頭 言 感 染 性 角 膜 炎 には, 宿 主 の 条 件 だけでなく, 医 療 環 境, 微 生 物 の 三 者 が 密 接 に 関 連 しており, 宿 主 の 条 件 だけで 決 まる 遺 伝 性 疾 患 などよりも, 病 態 は 格 段 に 複 雑 である. このようにさまざまな 条 件 下 に 生 じる 多 様 な 微 生 物 感 染 に 対 応 していく 必 要 上, 感 染 性 角 膜 炎 の 診 療 においては 一 律 な 対 応 が 行 いにくい 側 面 もあり,どうしても 個 々の 医 師 による case by case の 対 応 ということになりがちで あった.しかしながら,その 複 雑 さゆえに, 逆 に 全 体 の 基 本 となる 診 断 治 療 の 方 針 を 定 めたガイドラインの 策 定 が 必 要 であるとの 判 断 のもと 日 本 眼 感 染 症 学 会 主 導 で 2007 年 に 感 染 性 角 膜 炎 診 療 ガイドラインが 作 成 され, 日 眼 会 誌 の 第 111 巻 第 10 号 に 掲 載 された.しかし,ガイ ドラインは 医 学 医 療 の 進 歩 に 従 って 改 訂 を 行 っていか なければ, 実 態 からかけ 離 れたものとなっていくおそれ があり, 古 いガイドラインのままでは 逆 にガイドライン に 沿 って 行 ったことにより, 患 者 にとって 不 利 益 をもた らすことさえ 起 こり 得 る.そのため, 感 染 性 角 膜 炎 診 療 ガイドラインについても 改 訂 が 待 たれていたが,このた びようやく 第 2 版 として 日 眼 会 誌 に 載 せていただく 運 び となった. 本 来,ガイドラインは 経 験 則 ではなく, 種 々の evidence をもとに 構 築 されるべきものである.しかし, 第 1 版 が 作 製 された 時 点 では, 特 に 我 が 国 の 角 膜 感 染 症 に 関 する evidence は 決 して 十 分 とはいえず, 多 施 設 スタ ディを 行 う 必 要 性 が 痛 感 された.その 後, 日 本 眼 感 染 症 学 会 でも, 重 症 コンタクトレンズ 関 連 角 膜 感 染 症 全 国 調 査, 眼 感 染 症 起 炎 菌 薬 剤 感 受 性 多 施 設 調 査 を 行 い,また, 今 回 のガイドラインには 間 に 合 わなかった が, 真 菌 性 角 膜 炎 に 関 する 多 施 設 共 同 前 向 き 観 察 研 究 も 現 在 進 行 中 である.その 他 にも 角 膜 ヘルペスについて は 免 疫 クロマトグラフィ 法 の 多 施 設 スタディが 行 われる など,evidence が 蓄 積 されてきており,その 一 部 を 今 回 の 改 訂 に 反 映 させている.また, 第 1 版 の 時 点 ではま だその 実 態 に 不 明 な 点 が 多 く, 広 く 認 識 されていないと いうことで 見 送 りとなっていたサイトメガロウイルス 角 膜 内 皮 炎 について,その 後 さまざまな evidence が 積 み 上 げられ,ガイドラインに 記 載 のないこと 自 体 が 問 題 と なるレベルになってきており, 今 回 これを 第 2 章 に 新 た に 付 け 加 えることとなった.さらに, 使 用 可 能 な 抗 菌 点 眼 薬 が 変 わったこと( 具 体 的 にはフルオロキノロン 系 が 増 え,それ 以 外 の 系 統 の 点 眼 薬 が 発 売 中 止 で 減 少 してい る), 抗 真 菌 薬 としてボリコナゾールが 使 われるように なったことなどにより, 治 療 方 針 についても 変 更 があっ た. 本 ガイドラインは 臨 床 実 地 になるべく 即 することをめ ざしたため, 最 初 の 診 断 の 項 目 を 病 原 体 別 には 分 けず, 臨 床 所 見 から 入 るような 形 式 をとっている.これは, 実 際 の 臨 床 の 現 場 では, 患 者 の 来 院 時 にそれが 何 の 感 染 で あるか,あるいはそもそも 感 染 かどうかも 分 かっていな いはずだからである. 今 回 の 改 訂 ではこのような 形 式 を 踏 襲 して, 第 1 版 の 多 くの 部 分 はそのままとして,それ に 小 改 訂 を 加 える 形 をとっている.また, 検 査 について も 第 1 版 同 様, 一 般 眼 科 医 で 施 行 できる 範 囲 は 限 られて いることを 鑑 み, 最 も 基 本 となる 塗 抹 検 鏡 以 外 は,ポイ ントのみを 挙 げるにとどめ, 詳 しい 方 法 については Appendix として 巻 末 にまとめている. 本 ガイドラインは 臨 床 所 見 から 入 る 形 式 からも 分 かる ように, 教 科 書 的 な 性 格 を 合 わせ 持 っており,その 意 味 で 実 地 に 即 して 参 照 しやすいとの 意 見 がある 反 面, 本 来 は, 教 科 書 とは 一 線 を 画 すべきガイドラインとしてはあ る 意 味 まだまだ 未 熟 といえるものである.したがって, 今 後 も 引 き 続 き 改 訂 を 行 っていき,いずれは 大 きくその フォーマットを 変 えてガイドラインとして 成 熟 させてい く 必 要 があると 考 えている. それに 生 かせるように, 本 ガイドラインについての 忌 憚 のないご 意 見 を, 日 本 眼 感 染 症 学 会 事 務 局 (folia@hcn. zaq.ne.jp)までお 寄 せいただければ 幸 いである. 2013 年 2 月 6 日 日 本 眼 感 染 症 学 会 理 事 長 井 上 幸 次 転 載 問 い 合 わせ 先 :567-0047 茨 木 市 美 穂 ケ 丘 3 6 302 日 本 眼 科 紀 要 会 内 日 本 眼 感 染 症 学 会 事 務 局 TEL 072-623- 7878 FAX 072-623-6060 E-mail:folia@hcn.zaq.ne.jp
468 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 日 本 眼 感 染 症 学 会 感 染 性 角 膜 炎 診 療 ガイドライン 第 2 版 作 成 委 員 会 委 員 長 : 井 上 幸 次 副 委 員 長 : 大 橋 裕 一 委 員 ( 五 十 音 順 ): 浅 利 誠 志, 石 橋 康 久, 宇 野 敏 彦, 木 下 茂, 塩 田 洋, 下 村 嘉 一, 田 川 義 継, 秦 野 寛, 松 本 光 希 執 筆 者 ( 五 十 音 順 ) 浅 利 誠 志, 石 橋 康 久, 稲 田 紀 子, 井 上 智 之, 井 上 幸 次, 宇 野 敏 彦, 江 口 洋, 大 橋 裕 一, 岡 本 茂 樹, 亀 井 裕 子, 北 川 和 子, 小 泉 範 子, 下 村 嘉 一, 白 石 敦, 鈴 木 崇, 外 園 千 恵, 高 村 悦 子, 田 川 義 継, 豊 川 真 弘, 内 藤 毅, 秦 野 寛, 檜 垣 史 郎, 福 田 昌 彦, 星 最 智, 松 本 光 希, 宮 崎 大 医 療 は 本 来 医 師 の 裁 量 に 基 づいて 行 われるものであり, 医 師 は 個 々の 症 例 に 最 も 適 した 診 断 と 治 療 を 行 うべきであ る. 日 本 眼 感 染 症 学 会 は, 本 ガイドラインを 用 いて 行 われ た 医 療 行 為 により 生 じた 法 律 上 のいかなる 問 題 に 対 して, その 責 任 義 務 を 負 うものではない.
平 成 25 年 6 月 10 日 469 掲 載 されている 病 原 体 名 一 覧 病 原 体 和 名 分 類 学 名 略 号 細 菌 アクネ 菌 Propionibacterium acnes P. acnes 黄 色 ブドウ 球 菌 コアグラーゼ 陰 性 ブドウ 球 菌 コリネバクテリウム Staphylococcus aureus coagulase-negative staphylococci Corynebacterium spp. S. aureus CNS セラチア Serratia spp. 多 剤 耐 性 緑 膿 菌 multi-drug resistant Pseudomonas aeruginosa MDRP 肺 炎 球 菌 Streptococcus pneumoniae S. pneumoniae バンコマイシン 耐 性 腸 球 菌 vancomycin-resistant enterococci VRE 非 定 型 ( 非 結 核 ) 抗 酸 菌 atypical/non-tuberculous/ mycobacteria 表 皮 ブドウ 球 菌 Staphylococcus epidermidis S. epidermidis ペニシリン 耐 性 肺 炎 球 菌 penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae PRSP ヘモフィルス インフルエンザ(インフルエンザ 菌 ) Haemophilus influenzae H. influenzae メチシリン 耐 性 黄 色 ブドウ 球 菌 methicillin-resistant Staphylococcus aureus MRSA メチシリン 耐 性 表 皮 ブドウ 球 菌 methicillin-resistant Staphylococcus epidermidis MRSE モラクセラ Moraxella spp. 緑 膿 菌 Pseudomonas aeruginosa P. aeruginosa 淋 菌 Neisseria gonorrhoeae N. gonorrhoeae レンサ 球 菌 Streptococcus spp. 真 菌 アスペルギルス Aspergillus spp. アルテルナリア Alternaria spp. カンジダ Candida spp. フザリウム Fusarium spp. ペニシリウム Penicillium spp. ウイルス 水 痘 帯 状 疱 疹 ウイルス varicella-zoster virus VZV 単 純 ヘルペスウイルス herpes simplex virus HSV サイトメガロウイルス ムンプスウイルス cytomegalovirus mumps virus CMV 寄 生 虫 アカントアメーバ Acanthamoeba spp. 注 : 分 類 学 名 もしくはその 略 号 が 本 文 中 に 記 載 されていても, 和 名 が 一 般 に 使 用 されていないものは 本 一 覧 中 に 記 載 していない.
470 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 感 染 性 角 膜 炎 の 診 断 治 療 の 臨 床 経 過 症 状 臨 床 所 見 細 菌 性 角 膜 炎 ) 背 景 に 角 膜 外 傷 コンタクトレンズ 装 用 ) 急 激 な 発 症 ) 眼 痛 充 血 視 力 低 下 眼 脂 などの 症 状 が 同 時 に 出 現 ) 耐 性 菌 でなければ 治 療 に 対 する 反 応 は 比 較 的 良 好 第 1 章 Ⅰ 第 2 章 Ⅰ-2 ) 角 膜 の 化 膿 性 病 変 : 浸 潤 膿 瘍 潰 瘍 など 1 グラム 陽 性 球 菌 : 円 形 類 円 形 で 限 局 性 2 グラム 陰 性 桿 菌 : 輪 状 膿 瘍 ) 二 次 的 炎 症 反 応 : 結 膜 充 血 結 膜 浮 腫 前 房 内 細 胞 前 房 蓄 膿 角 膜 後 面 沈 着 物 真 菌 性 角 膜 炎 ) 背 景 に 以 下 の 要 因 あり 1 点 眼 薬 の 長 期 使 用 : 抗 菌 薬, 副 腎 皮 質 ステロイド 薬 2 植 物 による 角 膜 外 傷 3 免 疫 不 全 宿 主 : 糖 尿 病, 膠 原 病 など ) 緩 徐 な 発 症 ) 自 覚 症 状 は 菌 種 によりさまざま ) 治 療 抵 抗 性 第 1 章 Ⅰ 第 2 章 Ⅱ-1-3) 2-3) ) 角 膜 病 巣 1 糸 状 菌 : 境 界 不 鮮 明 な 羽 毛 状 ( 白 色 灰 白 色 ) 2 酵 母 菌 : 境 界 比 較 的 鮮 明 な 類 円 形 ) その 他 の 特 徴 的 所 見 1 糸 状 菌 では endothelial plaque, 前 房 蓄 膿 を 時 に 認 める 病 原 体 検 出 第 1 章 Ⅱ-1b)c) ) 直 接 検 鏡 1 グラム 染 色 2ギムザ 染 色 ) 分 離 培 養 1 血 液 寒 天 培 地 2チョコレート 寒 天 培 地 3 その 他, 想 定 する 病 原 体 に 応 じて 適 切 な 培 地 を 選 択 ) 直 接 検 鏡 1 グラム 染 色 2ギムザ 染 色 3 ファンギフローラ Y 染 色 ) 分 離 培 養 1 サブロー 寒 天 培 地 第 2 章 Ⅱ-1-4) 2-4) 治 療 第 1 章 Ⅲ-1,2a)b) Ⅳ-1 Appendix Ⅳ ) 初 期 治 療 1 抗 菌 点 眼 薬 頻 回 投 与 2 重 症 例 では 抗 菌 薬 全 身 投 与 ( 点 滴 ) ) 継 続 治 療 1 反 応 良 好 初 期 治 療 を 続 行 2 反 応 不 良 分 離 菌 や 薬 剤 感 受 性 を 考 慮 して 治 療 を 変 更, 真 菌 感 染 も 考 慮 第 3 章 Ⅰ 第 1 章 Ⅲ-1,2a)b)c) Ⅳ-2 Appendix Ⅰ,Ⅴ 複 数 の 薬 剤 を 複 数 のルートで 投 与 ) 点 眼 :ピマリシン,アゾール 系, キャンディン 系 など ) 結 膜 下 注 射 ( 重 症 例 ):アゾール 系 な ど ) 全 身 投 与 :アゾール 系 など 第 3 章 Ⅱ
平 成 25 年 6 月 10 日 471 フローチャート アカントアメーバ 角 膜 炎 ) 背 景 にコンタクトレンズ 装 用, 汚 水 の 飛 入 ) 非 常 に 緩 徐 な 発 症 ) 充 血, 眼 痛 が 高 度 ) 治 療 抵 抗 性 角 膜 ヘルペス ) 健 常 者 にもみられる 再 発 性 角 膜 炎 ) 基 本 的 に 片 眼 性 ) 発 症 誘 因 : 熱 発, 精 神 的 ストレス, 紫 外 線 曝 露, 免 疫 抑 制 など ) 充 血 視 力 低 下 はあるが 眼 痛 は 軽 度 ) 病 期 進 行 を 見 分 けることが 肝 要 1 初 期 ⅰ) 放 射 状 角 膜 神 経 炎 ⅱ) 偽 樹 枝 状 角 膜 炎 ⅲ) 角 膜 上 皮 内 上 皮 下 浸 潤 2 移 行 期 / 成 長 期 3 完 成 期 ⅰ) 輪 状 浸 潤 ⅱ) 円 板 状 浸 潤 ) 病 期 によらず 高 度 の 毛 様 充 血 第 2 章 Ⅲ-2 三 者 併 用 療 法 1 病 巣 掻 爬 ( 角 膜 掻 爬 ) 2 抗 真 菌 薬 および 消 毒 薬 の 点 眼 3 抗 真 菌 薬 全 身 投 与 第 1 章 Ⅰ 第 2 章 Ⅲ-1 ) 直 接 検 鏡 1 グラム 染 色 2ギムザ 染 色 3 ファンギフローラ Y 染 色 ) 分 離 培 養 :アカントアメーバ 用 寒 天 平 板 培 地 塗 布 液 として 1 yeast extract glucose(yg) 液 2 納 豆 上 澄 み 液 3 大 腸 菌 浮 遊 液 第 1 章 Ⅲ-1,2a)b)c) Ⅳ-3 Appendix Ⅰ,Ⅵ 第 3 章 Ⅲ ) 3つの 基 本 病 型 1 上 皮 型 ⅰ) 樹 枝 状 角 膜 炎 ⅱ) 地 図 状 角 膜 炎 2 実 質 型 ⅰ) 円 板 状 角 膜 炎 ⅱ) 壊 死 性 角 膜 炎 3 内 皮 型 ) 角 膜 知 覚 低 下 第 1 章 Ⅱ-1a),2 第 2 章 Ⅳ 第 1 章 Ⅰ ) ウイルス 分 離 培 養 ) 蛍 光 抗 体 法 ) 免 疫 クロマトグラフィ 法 ) polymerase chain reaction(pcr) 法 第 1 章 Ⅲ-2d)e) Ⅳ-4,5 Appendix Ⅱ,Ⅲ,Ⅶ,Ⅷ ) 上 皮 型 アシクロビル 眼 軟 膏 ) 実 質 型 内 皮 型 アシクロビル 眼 軟 膏 + 副 腎 皮 質 ステロ イド 点 眼 薬 難 治 例 ではアカントアメーバ 鑑 別 も 考 慮 第 3 章 Ⅳ
472 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 第 1 章 感 染 性 角 膜 炎 の 診 断 Ⅰ 病 歴 ( 問 診 ) 感 染 性 角 膜 炎 の 診 断 および 治 療 において, 詳 細 な 問 診 は 必 要 不 可 欠 である. 発 症 の 契 機 ( 外 傷,コンタクトレ ンズ 装 用 など), 発 症 の 経 過, 再 発 性 か 否 か, 眼 症 状 の 程 度 が 診 断 の 一 助 となる. ) 発 症 の 契 機 外 傷 があれば, 頻 度 的 に 細 菌 が 多 いが, 真 菌 にも 注 意 が 必 要 であり, 特 に 治 療 抵 抗 性 で 植 物 外 傷 があれば 糸 状 菌 を 考 慮 する 必 要 がある. コンタクトレンズは 感 染 性 角 膜 炎 の 誘 因 として 特 に 重 要 なので,その 種 類, 使 用 期 間, 使 用 方 法 について 詳 細 に 問 診 し, 特 に 誤 使 用 がなかったかどうかに 注 意 する 1). 2 週 間 頻 回 交 換 ソフトコンタクトレンズや 定 期 交 換 ソフ トコンタクトレンズなど,コンタクトレンズケアを 必 要 とするレンズが 原 因 となることが 多 い.レンズおよび 保 存 ケースが 環 境 菌 に 汚 染 され,これが 眼 表 面 に 持 ち 込 ま れる 機 序 が 考 えやすい. 特 に 重 症 例 では 緑 膿 菌 やアカン トアメーバによるものが 多 い 2). フルオロキノロン 系 抗 菌 点 眼 薬 長 期 連 用 下 での 細 菌 感 染 では,レンサ 球 菌 やメチシリン 耐 性 黄 色 ブドウ 球 菌 (methicillin-resistant Staphylococcus aureus:mrsa)に よるものが 多 い. 副 腎 皮 質 ステロイド 薬 (ステロイド) 長 期 連 用 や 免 疫 抑 制 薬 投 与 患 者 では 真 菌 感 染 ( 特 に 酵 母 菌 ) が 疑 われる.ストレスや 過 労 が 契 機 で 発 症 すれば 角 膜 ヘ ルペスを, 海 外 旅 行 後 に 発 症 すれば 当 該 地 域 の 感 染 症 も 考 慮 しなければならない. ) 発 症 の 経 過 痛 みが 比 較 的 軽 く 緩 徐 であれば 真 菌 性 の 可 能 性 が 高 く, 進 行 が 早 ければ 緑 膿 菌 やレンサ 球 菌 の 可 能 性 が 高 い. 長 期 臥 床 患 者 で 難 治 性 角 膜 炎 の 場 合,MRSA を 考 慮 する. ) 再 発 性 か 否 か 細 菌 でも 真 菌 でも 適 切 な 治 療 が 不 十 分 であれば, 短 い 間 隔 で 再 発 するようにみえることもあるが, 完 全 に 鎮 静 化 した 後, 再 発 する 角 膜 炎 は 単 純 ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:hsv)によるものと 考 えられる. ) 自 覚 症 状 の 程 度 細 菌 性 真 菌 性 の 場 合, 軽 症 であれば 異 物 感, 重 症 で あれば 眼 痛 を 訴 える.アカントアメーバ 角 膜 炎 の 眼 痛 は 高 度 で, 角 膜 ヘルペスの 眼 痛 は 軽 度 である. 眼 痛 以 外 に は, 充 血, 視 力 障 害, 流 涙, 眼 脂 を 訴 えることが 多 い. Ⅱ 臨 床 所 見. 細 隙 灯 顕 微 鏡 所 見 a) 上 皮 病 変 ( 樹 枝 状 病 変, 地 図 状 病 変, 星 芒 状 病 変 ) 角 膜 に 樹 枝 状 病 変 をみた 場 合,まず,これが HSV に よる 樹 枝 状 角 膜 炎 (dendritic keratitis)であるかどうかを 見 定 めることが 重 要 である. 樹 枝 状 角 膜 炎 は HSV によ るものにのみ 使 用 する 表 現 で,これは 所 見 名 であり,か つ 診 断 名 であるといえる.HSV によるもの 以 外 は 偽 樹 枝 状 角 膜 炎 と 呼 んで 区 別 し, 両 者 の 総 称 として 樹 枝 状 病 変 という 用 語 が 用 いられる. 樹 枝 状 病 変 の 診 断 にあたっては, 細 隙 灯 顕 微 鏡 検 査 に よる 観 察 が 重 要 なことはいうまでもないが, 非 定 型 的 な 例 も 多 く 存 在 するので, 問 診 で 得 られた 情 報 やウイルス 学 的 検 査 の 結 果 を 加 味 して 総 合 的 に 診 断 する 必 要 がある ( 図 1). ) 樹 枝 状 角 膜 炎 ( 図 2)の 特 徴 1 末 端 膨 大 部 (terminal bulb)の 存 在 : 末 端 が 先 細 り にならず, 膨 らんだ 状 態 となっている. 2 上 皮 内 浸 潤 の 存 在 : 上 皮 欠 損 辺 縁 部 上 皮 には 顆 粒 状 混 濁 を 伴 っており,あるいは 混 濁 が 明 瞭 でない 場 合 でも 少 し 隆 起 しており, 樹 枝 状 の 上 皮 欠 損 全 体 が 縁 どられたような 状 態 を 呈 する. 3 ある 程 度 の 幅 がある. 4 病 変 部 以 外 の 上 皮 は 正 常 である. ) 偽 樹 枝 状 を 示 す 疾 患 の 特 徴 偽 樹 枝 状 病 変 を 示 す 疾 患 はすべて 上 皮 型 角 膜 ヘルペス との 鑑 別 が 必 要 だが, 共 通 した 特 徴 としては, 1 末 端 膨 大 部 (terminal bulb)を 認 めず, 先 端 が 先 細 りとなっている. 2 上 皮 内 浸 潤 を 認 めない. 3 細 いことが 多 い. などが 挙 げられる. 以 下, 個 々の 偽 樹 枝 状 病 変 の 細 隙 灯 顕 微 鏡 所 見 について 述 べる. ⅰ) 眼 部 帯 状 疱 疹 眼 部 帯 状 疱 疹 に 伴 う 偽 樹 枝 状 病 変 ( 図 3)は, 1 小 さく 細 い. 2 1つの 中 心 から 放 射 状 に 細 い 小 さい 枝 が 出 る 形 態 と なることも 多 い(この 場 合,むしろ 星 芒 状 角 膜 炎 と 呼 んだ 方 がよい). 眼 部 帯 状 疱 疹 の 場 合, 特 徴 的 な 皮 疹 と 神 経 痛 を 伴 うた め 診 断 は 容 易 だが, 無 疹 性 帯 状 疱 疹 (zoster sine herpete) もあるので 注 意 が 必 要 である. ⅱ) Epithelial crack line 薬 剤 毒 性 角 膜 症 によって 生 じる 分 岐 のあるひび 割 れ 状 のラインであり 3) ( 図 4), 次 のような 特 徴 がある. 1 角 膜 中 央 やや 下 方 に 水 平 方 向 に 生 じる. 2 混 濁 を 必 ず 伴 っており, 時 に 盛 り 上 がりを 認 める. 3 周 囲 に 著 明 な 点 状 表 層 角 膜 症 (superficial punctate keratopathy:spk)を 認 める. これらを 認 めた 場 合 は, 点 眼 薬 の 使 用 状 況 を 詳 細 に 問
平 成 25 年 6 月 10 日 第 1 章 感 染 性 角 膜 炎 の 診 断 473 図 1 感 染 性 角 膜 炎 を 主 体 とした 上 皮 病 変 のフローチャート *. : 細 隙 灯 顕 微 鏡 所 見, : 問 診 その 他 の 所 見, : 感 染, : 非 感 染. *: 点 状 病 変 は 含 まない,SPK: 点 状 表 層 角 膜 症. 図 2 樹 枝 状 角 膜 炎. 図 3 眼 部 帯 状 疱 疹 に 伴 う 偽 樹 枝 状 角 膜 炎. 診 する 必 要 がある. ⅲ) 再 発 性 角 膜 びらん(recurrent corneal erosion: RCE) 上 皮 欠 損 治 癒 過 程 で 偽 樹 枝 状 を 呈 することがあり( 図 5), 次 のような 特 徴 がある. 1 樹 枝 状 病 変 の 周 囲 の 上 皮 が 接 着 不 良 のため, 実 質 より 浮 いている. 2 Meesmann 角 膜 上 皮 ジストロフィ,Reis-Bücklers 角 膜 ジストロフィ, 格 子 状 角 膜 ジストロフィなど 上 皮 接 着 不 良 を 来 す 基 礎 疾 患 の 所 見 が 認 められる ことがある. そのほかに, 起 床 時 の 強 い 眼 痛 の 存 在, 糖 尿 病 や 角 膜 外 傷 の 有 無 についての 問 診 が 診 断 上 役 立 つ. ⅳ) アカントアメーバ 角 膜 炎 アカントアメーバ 角 膜 炎 による 偽 樹 枝 状 角 膜 炎 ( 図 6) は 最 も 特 徴 を 捉 えにくいが, 樹 枝 状 病 変 が 単 独 で 認 めら れることはまずなく, 次 のような 所 見 を 伴 う. 1 もろもろした 不 均 一 な 点 状 斑 状 線 状 の 上 皮
474 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 図 4 Epithelial crack line. 図 6 アカントアメーバ 角 膜 炎 に 伴 う 偽 樹 枝 状 角 膜 炎. 図 5 再 発 性 角 膜 びらんに 伴 う 偽 樹 枝 状 角 膜 炎. 図 7 地 図 状 角 膜 炎. 上 皮 下 混 濁. 2 放 射 状 角 膜 神 経 炎 (radial keratoneuritis): 周 辺 部 の 角 膜 神 経 に 沿 う 浸 潤. 3 強 い 毛 様 充 血. 眼 痛,コンタクトレンズの 使 用, 治 療 歴 ( 角 膜 ヘルペ スとして 治 療 されているケースが 非 常 に 多 い)などにつ いての 詳 細 な 問 診 も, 診 断 上,きわめて 重 要 である. ) 地 図 状 病 変 樹 枝 状 角 膜 炎 が 治 療 されず 遷 延 化 すると, 上 皮 欠 損 部 が 拡 大 して 地 図 状 角 膜 炎 (geographic keratitis, 図 7)の 形 をとるが,その 場 合 も 全 体 が 縁 どられたような 特 徴 は 継 承 されており,またどこかに 樹 枝 状 を 疑 わせる 部 分 (dendritic tail)があるので, 診 断 上 役 立 つ. 特 徴 と 鑑 別 すべき 疾 患 は 以 下 のとおりである. 1 単 純 性 角 膜 上 皮 欠 損 ( 単 純 性 角 膜 びらん)( 外 傷,そ の 他 ): 上 皮 欠 損 辺 縁 部 や 欠 損 部 実 質 に 混 濁 を 認 め ない.これが 再 発 性 に 生 じれば 再 発 性 角 膜 びらん である( 前 述 ). 2 細 菌 真 菌 感 染 に 伴 う 角 膜 上 皮 欠 損 : 実 質 の 浸 潤, 前 房 の 炎 症 反 応 を 認 める. 3 遷 延 性 角 膜 上 皮 欠 損 栄 養 障 害 性 角 膜 潰 瘍 : 典 型 例 は 地 図 状 ではなく, 辺 縁 が 平 滑 な 楕 円 形 となる. 辺 縁 の 上 皮 は 混 濁 して 丸 く 隆 起 している. 4 シールド 潰 瘍 : 辺 縁 が 平 滑 な 楕 円 形 で, 上 皮 欠 損 部 の 底 が 均 一 に 灰 白 色 に 混 濁 している. 上 眼 瞼 結 膜 の 巨 大 乳 頭 を 認 める. ) 星 芒 状 病 変 樹 枝 状 角 膜 炎 が 非 常 に 小 規 模 で 発 症 した 場 合, 樹 枝 状 というより, 星 形 と 表 現 した 方 が 合 致 する 場 合 があり, 星 芒 状 角 膜 炎 といわれている.HSV による 星 芒 状 角 膜 炎 と 鑑 別 を 要 するものは 以 下 のとおりである. 1 眼 部 帯 状 疱 疹 に 伴 う 星 芒 状 角 膜 炎 : 前 述. 2Thygeson 点 状 表 層 角 膜 炎 (Thygesonʼs superficial punctate keratitis, 図 8): 両 眼 性 再 発 性 に 星 芒 状 の 上 皮 混 濁 を 発 症 する 原 因 不 明 の 疾 患 (ウイルス 性 が 疑 われている)である. 複 数 の 星 芒 状 の 上 皮 混 濁 が 散 在 性 に 認 められ, 病 変 部 はフルオレセイン により 染 色 される. 病 変 部 以 外 の 上 皮 は 正 常 で, 実 質 内 皮 前 房 に 異 常 を 認 めず, 充 血 も 認 めら れない. b) 実 質 病 変 感 染 性 角 膜 炎 を 疑 わせる 実 質 病 変 に, 浸 潤, 膿 瘍, 潰
平 成 25 年 6 月 10 日 第 1 章 感 染 性 角 膜 炎 の 診 断 475 表 1 角 膜 実 質 病 変 の 原 因 疾 患 感 染 免 疫 反 応 細 菌 性 角 膜 炎 真 菌 性 角 膜 炎 アカントアメーバ 角 膜 炎 角 膜 ヘルペス, 眼 部 帯 状 疱 疹 マイボーム 腺 炎 角 膜 上 皮 症 ブドウ 球 菌 アレルギー 膠 原 病 ( 関 節 リウマチなど) Mooren 潰 瘍 Terrien 角 膜 変 性 角 膜 実 質 炎 多 目 的 用 剤 (MPS)アレルギー アデノウイルス 結 膜 炎 に 伴 う 多 発 性 角 膜 上 皮 下 浸 潤 銭 型 角 膜 炎 diffuse lamellar keratitis:dlk 図 8 Thygeson 点 状 表 層 角 膜 炎. 瘍 がある. 浸 潤 は 初 期 病 変 として 重 要 であり, 病 原 体 が 細 菌 あるいは 真 菌 である 場 合 には, 進 行 とともに 膿 瘍 や 潰 瘍 へと 進 展 する. 原 因 は 多 様 である( 表 1). ) 定 義 ⅰ) 浸 潤 角 膜 上 皮 あるいは 実 質 に 生 じる 好 中 球 やリンパ 球 を 主 体 とする 細 胞 集 積 像 の 総 称 で, 角 膜 炎 における 代 表 的 臨 床 所 見 の 一 つである. 一 般 に, 中 央 部 に 生 じた 場 合 は 感 染 性, 周 辺 部 に 生 じた 場 合 は 非 感 染 性 のことが 多 い. ⅱ) 膿 瘍 浸 潤 のうち, 角 膜 内 に 侵 入 した 細 菌 や 真 菌 に 対 して 主 として 好 中 球 が 集 簇 したものである. 浸 潤 した 炎 症 細 胞 内 に 含 まれる 蛋 白 質 分 解 酵 素 や 活 性 酸 素 などにより 組 織 破 壊 が 生 じる. 治 癒 後 には 通 常, 組 織 の 菲 薄 化 が 生 じる. ⅲ) 潰 瘍 角 膜 上 皮 全 層 および 実 質 に 欠 損 が 生 じた 状 態 をいい, 多 くは 浸 潤 から 発 展 する. 典 型 的 な 感 染 症 のパターンで は, 好 中 球 やリンパ 球 を 主 体 とした 炎 症 細 胞 の 集 積 を 角 膜 実 質 内 に 伴 う. 膿 瘍 では, 角 膜 上 皮 と 実 質 に 欠 損 が 生 じる 場 合 が 多 く, 感 染 性 角 膜 潰 瘍 とも 呼 ぶ. 中 央 部 の 潰 瘍 は 感 染 や 神 経 麻 痺 ( 角 膜 知 覚 低 下 )に, 周 辺 部 の 潰 瘍 は 自 己 免 疫 疾 患 や 感 染 アレルギーに 起 因 することが 多 い. ) 細 隙 灯 顕 微 鏡 所 見 ( 主 な 臨 床 病 型 パターンを 図 9 に 示 す) ⅰ) 浸 潤 上 皮 あるいは 実 質 内 の 灰 白 色 の 微 細 な 点 状 混 濁 の 集 合 像 として 観 察 され, 大 きさや 深 さ, 数 は 症 例 により 異 な る. 表 層 レベルに 生 じた 場 合 には, 上 皮 欠 損 を 伴 うこと がある. 間 接 法 ( 虹 彩 反 帰 法, 強 膜 散 乱 法 )を 用 いると, 病 変 の 活 動 性 や 分 布 を 把 握 しやすい. 単 発 性, 多 発 性, びまん 性, 輪 状 などさまざまな 形 態 をとる. ⅱ) 膿 瘍 角 膜 実 質 内 に 軟 性 の 濃 厚 な 白 色 混 濁 として 観 察 され, 一 般 に, 膿 瘍 上 の 角 膜 上 皮 は 欠 損 する. 形 態 としては, 円 形, 類 円 形, 弧 状 や 輪 状 がある. 細 菌 感 染 による 角 膜 膿 瘍 のうち,グラム 陽 性 球 菌 感 染 の 場 合 は 限 局 性 の 円 形 から 類 円 形 の 膿 瘍 を,グラム 陰 性 桿 菌 感 染 の 場 合 は 輪 状 膿 瘍 を 呈 しやすい. ⅲ) 潰 瘍 角 膜 実 質 の 不 整 な 欠 損 とともに 直 上 の 上 皮 欠 損 が 認 め られる. 診 断 には, 生 体 染 色 で 潰 瘍 と 思 われる 部 位 の 上 皮 欠 損 の 有 無 を 確 認 する 必 要 がある. 色 素 のpooling や dellen などは 潰 瘍 と 紛 らわしいことがあるので 鑑 別 には 注 意 する. ) 鑑 別 フローチャート 鑑 別 診 断 の 手 順 を 図 10 に 示 す. c) その 他 注 意 すべき 所 見 細 菌 性 角 膜 炎, 真 菌 性 角 膜 炎 に 際 しては, 主 要 な 病 変 として 浸 潤, 膿 瘍, 潰 瘍 などを 認 めるだけでなく, 充 血, 前 房 内 細 胞, 前 房 蓄 膿, 角 膜 後 面 沈 着 物, 角 膜 浮 腫, 角 膜 穿 孔 などの 副 次 的 所 見 が 細 隙 灯 顕 微 鏡 にて 観 察 され, 診 断 治 療 の 上 で 重 要 なヒントとなる.もちろん, 角 膜 ヘルペスでもこれらの 所 見 は 重 要 である. 以 下 に 代 表 的 な 副 次 的 所 見 の 感 染 性 角 膜 炎 における 特 徴 と 診 断 治 療 におけるポイントを 述 べる. 細 隙 灯 顕 微 鏡 検 査 を 行 う 前 に 眼 瞼 浮 腫, 眼 瞼 発 赤, 眼 脂, 流 涙 など の 肉 眼 所 見 にも 注 意 を 払 う 必 要 があることはいうまでも
476 日眼会誌 117 巻 図 9 細隙灯顕微鏡所見のパターン 浮腫 角膜浸潤 血管侵入 HSV 単純ヘルペスウイルス VZV 水痘帯状疱疹ウイルス LASIK laser in situ keratomileusis 図 10 感染性角膜炎を主体とした実質病変のフローチャート 細隙灯顕微鏡所見 問診 その他の所見 感染 非感染 LASIK laser in situ keratomileusis 6号
平 成 25 年 6 月 10 日 第 1 章 感 染 性 角 膜 炎 の 診 断 477 図 11 レンサ 球 菌 による 角 膜 炎 で 認 められた 前 房 蓄 膿. 図 12 角 膜 後 面 沈 着 物 (KPs). ない. ) 充 血 1 感 染 性 角 膜 炎 では 原 則 的 に 充 血 を 伴 う. 2 ただし,ステロイド 点 眼 を 投 与 されている 場 合 は, 角 膜 感 染 であるにもかかわらず, 充 血 をまったく 伴 わない 場 合 がある. 3 球 結 膜 充 血 と 毛 様 充 血 ( 角 膜 に 近 い 方 がより 強 く 充 血 する)の 両 者 が 混 合 した 形 をとる. 重 症 では 強 膜 充 血 も 伴 う. 4 重 症 化 すると 球 結 膜 のみならず 瞼 結 膜 も 充 血 する. 5 治 療 に 反 応 すれば 軽 快 してくるため, 治 療 効 果 判 定 の 一 つの 指 標 となる. ) 前 房 内 細 胞 1 角 膜 に 浸 潤 性 混 濁 があれば 感 染 をまず 疑 うが, 併 せて, 前 房 内 細 胞 が 認 められれば 感 染 症 と 考 えて よい. 逆 に 認 められない 場 合 には, 感 染 症 でない 可 能 性 を 考 慮 する 必 要 がある. 例 えばカタル 性 角 膜 浸 潤 潰 瘍 では, 感 染 源 はマイボーム 腺 にある ため, 前 房 内 細 胞 は 通 常 みられない. 2 多 数 の 前 房 内 細 胞 を 認 める 場 合 には, 虹 彩 後 癒 着 を 起 こす 可 能 性 が 高 いので, 瞳 孔 管 理 が 必 要 であ る. 3 前 房 内 細 胞 の 増 減 は, 治 療 が 奏 効 しているか 否 か を 判 断 する 一 つの 指 標 となる. 4 治 療 とともに 角 膜 浮 腫 が 軽 快 してくると, 前 房 内 細 胞 がよくみえるようになるが,これを 前 房 内 細 胞 が 増 えたと 判 断 してはならない. 5 実 質 型 角 膜 ヘルペスのうち, 特 に 角 膜 ぶどう 膜 炎 では 多 数 の 前 房 内 細 胞 が 認 められる. ) 前 房 蓄 膿 ( 図 11) 1 感 染 性 角 膜 炎 の 重 症 例 で 認 められる. 2 角 膜 炎 で 前 房 蓄 膿 を 来 す 場 合, 多 くは 細 菌, 真 菌 感 染 であり,なかでも 緑 膿 菌,レンサ 球 菌, 糸 状 菌 に 多 い.ヘルペス 性 の 角 膜 ぶどう 膜 炎 に 伴 う 場 合 もある. 表 2 炎 症 性 虹 彩 毛 様 体 炎 内 皮 型 拒 絶 反 応 角 膜 内 皮 炎 実 質 型 角 膜 ヘルペス 細 菌 性 角 膜 炎 真 菌 性 角 膜 炎 角 膜 後 面 沈 着 物 を 来 す 主 な 疾 患 非 炎 症 性 Fuchs 角 膜 内 皮 ジストロフィ 偽 落 症 候 群 仮 面 症 候 群 ( 眼 内 腫 瘍 ) 3 細 菌 性 角 膜 炎, 真 菌 性 角 膜 炎 で 前 房 蓄 膿 を 生 じて いる 場 合 でも, 穿 孔 している 例 や 糸 状 菌 が Descemet 膜 を 破 って 進 展 している 例 を 除 いて, 前 房 内 は 無 菌 である. 4 フィブリン 反 応 を 伴 うと 前 房 蓄 膿 は 粘 稠 となり 移 動 しにくくなる. 逆 に,アカントアメーバ 角 膜 炎 のようにフィブリン 反 応 を 伴 わない 場 合 には, 移 動 しやすい. 5 前 房 蓄 膿 の 高 さの 変 化 は, 前 房 内 細 胞 数 と 同 様 に 治 療 効 果 の 目 安 となる. ) 角 膜 後 面 沈 着 物 ( 図 12) 角 膜 後 面 沈 着 物 を 来 す 主 な 疾 患 を 表 2に 示 す. 1 通 常, 角 膜 浸 潤, 膿 瘍, 潰 瘍 に 一 致 した 角 膜 後 面 に 出 現 するが, 炎 症 が 強 いときには, 二 次 的 に 角 膜 下 方 にも 沈 着 する. 2 感 染 性 角 膜 炎 に 呼 応 する 角 膜 後 面 沈 着 物 は 豚 脂 様 を 呈 することが 多 い. 3 糸 状 菌 による 真 菌 性 角 膜 炎 では, 非 常 に 大 きな 面 状 の 沈 着 物 を 生 じる.これは,endothelial plaque と 呼 ばれ, 前 房 ないし 実 質 深 層 に 菌 糸 が 及 んでい る 可 能 性 が 考 えられている. 4 角 膜 後 面 沈 着 物 も 前 房 内 細 胞 数 や 前 房 蓄 膿 に 連 動 しており, 炎 症 の 鎮 静 化 とともに 数 や 大 きさは 減 少 し, 色 素 塊 に 変 化 していく. ) 角 膜 浮 腫 角 膜 浮 腫 を 来 す 主 な 疾 患 を 表 3 に 示 す.
478 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 表 3 角 膜 浮 腫 ( 上 皮 + 実 質 )を 来 す 主 な 疾 患 炎 症 性 内 皮 型 拒 絶 反 応 角 膜 内 皮 炎 実 質 型 角 膜 ヘルペス 細 菌 性 角 膜 炎 真 菌 性 角 膜 炎 非 炎 症 性 水 疱 性 角 膜 症 Fuchs 角 膜 内 皮 ジストロフィ 内 眼 手 術 後 レーザー 虹 彩 切 開 術 後 偽 落 症 候 群 円 錐 角 膜 の 急 性 水 腫 1 感 染 性 角 膜 炎 による 浮 腫 は, 角 膜 内 や 前 房 内 の 炎 症, 角 膜 後 面 沈 着 物 などの 影 響 で 内 皮 が 機 能 不 全 を 生 じた 結 果 起 こるものであり, 感 染 の 鎮 静 化 と ともに 軽 減 する. 2 しかし, 感 染 が 長 期 化 あるいは 重 症 化 した 場 合 に は, 内 皮 細 胞 数 が 著 明 に 減 少 し, 不 可 逆 的 な 浮 腫 へと 移 行 することもある. 3 角 膜 実 質 の 感 染 病 巣 では, 上 皮 と 実 質 の 両 者 に 浮 腫 を 生 じる. 4 角 膜 混 濁 のない 浮 腫 では, 細 菌, 真 菌 感 染 は 考 え にくい. 5 実 質 型 角 膜 ヘルペスや 角 膜 内 皮 炎 では, 特 に 重 要 な 所 見 であり, 角 膜 後 面 沈 着 物 を 伴 い, 局 所 性 の 角 膜 浮 腫 ( 上 皮 + 実 質 )として 認 められる. 内 皮 炎 では, 実 質 内 混 濁 を 伴 わない 浮 腫 を 呈 するのが 特 徴 である. ) 角 膜 穿 孔 1 感 染 性 角 膜 炎 が 十 分 にコントロールされないと, 角 膜 実 質 の 融 解 が 進 行 し, 角 膜 穿 孔 を 来 すことが ある. 2 病 原 体 に 対 する 治 療 が 奏 効 した 場 合 でも, 薬 剤 の 毒 性 や 炎 症 の 遷 延 化 などをベースに 生 じることも ある. 3 外 科 的 治 療 を 考 慮 すべき 重 要 な 所 見 であり, 特 に 感 染 性 の 穿 孔 では 治 療 的 角 膜 移 植 を 行 わざるを 得 ないケースが 多 い.. 角 膜 知 覚 検 査 ) 検 査 方 法 角 膜 知 覚 検 査 は 感 染 性 角 膜 炎 の 診 療 において 必 要 不 可 欠 で, 特 に 角 膜 ヘルペスの 診 断 には 重 要 である. 図 13 Cochet-Bonnet 型 角 膜 知 覚 計. 一 般 的 に 角 膜 知 覚 を 測 定 するには Cochet-Bonnet 型 角 膜 知 覚 計 ( 図 13)が 広 く 用 いられている. 方 法 は,ナイロ ン 糸 の 長 さを 60 5 mm まで 調 節 し,まず60 mm の 長 さ で 角 膜 中 央 に 垂 直 に 当 て, 軽 く 屈 曲 させる.その 後,5 mm ずつ 短 くしていき, 患 者 が 自 覚 的 に 感 じるか, 瞬 目 反 射 が 出 たときのナイロン 糸 の 長 さを 知 覚 の 値 とする. ナイロン 糸 と 毛 圧 圧 迫 値 の 関 係 を 表 4 に 示 す. ) 検 査 のポイント 1 一 定 の 速 度 で 角 膜 に 近 づける. 2 角 膜 の 乾 燥 が 測 定 結 果 に 影 響 するため, 検 査 中 は 適 宜 瞬 目 させる. 3 できれば 細 隙 灯 顕 微 鏡 下 で 行 うと, 角 膜 中 央 の 表 面 に 垂 直 に 接 触 させることが 可 能 となる. ) 角 膜 知 覚 低 下 を 認 める 疾 患 加 齢 により 角 膜 知 覚 は 低 下 するため, 何 mm から 異 常 と 正 確 な 規 定 はできないが, 角 膜 ヘルペス,コンタクト レンズ 装 用 などでは 低 下 する. 左 右 眼 を 比 較 することも 重 要 である. Ⅲ 塗 抹 検 鏡. 検 体 採 取 ) 準 備 ( 図 14) ⅰ) 点 眼 麻 酔 薬 引 き 続 き 培 養 目 的 の 擦 過 をすることが 多 いので, 原 則 として 防 腐 剤 なしのものが 望 ましい. 表 4 ナイロン 糸 と 毛 圧 圧 迫 値 の 関 係 糸 長 (mm) 60 55 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 毛 力 (mg) 19 24 25 32 36 55 67 108 157 290 520 1,710 圧 迫 値 (g/mm/ 3 ) 1.47 1.86 1.94 2.48 2.79 4.26 5.19 8.37 12.17 22.48 40.3 132.5 ( 東 レナイロン 研 究 所 でAS3-A 型 記 録 計 にて 測 定 ) 使 用 ナイロン 糸 は 東 レナイロンモノフィラメントタイプ 100(ナイロン 6 号 )0.6 号, 標 準 直 径 0.027 mm( 断 面 積 S=0.0129).
平 成 25 年 6 月 10 日 第 1 章 感 染 性 角 膜 炎 の 診 断 479 ⅱ) 擦 過 用 スパーテル Kimura spatula(e1091r,storz 社, 図 15)が 標 準 器 具 である.スパーテル 以 外 では 滅 菌 済 みの 円 刃 刀,ゴルフ 刀,ピンセット, 綿 棒 などを 使 用 してもよい. ⅲ) その 他 スライドガラス,アルコールランプ,メタノールまた はエタノールを 用 意 する. ) 採 取 ( 擦 過 塗 抹 固 定 )の 実 際 スライドガラスの 隅 に 患 者 氏 名, 日 時 などを 書 き, 中 央 のサンプル 塗 抹 部 にダイヤモンドペンシルで 丸 印 を 書 き 入 れる.もともと 丸 印 の 書 いてあるスライドガラスも 入 手 できる. 擦 過 操 作 に 先 立 ち,スパーテル 先 端 を 火 炎 滅 菌 するなど, 滅 菌 済 みの 器 具 を 用 いる.Kimura spatula はプラチナ 製 であり, 冷 却 が 早 い. 必 要 に 応 じて 点 眼 麻 酔 し, 細 隙 灯 顕 微 鏡 下 ないし 肉 眼 で 行 う. 擦 過 は 開 瞼 器 をかけて, 潰 瘍 では 底 部 よりも 辺 縁 部 を 擦 過 する( 図 16). 擦 過 物 は,スパーテルの 場 合 はスライドガラス 上 の 丸 印 内 に 薄 くのばす. 綿 棒 の 場 合 は,サンプル 量 が 比 較 的 多 ければ 転 がすように 塗 抹 し, 少 なければスタンプ を 押 すようにする( 図 17)が, 角 膜 擦 過 物 ではスタンプ 法 が 適 切 である.スライドガラスは 風 乾 した 後 で, 固 定 は ギムザ 染 色,グラム 染 色 とも 2 分 程 度 メタノールにつけ る(アルコール 固 定 ).ただし,メタノールは 毒 性 が 強 い ため,エタノール(5 10 分 間 浸 漬 )を 使 用 することも 可 図 14 擦 過 塗 抹 標 本 セット. 上 : 前 列 左 から,アルコールランプ,スライドガラス, スパーテル, 後 列 左 から,ディフ クイック,フェイ バー G. 下 :ゴルフ 刀. 図 15 Kimura spatula. 図 16 病 変 部 位 の 採 取.
480 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 図 17 塗 抹 標 本 の 作 製 法. 図 18 多 核 球 (キムザ 染 色, 200). 図 19 単 核 球 (キムザ 染 色, 200). 能 である.グラム 染 色 では 火 炎 固 定 でもよい.その 他, 検 鏡 にあたっては 撮 影 装 置 があれば 望 ましい. なお, 擦 過 操 作 はサンプリング 目 的 だけでなく 一 種 の 触 診 ともいえる. 潰 瘍 の 付 着 分 泌 物 を 擦 過 除 去 して 見 直 すと, 病 変 本 来 の 形 状 が 分 かり, 細 菌 感 染, 真 菌 感 染 の 鑑 別 などではかなり 参 考 になる. 真 菌 など 病 原 体 が 角 膜 実 質 内 部 に 存 在 すると 考 えられ る 場 合 は, 滅 菌 済 みの 尖 刃 などで 実 質 の 一 部 を 切 離 する 必 要 がある( 角 膜 実 質 生 検 ).. 染 色 の 種 類 と 方 法 a) ギムザ 染 色 ) ギムザ 染 色 とは 本 染 色 は 感 染, 非 感 染 すべてを 含 んだあらゆる 病 態 を 対 象 とする 多 目 的 スクリーニング 染 色 である. 現 在,こ の 簡 易 迅 速 染 色 液 セットであるディフ クイック( 図 14) もあり,15 秒 でギムザ 染 色 とほぼ 等 価 の 染 色 が 得 られる. 具 体 的 には 固 定 液 で 5 秒 固 定, 続 きⅠ 液 で 5 秒 染 色, 水 洗,Ⅱ 液 で 5 秒 染 色, 水 洗 後 に 風 乾 する. 検 鏡 ではまず, 弱 拡 大 の 対 物 20,40,60 倍 などのいず れかで 概 観 する.ここでは 多 核 球, 単 核 球, 好 酸 球 など の 炎 症 細 胞 の 存 在, 角 膜 結 膜 上 皮 細 胞 の 状 態 を 観 察 す る.さらに 強 拡 大 の 対 物 100 倍 にすれば, 細 菌 自 体 やク ラミジアの 識 別 が 可 能 である.ただし, 細 菌 はこの 染 色 ではすべてブルーに 染 まり,グラム 陽 性 陰 性 の 区 別 は できない. ) 所 見 例 多 核 球 ( 図 18)は 細 菌, 真 菌,アカントアメーバなどの 感 染 の 際 の 主 要 炎 症 細 胞 であり, 単 核 球 ( 図 19)はウイル ス 感 染 の 主 要 細 胞 である.また, 好 酸 球 ( 図 20)はアレル ギー 性 角 結 膜 疾 患 でみられる. 角 膜 上 皮 細 胞 は,HSV あるいは 水 痘 帯 状 疱 疹 ウイルス(varicella-zoster virus: VZV) 感 染 時 は 複 数 が 細 胞 融 合 することにより 多 核 巨 細 胞 ( 図 21)としてみられることがある.これは in vivo cell sheet 上 でのウイルスによる 細 胞 変 性 効 果 (cytopathic effect:cpe)である. 微 生 物 の 染 色 像 として 細 菌 ( 図 22) と 真 菌 ( 図 23)の 検 鏡 例 を 示 す.
平 成 25 年 6 月 10 日 第 1 章 感 染 性 角 膜 炎 の 診 断 481 図 20 好 酸 球 (キムザ 染 色, 200). 図 22 モラクセラ(キムザ 染 色, 600). 図 21 多 核 巨 細 胞 (キムザ 染 色, 1,000). 図 23 フザリウム(キムザ 染 色, 200). b) グラム 染 色 ) グラム 染 色 とは 細 菌, 真 菌 およびアカントアメーバ 感 染 が 疑 われる 場 合 に 実 施 する. 後 二 者 は 基 本 的 にすべてグラム 陽 性 に 染 まる.ギムザ 染 色 (ディフ クイック)に 比 べ,ターゲッ トは 狭 い. 感 染 症 専 用 の 染 色 である. 従 来 法 のほか,3 分 でできる 簡 便 なフェイバー G( 図 14)がある. 検 鏡 は ギムザ 染 色 のときと 同 様 に, 弱 拡 大 の 対 物 20,40,60 倍 などから 始 め, 対 物 100 倍 まで 拡 大 する. 菌 の 大 きさは 多 くのもので 1 mm 前 後 なので, 対 物 100 倍 では 大 体 1 mm 前 後 に 見 える. 炎 症 細 胞 のサイズはその 10 30 倍 くらいである. ) 所 見 例 図 24 28 に 代 表 的 なグラム 染 色 検 鏡 像 を 示 す. 肺 炎 球 菌 は, 球 菌 に 分 類 されるが 完 全 な 球 形 ではなく, ランセット 型 という 両 端 が 尖 った 双 球 菌 である.また, 肺 炎 球 菌 の 多 くは 莢 膜 を 産 生 するが, 莢 膜 はグラム 染 色 では 菌 体 周 囲 が 白 く 抜 けた 状 態 として 観 察 される( 図 24). 他 方, 黄 色 ブドウ 球 菌 は 正 円 形 である. 普 通 は 菌 が 集 簇 して 房 状 にみえるが,1 2 個 のみのことも 多 い( 図 25). 緑 膿 菌 は 大 小 不 揃 いの 小 桿 菌 であり,その 他 に 特 徴 的 な 点 はない( 図 26).モラクセラは, 通 常 みる 細 菌 の 中 で 最 も 大 きいもので 大 双 桿 菌 といわれる. 端 から 端 まで 同 じ 太 さの 桿 菌 が 2 本 つながった 形 が 特 徴 的 である( 図 27). c) ファンギフローラ Y 染 色 真 菌 アカントアメーバについてはパーカーインク KOH 法 が 有 用 であったが, 現 時 点 では 入 手 が 困 難 であ り,これらに 特 異 性 の 高 い 方 法 としてはファンギフロー ラ Y 染 色 が 使 用 できる.ファンギフローラ Y は,スチ ルベンジルスルホン 酸 系 蛍 光 染 料 を 利 用 した 染 色 法 であ り,b 構 造 を 持 つ 多 糖 類 であるキチン,セルロースを 特 異 的 に 染 色 することにより, 真 菌,アカントアメーバの シストを 特 異 的 かつ 鋭 敏 に 検 出 することができる. 染 色 後 の 試 料 は, 蛍 光 顕 微 鏡 にて 観 察 する. 菌 糸, 酵 母,ア カントアメーバのシストにそれぞれ 相 当 する 形 態 を 持 っ た 青 緑 色 蛍 光 像 を 認 めた 場 合 に, 陽 性 と 判 定 する. 採 取 後 時 間 が 経 過 した 試 料 においても 染 色 性 は 低 下 せず, 染 色 後 の 試 料 の 保 存 性, 発 色 性 も 良 好 であり, 感 度 も 高 い という 特 徴 がある. 詳 細 については Appendix を 参 照 のこと. d) 蛍 光 抗 体 法 (HSV,VZV) 蛍 光 抗 体 法 はウイルス 抗 原 の 直 接 的 な 証 明 法 である.
482 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 図 24 肺 炎 球 菌 (グラム 陽 性,ランセット 型 双 球 菌, 1,000). 図 27 モラクセラ(グラム 陰 性, 大 双 桿 菌, 1,000). 図 25 黄 色 ブドウ 球 菌 (グラム 陽 性, 丸 型 房 状, 1,000). 図 28 フザリウム(グラム 陽 性, 1,000). 図 26 緑 膿 菌 (グラム 陰 性, 小 桿 菌, 1,000). 抗 原 抗 体 反 応 を 応 用 し, 角 膜 上 皮 擦 過 物 中 のウイルス 抗 原 と 蛍 光 色 素 でラベルされた 抗 体 が 特 異 的 に 結 合 したも のを 蛍 光 顕 微 鏡 下 で 観 察 する. 緑 色 の 特 異 蛍 光 を 発 する 感 染 細 胞 を 認 めれば 陽 性 と 判 断 できる.HSV および VZV のモノクローナル 抗 体 により, 上 皮 型 角 膜 ヘルペスや 眼 部 帯 状 疱 疹 など 感 染 性 角 膜 炎 の 原 因 診 断 として 用 いられ る. 蛍 光 抗 体 法 はウイルス 分 離 に 比 べ, 迅 速 に 結 果 が 得 られ, 感 度, 特 異 性 ともに 高 い.HSV については, 抗 原 の 型 別 確 認 ができる. 偽 蛍 光 や 偽 発 色 があるため, 陽 性 対 照, 陰 性 対 照 を 同 時 に 用 いる 必 要 がある. 蛍 光 は 時 間 とともに 褪 色 するため, 検 鏡 は 速 やかに 行 う. 詳 細 については Appendix を 参 照 のこと. e) 免 疫 クロマトグラフィ 法 (HSV) 免 疫 クロマトグラフィ 法 は 抗 原 抗 体 反 応 を 応 用 して HSV 抗 原 を 直 接 証 明 する 迅 速 検 査 法 である. 角 膜 上 皮 細 胞 中 の HSV 抗 原 と 着 色 粒 子 をラベルして 可 視 化 された モノクローナル 抗 体 が 特 異 的 に 結 合 し,さらにその 結 合 物 が 判 定 部 に 固 相 化 されたモノクローナル 抗 体 に 結 合 す ることで 形 成 される 着 色 ラインの 出 現 を 目 視 確 認 し, 陽 性 陰 性 を 判 定 する.HSV の 検 査 としてはベッドサイド で 簡 便 迅 速 に 行 うことのできる 唯 一 の 方 法 である. 特 異 性 が 100% である 一 方, 感 度 は 60% 程 度 であるため, 陰 性 であっても HSV 感 染 を 否 定 することはできない 点 に 注 意 を 要 する 4). 詳 細 については Appendix を 参 照 のこと.
平 成 25 年 6 月 10 日 第 1 章 感 染 性 角 膜 炎 の 診 断 483 Ⅳ 臨 床 検 査. 細 菌 培 養 感 受 性 検 査 ) 細 菌 検 査 依 頼 時 の 注 意 事 項 検 査 依 頼 時 に 疑 う 菌 名 菌 群 を 明 記 すると 選 択 培 地 が 追 加 されるため 検 出 率 が 向 上 する.また, 培 養 検 査 では 材 料 を 3 5 枚 の 培 地 に 塗 布 するため, 採 取 材 料 が 極 端 に 少 ない 場 合 は, 目 標 菌 群 に 優 先 順 位 を 付 記 するとよい. ) 起 炎 菌 の 判 断 外 眼 部 には 多 くの 常 在 菌 が 存 在 するため, 起 炎 菌 を 判 断 する 場 合 は, 塗 抹 検 鏡 結 果 と 分 離 菌 名 の 比 較, 分 離 菌 名 と 炎 症 像 の 特 徴 の 確 認, 分 離 菌 名 と 薬 剤 治 療 効 果 ( 感 受 性 スペクトル)などを 考 慮 し, 総 合 的 に 決 定 する. ) 薬 剤 感 受 性 試 験 結 果 の 解 釈 感 染 性 角 膜 炎 の 起 炎 菌 が,ある 薬 剤 に R: 耐 性 と 判 定 された 場 合 でも, 点 眼 薬 の 場 合 は 濃 度 が 非 常 に 高 いた め 効 果 が 得 られる 場 合 もある.したがって, 臨 床 的 に 明 らかに 効 いている 場 合 は 当 該 点 眼 薬 を 継 続 してよい.し かし, 角 膜 表 面 では 起 炎 菌 と 薬 剤 との 十 分 な 接 触 時 間 が 確 保 されないため,PAE(postantibiotic effect)を 有 する フルオロキノロン 系 抗 菌 点 眼 薬 などでもさほどの 治 療 効 果 が 期 待 できないので, R と 判 定 された 薬 剤 をわざわ ざ 新 たに 開 始 することは,ほかに 方 法 がない 場 合 を 除 い ては 避 けた 方 がよい. 詳 細 については Appendix を 参 照 のこと.. 真 菌 培 養 感 受 性 検 査 真 菌 感 染 が 疑 われる 感 染 性 角 膜 炎 の 病 巣 部 からサンプ ルを 採 取 し, 起 炎 菌 を 分 離 培 養 することによって 真 菌 性 角 膜 炎 の 確 定 診 断 が 可 能 になる.サンプルは, 潰 瘍 周 辺 部 の 正 常 角 膜 との 境 界 部 分 を 円 刃 刀 で 強 めに 擦 過 して 角 膜 実 質 を 採 取 する. 角 膜 実 質 からサンプルを 採 取 するこ とが, 真 菌 の 検 出 率 を 上 げるポイントである. 得 られた サンプルは 37 と 室 温 で 培 養 する.さらに 感 受 性 検 査 に よって, 分 離 培 養 できた 真 菌 に 有 効 な 抗 真 菌 薬 を 特 定 す ることが 可 能 である. 詳 細 については Appendix を 参 照 のこと..アカントアメーバ 培 養 アカントアメーバの 分 離 培 養 には,アカントアメーバ 塩 類 溶 液 (KCM)と Bacto agar を 用 いて 作 製 した 1.5% NN 寒 天 平 板 に, 酵 母 溶 液 あるいは 細 菌 浮 遊 液 を 塗 布 し たものを 用 いる. 培 地 は 冷 蔵 庫 で 3 か 月 間 保 存 できる. 角 膜 擦 過 物 あるいはコンタクトレンズ 保 存 液 などを 塗 布 して 30 の 暗 所 で 培 養 すると, 栄 養 体 が2 3 日 目 でみ られ,5 7 日 でシスト 化 する.アカントアメーバの 同 定 は,ブリッジプレパラートと 位 相 差 顕 微 鏡 を 用 いた 生 体 観 察 か,BCB(brilliant cresyl blue)などを 用 いた 染 色 標 本 で 行 う. 詳 細 については Appendix を 参 照 のこと..ヘルペスウイルス 培 養 ウイルスは 細 菌 や 真 菌 と 異 なり,サンプルを 細 胞 に 接 種 し 細 胞 内 で 増 殖 させてウイルスを 回 収 する 必 要 がある. 角 膜 ヘルペス 診 断 における HSV の 分 離 は, 感 度 が 悪 い, 結 果 が 出 るのに 日 数 を 要 する, 培 養 細 胞 を 用 意 する 必 要 があるなどの 欠 点 があり, 日 常 的 な 臨 床 検 査 としては 不 向 きな 面 があり, 専 門 家 以 外 は 行 う 必 要 はない.しかし, 眼 科 医 としては 少 なくとも,ウイルス 分 離 が 陽 性 であれ ば 角 膜 ヘルペスと 確 定 診 断 でき, 依 然 としてヘルペス 診 断 のゴールド スタンダードであることを 理 解 しておい た 方 がよい. 詳 細 については Appendix を 参 照 のこと..Polymerase chain reaction(pcr) 法 PCR 法 は, 少 量 の DNA から 増 幅 反 応 により 多 量 の DNA を 得 る 方 法 である. 眼 科 領 域 では, 主 に 角 膜 ヘル ペス,ウイルス 性 ぶどう 膜 炎 の 診 断 に 用 いられている. また, 細 菌 性 角 膜 炎, 真 菌 性 角 膜 炎,アカントアメーバ 角 膜 炎 の 診 断 に 応 用 した 報 告 もある 5)6).PCR 法 ではま ず, 検 体 を 94 前 後 の 高 温 に 供 し DNA 二 本 鎖 変 性 によ り 一 本 鎖 にする(denaturation). 次 に 反 応 温 度 を 55 60 前 後 に 下 げて,それぞれの 一 本 鎖 にプライマーを 付 着 させる(annealing).その 後, 再 び 温 度 を 72 前 後 に 上 げて 伸 長 反 応 を 行 う. 従 来 法 の PCR は, 一 定 数 の 増 幅 サイクルの 後 の DNA の 有 無 を 確 認 する 方 法 である.リ アルタイム PCR は,PCR 増 幅 産 物 を 経 時 的 に 測 定 して 解 析 する 定 量 的 方 法 である.PCR 法 は,あくまで DNA の 存 在 が 証 明 されるのみであり,ウイルスであれば 活 動 性 ウイルスの 存 在 を 証 明 しているわけではないため,そ の 評 価 に 注 意 を 要 する. 詳 細 については Appendix を 参 照 のこと.. 血 清 抗 体 価 細 菌 ウイルスには 多 数 の 抗 原 エピトープが 存 在 し, これに 対 する 特 異 的 抗 体 が 産 生 される.この 血 清 中 の 抗 体 量 の 増 加 を 捉 えて, 感 染 の 有 無 を 知 る 方 法 が 血 清 学 的 診 断 法 である. 主 にウイルス 感 染 で 用 いられる. 一 般 にウイルス 感 染 の 初 感 染 では, 発 症 初 期 と 発 症 2 週 後 のペア 血 清 を 採 取 し, 血 清 抗 体 価 を 比 較 して,4 倍 以 上 の 上 昇 で 感 染 と 判 定 するのが 基 本 である.しか し, 角 膜 ヘルペスの 再 発 では 抗 体 価 はあまり 変 化 しない. HSV の IgM 抗 体 価 が 上 昇 している 場 合 には 初 感 染 が 疑 われる. 成 人 では HSV および VZV のIgG 抗 体 保 有 率 が 高 いため,IgG 抗 体 価 が 高 いからといって 診 断 的 価 値 は 低 い. 詳 細 については Appendix を 参 照 のこと.
484 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 第 2 章 感 染 性 角 膜 炎 の 病 態 病 型 Ⅰ 細 菌 性 角 膜 炎 : 起 炎 菌 による 特 徴 と 頻 度. 起 炎 菌 主 たる 起 炎 菌 は, 肺 炎 球 菌,ブドウ 球 菌, 緑 膿 菌 であ り,その 他 にモラクセラ,セラチア,レンサ 球 菌, 淋 菌, 嫌 気 性 菌, 非 定 型 抗 酸 菌 などが 挙 げられる. 地 域 によっ て 頻 度 の 違 いがみられるが, 寒 冷 地 ではブドウ 球 菌 の 頻 度 が 増 加 し, 一 方, 温 暖 地 では 緑 膿 菌 の 頻 度 が 増 加 する 傾 向 にある.. 誘 因 角 膜 異 物 や 突 き 眼 などの 外 傷,コンタクトレンズ 装 用, 既 存 の 角 結 膜 疾 患 ( 水 疱 性 角 膜 症, 兎 眼,ドライアイな ど), 眼 瞼 や 涙 道 疾 患 ( 慢 性 涙 囊 炎 など), 副 腎 皮 質 ステ ロイド 薬 (ステロイド)などがある.. 病 態 細 菌 が 角 膜 内 に 侵 入 し, 増 殖 することによって 炎 症 反 応 ( 好 中 球 を 主 体 とする 炎 症 細 胞 浸 潤 )が 生 じ, 角 膜 に 化 膿 性 病 変 ( 浸 潤, 膿 瘍, 潰 瘍 など)を 来 す. 周 囲 の 結 膜 や 前 房 にも 二 次 的 に 炎 症 反 応 ( 結 膜 充 血, 結 膜 浮 腫, 前 房 蓄 膿 など)を 生 じる.. 診 断 確 定 診 断 には 角 膜 の 感 染 病 巣 を 擦 過 して 培 養 検 査 およ び 塗 抹 検 鏡 が 必 要 である. 培 養 には 血 液 寒 天 培 地,チョコレート 寒 天 培 地 や 輸 送 用 培 地 (シードスワブ やトランスワブ など)を 用 いる. 血 液 寒 天 培 地 では 溶 血 性 を 判 定 でき,チョコレート 寒 天 培 地 にはⅤ 因 子 とⅩ 因 子 が 含 まれるため,ヘモフィルス 属 や 淋 菌 が 生 えやすい. 塗 抹 標 本 の 染 色 はグラム 染 色 が 基 本 である. 菌 の 染 色 性 と 形 態 から,ある 程 度 起 炎 菌 の 推 定 が 可 能 である..グラム 陽 性 菌 ( 球 菌 桿 菌 ) 球 菌 には 肺 炎 球 菌,ブドウ 球 菌,レンサ 球 菌 などがあ り, 桿 菌 にはコリネバクテリウムやアクネ 菌 がある. ) 肺 炎 球 菌 肺 炎 球 菌 は 上 気 道 などに 存 在 するグラム 陽 性 双 球 菌 で, 突 き 眼 などを 契 機 に 角 膜 炎 を 生 じる. 慢 性 涙 囊 炎 の 起 炎 菌 としてもよく 知 られており, 二 次 的 に 角 膜 炎 を 来 すこ とがある. 角 膜 病 変 は 限 局 性 膿 瘍 であるが, 潰 瘍 病 変 ( 図 29)が 生 体 防 御 能 の 弱 い 中 央 方 向 へ 移 動 することがあり, 匐 行 性 角 膜 潰 瘍 と 呼 ばれる. 莢 膜 を 有 する 肺 炎 球 菌 は 好 中 球 による 貪 食 に 抵 抗 するため, 重 篤 になりやすい. 深 部 に 進 展 し, 穿 孔 することがある. ) ブドウ 球 菌 ( 図 30) ブドウ 球 菌 は 眼 表 面 などいたるところに 存 在 するグラ ム 陽 性 球 菌 である. 角 膜 炎 を 生 じるのは 大 半 が 黄 色 ブド ウ 球 菌 であるが, 表 皮 ブドウ 球 菌 などのコアグラーゼ 陰 性 ブドウ 球 菌 (coagulase-negative staphylococci:cns) も 状 況 により 起 炎 菌 となり 得 る. 角 膜 病 変 は 限 局 性 膿 瘍 で, 重 篤 化 することはまれである.ただ,メチシリン 耐 性 黄 色 ブドウ 球 菌 (MRSA)が 増 加 しているように,ブド ウ 球 菌 は 耐 性 を 獲 得 しやすく, 治 療 上 問 題 となる. 角 膜 病 変 が 周 辺 部 にあるときには, 菌 体 や 菌 体 外 毒 素 に 対 す るⅢ 型 アレルギー 反 応 であるカタル 性 角 膜 浸 潤 潰 瘍 を 鑑 別 する 必 要 がある.マイボーム 腺 炎 や 眼 瞼 炎 の 有 無 も チェックする. ) コリネバクテリウム コリネバクテリウムは, 眼 表 面 ( 結 膜 や 眼 瞼 )の 常 在 菌 叢 をなすグラム 陽 性 桿 菌 であるが, 局 所 免 疫 低 下 など 状 況 によっては 角 膜 炎 の 起 炎 菌 となり 得 る.コリネバクテ リウムには 耐 性 化 を 示 す 株 があり, 治 療 上 注 意 を 要 す る 7)8). ) アクネ 菌 アクネ 菌 は 眼 表 面 ( 結 膜 や 眼 瞼 )の 常 在 菌 叢 の 一 つと 考 えられる 嫌 気 性 のグラム 陽 性 桿 菌 である. 通 常, 結 膜 炎 や 角 膜 炎 の 起 炎 菌 とはなりにくい. 図 29 肺 炎 球 菌 による 角 膜 炎. 図 30 黄 色 ブドウ 球 菌 による 角 膜 炎.
平 成 25 年 6 月 10 日 第 2 章 感 染 性 角 膜 炎 の 病 態 病 型 485 図 31 緑 膿 菌 による 角 膜 炎. 図 32 モラクセラによる 角 膜 炎..グラム 陰 性 菌 ( 球 菌 桿 菌 ) ) 緑 膿 菌 ( 図 31) 緑 膿 菌 はグラム 陰 性 桿 菌 で, 日 和 見 感 染 菌 とされてい るが, 角 膜 炎 を 惹 起 すると 重 篤 な 症 状 を 来 す. 典 型 的 な 角 膜 病 変 は 輪 状 膿 瘍 を 伴 った 潰 瘍 で, 周 囲 角 膜 はスリガ ラス 状 混 濁 を 呈 する.また, 急 速 に 進 行 し, 穿 孔 を 来 す ことがある. コンタクトレンズ, 特 にソフトコンタクトレンズの 連 続 装 用 に 関 連 した 緑 膿 菌 性 角 膜 炎 が 多 くみられる.また, 最 近,オルソケラトロジーレンズ 装 用 中 の 緑 膿 菌 による 角 膜 炎 が 散 見 される. ) モラクセラ( 図 32) モラクセラは 大 型 のグラム 陰 性 双 桿 菌 であり, 以 前 か ら 眼 角 眼 瞼 結 膜 炎 の 起 炎 菌 として 知 られているが, 全 身 状 態 の 不 良 例 では 中 央 に 角 膜 炎 を 生 じることがある. 緑 膿 菌 やモラクセラ 以 外 のブドウ 糖 非 発 酵 グラム 陰 性 桿 菌 も 角 膜 炎 を 惹 起 する. ) セラチア セラチアはグラム 陰 性 の 小 ( 短 ) 桿 菌 で, 緑 膿 菌 と 同 様 に 日 和 見 感 染 菌 とされている. 消 毒 薬 や 多 くの 抗 菌 薬 に 抵 抗 を 示 すため, 院 内 感 染 菌 となりやすい.セラチアに 図 33 淋 菌 による 角 膜 炎. よる 角 膜 炎 は 軽 く 浅 い 潰 瘍 から 広 範 な 膿 瘍 を 示 す 重 篤 な 潰 瘍 病 変 までさまざまである.この 原 因 としてセラチア が 産 生 するプロテアーゼの 多 寡 が 関 係 すると 考 えられて いる.コンタクトレンズ 装 用 に 関 連 して 角 膜 炎 を 生 じる ことが 多 い. ) 淋 菌 ( 図 33) 淋 菌 はグラム 陰 性 の 双 球 菌 で,クリーム 状 の 眼 脂 を 特 徴 とする 膿 漏 眼 の 起 炎 菌 としてよく 知 られている. 結 膜 炎 に 続 発 して 角 膜 炎 を 発 症 する. 淋 菌 は 正 常 な 角 膜 上 皮 を 突 破 でき, 浸 潤 巣 ( 多 発 性 の 場 合 あり)を 生 じ, 急 速 に 悪 化 して 潰 瘍 から 穿 孔 を 来 すことがある.. 非 定 型 抗 酸 菌, 放 線 菌 (ノカルジア) ) 非 定 型 抗 酸 菌 非 定 型 抗 酸 菌 は 結 核 菌 以 外 の 培 養 可 能 な 抗 酸 菌 の 総 称 であり, 角 膜 炎 の 原 因 となるのは Mycobacterium chelonae と M. fortuitum である. 外 傷,コンタクトレンズ 装 用,laser in situ keratomileusis(lasik)などの 前 眼 部 手 術 後 に 関 連 して 角 膜 炎 が 発 症 し, 境 界 不 明 瞭 な 淡 い 浸 潤 巣 を 呈 する. ) 放 線 菌 (ノカルジア) ノカルジアは 土 壌 中 に 生 息 する 放 線 菌 で,グラム 染 色 にて 菌 糸 様 のグラム 陽 性 桿 菌 像 を 呈 する. 外 傷 やコンタ クトレンズ 装 用 に 関 連 して 角 膜 炎 を 発 症 し, 境 界 不 明 瞭 な 淡 い 浸 潤 巣 を 呈 する. Ⅱ 真 菌 性 角 膜 炎 : 起 炎 菌 による 特 徴 と 頻 度 角 膜 に 真 菌 が 感 染 した 場 合, 当 然 多 くは 炎 症 を 伴 い 真 菌 性 角 膜 炎 を 呈 するが, 時 に 全 く 炎 症 反 応 を 伴 わない 場 合 もあり,そのような 病 態 も 含 めて 角 膜 真 菌 症 の 呼 称 も 広 く 用 いられている. 本 ガイドラインでは, 炎 症 を 伴 う 通 常 のケースを 念 頭 に 置 いているため, 真 菌 性 角 膜 炎 で 用 語 を 統 一 した. 真 菌 は 形 態 学 的 に 糸 状 菌 と 酵 母 菌 の 2 つに 分 類 される. 真 菌 性 角 膜 炎 が 疑 われた 場 合 における 診 断 のポイントを 図 34 に 挙 げる.
486 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 ( 既 往 歴 問 診 エ ピ ソ ー ド ) 臨 床 所 見 真 菌 学 的 所 見 抗 菌 点 眼 薬, 副 腎 皮 質 ステ ロイド 点 眼 薬, 免 疫 抑 制 薬, 抗 癌 薬 の 使 用 植 物 による 突 き 眼 などの 眼 外 傷 基 礎 疾 患 細 隙 灯 顕 微 鏡 所 見 検 鏡 時 培 養 糖 尿 病, 白 血 病, 膠 原 病, 悪 性 腫 瘍, AIDS 角 結 膜 疾 患 角 膜 病 巣 その 他 の 特 徴 角 膜 上 皮 欠 損 感 染 部 位 角 膜 融 解, 病 巣 擦 過 コロニー 推 定 される 原 因 真 菌 タイプ 少 ない 擦 過 すると 硬 い 羽 毛 状 カビのイメージ 糸 状 菌 境 界 不 鮮 明 な 羽 毛 状 ( 白 色 灰 白 色 ) endothelial plaque 前 房 蓄 膿 病 巣 より 小 さい 中 央 周 辺 部 とさまざま いわゆる 農 村 型 境 界 比 較 的 鮮 明 な 類 円 形 (カラーボタン 様 ) 病 巣 と 同 等 多 くは 角 膜 中 央 部 多 い 擦 過 すると 軟 らかい クリーム 色 の 平 滑 なコロ ニー( 細 菌 と 類 似 ) 酵 母 菌 (カンジダ) いわゆる 都 市 型 図 34 真 菌 性 角 膜 炎 が 疑 われた 場 合 における 診 断 のポイント. 図 35 糸 状 菌 による 真 菌 性 角 膜 炎.. 糸 状 菌 ) 分 類 分 岐 性 フィラメント 状 の 多 細 胞 性 構 造 体 であり, 糸 状 菌 (filamentous fungus)と 総 称 される. ) 起 炎 菌 Fusarium solani などを 含 めたフザリウム 属 が 多 く,ア スペルギルス 属,ペニシリウム 属,アルテルナリア 属 が 比 較 的 頻 度 の 高 いものとして 挙 げられる. ) 発 症 の 背 景 角 膜 への 外 傷 が 契 機 となっていることが 多 い. 特 に 多 いのは 植 物 による 突 き 眼 や 農 作 業 中 の 眼 外 傷 である. 糸 状 菌 は 植 物 の 表 面 や 土 壌 に 生 息 しているため,これらの 関 与 する 外 傷 が 発 症 の 重 要 な 因 子 である. 糸 状 菌 は 発 育 が 緩 慢 なことが 多 いので, 外 傷 から 発 症 を 自 覚 するまで にかなりの 時 間 が 経 過 していることもある. ) 臨 床 所 見 白 色 ないし 灰 白 色 の 境 界 不 鮮 明 な 病 巣 を 呈 することが 多 い( 図 35).これは hyphate ulcer と 呼 ばれ, 糸 状 菌 感 染 に 特 徴 的 な 所 見 である. 角 膜 実 質 内 の 病 変 とともに 角 膜 内 皮 面 に 円 板 状 に 付 着 する,いわゆる endothelial plaque がみられるのも 特 有 の 所 見 であり, 前 房 内 の 強 い 炎 症 と 前 房 蓄 膿 を 伴 う. 感 染 の 初 期 においては,たと え 前 房 にまで 感 染 が 及 んでいる 状 態 でも 角 膜 実 質 の 層 構 造 があまり 破 壊 されないのも 糸 状 菌 の 特 徴 である. 治 療 にもかかわらず 感 染 が 増 悪 すると 実 質 融 解 が 始 まり, 膿 瘍 が 形 成 され 角 膜 穿 孔 に 至 ることも 少 なくない. 糸 状 菌 の 中 には 角 膜 上 皮 下 のごく 浅 層 の 実 質 に 限 局 し て 病 巣 を 形 成 するものがある.これらの 多 くは 進 行 がき わめて 緩 慢 であり,また 炎 症 反 応 に 乏 しいために, 遷 延 性 上 皮 欠 損 や 何 らかの 角 膜 沈 着 物 と 鑑 別 しにくいことも ある.. 酵 母 菌 ) 分 類 真 菌 のうち, 単 細 胞 性 の 栄 養 体 であるものを 酵 母 状 真 菌 (yeast-like fungus: 以 下, 酵 母 菌 )と 呼 ぶ. 酵 母 の 外 形 は 球 形 ないしは 楕 円 形 を 示 し, 直 径 は3 4 mm 程 度 であ る. 感 染 性 角 膜 炎 の 起 炎 菌 となり 得 る 酵 母 菌 のほとんど はカンジダ 属 である.
平 成 25 年 6 月 10 日 第 2 章 感 染 性 角 膜 炎 の 病 態 病 型 487 図 36 酵 母 菌 による 真 菌 性 角 膜 炎. ) 起 炎 菌 カンジダ 属 のうち,Candida albicans は 代 表 菌 種 であ り, 角 膜 からの 検 出 頻 度 も 高 い. 最 近, 比 較 的 病 原 性 の 低 い C. albicans 以 外 のカンジダ 属 が 起 炎 菌 として 多 く 検 出 されるようになった.この 中 には,C. tropicalis,c. parapsilosis,c. glabrata,c. krusei などが 挙 げられ, 後 者 2 つはアゾール 系 の 抗 真 菌 薬 に 比 較 的 感 受 性 が 低 い. ) 発 症 の 背 景 カンジダ 属 は 健 常 人 の 結 膜 囊 から 数 % 程 度 の 頻 度 で 検 出 される.さらにコンタクトレンズ 装 用, 抗 菌 点 眼 薬 およびステロイド 点 眼 の 使 用 は, 結 膜 囊 からの 真 菌 検 出 率 を 高 めると 考 えられている.したがって, 上 記 のエピ ソードがある 場 合,カンジダが 起 炎 菌 である 可 能 性 を 念 頭 に 置 く 必 要 がある. ) 臨 床 所 見 病 巣 は 境 界 が 鮮 明 な 円 形 を 呈 していることが 多 く( 図 36), 角 膜 実 質 浅 層 に 限 局 していることが 多 い. 病 巣 の 角 膜 実 質 の 融 解 傾 向 は 強 い. 細 菌 感 染 による 病 巣 と 似 た ところが 多 く, 細 菌 学 的 な 検 査 による 鑑 別 が 重 要 である. Ⅲ アカントアメーバ 角 膜 炎 : 病 態 と 病 期, 基 本 病 変. 病 態 アカントアメーバによる 感 染 性 角 膜 炎 は, 本 来, 外 傷 によるもの 以 外 はきわめてまれであるが, 近 年,コンタ クトレンズに 関 連 した 感 染 が 増 加 している.アカントア メーバが 感 染 する 条 件 として, 1 角 膜 上 皮 の 欠 損. 2 アカントアメーバが 増 殖 する 際 に 栄 養 源 として 必 要 な 細 菌 の 存 在. 3 ステロイドなどによるアカントアメーバ 増 殖 を 阻 止 する 免 疫 反 応 の 抑 制. などがあり,これらが 重 なって 初 めて 感 染 が 成 立 する. アカントアメーバの 感 染 病 理 の 特 徴 として, 1 栄 養 体 とシストの 形 態 があり, 生 育 条 件 が 悪 化 す るとシスト 化 し, 種 々の 薬 物 治 療 に 抵 抗 する. 2 角 膜 中 央 部 表 層 から 感 染 を 生 じ, 徐 々に 周 辺 へと 拡 大 する. 角 膜 深 層 への 進 展 にはさらに 時 間 を 要 する. 3 感 染 の 進 行 はきわめて 緩 徐 である. 4 経 過 中, 炎 症 反 応 は 一 貫 して 高 度 であり, 毛 様 充 血 や 眼 痛 が 著 明 である. などがある.. 病 期 と 基 本 病 変 アカントアメーバ 角 膜 炎 では, 緩 徐 に 病 変 が 進 行 する ため, 経 過 に 伴 い, 診 断 に 有 用 な 特 徴 的 臨 床 所 見 を 生 じ る.このため, 病 型 よりも 病 期 進 行 への 理 解 がより 重 要 であり, 最 初 に 石 橋 ら 9) により 初 期 移 行 期 完 成 期 と, 次 いで 塩 田 ら 10) により 初 期 成 長 期 完 成 期 消 退 期 瘢 痕 期 と, 本 症 の 病 期 分 類 が 報 告 されている.ここでは, 最 も 特 徴 的 である 初 期 と 完 成 期 の 病 変 について 記 述 する. 病 期 分 類 の 詳 細 については 個 々の 文 献 を 参 照 されたい. ) 初 期 一 般 に 感 染 から 1 か 月 以 内 の 時 期 に 相 当 する. 1 放 射 状 角 膜 神 経 炎 (radial keratoneuritis): 輪 部 か ら 中 央 へ 向 かう 神 経 に 沿 って 認 められる 線 状 の 浸 潤 で, 初 期 のアカントアメーバ 角 膜 炎 にきわめて 特 徴 的 な 所 見 である. 2 偽 樹 枝 状 角 膜 炎 (p. 473 を 参 照 ). 3 角 膜 上 皮 上 皮 下 混 濁 ( 点 状, 斑 状, 線 状 ). ) 完 成 期 一 般 に 感 染 から 1 か 月 以 降 の 時 期 に 相 当 する. 時 に 豚 脂 様 角 膜 後 面 沈 着 物, 前 房 蓄 膿 を 伴 う. 1 輪 状 浸 潤 : 角 膜 中 央 を 中 心 とした 横 長 楕 円 の 形 態 をとる. 上 皮 欠 損 を 生 じて 輪 状 潰 瘍 となる 場 合 も ある. 2 円 板 状 浸 潤 : 角 膜 中 央 に 大 きな 横 長 楕 円 の 浮 腫 と 混 濁 を 呈 する. 上 皮 欠 損 を 生 じて 円 板 状 潰 瘍 とな る 場 合 もある. Ⅳ 角 膜 ヘルペス: 病 型 分 類 ( 病 態, 基 本 病 変 ). 上 皮 型 角 膜 ヘルペス ) 病 態 初 感 染 の 場 合 を 除 き, 三 叉 神 経 節 に 潜 伏 感 染 している 単 純 ヘルペスウイルス(HSV)( 多 くは HSV-1,HSV-2 は 少 数 )の 再 活 性 化 により,ウイルスが 神 経 節 から 下 行 性 に 角 膜 上 皮 に 到 達 し, 上 皮 細 胞 に 感 染 を 起 こすことによ る. ) 基 本 病 変 ⅰ) 樹 枝 状 角 膜 炎 樹 枝 状 病 変 の 先 端 部 が 拡 大 する terminal bulb がみら れる. 病 変 部 に 細 胞 浸 潤 がみられる. ⅱ) 地 図 状 角 膜 炎 上 皮 型 の 重 症 型 で, 樹 枝 状 病 変 が 拡 大 し 地 図 状 病 変 を
488 示 す. 病 変 辺 縁 に terminal bulb を 伴 う 樹 枝 状 病 変 がみ られる. ⅲ) 遷 延 性 角 膜 上 皮 欠 損 ウイルスによる 直 接 的 な 感 染 病 変 ではなく, 上 皮 型 病 変 の 二 次 的 病 変 である. ) 診 断 眼 ヘルペス 感 染 症 研 究 会 の 診 断 基 準 によると 以 下 のと おりである 11). ⅰ) 確 定 診 断 病 巣 部 からの HSV の 分 離 培 養 同 定 による. ⅱ) 確 実 診 断 Terminal bulb を 持 つ 樹 枝 状 あるいは 地 図 状 角 膜 炎, または 蛍 光 抗 体 法 によるウイルス 抗 原 の 証 明 による. ⅲ) 補 助 診 断 角 膜 知 覚 低 下, 上 皮 型 角 膜 ヘルペスの 確 実 な 既 往, polymerase chain reaction(pcr) 法 によるウイルス DNA の 証 明 がある.. 実 質 型 角 膜 ヘルペス ) 病 態 角 膜 実 質 細 胞 に 感 染 した HSV に 対 する 免 疫 炎 症 反 応 により 起 こる 病 変 である. ) 基 本 病 変 ⅰ) 円 板 状 角 膜 炎 主 として 角 膜 中 央 に Descemet 膜 皺 襞 を 伴 う 円 形 の 実 質 浮 腫 が, 病 巣 内 に 小 型 中 等 大 の 角 膜 後 面 沈 着 物 がみ られる. 実 質 浅 層 を 中 心 とした 混 濁 と 病 巣 部 の 境 界 に 沿 って 免 疫 輪 がみられる. 前 房 炎 症 を 伴 うことがある. ⅱ) 壊 死 性 角 膜 炎 円 板 状 角 膜 炎 の 再 発 を 繰 り 返 し, 角 膜 実 質 に 血 管 侵 入, 瘢 痕 形 成, 脂 肪 変 性 などの 病 変 がある 症 例 で, 再 発 を 起 こすと 実 質 浮 腫 とともに, 強 い 炎 症 細 胞 の 浸 潤 が 起 こる. ⅲ) 栄 養 障 害 性 潰 瘍 ウイルスの 直 接 的 な 病 変 ではなく, 実 質 型 病 変 の 遷 延 化 による 二 次 的 病 変 である. ) 診 断 以 下 の 諸 点 を 勘 案 して 診 断 する. 確 定 といえるのは 1 のみだが, 実 際 には 困 難 である. 1 病 巣 部 からのウイルス 分 離 培 養 同 定. 2 上 皮 型 角 膜 ヘルペスの 確 実 な 既 往. 3 再 発 性. 4 角 膜 知 覚 低 下. 5PCR 法 によるウイルス DNA の 証 明. 6 ウイルスに 対 する 血 清 抗 体 価 の 上 昇 ( 必 須 条 件 だが, これのみでは 診 断 できない).. 内 皮 型 角 膜 ヘルペス( 角 膜 内 皮 炎 ) ) 病 態 上 皮 型 は 上 皮 細 胞 におけるウイルスの 増 殖, 実 質 型 は ウイルス 感 染 と 炎 症 反 応 がその 主 な 病 態 であるが, 内 皮 型 ( 内 皮 炎 )はそのどちらか,なお 不 明 である. 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 ) 注 記 角 膜 内 皮 炎 は HSV だけでなく, 水 痘 帯 状 疱 疹 ウイル ス(VZV)やサイトメガロウイルス,ムンプスウイルスな どのウイルスによるもの, 特 発 性 の 原 因 不 明 の 場 合 もあ る.HSV 以 外 の 原 因 による 内 皮 炎 の 臨 床 所 見 は,HSV による 内 皮 炎 に 類 似 する. ) 基 本 病 変 1 角 膜 周 辺 部 に 生 じる 角 膜 実 質 浮 腫 と, 病 巣 部 およ び 病 巣 先 端 部 に 沿 った 角 膜 後 面 沈 着 物. 2 角 膜 上 皮 に 樹 枝 状 病 変 や, 実 質 中 に 高 度 の 細 胞 浸 潤 を 認 めない. 3 前 房 に 強 い 炎 症 を 認 めない. 4 内 皮 細 胞 の 高 度 減 少. 5 角 膜 輪 部 の 炎 症 を 伴 う 眼 圧 上 昇. ) 診 断 1 前 房 からのウイルス 分 離 培 養 同 定 ( 現 実 にはきわ めて 困 難 である). 2 前 房 水 の PCR によるウイルス DNA の 証 明. 3 上 記 の 臨 床 所 見. Ⅴ 眼 部 帯 状 疱 疹 : 眼 合 併 症. 病 態 帯 状 疱 疹 は VZV による 感 染 症 である.VZV の 初 感 染 は 水 痘 であり, 水 痘 罹 患 後 にウイルスは 三 叉 神 経 節, 脊 髄 後 根 神 経 節 に 潜 伏 する. 宿 主 の 免 疫 能 がウイルスの 封 じ 込 めに 関 与 しており, 免 疫 能 が 低 下 するなどなんらか の 要 因 でウイルスが 再 活 性 化 した 場 合, 支 配 領 域 の 皮 膚 節 に 有 痛 性 の 水 疱 を 発 症 する. 眼 部 帯 状 疱 疹 は 三 叉 神 経 第 一 枝 領 域, 時 に 第 二 枝 領 域 に 発 症 する 帯 状 疱 疹 であり, 角 膜 炎 をはじめさまざまな 眼 合 併 症 を 生 じる. 若 年 者 で も 発 症 することがあるが, 加 齢 とともにその 発 症 頻 度 は 高 くなり 重 症 化 する 傾 向 がみられている 12). 眼 球 組 織 に は 鼻 毛 様 体 神 経 を 介 して 炎 症 が 波 及 するとされており, 本 神 経 の 支 配 領 域 である 鼻 背, 鼻 尖 に 皮 疹 がみられる 場 合 には 眼 合 併 症 は 有 意 に 高 率 となる(Hutchinson 徴 候 ). 急 性 期 は 神 経 節 から 軸 索 を 下 ってきたウイルスによる 感 染 症 が 主 体 であるが, 皮 疹 の 鎮 静 化 以 降 にウイルスに 対 する 免 疫 反 応 が 関 与 する 角 膜 実 質 の 炎 症 がみられる 場 合 があり, 皮 疹 消 退 後 の 観 察 も 必 要 である. 皮 膚 症 状 を 欠 くが, 角 膜 炎, 虹 彩 炎 など 眼 部 帯 状 疱 疹 に 特 徴 的 な 眼 合 併 症 を 有 し, 後 記 ( 診 断 )の 基 準 に 従 って VZV 感 染 が 証 明 されるものを zoster sine herpete と 呼 ぶ.. 眼 所 見 眼 部 帯 状 疱 疹 は HSV 感 染 症 と 異 なり, 多 彩 な 眼 合 併 症 を 生 じるのが 特 徴 である( 表 5).ここでは 角 膜 炎 を 主 体 に 解 説 する. ) 偽 樹 枝 状 角 膜 炎 急 性 期 に 結 膜 炎 とともに 発 症 する. 上 皮 表 層 の 隆 起 し
平 成 25 年 6 月 10 日 第 2 章 感 染 性 角 膜 炎 の 病 態 病 型 489 表 5 眼 部 帯 状 疱 疹 の 眼 合 併 症 眼 合 併 症 三 叉 神 経 痛 皮 疹 結 膜 炎 強 膜 炎 上 強 膜 炎 角 膜 炎 虹 彩 炎 緑 内 障 その 他 (まれな 病 変 ) 病 態 病 名 前 駆 症 状 として 三 叉 神 経 支 配 領 域 の 皮 膚 の 疼 痛, 知 覚 過 敏 が 出 現 する. 3か 月 を 経 過 しても 神 経 痛 が 残 存 した 場 合 には, 疱 疹 後 神 経 痛 と 呼 ぶ 三 叉 神 経 第 一 枝, 第 二 枝 領 域 の 発 赤, 水 疱 疹, 膿 疱 疹, 痂 皮 を 認 める 充 血, 出 血, 乳 頭, 濾 胞, 偽 膜 などを 生 じる 強 膜 の 充 血 ( 全 周, 扇 状 ), 時 に 結 節 性 隆 起 を 生 じる 偽 樹 枝 状 角 膜 炎,びまん 性 角 膜 浮 腫 内 皮 炎, 多 発 性 角 膜 上 皮 下 浸 潤, 円 板 状 角 膜 炎 などがみられる 角 膜 後 面 沈 着 物 ( 微 細 なもの, 豚 脂 様 ), 前 房 中 の 細 胞 フレア, 瞳 孔 縁 の 結 節, 虹 彩 萎 縮 斑 がみられる 虹 彩 炎, 線 維 柱 帯 炎 に 伴 い 眼 圧 が 上 昇 する 動 眼 神 経 麻 痺, 全 眼 筋 麻 痺, 網 膜 血 管 炎, 視 神 経 炎 など に 炎 症 が 波 及 することがある. 角 膜 には 浮 腫, 浸 潤, 血 管 新 生 がみられ, 瞳 孔 領 まで 病 変 が 達 すると 視 力 は 低 下 する.. 診 断 三 叉 神 経 支 配 領 域 の 皮 疹 と 神 経 痛, 血 清 抗 体 価 ( 補 体 結 合 反 応 )の 4 倍 以 上 の 上 昇, 皮 疹 からの 多 核 巨 細 胞 や ウイルス 抗 原 の 検 出, 房 水 や 角 膜 病 変 からの PCR 法 に よるウイルス DNA の 証 明 14) などにより 行 う. Ⅵ サイトメガロウイルス 角 膜 内 皮 炎 ( 基 本 病 型 診 断 ) 図 37 水 痘 帯 状 疱 疹 ウイルスによる 偽 樹 枝 状 角 膜 炎. た 病 巣 であり, 中 央 の 溝 状 陥 凹 がないこと,フルオレセ インに 対 する 染 色 性 が 弱 く,terminal bulb が 認 められな いことより,HSV による 樹 枝 状 角 膜 炎 とは 区 別 される 13) ( 図 37).4 6 日 で 消 退 するが, 実 質 炎 へと 進 行 するこ とがある. ) びまん 性 角 膜 浮 腫 内 皮 炎 角 膜 内 皮 細 胞 障 害 によるびまん 性 の 角 膜 浮 腫 であり, 比 較 的 早 期 に 発 症 し 一 過 性 であることが 多 い. ) 多 発 性 角 膜 上 皮 下 浸 潤 アデノウイルス 結 膜 炎 における 多 発 性 角 膜 上 皮 下 浸 潤 に 類 似 した 病 変 であり, 周 辺 角 膜 にみられることが 多 い. 発 症 時 期 は 1 か 月 以 内 のこともあるが,それ 以 降 の 場 合 もある. ) 円 板 状 角 膜 炎 1 3 か 月 後 に HSV によるものと 同 様 の 円 板 状 角 膜 炎 がみられることがある. 慢 性 進 行 性 の 場 合, 角 膜 混 濁, 脂 肪 沈 着, 血 管 新 生, 免 疫 輪 などが 出 現 し, 視 力 回 復 に 角 膜 移 植 が 必 要 となる 例 もある. ) 強 角 膜 炎 まれに, 強 膜 炎 に 伴 い, 強 膜 病 変 部 と 接 する 輪 部 角 膜 角 膜 内 皮 炎 は 角 膜 内 皮 に 特 異 的 な 炎 症 を 生 じる 疾 患 で あり, 多 くは HSV などの 感 染 によって 生 じる. 進 行 す ると 不 可 逆 性 の 角 膜 内 皮 機 能 不 全 に 至 る 重 症 疾 患 である. 近 年,アシクロビルによる 治 療 に 抵 抗 性 で, 原 因 不 明 の 特 発 性 角 膜 内 皮 炎 と 診 断 されてきた 症 例 のなかに,サイ トメガロウイルス(CMV)による 角 膜 内 皮 炎 があることが 報 告 されている 15) 18). 本 疾 患 は 新 しく 認 識 された 疾 患 概 念 である.CMV 角 膜 内 皮 炎 の 基 本 病 型 と 診 断 について 記 載 する.. 病 態 全 身 的 な 免 疫 機 能 不 全 のない 中 高 年 の 男 性 に 多 いこと が 報 告 されている.CMV の 再 活 性 化 によって 発 症 する と 考 えられており, 病 態 にはウイルス 感 染 と 免 疫 反 応 の 両 方 が 関 与 していることが 推 測 されるが, 免 疫 機 能 不 全 のない 人 で CMV が 角 膜 内 皮 に 特 異 的 な 炎 症 を 生 じる 機 序 については 明 らかにされていない.. 特 徴 的 所 見 1 一 般 的 に 角 膜 内 皮 炎 では 角 膜 後 面 沈 着 物 (keratic precipitates:kps)を 伴 う 限 局 性 の 角 膜 浮 腫 を 認 め る.CMV 角 膜 内 皮 炎 では 環 状 あるいは 小 判 状 に 配 列 した 小 さい KPs あるいはそれに 類 似 した 病 巣 (コ イン リージョン,coin-shaped lesion)を 伴 う 頻 度 が 高 いとされる( 図 38). 角 膜 浮 腫 が 軽 微 で,コイ ン リージョンによって 診 断 される 症 例 もある.た
490 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 図 38 サイトメガロウイルス(CMV) 角 膜 内 皮 炎 でみられるコイン リージョン. 円 形 に 配 列 する 角 膜 後 面 沈 着 物 (KPs)あるいは KPs に 類 似 した 病 変 であり, 細 隙 灯 顕 微 鏡 では, 円 の 内 部 にも KPs が 密 集 する 小 判 状 ( 左 ),あるいは 内 部 は 抜 けた 環 状 ( 右 )の 病 変 として 観 察 される. 図 39 CMV 角 膜 内 皮 炎 でみられる 特 徴 的 な 臨 床 所 見. だし,コイン リージョンは 時 間 が 経 つと 特 徴 的 な 形 態 が 崩 れて 通 常 の KPs と 区 別 できなくなるた め, 診 断 の 必 須 条 件 とはいえない. 典 型 例 では 角 膜 周 辺 部 から 始 まり, 中 央 に 向 かって 進 行 する 角 膜 浮 腫 を 認 め, 時 に rejection line( 拒 絶 反 応 線 ) 様 の KPs を 伴 う( 図 39). 2 細 胞 浸 潤 や 血 管 侵 入 を 伴 わない. 3 角 膜 内 皮 細 胞 密 度 の 減 少 を 認 め, 進 行 すると 角 膜 内 皮 機 能 不 全 に 至 る. 4 再 発 性 慢 性 虹 彩 毛 様 体 炎 を 伴 うことが 多 い. 5 眼 圧 上 昇 続 発 緑 内 障 を 伴 うことが 多 い. 6 片 眼 性 の 症 例 が 多 いが, 両 眼 性 の 場 合 もある.. 診 断 ウイルス 分 離 培 養 の 報 告 はなく, 前 房 水 を 用 いたウイ ルス DNA の 証 明 が 診 断 に 有 用 である.PCR 法 では, 病 態 と 関 係 なく,CMV DNA が 他 の 前 眼 部 炎 症 性 疾 患 ( 角 膜 ヘルペスなど)に 伴 って 検 出 されることがあるた め,CMVDNA の 証 明 とともに,HSVDNA および VZV DNA が 陰 性 であることも 確 認 することが 必 要 である. また, 抗 CMV 薬 治 療 に 対 する 反 応 も 併 せて, 総 合 的 に CMV 角 膜 内 皮 炎 と 診 断 する.. 鑑 別 が 必 要 な 疾 患 角 膜 移 植 後 症 例 では, 拒 絶 反 応 との 鑑 別 が 重 要 であ る 16). 拒 絶 反 応 としてステロイドによる 治 療 を 行 って も, 角 膜 浮 腫 が 改 善 しない 場 合 には 本 疾 患 を 疑 う 必 要 が ある.また, 原 因 不 明 の 水 疱 性 角 膜 症 や, 角 膜 移 植 後 に 拒 絶 反 応 様 の 炎 症 を 繰 り 返 し 複 数 回 の 角 膜 移 植 の 既 往 を 持 つような 症 例 では,CMV 角 膜 内 皮 炎 を 疑 ってウイル ス 検 索 を 行 うことが 望 ましい.
平 成 25 年 6 月 10 日 491 第 3 章 感 染 性 角 膜 炎 の 治 療 感 染 性 角 膜 炎 における 薬 物 治 療 には, 眼 科 において 保 険 適 用 のない 薬 剤 を 用 いる 場 合 もあるが, 臨 床 的 には 有 用 性 が 認 められるため, 患 者 に 十 分 な 説 明 を 行 うととも に, 症 状 に 注 意 しながら 可 能 な 薬 剤 を 使 用 する. Ⅰ 細 菌 性 角 膜 炎. 治 療 方 針 細 菌 性 角 膜 炎 の 治 療 は, 起 炎 菌 に 有 効 な 抗 菌 薬 を 選 択 して 使 用 することが 必 須 であり,そのためには 早 急 かつ 確 実 に 起 炎 菌 を 同 定 しなければならない.しかし, 実 際 には 菌 を 同 定 できないことも 少 なくない.さまざまな 情 報 を 総 合 して 起 炎 菌 を 推 測 し, 抗 菌 薬 に 対 する 反 応 をみ ながら, 治 療 を 進 めていく( 図 40). ) 起 炎 菌 を 同 定 できるまで,あるいは 同 定 できない とき 病 巣 部 から 採 取 した 擦 過 物 などの 塗 抹 検 鏡 および 培 養 検 査 により 細 菌 を 検 出 し, 薬 剤 感 受 性 を 考 慮 した 治 療 を 開 始 できれば,ほとんどの 症 例 で 感 染 所 見 は 軽 快 し, 治 癒 に 至 る.しかし, 検 査 結 果 を 待 つ 間 にも 角 膜 炎 は 急 速 に 進 行 し,また 培 養 しても 菌 を 検 出 できないことがある. このため, 菌 を 同 定 する 前 から 治 療 を 開 始 する. 起 炎 菌 を 同 定 できるまで,あるいは 同 定 できないとき には, 患 者 背 景, 発 症 誘 因 および 角 膜 所 見 に 基 づいて 起 炎 菌 を 推 測 し, 治 療 計 画 を 立 てる( 表 6). 初 期 治 療 薬 と しては, 軽 症 では 1 剤, 重 症 ではフルオロキノロン 系, セフェム 系,アミノグリコシド 系 から 2 剤 の 抗 菌 点 眼 薬 を 組 み 合 わせる. 例 えば 緑 膿 菌 などのグラム 陰 性 桿 菌 を 疑 う 場 合 はフルオロキノロン 系 +アミノグリコシド 系, 黄 色 ブドウ 球 菌 や 肺 炎 球 菌 を 疑 う 場 合 はフルオロキノロ ン 系 +セフェム 系 を 選 択 するなどである. 実 際 の 点 眼 の 選 択 にあたっては 表 7 を 参 照 する. 徹 底 した 治 療 と 迅 速 な 対 応 をするために, 重 症 例 は 入 院 加 療 が 望 ましい. 細 菌 性 か 真 菌 性 かが 不 明 な 場 合 には, 所 見 が 中 等 度 ま でであればまず 細 菌 性 角 膜 炎 の 治 療 を 行 い, 反 応 しない 場 合 には 真 菌 性 角 膜 炎 の 治 療 を 考 慮 する. 重 症 感 染 症 あ るいは 真 菌 感 染 の 合 併 が 強 く 疑 われる 場 合 には, 抗 真 菌 薬 の 局 所 投 与 と 細 菌 性 角 膜 炎 の 治 療 を 並 行 して 行 う. ) 起 炎 菌 を 検 出 した 場 合 培 養 検 査 で 細 菌 を 検 出 した 場 合 にはどこから 菌 を 検 出 したか, 塗 抹 検 鏡 と 培 養 検 査 の 結 果 が 同 じか, 角 膜 所 見 と 整 合 性 があるかなどを 考 慮 する. 例 えば, 病 巣 部 擦 過 物 の 塗 抹 検 鏡 でグラム 陽 性 球 菌 を 認 め, 培 養 検 査 で 黄 色 ブドウ 球 菌 を 検 出 すれば, 黄 色 ブ ドウ 球 菌 が 起 炎 菌 である 可 能 性 がきわめて 高 い. 一 方, 眼 脂 培 養 でのみ 検 出 した 菌 は, 角 膜 病 巣 の 起 炎 菌 である 可 能 性 とともに 皮 膚 あるいは 眼 瞼, 結 膜 の 常 在 菌 を 検 出 している 可 能 性 もある(p. 502 の 図 45 外 眼 部 常 在 菌 を 参 照 ). 患 者 背 景, 発 症 誘 因 および 角 膜 所 見 からあらか じめ 推 測 した 細 菌 であれば, 眼 脂 培 養 による 検 出 菌 で あっても 起 炎 菌 と 考 えて 治 療 を 進 めていく. 検 出 された 菌 が 起 炎 菌 と 考 えられる 場 合 には, 薬 剤 感 受 性 結 果 を 確 認 する. 原 則 的 には 感 受 性 のある 薬 剤 を 第 一 選 択 とするが, 初 期 治 療 で 十 分 効 果 が 認 められている 図 40 細 菌 性 角 膜 炎 の 治 療 手 順.
492 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 表 6 起 炎 菌 の 推 測 に 有 用 な 情 報 角 膜 所 見 ( 各 原 因 菌 に 特 徴 的 な 所 見 の 有 無 ) 患 者 背 景 ( 易 感 染 性 患 者 かどうか) 局 所 要 因 ( 局 所 免 疫 不 全 の 有 無 ) ( 角 膜 上 皮 障 害 の 有 無 ) 発 症 誘 因 感 染 巣 の 形, 深 さ, 数 角 膜 融 解 の 程 度 など 年 齢 全 身 疾 患 ( 糖 尿 病 など) 涙 囊 炎, 眼 瞼 異 常, 結 膜 疾 患 発 症 までの 局 所 使 用 薬 角 膜 疾 患 外 傷 手 術 ( 角 膜 移 植, 屈 折 矯 正 手 術 など) コンタクトレンズ 装 用 表 7 角 膜 感 染 症 の 主 な 起 炎 菌 と 薬 剤 選 択 b-ラクタム 系 フルオロキノロン 系 アミノグリコシド 系 マクロライド 系 テトラサイクリン 系 ブドウ 球 菌 群 レンサ 球 菌 群 緑 膿 菌 : 第 一 選 択 薬, : 有 効, : 菌 株 により 有 効, : 無 効. 注 ) 第 四 世 代 フルオロキノロン 系 は 緑 膿 菌 に 対 して 効 果 が 弱 くなっている. ブドウ 糖 非 発 酵 菌 群 腸 内 細 菌 群 場 合 は 投 薬 をそのまま 継 続 することもある. ) 多 剤 耐 性 菌 近 年 では 細 菌 性 角 膜 炎 において, 抗 菌 薬 のほとんどに 感 受 性 を 示 さない 多 剤 耐 性 菌 を 検 出 する 頻 度 が 増 えてい る. 検 出 される 耐 性 菌 としては,メチシリン 耐 性 黄 色 ブ ドウ 球 菌 (MRSA)が 最 も 多 く,そのほかにはメチシリン 耐 性 表 皮 ブドウ 球 菌 (methicillin-resistant Staphylococcus epidermidis:mrse),ペニシリン 耐 性 肺 炎 球 菌, 多 剤 耐 性 緑 膿 菌 などがある.しかし, 点 眼 薬 中 の 薬 剤 は 高 濃 度 であるため, 耐 性 と 示 されていても, 既 に 使 用 してお り 効 果 が 認 められていればそのまま 継 続 して 差 し 支 えな い.また, 最 小 発 育 阻 止 濃 度 (minimum inhibitory concentration:mic)の 低 い 薬 剤 があればその 薬 剤 の 局 所 投 与 を 試 みてよい. 医 療 用 医 薬 品 で 軽 快 しない 場 合 には, 以 下 に 記 述 する 自 家 調 整 薬 を 使 用 する. ) 抗 菌 薬 以 外 の 治 療 ブドウ 球 菌, 特 に MRSA,MRSE による 感 染 性 角 膜 炎 は 日 和 見 感 染 として 生 ずることが 多 く, 局 所 免 疫 の 低 下 や 角 膜 上 皮 障 害 が 誘 因 となる. 副 腎 皮 質 ステロイド 薬 (ステロイド) 投 与 眼 では 局 所 ステロイドを 減 量 あるいは 中 止 し, 角 膜 炎 の 発 症 に 関 係 する 基 礎 疾 患 があればその 治 療 も 並 行 して 行 う. 緩 んだ 縫 合 糸,コンタクトレンズ など 生 体 材 料 が 誘 因 となることもあり, 誘 因 となった 状 況 を 可 能 な 限 り 除 去 して 治 療 を 進 める. また, 前 房 炎 症 の 強 い 症 例 では, 瞳 孔 管 理 のため 硫 酸 アトロピン 点 眼 や 散 瞳 薬 点 眼 を 使 用 する.. 薬 物 療 法 ) 医 療 用 医 薬 品 点 眼 薬 あるいは 眼 軟 膏 として 処 方 できる 抗 菌 薬 を 表 8 に 示 す. フルオロキノロン 系 は 抗 菌 スペクトルが 広 いが,レン サ 球 菌 にはやや 弱 い.ただし,いわゆる 第 四 世 代 のフル オロキノロン 系 はレンサ 球 菌 への 効 果 が 強 くなっている. 反 面, 緑 膿 菌 に 対 する 効 果 は 弱 くなっている.b-ラクタ ム 系 はレンサ 球 菌 にはよく 効 くが 緑 膿 菌 には 効 果 が 乏 し く, 逆 にアミノグリコシド 系 は, 緑 膿 菌 に 有 効 であるが レンサ 球 菌 には 無 効 である.バンコマイシン 眼 軟 膏 は, MRSA,MRSE が 起 炎 菌 と 診 断 された 感 染 症 に 保 険 適 用 がある. 耐 性 菌 の 発 現 を 防 ぐため,これを 遵 守 する 必 要 がある. ) 自 家 調 整 薬 眼 科 用 の 医 療 用 医 薬 品 に 感 受 性 がなく, 注 射 用 薬 剤 で 感 受 性 の 高 い 薬 剤 がある 場 合 には, 注 射 用 薬 剤 を 生 理 食 塩 水 で 希 釈 することによって,0.5 1% 水 溶 液 を 調 整 し て 局 所 投 与 を 行 う. 眼 軟 膏 の 形 で 自 家 調 整 することも 可 能 である.ただし, 自 家 調 整 薬 は 点 眼 毒 性 が 不 明 であ り, 調 整 ( 雑 菌 混 入 の 可 能 性 )や 保 存 管 理 ( 溶 解 後 の 保 存 方 法 や 安 定 性 )にも 問 題 が 生 じ 得 るため, 安 易 な 使 用 を 避 ける.. 投 与 方 法 細 菌 性 角 膜 炎 の 治 療 は 局 所 投 与 が 治 療 の 主 体 であり, 全 身 投 与 は 補 助 的 に 行 う.
平 成 25 年 6 月 10 日 第 3 章 感 染 性 角 膜 炎 の 治 療 493 表 8 抗 菌 点 眼 薬 と 眼 軟 膏 薬 剤 名 商 品 名 セフェム 系 アミノグリコシド 系 マクロライド 系 クロラムフェニコール 系 フルオロキノロン 系 ポリペプチド 系 グリコペプチド 系 セフメノキシム ゲンタマイシン トブラマイシン ジベカシン フラジオマイシン エリスロマイシン クロラムフェニコール オフロキサシン ノルフロキサシン ロメフロキサシン レボフロキサシン トスフロキサシン ガチフロキサシン * モキシフロキサシン * コリスチン バンコマイシン ベストロン 点 眼 用 0.5% リフタマイシン 点 眼 液 0.3% トブラシン 点 眼 液 0.3% パニマイシン 点 眼 液 0.3% 点 眼 点 鼻 用 リンデロン A 液,ネオメドロール EE 軟 膏 に 含 有 エコリシン 点 眼 液,エコリシン 眼 軟 膏 オフサロン 点 眼 液 タリビッド 点 眼 液 0.3%,タリビッド 眼 軟 膏 0.3% ノフロ 点 眼 液 0.3%,バクシダール 点 眼 液 0.3% ロメフロン 点 眼 液 0.3% クラビット 点 眼 液 0.5%,クラビット 点 眼 液 1.5% トスフロ 点 眼 液 0.3%,オゼックス 点 眼 液 0.3% ガチフロ 点 眼 液 0.3% ベガモックス 点 眼 液 0.5% エコリシン 点 眼 液,オフサロン 点 眼 液 に 含 有 バンコマイシン 眼 軟 膏 1% 注 ) バンコマイシン 眼 軟 膏 1% は MRSA あるいは MRSE が 起 炎 菌 と 診 断 された 感 染 症 に 保 険 適 用 がある. * : 第 四 世 代 フルオロキノロン 系. ) 局 所 投 与 ⅰ) 点 眼 薬 1 回 1 2 滴 を 点 眼 する. 投 与 回 数 については, 重 症 度 と 薬 剤 の postantibiotic effect(pae)( 後 述 )を 考 慮 する. 重 症 例 あるいは 刺 激 による 流 涙 が 顕 著 な 場 合 には,30 分 1 時 間 ごとの 点 眼 を 行 う. 涙 点 プラグ 挿 入 など 涙 点 が 閉 鎖 している 症 例 では, 薬 剤 が 眼 表 面 に 高 濃 度 で 貯 留 するため, 点 眼 の 効 果 を 得 やすい 反 面, 薬 剤 毒 性 を 生 ず るリスクが 高 まる. PAE とは, 抗 菌 薬 が 有 効 濃 度 で 一 定 時 間 以 上 細 菌 に 接 触 したあとで, 薬 剤 が 有 効 濃 度 以 下 になっても 細 菌 増 殖 がある 一 定 時 間 抑 制 される 現 象 をいう.PAE は 作 用 する 微 生 物 と 薬 剤 によって 異 なるが, 一 般 的 には 核 酸 合 成 阻 害 薬 (フルオロキノロン 系 )と 蛋 白 質 合 成 阻 害 薬 (ア ミノグリコシド 系,テトラサイクリン 系 など)で 認 めら れる.しかし, 実 際 の 点 眼 薬 の 短 い 接 触 時 間 で 得 られる 菌 増 殖 抑 制 効 果 については,アミノグリコシド 系 が 最 も 良 好 であり, 次 いでフルオロキノロン 系 である.ただし, フルオロキノロン 系 についてはグラム 陽 性 菌 に 関 してそ の 効 果 が 弱 い 19).これらの 薬 剤 は 2 3 時 間 ごとの 投 与 で 治 療 効 果 が 期 待 できると 考 えられる.セフメノキシム, エリスロマイシン,クロラムフェニコールの 点 眼 薬 接 触 後 の 菌 増 殖 抑 制 効 果 は 低 く, 頻 回 点 眼 の 必 要 性 が 示 唆 さ れる. ⅱ) 眼 軟 膏 流 涙 が 強 い 場 合 や 小 児 などで 投 薬 時 に 泣 く 場 合 などで は, 眼 軟 膏 を 主 体 に 治 療 を 進 める. 重 症 例 では 頻 回 点 眼 に 加 えて, 就 寝 前 に 眼 軟 膏 を 使 用 する. ⅲ) 結 膜 下 注 射 重 症 感 染 症, 点 眼 のコンプライアンスが 悪 いときなど に 行 うが, 点 眼 薬 による 治 療 が 有 効 である 場 合 には 特 に 必 要 としない. ) 全 身 投 与 ⅰ) 点 滴 起 炎 菌 が 不 明 で 感 染 所 見 が 重 篤 な 場 合 には, 抗 菌 スペ クトルの 広 いセフェム 系 の 点 滴 を 開 始 する. 起 炎 菌 が 判 明 すれば, 薬 剤 感 受 性 試 験 結 果 に 基 づき 有 効 な 抗 菌 薬 を 点 滴 投 与 する. ⅱ) 内 服 細 菌 性 角 膜 炎 の 治 療 において, 内 服 により 局 所 の 抗 菌 薬 濃 度 を 十 分 に 高 めることは 難 しい. 治 癒 後 の 再 燃 予 防 のため,あるいは 何 らかの 理 由 で 点 滴 や 静 脈 注 射 の 困 難 な 症 例 において, 局 所 投 与 に 加 えて 併 用 する.ただし, 細 菌 性 眼 瞼 炎 の 合 併 を 伴 う 場 合 には,セフェム 系 やテト ラサイクリン 系 の 内 服 が 有 用 である.. 副 作 用 頻 回 点 眼 は 副 作 用 の 発 生 率 を 高 める. 具 体 的 には,ア レルギー 性 皮 膚 炎 やアレルギー 性 眼 瞼 結 膜 炎, 薬 剤 毒 性 による 角 結 膜 の 上 皮 障 害 に 注 意 する. 特 にアミノグリコ シド 系 は 角 膜 上 皮 障 害 を 生 じやすい. 抗 菌 薬 の 全 身 投 与 では, 投 与 開 始 前 に 肝 腎 機 能 を 評 価 し, 投 与 中 も 定 期 的 に 血 液 検 査 を 行 う.. 治 療 効 果 が 乏 しいとき ) 治 療 方 針 の 見 直 し 初 診 時 所 見 と 患 者 背 景, 治 療 開 始 からの 経 過 を 見 直 し, 起 炎 菌 を 改 めて 推 測 する.その 際,それまでの 抗 菌 薬 で どの 細 菌 を 抑 制 し,あるいは 抑 制 できていないかを 考 察
494 する( 図 40).また, 細 菌 ではなく 真 菌 による 感 染 の 可 能 性 も 考 慮 する. ) 混 合 感 染 難 治 性 である 場 合,あるいは 順 調 に 治 癒 に 向 かってい る 経 過 中 に 急 な 増 悪 を 認 めた 場 合 には, 混 合 感 染 の 可 能 性 を 考 慮 する. 例 えば, 外 傷 による 感 染 性 角 膜 炎 は, 時 に 細 菌 と 真 菌 の 混 合 感 染 を 生 じる.MRSA 角 膜 炎 は 日 和 見 感 染 として 発 症 し,カンジダによる 真 菌 性 角 膜 炎 を 併 発 することが ある.また,まれではあるが 細 菌 性 角 膜 炎 の 治 療 経 過 中 に 角 膜 ヘルペスを 併 発 することがあり, 特 にアトピー 性 皮 膚 炎 患 者 では 注 意 が 必 要 である. ) 患 者 のコンプライアンス 感 染 性 角 膜 炎 の 治 療 は 頻 回 点 眼 が 必 要 であるが, 患 者 のコンプライアンスが 悪 いために 軽 快 しないことがある. 治 らないときには 治 療 方 針 のチェックに 加 えて, 処 方 ど おりに 正 しく 点 眼 しているかどうかをチェックする..そ の 他 ) 消 炎 のための 治 療 細 菌 性 角 膜 炎 の 治 療 でステロイドを 使 用 することの 可 否 については, 意 見 が 分 かれるところである. 細 菌 性 角 膜 炎 の 治 療 経 過 において, 慎 重 にステロイドを 使 用 する と 瘢 痕 形 成 を 抑 制 することができると 考 えられている. 正 確 な 所 見 を 把 握 できる 場 合,あるいは 起 炎 菌 と 薬 剤 感 受 性 が 判 明 しており, 順 調 に 快 方 に 向 かっているときに はステロイドを 使 用 してもよい.ただし, 少 量 のステロ イドを 内 服 投 与 するか( 具 体 的 には,プレドニゾロンを 10 mg/ / 日 程 度 ), 低 濃 度 ステロイドの 局 所 使 用 にとどめ る. 硫 酸 アトロピンを 点 眼 すると 消 炎 に 有 用 である. 非 ステロイド 性 抗 炎 症 薬 や 角 膜 保 護 薬 はあまり 有 用 ではな い. ) 角 膜 穿 孔 に 至 った 場 合 重 篤 な 細 菌 性 角 膜 炎 で 角 膜 穿 孔 を 生 じた 場 合 には, 内 服 による 眼 圧 下 降 を 図 り, 安 静 を 保 って 感 染 症 治 療 を 続 行 する.やむを 得 ない 場 合 は 治 療 的 角 膜 移 植 を 行 うが, 可 能 であれば 感 染 が 鎮 静 化 した 後 に, 必 要 に 応 じて 角 膜 移 植 を 考 慮 する. Ⅱ 真 菌 性 角 膜 炎. 薬 物 治 療 眼 科 領 域 で 使 用 される 抗 真 菌 薬 には,ポリエン 系,ア ゾール 系,キャンディン 系,ピリミジン 系 の 4 つがある. これらのうち, 眼 局 所 用 の 医 療 用 医 薬 品 として 存 在 する のは,ポリエン 系 のピマリシン( 点 眼 液 眼 軟 膏 )のみで あり,ほかはすべて 自 家 調 整 の 形 で 臨 床 に 用 いられる. これらの 薬 剤 は, 作 用 機 序, 抗 真 菌 スペクトル, 副 作 用 などが 異 なるため, 起 炎 菌 に 応 じて 使 い 分 ける 必 要 があ る.また, 疾 患 の 重 篤 性 から, 投 与 可 能 な 薬 剤 を 総 動 員 することが 望 ましく, 全 身 状 態 と 薬 剤 の 副 作 用 に 注 意 し 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 ながら, 複 数 の 薬 剤 を 複 数 のルート( 点 眼, 結 膜 下 注 射, 全 身 投 与 )で 使 用 するのが 基 本 的 な 戦 略 である. 本 症 が 疑 われた 場 合 には, 入 院 下 に 集 中 的 な 医 療 を 行 うことが 推 奨 される. ) 抗 真 菌 薬 の 系 統 ⅰ) ポリエン 系 真 菌 細 胞 膜 を 直 接 障 害 して 殺 真 菌 的 効 果 を 発 揮 する. ピマリシンのほか,アムホテリシン B が 含 まれる. 副 作 用 が 強 いために 投 与 法 は 局 所 に 限 られるが,フザリウム 属 に 対 する 第 一 選 択 薬 である.1% ピマリシン 眼 軟 膏 あ るいは 5% 点 眼 薬 の1 日 6 8 回 ( 眼 軟 膏 製 剤 の 方 が 眼 刺 激 は 少 ない),あるいはアムホテリシン B 0.05 0.2% 液 を1 時 間 間 隔 で 使 用 する. ⅱ) アゾール 系 真 菌 細 胞 膜 の 主 要 成 分 であるエルゴステロールの 合 成 を 阻 害 し, 静 真 菌 的 効 果 を 発 揮 する. 薬 剤 の 選 択 性 が 高 いため, 全 身 投 与, 大 量 投 与 が 可 能 であり, 臨 床 的 に 使 いやすい. 一 般 にアゾール 系 はカンジダ 属 にきわめて 有 効 であり,ミコナゾールやイトラコナゾールはフザリウ ム 属 以 外 の 糸 状 菌 にも 効 果 を 示 す.さらにボリコナゾー ルはフザリウム 属 にも 効 果 が 期 待 できる. 点 眼 として 使 用 する 場 合 には,フルコナゾール 0.2% 液,ミコナゾール 0.1% 液,ボリコナゾール 1% 液 を1 時 間 ごとに 行 う.フルコナゾール 0.2% 液 やミコナゾー ル0.1% 液 の 結 膜 下 注 射 は 重 症 例 に 対 して 有 用 で,1 日 2 回 まで 可 能 である.ボリコナゾールは,フザリウム 属 を 含 めてこれまで 抗 真 菌 薬 に 抵 抗 性 であった 真 菌 に 対 す る 有 効 性 を 示 す 報 告 があり, 高 い 濃 度 で 点 眼 できる 利 点 があるが,その 分, 副 作 用 にも 注 意 が 必 要 である. 全 身 投 与 として,1 イトラコナゾール 1 回 50 100 mg を1 日 1 回 経 口 投 与,2 ボリコナゾール 初 日 6 mg/kg,2/ 日 目 以 降 3 4 mg/kg/ を1 日 2 回 点 滴 静 注,または 初 日 300( 上 限 400)mg,2 日 目 以 降 150 または 200( 上 限 300) mg を1 日 2 回 内 服,3 フルコナゾール(あるいはホス フルコナゾール)1 回 200 400 mg を1 日 1 回 点 滴 静 注 または 内 服,4 ミコナゾール 1 回 200 400 mg を1 日 2 3 回 点 滴 静 注,などを 併 用 する. ⅲ) キャンディン 系 真 菌 の 細 胞 壁 の 主 要 成 分 である b-グルカンの 合 成 を 選 択 的 に 阻 害 し, 殺 真 菌 効 果 を 発 揮 する. 点 眼 の 場 合 には 0.1 0.25% ミカファンギンナトリウム 液 を1 時 間 ごと に 使 用 するが, 細 胞 毒 性 が 低 いため, 結 膜 下 注 射 や 全 身 投 与 も 可 能 である.カンジダ 属 をはじめ,フザリウム 属 を 除 く 糸 状 菌 にも 広 く 効 果 を 示 すが, 分 子 量 が 大 きいた めに 大 量 投 与 が 必 要 であり, 点 眼 液 の 角 膜 移 行 が 悪 いと いう 難 点 がある. ⅳ) ピリミジン 系 フルシトシンがこれに 含 まれる. 真 菌 の DNA 合 成 を 抑 制 することにより 抗 真 菌 効 果 を 発 揮 するが, 耐 性 化 し
平 成 25 年 6 月 10 日 第 3 章 感 染 性 角 膜 炎 の 治 療 495 やすいほか, 内 服 でしか 投 与 できないため, 最 近 では 使 用 されることは 少 ない. ) 菌 種 による 投 与 戦 略 酵 母 菌 (カンジダ 属 ),フザリウム 属,フザリウム 属 以 外 の 糸 状 菌 に 分 けて 考 えるのが 実 践 的 である. ⅰ) 酵 母 菌 の 場 合 アゾール 系 の 単 独 または 複 数 薬 の 併 用,あるいはア ゾール 系 とキャンディン 系 の 併 用 などが 勧 められる.フ ルコナゾールの 場 合 には, 耐 性 株 の 増 加 に 注 意 する 必 要 がある. ⅱ) 糸 状 菌 の 場 合 フザリウム 属 を 含 む 糸 状 菌 にはポリエン 系 が 第 一 選 択 である.フザリウム 属 の 分 離 頻 度 の 高 さを 考 慮 すれば, 副 作 用 の 発 生 に 留 意 しながらも, 当 初 から 点 眼 製 剤 とし て 存 在 するピマリシンを 加 えた 処 方 を 考 慮 すべきである. 自 家 調 整 が 必 要 であるが,ボリコナゾールも 効 果 が 期 待 できる. フザリウム 属 以 外 の 糸 状 菌 については,アゾール 系 の ミコナゾールおよびミカファンギンナトリウムの 点 眼 に イトラコナゾール 内 服 を 加 えた 処 方 で 対 応 できる 場 合 も ある. ) 薬 剤 の 副 作 用 とその 対 策 全 身 的 には, 悪 心 嘔 吐 などの 消 化 器 症 状 ( 特 にミコ ナゾールで 高 率 ), 肝 腎 機 能 障 害 や 血 管 炎 があり,ボ リコナゾールでは 一 過 性 の 羞 明 色 視 症 色 覚 異 常 視 力 障 害 がある. 眼 局 所 では, 頻 回 点 眼 に 伴 う 角 膜 上 皮 障 害, 濾 胞 性 結 膜 炎, 眼 瞼 炎 などがある. 肝 腎 機 能 障 害 については, 週 1 2 回 の 頻 度 で 血 液 検 査 を 行 い, 異 常 をチェックする. 点 滴 に 伴 う 血 管 炎 が みられた 場 合 には,1 日 あたりの 点 滴 静 注 の 回 数 を 減 ら すか, 内 服 へ 切 り 替 える. 角 膜 上 皮 障 害 が 出 現 したとき には, 点 眼 回 数 を 減 らすか 希 釈 して 用 いるなどの 工 夫 を 行 う.ピマリシン 点 眼 で 眼 刺 激 症 状 充 血 角 膜 上 皮 障 害 などの 副 作 用 がみられた 場 合 には,ピマリシン 眼 軟 膏 や 他 の 抗 真 菌 薬 への 変 更 も 考 慮 する.. 病 巣 掻 爬 真 菌 の 種 類 によって 薬 物 療 法 の 効 果 は 異 なるため, 治 療 効 果 を 増 強 させるために 病 巣 掻 爬 を 積 極 的 に 併 用 すべ きである. 病 巣 掻 爬 には, 病 巣 部 の 菌 量 を 物 理 的 に 減 少 させ, 点 眼 薬 の 組 織 移 行 を 高 める 効 果 がある.ただし, 角 膜 の 菲 薄 化 がある 場 合 は 穿 孔 する 危 険 もあるので 慎 重 に 試 みるべきである.アルテルナリア 属 のような 表 層 型 の 真 菌 では, 病 巣 掻 爬 の 延 長 としての 表 層 角 膜 切 除 も 有 効 である.. 治 療 効 果 の 判 断 比 較 的 進 行 が 緩 徐 で 薬 剤 に 対 する 反 応 が 鈍 いほか, 点 眼 薬 の 副 作 用 によって 角 膜 所 見 が 修 飾 されることもある ため, 治 療 効 果 の 判 断 に 迷 うケースは 少 なくない.そこ で, 改 善 というよりも,むしろ 悪 化 なし であれば 治 療 効 果 があると 考 え, 焦 らずにじっくりと 効 果 を 判 断 すべきである. 上 皮 欠 損 面 積 の 消 長, 病 巣 ( 膿 瘍 )の 大 き さ, 前 房 蓄 膿 や 角 膜 浮 腫 などの 炎 症 反 応 の 程 度 に 着 目 し て, 少 なくとも 1 週 間 は 同 じ 治 療 を 継 続 し,その 時 点 で 別 の 薬 剤 の 追 加 や 変 更 を 検 討 する.もしも 原 因 真 菌 が 分 離 同 定 された 場 合 には, 可 能 ならば 薬 剤 感 受 性 試 験 を 施 行 し, 処 方 を 見 直 すことも 一 つの 方 法 である. Ⅲ アカントアメーバ 角 膜 炎. 治 療 方 針 アカントアメーバに 特 異 的 に 効 果 のある 薬 剤 が 開 発 さ れていない 現 在, 本 症 の 治 療 は 大 変 困 難 である. したがって 治 療 には, 少 しでも 効 果 があると 考 えられ る 方 法 を 組 み 合 わせて 行 うのが 現 実 的 であるが, 診 断 が 確 定 していない 症 例 では, 薬 剤 の 副 作 用 の 問 題 などで, 長 期 投 与 を 続 けることが 困 難 な 場 合 も 多 い. 治 療 を 成 功 させるためには, 診 断 を 確 定 させることが 何 よりも 重 要 である. 以 下 に, 効 果 があるとされる 病 巣 掻 爬, 局 所 治 療, 全 身 治 療 について 述 べる. ) 病 巣 掻 爬 ( 角 膜 掻 爬 ) アカントアメーバに 対 して, 現 時 点 で 最 も 効 果 がある 治 療 法 は 角 膜 病 巣 部 の 掻 爬 である.これはアカントア メーバ 角 膜 炎 のどの 時 期 でも 効 果 がある. 特 に 初 期 にお いては,アカントアメーバが 角 膜 上 皮 内 で 増 殖 している と 考 えられるため, 理 想 的 な 方 法 でもある. 角 膜 上 皮 は いくら 除 去 してもすぐに 再 生 され, 実 質 には 混 濁 を 残 さ ない.しかし, 躊 躇 していると 実 質 内 に 寄 生 を 始 め, 除 去 するのが 困 難 となり,たとえ 治 癒 してもかなりの 混 濁 を 残 すこととなる. 掻 爬 のメリットを 列 挙 する. 1 掻 爬 されたものを 検 鏡 することで 診 断 ができる. 2 直 接 アカントアメーバを 除 去 することで 治 療 効 果 がある. 3 角 膜 表 面 の 老 廃 物 を 除 去 し 薬 剤 の 浸 透 をよくする. 4 継 続 的 に 掻 爬 物 内 のアカントアメーバを 観 察 する ことで, 治 療 効 果 の 判 定 ができる. 実 際 には 開 瞼 器 をかけ, 表 面 麻 酔 を 行 い, 顕 微 鏡 で 観 察 しながら 行 う. 初 期 では 中 央 部 を 中 心 に 角 膜 上 皮 全 層 を 掻 爬 する.アカントアメーバが 寄 生 している 場 合 には, 一 見 健 常 にみえる 角 膜 上 皮 も 軽 く 擦 過 するだけで 簡 単 に 剝 がれるので,そのような 上 皮 はすべて 除 去 する.それ 以 降 の 完 成 期 に 至 るまでの 病 期 では 残 っている 上 皮 や 融 解 した 実 質 などを 含 めて, 病 巣 部 の 1 2 周 り 大 きく 掻 爬 するように 心 掛 ける. 掻 爬 は, 上 皮 の 再 生 具 合 などを みながら 週 に2 3 回 行 い, 角 膜 病 変 の 治 り 具 合 なども 考 慮 して 回 数 を 加 減 していく. ) 局 所 投 与 角 膜 掻 爬 の 次 に 効 果 があるのは 点 眼 薬 による 治 療 であ る. 初 期 のアカントアメーバ 角 膜 炎 で 点 眼 薬 治 療 のみで 治 癒 した 症 例 の 報 告 もある.アカントアメーバに 特 異 的
496 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 表 9 アカントアメーバに 点 眼 で 効 果 があるとされている 薬 剤 薬 剤 系 統 濃 度 刺 激 入 手 備 考 フルコナゾール トリアゾール 系 抗 真 菌 薬 0.2% ( ) 点 滴 静 注 用 をそのまま 使 用 ミコナゾール イミダゾール 系 抗 真 菌 薬 0.05 0.1% (+) 点 滴 静 注 用 を 希 釈 して 使 用 ピマリシン ポリエン 系 抗 真 菌 薬 点 眼 5% 軟 膏 1% (++) 唯 一 の 眼 科 用 製 剤 プロパミディン イセティオネイト (propamidine isethionate) 抗 原 虫 薬 0.1% (+) イギリスでブロレン として 市 販 されているものを 個 人 輸 入 する グルコン 酸 クロルヘキシジン ビグアナイド 系 消 毒 薬 0.02 0.05% ( ) マスキン,ステリクロン W 液 などの 市 販 品 を 使 用 ポリヘキサメチレン ビグアナイド (PHMB:polyhexamethylene biguanide) ビグアナイド 系 消 毒 薬 0.02% (+) プールの 消 毒 薬 を 使 用 なものはなく, 他 の 病 原 体 に 対 して 発 売 されているもの を 使 用 している. 現 在 入 手 可 能 で, 効 果 があるとされて いる 点 眼 薬 を 表 9 に 示 す.これらの 中 から 2 3 種 類 を 組 み 合 わせて 点 眼 するが,その 際 には 副 作 用 が 少 なく, 使 用 経 験 のあるものを 選 ぶとよい. 具 体 例 を 挙 げると, フルコナゾール,ミコナゾール,グルコン 酸 クロルヘキ シジン,プロパミディン イセティオネイト(ブロレ ン )の 中 から 病 状 により 2 3 種 類 を 選 択 して, 当 初 は 30 分 間 隔 で 順 次 点 眼 する.この 投 与 間 隔 は 病 状 が 改 善 するに 従 って 延 ばしていく. 改 善 がみられ 点 眼 を 中 止 す るときには, 副 作 用 が 強 いものから 中 止 する. ) 全 身 投 与 フルコナゾール,イトラコナゾール,ミカファンギン ナトリウム,フルシトシンなどの 抗 真 菌 薬 は 効 果 がある とされているが, 全 身 投 与 では 副 作 用 が 最 も 問 題 とな る.しかも 全 身 投 与 でどの 程 度 の 効 果 があるのかはっき りしない 点 もあるため, 副 作 用 が 強 ければ 中 止 する.. 三 者 併 用 療 法 ( 病 巣 掻 爬, 点 眼 薬, 全 身 投 与 ) 上 述 した 3 種 類 の 治 療 法 を 組 み 合 わせたものが 三 者 併 用 療 法 で, 現 時 点 ではアカントアメーバ 角 膜 炎 に 対 して 最 も 効 果 がある.アカントアメーバ 角 膜 炎 と 確 定 診 断 さ れた 場 合, 当 初 は 週 2 3 回 の 病 巣 掻 爬 を 行 い,グルコ ン 酸 クロルヘキシジン,ミコナゾール(あるいはプロパ ミディン イセティオネイト),フルコナゾールを 起 き てから 寝 るまで 30 分 ごとに 点 眼 する.さらにイトラコ ナゾールを 150 200 mg(3 4 錠 ),1 日 1 回 朝 食 後 30 分 で 内 服 させる.これを 行 いながら 病 状 をみて 掻 爬 回 数, 点 眼 薬 の 種 類 と 回 数, 内 服 量 の 加 減 を 行 う.. 上 皮 型 Ⅳ 角 膜 ヘルペス アシクロビル(ゾビラックス ) 眼 軟 膏 (5 回 / 日 )の 投 与 が 原 則 である. 混 合 感 染 予 防 の 目 的 で 抗 菌 点 眼 薬 を 併 用 してもよい. 投 与 期 間 は 最 長 3 週 間 を 原 則 とし, 上 皮 型 の 再 発 防 止 を 目 的 とした 継 続 投 与 は 行 うべきではない.. 実 質 型 ) 治 療 の 原 則 1 ステロイド 点 眼 により 免 疫 反 応 を 抑 制 する. 2 アシクロビル 眼 軟 膏 の 併 用 が 必 要 である.アシク ロビル 眼 軟 膏 を 使 用 せずステロイド 点 眼 のみで 対 処 すると 当 初 は 軽 快 するが, 再 発 再 燃 が 生 じや すく, 経 過 中 に 上 皮 型 を 発 症 することもある. 3 薬 物 療 法 に 反 応 しない 強 い 瘢 痕 性 の 角 膜 混 濁 が 残 っ た 場 合 は, 角 膜 移 植 術 の 適 応 となる. ) 具 体 的 な 実 質 型 治 療 のポイント 1 重 症 例 ではリン 酸 ベタメタゾンナトリウムなどの 強 いステロイド 点 眼 から, 軽 症 例 では 0.1% フル オロメトロンなどの 弱 いステロイド 点 眼 から 始 め る. 2 ステロイド 点 眼 は 状 態 をみながら 月 単 位 でゆっく りと 減 らしていく. 3 重 症 の 場 合 ( 角 膜 ぶどう 膜 炎 や 壊 死 性 角 膜 炎 など) や 上 皮 欠 損 を 伴 っている 場 合 は 内 服 を 使 用 する 場 合 がある. 4 必 ずアシクロビル 眼 軟 膏 を 併 用 する(5 回 投 与 する 必 要 はなく, 回 数 はステロイド 点 眼 の 使 用 回 数 と 同 じかあるいはそれより 少 ない 回 数 でよい). 上 皮 型 と 異 なり,アシクロビル 眼 軟 膏 の 使 用 がどうし ても 長 期 化 するが,これはステロイド 漸 減 療 法 を 行 う 限 り 致 し 方 ない. 5 ステロイドの 結 膜 下 注 射 は, 効 果 は 強 いが 再 発 再 燃 しやすいので 極 力 避 ける. 6 前 房 炎 症 の 強 い 症 例 では, 瞳 孔 管 理 として 散 瞳 薬 を 用 いる.. 内 皮 型 その 病 態 については 一 定 の 見 解 を 得 られていないが, 内 皮 型 は 実 質 型 に 準 じて 治 療 すると 考 えておくとよい.. 副 作 用 ) 種 類 1 下 方 中 心 の 点 状 表 層 角 膜 症 (28.6%) 20). 2 下 方 の 結 膜 上 皮 欠 損.
平 成 25 年 6 月 10 日 第 3 章 感 染 性 角 膜 炎 の 治 療 497 表 10 眼 部 帯 状 疱 疹 に 対 する 抗 ウイルス 薬 の 全 身 投 与 重 症 アシクロビル 点 滴 静 注 5mg/kg/ / / 回,1 日 3 回,8 時 間 ごとに 1 時 間 以 上 かけて7 日 間 中 等 症 バラシクロビル 塩 酸 塩 ファムシクロビル 内 服 内 服 1,000 mg/ / 回,1 日 3 回,7 日 間 500 mg/ / 回,1 日 3 回,7 日 間 3 眼 瞼 結 膜 炎. ) 対 策 1 軽 度 の 場 合 :そのまま,あるいは 減 量 ( 回 数 減 少 ) して 継 続 可 能. 2 重 度 の 場 合 :バラシクロビル 塩 酸 塩 内 服 (1,000 mg, 分 2)への 変 更 (ただし 保 険 適 用 は 単 純 疱 疹 に はあるが, 角 膜 ヘルペスにはないことに 留 意 が 必 要 ). 3 アシクロビルが 効 かない 場 合 は, 角 膜 を 専 門 とす る 医 師 に 紹 介 することが 推 奨 される. Ⅴ 眼 部 帯 状 疱 疹. 治 療 方 針 発 症 早 期 からの 抗 ウイルス 薬 の 全 身 投 与 と, 眼 合 併 症 の 種 類 と 重 症 度 に 応 じた 適 切 なステロイド 点 眼 が 有 用 で ある.また, 前 房 炎 症 の 強 い 症 例 では, 瞳 孔 管 理 として 散 瞳 薬 を 用 いる. 現 在, 本 邦 で 水 痘 帯 状 疱 疹 ウイルス(VZV)に 対 して 処 方 可 能 な 抗 ウイルス 作 用 を 有 する 薬 剤 はアシクロビルと ペンシクロビルであるが, 単 純 ヘルペスウイルス(HSV) に 比 べ VZV に 対 する 抗 ウイルス 効 果 は 低 い.アシクロ ビルは 眼 軟 膏 で 投 与 した 場 合, 角 膜 から 前 房 内 への 移 行 は 速 やかであるが, 角 膜 炎 のみならず 眼 局 所 に 多 彩 な 病 変 を 呈 する 眼 部 帯 状 疱 疹 は 全 身 投 与 の 方 が 十 分 な 薬 剤 の 移 行 が 期 待 できる.また VZV に 対 する 抗 ウイルス 効 果 を 期 待 した 場 合, 高 い 血 中 濃 度 を 得 るためには, 点 滴 静 注 による 全 身 投 与 が 最 も 確 実 である. 経 口 投 与 として は, 消 化 管 からの 吸 収 率 が 改 善 されたアシクロビルやペ ンシクロビルのプロドラッグであるバラシクロビル 塩 酸 塩 やファムシクロビルが 用 いられている.. 抗 ウイルス 薬 の 全 身 投 与 発 症 早 期 から 重 症 度 に 応 じた 点 滴, 内 服 による 全 身 投 与 を 行 う. 投 与 法 は, 皮 疹 の 範 囲 や 部 位 ( 鼻 尖 を 含 むか 否 か)などの 重 症 度, 宿 主 の 免 疫 抑 制 状 態 ( 高 齢 者, 基 礎 疾 患 )に 応 じて 選 択 する. 重 症 例 ではアシクロビルの 点 滴 静 注 を 行 い, 中 等 症 に はバラシクロビル 塩 酸 塩 の 内 服 21),またはファムシクロ ビルの 内 服 22) を 選 択 する( 表 10). 十 分 に 抗 ウイルス 作 用 を 発 揮 させるためには, 用 法 用 量 を 確 実 に 守 る. 三 叉 神 経 第 1 枝 領 域 の VZV は, 全 身 の 神 経 支 配 領 域 に 比 べ 範 囲 は 狭 いが, 眼 合 併 症 を 伴 う 危 険 があることから, 重 症 例 に 準 じた 治 療 を 選 択 することが 望 ましい 23).. 抗 ウイルス 薬 全 身 投 与 の 注 意 点 アシクロビルやペンシクロビルは,ウイルス 由 来 の thymidine kinase(tk)によりリン 酸 化 されて 抗 ウイルス 効 果 を 発 揮 するため, 正 常 細 胞 に 対 する 毒 性 が 低 く, 全 身 に 対 する 安 全 性 は 高 い.しかし,いずれの 薬 剤 も 腎 排 泄 型 の 薬 剤 であるため, 腎 機 能 低 下 症 例 ( 腎 不 全 患 者, 高 齢 者 など)では 血 清 クレアチニン 値 をもとに 腎 機 能 を 評 価 し,クレアチニン クリアランスや egfr( 推 算 腎 糸 球 体 濾 過 値 )などに 基 づいて 適 切 に 減 量 投 与 すること が, 精 神 神 経 症 状 や 急 性 腎 不 全 などの 副 作 用 を 回 避 する ために 必 要 である.. 眼 局 所 の 治 療 眼 周 囲 の 皮 疹 以 外 に 眼 所 見 を 認 めない 場 合 で, 既 にア シクロビルの 全 身 投 与 が 行 われていれば, 抗 ウイルス 薬 による 積 極 的 な 眼 科 的 治 療 は 必 ずしも 必 要 ではない. 鼻 尖, 鼻 背 に 皮 疹 を 伴 っている 場 合, 皮 疹 が 睫 毛 の 内 側 お よび 角 膜 上 皮 に 接 する 場 合 には,アシクロビル 眼 軟 膏 を 併 用 する. 偽 樹 枝 状 角 膜 炎 にはアシクロビル 眼 軟 膏 を 用 い, 上 皮 性 病 変 が 消 失 すれば 投 与 を 中 止 する. 角 膜 実 質 炎 には, 重 症 度 に 応 じたステロイド 点 眼 を 用 いる.HSV による 角 膜 実 質 炎 に 比 べ, 高 濃 度 のステロイド 点 眼 が 必 要 にな る 場 合 が 多 い. 偽 樹 枝 状 角 膜 炎 の 病 巣 部 の 上 皮 細 胞 には ウイルス 抗 原 が 発 現 しているが, 角 膜 実 質 炎 や 併 発 して いる 虹 彩 炎, 強 膜 炎 の 治 療 のためにステロイド 点 眼 を 用 いても, 上 皮 性 病 変 が 増 悪 することはない.また,ステ ロイド 点 眼 による 治 療 を 十 分 に 行 わなければ, 角 膜 瘢 痕, 虹 彩 後 癒 着, 続 発 緑 内 障 といった 重 篤 な 後 遺 症 を 残 す 場 合 もある.したがって, 眼 部 帯 状 疱 疹 の 角 膜 合 併 症 に は, 上 皮 性 病 変 を 伴 っていてもステロイド 点 眼 を 適 切 に 用 いて 速 やかな 消 炎 を 図 ることが 重 要 である.まれに 皮 疹 が 消 失 後, 時 間 を 経 てから 角 膜 炎 の 再 燃 がみられる 場 合 があるが, 短 期 間 のステロイド 点 眼 による 治 療 で 症 状 は 軽 快 する. Ⅵ 外 科 的 治 療. 感 染 性 角 膜 炎 に 対 する 外 科 的 治 療 感 染 性 角 膜 炎 の 原 因 としては,ヘルペス, 細 菌, 真 菌, アカントアメーバなどがある. 原 因 によってそれぞれ 病 態 が 異 なり 治 療 薬 に 対 する 反 応 性 も 異 なるため, 外 科 的 治 療 の 方 法, 時 期 はそれぞれ 異 なる. 通 常, 薬 物 治 療 と 組 み 合 わせて 行 う 病 巣 掻 爬 も 外 科 的 治 療 として 重 要 であ るが, 本 格 的 な 外 科 的 治 療 の 方 法 としては 表 層 角 膜 切 除,
498 治 療 的 角 膜 移 植 などがある.また, 原 因 のいかんにかか わらず 角 膜 炎 が 鎮 静 化 した 後 には 光 学 的 な 角 膜 移 植 ( 深 層 角 膜 移 植, 全 層 角 膜 移 植 )が 行 われる.. 表 層 角 膜 切 除 治 療 に 反 応 の 悪 い 真 菌 性 角 膜 炎 やアカントアメーバ 角 膜 炎 の 場 合 で, 病 巣 掻 爬 で 治 療 効 果 が 不 確 実 の 場 合, 病 巣 部 を 病 原 体 ごと 除 去 してしまう 目 的 で 表 層 角 膜 切 除 を 行 うことがある.. 治 療 的 角 膜 移 植 表 層 角 膜 切 除 では 除 去 できないほど 病 変 が 深 部 に 到 達 し, 薬 物 への 反 応 が 悪 い 場 合 は 治 療 的 角 膜 移 植 を 行 う. 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 重 症 の 真 菌 性 角 膜 炎 で 行 われることが 多 い.このときの 注 意 点 は 膿 瘍 部 とその 周 囲 の hyphate ulcer を 十 分 に 含 むように 病 巣 を 切 除 することである. 感 染 巣 ぎりぎりで トレパンによる 切 除 を 行 うと 断 端 部 から 病 変 が 再 発 する ことがある. 治 療 的 角 膜 移 植 は, 冷 凍 保 存 された 角 膜 を 使 用 して 行 い, 病 変 が 鎮 静 化 したら 二 次 的 に 新 鮮 角 膜 で 再 移 植 する 方 法 と, 新 鮮 角 膜 が 使 用 できる 環 境 であれば 最 初 から 新 鮮 角 膜 で 行 う 方 法 がある. 新 鮮 角 膜 で 行 う 場 合 は, 術 後 に 感 染 が 再 燃 していないことを 確 認 後,ステロイド 点 眼 を 使 用 して 炎 症 を 抑 える 必 要 がある.
平 成 25 年 6 月 10 日 499 Appendix Ⅰ ファンギフローラ Y 染 色. 方 法 ファンギフローラ Y は,A 液 ( 変 性 ヘマトキシリン) と B 液 (スチルベンジルスルホン 酸 系 蛍 光 染 料 と 共 染 防 止 剤 )から 構 成 されている. 1 角 膜 生 検 材 料 をスライドガラスに 付 着 させ, 乾 燥. 2 エタノールを 滴 下 し, 乾 燥. 3 A 液 を 滴 下 し, 一 面 に 広 げ 約 2 分 間 染 色. 4 流 水 で 30 秒 間 洗 浄. 5 B 液 を 試 料 上 に 滴 下 し,5 分 染 色. 6 水 道 水 に 約 20 回 出 し 入 れして 洗 浄. 乾 燥 すれば 9 に 準 じてただちに 検 鏡 判 定 可 能 である. 封 入 する 場 合, 以 下 の 処 理 を 行 う. 7 100% エタノールに 2 回 入 れて 脱 水. 8 キシレンで 透 徹, 封 入. 9 励 起 波 長 395 425 nm(v 励 起 法 ),または 330 380 nm(uv 励 起 法 )の 観 察 光 を 持 つ 蛍 光 顕 微 鏡 で 観 察 (400 倍 および 油 浸 1,000 倍 ).. 結 果 の 判 定 菌 糸, 酵 母 菌 ( 図 41),アカントアメーバのシスト( 図 42)にそれぞれ 相 当 する 形 態 を 持 った 青 緑 色 蛍 光 像 が, 切 除 組 織 内 に 浸 潤 している 病 像 を 認 めた 場 合 に, 陽 性 と 判 定 する. 陽 性 像 あるいは 陽 性 菌 糸 の 形 態 および 大 きさ は, 菌 種 の 推 定 のため 重 要 である. 起 炎 菌 診 断 には 臨 床 所 見, 経 過, 培 養 結 果 を 併 せて 評 価 することが 望 ましい.. 利 点 1 感 度 が 高 く, 真 菌 の 菌 糸 およびアカントアメーバ のシストを 明 瞭 に 検 出 することができる 24). 2 染 色 操 作 後 においても, 菌 体 および 切 除 組 織 の 形 態 的 特 徴 は 良 好 に 保 存 される 25). 3 通 常 の 透 過 光 によるヘマトキシリン 染 色 像 の 観 察 と 蛍 光 による 観 察 の 併 施 により, 詳 細 な 病 理 像 の 観 察 が 可 能 である. 4 採 取 後 時 間 が 経 過 した 試 料 においても 染 色 性 は 低 下 せず, 染 色 後 の 試 料 の 保 存 性 (1 年 以 上 ), 発 色 性 も 良 好 である.. 注 意 点 1 試 料 は,27 ゲージ 針 などを 用 い, 病 巣 部 をごく 少 量 一 塊 として 採 取 することが 望 ましい. 擦 過 塗 抹 標 本 は, 角 膜 への 浸 潤 性 の 判 定 が 困 難 であるため 推 奨 されない. 2 セルロース 性 挟 雑 物 は 蛍 光 像 として 染 色 される. このため, 標 本 採 取 時 には 綿 棒 などセルロースを 含 んだ 器 具 は 使 用 しない. 3 細 胞 の 融 解 が 著 しい 場 合, 共 染 像 を 認 める 場 合 が 図 41 酵 母 菌 のファンギフローラ Y 染 色 像 ( 1,000). : 酵 母 様 真 菌. 図 42 アカントアメーバのファンギフローラ Y 染 色 像 ( 1,000). ある. 4 抗 真 菌 薬 の 使 用 により 真 菌 形 態 が 徐 々に 破 壊 され, 切 除 標 本 から 陽 性 像 が 検 出 されなくなる 場 合 があ る.このため, 治 療 開 始 後 採 取 した 標 本 の 染 色 結 果 の 解 釈 には 十 分 な 注 意 が 必 要 である. 5 酵 母 菌 であっても 感 染 病 巣 部 では 菌 糸 状 ( 仮 性 菌 糸 ) に 観 察 されることが 多 い( 図 43). Ⅱ 蛍 光 抗 体 法 (HSV,VZV). 単 純 ヘルペスウイルス(HSV) ) 方 法 ヘルペス(1 2 型 )FA 試 薬 生 研 (デンカ 生 研, 東 京 ) を 用 いた 場 合 を 以 下 に 示 す.
500 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 図 44 樹 枝 状 角 膜 炎 病 巣 擦 過 物 の 抗 HSV 蛍 光 標 識 抗 体 による 染 色 標 本 の 蛍 光 顕 微 鏡 写 真. 図 43 菌 糸 状 に 観 察 された 酵 母 菌 のファンギフローラ Y 染 色 像 ( 1,000). 1 角 膜 上 皮 擦 過 物 ( 角 膜 生 検 材 料 )を 無 蛍 光 スライド ガラスに 塗 抹 し, 冷 風 で 乾 燥. 2アセトンに 10 分 間 浸 し, 固 定. 3 蛍 光 (fluorescein isothiocyanate:fitc) 標 識 抗 HSV- 1 あるいは HSV-2 モノクローナル 抗 体 ( 対 比 染 色 用 のエバンスブルー 含 有 )を 試 料 上 に 滴 下. 4 湿 潤 箱 に 入 れ,37 で15 分 間 反 応 させる. 5 精 製 水 で 洗 浄 し, 冷 風 で 乾 燥. 6 封 入 液 (グリセリンとリン 酸 緩 衝 液 を 9:1 の 割 合 で 混 和 したもの)で 封 入. 7 励 起 波 長 525 nm をピークとする 観 察 光 (B 励 起 法 ) を 持 つ 蛍 光 顕 微 鏡 で 観 察. ) 結 果 の 判 定 緑 色 の 特 異 蛍 光 を 発 する HSV 感 染 細 胞 を 認 めれば 陽 性 と 判 断 できる( 図 44).HSV 非 感 染 細 胞 は 赤 色 に 染 色 される. ) 利 点 蛍 光 抗 体 法 はウイルス 分 離 に 比 べ, 迅 速 に 結 果 が 得 ら れる.また, 感 度, 特 異 性 ともに 高 い.モノクローナル 抗 体 を 利 用 し,HSV 抗 原 の 型 別 確 認 ができる. ) 注 意 点 偽 蛍 光 や 偽 発 色 があるため, 陽 性 対 照, 陰 性 対 照 を 同 時 に 用 いる 必 要 がある. 蛍 光 は 時 間 とともに 褪 色 するた め, 検 鏡 は 速 やかに 行 う.. 水 痘 帯 状 疱 疹 ウイルス(VZV) 眼 部 帯 状 疱 疹 眼 局 所 からの 検 体 採 取 およびウイルス 分 離 が 難 しいため, 皮 膚 の 水 疱 内 容 の 蛍 光 抗 体 法 によるウ イルス 抗 原 の 証 明 が 診 断 に 用 いられている. 水 疱 内 容 を 注 射 器 で 吸 引 し,スライドガラスに 滴 下 したものを 塗 抹 乾 燥 し, 固 定 後 FITC 標 識 抗 VZV モノクローナル 抗 体 (VZV-FA 生 研 )を 用 いる. 眼 局 所 からは, 偽 樹 枝 状 角 膜 炎 が 発 症 したときのみ 検 体 が 採 取 可 能 であるが, 検 体 量 が 少 ないため, 採 取 法 に 工 夫 が 必 要 となる.Impression cytology から 得 られた 検 体 に 対 し,VZV のモ ノクローナル 抗 体 を 用 いた 蛍 光 抗 体 法 も 有 用 である 26). Ⅲ 免 疫 クロマトグラフィ 法 (HSV) ) 方 法 チェックメイト ヘルペス アイ(わかもと 製 薬, 東 京 ) を 用 いた 場 合 を 以 下 に 示 す. 1 綿 棒 で 採 取 した 角 膜 上 皮 擦 過 物 ( 角 膜 生 検 材 料 )を キット 付 属 の 検 体 抽 出 液 に 添 加 し, 抽 出. 2 反 応 シートに 3 滴 (150 ml 相 当 ) 滴 下 し,15 30 に て15 分 静 置 後 に 判 定 部 を 目 視 観 察 し, 判 定. ) 結 果 の 判 定 判 定 部 C と S の 両 方 に 赤 紫 色 のラインが 出 た 場 合 を 陽 性,C のみにラインが 出 た 場 合 を 陰 性. ) 利 点 特 定 の 機 器 や 技 術 を 必 要 とせず, 他 のいずれの HSV 検 査 ウイルス 分 離, 蛍 光 抗 体 法,polymerase chain reaction(pcr) 法 よりも 簡 便 迅 速 に 結 果 が 得 られ る.モノクローナル 抗 体 を 利 用 し 特 異 性 が 100% である. ) 注 意 点 陰 性 の 場 合 でも HSV 感 染 を 否 定 することはできな い. 検 査 の 精 度 を 上 げるためには 角 膜 上 皮 細 胞 をできる だけ 多 く 採 取 するために 角 膜 擦 過 をしっかり 行 う 必 要 が ある. Ⅳ 細 菌 培 養 感 受 性 検 査. 細 菌 検 査 依 頼 時 の 注 意 事 項 とは 角 膜 炎 の 起 炎 菌 として 一 般 細 菌 を 標 的 とする 場 合 に は, 臨 床 診 断 より 疑 われる 目 的 対 象 菌 群 を 明 記 し, 検 査 室 に 伝 える. 検 査 室 ではその 情 報 に 基 づいて 選 択 培 地 を 適 時 追 加 することにより, 目 的 菌 の 検 出 時 間 および 検 出 率 を 高 めることが 可 能 となる. 特 にメチシリン 耐 性 黄 色
平 成 25 年 6 月 10 日 Appendix 501 ブドウ 球 菌 (MRSA), 緑 膿 菌,バンコマイシン 耐 性 腸 球 菌 (vancomycin-resistant enterococci:vre)の 検 出 用 に は, 他 の 雑 菌 の 発 育 を 抑 制 し, 目 的 菌 を 選 択 的 に 増 殖 さ せる 選 択 分 離 培 地 を 追 加 する. また, 培 養 検 査 では 材 料 を 3 5 枚 の 培 地 に 塗 布 する ため 採 取 材 料 が 極 端 に 少 ない 場 合 は, 目 標 とする 菌 群 や 耐 性 菌 に 優 先 順 位 を 付 記 するのも, 検 出 率 を 高 める 工 夫 となる.. 一 般 細 菌 の 培 養 方 法 一 般 細 菌 の 検 出 を 目 的 とする 場 合, 検 査 室 では 1 血 液 寒 天 培 地 : 主 に 溶 連 菌 用,2チョコレート 寒 天 培 地 : ヘモフィルス 用,3 デソキシコレート 培 地 (DHL)また はマッコンキー 培 地 : 腸 内 細 菌 ブドウ 糖 非 発 酵 菌 用, 以 上 の3 種 類 の 培 地 を 基 本 的 に 使 用 する.さらに, 臨 床 コメントに 応 じて,4 サブロー 寒 天 培 地 : 真 菌 用,5 MSEY(マンニット 食 塩 卵 黄 加 培 地 ): 黄 色 ブドウ 球 菌 用, 6 MRSAスクリーン 培 地 :MRSA 迅 速 検 出 用,7 NAC (nalidixic acid cetrimide agar): 緑 膿 菌 用,8バンコマ イシン 添 加 エンテロコッコセル 培 地 :VRE 用 などの 選 択 培 地 を 加 える. 角 膜 由 来 材 料 を 上 記 の 培 地 に 画 線 培 養 後,1,2の 培 地 は 5 10%,35 炭 酸 ガス(CO 2) 培 養 器 へ,3,5 8の 培 地 は 通 常 の 35 培 養 器 (non-co 2)へ,4の 培 地 は 25 培 養 器 (non-co 2)へ 入 れ,24 48 時 間 培 養 し 適 時 観 察 する.. 起 炎 菌 が 検 出 されるまでの 時 間 自 施 設 に 検 査 室 がある 場 合 の 菌 種 同 定 と 薬 剤 感 受 性 検 査 に 要 するおよその 時 間 を 表 11 に 示 す. 緑 膿 菌 や MRSA などの 一 般 細 菌 では 通 常 1 日,カンジダ 属 で 1 2 日, 嫌 気 性 菌 では 2 3 日 で 発 育 集 落 が 得 られる. 治 療 効 果 判 定 を 急 ぐ 患 者 では, 直 接 検 査 室 に 培 養 結 果 を 問 い 合 わ せることにより 推 定 菌 種 の 一 次 報 告 が 得 られる.また, 糸 状 菌 は 初 代 分 離 に 2 4 週 間 を 必 要 とする 株 もまれで はない.. 検 査 結 果 の 解 釈 ) 起 炎 菌 の 判 断 外 眼 部 には 図 45 に 示 すように 多 くの 常 在 菌 が 存 在 す る.このため 検 査 結 果 より 起 炎 菌 を 判 断 する 場 合 は, 1 塗 抹 検 鏡 結 果 と 同 定 菌 種 名 の 比 較. 2 局 所 の 炎 症 像 の 特 徴. 3 同 定 菌 種 名 と 薬 剤 治 療 効 果. などを 考 慮 し 決 定 する. ) 薬 剤 感 受 性 試 験 結 果 の 解 釈 日 本 国 内 の 多 くの 検 査 室 ( 検 査 会 社 )は,Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)により 推 奨 されて いる CLSI 標 準 法 に 準 拠 して 感 受 性 試 験 を 実 施 してい る. 具 体 的 には, 微 量 液 体 希 釈 法 とディスク 拡 散 法 のい ずれかが 用 いられている. 表 11 細 菌 の 塗 抹, 同 定, 感 受 性 試 験 に 要 するおよそ の 日 数 一 般 細 菌 嫌 気 性 菌 塗 抹 検 査 15 分 以 内 15 分 以 内 菌 発 育 1 日 2 3 日 最 終 同 定 2 3 日 5 7 日 薬 剤 感 受 性 結 果 3 4 日 5 7 日 ⅰ) 微 量 液 体 希 釈 法 (CLSI:M100-S21) ミューラーヒントン 培 地 に 良 好 に 発 育 する 菌 について は,96 穴 のマイクロプレートを 用 いた 微 量 液 体 希 釈 法 により 最 小 発 育 阻 止 濃 度 (MIC)を 測 定 し,さらに CLSI の 判 定 カテゴリー( 下 記 ⅳ) 参 照 )も 併 せて 報 告 する. ⅱ) ディスク 拡 散 法 (CLSI:M100-S21) 栄 養 要 求 性 の 厳 しい 特 殊 な 菌 (ストレプトコッカス 属, ヘモフィルス 属 など)については, 微 量 液 体 希 釈 法 による 感 受 性 試 験 の 実 施 が 困 難 であるため, 用 手 法 であるディ スク 拡 散 法 により 阻 止 円 直 径 を 判 定 し, 判 定 カテゴリー に 準 じて 報 告 する.なお, 薬 剤 ディスクは CLSI 標 準 法 に 準 拠 した 市 販 ディスクを 使 用 する. ⅲ) b-ラクタマーゼ 試 験 Haemophilus influenzae,neisseria gonorrhoeae,moraxella(branhamella)catarrhalis および 嫌 気 性 グラム 陰 性 桿 菌 については b-ラクタマーゼ 試 験 を 実 施 する.コ ロニーから 直 接 実 施 する 本 試 験 で 陽 性 ならば, 感 受 性 結 果 を 待 たずにペニシリン 系 の 薬 剤 は 使 用 できないと 判 断 する. ⅳ) 判 定 カテゴリーとは 感 受 性 結 果 は,MIC 値 または 阻 止 円 直 径 から 血 中 有 効 濃 度 に 基 づく 臨 床 有 用 性 を 考 慮 し, 表 12 に 示 したよう に S: 感 受 性,I: 中 間,R: 耐 性 と 判 定 される. 感 染 性 角 膜 炎 の 起 炎 菌 が 感 受 性 判 定 で S と 判 定 された 場 合 は, その 点 眼 薬 による 治 療 効 果 が 期 待 できる. 一 方, R と 判 定 された 場 合 はその 解 釈 が 難 しく, 点 眼 薬 が 血 中 有 効 濃 度 よりはるかに 高 濃 度 で 調 整 されているために 効 果 が ある 場 合 もあるので, 実 際 に 臨 床 的 に 使 用 して 効 果 が 認 められている 場 合 は R と 判 定 されたことを 根 拠 に 当 薬 剤 を 中 止 変 更 する 必 要 はない. 一 方,たとえ PAE (postantibiotic effect)の 高 い 薬 剤 であっても 角 膜 表 面 で は 起 炎 菌 と 薬 剤 との 十 分 な 接 触 時 間 が 確 保 されないた め, 治 療 効 果 はさほど 期 待 できないとの 意 見 もあり, R と 判 定 された 薬 剤 をわざわざ 新 たに 開 始 すること は,ほかに 方 法 がない 場 合 を 除 いては 避 けた 方 がよい. 現 に Wilhelmus らは 0.3% シプロフロキサシン 塩 酸 塩 点 眼 薬 による 角 膜 炎 治 療 効 果 と 起 炎 菌 の 感 受 性 結 果 との 関 係 を 評 価 し,MIC が1.0 mg/ml / 以 上 を 示 す 症 例 では 半 数 で 治 療 効 果 が 得 られなかったと 報 告 している 27) が, 逆 に 半 数 では 効 果 があったということでもあり,この 辺 の 解 釈 の 難 しさを 示 している.
502 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 図 45 外 眼 部 常 在 菌. 日 本 眼 感 染 症 学 会 の 術 前 減 菌 法 に 関 する 多 施 設 共 同 研 究 において 60 歳 以 上 の 白 内 障 術 前 患 者 の 結 膜 から 分 離 された 細 菌 の 内 訳. 表 12 薬 剤 感 受 性 試 験 結 果 の 解 釈 (CLSI 法 ) 感 受 性 S:susceptible 中 間 I:intermediate 耐 性 R:resistant 対 象 (N/A,N/R)/ / 推 奨 される 抗 菌 薬 の 投 与 量 で 臨 床 的 有 効 性 が 期 待 できる 通 常 投 与 量 では 効 果 が 低 い( 大 量 投 与 が 必 要 ). 抗 菌 薬 移 行 性 の 良 好 な 部 位 の 感 染 症 の 場 合 には 効 果 が 期 待 される 臨 床 的 有 効 性 は 期 待 できない 治 療 薬 として 使 用 できない( 適 応 外, 対 象 外 ) ⅴ) 感 受 性 スペクトル 感 染 性 角 膜 炎 患 者 の 日 常 診 療 に 際 しては, 主 に 臨 床 所 見 に 基 づき 点 眼 薬 を 選 択 するが, 推 定 起 炎 菌 と 用 いる 点 眼 薬 の 抗 菌 スペクトルは 正 しく 認 識 しておく 必 要 がある. また PAE を 考 慮 した 点 眼 薬 の 使 用 も 重 要 である. 治 療 効 果 は, 外 来 患 者 では 2 3 日 で 判 定 し, 適 時 点 眼 薬 を 変 更 する. 抗 菌 力 の 強 いフルオロキノロン 系 およびアミ ノグリコシド 系 抗 菌 薬 の 長 期 使 用 (1 週 間 以 上 )は 真 菌 お よび 腸 球 菌 などの 菌 交 代 現 象 を 誘 発 するため, 全 科 的 に は 避 けるべきとされているが,なるべく 混 濁 の 少 ない 治 癒 を 目 指 す 眼 科 においては 感 染 性 角 膜 炎 に 対 する 抗 菌 点 眼 薬 治 療 を1 週 間 で 止 めることは 難 しく, 臨 床 経 過 をみ ながら 薬 剤 の 中 止 時 期 を 決 めていくことになるが, 漫 然 とした 長 期 使 用 がないように 注 意 すべきである. Ⅴ 真 菌 培 養 感 受 性 検 査. 方 法 1 点 眼 麻 酔 後, 開 瞼 器 をかける. 2 円 刃 刀 またはゴルフ 刀 などでサンプルを 採 取 する. 3 培 地 シャーレの 中 心 部 に 円 刃 刀 を 突 き 立 てて 直 接 接 種 する. 4 得 られたサンプルは 培 養 とともに 塗 抹 検 鏡 に 供 す る. 5 室 温 および 37 で 培 養 する. 6 培 養 した 真 菌 はスライドカルチャーにて 菌 種 を 同 定 する. 7 感 受 性 検 査 キットを 用 い 薬 剤 感 受 性 検 査 を 行 う.. 結 果 の 判 定 ) 真 菌 培 養 接 種 場 所 に 一 致 して 菌 が 生 えてきた 場 合 には 病 変 部 か ら 分 離 されてきたと 判 断 できるが,その 他 の 部 位 に 生 え てきた 場 合 には contamination と 判 断 する. 確 定 診 断 で は, 塗 抹 検 鏡 で 角 膜 実 質 に 真 菌 が 感 染 していることが 重 要 である. 培 養 のみ 陽 性 であるときには contamination の 可 能 性 があることに 注 意 して 判 定 する. 塗 抹 検 鏡 と 培 養 結 果 が 一 致 したときには 信 頼 性 が 高 い.また, 糸 状 菌
平 成 25 年 6 月 10 日 Appendix 503 と 酵 母 菌 では, 臨 床 所 見 に 差 がある 28). 糸 状 菌 の 中 でも 菌 種 によって 病 原 性 に 差 があり, 角 膜 潰 瘍 の 重 症 度 や 進 行 に 差 がある.したがって, 臨 床 所 見 から 培 養 結 果 をあ る 程 度 推 測 することができ, 臨 床 所 見 を 踏 まえて 総 合 的 に 判 断 する. ) スライドカルチャー ガラスシャーレ,V 字 型 ガラス 管,スライドガラス, カバーガラスを 乾 熱 滅 菌 しておく. 真 菌 培 養 用 の 平 板 寒 天 培 地 を 滅 菌 メスで 約 10 mm 幅 の 格 子 状 に 切 り 出 す. そしてスライドガラス 上 に 一 片 を 置 き, 寒 天 培 地 の4 辺 に 培 養 真 菌 を 白 金 耳 で 接 種 し,カバーガラスで 覆 う.ガ ラスシャーレ 内 の V 字 ガラス 管 の 上 にスライドガラス を 置 き, 最 後 に 少 量 の 滅 菌 水 をシャーレ 内 に 注 ぎ, 真 菌 が 生 えた 至 適 温 度 で 培 養 する. 真 菌 の 発 育 状 態 を 観 察 し, 適 当 な 時 期 にカバーガラスをピンセットでゆっくり 剝 がす. 別 のスライドガラス 上 にラクトフェノール コ トンブルーを 滴 下 し,その 上 に 菌 糸 が 付 着 している 面 を 下 にして 静 かに 置 く. 残 ったスライドガラスは 寒 天 を 取 り 除 き,ラクトフェノール コトンブルーを 滴 下 すれば もう 1 枚 標 本 ができる.カバーガラスの 周 辺 にバルサム またはネイルエナメルを 塗 り 封 入 し, 顕 微 鏡 で 観 察 する. ) 感 受 性 検 査 酵 母 様 真 菌 に 関 しては 各 種 簡 易 キットが 販 売 されてい るが, 糸 状 菌 に 関 してはまだ 標 準 化 は 完 全 ではない 29). 感 受 性 検 査 に 用 いた 培 地 や 培 養 条 件 により 感 受 性 結 果 が 異 なるため, 感 受 性 検 査 方 法 や 培 養 条 件 が 異 なる 場 合 に は, 検 査 結 果 を 単 純 に 比 較 検 討 できない.. 利 点 感 染 性 角 膜 炎 の 病 巣 から 直 接 サンプルを 採 取 して 真 菌 を 培 養 することによって, 真 菌 性 角 膜 炎 の 確 定 診 断 を 下 すことができる. 培 養 した 真 菌 はスライドカルチャーす ることにより, 菌 の 形 態 を 詳 しく 観 察 することができ, 菌 種 を 同 定 することも 可 能 である.また, 感 受 性 検 査 を 行 うことによって 適 切 な 抗 真 菌 薬 の 選 択 が 可 能 である.. 注 意 点 サンプルの 採 取 場 所 は 瞳 孔 領 から 離 れた 位 置 の 角 膜 潰 瘍 の 周 辺 部 を 選 ぶ. 瞳 孔 領 から 離 れている 部 位 でサンプ ルを 採 取 することで 視 力 障 害 を 残 しにくい. 潰 瘍 中 心 部 は 穿 孔 を 起 こしやすいので 避 ける. 増 殖 力 の 旺 盛 な 真 菌 は 潰 瘍 周 辺 部 の 正 常 角 膜 との 境 界 に 多 く 存 在 するので, このような 部 分 を 狙 って 円 刃 刀 を 用 い, 強 めに 擦 過 して 角 膜 実 質 を 採 取 する. 角 膜 実 質 からサンプルを 採 取 する ことが 真 菌 の 検 出 率 を 上 げるうえで 重 要 である 30). また, 得 られたサンプルは 培 養 とともに 塗 抹 検 鏡 に 供 する. 真 菌 性 角 膜 炎 の 確 定 診 断 として, 塗 抹 検 鏡 によっ て 角 膜 実 質 に 真 菌 が 感 染 していることを 確 認 しておくこ とが 重 要 なポイントである. さらに, 培 養 はサブロー 寒 天 培 地,ポテトデキスト ロース 寒 天 培 地, 抗 菌 薬 添 加 普 通 寒 天 培 地 などを 用 い, 各 培 地 それぞれ 2 枚 を 用 意 して 室 温 と37 で 培 養 し, 真 菌 の 発 育 の 有 無 を 観 察 する. 真 菌 用 培 地 は 一 般 的 に 細 菌 が 発 育 しにくくなっている. 真 菌 用 の 培 地 が 準 備 でき ない 場 合 には, 細 菌 培 養 用 の 培 地 が 代 用 可 能 である. 室 温 と37 で 培 養 するのは, 菌 種 により 発 育 至 適 温 度 が 異 なるためである. 発 育 速 度 は 菌 種 によりばらつきがあ るため, 少 なくとも 2 週 間 は 培 養 する. Ⅵ アカントアメーバ 培 養. 方 法 分 離 培 養 法 の 概 略 を 図 46 に 示 す. ) 分 離 用 培 地 の 作 製 方 法 1 ⅰ) 用 意 するもの 1 アカントアメーバ 塩 類 溶 液 (KCM) (a) アカントアメーバ 塩 類 溶 液 保 存 液 の 組 成 KCl 0.4 g CaCl 2 3.0 g MgSO 4 7H 2O 1.0 g DW( 蒸 留 水 ) 1,000 ml トリス 緩 衝 液 で ph 6.8 7.0に 調 整 後,オートクレー ブで 滅 菌 し, 冷 暗 所 保 存 する. 使 用 時,この 保 存 液 を DW で 100 倍 に 希 釈 して 用 いる. (b) アカントアメーバ 塩 類 溶 液 の 簡 易 処 方 上 記 の KCM の 代 わりとなる 簡 易 処 方 がある. 生 理 食 塩 水 1ml に DW 60 ml を 加 えて,オートクレーブで 滅 菌 し,このまま 用 いる. 2Bacto agar,difco ⅱ) 培 地 の 作 製 1 寒 天 平 板 の 作 製 (1.5% NN 寒 天 培 地 ):Bacto agar, Difco 1.5 g を KCM 100 ml で 溶 解 し,オートクレー ブで 滅 菌 する. 約 60 に 冷 めたときに 直 径 60mm のプラスチックシャーレに, 厚 さ 約 5 mm に 注 入 する. 冷 蔵 庫 (4 )で 約 3か 月 間 保 存 できる. 2 寒 天 平 板 の 表 面 にガラス 棒 などで yeast extract glucose(yg) 液 を 塗 布 する 31). 室 温 で 数 時 間 半 日 ほ ど 乾 燥 させ, 検 査 に 用 いる. (a) YG 液 酵 母 エキス,Difco 0.5 g グルコース 0.5 1.0 g KCM 10 ml (b) 納 豆 上 澄 み 液 YG 液 の 代 わりに, 簡 易 処 方 として 納 豆 上 澄 み 液 を 用 いることもできる 32). 新 鮮 な 納 豆 ( 挽 き 割 納 豆 は 不 可 )を 8 10 粒 ほど 小 試 験
504 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 図 46 アカントアメーバの 分 離 培 養 法. KCM:アカントアメーバ 塩 類 溶 液,YG:yeast extract glucose. 管 に 入 れ,KCM 10 ml を 加 える.これを 静 かに 攪 拌 ( 倒 立, 正 位 を 繰 り 返 す)し, 納 豆 の 粘 液 がほぼ 溶 液 中 に 溶 解 したら, 上 澄 みを 別 の 容 器 に 分 注 する.この 上 澄 み 液 をYG 液 の 場 合 と 同 様 に 寒 天 平 板 に 塗 布 し, 乾 燥 後 使 用 する. (c) 大 腸 菌 浮 遊 液 通 常 の 検 査 室 では YG 液 ではなく 大 腸 菌 浮 遊 液 ( 後 述 ) を 用 いている. 方 法 2 ⅰ) 用 意 するもの 1 アカントアメーバ 塩 類 溶 液 アカントアメーバ 保 存 液 の 組 成 NaCl 12 g KCl 0.35 g CaCl 2 0.3 g MgSO 4 7H 2O 0.4 g Tris-HCl 100 mm(ph 6.8) 500 ml DW( 蒸 留 水 ) 1,000 ml 上 記 の 成 分 を 入 れて 溶 解 後,121 で15 分 間 オートク レーブで 滅 菌 する. 作 製 した 保 存 液 は, 冷 蔵 庫 で 保 存 す る. 2 PURIFIED AGAR ⅱ) 培 地 の 作 製 1 寒 天 平 板 ( 低 栄 養 培 地 )の 作 製 :ガラス 瓶 に 寒 天 (PURIFIED AGAR) 粉 末 1.6 gを 入 れ, 精 製 水 99 ml に 溶 解 し, 上 記 のアカントアメーバ 保 存 液 を 1 ml 加 え,121 で 15 分 間 オートクレーブで 滅 菌 す る.50 程 度 に 冷 めてから,シャーレに 流 し 入 れ, 寒 天 が 固 まったら 冷 蔵 庫 でさらに 30 分 程 度 固 め, その 後 インキュベーターで 15 分 ほど 乾 燥 させる, 瓶 のままであれば 約 6 か 月 保 存 可 能 であるが, シャーレに 分 注 した 場 合 には 1 か 月 以 内 に 使 用 す る. 2 使 用 直 前 に 寒 天 平 板 に 大 腸 菌 浮 遊 液 1 滴 を 滴 下 し, コンラージ 棒 で 均 等 に 広 げ, 乾 燥 させる. 大 腸 菌 浮 遊 液 の 作 製 法 大 腸 菌 (ATCC 株 25922)を 血 液 寒 天 培 地 で 一 昼 夜 培 養 する. 精 製 水 10ml にアカントアメーバ 保 存 液 0.1ml を 加 えた 溶 液 を 作 製 し, 平 板 に 発 育 したコロニーの 1/2/ を 浮 遊 させ 試 験 管 にとる. 恒 温 槽 (60 )に 試 験 管 を 入 れ,10 分 間 ごとにボルテックスをかけながら 60 分 間 加 熱 処 理 する. 試 験 管 が 冷 めたら,チューブに 1ml ずつ 分 注 して 密 封 し, 冷 蔵 庫 で 保 存 する. ) 検 体 の 採 取 と 接 種 ⅰ) 角 膜 擦 過 物 硬 めのスパーテルや 円 刃 刀 などを 用 いて, 角 膜 病 変 部
平 成 25 年 6 月 10 日 Appendix 505 図 47 アカントアメーバの 栄 養 体 ( 位 相 差 顕 微 鏡 ). 図 48 アカントアメーバのシスト( 位 相 差 顕 微 鏡 ). から 擦 過 物 を 採 取 する. 培 地 の 中 央 に 検 体 を 置 き,その 上 に KCM を1 滴 落 とす. 外 部 機 関 に 培 養 を 依 頼 する 場 合 には, 採 取 した 材 料 を 直 接 濾 紙 片 に 取 り,KCM を1 滴 落 として 室 温 で 十 分 に 乾 燥 させる. 材 料 の 周 囲 を 鉛 筆 などでマークして,スク リューチューブなどに 密 封 して 郵 送 するとよい. ⅱ) コンタクトレンズ,コンタクトレンズ 保 存 液 コンタクトレンズはレンズ 表 面 を 寒 天 平 板 に 擦 りつけ るように 塗 りつけるか,レンズを 拭 き 取 った 濾 紙 片 を 培 地 に 直 接 置 く.コンタクトレンズ 保 存 液 は 遠 心 分 離 管 に 入 れて 600 G で7 分 間 遠 心 分 離 し, 沈 渣 をマイクロピ ペットで 滴 下 する. ) 培 養 30 の 暗 所 で 培 養 する.2 3 日 目 には 栄 養 体 がみら れ,5 7 日 目 には 大 部 分 がシスト 化 する.. 結 果 の 判 定 ) 生 体 観 察 平 板 上 の 適 当 なシスト 集 団 上 に KCM を1 滴 落 とし, 白 金 耳 でシストをスライドガラス 上 にとる. 薄 いカバー ガラスの 小 片 を 枕 として 材 料 の 上 にカバーガラスをかけ, ブリッジプレパラートを 作 製 し, 位 相 差 顕 微 鏡 で 観 察 す る. 栄 養 体 では 棘 状 偽 足 と 単 核 の 胞 状 核 を 認 める.シス トは 大 きさ 10 20 mmで, 内 外 二 重 壁 と 内 壁 の 形 状 が 確 認 できればアカントアメーバ 属 と 判 定 できる( 図 47, 48). ) 簡 易 染 色 いくつかの 染 色 法 があるが, 細 胞 内 構 造 の 保 存, 二 重 壁 の 判 別 などの 点 から brilliant cresyl blue(bcb) 染 色 が 簡 便 で 観 察 しやすい.また,ギムザ 染 色 でも 観 察 可 能 で ある. ⅰ) BCB 染 色 1 シスト 浮 遊 液 と KCM で 調 製 した 0.1% BCB 染 色 液 を 等 量 混 合 する. 2 ブリッジプレパラートを 作 製 し, 検 鏡 する.. 利 点 アカントアメーバの 分 離 培 養 は, 比 較 的 感 度 の 高 い 病 因 診 断 法 である.また, 薬 剤 感 受 性 を 調 べれば, 治 療 薬 の 選 択 に 関 しての 情 報 を 得 ることができる.アカントア メーバの 培 養 は 難 しくなく, 培 地 さえ 用 意 しておけば 簡 単 に 実 施 できる. 培 地 は 冷 蔵 庫 で 約 3か 月 間 保 存 できる. また,アカントアメーバの 分 離 培 養 は, 臨 床 検 査 業 者 に 委 託 することも 可 能 である. 各 業 者 から 検 体 輸 送 用 キッ トを 取 り 寄 せ, 取 り 扱 い 説 明 書 に 従 って 検 体 を 採 取 し, 提 出 する.. 注 意 点 アカントアメーバ 角 膜 炎 の 初 期 では 検 出 できないこと がある( 偽 陰 性 ).また,アカントアメーバは 室 内 塵 など 日 常 生 活 環 境 下 に 高 率 に 存 在 するので, 検 査 器 具 や 材 料 の 汚 染 に 十 分 注 意 する 必 要 がある. Ⅶ ヘルペスウイルス 培 養. 方 法 サンプルとしては, 上 皮 型 が 疑 われる 場 合 は, 上 皮 欠 損 部 ではなく,その 辺 縁 の 上 皮 を MQAチップなどで 擦 りとる. 実 質 型 では 涙 液 をサンプルとする.これらのサ ンプルを, 直 接 培 養 細 胞 (Vero 細 胞 など)に 接 種 するの が 感 度 を 上 げる 点 からはよいが, 冷 凍 保 存 しておき, 後 日 接 種 を 行 うか, 培 養 実 施 施 設 に 送 付 することも 可 能 で ある.. 結 果 の 判 定 サンプルを 接 種 した 細 胞 内 でウイルスが 増 殖 してくる と, 細 胞 に 数 日 1 週 間 で ballooning などの 細 胞 変 性 効 果 (CPE)が 出 現 してくる.CPE が 拡 大 してきたら 増 殖 したウイルスを 回 収 冷 凍 保 存 し, 後 日, 蛍 光 抗 体 法 中 和 法 などを 用 いてウイルスの 種 類 を 同 定 する.. 利 点 陽 性 であれば 角 膜 ヘルペスと 確 定 診 断 できるため,ヘ ルペス 診 断 のゴールド スタンダードである.また 分 離 されたウイルスを 用 いて 薬 剤 感 受 性 や 病 原 性 を 検 討 した
506 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 り, 分 子 疫 学 的 調 査 に 用 いることができる.. 注 意 点 以 上 1 3 は HSV 分 離 の 方 法 であり,VZV について は 眼 局 所 からのウイルス 分 離 は 困 難 であり, 臨 床 的 な 利 用 は 難 しい.HSV についても, 感 度 が 悪 い, 結 果 が 出 る のに 日 数 を 要 する, 培 養 細 胞 を 用 意 する 必 要 がある 33)34) など, 日 常 の 臨 床 検 査 としては 不 向 きな 面 がある. Ⅷ Polymerase chain reaction(pcr) 法.PCR 法 PCR 法 ではまず, 検 体 を 94 前 後 の 高 温 に 供 し DNA 二 本 鎖 変 性 により 一 本 鎖 にする.これを denaturationと いう. 次 に 反 応 温 度 を 55 60 前 後 に 下 げて,それぞれ の 一 本 鎖 にプライマーを 付 着 させる.これを annealing という. 再 び 温 度 を 72 前 後 に 上 げて 伸 長 反 応 (extension)を 行 う. 具 体 的 な 方 法 は,まず 得 られたサンプルから DNA を 抽 出 し,マイクロチューブ 中 に 抽 出 DNA,2 種 類 のプラ イマー,デオキシヌクレオシド 3 リン 酸 (dntp),バッ ファー,MgCl 2,DNA ポリメラーゼ,H 2O を 混 合 する. サーマルサイクラーを, 例 えば denaturation 94 30 秒, annealing 58 30 秒,extension 72 60 秒,35 サイク ルなどの 条 件 に 設 定 し, 試 薬 と DNA の 入 ったチューブ を 反 応 させる. また,nested PCR は,アウタープライマーとインナー プライマーを 使 って 2 段 階 の PCR を 行 う 方 法 で,より 感 度 が 優 れる. 結 果 の 判 定 は, 設 定 したエンドポイントにおける PCR 産 物 をアガロースゲル( 図 49)に 電 気 泳 動 し, 増 幅 産 物 が 得 られたかどうかを 確 認 する..リアルタイム PCR 法 上 記 の 従 来 型 PCR 法 に 対 して,リアルタイム PCR 法 は, 目 的 PCR 増 幅 産 物 を1サイクルごとに 経 時 的 にモ ニタリングすることにより 定 量 的 な 解 析 が 可 能 で, 眼 科 領 域 でも 報 告 が 行 われている 35). 二 本 鎖 DNA に 特 異 的 に 挿 入 して 蛍 光 を 発 する 色 素 である SYBR green Ⅰを 用 いるインターカレーター 法 と 配 列 特 異 的 オリゴヌクレオ チドに 蛍 光 物 質 を 標 識 したプローブを 用 いる TaqMan 法 がある. 増 幅 された DNA 量 に 比 例 して 得 られる 蛍 光 強 度 を 検 出 することにより, 初 期 鋳 型 DNAを 定 量 す る. 既 知 の 初 期 鋳 型 コピー 数 から 段 階 希 釈 したスタン ダードサンプルにおける 増 幅 曲 線 にて, 閾 値 PCR 産 物 量 に 達 するサイクル 数 (threshold cycle:ct 値 )を 算 出 し て, 初 期 鋳 型 量 と Ct 値 との 直 線 関 係 を 示 す 検 量 線 を 作 成 する. 目 的 サンプルにおいても 同 様 に Ct 値 を 算 出 し て, 検 量 線 に 当 てはめることによって, 目 的 サンプルの 初 期 鋳 型 量 絶 対 数 を 定 量 できる.また, 内 在 コントロー ル 遺 伝 子 によるサンプル 間 の 補 正 をすることにより,サ ンプル 間 の 相 対 的 比 較 定 量 を 行 うこともできる. 図 49 Polymerase chain reaction(pcr) 産 物 のアガ ロースゲル 電 気 泳 動. 患 者 涙 液 より 抽 出 した DNA より,HSV-1 のUL-2 region に 相 当 するバンド(342 bp)が 得 られた.. 利 点 PCR 法 では, 涙 液, 角 膜 上 皮, 前 房 水, 硝 子 体 のよう に 採 取 できる 検 体 が 少 量 で,サンプル 中 のウイルス 量 が 少 ない 場 合 でもウイルス DNA を 増 幅 させることにより 検 出 可 能 である.また, 多 数 の 病 原 体 を 短 時 間 で 検 索 す ることができる.また, 本 反 応 の 鋳 型 となる DNA は, 凍 結 させて 長 期 保 存 できる.. 注 意 点 PCR 法 ではあくまで DNAの 存 在 が 証 明 されるのみで ある.したがって,ウイルスであれば 活 動 性 ウイルスの 存 在 を 証 明 しているわけではないので,その 評 価 に 注 意 を 要 する. 眼 ヘルペス 感 染 症 研 究 会 が 提 唱 した 上 皮 型 ヘ ルペスの 診 断 基 準 では,PCR 法 によるウイルス DNAの 証 明 は 確 定 診 断, 確 実 診 断 項 目 ではなく, 補 助 診 断 項 目 に 挙 げられている. 少 量 の DNA が 増 幅 されるため, 検 査 環 境 を 整 え,contamination に 注 意 する 必 要 がある. Ⅸ 血 清 抗 体 価. 方 法 ) 採 取 発 症 初 期 および 発 症 2 週 後 の 患 者 血 液 を 5 ml 程 度 採 取 し, 血 清 を 分 離 する. 不 可 能 な 場 合 は 発 症 2 週 後 の 血
平 成 25 年 6 月 10 日 Appendix 507 図 50 抗 体 応 答. 清 だけを 採 取 する. ) 検 査 依 頼 測 定 方 法 を 指 定 して, 検 査 室 あるいは 検 査 会 社 に 検 査 を 依 頼 する. 補 体 結 合 反 応 試 験 (CF 法 ), 中 和 試 験, 赤 血 球 凝 集 阻 止 試 験 (HI 法 ), 蛍 光 抗 体 法 (FA 法 ), 酵 素 抗 体 法 (ELISA 法 )が 主 に 用 いられる.CF 法 は 感 度 が 低 く, IgG 値 を 主 に 反 映 し,スクリーニングとして 用 いる.ウ イルス 特 異 的 な IgG 抗 体 価 や IgM 抗 体 価 の 測 定 には, HI 法 や ELISA 法,FA 法 を 用 いる. ) 診 断 ペア 血 清 で CF 抗 体 価 が 4 倍 以 上,その 他 の 方 法 では 2 段 階 以 上 の 抗 体 価 の 上 昇 を 証 明 できれば,そのウイル スによる 感 染 と 診 断 する.. 結 果 の 判 定 ) 感 染 に 伴 う 抗 体 応 答 の 原 則 感 染 時 に 産 生 される 特 異 的 抗 体 としては 感 染 初 期 に IgM,それと 同 時 期 にオリゴマー IgAが 産 生 され, 感 染 7 10 日 後 にピークとなり,その 後 IgG が 遅 れて 上 昇 し 長 期 にわたり 産 生 される( 図 50). ) 初 感 染 ヘルペスが 疑 わしい 場 合 発 症 2 週 後 の 血 清 において IgG 抗 体 価 と IgM 抗 体 価 を 測 定 し,IgG 抗 体 価 が 上 昇 せず IgM 抗 体 価 が 上 昇 し ていれば, 初 感 染 ヘルペスであると 診 断 できる. 発 症 4 日 以 内 では, 感 染 にもかかわらず 抗 体 価 が 上 昇 していな いこともある. ) 眼 部 帯 状 疱 疹 の 場 合 VZV の 再 活 性 化 により 起 こるので,ペア 血 清 を 採 取 し,IgG 抗 体 価 ないし CF 抗 体 価 で 4 倍 以 上 の 上 昇 があ れば 診 断 できる.IgM 抗 体 価 は 上 昇 しない. 成 人 におけ るVZV 抗 体 の 保 有 率 は 60% 以 上 であり,ペア 血 清 によ る 抗 体 価 上 昇 が 証 明 できない 場 合 は, 診 断 価 値 は 低 い. ) 角 膜 ヘルペスの 場 合 HSV の 再 活 性 化 が 原 因 であり,HSV 抗 体 の 保 有 率 は 60% 以 上 のため, 抗 体 価 の 上 昇 によっても 角 膜 炎 の 原 因 ウイルスとは 判 断 できない.. 利 点 血 清 の 採 取 のみで 検 査 でき, 角 膜 に 対 する 侵 襲 がな い.. 注 意 点 ウイルス 性 角 膜 炎 が 疑 われる 場 合 は,HSV 抗 体 価 と VZV 抗 体 価 を 測 定 し, 発 症 2 週 以 後 で 抗 体 陰 性 であれ ば, 原 因 ウイルスの 可 能 性 は 否 定 してよい.IgM 抗 体 価 が 上 昇 している 場 合 は, 初 感 染 と 診 断 する.それ 以 外 は, 血 清 抗 体 価 上 昇 を 認 めても, 原 因 ウイルスと 判 定 するこ とはできない.
508 日 眼 会 誌 117 巻 6 号 文 1) 感 染 性 角 膜 炎 全 国 サーベイランス スタディグルー プ: 感 染 性 角 膜 炎 全 国 サーベイランス 分 離 菌 患 者 背 景 治 療 の 現 況. 日 眼 会 誌 110:961-972, 2006. 2) 宇 野 敏 彦, 福 田 昌 彦, 大 橋 裕 一, 下 村 嘉 一, 石 橋 康 久, 稲 葉 昌 丸, 他 : 重 症 コンタクトレンズ 関 連 角 膜 感 染 症 全 国 調 査. 日 眼 会 誌 115:107-115, 2011. 3) 大 橋 裕 一, 木 下 茂, 細 谷 比 左 志, 李 三 榮, 荒 木 かおる, 切 通 彰, 他 : 角 膜 上 皮 の 新 しい 病 態 epithelial crack line. 臨 眼 46:1539-1543, 1992. 4) Inoue Y, Shimomura Y, Fukuda M, Miyazaki D, Ohashi Y, Sasaki H, et al:multicenter clinical study of the herpes simplex virus immunochromatographic assay kit for the diagnosis of herpetic epithelial keratitis. Br J Ophthalmol 2012;doi: 10.1136/bjophthalmol-2012-302254. 5) Itahashi M, Higaki S, Fukuda M, Shimomura Y: Detection and quantification of pathogenic bacteria and fungi using real-time polymerase chain reaction by cycling probe in patients with corneal ulcer. Arch Ophthalmol 128:535-540, 2010. 6) Ikeda Y, Miyazaki D, Yakura K, Kawaguchi A, Ishikura R, Inoue Y, et al:assessment of realtime polymerase chain reaction detection of Acanthamoeba and prognosis determinants of Acanthamoeba keratitis. Ophthalmology 119:1111-1119, 2012. 7) 井 上 幸 次, 大 橋 裕 一, 秦 野 寛, 下 村 嘉 一, 坂 本 雅 子, 岡 本 豊 ; 眼 感 染 症 薬 剤 感 受 性 スタディグルー プ: 前 眼 部 外 眼 部 感 染 症 における 起 炎 菌 判 定 日 本 眼 感 染 症 学 会 による 眼 感 染 症 起 炎 菌 薬 剤 感 受 性 多 施 設 調 査 ( 第 一 報 ). 日 眼 会 誌 115:801-813, 2011. 8) 秦 野 寛, 井 上 幸 次, 大 橋 裕 一, 下 村 嘉 一, 坂 本 雅 子, 岡 本 豊 ; 眼 感 染 症 薬 剤 感 受 性 スタディグルー プ: 前 眼 部 外 眼 部 感 染 症 起 炎 菌 の 薬 剤 感 受 性 日 本 眼 感 染 症 学 会 による 眼 感 染 症 起 炎 菌 薬 剤 感 受 性 多 施 設 調 査 ( 第 二 報 ). 日 眼 会 誌 115:814-824, 2011. 9) 石 橋 康 久, 本 村 幸 子 :アカントアメーバ 角 膜 炎 の 臨 床 所 見 初 期 から 完 成 期 まで. 日 本 の 眼 科 62: 893-896, 1991. 10) 塩 田 洋, 矢 野 雅 彦, 鎌 田 泰 夫, 片 山 智 子, 三 村 康 男 :アカントアメーバ 角 膜 炎 の 臨 床 経 過 の 病 期 分 類. 臨 眼 48:1149-1154, 1994. 11) 下 村 嘉 一 ( 眼 ヘルペス 感 染 症 研 究 会 ): 上 皮 型 角 膜 ヘ ルペスの 新 しい 診 断 基 準 New criteria of diagnosis for herpetic epithelial keratitis. 眼 科 44:739-742, 2002. 12) 山 秋 久, 柊 木 雅 晴, 北 川 和 子 : 金 沢 医 大 眼 科 にお ける 眼 部 帯 状 ヘルペス 症 例 の 検 討. 臨 眼 38:170-171, 1984. 13) Uchida Y, Kaneko M, Hayashi K:Varicella dendritic keratitis. Am J Ophthalmol 89:259-262, 1980. 14) Yamamoto S, Pavan-Langston D, Kinoshita S, 献 Nishida K, Shimomura Y, Tano Y:Detecting herpesvirus DNA in uveitis using the polymerase chain reaction. Br J Ophthalmol 80:465-468, 1996. 15) Koizumi N, Yamasaki K, Kawasaki S, Sotozono C, Inatomi T, Mochida C, et al:cytomegalovirus in aqueous humor from an eye with corneal endotheliitis. Am J Ophthalmol 141:564-565, 2006. 16) Suzuki T, Hara Y, Uno T, Ohashi Y:DNA of cytomegalovirus detected by PCR in aqueous of patient with corneal endotheliitis after penetrating keratoplasty. Cornea 26:370-372, 2007. 17) Chee SP, Bacsal K, Jap A, Se-Thoe SY, Cheng CL, Tan BH, et al:corneal endotheliitis associated with evidence of cytomegalovirus infection. Ophthalmology 114:798-803, 2007. 18) Koizumi N, Suzuki T, Uno T, Chihara H, Shiraishi A, Hara Y, et al:cytomegalovirus as an etiologic factor in corneal endotheliitis. Ophthalmology 115:292-297, 2008. 19) 砂 田 淳 子, 上 田 安 希 子, 井 上 幸 次, 大 橋 裕 一, 宇 野 敏 彦, 北 川 和 子, 他 : 感 染 性 角 膜 炎 全 国 サーベイラ ンス 分 離 菌 における 薬 剤 感 受 性 と 市 販 点 眼 薬 の postantibiotic effect の 比 較. 日 眼 会 誌 110:973-983, 2006. 20) 岡 本 茂 樹, 石 橋 康 久, 井 上 幸 次, 内 尾 英 一, 大 橋 裕 一, 北 川 和 子, 他 :アシクロビル 眼 軟 膏 の 副 作 用 調 査. 臨 眼 51:1112-1114, 1997. 21) 新 村 眞 人, 西 川 武 二, 川 島 眞, 本 田 まりこ, 漆 畑 修, 島 田 眞 路, 他 : 塩 酸 バラシクロビル 錠 の 帯 状 疱 疹 に 対 する 第 Ⅲ 相 臨 床 試 験 アシクロビル 錠 を 対 照 とした 二 重 盲 検 比 較 試 験. 臨 床 医 薬 14:2867-2902, 1998. 22) 川 島 眞, 新 村 眞 人, 大 河 原 章, 吉 川 邦 彦, 堀 嘉 昭, 山 西 弘 一, 他 :ファムシクロビルの 帯 状 疱 疹 に 対 する 臨 床 効 果 アシクロビルを 対 照 薬 とした 第 Ⅲ 相 二 重 盲 検 比 較 試 験. 臨 床 医 薬 12:4015-4045, 1996. 23) 渡 辺 大 輔, 浅 野 喜 造, 伊 東 秀 記, 川 井 康 つぐ, 川 島 眞, 下 村 嘉 一, 他 :ヘルペス 感 染 症 研 究 会 (JHIF) 帯 状 疱 疹 ワークショップ 帯 状 疱 疹 の 診 断 治 療 予 防 のコンセンサス. 臨 床 医 薬 28:161-173, 2012. 24) 田 原 和 子, 浅 利 誠 志, 遠 藤 卓 郎 :Acanthamoeba 角 膜 炎 または 角 膜 真 菌 症 の 同 時 迅 速 診 断 法. JAR- MAM 7:37-44, 1995. 25) Shiraishi A, Kobayashi T, Hara Y, Yamaguchi M, Uno T, Ohashi Y:Rapid detection of Acanthamoeba cysts in frozen sections of corneal scrapings with Fungiflora Y. Br J Ophthalmol 93:1563-1565, 2009. 26) 荒 木 博 子, 高 野 博 子, 中 川 ひとみ, 中 川 裕 子, 中 川 尚 :Impression cytology による 偽 樹 枝 状 角 膜 炎 か らの 水 痘 - 帯 状 ヘルペスウイルス 抗 原 の 検 出. 眼 臨 86:1002-1005, 1992. 27) Wilhelmus KR, Abshire RL, Schlech BA:Influence of fluoroquinolone susceptibility on the therapeutic response of fluoroquinolone-treated bacterial keratitis. Arch Ophthalmol 121:1229-1233, 2003.
平 成 25 年 6 月 10 日 509 28) 塩 田 洋 : 角 膜 真 菌 症 の 特 徴. 眼 科 30:231-236, 1988. 29) 内 田 勝 久, 山 口 英 世 : 抗 真 菌 薬 の 創 薬 における 前 臨 床 薬 効 評 価 の 現 状 と 課 題. 真 菌 誌 45:83-91, 2004. 30) 竹 林 宏, 塩 田 洋, 内 藤 毅, 木 内 康 仁, 三 村 康 男 : 角 膜 真 菌 症 の 検 討. 臨 眼 51:33-36, 1997. 31) Horikami H, Ishii K, Yamaura H, Ishibashi Y: Disinfection against Acanthamoebaʼs cyst from human keratitis. Zool Sci 9:1277, 1992. 32) 石 井 圭 一, 石 橋 康 久 : 両 生 アカントアメーバによる 角 膜 炎. 原 生 動 物 学 雑 誌 22:4-9, 1989. 33) 井 上 幸 次, 大 橋 裕 一 : 検 査 のこつ ウイルス 性 外 眼 部 疾 患 へのアプローチ 3 単 純 ヘルペスウイルス. 眼 紀 39:1938-1939, 1988. 34) 森 康 子, 西 川 憲 清, 井 上 幸 次, 桑 山 信 也, 下 村 嘉 一, 眞 鍋 禮 三 :ヘルペス 性 眼 疾 患 におけるウイルス 分 離 率 について. 眼 紀 42:822-825, 1991. 35) Fukuda M, Deai T, Hibino T, Higaki S, Hayashi K, Shimomura Y:Quantitative analysis of herpes simplex virus genome in tears from patients with herpetic keratitis. Cornea 22 (Suppl 1):S55-S60, 2003.