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賦課の根拠となった法律及び条例(その2)

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賦課の根拠となった法律及び条例(その2)

m07 北見工業大学 様式①

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

個人住民税徴収対策会議

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について


Ⅰ 平成14年度の状況

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

別 添 1 女 性 国 家 公 務 員 の 登 用 状 況 資 料 1 指 定 職 に 占 める 女 性 の 割 合 は3.0%( 平 成 27 年 11 月 1 日 現 在 ) ( 前 年 9 月 1 日 現 在 から0.2ポイント 増 ) 本 省 課 室 長 相 当 職 以 上 に 占 める 女

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03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

(1) 率 等 一 覧 ( 平 成 26 年 度 ) 目 課 客 体 及 び 納 義 務 者 課 標 準 及 び 率 法 内 に 住 所 を 有 する ( 均 等 割 所 得 割 ) 内 に 事 務 所 事 業 所 又 は 家 屋 敷 を 有 する で 内 に 住 所 を 有 し ないもの( 均 等

も く じ 1 税 源 移 譲 1 2 何 が 変 わったのか 改 正 の 3 つ の ポイント ポイント1 国 から 地 方 へ 3 兆 円 規 模 の 税 源 が 移 譲 される 2 ポイント2 個 人 住 民 税 の 税 率 構 造 が 一 律 10%に 変 わる 3 ポイント3 個 々の 納

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

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16 日本学生支援機構

技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

Taro-H26改正_溶け込み_中学授業

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Microsoft Word - 国民年金の加入納付状況H25

別紙3

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 25 年 4 月 1 日 現 在 ) 1) 一 般 行 政 職 福 島 県 国 類 似 団 体 平 均 年 齢 平

Microsoft Word 利子補給金交付要綱

Ⅰ 平成14年度の状況

代 議 員 会 決 議 内 容 についてお 知 らせします さる3 月 4 日 当 基 金 の 代 議 員 会 を 開 催 し 次 の 議 案 が 審 議 され 可 決 承 認 されました 第 1 号 議 案 : 財 政 再 計 算 について ( 概 要 ) 確 定 給 付 企 業 年 金 法 第

退職手当とは

空 き 家 を 売 却 した 場 合 の,000 万 円 控 除 特 例 の 創 設 被 相 続 人 が 住 んでいた 家 屋 及 びその 敷 地 を 相 続 があった 日 から 年 を 経 過 する 年 の 月 日 までに 耐 震 工 事 をしてから あるいは 家 を 除 却 し てから 売 却

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給 与 所 得 控 除 所 得 税 の 簡 易 給 与 所 得 表 により 給 与 所 得 の 金 額 を 求 めますが 控 除 額 の 計 算 については 次 のとおりです 給 与 等 の 収 入 金 額 給 与 所 得 控 除 額 180 万 円 以 下 の 場 合 180 万 円 を 超 え

人事行政の運営状況の報告について

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災害時の賃貸住宅居住者の居住の安定確保について

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 135,600 円 185,800 円 222,900 円 261,900 円

(5) 給 与 改 定 の 状 況 事 委 員 会 の 設 置 なし 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 民 間 給 与 公 務 員 給 与 較 差 勧 告 A B A-B ( 改 定 率 ) 給 与 改 定 率 ( 参 考 ) 国 の 改 定 率 24 年 度 円 円 円 円 ( ) 改

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 例 ) ( 例 ) 15 (H2) (H2) (H24) (H24) (H25.4.1) (H25.4.1) (H24) (H24)

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所令要綱

6 謝金(給与等)

平成16年度

65 発 送 管 理 2 賦 課 期 日 情 報 66 発 送 管 理 3 賦 課 期 日 情 報 67 発 送 管 理 4 賦 課 期 日 情 報 68 発 送 管 理 5 賦 課 期 日 情 報 69 発 送 管 理 6 賦 課 期 日 情 報 70 発 送 管 理 7 賦 課 期 日 情 報

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

寄 附 申 込 書 平 成 年 月 日 一 般 社 団 法 人 滋 賀 県 発 明 協 会 会 長 清 水 貴 之 様 ご 住 所 ご 芳 名 ( 会 社 名 ) 印 下 記 により 貴 協 会 に 寄 附 を 申 し 込 みます 記 1. 寄 附 金 額 金 円 也 1. 寄 付 金 の 種 類

個 人 所 得 課 税 ~ 住 宅 ローン 控 除 等 の 適 用 期 限 の 延 長 2 4. 既 存 住 宅 に 係 る 特 定 の 改 修 工 事 をした 場 合 の 所 得 税 額 の 特 別 控 除 居 住 年 省 エネ 改 修 工 事 控 除 限 度 額 バリアフリー 改 修 工 事 平

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Microsoft PowerPoint - 【資料5】社会福祉施設職員等退職手当共済制度の見直し(案)について

公表表紙

目 次 1. 社 会 保 障 分 野 でできること 1 1 高 額 医 療 高 額 介 護 合 算 制 度 の 改 善 2 保 険 証 機 能 の 一 元 化 3 自 己 診 療 情 報 の 活 用 4 給 付 可 能 サービスの 行 政 側 からの 通 知 2. 年 金 分 野 でできること 5

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 161,7 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

給 与 所 得 控 除 控 除 額 の 計 算 については 次 のとおりです 給 与 等 の 収 入 金 額 給 与 所 得 控 除 額 180 万 円 以 下 の 場 合 180 万 円 を 超 え 360 万 円 以 下 の 場 合 360 万 円 を 超 え 660 万 円 以 下 の 場 合

設 問 一 覧 全 員 にお 聞 きします 103 万 円 の 壁 130 万 円 の 壁 について 知 っていますか?...(SA) あなたの 年 収 を 教 えてください...(SA) 年 収 が 103 万 円 以 下 103 万 円 超 130 万 円 以 下 と 答 えた 人 あなたは 年

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

課 税 ベ ー ス の 拡 大 等 : - 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し ( 後 掲 ) - 減 価 償 却 の 見 直 し ( 建 物 附 属 設 備 構 築 物 の 償 却 方 法 を 定 額 法 に 一 本 化 ) - 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 な る 見 直 し ( 大

18 国立高等専門学校機構

(Microsoft Word - \220\305\220\247\211\374\220\263.doc)

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 135,6 243,7 185,8 222,9 261,9

1. 本 市 の 保 育 所 運 営 費 と 保 育 料 の 現 状 2 (1) 前 回 (5/29 5/29) 児 童 福 祉 専 門 分 科 会 資 料 国 基 準 に 対 する 本 市 の 保 育 料 階 層 区 分 別 軽 減 率 国 基 準 に 対 する 本 市 の 保 育 料 階 層 区

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 現 況 ( 平 成 22 1 号 給 の 給 料 月 額 137,9 188,9 226,7 266,4 294,3 最 高 号 給 の 給 料 月 額 247,9 314,9 362,8 399,9 415,1 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制

就 学 前 教 育 保 育 の 実 施 状 況 ( 平 成 23 年 度 ) 3 歳 以 上 児 の 多 く(4 歳 以 上 児 はほとんど)が 保 育 所 又 は 幼 稚 園 に 入 所 3 歳 未 満 児 (0~2 歳 児 )で 保 育 所 に 入 所 している 割 合 は 約 2 割 就 学

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Microsoft Word - 交野市産業振興基本計画 doc

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(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

弁護士報酬規定(抜粋)

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Microsoft Word - y doc

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (5 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 類 団 府 分 似 体 平 均 年 齢

Microsoft Word

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

2 前 項 前 段 の 規 定 にかかわらず 年 俸 制 教 職 員 から 申 し 出 があった 場 合 においては 労 使 協 定 に 基 づき その 者 に 対 する 給 与 の 全 額 又 は 一 部 を 年 俸 制 教 職 員 が 希 望 する 金 融 機 関 等 の 本 人 名 義 の 口

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 2 年 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものです ( 単 位 : ) 3 職 員 の 平 均 給 与 月


2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

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公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

1

3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

2 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 (26 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 静 岡 県 国 類 似 団 体 2 技 能 労 務 職 区 41.8 歳 42.6 歳 43.5

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為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

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Ⅰ 年 金 制 度 昭 和 37 年 12 月 1 日 に 地 方 公 務 員 等 共 済 組 合 法 が 施 行 され 恩 給 から 年 金 へ 昭 和 61 年 4 月 から 20 歳 以 上 60 歳 未 満 のすべての 国 民 が 国 民 年 金 に 加 入 厚 生 年 金 基 金 職 域

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1 総括

一般競争入札について

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参 考 様 式 再 就 者 から 依 頼 等 を 受 けた 場 合 の 届 出 公 平 委 員 会 委 員 長 様 年 月 日 地 方 公 務 員 法 ( 昭 和 25 年 法 律 第 261 号 ) 第 38 条 の2 第 7 項 規 定 に 基 づき 下 記 のとおり 届 出 を します この

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ふるさと 納 税 のすゝめ おおはし 大 橋 ち か 知 佳 一 般 財 団 法 人 日 本 経 済 研 究 所 地 域 未 来 研 究 センター 副 主 任 研 究 員 はじめに 昨 年 人 口 減 少 による 地 方 消 滅 危 機 に 警 鐘 を 鳴 ら した 日 本 創 成 会 議 のレポートを 受 けて 地 方 では 雇 用 創 出 地 方 への 人 の 流 れ そして 結 婚 出 産 子 育 てを 支 援 する 仕 組 みなど 地 方 創 生 への 取 り 組 みが 求 められている そうしたなか 寄 附 金 控 除 上 限 額 約 2 倍 への 拡 大 措 置 (2015 年 税 制 改 正 ) や 自 治 体 からの 魅 力 的 な 特 産 品 等 の 御 礼 品 を 受 け て ふるさと 納 税 の 人 気 が 高 まり ブームの 兆 しが 見 える 本 稿 では ふるさと 納 税 の 仕 組 み を 概 観 した 後 ふるさと 納 税 を 活 用 した 地 域 活 性 化 の 先 行 事 例 などを 取 り 上 げ 地 方 創 生 に 向 けた ヒントを 探 っていくこととする 1.ふるさと 納 税 とは ふるさと 納 税 は 2008 年 5 月 1 日 に 正 式 に 開 始 さ れた 制 度 である 大 都 市 圏 と 地 方 の 税 正 格 差 を 埋 め る 目 的 で 福 井 県 知 事 の 西 川 一 誠 氏 によって 発 案 さ れ 2007 年 5 月 に 第 1 次 安 倍 内 閣 当 時 の 菅 義 偉 総 務 大 臣 が 具 体 的 な 制 度 設 計 を 指 示 し 同 年 6 月 にふる さと 納 税 研 究 会 ( 総 務 省 )が 設 置 された その 後 2008 年 度 の 地 方 税 法 改 正 により 制 度 化 され 現 在 に 至 っている ふるさと 納 税 の 仕 組 みを 以 下 にモデルケース( 図 表 1)として 示 す 都 道 府 県 や 市 区 町 村 に 対 して 寄 附 (ふるさと 納 税 )を 行 うと 寄 附 金 のうち 自 己 負 担 額 の2,000 円 を 超 える 部 分 について 一 定 の 上 限 図 表 1 ふるさと 納 税 の 仕 組 み(モデルケース) モデルケース 給 与 所 得 :700 万 円 所 得 税 率 :20% 家 族 構 成 : 夫 婦 子 なし 配 偶 者 控 除 あり( 寄 附 金 最 大 10 万 8 千 円 までが 控 除 の 範 囲 となる ) 平 成 26 年 度 から 平 成 50 年 度 については 復 興 特 別 所 得 税 を 加 算 した 率 とする 控 除 イメージ 1 所 得 税 ( 寄 附 金 -2000 円 )を 所 得 控 除 ( 所 得 控 除 額 所 得 税 率 ( 0~45%)が 軽 減 ) 2 個 人 住 民 税 ( 基 本 分 ) ( 寄 附 金 -2000 円 ) 10%を 税 額 控 除 3 個 人 住 民 税 ( 特 例 分 ) ( 寄 附 金 -2000 円 ) (100%-10%( 基 本 分 )- 所 得 税 率 ( 0~ 45%)) 1 2により 控 除 できなかった 寄 附 金 額 を 3により 全 額 控 除 ( 所 得 割 額 の2 割 を 限 度 ) 寄 附 金 額 3 万 円 適 用 下 限 額 1 所 得 税 所 得 控 除 による 軽 減 2 個 人 住 民 税 税 額 控 除 ( 基 本 分 ) 3 個 人 住 民 税 税 額 控 除 ( 特 例 分 ) 所 得 割 額 の2 割 を 限 度 とする 2,000 円 (3 万 円 -2,000 円 ) 20%=5,600 円 (3 万 円 -2,000 円 ) 10%=2,800 円 (3 万 円 -2,000 円 ) (100%-10%-20%)=19,600 円 所 得 税 と 合 わせた 控 除 額 2 万 8 千 円 出 典 : 総 務 省 HP 資 料 を 元 に 筆 者 作 成

大 橋 知 佳 氏 のプロフィール 日 本 経 済 研 究 所 地 域 未 来 研 究 センター 副 主 任 研 究 員 立 命 館 大 学 法 学 部 国 際 比 較 法 専 攻 卒 業 システム 会 社 医 療 系 出 版 社 を 経 て 2008 年 日 本 経 済 研 究 所 入 所 調 査 第 4 部 調 査 第 3 部 研 究 員 事 務 局 事 業 部 研 究 員 等 を 経 て2014 年 より 現 職 ( 図 表 2 参 照 )まで 原 則 として 所 得 税 個 人 住 民 税 から 全 額 が 控 除 されるようになっている 控 除 さ れた 金 額 のうち 所 得 税 控 除 額 分 1が 自 身 で 指 定 し た 口 座 に 振 り 込 まれ 個 人 住 民 税 控 除 額 分 2 3が 住 民 税 から 還 付 される 控 除 を 受 けるためには 寄 附 をした 翌 年 に 確 定 申 告 を 忘 れずに 行 うことが 必 要 であったが 2015 年 4 月 1 日 以 降 確 定 申 告 が 不 要 な 給 与 所 得 者 等 について ふるさと 納 税 先 が5 団 体 以 内 の 場 合 に 限 り 納 税 先 に 申 請 することにより 確 定 申 告 不 要 で 控 除 を 受 けられる 特 例 (ふるさと 納 税 ワンストップ 特 例 制 度 )が 創 設 されている 図 表 2 全 額 控 除 される 寄 附 金 額 の 目 安 (2,000 円 を 除 く) 給 与 所 得 者 の 場 合 ( 給 与 収 入 のみ 住 宅 ローン 控 除 等 を 受 けていない ) 夫 婦 はどちらかに 収 入 がなく 配 偶 者 控 除 を 受 けている 場 合 共 働 き は 配 偶 者 控 除 を 受 けていないと 仮 定 ( 配 偶 者 の 給 与 収 入 141 万 円 以 上 ) 高 校 生 は 16 歳 から18 歳 の 扶 養 親 族 大 学 生 は 19 歳 から22 歳 の 特 定 扶 養 親 族 を 指 す 中 学 生 以 下 の 子 供 は 計 算 上 加 味 しない 年 金 収 入 のみの 場 合 や 事 業 者 の 場 合 数 字 は 異 なる 2015 年 1 月 1 日 より 単 位 : 円 寄 附 者 の 家 族 構 成 独 身 又 は 夫 婦 又 は 共 働 きで 共 働 きで 子 1 人 夫 婦 + 子 1 人 共 働 きで 子 2 人 夫 婦 + 子 2 人 共 働 き 子 1 人 ( 高 校 生 ) ( 大 学 生 ) ( 高 校 生 ) ( 大 学 生 と 高 校 生 )( 大 学 生 と 高 校 生 ) 寄 附 者 本 人 の 給 与 収 入 300 万 円 31,000 23,000 19,000 15,000 10,000 4,000 350 万 円 38,000 30,000 26,000 22,000 17,000 9,000 400 万 円 46,000 38,000 34,000 30,000 25,000 17,000 450 万 円 58,000 46,000 42,000 38,000 34,000 25,000 500 万 円 67,000 59,000 52,000 46,000 42,000 33,000 550 万 円 76,000 67,000 64,000 59,000 52,000 42,000 600 万 円 84,000 76,000 73,000 68,000 65,000 53,000 650 万 円 107,000 85,000 82,000 77,000 74,000 65,000 700 万 円 118,000 108,000 105,000 86,000 83,000 75,000 750 万 円 129,000 120,000 116,000 110,000 107,000 85,000 800 万 円 141,000 131,000 128,000 122,000 118,000 109,000 850 万 円 152,000 143,000 139,000 133,000 130,000 120,000 900 万 円 164,000 154,000 151,000 145,000 141,000 132,000 950 万 円 176,000 167,000 163,000 157,000 154,000 144,000 1000 万 円 188,000 179,000 176,000 170,000 166,000 157,000 1500 万 円 394,000 382,000 378,000 371,000 366,000 355,000 2000 万 円 572,000 560,000 556,000 548,000 544,000 532,000 2500 万 円 858,000 845,000 840,000 831,000 826,000 813,000 3000 万 円 1,062,000 1,048,000 1,043,000 1,035,000 1,030,000 1,016,000 3500 万 円 1,265,000 1,252,000 1,247,000 1,238,000 1,233,000 1,220,000 4000 万 円 1,468,000 1,455,000 1,450,000 1,441,000 1,437,000 1,423,000 4500 万 円 1,865,000 1,850,000 1,845,000 1,835,000 1,830,000 1,627,000 5000 万 円 2,092,000 2,077,000 2,072,000 2,062,000 2,057,000 2,042,000 6000 万 円 2,546,000 2,531,000 2,526,000 2,516,000 2,511,000 2,496,000 7000 万 円 3,000,000 2,985,000 2,980,000 2,970,000 2,965,000 2,950,000 8000 万 円 3,454,000 3,439,000 3,434,000 3,424,000 3,419,000 3,404,000 9000 万 円 3,908,000 3,893,000 3,888,000 3,878,000 3,873,000 3,858,000 1 億 円 4,362,000 4,347,000 4,342,000 4,332,000 4,327,000 4,312,000 出 典 : 総 務 省 HP 資 料 を 元 に 筆 者 作 成

2. 最 近 の 傾 向 ⑴ 寄 附 金 額 と 利 用 者 数 の 推 移 ふるさと 納 税 が 導 入 された 初 期 の3 年 間 (2009~ 2011 年 度 )は 寄 附 金 額 や 利 用 者 数 は 横 ばいで 推 移 していたが 2012 年 度 には 急 激 に 増 加 し 対 前 年 度 比 で 寄 附 金 額 は 約 10 倍 利 用 者 数 は 約 22 倍 もの 伸 び を 示 している( 図 表 3) これは 2012 年 から 自 己 負 担 分 の 適 用 下 限 金 額 が5,000 円 から2,000 円 に 引 き 下 げられたことが 大 きな 要 因 である また 2011 年 3 月 に 発 生 した 東 日 本 大 震 災 の 被 災 地 支 援 の 気 運 が 高 まり ふるさと 納 税 等 を 通 じて 社 会 貢 献 しようと する 人 達 が 増 えた 結 果 と 推 察 される さらに 3 年 間 の 試 行 錯 誤 を 経 て 各 自 治 体 の 積 極 的 な PR に よって 魅 力 的 な 御 礼 品 が 増 えてきたことも 寄 附 金 額 や 利 用 者 数 の 増 加 につながり 導 入 初 期 の2009 年 度 と 比 較 すると 2014 年 度 には 寄 附 金 額 が 約 2 倍 利 用 者 数 が 約 4 倍 となった 2015 年 1 月 1 日 からは 控 除 を 受 けられる 寄 附 金 額 の 上 限 枠 が 約 2 倍 となったため 2015 年 度 は 高 い 伸 びが 期 待 できそうである ⑵ 都 道 府 県 別 図 表 4は ふるさと 納 税 が 開 始 された2008 年 度 と 5 年 後 の2013 年 度 の 都 道 府 県 別 の ふるさと 納 税 額 上 位 10 件 の 比 較 を 表 している ふるさと 納 税 で は 都 道 府 県 と 市 区 町 村 が 別 々に 寄 附 金 を 受 け 付 け ている 週 刊 ダイヤモンドの 記 事 (2009 年 10 月 3 日 )によれば 制 度 開 始 の2008 年 度 に1 位 だった 栃 木 県 では 同 県 出 身 の 大 塚 商 会 会 長 が 個 人 で 寄 附 し た2 億 円 が 大 きな 割 合 を 占 めており 2 位 の 大 阪 府 も 当 時 の 橋 下 徹 知 事 の 大 ファンである80 代 の 女 性 が リュックサックに1 億 円 を 詰 めて 寄 附 に 訪 れた という 3 位 の 岡 山 県 も 同 様 に 億 単 位 の 大 口 寄 附 者 が 現 れたことが 順 位 を 押 し 上 げる 結 果 となった 一 方 で 4 位 の 鹿 児 島 県 は 1~3 位 に 見 られるよう な 特 殊 な 要 因 が 無 く 件 数 を 地 道 に 積 み 重 ねた 結 果 795 件 もの 応 募 があり ふるさと 納 税 制 度 を 上 百 万 円 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 図 表 3 ふるさと 納 税 寄 附 金 額 と 利 用 者 数 の 推 移 ( 全 国 ) 寄 附 金 額 利 用 者 数 ( 右 目 盛 り) 7,260 6,553 6,709 33.1 33.1 33.5 64,915 741.7 震 災 適 用 下 限 金 額 引 き 下 げによる 一 時 的 増 加 等 13,011 14,189 133.9 106.4 2009 年 度 2010 年 度 2011 年 度 2012 年 度 2013 年 度 2014 年 度 千 人 800 700 600 500 400 300 200 100 0 各 年 度 はそれぞれ 前 年 の1 月 から12 月 までにされた 寄 附 のうち 寄 附 金 控 除 の 申 告 があっ た 寄 附 金 を 集 計 出 典 : 総 務 省 HP 資 料 を 元 に 筆 者 作 成

図 表 4 都 道 府 県 ふるさと 納 税 額 ランキングの 推 移 2008 年 度 と2013 年 度 の 比 較 2008 年 度 5 年 後 2013 年 度 順 位 都 道 府 県 金 額 ( 百 万 円 ) 件 数 都 道 府 県 金 額 ( 百 万 円 ) 件 数 1 栃 木 県 224 30 鳥 取 県 336 24,198 2 大 阪 府 157 505 岩 手 県 116 1,935 3 岡 山 県 108 71 福 島 県 79 1,352 4 鹿 児 島 県 63 795 熊 本 県 60 1,852 5 香 川 県 42 130 鹿 児 島 県 54 824 6 福 井 県 34 472 宮 城 県 47 403 7 徳 島 県 28 148 長 野 県 44 3,470 8 熊 本 県 20 360 徳 島 県 43 212 9 埼 玉 県 18 258 福 井 県 40 286 10 神 奈 川 県 15 52 栃 木 県 34 58 1 2008 年 度 2013 年 度 共 にランクしている 都 道 府 県 を 囲 み 線 にしている 2 ふるさと 納 税 の 額 について 公 表 している 都 道 府 県 を 対 象 にランキングしている( 青 森 県 東 京 都 は 非 公 表 ) 福 井 県 熊 本 県 鹿 児 島 県 の3 県 は 県 内 市 町 村 分 の 寄 附 金 も 受 け 付 けているため それらの 金 額 を 含 んだ 数 値 となっている 出 典 :ふるさと 納 税 情 報 センター( 福 井 県 観 光 営 業 部 )を 元 に 筆 者 作 成 手 に 活 用 して 寄 附 金 を 集 めた 優 秀 な 自 治 体 という 評 価 につながった その 背 景 には 県 人 会 の 結 束 力 や 出 身 者 の 郷 土 愛 の 深 さなどが 関 係 している ところが 2013 年 度 になると2008 年 度 1 位 の 栃 木 県 が10 位 に 下 がっており 2008 年 度 に10 位 以 内 にラ ンクしていた5 県 のうち 唯 一 熊 本 県 の 順 位 が 上 がっているが これは ご 当 地 キャラクターとして 有 名 になった くまモン 人 気 に 加 えて 県 人 会 な どの 交 流 を 通 して 地 道 な 広 報 活 動 に 力 を 入 れた 結 果 ( 熊 本 県 総 務 部 税 務 課 )だそうである 2013 年 度 に 新 たに10 位 以 内 にランクインしたの が 鳥 取 岩 手 福 島 宮 城 長 野 の5 県 である 岩 手 福 島 宮 城 の 東 北 3 県 は 被 災 地 復 興 支 援 と しての 要 因 が 強 い 鳥 取 県 では 金 額 に 応 じた 特 典 を 豊 富 に 提 供 しており 寄 附 者 への 御 礼 品 の 充 実 を 図 るために 御 礼 品 の 提 供 企 業 を 募 集 した 鳥 取 県 ふるさと 納 税 パートナー 企 業 などの 取 り 組 みが 功 を 奏 しているものと 考 えられる 長 野 県 の 場 合 2012 年 から 特 色 ある 御 礼 品 を 目 指 して 品 目 を 増 や し 知 事 が 自 らふるさと 納 税 の PR 活 動 を 行 うなど した 結 果 寄 附 金 額 が 増 えた ( 長 野 県 総 務 部 税 務 課 )そうである 今 後 北 陸 新 幹 線 の 開 通 等 に 伴 い 長 野 県 を 含 む 北 陸 地 方 への 関 心 が 高 まりそうな 気 配 である ⑶ 市 区 町 村 別 図 表 5は 公 式 なデータが 整 備 されていないな か 西 日 本 新 聞 独 自 の 取 材 に 基 づく2014 年 12 月 時 点 のふるさと 納 税 額 上 位 10 市 区 町 村 ランキングである が 地 域 別 に 見 ると 九 州 地 方 の 人 気 が 高 くなってい る 1 位 の 平 戸 市 ( 長 崎 県 )は 前 年 の 寄 附 金 額 26 倍 に 達 する10 億 円 を 突 破 し 寄 附 金 額 が 住 民 税 を 上 回 った 10 億 円 突 破 は 全 国 の 自 治 体 でも 初 めての 快 挙 となった 人 気 が 高 まった 要 因 は 2013 年 8 月 に 寄 附 金 額 に 応 じたポイントを 寄 附 者 に 付 与 し ウ チワエビ 平 戸 牛 などの 御 礼 品 をカタログから 自 由 に 選 択 できるシステムを 導 入 した 反 響 が 大 きく ポ イント 付 与 率 の 引 き 上 げや 御 礼 品 の 充 実 化 クレ ジットカード 払 いの 導 入 なども 功 を 奏 しているよう である 例 えば 所 得 の 関 係 で ふるさと 納 税 の 上 限 額 が 年 間 およそ1 万 円 の 人 が 3 万 円 納 税 相 当 の 御 礼 品 が 欲 しい 場 合 平 戸 市 であれば3 年 間 継 続 す ることで 3 万 円 納 税 相 当 のポイントがたまり 目 的 の 御 礼 品 を 手 に 入 れることができるようになって

図 表 5 ふるさと 納 税 額 上 位 10 市 区 町 村 順 位 市 区 町 村 金 額 ( 百 万 円 ) 1 平 戸 市 ( 長 崎 県 ) 1,024 2 玄 海 町 ( 佐 賀 県 ) 874 3 上 士 幌 町 ( 北 海 道 ) 829 4 綾 町 ( 宮 崎 県 ) 710 5 浜 田 市 ( 島 根 県 ) 542 6 天 童 市 ( 山 形 県 ) 420 2 位 玄 海 町 ( 佐 賀 県 ) 7 米 子 市 ( 鳥 取 県 ) 413 10 位 小 城 市 ( 佐 賀 県 ) 8 境 港 市 ( 鳥 取 県 ) 364 佐 賀 9 都 城 市 ( 宮 崎 県 ) 359 長 崎 宮 崎 10 小 城 市 ( 佐 賀 県 ) 356 出 典 : 西 日 本 新 聞 電 子 掲 載 版 (2014 年 12 月 23 日 付 ) 1 位 平 戸 市 ( 長 崎 県 ) 7 位 米 子 市 ( 鳥 取 県 ) 8 位 境 港 市 ( 鳥 取 県 ) 5 位 浜 田 市 ( 島 根 県 ) 島 根 3 位 上 士 幌 町 ( 北 海 道 ) 6 位 天 童 市 ( 山 形 県 ) 鳥 取 4 位 綾 町 ( 宮 崎 県 ) 9 位 都 城 市 ( 宮 崎 県 ) 山 形 北 海 道 図 表 6 ポータルサイト ふるさとチョイス 出 典 : ふるさとチョイス http://www.furusato-tax.jp/ いる また 2~5 位 の 玄 海 町 ( 佐 賀 県 ) 上 士 幌 町 ( 北 海 道 ) 綾 町 ( 宮 崎 県 ) 浜 田 市 ( 島 根 県 )は 株 式 会 社 トラストバンク( 東 京 都 渋 谷 区 )が 開 設 運 営 している ふるさと 納 税 に 関 する 情 報 を 集 約 し た 便 利 なポータルサイト ふるさとチョイス 内 ( 図 表 6 参 照 )の PV(ページビュー) 数 月 間 ランキ ングでも 常 に 上 位 に 位 置 しており 魅 力 的 な 御 礼 品 人 気 の 高 さが 伺 える ちなみに 同 社 は ICT を 通 じ 地 域 とシニアが 元 気 になるサービスを 提 供 してい る 特 に 玄 海 町 上 士 幌 町 は2014 年 1 月 より PV 数 月 間 ランキング1 位 を 累 計 3 回 獲 得 した 自 治 体 であり ふるさとチョイス サイト 内 において 殿 堂 入 り を 果 たすほどの 人 気 ぶりである

3.ふるさと 納 税 の 事 例 紹 介 ふるさと 納 税 による 地 域 活 性 化 の 先 行 事 例 も 生 まれ ている ふるさと 納 税 ランキングで1 位 となった 平 ⑴ ふるさと 納 税 の 使 用 目 的 ふるさと 納 税 は 納 税 を 受 ける 自 治 体 において 戸 市 ( 長 崎 県 )は あまりの 人 気 ぶりに 御 礼 品 の 発 送 が 追 い 付 かない 状 態 で 嬉 しい 悲 鳴 が 上 がるとと 様 々な 目 的 に 使 用 されている ふるさとチョイス HP サイト 内 では 地 域 や 特 産 品 から 寄 附 対 象 自 治 体 を 選 択 する 以 外 に 使 い 道 から 選 ぶ カテゴ リーがあり その 対 象 は 自 然 保 護 伝 統 を 守 る NPO 各 種 団 体 支 援 文 化 教 育 生 涯 学 習 医 療 福 祉 観 光 スポーツなど 多 岐 にわたってい る 例 えば 福 島 市 ( 福 島 県 )では 震 災 復 興 支 援 の 一 環 として ふるさと 復 興 応 援 が 設 定 され ており 学 校 施 設 補 修 事 業 や 文 化 施 設 文 化 財 の 補 修 事 業 に 寄 附 金 が 活 用 されている 被 災 地 支 援 やボ ランティア 等 に 関 心 があっても 何 からどのように 始 めたらよいのかわからない 人 でも ふるさと 納 税 を 通 じて 復 興 支 援 への 参 加 が 可 能 となっている また 軽 井 沢 町 ( 長 野 県 )では 教 育 支 援 の 一 環 として 育 もう 教 育 と 文 化 に 取 り 組 み 2014 年 8 月 に 町 内 に 開 校 した 全 寮 制 のインターナショナルス クールで 日 本 初 の1 条 校 1 となった アイザック ISAK(イン ターナショナルスクール オブ アジア 軽 井 沢 )を 応 援 校 に 認 定 し 寄 附 総 額 の3 分 の2を 補 助 金 とし て 活 用 している この 他 にも ユニークな 使 い 道 として 十 日 町 市 ( 新 潟 県 )では 2000 年 に 地 域 振 興 事 業 の 一 環 とし て 始 められた 3 年 に1 度 開 催 される 里 山 を 舞 台 に した 現 代 アートの 祭 典 大 地 の 芸 術 祭 の 開 催 や 作 品 の 維 持 管 理 のための 経 費 に 寄 附 金 を 活 用 している もに ウチワエビ サザエ カキなどの 海 産 物 を 詰 め 合 わせた 平 戸 瀬 戸 物 語 などの 御 礼 品 の 生 産 販 売 を 通 じて 新 たな 雇 用 も 生 まれつつあるという 同 市 財 務 部 企 画 財 政 課 ふるさと 納 税 推 進 班 によれば 人 口 の 流 出 が 続 いていた 街 にも 活 気 が 戻 り 住 民 の 気 持 ちも 明 るく 前 向 きに 変 化 してきた そうであ る また 東 川 町 ( 北 海 道 )は 町 内 に 上 水 道 鉄 道 国 道 の3つのインフラが 存 在 せず 交 通 アクセ スや 利 便 性 には 恵 まれていないにも 関 わらず 宿 泊 券 の 無 料 配 布 や 地 元 で 収 穫 した 旬 の 野 菜 など ご 当 地 で 獲 れた 特 産 品 の 評 判 が 納 税 リピーターを 呼 び 込 み 地 道 に 地 域 振 興 の PR 活 動 等 を 積 み 重 ねてきた 結 果 およそ10 年 前 に7,700 人 だった 定 住 人 口 が 2014 年 の4 月 には7,909 人 に 増 えた 阿 南 町 ( 長 野 県 )では ふるさと 納 税 導 入 以 前 は 地 域 の 高 齢 化 が 進 み 休 耕 田 が 増 えていたが 寄 附 金 1 万 円 で20kgの 米 を 特 典 としたふるさと 納 税 を きっかけに 米 の 需 要 が 急 増 したため 水 田 を 再 開 するなど 新 たな 雇 用 を 生 み 出 している 綾 町 ( 宮 崎 県 )は 照 葉 樹 林 都 市 を 名 乗 り 県 内 でも 有 数 の 観 光 地 となっており 宮 崎 特 産 のマ ンゴーや 日 向 夏 野 菜 や 米 焼 酎 など29 種 の 特 産 品 の PR をはじめ 風 土 の 生 かし 方 が 優 れた 自 治 体 であ る 町 では 地 元 のブランド 牛 である 綾 牛 を 特 典 と したことで 人 気 が 集 中 した 結 果 2014 年 度 の 寄 附 金 ⑵ ふるさと 納 税 活 用 による 地 域 活 性 化 の 先 行 事 例 制 度 創 設 からの 期 間 は 短 いものの 全 国 各 地 では 額 は 約 7 億 円 に 上 り 町 の 固 定 資 産 税 や 住 民 税 とほ ぼ 同 額 となった 1 学 校 教 育 法 第 1 条 に 定 められた 学 校 で 日 本 の 高 校 卒 業 資 格 を 得 ることができる

4.ふるさと 納 税 のメリット 課 題 ⑴ ふるさと 納 税 のメリット ふるさと 納 税 のメリットとしては 以 下 の3 点 が 挙 げられる( 図 表 7) 1については 前 述 したとおり 年 収 に 応 じた 上 限 額 の 範 囲 内 であれば 実 質 2,000 円 でふるさと 納 税 を 行 うことが 可 能 であり 控 除 金 額 分 は 住 民 税 等 に 還 付 される 2は 全 国 約 1,800 市 町 村 のうち 約 5 割 の 自 治 体 で 様 々な 魅 力 的 な 内 容 の 特 典 を 用 意 し ており 納 税 者 は 寄 附 金 額 に 応 じた 特 典 を 選 ぶ 楽 し みが 持 てる 3は 納 税 者 が 自 分 で 税 金 の 使 い 方 を 指 定 し 自 然 保 護 や 医 療 福 祉 分 野 復 興 支 援 等 に 貢 献 することができる その 他 に 様 々な 事 情 により 転 居 転 勤 等 を 経 験 した 人 達 や 東 京 都 出 身 者 など ふるさとを 明 確 に 決 めることができない 人 達 でも 好 きな 自 治 体 を 選 んで 自 由 に 寄 附 をすることができる また 複 数 の 自 治 体 に 分 散 して 寄 附 を 行 い 特 典 を 複 数 の 自 治 体 から 受 け 取 ることもできる 図 表 7 3つのメリット 1 税 金 が 控 除 される 2 特 典 ( 特 産 品 )がもらえる 3 税 金 の 使 い 方 を 選 択 できる ものの 居 住 していない 自 治 体 に 納 税 することは 税 の 受 益 と 負 担 の 原 則 に 反 するのではないか と いう 議 論 があった この 問 題 を 解 決 するために 納 税 ではなく 寄 附 金 という 形 式 に 変 更 し 税 控 除 が 受 けられるようになった 経 緯 がある 次 に2では より 多 くの 寄 附 を 集 めようと 地 域 の 特 産 品 を 寄 附 の 御 礼 品 として 贈 る 自 治 体 が 増 え 自 治 体 間 の 競 争 が 過 熱 して 特 産 品 の 豪 華 合 戦 になっ てしまっており 2015 年 の 衆 議 院 予 算 委 員 会 でも ふるさと 納 税 で 過 度 に 高 額 の 御 礼 品 が 存 在 すること について 総 務 大 臣 から 良 識 ある 対 応 を 求 める 発 言 があった 旨 の 報 道 がなされている 納 税 者 が 豪 華 な 特 典 品 欲 しさに 寄 附 を 行 うことは ふるさとを 応 援 する 地 域 の 発 展 のために 志 を 贈 る という 本 来 の 趣 旨 からかけ 離 れてしまう 懸 念 もある 最 後 に3では 寄 附 を 受 ける 自 治 体 は 御 礼 品 の 充 実 よりも 寄 附 の 使 い 道 を 明 確 にし どのような 成 果 につながるのかを 説 明 することが 求 められてい る ふるさと 納 税 は 唯 一 寄 附 金 の 使 い 道 を 納 税 者 が 主 体 的 に 指 定 することができることから 税 の 使 い 道 が 見 える 制 度 となっている 全 ての 自 治 体 で 寄 附 金 の 使 途 を 選 択 できるわけではないが 今 後 は 御 礼 品 の 充 実 ばかりでなく 寄 附 金 の 使 い 道 の 多 様 化 を 図 ることで 納 税 者 の 選 択 肢 が 更 に 増 えること が 望 まれる ( 筆 者 作 成 ) 図 表 8 3つの 課 題 ⑵ ふるさと 納 税 の 課 題 ふるさと 納 税 の 課 題 としては 次 の3 点 が 挙 げら れる( 図 表 8) まず1は ふるさと 納 税 検 討 段 階 当 時 ふるさと 納 税 を 個 人 住 民 税 として 捉 えた 場 合 行 政 サービス は 自 分 が 現 在 住 んでいる 自 治 体 から 受 けることが 原 則 であるため ふるさと の 名 称 が 付 いてはいる 1 受 益 と 負 担 の 原 則 に 反 する 2 特 典 競 争 の 過 熱 3 ふるさと 納 税 の 使 途 が 分 かりにくい ( 筆 者 作 成 ) 日 経 研 月 報

おわりに ふるさと 納 税 は 創 設 されてから10 年 にも 満 たな いため 今 後 5 年 先 10 年 先 を 見 据 えた 発 展 など 新 たな 展 開 が 訪 れるかもしれない 地 域 が 消 滅 可 能 性 の 波 に 飲 み 込 まれないためには この 制 度 をきっ かけに 全 国 各 地 の 自 治 体 がふるさとの 価 値 や 魅 力 を 再 認 識 あるいは 発 掘 し その 価 値 を 多 様 な 活 動 体 によってブランド 化 するまでに 高 めて 行 けるかどう かに 懸 かっている 地 域 がブランド 化 されれば 国 内 外 を 問 わず 地 域 外 から 人 を 呼 び 寄 せることがで 域 である 震 災 前 に 仕 事 で 関 わっていただけに 何 か 支 援 ができないかとずっと 気 に 掛 かっていた ふ るさと 納 税 のおかげで 微 力 ながら 被 災 地 復 興 等 の ために 自 分 の 寄 附 金 が 役 に 立 てるのかと 思 うと 精 神 的 な 充 足 感 があり 復 興 を 目 指 して 前 向 きに 頑 張 っている 南 相 馬 市 へ 足 を 運 んでみたくなった ふ るさと 納 税 の 魅 力 は 特 典 だけではない 自 己 満 足 に 過 ぎないかもしれないが 自 分 で 寄 附 した 地 域 (ふるさと)への 愛 着 や 親 しみが 湧 いてくるから 不 図 表 9 風 土 産 業 の 醸 成 モデル き リピーターの 獲 得 にもつながり 資 金 の 循 環 も 生 まれ 地 域 の 自 立 性 を 養 うことができる 地 域 が 持 続 可 能 な 発 展 を 遂 げるためには 地 域 の (イメージ1) 人 歴 史 風 土 文 化 に 着 目 し 他 自 治 体 との 差 別 化 異 質 化 を 図 り 風 土 産 業 の 醸 成 に 努 めることが 肝 要 である( 図 表 9 参 照 ) かつて 昭 和 初 期 に 長 野 カネ モノ 県 で 活 躍 した 地 理 学 者 である 三 澤 勝 衛 は 日 本 各 地 で 風 土 を 生 かせ と 説 いて 回 っていたと 言 う その 根 底 には 風 土 という 有 価 値 無 価 格 の 物 をでき るだけ 生 産 過 程 に 織 り 込 んでいくことが 最 良 の 道 だ という 教 えがある 地 域 も 物 質 的 な 経 済 的 価 値 と 同 時 に 精 神 性 を 重 視 する 社 会 的 価 値 を 創 出 する 時 期 情 報 ( 筆 者 作 成 ) (イメージ2) 地 域 資 源 の 発 掘 step1 地 域 の 価 値 の 再 発 見 に 来 ているのではないだろうか 米 ハーバード 大 学 経 営 大 学 院 マイケルE ポーター 教 授 は この 社 会 的 価 値 を 創 出 する 動 きを 共 通 価 値 の 創 造 (CSV: Creating Shared Value)と 定 義 して 新 しい 資 本 主 義 を 生 み 出 す 源 泉 とした 実 際 に 自 分 自 身 でも 話 題 になっている 平 戸 市 ( 長 崎 県 )と 幼 少 の 頃 に 居 住 していた 鏡 野 町 ( 岡 山 県 ) 仕 事 で 訪 れた 南 相 馬 市 ( 福 島 県 )に 納 税 し た( 図 表 10 参 照 ) 最 初 は 手 続 きに 時 間 が 掛 かって 大 変 なのではないか と 思 っていたが ふるさと チョイス HP 内 から10 分 程 度 で 簡 単 に 申 し 込 むこと ができた 特 に 南 相 馬 市 は 震 災 で 被 害 を 受 けた 地 step2 step3 step4 step5 最 終 価 値 の 刷 り 合 わせ 情 報 の 共 有 多 様 な 活 動 体 によるブランド 形 成 価 値 を 高 める 域 外 から 人 を 呼 び 込 む 地 域 社 会 とのつながりを 生 み 出 す 風 土 産 業 の 醸 成 地 域 の 自 立 性 社 会 的 価 値 の 創 出 ( 心 の 豊 かさ 等 ) 持 続 可 能 な 地 域 社 会 へ ( 筆 者 作 成 ) 日 経 研 月 報

図表10 平戸市 長崎県 の寄附金受領証明書と特典カタログ 思議である 日常のささやかな出来事に過ぎない が 毎日の生活にも張りが出てきた 今 地方創生の前に ふるさとのもつ温もりや伝 高山一恵 森田悦子 有限会社ラケータ 2014年 初めてでもできる ふるさと納税 得とくガイ ド スタンダーズ株式会社 統などの無形の効用を見直し 心の豊かさにつなが 週 刊ダイヤモンド 初めて尽くしのインター校 る地域活動が求められているのではないだろうか 財界人やふるさと納税が支援 2014年8月30日 今後 地方創生の鍵となる可能性を秘めたふるさと 週 刊ダイヤモンド ふるさとを救うあの手この 納税から ますます目が離せなくなりそうである 手 2009年10月3日 週刊ダイヤモンド ふるさと納税はふるさとを救 参考文献 森永卓郎 2014年 年収300万円からのふるさと 納税 ぱる出版 日経研月報 2015.5 う!? 2009年10月3日 総務省 ふるさと納税研究会報告書 平成19年 10月