ポストコロナ時代に向けた国と地方自治体のデジタル近未来

Similar documents
JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

知創の杜 2016 vol.10

資料3

スライド 1

女性の活躍促進や仕事と子育て等の両立支援に取り組む企業に対するインセンティブ付与等 役員 管理職等への女性の登用促進 М 字カーブ問題の解消には企業の取組が不可欠 このため 企業の自主的な取組について 経済的に支援する 経営上のメリットにつなぐ 外部から見えるようにし当該取組の市場評価を高めるよう政

市町村における住民自治や住民参加、協働に関する取組状況調査

< F2D E968BC681698E968CE3816A817A C8250>

地方消費者行政強化作戦 への対応どこに住んでいても質の高い相談 救済を受けられる地域体制を整備し 消費者の安全 安心を確保するため 平成 29 年度までに 地方消費者行政強化作戦 の完全達成を目指す < 政策目標 1> 相談体制の空白地域の解消 全ての市町村に消費生活相談窓口が設置されており 目標を

☆表紙・目次 (国会議員説明会用:案なし)

Microsoft Word - 5_‚æ3ŁÒ.doc

クリアアサヒのソーシャルメディア上における調査

愛知県アルコール健康障害対策推進計画 の概要 Ⅰ はじめに 1 計画策定の趣旨酒類は私たちの生活に豊かさと潤いを与える一方で 多量の飲酒 未成年者や妊婦の飲酒等の不適切な飲酒は アルコール健康障害の原因となる アルコール健康障害は 本人の健康問題だけでなく 家族への深刻な影響や飲酒運転 自殺等の重大

PowerPoint プレゼンテーション

Ⅰ. 住基ネット活用のベネフィット試算結果 : 現状 183 億円 / 年 数年後には 917 億円 / 年 ( 内 国民への還元は 643 億円 / 年 ) Ⅰ 1 フェーズ Ⅰ( 既に実施済みの行政手続 ) の活用実態とベネフィット住基ネットを活用することにより 従来, 住民票の添付が必要とされ

2008年6月XX日

【日証協】マイナンバー利活用推進小委員会提出資料

平成 29 年 4 月 12 日サイバーセキュリティタスクフォース IoT セキュリティ対策に関する提言 あらゆるものがインターネット等のネットワークに接続される IoT/AI 時代が到来し それらに対するサイバーセキュリティの確保は 安心安全な国民生活や 社会経済活動確保の観点から極めて重要な課題

取組みの背景 これまでの流れ 平成 27 年 6 月 日本再興戦略 改訂 2015 の閣議決定 ( 訪日外国人からの 日本の Wi-Fi サービスは使い難い との声を受け ) 戦略市場創造プラン における新たに講ずべき具体的施策として 事業者の垣根を越えた認証手続きの簡素化 が盛り込まれる 平成 2

14 日本 ( 社人研推計 ) 日本 ( 国連推計 ) 韓国中国イタリアドイツ英国フランススウェーデン 米国 図 1. 1 主要国の高齢化率の推移と将来推計 ( 国立社会保障 人口問題研究所 資料による ) 高齢者を支える

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

Ⅰ. 経緯 国際金融コミュニティにおける IAIS の役割は ここ数年大幅に増加している その結果 IAIS は 現行の戦略計画および財務業績見通しを策定した際には想定していなかった システム上重要なグローバルな保険会社 (G-SIIs) の選定支援やグローバルな保険資本基準の策定等の付加的な責任を

テーマ :Twitter の現状と展望 酒井健吾 1. 調査の目的本稿は 新たなコミュニケーションツールとして台頭する Twitter の現状と展望に関する動向の概要を調査した上で Twitter が現在抱えている課題とその対策について検討する 2. 調査の概要 Twit

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

H28秋_24地方税財源

<4D F736F F F696E74202D E291AB8E9197BF A F82CC8A A390698DF42E707074>

第16回税制調査会 別添資料1(税務手続の電子化に向けた具体的取組(国税))

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

PowerPoint プレゼンテーション

寄附文化の醸成に係る施策の実施状況 ( 平成 26 年度に講じた施策 ) 別紙 1 < 法律 制度改正 > 総務省 ふるさと納税の制度拡充 ( 平成 27 年 4 月 1 日施行 ) 学校法人等への個人寄附に係る税額控除の要件の緩和 ( 平成 27 年 4 月 1 日施行 ) 特例控除の上限の引上げ

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

PowerPoint プレゼンテーション

PowerPoint プレゼンテーション

活動指標及び 活動指標標準仕様書 導入手順書策定数 ( 改定を含む ) 活動見込 31 活動見込 2 活動指標及び 活動指標 RPA 補助事業の完了数 活動見込 31 活動見込 5 活動指標及び AI 実証地域の完了数 活動指標 活動見込 31 活動見

トピックス

スライド 1

最終デジタル化への意識調査速報

PowerPoint プレゼンテーション

東日本大震災への対応 政府一体となって ハローワークを中心に被災者の就労を強力に支援 特別相談窓口での相談 ハローワークに特別相談窓口を設置 出張相談の様子 ( 福島労働局 ) 仮設住宅等への出張相談 仮設住宅等の入所者を対象として ハローワークからの出張相談を実施 雇用保険受給者実人員の推移 就職

テレワーク制度等 とは〇 度テレワーク人口実態調査 において 勤務先にテレワーク制度等があると雇用者が回答した選択枝 1 社員全員を対象に 社内規定などにテレワーク等が規定されている 2 一部の社員を対象に 社内規定などにテレワーク等が規定されている 3 制度はないが会社や上司などがテレワーク等をす

プレスリリース

<4D F736F F F696E74202D EF8B638E9197BF82CC B A6D92E894C5816A E >

世界最先端 IT 国家創造宣言 ( 平成 28 年 5 月 20 日閣議決定 ) ( 平成 27 年 6 月 30 日閣議決定 ) の変更 ( 抄 ) ( 抜粋 ) I. 世界最先端 IT 国家創造宣言に基づくこれまでの成果 1. これまでの代表的な成果 (2) マイナンバー制度を活用した国民生活の

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

[000]目次.indd

Microsoft Word Aプレスリリース案_METI修正_.doc

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

PowerPoint プレゼンテーション

目次 レポート 3. 概要 4. 主要なインサイト 5. 地域ごとの SEM 業界の支出増加率 6. 検索エンジンごとの SEM 業界の支出増加率 7. SEM 支出のシェア 8. Google の検索ビジネス売上予測 9. 世界全体での業界セクターごと SEM 支出増加 10. 世界全体でのディス

目次 広告に関する問題の再整理 2ページ 問題 1: 海賊版サイトへの広告出稿 配信の実態 3ページ 改善策 -- 海賊版サイトへの広告出稿 配信 4ページ 問題 2: アドフラウド ( 広告詐欺 ) の実態 5ページ 対応策 -- アドフラウド ( 広告詐欺 ) 6ページ 対策の進捗 CODA 提

1. 調査の目的 物価モニター調査の概要 原油価格や為替レートなどの動向が生活関連物資等の価格に及ぼす影響 物価動向についての意識等を正確 迅速に把握し 消費者等へタイムリーな情報提供を行う ( 参考 )URL:

視覚障害者がホームページを音声で読んで利用する場合に メニューのリンク先が分からない箇所があるなど 政党ホームページの利用に大きな支障がある問題を具体的に確認しています また 5 サイトについては全てのページに問題があることが確認されました ( 表 1 参照 ) 表 1: 団体別の達成等級 A に問

平成18年度標準調査票

2. 各検討課題に関する論点 (1) 費用対効果評価の活用方法 費用対効果評価の活用方法について これまでの保険給付の考え方等の観点も含め どう考 えるか (2) 対象品目の選定基準 1 費用対効果評価の対象とする品目の範囲 選択基準 医療保険財政への影響度等の観点から 対象となる品目の要件をどう設

また 関係省庁等においては 今般の措置も踏まえ 本スキームを前提とした以下のような制度を構築する予定である - 政府系金融機関による 災害対応型劣後ローン の供給 ( 三次補正 ) 政府系金融機関が 旧債務の負担等により新規融資を受けることが困難な被災中小企業に対して 資本性借入金 の条件に合致した

総合行政ネットワーク-9.indd

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

2014 年度事業計画書 2014 年 3 月 25 日 一般社団法人日本テレワーク協会 1

フ ァ ン ド の 特 色 ハイグレード ハイグレード オセアニア オセアニ ニア ボンド マザーファンド マザーファンド を通じて オーストラリア ドル建ておよびニュージーラ ドル建ておよびニュージーランド ドル 建ての 債券等 に投資します 債券等 には コマーシャル ペーパー等の短期金融商品を

ご参考資料 オーナー経営者経営者の意識調査 - 概要 - 調査期間 2003 年 9 月 1 日 ~10 月 31 日 調査機関日本では ASG グループが本調査の主体になり 日経リサーチ社に調査を委託した 調査の一貫性を保つために 各国のデータの取りまとめは 国際的な調査機関である Wirthli

統計トピックスNo.92急増するネットショッピングの実態を探る

JIPs_010_nyuko

スライド 1

Microsoft PowerPoint - ⑥藤田_ASISTシンポジウム【予稿集】.pptx

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

1 調査の目的 マイナンバーカード に関するアンケート 区政運営 区政会議 に関するアンケート 区の広聴事業 に関するアンケート 防災 に関するアンケート 防犯 に関するアンケート区民の皆さんに マイナンバーカード取得に関する事や 区政会議 広聴事業の取り組み 住之江区の防災 防犯についてお伺いし

2 保険者協議会からの意見 ( 医療法第 30 条の 4 第 14 項の規定に基づく意見聴取 ) (1) 照会日平成 28 年 3 月 3 日 ( 同日開催の保険者協議会において説明も実施 ) (2) 期限平成 28 年 3 月 30 日 (3) 意見数 25 件 ( 総論 3 件 各論 22 件

ための手段を 指名 報酬委員会の設置に限定する必要はない 仮に 現状では 独立社外取締役の適切な関与 助言 が得られてないという指摘があるのならば まず 委員会を設置していない会社において 独立社外取締役の適切な関与 助言 が十分得られていないのか 事実を検証すべきである (2) また 東証一部上場

untitled

【別紙】リーフレット①

総務省 放送事業の基盤強化に関する検討分科会 資料 4-4 ラジオ受信機 聴取状況に関するアンケート調査結果 ( 速報版 ) 2019 年 3 月 27 日 Copyright (C) Mitsubishi Research Institute, Inc. 本資料は 総務省からの ( 平成 30 年

1. 電子マネー 1 の保有状況等の推移二人以上の世帯について 電子マネーを持っている世帯員がいる世帯の割合をみると 電子マネーの調査を開始した平成 2 年以降 毎年上昇しています また 電子マネーを利用した世帯員がいる世帯の割合も上昇しており 平成 2 年には約 2 割でしたが 23 年には3 割

NICnet80

図 12 HACCP の導入状況 ( 販売金額規模別 ) < 食品販売金額規模別 > 5,000 万円未満 ,000 万円 ~1 億円未満 億円 ~3 億円未満

スライド 1

Bカリキュラムモデル簡易版Ver.5.0

我が国中小企業の課題と対応策

県医労.indd

新宿区は 外国人住民が全国で一番多く暮らす自治体で 全区民の 10% を超えています 地域別 全国 平成 26 年 1 月 1 日現在 住民記録人口総数 ( 人 ) 日本人住民人口 外国人住民人口 人数 ( 人 ) 割合 (%) 人数 ( 人 ) 割合 (%) 128,438, ,434

が実現することにより 利用希望者は認証連携でひもづけられた無料 Wi-Fi スポットについて複数回の利用登録手続が不要となり 利用者の負担軽減と利便性の向上が図られる 出典 : ICT 懇談会幹事会 ( 第 4 回 )( 平成 27(2015) 年 4 月 24 日 ) 2. 現状 日本政府観光局

<4D F736F F F696E74202D F193B994AD955C8E9197BF817A E338C8E8AFA8C888E5A82CC8A E518D6C8E9197BF815E C7694B C5816A2E >

<4D F736F F F696E74202D DC58F4994C5816A82732B825195D78BAD89EF95F18D908F9182CC8A E >

<4D F736F F F696E74202D E718E848F9194A05F96AF8AD497988A F896988E48F4390B32E707074>

20 21 The Hachijuni Bank, LTD.

(\212T \227v.xls)

資料 3 時代の要請を受けた 消費者保護の課題について 平成 31 年 4 月 経済産業省商務 サービスグループ 商取引監督課

構成 1 第 1 章 IoT 時代の新たな地域資源 1. IoT 時代の新たな地域資源とその可能性 2. 新たな地域資源の活用に向けた基本的視点 第 2 章地域におけるオープンデータ ビッグデータ利活用の推進 1. 地域におけるオープンデータ利活用の現状と課題 2. 地域におけるビッグデータ利活用の

1. 口座管理機関 ( 証券会社 ) の意見概要 A 案 ( 部会資料 23: 配当金参考案ベース ) と B 案 ( 部会資料 23: 共通番号参考案ベース ) のいずれが望ましいか 口座管理機 関 ( 証券会社 ) で構成される日証協の WG で意見照会したところ 次頁のとおり各観点において様々

TPT859057

つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

第14回税制調査会 総務省説明資料(・地方税務手続の電子化等2・個人住民税2)

Taro-1形成を戦略的に

4 研修について考慮する事項 1. 研修の対象者 a. 職種横断的な研修か 限定した職種への研修か b. 部署 部門を横断する研修か 部署及び部門別か c. 職種別の研修か 2. 研修内容とプログラム a. 研修の企画においては 対象者や研修内容に応じて開催時刻を考慮する b. 全員への周知が必要な

地域包括ケア構築に向けた実態調査の実施 ひとり暮らし高齢者 高齢者のみ世帯 の全てを訪問形式で調査 地域全体で生活支援等必要なサービス内容を検討 H24 年度 H24.7 月 ~ひとり暮らし実態調査 ( 訪問 ) 集計 解析 ( 名古屋大学 )1 H 福祉を考える集会 ( 住民 関係者

四国地方 主要8行の預金・貸出金等分析(2017年第2四半期(中間期)決算)

1 検査の背景 (1) 日本年金機構における個人情報 情報システム及び情報セキュリティ対策の概要厚生労働省及び日本年金機構 ( 以下 機構 という ) は 厚生年金保険等の被保険者等の基礎年金番号 氏名 保険料の納付状況等の個人情報 ( 以下 年金個人情報 という ) について 社会保険オンラインシ

北村 吉弘 常務執行役員 兼 メディア ソリューションSBU SBU長 2

<4D F736F F F696E74202D A815B836895DB974C B28DB895F18D E368C8E937894C58DC58F4994C52E707074>

企業活動のグローバル化に伴う外貨調達手段の多様化に係る課題

平成27年国勢調査の5つのポイントと12の新たな取り組み

Transcription:

第 297 回 NRI メディアフォーラム資料 ポストコロナ時代に向けた 国 地方自治体のデジタル近未来 ~ 新型コロナ対応の教訓と今後の方向性 ~ 水石仁 グループマネージャー / 上席コンサルタント 株式会社野村総合研究所社会システムコンサルティング部ソーシャルデザイングループ 2020 年 10 月 13 日 JunMyong RA(NA)( 羅俊明 ) Senior Manager Eisuke Takahashi( 高橋英介 ) Senior Consultant NRI India Cross Functional Consulting Group

はじめに本日お伝えしたいこと 1. 新型コロナウイルス感染症に対する各国 地域や都道府県の対応を見ると 最大の教訓は緊急時の対応力 とりわけ スピードの重要性 である 2. 今後 世界中で感染対策と経済対策の両立に向けた難しい舵取りが求められる中 国や地方自治体は今起きている事象を的確に読み解き 最善と考えられる意思決定を可能な限り速く行うとともに 初期の仮説や判断にこだわらず 状況に応じて臨機応変に方策を変えていくことが重要となる 3. 本発表では 迅速な政策決定 事業執行を実現 推進する上で必要な方向性として以下の 4 つを提案する ❶ 実効性 透明性を担保するためのエビデンスベース ( 合理的根拠に基づく ) の政策決定 ❷ シビックテック * の活用による政策決定プロセスへの市民参加 ❸ デジタルエコシステム ** による新しい官民連携 ❹ アダプティブ ( 適応 ) 思考に基づく政策ポートフォリオの構築 4. 上記 4 つの方向性すべてに共通するのは デジタル技術とそれを支える制度 社会システムの重要性である 今後の不確実で変化の激しい社会において 国や地方自治体は 従来担ってきた公共の役割を維持しつつ スピードを重視した政策決定 事業執行を追求すべきであり 国 地方自治体のデジタル化が急務である * シビックテック (Civic Tech) : 市民自らがテクノロジーを活用して行政サービスや地域 社会の課題を解決する取組 ** デジタルエコシステム : デジタル基点で形成され 協調しながら競争する異業種融合型の事業生態系 ( ビジネスエコシステム ) 1

01 各国の対応に見る新型コロナ対応の教訓 02 国内新型コロナ関連施策に対する市民の声 03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 04 国 地方自治体におけるデジタル化の推進に向けて 2

01 各国の対応に見る新型コロナ対応の教訓有効な対策を早期に実行した国 地域では感染者増の抑制に成功 新型コロナに関する各国の対策実施時期と新規感染者数の推移 台湾韓国英国米国 中国旅客対応感染者追跡 PCR 検査体制 (* 米国は一部に限定 ) 中国からの旅客への対応 * 台湾 12/31 より武漢から直行便で到着する旅客に対する検疫を開始 経済活動制限 規感染者数(人/千人 日出所 )Johns Hopkins Univ. Coronavirus Resource Center World Bank Our World in Data より NRI 作成新財政支援 0.10 0.08 英国 0.06 0.04 0.02 )0.00 01/19 01/26 02/02 02/09 02/16 02/23 03/01 03/08 03/15 03/22 03/29 米国 韓国台湾 04/05 感染者追跡 PCR 検査体制 経済活動制限 財政支援 台湾 英国 1 月から全感染者を対象 韓国 2 月中旬から体制構築 台湾 2 月下旬から体制構築 台湾 2 月中旬から外出自粛要請 韓国 3 月初旬から外出自粛要請 台湾 韓国 財政支援策を速やかに発表し 市民の不安へ対処 * 台 韓 英 : 搭乗者の検疫実施 米 : 直近に中国訪問歴のある外国人の入国を禁止 3

01 各国の対応に見る新型コロナ対応の教訓台湾はSARSの経験を活かした早期の感染対策が奏功 台湾政府は 2019 年 12 月に中国武漢市で原因不明の肺炎が出現した情報を把握すると 12 月 31 日以降 武漢市からの渡航者に対する検疫を実施 その後 1 月下旬から出入国制限を開始した ( 人 ) 30 25 20 15 10 5 [1/22] 国内感染者初確認 [1/22] 中国湖北省への団体旅行 湖北省からの台湾訪問禁止 台湾での新型コロナ新規感染者数の推移と主な感染防止対策 [2/6] 国際クルーズ船停泊禁止中国からの台湾訪問禁止 [3/19] 外国人渡航禁止入国者在宅検疫 欧州 米国での感染拡大後の帰国ラッシュ発生 0 1 月 22 日 1 月 24 日 1 月 26 日 1 月 28 日 1 月 30 日 2 月 1 日 2 月 3 日 2 月 5 日 2 月 7 日 2 月 9 日 2 月 11 日 2 月 13 日 2 月 15 日 2 月 17 日 2 月 19 日 2 月 21 日 2 月 23 日 2 月 25 日 2 月 27 日 2 月 29 日 3 月 2 日 3 月 4 日 3 月 6 日 3 月 8 日 3 月 10 日 3 月 12 日 3 月 14 日 3 月 16 日 3 月 18 日 3 月 20 日 3 月 22 日 3 月 24 日 3 月 26 日 3 月 28 日 3 月 30 日 4 月 1 日 4 月 3 日 4 月 5 日 4 月 7 日 海外旅行感染症アドバイス第三級警告 不要不急の渡航自粛 14 日間の在宅検疫義務 [2/7] 中国 香港 マカオ [2/25] 韓国 [2/28] イタリア [3/2] イラン [3/14] 欧州等 27 か国 [3/16] 東欧 中東等 42 か国 [3/17] アジア等 20 か国及び米国 3 州 出所 ) 伊豆陸 (NRI 台湾 ) SARSの経験を土台にデジタル活用で先手を打つ台湾の新型コロナウイルス対策 (NRI 新型コロナウイルス対策緊急提言 ) 4

01 各国の対応に見る新型コロナ対応の教訓 韓国はMERSを教訓に初期段階から検査 接触追跡 隔離を徹底 2015年MERS流行の教訓 緊急時に備えた法整備 承認前検査キット CCTV履歴 位置情報 感染者所在地 ラボでの 使用許可 保健当局の アクセスを許可 地方自治体 による開示 接触追跡 機動的な予算配分と執行 クレカ履歴 GPSデータ収集 検査キット大量生産 検査拠点拡充 ドライブスルー式検査 10万個/日 全国 約650カ所 処理量 約10件/時間 隔離 全ての感染疑惑者のゼロトレランス*隔離 対策予算の50%超をIT スタッフの人件費に重点配分 追跡スタッフ の派遣 検査 初期段階からの徹底的検査 市民への 情報提供 入国者向け 隔離病床確保 症状登録 アプリケーション 民間企業施設を 隔離施設に転換 * ゼロトレランス 不寛容を是として詳細な罰則を定め 違反した場合は厳密に処分を行う方式 出所 各種公表情報よりNRI作成 Copyright C Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 5

01 各国の対応に見る新型コロナ対応の教訓感染拡大国の実質 GDP 成長率は対前年同期比で大幅にマイナス 各国の四半期実質 GDP 成長率の推移 ( 対前年同期比 季節調整済 ) 10 [ % ] 棒グラフ : 左から 2019 年 3Q 4Q 2020 年 1Q 2Q(4 月 ~6 月 ) 5 3,2 0-0,6-5 -3,0-10 -15-6,8-6,3-9,1-10,0-11,3-13,0-20 -17,7-18,7-18,9-25 中国 台湾 韓国 オース 米国 日本 トリア ドイツ -21,7-22,1-23,9 カナダイタリアメキシコフランス英国スペインインド 出所 )OECD 台湾 : 行政院主計總處 インド 2Q: 統計計画実行省 (MoSPI) より NRI 作成 6

01 各国の対応に見る新型コロナ対応の教訓 感染対策と経済対策の両立 に向けた難しい舵取りが求められている 米国における新型コロナ新規感染者数と失業給付申請件数の推移 [ 人 / 千人 日 ] 新規感染者数 (14 日移動平均 ) [ 左軸 ] 失業給付申請件数 [ 右軸 ] [ 千件 / 週 ] 100 80 感染対策優先 経済対策を模索 ( ロックダウン + 経済刺激策 ) 経済対策優先 ( ロックダウン解除 ) 感染対策優先 or 経済対策優先 or 両方? ( ジレンマとの闘い ) 10,000 8,000 60 6,000 40 4,000 20 2,000 0 0 03/01 03/08 03/15 03/22 03/29 04/05 04/12 04/19 04/26 05/03 05/10 05/17 05/24 05/31 06/07 06/14 06/21 06/28 07/05 07/12 07/19 07/26 08/02 08/09 08/16 08/23 08/30 [3/19] カリフォルニア州等でロックダウン開始 [3/27] 経済刺激策発表 (CARES 法 ) [4/16] 経済活動再開に向けたガイドライン公表 [5/8] カリフォルニア州等でロックダウンの段階的解除を開始 [6/26] テキサス州 フロリダ州で飲食店への制限再開 [7/1] カリフォルニア州で飲食店 映画館等 3 週間閉鎖へ [8/8] 大統領令により失業給付金上乗せ延長 出所 )Johns Hopkins Univ. Coronavirus Resource Center 米国労働省より NRI 作成 7

新型コロナ対応における最大の教訓は緊急時の対応力 とりわけ スピードの重要性 8

01 各国の対応に見る新型コロナ対応の教訓 02 国内新型コロナ関連施策に対する市民の声 03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 04 国 地方自治体におけるデジタル化の推進に向けて 9

02 国内新型コロナ関連施策に対する市民の声ソーシャルリスニングにより新型コロナ関連施策に対する市民の声を分析 ソーシャルリスニング (Social Listening) とは 注 各施策の良し悪しを評価することを意図したものではない インターネット上のメディア ( 記事 SNS 等 *) で人々が日常的に語っている会話や自然な行動に関するデータを自動的 機械的に収集し その分析結果によって業界動向把握やトレンド予測 自社 ブランド 商品に対する評価 評判の理解や改善に活かす手法のこと * 各種新聞 雑誌 テレビのインターネット配信 Yahoo! ニュース YouTube Twitter Facebook 等が対象 10

02 国内新型コロナ関連施策に対する市民の声 新型コロナウイルス感染症関連施策に関する調査 の実施概要 調査概要 調査名 調査時期 分析対象 新型コロナウイルス感染症関連施策に関する調査 2020年8月 日本国内における 各種新聞 雑誌 テレビのインターネット配信 Yahoo!ニュース YouTube Twitter Facebook等のメディアを対象 分析ツール Talkwalker 対象施策と期間 1 布マスク全戸配布 2020/1/1-6/30 2 特別定額給付金 2020/2/1-7/31 3 外出自粛要請 2020/2/1-7/31 4 休業要請 2020/2/1-7/31 5 接触確認アプリ 2020/4/1-8/10 6 Go To キャンペーン 2020/5/1-8/25 本資料の読み方について 本資料に掲載する構成比は 小数点以下第1位を四捨五入しているため 合計が100 にならない場合がある 特に断りがない場合 日本全国を対象としている Copyright C Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 11

02 国内新型コロナ関連施策に対する市民の声 1 布マスク全戸配布布マスク配布については スピード に関するネガティブな反応が特に大きい 記事 ( 新聞 雑誌 Web 等 ) や SNS における 布マスク に関する言及において スピード が負の感情 ( ネガティブセンチメント ) を発生させる大きな要因となっていた 特に言及の多かった 素材 品質 と スピード に関する言及の示す正負の感情 ( センチメント ) の比較 素材 品質 スピード ( 期間 :2020/1/1-6/30) 29% 11% 9% 45% ( 言及数 ) ( 言及数 ) 327,499 347,103 Positive Neutral Negative ( 正 ) ( 中立 ) ( 負 ) 46% 59% 注釈 ) 各記事や SNS 投稿の言及内容を AI で分析し ポジティブな反応 ネガティブな反応 中立的な反応をセンチメント ( 感情 ) で分類 出所 )NRI 新型コロナウイルス感染症関連施策に関する調査 (2020 年 8 月 ) 12

02 国内新型コロナ関連施策に対する市民の声 1 布マスク全戸配布政府発表から10% 配布までの1カ月半の間に 遅い 不要 の声が急増 布マスクに関する政府アクション及び 配布遅延 マスク不要 の言及数の推移 政府アクション ( 件 ) 55,000 50,000 45,000 40,000 35,000 [4/1] 政府発表 [4/17] 配布開始 (0 枚 ) [5/18] 約 10% 完了 (1,450 万枚 ) [6/15] 概ね 100% 完了 (1 億 2,000 万枚 ) ( 期間 :2020/1/1-6/30) 配布遅延 ( スピード ) の言及数マスク不要の言及数 言及数 30,000 25,000 布マスク配布とともに不要の声は縮小 20,000 15,000 10,000 5,000 店頭へのマスク供給が回復し 不要の声が拡大 0 03/22 03/29 04/05 04/12 04/19 04/26 05/03 05/10 05/17 05/24 05/31 06/07 06/14 06/21 06/28 07/05 07/12 出所 )NRI 新型コロナウイルス感染症関連施策に関する調査 (2020 年 8 月 ) 13

02 国内新型コロナ関連施策に対する市民の声 2 特別定額給付金 10 万円給付も スピード に対するネガティブな反応が最も多い 政府は 4 月 20 日に特別定額給付金 (10 万円 ) の給付を閣議決定し 4 月 30 日に予算成立したものの 大都市を中心に給付の遅れが目立ち スピード や 手続き 関連の負の感情 ( ネガティブセンチメント ) が増加 各評価軸ごとの正負の感情 ( センチメント ) の比較 ( 期間 :2020/2/1-7/31) Positive( 正 ) Neutral( 中立 ) Negative( 負 ) ( 言及数 ) スピード 12% 56% 32% 3,870,407 手続き 8% 66% 26% 534,938 予算 6% 74% 21% 984,970 金額 18% 63% 19% 3,681 出所 )NRI 新型コロナウイルス感染症関連施策に関する調査 (2020 年 8 月 ) 14

02 国内新型コロナ関連施策に対する市民の声 2 特別定額給付金米国は納税データ 韓国はカードデータを活用し 迅速な給付を実現 新型コロナ対応における各国の給付金制度 運用状況の比較 米国韓国日本 給付決定時期 3 月 27 日大統領署名 4 月 30 日 5 月 11 日 国会で予算成立申請受付開始 4 月 30 日 5 月 1 日 国会で予算成立申請受付開始 給付内容 一人世帯は 1,200 ト ル ( 約 13 万円 ) 夫婦の場合は 2,400 ト ル ( 約 25 万円 ) 子供一人につき 500 ト ル ( 約 5 万円 ) 追加 世帯を対象に 100 万ウォン ( 約 9 万円 ) 世帯規模 4 人以上の場合 個人を対象に 10 万円 受給要件 2018 年または 2019 年に確定申告した納税者 申請不要 ( 納税データから政府が判別 ) 全ての国民を対象 ( 所得要件なし ) 申請はカード会社 Web ページ または銀行 住民センター窓口 日本に住民登録を持つ全ての人を対象 国籍 所得要件なし 申請はオンラインまたは郵送 給付方法 銀行口座への入金 または小切手の郵送 クレジットカード口座へのポイント付与またはギフトカード プリペイドカードの支給 ギフトカード プリペイドカードの利用期限は 8/20 まで 申請者の銀行口座への入金 所要期間 4 月中旬から支給を開始し 1 週間で対象者全体の約 4 割に給付 申請受付開始から 9 日後 (5/19) の給付率 80% 21 日後 (5/31)98% 申請受付開始から約 1 か月後 (6/5) の給付率は 30.2% 予算総額に対する支給割合 出所 ) 米国下院歳入委員会 韓国行政安全部 総務省特別定額給付金ポータル 各種公表情報より NRI 作成 15

02 国内新型コロナ関連施策に対する市民の声 3 都道府県による外出自粛要請等各施策への反応の多くは負の感情が優っていたが 外出自粛要請 については正の感情と負の感情が同程度を占めた 国内における新型コロナ関連施策に関する正負の感情 ( センチメント ) の比較 10% Positive( 正 ) Neutral( 中立 ) Negative( 負 ) 51% 39% ( 言及数 ) 布マスク 6,672,992 ( 期間 :2020/1/1-6/30) Go To キャンペーン 6% 60% 34% 6,333,278 ( 期間 :2020/5/1-8/25) 休業要請 5% 61% 34% 3,359,712 ( 期間 :2020/2/1-7/31) 特別定額給付金 10% 61% 28% 28,513,310 ( 期間 :2020/2/1-7/31) 接触確認アプリ 9% 64% 27% 485,285 ( 期間 :2020/4/1-8/10) 外出自粛要請 20% 61% 20% 9,939,570 ( 期間 :2020/2/1-7/31) 出所 )NRI 新型コロナウイルス感染症関連施策に関する調査 (2020 年 8 月 ) 16

02 国内新型コロナ関連施策に対する市民の声 3 都道府県による外出自粛要請等独自基準で素早く対応した北海道 大阪では 外出自粛要請 に対するポジティブな反応がネガティブな反応を上回る 外出自粛要請に関する正負の感情 ( センチメント ) の地域別比較北海道大阪東京愛知 12% 8% 11% 14% 20% 18% 24% 28% ( 期間 :2020/2/1-7/31) Positive( 正 ) Neutral( 中立 ) Negative( 負 ) ( 言及数 ) ( 言及数 ) ( 言及数 ) ( 言及数 ) 110,906 193,483 741,323 29,526 59% 66% 74% 64% 2/26 2/27 からの一週間 全公立小中学校の全校休校を要請 2/28 独自の緊急事態宣言を発令週末の外出自粛を要請 3/19 大阪府 兵庫県間の往来自粛を要請 4/7 大阪府緊急事態措置を公表 3/25 週末の外出自粛を要請 4/10 東京都緊急事態措置を公表 4/7 7 都府県への移動自粛を要請 4/9 独自の緊急事態宣言を発令 出所 )NRI 新型コロナウイルス感染症関連施策に関する調査 (2020 年 8 月 ) 17

国や地方自治体は 今起きている事象を的確に読み解き 最善と考えられる意思決定を可能な限り速く行うとともに 初期の仮説や判断にこだわらず 状況に応じて臨機応変に方策を変えていくことが肝要 緊急時に限らず 今後の不確実で変化の激しい社会において 政策決定や事業執行の迅速性 ( スピード ) と敏捷性 ( アジリティ ) が一層重要になる 18

01 各国の対応に見る新型コロナ対応の教訓 02 国内新型コロナ関連施策に対する市民の声 03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 04 国 地方自治体におけるデジタル化の推進に向けて 19

03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例コロナ前の社会課題はポストコロナにおいてより深刻化する可能性コロナ禍により国や地方自治体に求められる対応スピードはさらに加速 コロナ前からの主な社会課題 ポストコロナにおける社会課題の変化 超少子高齢化社会への対応 国 地方自治体の危機的な財政状況 地域社会 コミュニティの衰退 自然災害の激甚化 など 産み控え等によりさらに人口減少 少子高齢化が加速する可能性 国債発行残高は過去最大を大幅に更新地方自治体の財政調整基金も激減 接触機会の減少により 地域社会 コミュニティの希薄化 孤独化が進行 自然災害 コロナの複合災害への対応が急務など 20

03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例国や地方自治体は 従来担ってきた公共の役割を維持しつつ 政策決定や事業執行のスピードとの両立を追求すべき A 政策決定のスピードを高める上で必要な方向性 1 2 実効性 透明性を担保するためのエビデンスベースの政策決定 ( 合理的根拠に基づく ) シビックテックの活用による政策決定プロセスへの市民参加 B 事業執行のスピードを高める上で必要な方向性 3 4 デジタルエコシステムによる新しい官民連携 アダプティブ ( 適応 ) 思考に基づく政策ポートフォリオの構築 シビックテック (Civic Tech) : 市民自らがテクノロジーを活用して行政サービスや地域 社会の課題を解決する取組 デジタルエコシステム : デジタル基点で形成され 協調しながら競争する異業種融合型の事業生態系 ( ビジネスエコシステム ) 21

❶ エビデンスベース エピソードベースから エビデンスベースの政策判断へ 政策決定にあたって 実効性 透明性の担保は大前提となる 起きている事象に対して迅速に政策判断を下す上では その判断の裏付けとなるエビデンス ( 合理的根拠 ) に基づく政策決定により 実効性に十分配慮することが重要となる また 最終的には結果がすべてという側面はあるが 公共の役割として その意思決定プロセスや判断材料は可能な限り広く社会にオープンにし 透明性を確保すべきである 一方で 実効性 透明性を担保するためにエビデンスをゼロから集めて政策決定をするのではスピードは逆に遅くなる この二律背反を超えるためには 即時性 ( リアルタイム性 ) の高いエビデンスが必要不可欠であり 迅速な政策判断を可能とするためのデジタルモニタリング機能の構築が極めて重要となる 22

ニタリングの精度 スピード03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 ❶エビデンスベース社会 経済状況のリアルタイムデータは迅速な政策決定の基盤 政府は 統計改革推進会議最終取りまとめ ( 平成 29 年 5 月 統計改革推進会議決定 ) 等を踏まえ EBPM(Evidence-based Policy Making エビデンスに基づく政策立案 ) を推進中 人海戦術のみによるモニタリングモ一般的なデータモニタリングの進化ステージ ( イメージ ) 現状における国 地方自治体の主なモニタリング範囲 データ抽出 分析を組み入れた手動モニタリング データ抽出 分析に RPA* を活用したモニタリング 定期的なデータモニタリング リアルタイムでの継続的モニタリング 予測分析を活用したモニタリング EBPM の推進にはモニタリング精度 スピードを高めることが重要 モニタリングの進化ステージ 出所 )Society5.0 における新たなガバナンスモデル検討会 GOVERNANCE INNOVATION Society5.0 の時代における法とアーキテクチャのリ デザイン ( 経済産業省 2019 年 ) より NRI 作成 * RPA(Robotic Process Automation): コンピュータ上で行われる業務プロセスや作業を人に代わり自動化する技術 23

03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 ❶エビデンスベース近年 即時性に優れる オルタナティブデータ の活用が拡大 オルタナティブデータ とは事例 JCB 消費 NOW( 開発 :JCB ナウキャスト ) 政府や企業が公式に発表する統計データや決算データ (= 伝統的データ ) の 代替 として活用できる IoT 機器や衛星画像 SNS の投稿 POSデータなどから得られる 非伝統的なデータ のこと JCBグループ会員の中からランダムに抽出した約 100 万会員の属性や決済情報に基づく消費指標 国の統計 ( 家計調査 商業動態統計等 ) が公表されるのは1カ月 ~1.5 カ月後であるのに対して 2 週間後に公表 出所 )JCB 消費 NOW 4/1 付プレスリリース EC スーパー百貨店コンビニエンスストア酒屋医薬品喫茶店 カフェ居酒屋航空旅客鉄道旅客映画館遊園地ビジネスホテルホテル 3/1-3/15 の消費指数の速報データ (4/1 公表 ) 前年同期比 (%) 4 14-9 -2 7 1 5-11 -14-11 -21-53 -12-3 24

03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 ❶エビデンスベース米国政府は週次で100 万世帯を対象にインターネット調査を継続実施 米国勢調査局は 4 月から毎週調査 (Household Pulse Survey) を実施し 雇用 所得 食料事情 健康等の最新状況をほぼリアルタイムに把握 新型コロナにより影響を受けた世帯への支援策に活用 Household Pulse Survey の Web ページ ( 例 ) 収集データ項目 1. 雇用 所得 2. 支出 3. 食料事情 4. 住宅 居住環境 5. 健康 6. 医療 診察状況 7. 教育環境 出所 ) 米国勢調査局 (https://www.census.gov/householdpulsedata) 25

03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 ❶エビデンスベース経産省もビッグデータを活用した新指標開発のための実証事業を推進 民間企業が保有する POS データ等のビッグデータを利活用して 既存の政府統計を補完 拡充 詳細化し 短期的な販売 生産動向を明らかにするための事業を 2019 年度より実施 経済産業省が公表している POS データに基づく小売販売動向 ( 前年同週比 例 ) 業態別 家電 出所 ) 経済産業省 (https://www.meti.go.jp/statistics/bigdata-statistics/bigdata_pj_2019/index.html) 26

❷ シビックテック (Civic Tech) 政官財による 鉄のトライアングル からの脱却 専門的な知識や情報は広く社会に分散しており 市民参加型の政策決定プロセスは判断の質を向上させる スピード重視の政策決定を推進しようとした場合 社会に分散した知識や情報を集約したり 社会的な合意形成を図るための時間が限られるというマイナスの側面が生じる 近年 シビックテック (Civic Tech) と呼ばれる市民自らがテクノロジーを活用して行政サービスの問題や地域 社会課題を解決しようという取組が注目されている シビックテックの活用により 市民が政策決定プロセスに主体的に関与することで 市井にある専門知識をスピーディに政策に反映させることができる 27

03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 ❷シビックテック市民の7 割は 国の政策に民意が反映されていない と認識 国の政策への民意の反映程度 ほとんど反映されていない わからないかなり反映されている 1% 15% 4% 28% ある程度反映されている 67% 52% あまり反映されていない N=5,392 出所 ) 内閣府 社会意識に関する世論調査 ( 令和 2 年 1 月調査 ) より NRI 作成 28

03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 ❷シビックテック 台湾ではシビックテックを用いて市民が立法プロセスに直接的に参加 vtaiwanの立法プロセス アルコール飲料のEC販売規制 Uber/Airbnb関連規 制 電動キックボードの公道走行規制など 利害を調整 する業界団体等が存在しないテーマについて すべての議 論 検討プロセスを市民に公開し 成果を政府に提案 ①提案準備段階 課題 課題の特定 関係者の特定 ②意見収集段階 参加者による質問 所管行政庁からの回答 専門用語の解釈 解説 わかりやすい コンテンツの作成 関係者の招待 市民への働きかけ 影響力や知識のある人 の特定 オンライン討議 ③意見反映段階 意見集約 論点整理 出所 vtaiwan Webページ https://info.vtaiwan.tw/ よりNRI作成 対面による 意見交換 文書化 ④立法段階 正式合意 Copyright C Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 29

03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 ❷シビックテック日本では Code for Japanが企業や行政 自治体と連携し 市民が主体となって地域課題を解決するためのわかりやすいITサービスを提供 Code for Japan: 市民が主体となり IT を使って創造的に社会をアップデートする ことを働きかけるシビックテックの団体 市民 企業 地域行政の課題解決 行政 自治体 Code for Japan の主な取組 <IT ソリューション > ソースコードは基本的にすべて公開 東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト VS COVID-19 アイディアボックス まもりあい JAPAN( 接触確認アプリ ) < データ整理 > OPEN EATS JAPAN( 飲食店データの標準フォーマット作成 ) 自治体のコロナ対策支援制度情報に係るデータの標準フォーマット作成 < 人材関連 > 民間人材派遣プログラム 地域フィールドラボ データ利活用人材育成研修 データアカデミー 等 出所 )Code for Japan Web ページ 30

❸ 新しい官民連携 2040 年問題とデジタルエコシステム 行政改革により国家公務員や地方公務員の数は大きく減少した さらに人口減少に伴い2040 年には今の半数の公務員で行政を支える必要があると言われている その中で各種施策 事業を迅速に実行 実現していくためには国や地方自治体だけでなく 民間企業の活力を最大限に活用した事業推進が不可欠である 近年 ビジネス領域では デジタルエコシステム と呼ばれる デジタルを基点に協調しながら競争する異業種融合型の事業生態系 ( ビジネスエコシステム ) が形成され データのつながりに着目した共有 再利用等により限界費用を限りなく小さくした新しいビジネスが大きく成長している 公共政策分野においても デジタルエコシステムを活用した機動的な協業により 特にビッグデータやIoT AI 等の最先端技術を用いたデジタル分野での官民連携を推進することで 事業執行のスピードを爆発的に高めることが可能である 31

03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 ❸新しい官民連携 台湾では官民が連携し 一元化された在庫管理システムの導入により 市民へのマスクの供給を確保 マスクの需給対策として 国民健康保険カード番号で購入実績管理を行う実名制販売を導入 SARS以来整備 してきた在庫管理システムを政府が改修 オープンデータ化し 民間の知恵 工夫 活力と組み合わさって実現 薬局のマスク在庫マップ 台湾 マスク販売方法の進化の経緯 台湾 時系列 購入場所 2月1日 マスク統一販売 コンビニ ドラッグストア 薬局で販売 購入ルール 身分証提示なし 一人一回3枚 混乱が大きかったため マスク販売は実名制に統一 約6,000店舗ある 健保特約薬局で販売 国民健康保険カードを提出 番号末尾の奇数 偶数で購入可能な 曜日を指定 3月12日 マスク実名制2.0 ネット予約可能 7日後にコンビニ受取り マスクのネット予約を開始 全国4大コンビニ 約1万店舗 で 受取可能 4月22日 マスク実名制3.0 コンビニ端末からの予約 が可能 2月6日 マスク実名制1.0 凡例 出所 伊豆陸 NRI台湾 SARSの経験を土台にデジタル活用で先手を打つ台湾の新型コロナウイルス対策 NRI新型コロナウイルス対策緊急提言 在庫なし 在庫 1 90枚 在庫 91 225枚 在庫 225枚以上 Copyright C Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 32

03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 ❸ 新しい官民連携米国オクラホマ州ではグーグルの協力を得てCC 処理能力を30 倍増強 新型コロナ流行に伴う失業保険給付手続きにおけるオクラホマ州政府とグーグルの連携事例 連携前 連携後 実施体制 テクノロジーの活用度無 ~ 低高 実施主体 技術支援 問い合わせ対応方法 コールセンタースタッフ 単純 / FAQ:AI ボット複雑 : コールセンタースタッフ 雇用保障委員会 クラウドチーム 申請処理数 1,500~2,000 件 / 週 60,000 件 / 週以上 失業保険のコールセンター業務に AI を導入 新型コロナの流行に伴い オクラホマ州雇用保障委員会のコールセンターは前例のないボリュームの問い合わせに圧倒されていた 委員会ホームページにコールセンターと連動した AI ボットシステムを導入することで 問い合わせ電話の効率的な仕分け 待ち時間の短縮 より複雑な問い合わせに対応する人員リソースの確保を実現することができた David Ostrow, Secretary of Digital Transformation & Admin, Oklahoma State コールセンターの 処理能力が 30 倍増加 州政府と市民のベネフィット失業者への待ち時間の短縮迅速な失業保険の給付 出所 )Google プレスリリース 各種公表情報より NRI 作成 33

03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 ❸新しい官民連携 厚労省はLINEと連携してクラスター対策のための情報収集 提供を実施 厚生労働省は 新型コロナ拡大を防止する取組を進めるため LINEと 新型コロナウイルス感染症のクラスター対 策に資する情報提供に関する協定 を締結 約8,300万人のアクティブユーザーに大規模なアンケート調査を実施 第1回 3/31-4/1 有効回答数 24,539,124人 第2回 4/5-4/6 有効回答数 24,673,670人 出所 厚生労働省Webページ LINE WebページよりNRI作成 第3回 4/12-4/13 有効回答数 23,779,431人 第4回 5/1-5/2 有効回答数 18,411,570人 第5回 8/12-8/13 有効回答数 15,393,822人 Copyright C Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 34

❹ 政策ポートフォリオ 保障領域を超えた実験的 挑戦的な機能 役割 公共の役割として 例えば医療 福祉や年金等については 行政が広く全体に対して確実に保障しなければならない これは ポストコロナにおいても不変的に重要な役割である 一方 今後の不確実で変化の激しい社会においては 保障領域を超えた実験的 挑戦的な試みの重要性が高まる 長期的な分析 計画策定に基づき事業を執行するだけでなく 変化の予兆を捉えて政策のポートフォリオを構築し 継続的な実験 実証の中で有望なものをさらに拡大展開するという アダプティブ ( 適応 ) 思考のアプローチである 研究開発支援やイノベーション スタートアップ支援などの政策テーマについては 100% 成功を担保することは不可能であり 実現可能性や事業性の事前評価に時間と労力をかけている間に海外諸国から取り残されてしまうといった状況も少なくない 事業実行を迅速に行うためには 一定程度の失敗を覚悟した上で 政策ポートフォリオを定めて政策を推進することが重要である 35

03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 ❹ 政策ポートフォリオ米国や英国は複数の有望ワクチンを対象に分散投資を進める 主要国によるワクチンの注文数と支払額 (2020 年 8 月 5 日時点 ) 米国のワープ スピード作戦 国 組織 米国 7.1 億回分 (93 億ト ル ) 投与回数 企業アストラゼネカ 12 億回分 目的 2021 年 1 月までに安全で有効なワクチン 3 億回分を確保 複数の有望なワクチン候補の早期実用化に向け 開発から承認 量産 備蓄を支援 EU 7 億回分 (8.4 億ト ル超 ) COVAX* 3 億回分 (7.5 億ト ル ) 英国 2.5 億回分 (6.9 億ト ル超 ) 日本 1.2 億回分 (n/a) ブラジル 1 億回分 (n/a) サノフィ / グラクソスミスクライン 4.6 億回分 ファイザー / バイオンテック 2.5 億回分 ノヴァヴァックス 1.1 億回分ジョンソン エンド ジョンソン 1 億回分ヴァルネヴァ 0.6 億回分モデルナ スキーム 投資 米国連邦政府と製薬企業等による官民連携スキーム ワクチンの研究開発と製造 ワクチン購入保証契約に約 100 億ドルを投資 * COVAX:WHO による国際共同購入プログラム 注釈 ) 取引詳細が開示されているものに限る 出所 )The Economist(https://www.economist.com/graphic-detail/2020/08/07/the-case-for-splurging-on-covid-19-vaccines) 出所 ) 米国保健福祉省より NRI 作成 36

03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 ❹ 政策ポートフォリオ日本は諸外国と比べてスタートアップ関連の公的資金投入が少ない スタートアップ関連の GDP あたり公的資金と VC マーケットの投資額の国際比較 GDP あたり公的資金の投資額 (-) GDP あたり VC マーケットの投資額 (-) 0,663 0,104 0,086 0,046 0,047 0,066 0,056 0,020 0,025 0,008 日本 米国 英国 フランス ドイツ 注釈 ) 日本の公的資金投資額は2016 年データ VCマーケット投資額は2018 年データ それ以外は2019 年データに基づく 出所 ) 各国政府公表情報 OECD World BankデータよりNRI 作成 37

03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 ❹ 政策ポートフォリオ今後 特にデジタル領域での積極的な挑戦が期待される 実験的 挑戦的な取組を支援するためには規制 制度面での後押しが不可欠 電話 オンライン診療に関する時限的 特例的な対応と実際に対応した医療機関数の推移 厚生労働省は4 月 10 日付の事務連絡において 新型コロナが拡大し 医療機関の受診が困難になりつつあることに鑑みた時限的 特例的な対応として 初診から電話やオンラインにより診断や処方をすることを可能とした 対応した医療機関 ( 全体 ) 割合 ( 全体 ) ( 機関 ) (%) 対応した医療機関 ( 初診 ) 割合 ( 初診 ) 18,000 [ 左目盛 ] [ 右目盛 ] 20 16,095 16,202 16,000 15,226 14,000 13.7% 14.5% 14.6% 15 12,000 10,812 10,000 9.7% 10 8,000 6,761 6,801 6,160 6,000 5.6% 6.1% 6.1% 3.9% 4,378 5 4,000 2,000 0 0 4 月 27 日 5 月末 6 月末 7 月末 注釈 )5 月末は 5 月 29 日 17 時時点 6 月末は 7 月 1 日 13 時時点 7 月末は 7 月 31 日 22 時時点の都道府県からの報告集計による それぞれの割合の分母は 医療施設動態調査 ( 令和 2 年 4 月末概数 ) における病院及び一般診療所の合計 (110,898 施設 ) 出所 ) 厚生労働省 令和 2 年 4 月 ~6 月の電話診療 オンライン診療の実績の検証について (2020 年 8 月 ) 38

01 各国の対応に見る新型コロナ対応の教訓 02 国内新型コロナ関連施策に対する市民の声 03 ポストコロナ時代に向けた対応の方向性と萌芽事例 04 国 地方自治体におけるデジタル化の推進に向けて 39

04 国 地方自治体におけるデジタル化の推進に向けて 4つの方向性に共通するのは デジタル技術 の重要性ポストコロナに向けて 国 地方自治体のデジタル化が喫緊の課題 4 つの方向性基盤としてのデジタル社会システム 1 エビデンスベース即時性の高い継続的なデジタルモニタリング 2 シビックテックデジタル技術の活用による市民の主体的な参画 3 新しい官民連携ビッグデータやIoT AI 等を活用した価値共創 4 政策ポートフォリオデジタル領域における実験的 挑戦的な仕掛け 40

04 国 地方自治体におけるデジタル化の推進に向けてコロナ下での政策事業推進においてデジタル技術の活用は不可欠 Go To キャンペーン において各想定シナリオで求められる対応 ( 例 ) A コロナ禍解消ソーシャルディスタンス断続的ステイホーム常時ステイホーム 特効薬やワクチンの開発等により感染症はほぼ終息し 感染拡大前と同様の生活に戻る B 局所的に小規模な感染症の流行はあるが ソーシャルディスタンスを保ちながらほぼ通常通りの生活ができる C 小規模な感染症の流行が高頻度で発生し 流行地域では外出や経済活動が制限される D 大規模な感染症の流行が続き 外出自粛要請がほぼ常時継続されるとともに 経済活動も大きく制限される 大規模キャンペーンを展開 なるべく遠方への外出を促し 地域にお金を落とす 当初想定していたシナリオ 近場への外出を中心にキャンペーン展開 店舗 施設の感染防止対策の徹底を条件 流行地域への外出はキャンペーン対象外 店舗 施設の感染防止対策の徹底を条件 外出を伴うキャンペーン実施不可 宅配 テイクアウト オンライン配信など巣ごもり消費に特化して支援 現実的に想定されるシナリオ デジタル技術の活用方策 ( 案 ) 1 2 3 感染状況や経営環境のリアルタイムなモニタリング オルタナティブデータの活用 課題察知 インフォデミック対応のためのソーシャルリスニングの活用 制度変更に合わせた給付 証憑確認 入金システムの構築と不正防止対策 4 迅速な問合せ対応のためのコールセンターへのAI 導入等 41

04 国 地方自治体におけるデジタル化の推進に向けて地域の実態 実情に応じた迅速な政策決定 事業執行が求められ 今後 地方自治体が担う役割はますます重要になる 新型コロナ対策に関する方針や基準に対する考え方 外出自粛要請や休業要請等 感染対策に関する方針や基準の策定について Aの考え方とBの考え方のうち どちらがあなたの考え方に近いですか A: 国の方針や基準に従うべき B: 地域の実態 実情に合わせて独自の基準や方針を策定すべき Aに近い Bに近い 11% 25% どちらかといえばAに近い 21% 68% 43% どちらかといえばBに近い N=8,832 居住する都道府県への期待 信頼が高くなった人の割合 新型コロナウイルス感染症の拡大に対する都道府県の対応を踏まえて 感染症拡大前に比べて行政や行政サービスへの期待 信頼がどのように変わりましたか 感染拡大前と比べて 居住する都道府県への期待 信頼が高くなった人の割合 ( 高くなった 少し高くなった と回答した人の合計) 全国平均 28% 鳥取県 66% 感染拡大に備えた病床数の拡充 全国初のドライブスルー方式 PCR 検査の導入 段ボールを使った三密対策等 ユニークな対策で県内の感染を抑制 福井県 50% 全世帯に 100 枚分のマスク購入権を配布し 4/24 から販売開始 和歌山県 49% 独自の PCR 検査基準の策定により 初期のクラスター感染の封じ込めに成功 N=8,832 北海道 57% 2 月下旬から学校の一斉休校要請 独自の緊急事態宣言等 全国に先駆けて対策を実行 大阪府 71% 休業要請の段階的解除に向けた独自基準 大阪モデル を策定するなど 臨機応変にわかりやすく方針を提示 0% 100% 出所 )NRI 新型コロナウイルス感染拡大に伴う生活意識 行動の変化に関するアンケート (2020 年 5 月 ) 42

04 国 地方自治体におけるデジタル化の推進に向けて新政権には 3つのデジタル基盤整備による新しい成長戦略に期待 1 共通デジタル ID( マイナンバーカード ) の普及 マイナポイント事業 によるマイナンバーカード交付後押し (9/1 時点 :2,469 万枚 (19.4%)) 健康保険証 運転免許証 国家資格証等との一体化による利便性の向上 2 デジタルガバメント ( 電子政府 ) の推進 あらゆる行政手続きの完全電子化の必要性 ( アナログとデジタルの混在の解消 ) 市民の生活満足度や企業の生産性向上の視点を踏まえたグランドデザイン 3 地方におけるデジタルケイパビリティの向上 コロナを奇貨として都心部ではテレワークが一気に進んだが 地方での実施率は 2~3 割程度 地方でも市民のデジタル受容度は高く 企業側のデジタル活用度の向上が課題 43

おわりに Build Back Better ( より良い未来に向けて ) 今後の不確実で変化の激しい社会においては 従来の公共の役割を維持した上で さらにスピードを重視した政策決定や事業執行が不可欠であり デジタル技術の活用によりこれらの両立が可能となる 国や地方自治体のデジタル化の必要性は以前から指摘されてきたが 新型コロナ拡大によりその流れが加速された NRI の調査研究では デジタル活用度合いの高い生活者ほど生活の満足度が高いことがわかっており デジタル技術の活用による施策の迅速な実行は市民のさらなる満足度向上にもつながる 他方 デジタル技術の活用は手段であり目的ではない したがって 意思決定者は目的や目指すべき姿を明確にすること 迅速な政策決定や事業執行の鍵は自身が握っていることを肝に銘じたい 欧州では Sustainable Recovery ( 持続可能な復興 ) と題し 単にコロナ前の社会に戻すのではなく 復興に合わせて Digital Transformation ( デジタル社会への変革 ) と Green Transition ( 環境配慮型社会への移行 ) を実現することを目指している コロナ前よりも持続可能で安全 安心なより良い未来を創造していくことが 国や地方自治体 ひいては我々市民の使命である 44

本発表に関する検討メンバー アドバイザー < 検討メンバー > < アドバイザー > 大江 秀明 コンサルタント社会システムコンサルティング部 Eisuke Takahashi( 高橋英介 ) Senior Consultant NRI India 河原 秀行 コンサルタント社会システムコンサルティング部 志村 太郎 主任コンサルタント社会システムコンサルティング部 岡野 翔運 副主任コンサルタント社会システムコンサルティング部 JunMyong RA(NA)( 羅俊明 ) Senior Manager NRI India 笹澤 恵 コンサルタント社会システムコンサルティング部 岡本 宗一郎 上級コンサルタント社会システムコンサルティング部 雪野 裕介 副主任コンサルタント社会システムコンサルティング部 < 資料提供 > 西崎 遼 副主任コンサルタント社会システムコンサルティング部 小林 庸至 上級コンサルタント社会システムコンサルティング部 出口 満 主任コンサルタント社会システムコンサルティング部 山崎 浩平 主任コンサルタントコーポレートイノベーションコンサルティング部 新美 雄太郎 副主任コンサルタント金融コンサルティング部 浅野 憲周 上席コンサルタント社会システムコンサルティング部 梶原 光徳 上級コンサルタントマーケットサイエンスコンサルティング部 徳重 剛 グループマネージャーコーポレートイノベーションコンサルティング部 霜越 直哉 主任コンサルタント社会システムコンサルティング部 三崎 冨査雄 パートナーコンサルティング事業本部 毛利 一貴 上級コンサルタント社会システムコンサルティング部 伊豆 陸 上級コンサルタント ICT メディア サービス産業コンサルティング部 和田 尚之 主任コンサルタント社会システムコンサルティング部 水石 仁 グループマネージャー / 上席コンサルタント社会システムコンサルティング部 樹 世中 主任コンサルタント社会システムコンサルティング部 45