作 成 日 2009 年 6 月 12 日 修 正 日 2009 年 月 日 1.エンドトキシンとは 2.エンドトキシン 試 験 の 種 類 と 種 々のライセート 試 薬 3. 使 用 器 具 について 4.エンドトキシン 標 準 品 について 5. 試 料 の 影 響 6. 参 考 資 料 (もっとよく 知 るために) 1/8
1.エンドトキシンとは エンドトキシンとは グラム 陰 性 菌 の 細 胞 壁 に 存 在 しているリポ 多 糖 (LPS)のことです 代 表 的 な 発 熱 性 物 質 であり pg(10-12 g)やng(10-9 g)という 微 量 でも 血 中 に 入 ると 様 々な 生 体 反 応 を 引 き 起 こします 耐 熱 性 であり オートクレーブ 処 理 程 度 では 失 活 しません 完 全 に 失 活 させるには 250 以 上 で 30 分 以 上 の 乾 熱 滅 菌 が 必 要 です グラム 陰 性 菌 が 生 息 す る 環 境 中 のあらゆる 場 所 ( 水 空 気 )に 存 在 し 菌 が 死 んでも LPS は 残 ります 図 1に 構 造 の 模 式 図 を 示 します リピド A 部 分 が 生 物 活 性 を 担 う 本 体 であり この 部 分 の 分 子 量 は 約 2 千 です 糖 鎖 部 分 を 含 んだ 全 体 は 通 常 分 子 量 5 千 から 8 千 程 度 です ただ し LPS は 親 水 性 部 分 ( 糖 鎖 )と 疎 水 性 部 分 (リピドA)を 持 つ 分 子 であるため 水 溶 液 中 で 会 合 し 見 かけの 分 子 量 が 数 十 万 ~ 数 百 万 のミセル 構 造 をとります ミセル 構 造 が 変 化 すると 生 物 活 性 の 強 弱 も 変 化 することが 報 告 されています 図 1 リポ 多 糖 の 構 造 模 式 図 2.エンドトキシン 試 験 の 種 類 と 種 々のライセート 試 薬 エンドトキシン 試 験 には カブトガニの 血 球 抽 出 物 から 作 られるライセート 試 薬 を 用 い ます ライセート 試 薬 の 反 応 機 構 を 図 2に 示 します Factor C, Factor B, Proclotting enzyme というセリンプロテアーゼの 前 駆 体 が エンドトキシンの 存 在 によって 順 次 増 幅 活 性 化 され 最 終 的 に 生 じる Clotting enzyme と 呼 ばれるプロテアーゼの 量 を 天 然 基 質 で ある coagulogen のゲル 化 濁 度 増 大 もしくは 合 成 基 質 の 切 断 による 黄 色 発 色 として 測 定 します 2/8
Endotoxin (LPS) Factor C Factor C (1 3)-β-D-Glucan Factor B Factor B Factor G Factor G Proclotting enzyme Clotting enzyme Coagulogen Coagulin (ゲル 化 濁 度 増 加 ) または 合 成 基 質 -pna 合 成 基 質 + pna( 黄 色 発 色 ) 図 2 ライセート 試 薬 の 反 応 機 構 通 常 のライセート 試 薬 は Factor G を 介 した 反 応 経 路 が 存 在 するため エンドトキシン に 加 えてβ-1,3-グルカン( 真 菌 の 細 胞 壁 構 成 成 分 )にも 反 応 します Factor G を 除 くか 作 用 をブロックすることで エンドトキシン 特 異 的 な 試 薬 を 調 製 する 技 術 が 開 発 されています 図 2の 反 応 機 構 を 利 用 した 種 々のライセート 試 薬 や 測 定 システムが 市 販 されています エンドトキシンを 測 定 する 際 には 必 要 な 精 度 試 験 の 頻 度 や 検 体 数 などを 考 慮 して 適 切 なものを 選 びます 日 米 欧 の 薬 局 方 や FDA ガイドラインには エンドトキシン 試 験 法 として ゲル 化 法 比 色 法 比 濁 法 の3つの 方 法 が 記 載 されています 以 下 それぞれの 方 法 について 解 説 し 対 応 する 弊 社 のライセート 試 薬 の 特 徴 使 用 例 について 述 べます (1) ゲル 化 法 試 験 管 中 でライセート 試 薬 と 検 体 を 混 合 し 37±1 で 60±2 分 間 振 動 を 与 えないように ブロックヒーターなどで 加 温 します 加 温 終 了 後 ただちに 試 験 管 をゆっくりと 180 転 倒 し 変 形 したり 崩 れたりしないゲルが 生 じていれば 陽 性 生 じていなければ 陰 性 と 判 定 します 検 体 を 等 倍 希 釈 ( 通 常 2 倍 段 階 希 釈 )す ることにより どの 希 釈 倍 数 まで 陽 性 判 定 されるかを 調 べます 陽 性 判 定 された 最 も 大 きい 希 釈 倍 数 (あるいは 最 小 濃 度 ) をエンドポイントと 呼 びます 陽 性 (+) 陰 性 (-) 対 応 試 薬 : J,Fシリーズ J は 日 局 対 応 試 験 が F は FDA 対 応 試 験 が 行 えるライセート 試 薬 です 両 者 ともにβ-1,3-3/8
グルカンにも 反 応 します 0.03 EU/mL と 0.25 EU/mL の 2 種 類 のゲル 化 感 度 の 商 品 があ り 管 理 したいエンドトキシン 濃 度 によってどちらかを 選 択 します また 1 回 の 測 定 分 の 試 薬 が 反 応 用 バイアルにあらかじめ 分 注 されているシングルタイプ と 溶 解 してから 反 応 用 試 験 管 に 必 要 量 小 分 けして 使 用 するマルチタイプの 2 種 類 があり ます 測 定 検 体 数 が 少 ない 時 はシングルタイプ 多 い 時 はマルチタイプの 使 用 をおすすめ します マルチタイプでは 反 応 用 試 験 管 に 0.1 ml の 溶 解 したライセート 試 薬 を 小 分 けし 続 い て 0.1 ml の 検 体 を 加 えて 混 合 します シングルタイプでは 凍 結 乾 燥 されたライセート 試 薬 が 入 った 反 応 用 バイアルに 0.2 ml の 検 体 を 加 えて 混 合 します ES-Ⅱシリーズ 日 局 対 応 試 験 が 行 える エンドトキシン 特 異 的 な(β-グルカンには 反 応 しない)ライセー ト 試 薬 です ゲル 化 感 度 は 0.015 EU/mL となります こちらもシングルタイプとマルチタ イプがあります HS-T シングル 日 局 対 応 試 験 が 行 えるシングルタイプのライセート 試 薬 です ゲル 化 感 度 は 0.0038 から 0.0313 EU/mL の 間 (ロットによって 異 なる)となります β-グルカンにも 反 応 します (2) 比 色 法 エンドトキシンによるライセート 試 薬 の 活 性 化 を 発 色 合 成 基 質 が 切 断 されることで 検 出 する 方 法 です P-ニトロアニリンの 黄 色 発 色 を 405 nm 付 近 の 吸 光 度 変 化 で 測 定 するため 検 体 が 405 nm 付 近 に 大 きな 吸 収 を 持 つと 適 用 できません カイネティック- 比 色 法 の 検 量 線 と 反 応 タイムコースの 例 リムルスカラーKY テストワコーを 使 用 トキシノメーターET-5000 で 測 定 4/8
対 応 試 薬 : カラーKY シリーズ 日 局 対 応 試 験 が 行 えるエンドトキシン 特 異 的 な 比 色 法 用 の 試 薬 です トキシノメーター (BL2 タイプ)と 組 み 合 わせてカイネティック- 比 色 法 が 行 えるシングルタイプと トキシ ノメーターに 加 えてマイクロプレートリーダーによるカイネティック- 比 色 法 測 定 にも 適 用 できるマルチタイプがあります また 弊 社 の 試 薬 の 中 では 検 出 限 界 が 0.0005 EU/mL と 最 も 低 濃 度 まで 測 定 できる( 高 感 度 )という 特 長 があります (3) 比 濁 法 エンドトキシンによるライセート 試 薬 の 活 性 化 をゲル 化 に 伴 う 濁 度 変 化 で 検 出 する 方 法 です 濁 りが 大 きい 検 体 には 適 用 できません カイネティック 比 濁 法 の 検 量 線 と 反 応 タイムコースの 例 リムルス ES-Ⅱテストワコーを 使 用 トキシノメーターET5000 で 測 定 対 応 試 薬 : J,F シリーズ, ES-Ⅱシリーズ HS-T シングル ゲル 化 法 で 紹 介 した J,F シリーズのマルチタイプや ES-Ⅱシリーズ HS-T シングルとト キシノメーターを 組 み 合 わせることにより カイネティック 比 濁 法 による 測 定 ができます これらの 試 薬 では 測 定 時 間 を 60 分 とすることで カイネティック 比 濁 法 のデータを 採 取 しながら ゲル 化 法 の 判 定 も 行 うことができます 各 試 薬 の 特 徴 を 表 1にまとめます 5/8
表 1 各 種 ライセート 試 薬 の 特 徴 ゲル 化 法 J,F シリーズ ES-Ⅱシリーズ HS-T シングル 比 色 法 比 濁 法 カラーKY シリーズ J,F シリーズ ES-Ⅱシリーズ HS-T シングル [ 記 号 の 意 味 ] : FDA 対 応 : 日 局 対 応 : シングルタイプ : マルチタイプ : エンドトキシン 特 異 的 ( 内 容 の 詳 細 は 参 考 資 料 (6)を 参 照 して 下 さい) 3. 使 用 器 具 について エンドトキシン 試 験 を 行 う 際 に 使 用 する 器 具 はエンドトキシン,β-グルカンフリーのも のを 使 用 しなければなりません 250 以 上 で 30 分 以 上 の 乾 熱 がエンドトキシン 不 活 化 に は 必 要 ですので 通 常 は 乾 熱 滅 菌 したガラス 器 具 を 使 用 します 微 量 に 溶 出 する 金 属 イオ ン(Fe, Al, Ga, Cr 等 )が 試 験 に 影 響 するので 金 属 製 器 具 の 使 用 は 避 けて 下 さい 使 い 捨 てのプラスチック 器 具 等 は メーカーによる 保 証 のあるものを 除 いて 1エンドトキシン の 汚 染 がない2エンドトキシンが 吸 着 しない 3 試 験 結 果 に 影 響 する 溶 出 物 がないことを ガラス 製 器 具 と 比 較 確 認 してからご 使 用 下 さい 6/8
4.エンドトキシン 標 準 品 について 行 おうとする 試 験 目 的 にあったエンドトキシン 標 準 品 をご 使 用 下 さい 医 薬 品 の 最 終 製 品 検 査 など 日 本 薬 局 方 に 準 拠 する 試 験 を 行 う 必 ず 日 本 薬 局 方 エンドトキシン 標 準 品 をご 使 用 下 さい 海 外 での 規 制 に 適 合 する 試 験 など FDA に 準 拠 する 試 験 を 行 う 必 ず USP の Reference Standard Endotoxin をご 使 用 下 さい 原 料 検 査 工 程 検 査 などを 行 う Control Standard Endotoxin(CSE)の 使 用 が 可 能 です 5. 試 料 の 影 響 エンドトキシン 試 験 を 実 施 する 際 には 試 料 が 試 験 におよぼす 影 響 ( 反 応 干 渉 因 子 )に 注 意 が 必 要 です 反 応 干 渉 因 子 は2 種 類 に 大 別 されます 1 ライセート 試 薬 に 影 響 するもの 蛋 白 変 成 作 用 のあるもの( 酸 アルカリ 尿 素 界 面 活 性 剤 有 機 溶 剤 ) プロテアーゼ プロテアーゼ 阻 害 剤 キレート 剤 ( 反 応 に 必 要 な Ca や Mg が 捕 捉 される) 比 色 法 の 場 合 着 色 物 質 (405 nm 付 近 に 大 きな 吸 収 を 持 つ 物 質 ) 比 濁 法 の 場 合 濁 り 2 エンドトキシンに 影 響 するもの 金 属 イオン(Fe, Al, Ga, Cr イオン 等 μm 程 度 でも 影 響 あり) 界 面 活 性 剤 試 料 の 影 響 の 有 無 は 既 知 量 のエンドトキシンを 添 加 した 検 体 を 測 定 し 添 加 したエン ドトキシン 量 の 回 収 率 を 求 める 試 験 によって 判 断 します 局 方 では 反 応 干 渉 因 子 試 験 と 呼 ばれている 試 験 です 添 加 したエンドトキシンの 回 収 率 が 50~200%の 範 囲 であれば 試 料 は 測 定 に 影 響 せず その 試 料 濃 度 で 測 定 したエンドトキシンの 濃 度 は 正 しいということにな ります 試 料 の 影 響 が 見 られた 場 合 試 料 を 希 釈 して 測 定 すると 影 響 を 軽 減 することがで きます ただし 試 料 を 希 釈 すると 原 液 換 算 ( 希 釈 する 前 の 液 )で 検 出 できるエンドトキシ ンの 濃 度 が 高 くなってしまいます 希 釈 可 能 な 倍 数 ( 最 大 有 効 希 釈 倍 数 )は 検 出 したい エンドトキシン 濃 度 と 用 いるライセート 試 薬 の 検 出 感 度 によって 決 まります( 反 応 干 渉 因 子 試 験 や 最 大 有 効 希 釈 倍 数 の 詳 細 は 日 本 薬 局 方 のエンドトキシン 試 験 法 を 参 照 して 下 さい) 6. 参 考 資 料 (もっとよく 知 るために) エンドトキシン 試 験 の 実 施 方 法 1 第 15 改 正 日 本 薬 局 方 4.01 エンドトキシン 試 験 法 (2008) 7/8
(http://jpdb.nih.go.jp/ip15/yakkyokuhou15.pdf) 第 1 追 補 (http://jpdb.nih.go.jp/ip15supp1/da1tuiho.pdf) 2 FDA guideline Guideline on Validation of the Limulus Amebocyte Lysate Test as an End-Product Endotoxin Test for Human and Animal Pare)nteral Drugs, Biological Products, and Medical Devices (1987) (http://www.fda.gov/downloads/biologicsbloodvaccines/guidancecomplianceregulatory Information/Guidances/Blood/UCM080966.pdf) エンドトキシンの 構 造 や 作 用 機 構 など 全 般 3 棚 元 憲 一 エンドトキシンと 医 薬 品 の 品 質 管 理 Bull. Natl. Inst. Health Sci., 126, 19-33(2008) (http://www.nihs.go.jp/library/eikenhoukoku/2008/019-033.pdf) 4 日 本 公 定 書 協 会 HP 技 術 情 報 http://www.sjp.jp/hyojun/html/frm071.php ライセート 試 薬 選 択 のために 5 和 光 純 薬 工 業 ホームページ エンドトキシン 測 定 装 置 専 用 試 薬 http://wako-chem.co.jp/me/01/reagent.htm エンドトキシン 試 験 法 http://wako-chem.co.jp/me/01/pdf/endotoxinem.pdf 8/8