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23 25 ラグビーワールドカップを 非 英 語 圏 で 開 催 するということ 開 催 都 市 の 受 け 入 れ 環 境 を 考 える Hosting Rugby World Cup 2019:Communication Issues in Japan, a Non-English Speaking Country 大 西 好 宣 1) ONISHI Yoshinobu Abstract In 2019, Japan will become the first Asian nation to host the Rugby World Cup(RWC). At the same time, RWC 2019 is the first of its kind in the sense that all matches will be held in one single non-english speaking country. According to research, very few Japanese people speak fluent English and many tourists who have visited Japan have been frustrated by the difficulty in communicating with locals. This paper, therefore, focuses on communication issues in rural areas of Japan, where fewer people understand English than in big cities. For the success of RWC 2019, it also refers to important lessons from the success of the FIFA World Cup in 2002, where even small cities in Japan could overcome communication issues by utilizing foreign students. キーワード:ラグビーワールドカップ コミュニケーション 英 語 留 学 生 地 方 都 市 Key words :Rugby World Cup, Communication, English, Foreign students, Local cities 1.はじめに 2015 年 秋 イギリスでのラグビーワールド カップ( 以 下 RWC)において 日 本 代 表 チーム はグループリーグで 3 勝 という 過 去 最 高 の 成 績 を 挙 げた 初 戦 の 強 豪 南 アフリカ 戦 の 勝 利 直 後 から 日 本 国 内 ではラグビーが 一 種 の 社 会 現 象 にまでなっている そのような 現 状 を 反 映 し 安 倍 首 相 は 2016 年 施 政 方 針 演 説 の 締 めくくり として 次 のように 述 べた i ラグビー 日 本 チームの 世 界 への 挑 戦 あ の 歴 史 的 な 勝 利 は 私 たち 日 本 人 に 大 きな 自 信 と 勇 気 を 与 えてくれました 1) 千 葉 大 学 2019 年 その RWC が 日 本 で 開 催 される ニュー ジーランドやオーストラリア イギリスといっ た いわゆる 伝 統 国 ではない 国 では 初 めて な おかつ 人 口 の 密 集 したアジアでの 初 めての 開 催 という 点 が 国 内 外 各 種 のメディアで 既 に 喧 伝 されている しかしながら 日 本 での 開 催 という 事 実 には もうひとつ 別 の 意 味 があり それについては 未 だもって 余 り 触 れられることがないようである その 意 味 とは 非 英 語 圏 での 開 催 という 点 で ある もちろん RWC はかつてフランスで 1991 年 と 2007 年 の 2 度 開 催 されたことがあるので 2019 年 の 日 本 は 非 英 語 圏 として 初 めての 開 催 ではない ただ 1991 年 はフランスだけでなく

26 24 イングランド スコットランド アイルランド ウエールズとの 共 催 であったし 2007 年 はス コットランド ウエールズでも 試 合 が 行 われた つまり 非 英 語 圏 のみで 全 試 合 を 消 化 すると いう 点 では 2019 年 の 日 本 が 初 めてなのである しかも 言 語 の 近 似 性 類 似 性 という 意 味 では フランス 語 は 英 語 に 比 較 的 近 く 日 本 語 はそう ではない したがって 2019 年 の RWC 日 本 開 催 は 選 手 や 観 客 の 誘 導 など 多 くの 点 でより 一 層 の 困 難 が 予 想 される 2019 年 開 催 時 に 試 合 会 場 となる 10 の 都 道 府 県 は 2015 年 イギリスでの RWC を 大 挙 して 視 察 した ii しかしながら 英 語 圏 において 何 度 そ のような 視 察 をしようとも 英 語 での 受 け 入 れ 準 備 をどのようにすれば 良 いかという 非 英 語 圏 ならではの 悩 みに 対 する 模 範 回 答 は 残 念 な がらどこにもないであろう そこで 本 稿 では 日 本 での RWC 2019 開 催 時 に おける 地 方 都 市 の 受 け 入 れ 環 境 という 観 点 か ら 英 語 を 中 心 とするコミュニケーション の 問 題 について 考 えてみたい 2. 本 稿 の 目 的 と 方 法 論 本 稿 の 目 的 は 2019 年 日 本 で 開 催 される RWC において 地 方 都 市 の 受 け 入 れ 環 境 は 整 ってい るのかどうか 整 っていないとすればどのよう な 方 法 が 考 えられるか について 英 語 と いうキーワードを 手 掛 かりに 考 察 しながら 明 ら かにすることである 具 体 的 には RWC という 巨 大 なスポーツイベ ントが オリンピック 等 に 代 表 される 他 の 類 似 イベントとどのように 異 なるのかなど その 特 徴 を 把 握 した 上 で (1) 日 本 が 抱 える 観 光 上 の 最 大 の 課 題 を 各 種 の データから 明 らかにする (2) また その 現 状 を 踏 まえた 上 で 最 も 緊 急 の 課 題 を 抱 える 地 域 を 抽 出 する (3) さらに 当 該 地 域 の 課 題 解 決 に 向 けた 実 行 可 能 な 提 言 を 行 う 3. 先 行 研 究 まず わが 国 を 訪 れた 外 国 人 観 光 客 に 対 する アンケート 調 査 としては 観 光 庁 が 2011 年 に 実 施 したものがある iii 当 該 調 査 では 旅 行 中 に 困 ったこと 最 も 困 ったこととしてそれぞれ 24 の 共 通 項 目 が 紹 介 されており 中 でも 割 合 の 多 かった 上 位 5 つは 表 1 のようになっている この 表 を 見 る 限 り 見 かけ 上 困 ったこと 最 も 困 ったことの 双 方 で 1 位 となったのは 無 料 公 衆 無 線 LAN 環 境 である 確 かに 2016 年 1 月 現 在 でも 日 本 には 大 都 市 を 含 めそのような 設 備 が 圧 倒 的 に 不 足 しており その 点 は 認 めな ければならないだろう そして そのこと 自 体 はわが 国 の 観 光 が 抱 える 課 題 として 各 種 のメ ディアにも 大 きく 取 り 上 げられた iv 表 1 日 本 を 訪 れた 外 国 人 旅 行 者 の 主 な 不 満 旅 行 中 困 ったこと % 無 料 公 衆 無 線 LAN 環 境 36.7 コミュニケーション 24.0 目 的 地 までの 公 共 交 通 の 経 路 情 報 の 入 手 20.0 公 共 交 通 の 利 用 方 法 ( 乗 り 方 ) 利 用 料 金 17.1 両 替 クレジットカード 利 用 16.1 旅 行 中 最 も 困 ったこと 無 料 公 衆 無 線 LAN 環 境 23.9 コミュニケーション 17.5 目 的 地 までの 公 共 交 通 の 経 路 情 報 の 入 手 10.5 両 替 クレジットカード 利 用 9.1 公 共 交 通 の 利 用 方 法 ( 乗 り 方 ) 利 用 料 金 7.3 出 典 外 国 人 旅 行 者 の 日 本 の 受 入 環 境 に 関 す る 不 便 不 満 p.2 v. しかしながら このアンケート 結 果 をさらに 注 意 深 く 見 ていくと そのような 報 道 とはまた 違 った 側 面 が 浮 かび 上 がってくる 例 えば 2 位 以 下 に 挙 げられている 3 つの 項 目 すなわち コミュニケーション 目 的 地 までの 公 共 交 通 の 経 路 情 報 の 入 手 公 共 交 通 の 利 用 方 法 ( 乗

25 27 り 方 ) 利 用 料 金 は いずれも 外 国 人 旅 行 者 と 現 地 の 日 本 人 との 意 思 疎 通 がうまくいかな かったことの 証 左 であると 考 えられる さらに この 表 にはないものの アンケート 結 果 として 6 位 以 下 に 挙 げられている 飲 食 店 情 報 の 入 手 ( 困 ったこと で 11.5%) 公 共 交 通 の 乗 り 場 情 報 の 入 手 ( 同 10.2%) 地 図 パンフレット( 多 言 語 )が 少 ない ( 同 9.8%) 割 引 チケット フリー 切 符 の 情 報 の 入 手 ( 同 9.4%)などは 全 て 日 本 人 とのコミュニケー ションが 困 難 であったからこそ 生 じた 諸 問 題 の 一 部 であると 見 なすことも 可 能 であろう そして それらの 数 値 を 足 し 合 わせれば 1 位 の LAN 環 境 よりも 遥 かに 大 きな 数 値 となり 外 国 人 観 光 客 が 旅 行 中 に 最 も 困 ったのは 実 は 口 頭 での 会 話 によるコミュニケーションの 問 題 だったと 結 論 づけることも 可 能 なのである 次 に 紹 介 するのはさらにその 事 実 を 裏 付 ける もので 日 本 で 学 んだ 留 学 生 の 事 例 である 彼 らの 滞 在 目 的 は 観 光 ではないものの 同 じよう にある 目 的 を 持 って 日 本 を 訪 れた 外 国 人 だとい う 点 で 共 通 項 がある 留 学 生 のうち 滞 在 期 間 が 1 年 以 上 に 及 ぶ 長 期 の 留 学 生 は 殆 どの 場 合 日 本 語 学 校 や 大 学 大 学 院 等 で 学 んでおり 基 本 的 には 日 本 語 を 理 解 することが 可 能 であると 推 測 される けれど も 残 る 短 期 (1 年 未 満 )の 留 学 生 は 必 ずしも そうではなく 主 として 英 語 で 日 本 事 情 を 学 ぶ ことが 多 い そのような 短 期 留 学 生 のみを 対 象 とした 調 査 として 東 京 工 業 大 学 の 佐 藤 (2011)による 貴 重 な 報 告 がある vi 当 該 アンケート 調 査 では 留 学 生 の 出 身 国 地 域 別 に 日 本 留 学 の 問 題 点 を 分 析 している そのうち 東 南 アジア 出 身 者 では 日 本 人 の 英 語 力 不 足 のため 十 分 なコ ミュニケーションができない が 最 大 の 問 題 と なっており 欧 州 出 身 者 においても 専 門 分 野 の 教 育 の 質 と 並 んで 大 きな 問 題 と 受 け 取 られ ている という つまり 観 光 地 ではない 場 所 なおかつ 通 常 は 知 識 の 集 積 地 であると 考 えられている 大 学 と いう 場 所 でさえ 日 本 人 の 英 語 力 のなさは 大 き な 障 壁 になっているという 重 要 な 指 摘 である では 日 本 人 の 英 語 力 は 国 際 的 に 見 てどのよ うな 位 置 にあるのだろうか このような 場 合 に よく 引 用 されるのは TOEFL と 呼 ばれる 米 国 留 学 のための 英 語 テストスコアの 国 際 比 較 である 同 テストの 実 施 団 体 である 米 ETS は 2014 年 のテスト 結 果 を 分 析 しており それによれば 日 本 語 を 母 語 とする 受 験 者 の TOEFL 平 均 点 は 120 点 満 点 中 の 70 点 vii と 比 較 的 低 い 点 数 を 示 して いる 残 念 ながら 英 語 圏 の 米 英 豪 といった 国 々 を 除 いても 世 界 の 国 別 上 位 100 位 以 内 には 入 っておらず アジア 圏 内 でも 下 位 に 位 置 する 因 みに 同 じアジアに 属 し 日 本 と 同 様 に 非 英 語 圏 でもある 韓 国 と 中 国 は このテストでそ れぞれ 84 点 77 点 を 獲 得 しており わが 国 よ りも 上 位 にある かつて 韓 国 については エ リートのみが 受 験 している(から 平 均 点 が 高 い) のだろうというような 揶 揄 もあったように 聞 く が 人 口 に 占 める TOEFL 受 験 者 の 割 合 は 今 やわ が 国 を 凌 いでおり そのような 非 難 には 全 く 正 当 性 がない また 読 売 新 聞 (2016a)の 報 道 によれば viii わが 国 の 外 務 省 は 2016 年 度 から 入 省 する 職 員 に TOEFL(iBT)で 100 点 以 上 ix の 獲 得 を 目 標 に 課 すことを 決 めたという 諸 外 国 に 比 較 し い ささか 遅 きに 失 したという 印 象 がなくもないが 同 報 道 ではまた 今 春 入 省 予 定 の 総 合 職 の 新 卒 内 定 者 約 30 人 のうち 内 定 時 の 達 成 者 は 3 割 程 度 とも 伝 えている 英 語 を 最 低 限 のツー ルとして 用 い 世 界 と 伍 して 行 かねばならない 日 本 人 外 交 官 でさえ 最 初 はこの 程 度 だという ことは 認 識 しておかねばならないだろう 日 本 人 の 英 語 力 という 点 について 民 間 機 関 Education First(EF)はさらに 興 味 深 いデータ を 提 供 してくれる EF は 世 界 70 か 国 で 独 自 の 英 語 テストを 実 施 しており 2015 年 の 報 告 書 に よれば 日 本 の 平 均 スコア(EF EPI)は 第 30 位 である 当 該 データが 興 味 深 いのは 他 に 類 を 見 ない 都 市 別 のスコアを 提 示 してくれている ことである( 表 2 を 参 照 ) それによれば 都 市 別 国 内 第 1 位 は 東 京 で その 平 均 スコアは 57.82 と 英 語 を 公 用 語 とす るインドの 58.21 と 比 べても 遜 色 がない カテ ゴリーとしても( 英 語 力 が) 高 い に 分 類 さ

28 26 れているのがその 証 拠 である 反 面 大 都 市 圏 でも 名 古 屋 だけは 52 点 台 地 方 に 至 っては 中 部 四 国 中 国 東 北 各 地 方 の 平 均 スコアは 全 て 51 点 台 で いずれも 低 い というカテゴリーに 分 類 されている EF は 必 ず しも 全 ての 都 市 で 調 査 を 実 施 したというわけで はなく その 意 味 で 不 完 全 とは 言 えるものの 結 果 から 一 定 の 傾 向 は 見 て 取 れる 表 2 日 本 の 都 市 地 域 別 英 語 平 均 スコア 順 位 都 市 / 地 域 名 EF EPI 分 類 1 東 京 57.82 高 い 2 横 浜 56.77 中 位 3 神 戸 56.07 中 位 4 大 阪 54.17 中 位 5 京 都 53.53 中 位 6 名 古 屋 52.40 低 い 1 関 東 56.60 中 位 2 関 西 55.06 中 位 3 北 海 道 53.37 中 位 4 九 州 52.67 中 位 5 中 部 52.46 低 い 6 四 国 51.83 低 い 7 中 国 51.78 低 い Rugby( 以 下 WR 旧 IRB) 及 び 各 種 メディアによ れば RWC とは 世 界 でのべ 40 億 人 余 りが 視 聴 す る 巨 大 なスポーツイベントで サッカーのワー ルドカップ( 以 下 FIFA WC) 夏 季 オリンピッ クに 次 ぐ 規 模 を 誇 るという オリンピックは 1) 一 都 市 集 中 型 で 2) 多 種 の 競 技 から 構 成 されている という 点 に 大 きな 特 徴 があり その 点 は 世 界 陸 上 も 同 様 の 性 格 を 持 つ これに 比 べ RWC は 4 年 に 1 度 の 開 催 と いうオリンピックとの 共 通 点 もあるものの 1) 複 数 都 市 分 散 型 の 開 催 を 基 本 とし 2)ラグビー というひとつの 競 技 のみに 特 化 したイベントで ある という 点 が 基 本 的 に 異 なっている 実 はこれらの 点 は FIFA WC でも 同 様 で RWC とは 4 年 に 1 度 の 開 催 という 点 も 含 め 共 通 点 が 多 い そこで 以 下 では 2002 年 に 一 足 早 く 日 本 で 開 催 された FIFA WC の 事 例 を 復 習 してみたい (2) FIFA WC との 比 較 以 下 の 表 3 は 2002 年 に 日 本 が 韓 国 と 共 同 で 開 催 した FIFA WC における 国 内 10 試 合 会 場 を まとめたものである 開 催 都 道 府 県 にある 最 大 都 市 の 人 口 の 多 い 順 に 上 から 並 べてある 次 に RWC 2019 の 試 合 会 場 をまとめたものが 下 記 の 表 4 である 両 大 会 共 に 東 京 や 横 浜 大 阪 といった 大 都 市 での 開 催 が 中 心 となってい るものの それだけではなく 大 分 や 静 岡 といっ た 地 方 での 開 催 も 複 数 ある 8 東 北 51.74 低 い 出 典 EF EPI 2015 Country Fact Sheet Japan ここから 言 えることは 東 京 を 筆 頭 とする 大 都 市 圏 では 英 語 に 関 する 受 け 入 れ 環 境 が 比 較 的 整 っている 反 面 ( 但 し 名 古 屋 を 除 く) 地 方 都 市 ではかなり 問 題 のある 状 況 だということで ある 4. 考 察 (1) オリンピックや 世 界 陸 上 等 との 相 違 さて この 章 では RWC のスポーツイベントと しての 特 徴 を 考 えてみよう 主 催 団 体 World

27 29 表 3 FIFA WC2002 試 合 会 場 x 都 道 府 県 スタジアム 名 収 容 人 員 域 内 最 大 都 市 の 人 口 備 考 神 奈 川 県 横 浜 国 際 総 合 競 技 場 70,000 3,718,942 横 浜 市 大 阪 府 長 居 スタジアム 50,000 2,695,983 大 阪 市 北 海 道 札 幌 ドーム 42,000 1,948,383 札 幌 市 兵 庫 県 神 戸 ウイングスタジアム 42,000 1,534,907 神 戸 市 埼 玉 県 埼 玉 スタジアム 2002 63,000 1,260,168 さいたま 市 宮 城 県 宮 城 スタジアム 49,000 1,076,030 仙 台 市 新 潟 県 新 潟 スタジアム 42,300 806,607 新 潟 市 静 岡 県 静 岡 スタジアムエコパ 50,600 789,614 浜 松 市 大 分 県 大 分 スタジアム 43,000 478,151 大 分 市 茨 城 県 鹿 島 サッカースタジアム 42,000 270,956 水 戸 市 表 4 RWC 2019 試 合 会 場 都 道 府 県 スタジアム 名 収 容 人 員 域 内 最 大 都 市 の 人 口 備 考 東 京 都 東 京 スタジアム 49,970 13,490,558 東 京 都 神 奈 川 県 横 浜 国 際 総 合 競 技 場 72,327 3,718,942 横 浜 市 大 阪 府 東 大 阪 市 花 園 ラグビー 場 30,000 2,695,983 大 阪 市 愛 知 県 豊 田 スタジアム 45,000 2,284,284 名 古 屋 市 北 海 道 札 幌 ドーム 41,410 1,948,383 札 幌 市 兵 庫 県 神 戸 市 御 崎 公 園 球 技 場 30,312 1,534,907 神 戸 市 福 岡 県 東 平 尾 公 園 博 多 の 森 球 技 場 22,563 1,532,803 福 岡 市 埼 玉 県 熊 谷 ラグビー 場 24,000 1,260,168 さいたま 市 静 岡 県 エコパスタジアム 50,889 789,614 浜 松 市 熊 本 県 県 民 総 合 運 動 公 園 陸 上 競 技 場 32,000 740,223 熊 本 市 大 分 県 大 分 スポーツ 公 園 総 合 競 技 場 40,000 478,151 大 分 市 岩 手 県 釜 石 鵜 住 居 復 興 スタジアム 16,187 299,137 盛 岡 市 競 技 の 普 及 をより 一 層 図 るためには 出 来 る だけ 多 様 な 都 市 会 場 で 試 合 を 開 催 することは 確 かに 望 ましいことである 反 面 受 容 能 力 (capacity)という 点 では こうした 地 方 都 市 に はハード( 宿 泊 飲 食 施 設 等 ) ソフト(ノウ ハウ 人 材 等 ) 共 に 不 安 も 付 きまとう FIFA WC と RWC とが 異 なる 点 としては 第 一 に 出 場 チームの 数 や 開 催 期 間 の 長 さが 挙 げられ る 2002 年 の FIFA WC には 32 チームが 出 場 し たが 2015 年 の RWC にはそのほぼ 6 割 に 当 たる 20 チームしか 出 場 していない もっとも 前 者 がほぼ 1 か 月 (5/31~6/30) で 終 了 したのに 比 べ 後 者 はたとえチーム 数 が 少 なくとも 試 合 間 隔 の 長 さから 大 会 終 了 ま でほぼ 1 か 月 半 (9/18~10/31)を 要 している そのため RWC 2019 においても 試 合 のレフリー

30 28 を 含 む WR 関 係 者 選 手 メディア 観 客 など この 大 会 のために 海 外 からやって 来 る 人 々がよ り 長 い 期 間 日 本 に 滞 在 するということは 理 解 しておかなければならない さらに 重 要 な 相 違 点 として 英 語 を 公 用 語 と するチームの 数 や 割 合 が 挙 げられる 2002 年 の FIFA WC には 全 32 チーム 中 アイルランド アメリカ イングランド カメルーン ナイジェ リア 南 アフリカの 6 チームのみが 英 語 を 公 用 語 とする 国 や 地 域 のチームであり その 割 合 は わずか 2 割 に 満 たない 一 方 2015 年 の RWC では 20 チーム 中 実 に 13 ものチームが 英 語 を 公 用 語 とする 国 や 地 域 の 代 表 であり その 割 合 は 6 割 を 超 える xi RWC における 英 語 の 重 要 性 は この 点 からも 明 らか であろう しかし そのような 幾 つもの 違 いはあるにせ よ RWC 2019 の 試 合 開 催 地 は 同 じ 都 市 分 散 型 の 巨 大 スポーツイベントである 2002 年 FIFA WC の 開 催 地 に 学 ぶべき 点 が 多 々ある 以 下 では 具 体 的 にあるひとつの 開 催 地 を 注 目 すべき 地 域 として 取 り 上 げ 2002 年 のどのような 点 を 学 ぶ べきかについて 考 えてみたい (3) RWC 2019 で 最 も 注 目 すべき 地 域 まず 表 3 及 び 4 からわかる 通 り 2002 年 の FIFA WC と RWC 2019 の 試 合 開 催 地 には 北 海 道 神 奈 川 県 埼 玉 県 静 岡 県 大 阪 府 兵 庫 県 な ど 重 複 している 地 域 が 複 数 ある これらの 地 域 は 2002 年 のレガシーを 2019 年 に 有 効 活 用 でき そうなので 本 稿 で 考 察 する 最 も 注 目 すべき 地 域 からはひとまず 除 外 する また RWC 2019 の 開 催 地 である 東 京 都 や 福 岡 県 愛 知 県 は 2002 年 の 経 験 こそ 持 たないもの の いずれも 大 都 市 圏 であり インフラの 整 備 状 況 などという 点 で 比 較 的 心 配 は 少 ないものと 考 え これらについても 本 稿 では 除 外 すること としたい すると 残 るのは 岩 手 県 である 同 県 は 2019 年 RWC において 最 も 人 口 の 少 ない 地 方 開 催 地 であると 共 に 2002 年 の 経 験 も 持 たないという 2 つのハンディを 負 っている さらに 前 章 で 見 た 通 り 地 方 都 市 特 に 東 北 地 方 の 英 語 力 は 国 内 でもかなり 低 いとされる これらの 点 で 岩 手 県 は RWC 2019 の 開 催 地 域 として その 成 否 が 最 も 注 目 される 場 所 である では 2002 年 の FIFA WC 開 催 時 最 も 人 口 の 少 ない 開 催 地 はいかにしてこの 一 大 イベントを 乗 り 切 ったのだろうか 表 3 によれば 2002 年 の FIFA WC において 最 も 人 口 の 少 ない 地 域 で 開 催 されたのは 茨 城 県 の 鹿 島 サッカースタジ アムである しかしながら 茨 城 県 は 首 都 圏 の 一 角 を 成 しており 東 京 や 横 浜 千 葉 埼 玉 な どからも 多 くの 人 的 物 的 経 済 的 資 源 の 助 け を 得 ていたはずで ここで 地 方 と 呼 ぶのは 余 り 適 当 ではないだろう 茨 城 県 の 次 に 人 口 が 少 なかった 地 域 は 大 分 県 で 事 実 上 この 地 域 こそが 2002 年 の FIFA WC における 最 も 小 さな 地 方 開 催 地 であった そこ で 以 下 では 岩 手 県 が 大 分 県 のどのような 部 分 を 学 ぶべきかについて 考 察 したい (4) 大 分 県 と 岩 手 県 の 対 比 2015 年 1 月 現 在 大 分 県 全 体 の 人 口 は 約 120 万 人 他 方 岩 手 県 のそれは 約 130 万 人 と 両 県 の 人 口 規 模 はほぼ 拮 抗 している さらに 大 分 県 は 100 万 都 市 福 岡 を 岩 手 県 は 同 じく 100 万 都 市 仙 台 をそれぞれ 隣 県 に 持 ち 立 地 或 いは 集 客 力 という 点 でもよく 似 た 状 況 にある 但 し 2002 年 FIFA WC における 大 分 スタジア ムが 43,000 人 収 容 と 標 準 的 な 大 きさだったの に 比 べ RWC 2019 における 岩 手 県 釜 石 市 のスタ ジアムは 16,000 人 余 りと 収 容 能 力 は 格 段 に 小 さい xii しかし だからといって 岩 手 県 は 少 し 手 を 抜 いて 良 いとは 誰 も 思 わないだろう 世 界 的 に 注 目 度 の 高 いスポーツの 公 式 試 合 を 開 催 すると いう 点 そのために 地 域 一 体 となって 怠 りなく 準 備 をしなければならないという 点 では 何 ら 変 わるところがないからである 次 の 項 では 2002 年 の FIFA WC において 大 分 県 がどのような 実 績 を 挙 げたのか 詳 しく 見 てみたい (5) 大 分 県 の 実 績 と 戦 略 性 2002 年 FIFA WC 開 催 当 時 大 分 県 では 大 会

29 31 開 催 前 からカメルーン 代 表 が 中 津 江 村 1 でキャ ンプを 張 っていた メディアではこのことが 大 きくクローズアップされ 県 民 のサッカー 熱 と 大 会 本 番 への 関 心 を 否 応 なく 盛 り 上 げた 大 会 本 番 では 大 分 県 で 次 の 3 試 合 が 行 われ いずれもコンスタントにほぼ 満 員 の 観 客 を 集 め た 3 試 合 平 均 では 92.0%という 高 い 収 容 率 で ひとつの 地 方 がこれだけの 数 の 集 客 とその 誘 導 に 成 功 したのは 見 事 と 言 うしかない 表 5 2002 年 の 大 分 県 での 試 合 と 観 客 数 ( 人 ) 日 程 試 合 観 客 数 グループリーグ 6/10 チュニジア 対 ベルギー 39,700 6/13 メキシコ 対 イタリア 39,291 決 勝 トーナメント 6/16 スウェーデン 対 セネガル 39,747 出 典 FIFA 統 計 等 大 分 県 が 幸 運 であったのは 学 生 の 半 数 が 留 学 生 教 員 の 半 数 が 外 国 籍 という 世 界 でも 稀 に 見 る 国 際 色 豊 かな 高 等 教 育 機 関 立 命 館 アジ ア 太 平 洋 大 学 (APU)が 大 会 直 前 の 2000 年 大 分 県 別 府 市 に 開 学 したことである 残 念 ながら 2002 年 当 時 は 開 学 してまだ 3 年 目 ということもあり 現 在 のように 大 学 院 ま で 含 めた 完 全 な 形 にこそなっていなかったもの の この 年 の 4 月 1 日 段 階 で 世 界 64 の 国 と 地 域 から 計 1,113 名 もの 留 学 生 が 既 に 同 大 で 学 んで いた xiii 2002 年 6 月 ワールドカップ 開 催 に 合 わせ APU は 国 際 ボランティアウィークと 題 したイベ ントを 催 す そこでは 多 くの 留 学 生 が 中 心 と なり 県 主 催 の 国 際 イベントにも 参 加 するなど ワールドカップ 開 催 を 契 機 とした 国 際 交 流 に 努 めると 共 に 大 会 自 体 のボランティアとしても 活 躍 した xiv 大 分 スタジアムでの 3 試 合 に 出 場 した 各 チー ムは いずれも 非 英 語 圏 の 国 代 表 である 日 本 人 ボランティアの 多 くは 英 語 で 対 応 したであろ 1 現 在 は 日 田 市 の 一 部 うが それ 以 外 の 言 語 についても 世 界 64 の 国 と 地 域 からやってきた 留 学 生 が 大 きな 役 割 を 果 たしたことは 想 像 に 難 くない 実 際 カメルーン 代 表 が 中 津 江 村 でキャンプ を 張 っていたことは 既 に 述 べたが 当 時 の APU にはそのカメルーンからも 2 名 の 留 学 生 がいた ワールドカップイヤーの 前 年 英 語 及 びフラン ス 語 を 公 用 語 とするこの 国 の 在 日 臨 時 代 理 大 使 が APU を 訪 問 し 当 時 の 坂 元 学 長 に 協 力 を 要 請 している xv 同 大 使 は 大 会 終 了 後 の 2002 年 10 月 にも 同 大 を 訪 れており これは APU の 協 力 に 対 するお 礼 の 意 味 もあったのだろう 大 分 県 には 他 にも 別 府 大 学 や 大 分 大 学 など 多 くの 留 学 生 を 抱 える 高 等 教 育 機 関 が 複 数 存 在 する そのため 佐 藤 (2012)によれば 2010 年 段 階 で 大 分 県 は 人 口 あたり 留 学 生 の 多 い 都 道 府 県 で 東 京 都 を 抑 え 堂 々の 第 1 位 であ る( 表 6 参 照 ) xvi このような 人 的 インフラが あってこそ キャンプ 地 としても 試 合 開 催 地 と しても 大 分 県 は 大 きな 成 功 を 収 めることがで きたのではないだろうか ワールドカップを 契 機 とした 県 内 サッカー 熱 の 盛 り 上 がりから この 年 のシーズン 同 県 の プロチーム 大 分 トリニータが J2 から J1 へと 昇 格 したのは 県 民 やサポーターにとって 嬉 しい 副 産 物 であった 大 分 県 における 2002 年 の FIFA WC 成 功 譚 を 語 るに 際 しては このような 事 実 も 忘 れてはなるまい さて 一 方 2002 年 の FIFA WC について 肝 心 の 開 催 自 治 体 自 身 はどのように 総 括 しているの だろうか これについては 経 済 産 業 研 究 所 の 広 瀬 (2004)が 大 会 の 1 年 後 に 実 施 した 全 て の 開 催 地 における 関 係 者 へのインタビューとア ンケート 形 式 による 興 味 深 い 調 査 があるので 紹 介 したい xvii 当 該 調 査 には 住 民 意 識 の 一 体 化 地 域 文 化 の 見 直 し など 計 25 の 質 問 項 目 がある 大 分 県 はその 多 くに 5 点 満 点 ( 効 果 絶 大 )の 評 価 を 与 えており 平 松 知 事 ( 当 時 ) 自 らインタ ビューで 100 点 満 点 で 120 点 と 答 えるなど 他 の 開 催 地 に 比 べて 高 い 自 己 評 価 が 目 につく 上 記 25 項 目 のうち 本 稿 の 目 的 と 最 も 関 係 の

32 30 深 い 外 来 者 観 光 客 数 の 増 加 という 質 問 項 目 に 対 しては 大 分 県 が 実 施 した 施 策 の 内 容 とし て 24 時 間 対 応 の 大 分 総 合 情 報 センター 並 びに 11 のサテライトインフォメーションを 設 け 英 語 フランス 語 スペイン 語 の 3 か 国 語 に 対 応 したとある 同 じく 大 分 県 が 高 い 評 価 を 与 えている ボ ランティア 活 動 参 加 者 の 増 加 という 項 目 では 1,140 名 の JAWOC(2002 ワールドカップ 日 本 組 織 委 員 会 )ボランティアと 909 名 の 現 地 ボラン ティアが 参 加 した とある これは 茨 城 県 で 開 催 された FIFA WC 本 番 のボランティアと ほ ぼ 同 等 の 数 である xviii 自 治 体 による 自 己 評 価 に 加 え 当 該 調 査 を 実 施 した 広 瀬 自 身 も 大 分 県 には 高 い 評 価 を 与 え ている 特 に 2002 年 の 成 功 を 一 過 性 のものと しないよう ワールドカップ 大 分 開 催 成 果 継 承 委 員 会 を 設 置 したことについて その 戦 略 的 な 対 応 という 点 で 特 筆 すべき と 称 え 小 規 模 の 地 方 都 市 でも 世 界 規 模 のイベントを 開 催 できることを 証 明 した と 最 大 級 の 賛 辞 を 送 っ ている 同 県 はまた 2019 年 の RWC でも 開 催 地 となっ ている 2002 年 の 開 催 経 験 が 様 々な 意 味 で 自 信 となり 同 市 を RWC 2019 開 催 地 の 立 候 補 へと 駆 り 立 てたのであろう 前 述 の ワールドカップ 大 分 開 催 成 果 継 承 委 員 会 の 存 在 も 大 きい 実 際 現 在 の 広 瀬 知 事 もメディアとの 会 見 でその ような 事 実 を 述 べており xix 今 のところ 長 期 の 多 様 な 戦 略 が 見 事 に 実 を 結 んでいるように 見 える 戦 略 的 な 対 応 という 意 味 では 知 事 (1979-2003)の 平 松 の 存 在 が 際 立 つ よく 知 ら れるように 平 松 はいわゆる 一 村 一 品 運 動 の 提 唱 者 であり 実 際 の 推 進 者 でもある 同 運 動 が 発 展 途 上 国 の 地 域 経 済 に 大 きく 貢 献 したという 理 由 で 平 松 は 1995 年 アジアのノーベル 賞 と 言 われるマグサイサイ 賞 も 受 賞 している 表 6 人 口 当 たりの 留 学 生 数 が 多 い 上 位 5 都 道 府 県 (2010 年 ) 都 道 留 学 生 数 人 口 千 人 中 の 順 位 府 県 ( 人 ) ( 万 人 ) 留 学 生 数 1 大 分 4,198 120 3.50 2 東 京 45,617 1,316 3.47 3 京 都 5,896 264 2.23 4 福 岡 9,665 507 1.91 5 石 川 1,804 117 1.54 出 典 佐 藤 (2012) 表 2 先 に 紹 介 した 経 済 産 業 研 究 所 の 調 査 に 対 して も そもそもワールドカップ 開 催 前 から 大 分 県 は 一 村 一 品 運 動 を 通 じてアフリカの 国 々など とも 付 き 合 いがあった 旨 の 自 信 に 満 ちた 記 述 があることも 注 目 されよう 平 松 はまた 日 本 やアジアの 人 材 作 りという 観 点 から APU 開 学 のためにも 奔 走 した xx プロサッカーチームの 大 分 トリニータが 任 意 団 体 大 分 フットボー ルクラブとして 誕 生 したのも 知 事 在 任 中 1994 年 4 月 のことであった このように 考 えて 来 ると 2002 年 大 分 県 に おける FIFA WC 誘 致 及 びその 実 施 が 成 功 したこ と それに 加 え RWC 2019 の 誘 致 にも 重 ねて 成 功 したことは 前 世 紀 末 からある 種 の 戦 略 性 を もって 継 続 的 かつ 周 到 に 準 備 された 計 画 の 当 然 の 帰 結 にすら 思 えてくる その 意 味 で この 項 のはじめに 大 分 県 が 単 に 幸 運 であった と 書 いたのは 些 か 正 確 ではない 表 現 かもしれない 5.まとめと 提 言 この 章 では RWC 2019 の 成 功 に 向 けて 開 催 地 岩 手 県 としてどのような 方 策 が 現 実 的 に 可 能 かを 考 えてみたい まず 岩 手 県 に 既 にあるものを 考 えてみよう 同 県 は かつてラグビー 日 本 選 手 権 を 7 連 覇 し その 圧 倒 的 な 強 さから 北 の 鉄 人 と 呼 ばれた 新 日 本 製 鉄 釜 石 チームのお 膝 元 であり 今 でも 釜 石 市 を 中 心 に ラグビー 熱 の 高 い 地 域 として 全 国 に 知 られる それゆえ RWC の 開 催 につい

31 33 ては 他 の 大 都 市 に 勝 るとも 劣 らぬ 地 元 の 人 々 の 強 い 支 持 がある 地 元 紙 の 河 北 新 報 は 同 じ 東 北 から RWC 開 催 地 に 立 候 補 した 仙 台 市 が 落 選 した 原 因 について 市 の 消 極 的 な 姿 勢 が 原 因 だと 報 じたが xxi この 点 で 岩 手 県 や 釜 石 市 はその 対 極 にあるとも 言 え よう このような 地 元 の 支 持 があることは イ ベント 開 催 の 基 本 でもあり 最 低 限 の 前 提 条 件 とも 言 える 次 にハードウエアはどうだろうか 試 合 会 場 となる 釜 石 鵜 住 居 復 興 スタジアム( 仮 称 )は 本 稿 執 筆 時 にはまだ 完 成 していないものの 河 北 新 報 の 報 道 によれば 総 事 業 費 31~32 億 円 の うち 敷 地 の 造 成 や 上 下 水 道 整 備 に 16~17 億 円 を 充 てる 方 針 と その 建 設 費 の 一 部 を 日 本 政 府 が 肩 代 わりして 支 援 することを 決 めたとい う xxii これによって 地 元 の 経 済 的 な 負 担 は 大 幅 に 減 じるであろう そうすると 残 るはソフトウエアである ソ フトウエアには 具 体 的 なノウハウやスキル そして 実 際 にそれらを 有 する 人 材 という 2 つの 側 面 がある 岩 手 県 や 釜 石 市 が 今 後 直 面 する 大 きな 課 題 はこのソフトウエアの 部 分 であろう この 点 は 岩 手 県 もよく 理 解 しているようで 現 在 のところ 一 定 規 模 の 国 際 スポーツイベン トの 開 催 経 験 を 積 もうと 努 力 している 例 えば 2014 年 9 月 には 同 県 北 上 市 において アジアマ スターズ 陸 上 競 技 選 手 権 大 会 が 開 催 された 岩 手 県 国 際 交 流 協 会 (2015)によれば 同 大 会 にはスリランカやインドなどから 外 国 人 ア スリート 1,000 名 近 くが 参 加 したという xxiii この 大 会 でボランティア 通 訳 として 陣 頭 指 揮 を とった 薄 衣 景 子 氏 によれば ボランティア 通 訳 は 留 学 生 や 研 修 生 を 含 む 106 名 岩 手 県 国 際 交 流 協 会 のメーリングリストで 集 めたという 最 も 必 要 とされた 言 語 はやはり 英 語 で ボラン ティア 通 訳 は 各 々 競 技 場 放 送 係 大 会 本 部 医 務 室 賞 状 配 布 表 彰 救 護 所 選 手 招 集 所 などで 活 躍 したとのことである xxiv ただ 実 際 にはそれら 公 式 の 業 務 以 外 にも インド 人 選 手 の 荷 物 が 空 港 に 届 かない 急 病 人 が 出 たため 救 急 車 に 同 乗 した などのあらゆる 突 発 事 項 への 迅 速 な 対 応 が 要 求 され ほんと に いろいろありました と 同 氏 は 述 懐 する 同 時 に だからこそ せっかく 集 まったボラン ティアの 皆 さんを 今 回 のアジアマスターズ 陸 上 だけで 終 わらせないで ラグビーのワールド カップや 次 のオリンピンクに 繋 げたい と 総 括 しているのは 頼 もしい こうした 人 材 の 供 給 源 として 岩 手 県 には 大 分 県 における APU のような 地 域 の 国 際 化 を 強 力 にリードする 高 等 教 育 機 関 は 見 当 たらないも のの 全 くいないわけではない 岩 手 県 におい て 最 も 多 くの 留 学 生 を 擁 するのは 国 立 の 岩 手 大 学 で 2014 年 5 月 1 日 時 点 で 25 か 国 1 地 域 からの 194 人 が 学 んでいる 先 に 紹 介 したアジ アマスターズ 陸 上 における 106 名 の 通 訳 ボラン ティアの 中 には 同 大 の 留 学 生 10 名 が 含 まれて いる xxv 岩 手 県 にはこのほか 同 県 が 運 営 する 岩 手 県 立 大 学 もあるものの 同 大 における 2015 年 5 月 1 日 現 在 の 留 学 生 数 は 計 17 名 のみ xxvi 潜 在 的 な 国 際 ボランティアのプールという 観 点 から 見 れば 2015 年 11 月 1 日 現 在 83 か 国 地 域 から 2,916 人 の 留 学 生 が 学 ぶ APU に 比 べ 絶 対 数 という 点 でも 出 身 国 地 域 の 多 様 性 という 点 でもかなり 心 もとない xxvii しかし そのような 現 実 を 所 与 の 条 件 として ありのままに 受 け 入 れるとすると 最 初 に 思 い つくのは 選 択 と 集 中 というアプローチである 時 間 や 人 的 物 的 経 済 的 資 源 が 限 られている のならば 少 ないとはいえ 既 に 存 在 している 留 学 生 や アジアマスターズ 陸 上 で 形 成 された 英 語 の 得 意 な 日 本 人 ボランティアのネットワー クに 時 間 と 資 金 を 集 中 投 資 し 出 来 るだけ 多 く の 優 秀 な 英 語 人 材 を 養 成 することが 現 実 的 な 選 択 肢 である また 読 売 新 聞 (2016b)の 報 道 によれば 日 本 政 府 による 新 たな 成 長 戦 略 の 検 討 項 目 として 外 国 人 留 学 生 の 活 躍 支 援 がそのひとつに 挙 げられており xxviii 留 学 生 の 活 用 はこうした 政 策 の 要 求 にも 叶 う 但 し 通 訳 ボランティア 養 成 のための 研 修 実 施 に 際 しては その 対 象 について 優 先 順 位 を 決 して 誤 ってはならない 例 えば 関 西 のある 私 立 大 学 は キャンパスの 国 際 化 に 対 応 するため

34 32 英 語 に 比 較 的 馴 染 みのない 事 務 職 員 数 名 を 対 象 に 海 外 で 2 週 間 に 及 ぶ 英 語 の 研 修 を 実 施 した 結 果 を 報 告 している その 総 括 として 山 下 (2015) xxix らは 英 語 能 力 自 体 より 英 語 を 話 す ことへの 抵 抗 が 無 くなったという 印 象 と 述 べ ており 仕 事 で 使 えるまでの 英 語 力 の 向 上 には 必 ずしも 結 びつかなかったことを 報 告 している ここから 得 られる 大 事 な 教 訓 としては 英 語 を 始 めとする 語 学 の 習 得 には 他 の 様 々なスキ ルと 比 較 した 場 合 より 一 層 の 時 間 が 必 要 であ るという 現 実 がある 東 京 大 学 の 酒 井 (2015) によれば 母 語 から 遠 い 外 国 語 を 仕 事 で 使 え るくらいにまで 読 めて 話 せるようになるには 2,200 時 間 の 学 習 が 必 要 だという xxx つまり RWC 2019 のための 人 材 養 成 としては こうした 悠 長 な 方 法 は 取 れないのである 例 え ば 最 初 に 紹 介 した 表 1 では 日 本 の 公 共 交 通 機 関 に 対 するコミュニケーション 上 の 問 題 が 指 摘 されていた このような 場 合 鉄 道 やバス 会 社 に 勤 める 地 元 の 公 共 交 通 システムについ ては 熟 知 するものの 英 語 は 不 得 意 だという 日 本 人 に 英 語 の 研 修 を 実 施 するよりも 公 共 交 通 システムについてはよく 知 らないけれど 英 語 は 話 せるという 留 学 生 を 選 んで 公 共 交 通 システムに 関 する 研 修 を 行 う 方 がより 簡 単 で 短 期 間 で 済 み 結 果 として 費 用 対 効 果 が 高 いの である 選 択 と 集 中 というアプローチの 利 点 は ここにある また こうした 研 修 を 実 施 するに 当 たっては 大 学 の 持 つ 資 源 やノウハウを 最 大 限 に 有 効 活 用 すべきであろう 例 えば 岩 手 大 学 では 2015 年 4 月 グローバル 教 育 センターが 新 たに 設 置 され その 主 たる 業 務 のひとつとして 学 外 と の 連 携 協 働 による グローバル 教 育 の 実 施 を 挙 げている xxxi RWC 2019 における 地 域 との 協 働 作 業 は その 実 践 として 大 いに 相 応 しい 試 みではないだろうか 2 番 目 の 現 実 的 な 方 策 は そうした 専 門 人 材 を 他 からも 求 めるということである 2002 年 の FIFA WC 日 本 開 催 時 には 国 内 の 大 会 組 織 委 員 会 から 多 くのボランティアが 各 地 に 派 遣 された RWC 2019 においてもそうした 試 みが 期 待 される その 際 岩 手 県 としては 特 に 英 語 に 堪 能 な 人 材 を 他 の 開 催 地 ( 特 に 大 都 市 )に 先 駆 けて 派 遣 融 通 してもらうよう 強 く 働 きかけることが 重 要 である また 国 内 ばかりではなく 海 外 からもそう した 人 材 を 派 遣 してもらえる 可 能 性 がある 例 えば 岩 手 県 の 県 庁 所 在 地 である 盛 岡 市 は 歴 史 的 にカナダ ビクトリア 市 との 交 流 が 深 く 2015 年 には 姉 妹 都 市 提 携 30 周 年 を 迎 えてい る xxxii 市 内 にある 盛 岡 大 学 も ビクトリア 市 のカモーソン 大 学 と 1987 年 以 来 の 長 きにわた る 交 流 がある xxxiii 言 うまでもなく カナダは 英 語 フランス 語 圏 の 国 であり RWC 出 場 常 連 国 でもある そこで このような 地 域 から 岩 手 県 の 持 つネットワークを 十 全 に 活 用 し 多 数 のボランティアを 派 遣 してもらえる 可 能 性 を 探 ってみてはどうだろうか 3 番 目 の 方 策 として IT 技 術 を 積 極 的 に 活 用 することが 挙 げられる 現 場 に 語 学 の 専 門 人 材 が 少 ない 場 合 その 隙 間 を 埋 めるにはこうした 技 術 の 手 助 けを 借 りることも 必 要 であろう 幸 いなことに RWC 2019 には 翌 2020 年 に 東 京 でオリンピックが 開 催 されるというアドバ ンテージがあり 現 在 これに 向 けて 各 家 電 メー カーが 新 たな IT 技 術 の 開 発 を 競 い 合 っている その 中 には 例 えばメガホンに 日 本 語 で 話 し かけると 英 語 や 中 国 語 など 各 国 語 に 自 動 的 に 翻 訳 されるなどの 最 新 技 術 が 報 道 されてい る xxxiv 先 に 紹 介 した 鉄 道 やバス 会 社 に 勤 め る 地 元 の 公 共 交 通 システムについては 熟 知 す るものの 英 語 は 不 得 意 だという 日 本 人 には こうした 技 術 やタブレット 端 末 などに 搭 載 され た 翻 訳 ソフトの 活 用 を 是 非 とも 勧 めたい 6. 結 びにかえて:RWC 2019 開 催 地 方 都 市 へのメッセージ 本 稿 の 冒 頭 で 紹 介 した 施 政 方 針 演 説 において 安 倍 首 相 は 実 に 多 様 なキーワードを 散 りばめて いる 例 えば 地 方 創 生 被 災 地 の 復 興 観 光 立 国 世 界 の 中 心 で 輝 く 日 本 1 億 総 活 躍 など そして 最 後 には 日 本 で 開 催 されるラグビー ワールドカップ 東 京 オリンピック パラリン ピックの 成 功 に 全 力 を 尽 くします とも 明 言 し

33 35 た こうした 全 ての 点 で 2019 年 岩 手 県 にお けるラグビーワールドカップの 試 合 開 催 とその 成 功 は ひとつの 大 きな 試 金 石 となるに 違 いな い そこで 最 後 に 岩 手 県 を 含 む RWC 2019 国 内 開 催 各 都 市 へのエールを 込 めて 学 術 論 文 として はやや 異 例 ながら 筆 者 の 個 人 的 な 経 験 をエッ セイ 風 に 紹 介 することをお 許 し 願 いたい 2007 年 筆 者 は RWC フランス 大 会 を 現 地 で 観 戦 した いわゆる 団 体 ツアーではなく 気 まま な 一 人 旅 であったので それぞれの 試 合 会 場 へ のアクセスはインターネットや 旅 行 ガイドを 駆 使 して 自 分 で 調 べ 上 げ 観 戦 チケットも 全 て 自 ら 手 配 した フランス 滞 在 中 特 に 印 象 に 残 っているのが ボルドー 市 にあるスタジアム Stade Jacques-Chaban-Delmas である 試 合 終 了 間 際 大 西 将 太 郎 選 手 による 劇 的 な 同 点 ゴールで 今 で も 名 勝 負 と 評 判 の 高 い 日 本 対 カナダ 戦 の 舞 台 となった 場 所 である 試 合 当 日 スタジアムに 向 かう 電 車 の 小 さな 駅 で (フランス 語 が 読 めないため) 切 符 の 買 い 方 がわからずに 立 ち 往 生 をしていた 筆 者 に 間 髪 を 入 れず 手 を 差 し 伸 べてくれたのは 地 元 の 中 年 女 性 二 人 組 だった 二 人 とも 英 語 はほんの 片 言 しか 喋 れなかったが 筆 者 に 対 して 終 始 笑 顔 を 絶 やさず 身 振 り 手 振 りで 色 々と 教 えてく れたことを 今 でも 懐 かしく 思 い 出 す おかげで ボルドーは 今 でも 筆 者 の 大 好 きな 都 市 のひとつである 2019 年 日 本 の 地 方 都 市 でも 似 たような 光 景 が 繰 り 返 されることだろう 英 語 が 話 せるに 越 したことはないけれど たと え 英 語 が 苦 手 でも 日 本 人 ならでは 地 方 都 市 ならではのおもてなしの 心 が 発 揮 されることを 筆 者 は 微 塵 も 疑 わない i ii iii 2016 年 1 月 22 日 例 えば 東 京 都 は http://www.metro. tokyo.jp/governor/activity/151031.htm 神 奈 川 県 は http://www.pref.kanagawa. jp/prs/p969046.html など 観 光 庁 (2011) 外 国 人 旅 行 者 に 対 する アンケート 調 査 結 果 について iv v vi vii 例 えば 2015 年 3 月 24 日 の 日 本 経 済 新 聞 電 子 版 記 事 訪 日 外 国 人 の 不 満 1 位 公 衆 無 線 LAN 後 進 国 脱 却 へ など http://www.mlit.go.jp/common/ 000205584.pdf(2016 年 1 月 6 日 閲 覧 ) 佐 藤 由 利 子 (2011) 日 本 への 短 期 留 学 のニーズと 課 題 に 関 する 考 察 短 期 留 学 生 調 査 回 答 の 地 域 別 期 間 別 課 程 別 分 析 から 留 学 生 教 育 第 16 号 pp.13-24., 留 学 生 教 育 学 会 https://www.ets.org/s/toefl/pdf/ 94227_unlweb.pdf(2016 年 1 月 6 日 閲 覧 ) viii 読 売 新 聞 (2016a) 外 務 省 英 語 力 に 目 標 1 月 4 日 朝 刊 ix x xi xii 同 報 道 によれば 海 外 の 一 流 大 学 に 入 学 できるレベル 域 内 最 大 都 市 表 4 も 同 じ 50 音 順 に アイルランド アメリカ イングランド ウェールズ オーストラ リア カナダ サモア スコットランド トンガ ナミビア フィジー 南 アフリ カ 但 し RWC の 会 場 として 特 段 小 さいとい うわけではない 事 実 2015 年 の 大 会 でも この 規 模 のスタジアムは 日 本 戦 でも 使 われたキングスホルムなど 複 数 xiii 読 売 新 聞 大 阪 本 社 編 (2002) 潰 れる 大 学 潰 れない 大 学 中 公 新 書 ラクレ xiv xv xvi それぞれ APU 及 び 大 分 県 のホームペー ジより http://www.ritsumei.ac.jp/mng/gl/ koho/headline/topics/2001/0702/ cameroon.htm.0111207(2016 年 1 月 13 日 閲 覧 ) 佐 藤 由 利 子 (2012) 留 学 生 受 入 れによ る 地 域 活 性 化 の 取 組 みと 課 題 留 学 交 流 Vol.15 pp.1-9., 日 本 学 生 支 援 機 構 xvii 広 瀬 一 郎 (2004) W 杯 の 事 後 検 証 自 治 体 による 検 証 はなされたのか 経 済 産 業 研 究 所 xviii 茨 城 県 は JOWAC ボランティア 1,400 名

36 34 xix xx xxi 現 地 ボランティア 600 名 2014 年 11 月 4 日 の 知 事 定 例 会 見 http://www.pref.oita.jp/site/chiji/ chijiteireikaiken20141104.html(2015 年 1 月 12 日 閲 覧 ) 蒲 原 由 和 (2004) グローカル 知 事 平 松 守 彦 その 発 想 と 実 践 大 分 から 九 州 アジア 世 界 へ 西 日 本 新 聞 社 河 北 新 報 (2015) <ラグビーW 杯 > 仙 台 落 選 市 の 消 極 姿 勢 敗 因 3 月 4 日 朝 刊 xxii 河 北 新 報 (2016) <ラグビーW 杯 > 釜 xxxiv http://aplista.iza.ne.jp/f-iphone/ 211417(2016 年 1 月 18 日 閲 覧 ) 石 新 スタ 整 備 に 復 興 交 付 金 1 月 16 日 朝 刊 xxiii 岩 手 県 国 際 交 流 協 会 (2015) たくさん の 外 国 人 アスリートがやって 来 た! アジアマスターズ 陸 上 でボランティア 通 訳 が 活 躍 いわて 国 際 交 流 Vol. 78., p.6., 岩 手 県 国 際 交 流 協 会 xxiv 上 記 資 料 による xxv 上 記 資 料 による xxvi 公 開 していないため 2016 年 1 月 同 大 宛 にメールにて 問 い 合 わせ xxvii 各 大 学 の HP より xxviii 読 売 新 聞 (2016b) IT 教 育 小 中 から 強 化 起 業 家 育 成 へ 新 大 学 新 成 長 戦 略 政 府 検 討 へ 1 月 25 日 朝 刊 xxix 山 下 辰 夫 堀 田 幸 平 佐 藤 克 信 林 大 介 北 波 赳 彦 (2015) 大 学 職 員 を 対 象 とし た 東 南 アジアでの 英 語 研 修 における 一 考 察 高 等 教 育 フォーラム Vol.5 京 都 産 業 大 学 xxx 酒 井 邦 嘉 (2015) 英 語 が 全 然 上 達 しな い 学 習 パターン President 4 月 13 日 号 p.34., プレジデント 社 xxxi 藪 敏 裕 (2015) 岩 手 大 学 グローバル 教 育 センターの 立 ち 上 げについて もり おか 通 信 No. 103., p.3., 公 益 社 団 法 人 盛 岡 法 人 会 xxxii 盛 岡 国 際 交 流 協 会 (2015) 姉 妹 都 市 提 携 30 周 年 MORIOKA VICTORIA も りおか No. 81., p.1., 盛 岡 国 際 交 流 協 会 xxxiii 盛 岡 大 学 HP より