も 障 がい 者 でもない 状 態 を 生 きていると 言 える ADHDについて 医 学 生 理 学 的 なアプローチから 障 がいの 特 性 を 述 べたものは 多 くみ られる( 村 山 1993, 粟 田 1998, 作 田 勉 作 田 明,1998) ADHDは 脳 の 機 能 障 がいで



Similar documents
Microsoft PowerPoint - 14説明資料

頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

●幼児教育振興法案

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

(2)大学・学部・研究科等の理念・目的が、大学構成員(教職員および学生)に周知され、社会に公表されているか

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

 

平 成 27 年 11 月 ~ 平 成 28 年 4 月 に 公 開 の 対 象 となった 専 門 協 議 等 における 各 専 門 委 員 等 の 寄 附 金 契 約 金 等 の 受 取 状 況 審 査 ( 別 紙 ) 専 門 協 議 等 の 件 数 専 門 委 員 数 500 万 円 超 の 受

01.活性化計画(上大久保)

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

    平成11年度余市町私立幼稚園就園奨励費補助金交付要綱

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

Microsoft Word - 公表用答申422号.doc

平成26年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について

<6D313588EF8FE991E58A778D9191E5834B C8EAE DC58F4992F18F6F816A F990B32E786C73>

平成24年度開設予定大学院等一覧(判定を「不可」とするもの)

Microsoft Word - 諮問第82号答申(決裁後)

<4D F736F F D F8D828D5A939982CC8EF68BC697BF96B38F9E89BB82CC8A6791E52E646F63>

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

退職手当とは

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

<6D33335F976C8EAE CF6955C A2E786C73>

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備に関する省令等について(通知)

[2] 控 除 限 度 額 繰 越 欠 損 金 を 有 する 法 人 において 欠 損 金 発 生 事 業 年 度 の 翌 事 業 年 度 以 後 の 欠 損 金 の 繰 越 控 除 にあ たっては 平 成 27 年 度 税 制 改 正 により 次 ページ 以 降 で 解 説 する の 特 例 (

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

2 条 例 の 概 要 (1) 趣 旨 この 条 例 は 番 号 利 用 法 第 9 条 第 2 項 に 基 づく 個 人 番 号 の 利 用 に 関 し 必 要 な 事 項 を 定 めます (2) 定 義 この 条 例 で 規 定 しようとする 用 語 の 意 義 は 次 のとおりです 1 個 人


慶應義塾利益相反対処規程

学校法人日本医科大学利益相反マネジメント規程

<4D F736F F D F303088A4926D8CA78E8497A EF68BC697BF93998C798CB895E28F958BE08CF D6A2E646F63>

社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

(2) 広 島 国 際 学 院 大 学 ( 以 下 大 学 という ) (3) 広 島 国 際 学 院 大 学 自 動 車 短 期 大 学 部 ( 以 下 短 大 という ) (4) 広 島 国 際 学 院 高 等 学 校 ( 以 下 高 校 という ) ( 学 納 金 の 種 類 ) 第 3 条

1.はじめに わが 国 での 急 速 な 少 子 化 の 進 行 等 を 踏 まえ 次 代 の 社 会 を 担 う 子 どもが 健 やかに 生 まれ 育 成 される 環 境 の 整 備 を 目 的 とした 次 世 代 育 成 支 援 対 策 推 進 法 が 平 成 15 年 7 月 に 制 定 され

地域支援心理研究センター 紀要 第10号

別 表 1 土 地 建 物 提 案 型 の 供 給 計 画 に 関 する 評 価 項 目 と 評 価 点 数 表 項 目 区 分 評 価 内 容 と 点 数 一 般 評 価 項 目 立 地 条 件 (1) 交 通 利 便 性 ( 徒 歩 =80m/1 分 ) 25 (2) 生 活 利 便

Taro-08国立大学法人宮崎大学授業

<8BB388F58F5A91EE82A082E895FB8AEE967B95FB906A>

Microsoft Word - 目次.doc

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

<947A957A8E9197BF C E786C73>

Microsoft Word - nagekomi栃木県特定医療費(指定難病)支給認定申請手続きのご案内 - コピー

答申第585号

資料2 利用者負担(保育費用)

( 補 助 金 等 交 付 決 定 通 知 に 加 える 条 件 ) 第 7 条 市 長 は 交 付 規 則 第 11 条 に 規 定 するところにより 補 助 金 の 交 付 決 定 に 際 し 次 に 掲 げる 条 件 を 付 するものとする (1) 事 業 完 了 後 に 消 費 税 及 び

本 校 の 沿 革 昭 和 21 年 昭 和 49 年 昭 和 54 年 昭 和 60 年 平 成 9 年 平 成 11 年 平 成 18 年 北 海 道 庁 立 農 業 講 習 所 として 発 足 北 海 道 立 農 業 大 学 校 に 改 組 修 業 年 限 を1 年 制 から2 年 制 に 改

<4D F736F F D D3188C091538AC7979D8B4B92F F292B98CF092CA81698A94816A2E646F63>

17 外 国 人 看 護 師 候 補 者 就 労 研 修 支 援 18 看 護 職 員 の 就 労 環 境 改 善 運 動 推 進 特 別 20 歯 科 医 療 安 全 管 理 体 制 推 進 特 別 21 在 宅 歯 科 医 療 連 携 室 整 備 22 地 域 災 害 拠 点 病

<4D F736F F F696E74202D D382E982B382C68AF1958D8BE090A C98AD682B782E B83678C8B89CA81698CF6955C A2E >

学校安全の推進に関する計画の取組事例

Microsoft Word - 02第3期計画(元データ).doc

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

東久留米市訓令乙第   号

(3) 育 児 休 業 (この 号 の 規 定 に 該 当 したことにより 当 該 育 児 休 業 に 係 る 子 について 既 にし たものを 除 く )の 終 了 後 3 月 以 上 の 期 間 を 経 過 した 場 合 ( 当 該 育 児 休 業 をした 教 職 員 が 当 該 育 児 休 業

<4D F736F F D208D4C93878CA793AE95A888A48CEC835A E815B8CA C8FF7936E977697CC2E646F63>

1 支 給 認 定 新 制 度 では 幼 稚 園 ( 新 制 度 に 移 行 する 幼 稚 園 のことで 以 下 同 じ) を 利 用 する 場 合 には お 住 まいの 市 町 村 から 支 給 認 定 証 の 交 付 を 受 ける 必 要 があります 認 定 の 区 分 は 年 齢 や 保 育

1 リーダーシップと 意 思 決 定 1-1 事 業 所 が 目 指 していることの 実 現 に 向 けて 一 丸 となっている 評 価 項 目 事 業 所 が 目 指 していること( 理 念 基 本 方 針 )を 明 確 化 周 知 している 1. 事 業 所 が 目 指 していること

( 新 ) 医 療 提 供 の 機 能 分 化 に 向 けたICT 医 療 連 携 導 入 支 援 事 業 費 事 業 の 目 的 医 療 政 策 課 予 算 額 58,011 千 円 医 療 分 野 において あじさいネットを 活 用 したICT したICT 導 入 により により 医 療 機 能

目 次 1. 社 会 保 障 分 野 でできること 1 1 高 額 医 療 高 額 介 護 合 算 制 度 の 改 善 2 保 険 証 機 能 の 一 元 化 3 自 己 診 療 情 報 の 活 用 4 給 付 可 能 サービスの 行 政 側 からの 通 知 2. 年 金 分 野 でできること 5

(Microsoft Word - \221\346\202P\202U\201@\214i\212\317.doc)

入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

空 き 家 を 売 却 した 場 合 の,000 万 円 控 除 特 例 の 創 設 被 相 続 人 が 住 んでいた 家 屋 及 びその 敷 地 を 相 続 があった 日 から 年 を 経 過 する 年 の 月 日 までに 耐 震 工 事 をしてから あるいは 家 を 除 却 し てから 売 却

<4D F736F F D208ED089EF95DB8CAF89C193FC8FF38BB CC8EC091D492B28DB88C8B89CA82C982C282A282C42E646F63>

Microsoft Word - 交野市産業振興基本計画 doc

定款  変更

<4D F736F F D20836E E819592E88C5E B F944E82548C8E89FC90B3816A5F6A D28F57>

Microsoft Word - y doc

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

課 税 ベ ー ス の 拡 大 等 : - 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し ( 後 掲 ) - 減 価 償 却 の 見 直 し ( 建 物 附 属 設 備 構 築 物 の 償 却 方 法 を 定 額 法 に 一 本 化 ) - 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 な る 見 直 し ( 大

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

18 国立高等専門学校機構

類 ( 番 号 を 記 載 ) 施 設 名 事 所 名 所 在 事 開 始 年 月 日 事 規 模 ( 定 員 ) 公 益 事 必 要 な 者 に 対 し 相 談 情 報 提 供 助 言 行 政 や 福 祉 保 健 医 療 サービス 事 者 等 との 連 絡 調 整 を 行 う 等 の 事 必 要

第1章 総則

4 松 山 市 暴 力 団 排 除 条 の 一 部 風 俗 営 業 等 の 規 制 及 び 業 務 の 適 正 化 等 に 関 する 法 律 等 の 改 正 に 伴 い, 公 共 工 事 から 排 除 する 対 象 者 の 拡 大 等 を 図 るものです 第 30 号 H H28.1

<4D F736F F D A94BD837D836C B4B92F62E646F6378>

< F2D A C5817A C495B6817A>

Taro-01 議案概要.jtd

2. 会 計 規 程 の 業 務 (1) 規 程 と 実 際 の 業 務 の 調 査 規 程 や 運 用 方 針 に 規 定 されている 業 務 ( 帳 票 )が 実 際 に 行 われているか( 作 成 されている か)どうかについて 調 べてみた 以 下 の 表 は 規 程 の 条 項 とそこに

伊勢崎市職員職場復帰支援制度

(2) 単 身 者 向 け 以 外 の 賃 貸 共 同 住 宅 等 当 該 建 物 に 対 して 新 たに 固 定 資 産 税 等 が 課 税 される 年 から 起 算 して5 年 間 とする ( 交 付 申 請 及 び 決 定 ) 第 5 条 補 助 金 の 交 付 を 受 けようとする 者 は

Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

自 分 にあった 健 康 保 険 を 見 つけよう! それぞれの 健 康 保 険 の 特 徴 を 踏 まえ 自 分 にあった 健 康 保 険 を 選 ぶようにしましょう! 今 までの 収 入 扶 養 家 族 の 有 無 によって どの 健 康 保 険 に 加 入 するとメリットがあるか 参 考 にし

<819A955D89BF92B28F BC690ED97AA8EBA81418FA48BC682CC8A8890AB89BB816A32322E786C7378>

Microsoft Word - 福祉医療費給付要綱

(2) 地 域 の 実 情 に 応 じた 子 ども 子 育 て 支 援 の 充 実 保 育 の 必 要 な 子 どものいる 家 庭 だけでなく 地 域 の 実 情 に 応 じた 子 ども 子 育 て 支 援 の 充 実 のために 利 用 者 支 援 事 業 や 地 域 子 育 て 支 援 事 業 な

とする (1) 多 重 債 務 や 過 剰 債 務 を 抱 え 返 済 が 困 難 になっている 人 (2) 債 務 整 理 を 法 律 専 門 家 に 依 頼 した 直 後 や 債 務 整 理 途 上 の 人 (3) 収 入 よりも 生 活 費 が 多 くお 金 が 不 足 がちで 借 金 に 頼

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

別記

定款

資 格 給 付 関 係 ( 問 1) 外 国 人 Aさん(76 歳 )は 在 留 期 間 が3ヶ 月 であることから 長 寿 医 療 の 被 保 険 者 ではない が 在 留 資 格 の 変 更 又 は 在 留 期 間 の 伸 長 により 長 寿 医 療 の 適 用 対 象 となる 場 合 には 国

Taro-条文.jtd

Microsoft PowerPoint  22日修正最終確定.ppt

(3) 調 査 の 進 め 方 2 月 28 日 2 月 28 日 ~6 月 30 日 平 成 25 年 9 月 サウンディング 型 市 場 調 査 について 公 表 松 戸 市 から 基 本 的 な 土 地 情 報 サウンディングの 実 施 活 用 意 向 アイデアのある 民 間 事 業 者 と

Transcription:

ADHDの 子 ども 像 から ADHD 傾 向 の 子 ども 像 への 変 容 2000 年 代 以 降 のADHDと 自 尊 感 情 の 関 連 づける 論 考 を 中 心 に 高 石 市 立 高 陽 小 学 校 堀 元 樹 1.はじめに 本 稿 の 関 心 は 自 尊 感 情 が ADHDの 子 ども や ADHD 傾 向 の 子 ども の 教 育 問 題 としてどのようにして 語 られるかにある 本 稿 では ADHD 傾 向 の 子 ども を A DHDという 診 断 名 はない ADHDに 似 た 特 性 のある 子 どもとして 取 り 扱 う 筆 者 は 支 援 学 級 の 担 任 をしている 中 で ADHD 傾 向 の 子 ども や( 診 断 名 のある) ADHDの 子 ども の( 行 動 などの) 様 相 が 極 めて 複 雑 であることを 感 じている 確 か に 両 者 は( 教 室 や 家 庭 で) 似 た 問 題 行 動 を 起 こす 手 や 足 がでる 教 師 や 友 だちへの 暴 言 指 示 が 通 りにくい 学 習 に 集 中 できないなどである 他 方 両 者 の 問 題 行 動 を 子 ども なりの 訴 え として 受 け 止 めることも 可 能 である そのためには 教 師 によるカウンセリ ングが 必 要 であるという 論 考 も 考 えられる しかし 本 稿 では 両 者 に 共 通 して 語 られる 自 尊 感 情 (self-esteem)の 高 低 問 題 によって 通 常 の 学 級 で 学 習 している ADHD 傾 向 の 子 ども 像 が 診 断 名 のついた( 多 くは 支 援 学 級 に 在 籍 する) ADHDの 子 ども 像 へと 回 収 される 過 程 を 述 べる 筆 者 は 教 育 言 説 としての 自 尊 感 情 の 形 成 過 程 という 小 論 ( 堀 2013)で 同 和 地 区 の 自 尊 感 情 の 高 低 問 題 を 取 り 上 げた 同 和 地 区 の 教 育 問 題 を 把 握 する( 理 解 する)ために 用 いられた 自 尊 感 情 は 地 区 内 外 を 弁 別 する 方 法 に 用 いられ 同 和 問 題 を 解 決 する 要 因 の 一 つに 組 み 込 まれていくようになったことを 指 摘 した 自 尊 感 情 がADHDの 特 性 や 子 ども 像 にいかに 波 及 を 示 していくのかを 述 べ ることは 子 ども 像 の 変 容 を 考 える 上 で 意 義 ある 論 考 だと 考 える 2000 年 代 以 降 ADHDへの 関 心 が 高 まり 論 文 数 も 増 えてきた 文 科 省 は 2001 年 1 月 21 世 紀 の 特 殊 教 育 の 在 り 方 について の 最 終 報 告 で 障 がいの 程 度 等 に 応 じ 特 別 の 場 で 指 導 を 行 う 特 殊 教 育 から 障 がいのある 児 童 生 徒 一 人 一 人 の 教 育 的 ニーズに 応 じて 適 切 な 教 育 的 支 援 を 行 う 特 別 支 援 教 育 への 転 換 を 示 し 特 にLD 児 やADHD 児 等 通 常 の 学 級 に 在 籍 する 特 別 な 教 育 支 援 を 必 要 とする 児 童 生 徒 への 対 応 の 必 要 性 を 説 く 2002 年 に 行 っ た 全 国 実 態 調 査 で LD ADHD 高 機 能 自 閉 症 により 学 習 や 生 活 面 で 特 別 な 教 育 的 支 援 が 必 要 である 児 童 生 徒 は 約 6%であることを 提 示 した 2003 年 3 月 には 今 後 の 特 別 支 援 教 育 の 在 り 方 について の 最 終 報 告 で 特 別 支 援 教 育 の 理 念 と 基 本 的 な 考 え 方 を 示 し 幼 児 児 童 生 徒 一 人 一 人 の 教 育 的 ニーズ を 把 握 し 適 切 な 指 導 及 び 支 援 が 必 要 であると 説 明 する 通 常 の 学 級 に 在 籍 するLD ADHD 高 機 能 自 閉 症 への 指 導 及 び 支 援 の 必 要 性 にも 言 及 している なかでも ADHD 傾 向 と 称 される 子 どもたちは ADHD で ないがゆえに 田 垣 (2006)の 言 葉 を 借 りれば どっちつかず の 状 態 である 健 常 者 で 1

も 障 がい 者 でもない 状 態 を 生 きていると 言 える ADHDについて 医 学 生 理 学 的 なアプローチから 障 がいの 特 性 を 述 べたものは 多 くみ られる( 村 山 1993, 粟 田 1998, 作 田 勉 作 田 明,1998) ADHDは 脳 の 機 能 障 がいであ って 薬 物 療 法 や 行 動 療 法 などが 効 果 的 である また 渡 邊 (2004)は 医 療 社 会 学 的 に 分 析 する ADHDの 医 療 化 は 教 育 現 場 の 悩 みを 解 消 する 手 段 となった 社 会 の ADH D へのまなざしが 構 築 され ADHD っぽい 子 どもが 誕 生 した これまでに AD HDの 子 ども と ADHD 傾 向 ( 渡 邊 の 言 う っぽい ではなく 本 稿 では 傾 向 とす る)が 自 尊 感 情 という 教 育 言 説 によって 結 び 付 けられているという 論 考 はみられない 以 上 のことから 本 稿 では どっちつかず の 状 態 を 生 きる ADHD 傾 向 の 子 ども が ADHDの 子 ども は 自 尊 感 情 が 低 いという 言 説 のなかでどのように 位 置 づけら れていくかを 述 べる 紙 幅 の 都 合 上 すべての 論 文 を 歴 史 的 に 検 討 していくことは 困 難 で あるが 教 育 言 説 として 自 尊 感 情 を 捉 える 筆 者 の 論 考 ( 堀 2013)をもとに 2000 年 代 以 降 のADHDと 自 尊 感 情 の 関 連 で 述 べられている 論 文 を 中 心 に 検 討 したい 2. 教 育 言 説 としての 自 尊 感 情 と 教 育 問 題 近 年 自 尊 感 情 の 高 低 が 教 育 の 問 題 として 語 られることが 多 い 本 項 では 教 育 言 説 として 語 られる 自 尊 感 情 という 視 点 を 提 示 した 筆 者 の 小 論 を 簡 単 にまとめておく 1990 年 代 後 半 の 教 育 問 題 を 心 の 問 題 とする 教 育 行 政 の 流 れを 受 け 1998 年 第 16 期 中 央 教 育 審 議 会 答 申 で 自 尊 感 情 が 初 めて 明 示 された 自 尊 感 情 の 使 われ 方 には2つ ある 一 つは 規 範 意 識 が 低 下 している 子 どもは いじめや 不 登 校 などの 問 題 行 動 を 起 こしやすいとされ 道 徳 的 な 問 題 を 含 む 生 徒 指 導 上 の 問 題 の 要 因 として ( 堀 2013:99) 用 いる 方 法 である もう 一 つは ADHDなどの 学 習 支 援 が 必 要 な 子 どもの 行 為 態 度 を 引 き 起 こす 要 因 として ( 堀 2013:99) 用 いる 方 法 であり 行 為 態 度 の 問 題 は 支 援 の 在 り 方 が 問 われることがあっても 生 徒 指 導 上 の 問 題 になることは 少 ない ( 堀 2013:99) ことに 着 目 した 少 なくとも どっちつかず の 状 態 である ADHD 傾 向 の 子 ども は 診 断 名 がなく 支 援 学 級 に 在 籍 していないので 生 徒 指 導 上 の 問 題 になることが 多 い 筆 者 は 教 育 社 会 学 者 である 池 田 寛 の 研 究 ( 以 下 同 和 地 区 は 地 区 とする)を 対 象 とした 学 力 実 態 調 査 )に 歴 史 的 な 検 討 を 試 みた 1980 年 代 に 学 力 実 態 調 査 ( 以 下 調 査 とする) 導 入 された 自 尊 感 情 は 調 査 の 普 及 に 伴 い 地 区 の 子 ども 像 を 変 容 させて いく 自 尊 感 情 導 入 以 前 の 地 区 の 子 ども の 教 育 問 題 として 語 られたのは 主 に 長 期 欠 席 や 不 就 学 及 び 低 学 力 であった 調 査 の 普 及 とともに 地 区 の 子 ども の 長 期 欠 席 や 不 就 学 問 題 は 現 れにくくなり 低 学 力 の 地 区 の 子 ども 像 が 顕 在 化 する ( 中 略 ) 調 査 の 普 及 で 低 学 力 問 題 が 地 区 の 子 ども 像 を 再 定 式 化 された 1980 年 代 には 池 田 は 調 査 2

に 自 尊 感 情 尺 度 という 心 理 スケールを 用 いた ( 堀 2013:109) 自 尊 感 情 の 導 入 は 地 区 内 外 を 心 理 スケールによって 弁 別 することを 可 能 にした 教 育 問 題 として 扱 われる 自 尊 感 情 の 低 い 子 ども ないし 高 すぎる 子 ども は 地 区 の 子 ども の 非 行 や 批 判 的 態 度 を 起 こす 者 として 地 区 の 子 ども 像 を 形 成 する ( 堀 2013:109) 以 上 のことから 自 尊 感 情 の 高 低 で 教 育 の 問 題 を 語 ることで 教 育 問 題 と なる 地 区 の 子 ども 像 を 定 式 化 し 同 和 問 題 を 終 結 する 要 因 の 一 つになったと 結 論 付 け る 池 田 は 地 区 の 子 ども の 教 育 問 題 を 地 域 コミュニティの 希 薄 さ という 内 外 の 関 係 性 に 求 め 地 区 内 外 の 交 流 を 求 めるという 点 で 社 会 的 排 除 論 の 立 ち 位 置 をとる 少 なくとも 自 尊 感 情 の 低 い 子 ども や 自 尊 感 情 の 高 い 子 ども は 教 育 問 題 となる 対 象 に 向 けられた 教 育 言 説 であり 特 定 の 子 ども 像 を 作 り 出 す 機 能 を 持 つ 池 田 のように 地 区 の 教 育 問 題 を 語 ることは 地 区 特 有 の 教 育 問 題 を 個 別 の 事 象 として 思 索 すること を 遠 ざけることに 繋 がったと 言 える 教 育 言 説 としての 自 尊 感 情 は 1990 年 代 後 半 LDやADHDが 教 育 問 題 に 取 り 上 げ られるなかで 2000 年 に 入 りADHDの 子 どもへと 付 与 され 継 承 されていく 3.2000 年 代 以 降 のADHDと 自 尊 感 情 の 関 係 性 2000 年 代 に 入 り ADHDに 関 する 研 究 が 増 え 専 門 家 だけではなく 教 師 などにも 認 知 されるようになる 本 項 では 2000 年 代 以 降 の 論 文 をもとに 前 項 で 示 した 教 育 言 説 とし ての 自 尊 感 情 がADHDとの 関 係 性 で 述 べられていることを 整 理 し 検 討 したい 1 ADHDの 子 ども と 自 尊 感 情 を 高 める 教 育 2002 年 鈴 木 ら(2002)は LD 児 やADHD 児 の 自 尊 心 の 低 さを 指 摘 し ほめる ことによる 自 尊 心 の 回 復 を 検 討 している 度 重 なる 失 敗 や 挫 折 の 体 験 によって 意 欲 を 失 ったり 絶 望 したり 苛 立 ちや 怒 りを 感 じたりし その 自 尊 心 はすっかり 傷 ついてしまっ た ( 鈴 木 中 野 2002:71)と 説 明 する 学 業 と 自 尊 感 情 には 関 連 があり(これは 池 田 寛 も 指 摘 している) ありのままを 認 める 姿 勢 を 基 本 においた ほめる 取 り 組 みの 必 要 性 を 説 く ほめる という 行 為 は ほめる ものの 価 値 観 というフィルターを 通 して 他 者 に 評 価 を 与 える 行 動 であり 自 己 概 念 の 形 成 に 関 係 ( 鈴 木 中 野 2002:77)し ほめら れたことは 効 力 感 の 体 験 となる 効 力 感 の 体 験 には ほめる 者 とほめられる 者 の 間 に 信 頼 関 係 を 築 くことが 最 も 重 要 ( 鈴 木 中 野 2002:77)で 自 尊 心 を 高 める したがって LD 児 やADHD 児 は 自 尊 感 情 高 揚 教 育 によって 意 欲 が 上 がり 怒 りや 苛 立 ちが 少 なくなる ほめる 行 為 は その 一 翼 を 担 う 現 在 子 どもを ほめる 取 組 が 学 校 目 標 に 掲 げられることもあり 自 尊 感 情 を 高 める 取 組 がされている 2004 年 依 田 ら(2004)は 先 行 研 究 をもとに 通 常 の 学 級 で 放 置 されている 障 がい 児 に 3

着 目 し 彼 らへの 適 切 な 教 育 支 援 の 在 り 方 を 考 える 必 要 性 を 説 く ADHDの 子 ども を 特 に 問 題 視 する 対 象 児 童 の S 児 は 入 学 後 まもなく 専 門 機 関 の 意 志 によりADHDで あると 診 断 されたが 保 護 者 希 望 により 薬 物 療 法 はしていない その 後 学 校 での 問 題 行 動 が 次 第 に 増 幅 し2 年 次 では 学 級 崩 壊 的 な 状 況 を 発 生 させた ( 依 田 ら 2004:53)と 述 べる ADHDの 子 ども の 問 題 行 動 が 学 級 崩 壊 に 結 び 付 くことを 意 味 する また 学 級 の 実 態 にも 言 及 し いじめ 攻 撃 的 な 行 動 をとってしまう 相 手 と 共 に 行 動 をするための 担 任 主 導 の 支 援 チームを 提 案 する ADHDの 子 ども に 対 する 理 解 と 対 応 の 具 体 的 な 助 言 を 外 部 からの 支 援 専 門 員 から 受 け 児 童 の 問 題 行 動 改 善 のための5つの 実 践 計 画 を 掲 げた そ のなかで S 児 が 自 分 の 良 さ( 自 尊 感 情 )に 気 づく 体 験 をさせる について ザリガニの 餌 をB 児 と 一 緒 にT 児 の 給 食 の 汁 物 に 入 れた このことは 素 直 に 認 めT 児 にも 謝 ることが できた T 児 の 母 親 は これを 機 に 実 は1 年 前 からS 児 とS 児 の 母 親 からいやな 思 いさせ られてきたと 訴 えに 来 る 筆 者 は 事 の 重 大 さに 気 づき それをS 児 の 母 親 に 話 し S 児 と 一 緒 にT 児 の 家 に 謝 りに 行 ってもらうことにした ( 依 田 ら 2004:55)という 事 例 がある 母 親 と 一 緒 にT 児 の 家 で 謝 ることを 体 験 したS 児 など 善 悪 の 判 断 をして 行 動 する 児 童 が 増 えてきた また 教 師 が 注 意 することを 避 け 自 らの 行 動 を 判 断 して 選 択 させることで 落 ち 着 いて 行 動 がとれるようになった 以 上 のような 実 践 によって S 児 は 見 事 に 変 容 し 問 題 行 動 も 減 少 し ( 依 田 ら 2004:58) S 児 の 作 品 から 心 の 変 容 を 裏 付 ける 自 尊 感 情 は 高 まったのである 自 尊 感 情 を 高 める 教 育 は 教 育 現 場 の 教 師 に ほめる 認 める 親 や 地 域 との 連 携 などの 具 体 的 な 教 育 指 針 や 内 容 を 提 起 すると 考 える したがって 2000 年 代 当 初 ADHDの 子 ども に 関 する 研 究 が 増 え ADHDの 子 ども をいかに 理 解 できるかということが 学 級 崩 壊 などの 教 育 問 題 を 解 消 する 方 法 の 一 つであった 教 育 ( 社 会 )はこれに 対 応 するため 個 々の 対 応 策 を 考 えるというよりも 担 任 の 声 掛 けの 在 り 方 学 級 担 任 以 外 の 支 援 チーム 体 制 が 必 要 であるという 方 に 重 みをも つようになった 自 尊 感 情 高 揚 教 育 は ADHDの 子 ども への 支 援 の 一 つに 位 置 づ けられたと 言 える 一 方 で ADHDの 子 ども は 自 尊 感 情 が 低 い 子 どもで 自 尊 感 情 に 問 題 があり 学 級 崩 壊 を 招 く 子 どもとして 語 られる よって 学 級 崩 壊 のような 教 育 問 題 を 起 こす 子 どもは さまざまな 問 題 行 動 との 関 連 で 述 べられる 自 尊 感 情 という 心 理 スケールによって 落 ち 着 きがない 子 ども という 現 場 の 教 師 の 日 常 的 な 言 葉 に 影 響 を 及 ぼし ADHDの 子 ども 像 を 構 築 する しかし ADHDの 子 ども の 教 育 問 題 として 自 尊 感 情 の 高 低 を 語 ることは 個 別 の 事 象 例 えばいかにして 苛 立 ちをしたの か 怒 りを 感 じたのかといった 事 象 を 排 除 した 議 論 を 招 きかねない 2 ADHD 傾 向 の 子 ども と 自 尊 感 情 を 高 める 教 育 小 西 らは 2005 年 ADHD 傾 向 を 示 す 軽 度 知 的 障 害 児 に 関 する 事 例 研 究 を 行 ってい る 筆 者 が 当 時 担 当 していたADHD 傾 向 を 示 す 軽 度 知 的 障 害 児 を 想 起 すると 自 分 自 身 を 価 値 ある 優 れた 存 在 とみなす 態 度 や その 態 度 に 伴 う 感 情 つまり 前 述 の self-esteem の 4

低 下 により 不 適 応 行 動 を 頻 繁 に 起 こしていた それは 持 ち 物 を 自 ら 壊 したり 自 分 の 首 を 絞 めたり 手 を 噛 んだり 口 に 手 を 突 っ 込 んで 吐 こうとしたりする 衝 動 的 な 行 動 がみら れ その 際 に ぼくなんて 死 んだ 方 がいいんだ と 泣 きながら 自 暴 的 になることが 見 受 け られた ( 小 西 ら 2005:137)と 自 身 の 体 験 を 綴 り 自 尊 感 情 の 向 上 を 図 る 学 校 カウンセ リングの 必 要 性 を 説 く 少 なくとも 自 尊 感 情 が 低 いことは 教 育 問 題 として 語 られ そ の 語 りは ADHDの 子 ども の 特 徴 を 位 置 づけると 言 える 小 西 らは ADHD 傾 向 を 示 す 軽 度 知 的 障 がい 児 であるS 児 に 対 し ある 出 来 事 に 対 するS 児 の 非 合 理 的 な 受 け 取 り 方 に 対 して 筆 者 らがよりよい 肯 定 的 な 考 え 方 を 教 示 することにより self-esteem を 高 め S 児 が 適 切 な 行 動 をとることができるようになる ( 小 西 ら 2005:138)と 考 え 認 知 的 ア プローチによる 学 校 カウンセリングを 行 った 不 適 応 行 動 は ADHD 傾 向 の 子 ども も 起 こし その 要 因 に 自 尊 感 情 の 低 さ があげられる また 下 津 ら(2006)は ADHDの 子 ども の 低 い 自 尊 感 情 がもたらす( 教 育 ) 問 題 はこれまでにも 指 摘 されてきたが わが 国 には 学 齢 期 のAD/HD 症 状 と 自 尊 感 情 の 関 係 についての 実 証 的 研 究 は 全 くなく ( 下 津 ら 2006:372) 中 学 生 を 対 象 に 自 尊 感 情 と 多 動 傾 向 との 関 連 を 研 究 している 医 学 的 診 断 にまで 至 らなくとも そのような 問 題 行 動 をAD/HD 症 状 のスペクトラム 上 にあるものととらえ 支 援 の 対 象 として 考 えていく ことが 必 要 だとし ADHDの 周 辺 つまり ADHD 傾 向 の 子 ども にも 自 尊 感 情 の 高 低 問 題 を 語 ることを 可 能 にした また ADHDの 臨 床 的 特 徴 はすでに 報 告 されてい るとしながら 不 適 応 行 動 や 失 敗 を 通 じて 自 尊 感 情 が 毀 損 されているという 属 性 ( 下 津 ら 2006:373)を 実 証 的 に 示 した さらに 関 係 があるとしている( 下 津 ら 2006:378) 自 尊 感 情 と 問 題 行 動 の 関 係 性 から ADHDの 中 核 的 な 原 因 は 対 人 関 係 にあることを 結 論 付 ける さらに 松 本 ら(2007)は 通 常 の 学 級 には 問 題 児 ととらえられて 特 別 な 配 慮 も 手 立 てもなく 叱 られてばかりで 自 分 に 自 信 が 持 てない 子 もいる ( 松 本 ら 2007:44)とし ADHDの 周 辺 児 童 の 自 尊 感 情 の 低 下 を 問 題 視 する また ADHD 傾 向 の 高 い 児 童 はそうでない 児 童 に 比 べ 学 業 や 家 族 や 友 だち 関 係 にも 有 意 差 が 認 められ 自 己 評 価 が 低 い 個 別 支 援 家 族 支 援 ソーシャルスキルの 必 要 性 を 説 く この 論 文 では ADHD 傾 向 の 子 ども の 自 尊 感 情 の 問 題 を 取 り 上 げ ADHD 傾 向 の 高 い 児 童 とそうでない 非 AD HDの 児 童 との 比 較 検 討 を 行 っている どっちつかず の 児 童 と 健 常 児 との 比 較 である 2008 年 には 一 門 ら(2008)が 軽 度 発 達 障 がいをもつ 児 童 生 徒 および 学 生 の 自 尊 感 情 と 自 己 効 力 感 について 検 討 し 軽 度 発 達 障 害 を 持 つ 者 における 自 信 の 低 さが 自 尊 感 情 の 低 さと 密 接 に 関 連 し ( 一 門 ら 2008:5) 軽 度 発 達 障 害 群 の 自 尊 感 情 得 点 が 対 照 に 比 べ 低 いという 結 果 が 得 られ ( 一 門 ら 2008:6) その 理 由 に 軽 度 発 達 障 がい 群 は 自 信 を 持 つこと 困 難 さ 自 己 受 容 の 低 さをあげる 本 人 だけの 支 援 だけではなく 周 囲 の 者 の 受 容 を 促 すことも 彼 らの 自 尊 感 情 の 低 下 を 防 げると 説 明 する 2013 年 には 石 川 らによって 小 学 校 特 別 支 援 学 級 における 発 達 障 がい 児 の 自 尊 感 情 5

を 形 成 するアプローチの 実 践 的 試 みが 行 われた 遊 びを 通 して 他 者 との 関 係 性 を 築 きなが ら 自 尊 感 情 を 形 成 する 変 容 過 程 を 述 べ 支 援 方 法 を 提 示 している( 石 川 ら 2013:22) 支 援 学 級 における 自 尊 感 情 高 揚 教 育 の 推 奨 である 以 上 のことから 教 育 問 題 で 取 り 上 げられる ADHDの 子 ども の 自 尊 感 情 の 問 題 は ADHDの 子 ども の 問 題 だけでなく ADHD 傾 向 の 子 ども が 引 き 起 こす 問 題 として 記 述 することで ADHD 傾 向 の 子 ども の 教 育 問 題 も 自 尊 感 情 の 高 低 問 題 で 語 ることを 可 能 にした また ADHD 傾 向 の 高 い 子 ども はそうでない 子 どもより 自 尊 感 情 が 低 いという 結 果 から ADHD 傾 向 の 子 ども の 特 性 を 位 置 づけたと 言 える 教 師 の 語 る 落 ち 着 きのない 子 ども は ADHDの 子 ども ではなく どっちつかず の 状 態 を 生 きる ADHD 傾 向 の 子 ども として 書 き 換 えられていくようになったと 考 え られる 近 年 ADHD 傾 向 の 子 ども は 増 加 し それに 伴 い ADHDの 子 ども も 増 加 しているが 自 尊 感 情 はその 相 互 に 適 用 される 過 程 で 支 援 教 育 は 推 し 進 められるこ とになったと 言 える 4.まとめ ADHDの 子 ども や ADHD 傾 向 の 子 ども を 理 解 する 手 段 として 自 尊 感 情 の 高 低 問 題 は 語 られるようになる しかし ADHDの 子 ども 像 は 筆 者 が 研 究 対 象 と してきた 地 区 内 外 というマイノリティとマジョリティの 対 比 で 用 いられる( 堀 2013) というよりは ADHD 傾 向 の 子 ども 像 をADHDの 特 性 として 位 置 づけていく 過 程 で 自 尊 感 情 の 高 低 問 題 が 取 り 上 げられることになる ADHDの 子 ども の 自 尊 感 情 が 低 いという 論 考 は ADHD 傾 向 の 子 ども の 自 尊 感 情 が 低 いことを 実 証 的 に 導 くことを 可 能 にした 通 常 の 学 級 における ADH D 傾 向 の 子 ども 像 を 構 築 するのに 寄 与 したと 言 える 健 常 者 ではない どっちつかず の 状 態 を 理 解 する 概 念 として 自 尊 感 情 の 高 低 問 題 を 取 り 上 げたことになる こうした 中 で 特 別 支 援 教 育 は 推 し 進 められることになる しかし 通 常 の 学 級 で 問 題 行 動 を 起 こ す 子 どもに 自 尊 感 情 というフィルターを 通 して ADHDの 子 ども 像 のまなざしを 作 り 出 すのではなく 支 援 を 必 要 とする 子 ども 像 として 個 別 の 事 象 を 解 消 してくなか で 支 援 教 育 は 推 し 進 められていくことが 必 要 であると 考 える 本 小 論 は 取 り 上 げた 論 文 の 数 が 少 なく 飛 躍 した 議 論 になっていることは 否 めない しかし 自 尊 感 情 の 高 低 問 題 によって ADHDの 子 ども 像 が 形 成 され ADHD 傾 向 の 子 ども 像 はそれに 呼 応 して 現 場 の 教 師 の 語 り 方 を 変 えていく 支 援 学 級 に 在 籍 するか 否 かの 判 断 基 準 にもなり 得 る 少 なくとも 彼 らの 問 題 行 動 の 解 消 のためには 自 分 が 好 き や 自 分 を 認 める ということに 求 めていく 語 り 方 よりは 時 間 をかけて 話 し こむことに 重 きが 置 かれる 掘 り 下 げる 作 業 を 必 要 とする 語 り 方 に 射 程 を 持 つ 必 要 があ る 6

参 考 文 献 及 び 引 用 文 献 粟 田 廣,1998-02 特 別 講 演 Ⅱ 注 意 欠 陥 多 動 性 障 害 (ADHD)と 非 行 矯 正 医 学 46(2-4 合 併 号 ):46-57 石 川 勇 作 浦 崎 武,2013 小 学 校 の 気 になる 子 に 対 する 支 援 工 夫 に 関 する 実 践 研 究 遊 びを 媒 介 とした 他 者 との 関 係 性 に 基 づく 自 尊 感 情 の 形 成 について 琉 球 大 学 教 育 学 部 発 達 支 援 教 育 実 践 センター 紀 要 5:21-35 一 門 恵 子 住 尾 和 美 安 部 博 史,2008 軽 度 発 達 障 害 児 者 の 自 尊 感 情 について 自 尊 感 情 尺 度 (SE 尺 度 )および 熊 大 式 コンピタンス 尺 度 を 用 いた 検 討 紀 要 visio : research reports 37:1-7 小 西 一 博 稲 垣 応 顕,2005 ADHD 傾 向 を 示 す 軽 度 知 的 障 害 児 に 関 する 事 例 研 究 self-esteem の 向 上 に 着 目 して 富 山 大 学 教 育 実 践 総 合 センター 紀 要 6:137-142 作 田 勉 作 田 明,1998 注 意 欠 陥 / 多 動 性 障 害 (ADHD) 臨 床 の 日 本 の 現 状 概 念 病 因 頻 度 治 療 他 小 児 の 精 神 と 神 経 38(3):175-185 下 津 咲 絵 井 筒 節 松 本 俊 彦 [ 他 ],2006 中 学 生 における 多 動 傾 向 と 自 尊 感 情 の 関 連 Wender Utah RatingScale を 用 いた 予 備 的 研 究 精 神 医 学 48(4):371-380 鈴 木 智 子 中 野 明 徳,2002 学 習 障 害, 注 意 欠 陥 / 多 動 性 障 害 の 子 どもたちの 自 尊 心 ほめる ことに 焦 点 を 当 てた 関 わり 福 島 大 学 教 育 実 践 研 究 紀 要 42:71-78 田 垣 正 晋,2006 障 害 病 いと ふつう のはざまで 軽 度 障 害 者 どっちつかずのジ レンマを 語 る 明 石 書 店 堀 元 樹,2013 教 育 言 説 としての 自 尊 感 情 の 形 成 過 程 同 和 教 育 における 学 力 実 態 調 査 を 手 がかりに 生 存 学 Vol.6:99-112 松 本 陽 子 山 崎 由 可 里,2007 小 学 生 におけるADHD 傾 向 と 自 尊 感 情 若 山 大 学 教 育 学 部 紀 要 教 育 科 学 57:43-52 村 山,1993 attention-deficit-hyperactive disorder 症 候 群 (ADHD 症 候 群 ) 小 児 科 診 療 増 刊 号 56:352 依 田 大 澤 土 井,2004 特 別 支 援 教 育 の 実 践 通 常 学 級 におけるADHD 児 への 教 育 的 支 援 信 州 大 学 教 育 学 部 附 属 教 育 実 践 総 合 センター 紀 要 教 育 実 践 研 究 5:51-60 渡 邊 拓 也,2004 医 療 化 の 周 辺 ADHDの 出 現 とその 功 罪 京 都 社 会 学 年 報 12:91-108 7