第 59 号 (2016 年 6 月 号 外 ) 森 濱 田 松 本 法 律 事 務 所 アジアプラクティスグループ ( 編 集 責 任 者 : 弁 護 士 武 川 丈 士 弁 護 士 小 松 岳 志 ) はじめに 森 濱 田 松 本 法 律 事 務 所 アジアプラクティスグループでは 東 南 南 アジア 各 国 のリ ーガルニュースを 集 めて MHM Asian Legal Insights を 発 行 していますが 今 回 は 号 外 (MHM Asian Legal Insights 第 59 号 (2016 年 6 月 号 外 ))として ミャンマーに おける 最 新 の 情 報 をお 送 りしまミャンマーでは 3 月 末 の 新 政 権 発 足 後 政 策 の 優 先 課 題 を 検 討 し 特 定 するための 100 日 計 画 の 策 定 が 進 められてきました 現 在 各 省 庁 から 計 画 が 発 表 されつつありますが この 間 旧 政 権 による 政 策 の 見 直 しの 動 きや 行 政 手 続 の 遅 延 が 見 られる 傾 向 にありました 外 国 投 資 についても 例 外 ではなく 新 政 権 発 足 後 新 たな 外 国 投 資 の 審 査 がなされない 状 況 が 続 いてきましたが 6 月 に 入 り よ うやくミャンマー 投 資 会 (Myanmar Investment Commission)( MIC )の 新 しい メンバーが 任 命 されました また 長 らく 検 討 されてきた 新 投 資 法 の 第 4 次 ドラフトが 公 表 されました これらは 外 国 投 資 を 加 速 するものとして 歓 迎 すべき 動 きですが 他 方 新 政 権 発 足 後 下 院 が 2 件 の 投 資 案 件 の 中 止 を 決 議 するという 懸 念 される 事 態 も 生 じていま 本 号 外 ではこうした 動 きについて 速 報 いたしま 今 後 の 皆 様 のミャン マーにおける 業 務 展 開 の 一 助 となれば 幸 いに 存 じま 1. 新 MIC の 任 命 6 月 7 日 MIC は 新 MIC の を 以 下 のとおり 任 命 しました 前 政 権 下 で 13 名 だった の 数 は 11 名 となり 連 邦 大 臣 副 大 臣 級 の も 7 名 から 3 名 となってい ま 以 前 には 入 っていなかった 商 業 省 から 大 臣 を 含 む 2 名 が 入 り かつ 民 間 から ミャンマー 連 邦 商 工 会 議 所 連 盟 (UMFCCI)の Joint General Secretary が に 入 る 等 よりビジネスに 近 く 実 務 的 な 組 織 とする 意 向 がうかがえま 新 政 権 発 足 後 外 国 投 資 の 受 付 審 査 は 従 前 どおり 続 けられていましたが 投 資 許 可 を 行 う MIC の 任 命 がなされていなかったため 許 可 がなされない 状 況 が 続 いてき ました 現 地 メディアでは MIC の 事 務 局 長 の Aung Naing Oo 氏 のコメントとして この 間 に 積 み 上 がった 審 査 案 件 は 102 件 あり この 審 査 を 終 えるには 約 8 週 間 かかると の 報 道 がなされていまこれらの 速 やかな 審 査 と 今 後 の 投 資 審 査 手 続 の 正 常 化 が 期 待 されるところで 名 前 肩 書 MIC でのポスト U Kyaw Win 計 画 財 務 省 大 臣 長 Dr. Than Myint 商 業 省 大 臣 副 長
U Tun Tun Oo 連 邦 法 務 長 官 府 連 邦 法 務 長 官 U Khin Maung Yee U Toe Aung Myint U Tun Tun Naing 資 源 環 境 保 護 省 商 業 省 計 画 財 務 省 U Htay Chun 投 資 企 業 管 理 局 (DICA) 元 副 局 長 U Kyaw U Aye Lwin 内 務 省 元 Director ミャンマー 連 邦 商 工 会 議 所 連 盟 (UMFCCI) Joint Secretary General U Aung Naing Oo DICA 局 長 Secretary( 事 務 局 長 ) Daw Mya Thuza DICA 元 副 局 長 Joint Secretary 2. 新 投 資 法 第 4 次 ドラフトの 公 表 ミャンマーにおいては 現 在 投 資 活 動 に 関 する 規 制 について 内 国 会 社 に 関 しては 内 国 投 資 法 (Myanmar Citizens Investment Law) 外 国 会 社 に 関 しては 外 国 投 資 法 (Foreign Investment Law)がそれぞれ 適 用 される 体 系 となっていまこれらの 2 つ の 法 律 を 統 合 し 内 国 会 社 か 外 国 会 社 であるかを 問 わずミャンマーで 行 われる 投 資 活 動 に 関 して 適 用 がある 法 律 として 新 投 資 法 の 制 定 に 向 けた 検 討 が 進 められてきました 新 投 資 法 については 2015 年 3 月 ( 第 38 号 ) 及 び 2016 年 1 月 ( 第 51 号 )において も それぞれ 当 時 パブリックコメントに 付 されていたドラフトを 前 提 とした 内 容 を 報 告 しておりますが 6 月 1 日 DICA がウェブサイトにおいて 5 月 30 日 付 の 第 4 次 ドラ フトを 公 表 したことから 同 ドラフトの 内 容 につき 報 告 させて 頂 くもので (a) 現 行 法 からの 主 な 変 更 点 新 投 資 法 ドラフトによると 外 国 会 社 による MIC からの 投 資 許 可 の 取 得 に 関 する 考 え 方 について 現 在 の 外 国 投 資 法 の 下 での 運 用 から 以 下 のような 変 更 が 生 じるもの と 考 えられます(この 点 は 第 51 号 のニュースレターにてご 報 告 させて 頂 いたとお りで) この 主 な 変 更 点 については 第 4 次 ドラフトでも 以 前 のドラフトからの 変 更 はなく 新 政 権 の 下 でも 主 要 な 変 更 点 については 同 様 の 考 え 方 で 検 討 が 進 められ ている 点 は 注 目 に 値 しま 現 在 の 外 国 投 資 法 では 外 国 企 業 のミャンマーへの 進 出 に 際 して MIC による 投 資
許 可 を 受 けるかどうかは 原 則 として 当 該 企 業 の 自 由 であり 外 国 投 資 法 に 定 める 租 税 優 遇 措 置 や 一 定 の 規 制 の 適 用 免 除 を 受 けるためには MIC から 投 資 許 可 を 受 ける 必 要 がある という 規 制 体 系 となっていま 外 国 会 社 に 適 用 される 規 制 のうち 特 に 重 要 な 点 として 不 動 産 譲 渡 制 限 法 に 基 づく 外 国 会 社 による 不 動 産 の 所 有 及 び 1 年 超 のリースの 禁 止 がありまかかる 規 制 については MIC の 投 資 許 可 を 受 けた 場 合 に のみ 例 外 として 外 国 会 社 であっても 1 年 超 ( 具 体 的 には 最 長 50 年 で 10 年 の 更 新 が 2 回 まで 認 められます)の 不 動 産 リースを 受 けることができましたがって 製 造 業 等 ミャンマーでの 事 業 実 施 の 大 前 提 として 不 動 産 の 長 期 利 用 権 を 確 保 するこ とが 求 められる 投 資 案 件 においては MIC の 投 資 許 可 を 受 けることが 事 実 上 不 可 欠 と なっているのが 現 状 で これに 対 し 新 投 資 法 ドラフトの 規 定 では MIC による 投 資 許 可 を 受 けたか 否 か にかかわらず 投 資 家 ( 外 国 投 資 家 も 含 む)による 不 動 産 の 長 期 リースが 権 利 として 明 記 されており 外 国 投 資 家 による 当 初 の 長 期 リース 期 間 も 50 年 可 能 とされていま また 投 資 の 際 の 手 続 については 規 定 だけからは 明 確 でない 部 分 もあるものの 従 前 の 規 定 や 解 釈 を 総 合 して 考 えると 以 下 のとおりとなると 考 えられま 1 国 にとって 戦 略 的 な 重 要 性 が ある 事 業 等 一 定 の 事 業 への 投 資 2 上 記 1 以 外 の 事 業 への 投 資 MIC の 投 資 許 可 を 取 得 することが 必 要 ( 内 国 会 社 外 国 会 社 ともに) MIC の 確 認 を 得 ることが 必 要 ( 優 遇 措 置 を 得 たい 場 合 外 国 会 社 が 長 期 の 不 動 産 リー スを 行 いたい 場 合 *) MIC の 手 続 不 要 (* 以 外 の 場 合 ) 上 記 2の 場 合 に MIC の 確 認 を 得 る 手 続 は 明 確 ではありませんが 許 可 と 確 認 を 使 い 分 けていることからすると 申 請 をすれば 基 本 的 には 確 認 が 得 られる 手 続 を 想 定 しているように 思 われま (b) 第 4 次 ドラフトでの 変 更 点 今 回 の 第 4 次 ドラフトの 2015 年 7 月 29 日 付 の 第 3 次 ドラフトからの 主 要 な 変 更 点 は 以 下 のとおりで 一 番 大 きな 変 更 点 として MIC は 治 安 上 社 会 的 経 済 的 な 影 響 のある 大 規 模 案 件 については 連 邦 議 会 の 承 認 を 得 る 義 務 があることが 明 記 されました この 点 従 前 のドラフト( 及 び 現 行 の 外 国 投 資 法 )では 連 邦 議 会 への 報 告 義 務 が 課 されていたのみ でした 下 記 3 で 述 べるように 新 政 権 下 では 下 院 が MIC 許 可 を 受 けた 投 資 案 件 の 中 止 を 決 議 する 等 MIC の 判 断 行 為 を 連 邦 議 会 の 統 制 下 に 置 こうとする 動 きが 顕 著
ですが 本 ドラフトもそうした 流 れの 中 にあるものと 理 解 されま 投 資 家 からする と 許 可 を 受 けるためのプロセスや 連 邦 議 会 がどのような 基 準 で 判 断 するかについ て 不 確 定 要 素 が 増 えることが 懸 念 されま 次 に MIC 許 可 と 環 境 影 響 評 価 を 取 得 するタイミングについての 変 更 がありま すなわち 従 前 のドラフトでは 環 境 影 響 評 価 を 取 得 する 必 要 のあるプロジェクトに ついては 旧 環 境 保 全 林 業 省 ( 現 資 源 環 境 保 護 省 )による 環 境 影 響 評 価 の 確 認 を 得 た 後 に MIC に 投 資 申 請 を 提 出 するものとされていました ところが 今 回 の 第 4 次 ドラフトでは 環 境 保 全 法 及 び 同 法 規 則 等 に 基 づき 事 前 の 許 可 が 必 要 な 案 件 につい ては 評 価 を 受 ける 前 に MIC 許 可 を 得 るものと 規 定 されていまその 上 で MIC 許 可 を 得 た 投 資 家 は 環 境 及 び 社 会 影 響 評 価 の 状 況 を MIC に 報 告 し MIC は その 報 告 内 容 に 基 づき 投 資 家 の 事 業 活 動 を 否 定 することが 出 来 ると 規 定 されていま かかる 規 定 には 以 下 のとおりの 様 々な 問 題 点 があると 考 えられま 第 一 に かか る 規 定 は 2016 年 1 月 制 定 の 環 境 影 響 評 価 規 則 の 内 容 と 矛 盾 しています( 同 規 則 で は 環 境 影 響 評 価 につき 資 源 環 境 保 護 省 の 許 可 を 得 た 後 に 投 資 許 可 を 得 ることが 想 定 されていま 第 二 に MIC 許 可 を 得 ても 環 境 影 響 評 価 において 許 可 を 得 ること が 出 来 ない 場 合 には 投 資 も 進 められないため 結 局 MIC 許 可 手 続 が 無 駄 になり ま た MIC 許 可 が 宙 に 浮 くことになってしまう 等 実 際 上 の 様 々な 問 題 を 招 来 すると 考 えられま 第 三 に MIC が 投 資 家 の 報 告 内 容 に 基 づき 事 業 活 動 を 否 定 できるとの 規 定 については 具 体 的 に MIC がどのような 措 置 を 取 れるのかが 不 明 確 であり 投 資 家 にとっての 予 測 可 能 性 を 減 じていると 考 えられままた 下 記 3 に 述 べるよう に 最 近 の 下 院 による 投 資 案 件 の 中 止 決 議 は 環 境 への 悪 影 響 を 理 由 としているものが ありま 本 規 定 は 環 境 への 影 響 を 理 由 として いったん 許 可 した 案 件 の 中 止 を 命 じ ることができるという 異 例 とも 思 える 内 容 ですが 最 近 の 下 院 の 動 きと 通 底 している ようにも 思 われまこうした 動 きと 併 せてみると この 規 定 については 今 後 修 正 がなされるかどうかを 注 視 してゆく 必 要 があると 思 われま その 他 の 変 更 点 としては MIC 許 可 を 受 けた 案 件 につき サブリース 抵 当 権 設 定 株 式 譲 渡 及 び 事 業 譲 渡 を 行 う 場 合 に MIC に 対 して 通 知 をする 義 務 についての 条 項 の 新 設 がありま 従 前 はこれらの 行 為 は MIC の 許 可 を 得 て 行 う 必 要 がありまし た 通 知 のみで 行 うことができるということになれば 規 制 緩 和 と 評 価 されま (c) 今 後 の 見 通 しについて 第 4 次 ドラフトについては 今 後 の 具 体 的 な 審 議 のスケジュールや 制 定 のタイミン グについては 明 らかにされていません もっとも 新 政 権 発 足 後 初 めての 第 4 次 ドラ フトが 従 前 のドラフトをほぼ 踏 襲 している 点 からすると 新 政 権 としても 新 投 資 法 の 検 討 は 最 終 段 階 と 捉 えていることが 窺 われまそれを 前 提 とすると 2016 年 の 半 ばから 後 半 にかけて 成 立 させるとの 一 般 的 な 見 込 みは 合 理 的 であると 思 われま
ミャンマーでは 新 投 資 法 に 加 え 会 社 法 の 改 正 案 も 検 討 されてきました これら の 法 案 では 外 国 会 社 によるミャンマーへの 投 資 に 大 きな 影 響 を 及 ぼすものが 含 まれ ていることから 今 後 も 引 き 続 きその 動 向 を 注 視 していく 必 要 がありま 3. 下 院 が MIC 許 可 を 受 けた 投 資 案 件 の 中 止 を 決 議 新 政 権 発 足 後 旧 政 権 時 代 に 許 可 されていた 2 件 の 投 資 案 件 につき 下 院 が 中 止 を 決 議 しました 1 つはヤンゴンにおける 病 院 事 業 の 投 資 案 件 であり マレーシア シンガ ポール 及 びミャンマー 会 社 の 合 弁 により ヤンゴン 総 合 病 院 の 隣 接 地 において 250 床 の 私 立 病 院 が 建 設 される 計 画 でした 当 該 案 件 については 手 続 の 不 透 明 性 や 政 府 からリースを 受 ける 土 地 上 に 私 立 病 院 を 建 設 することの 合 理 性 等 につき 現 地 メディア で 批 判 がなされてきましたが 下 院 は 5 月 12 日 当 該 投 資 の 中 止 を 決 議 しました も う 1 つは ヤンゴンにおける 港 湾 の 投 資 案 件 であり ミャンマーの 会 社 により 港 湾 開 発 がなされる 予 定 でした これについても 下 院 は 6 月 3 日 かかる 港 湾 開 発 による 周 辺 環 境 への 影 響 を 理 由 として 中 止 を 決 議 しました これらの 2 件 の 投 資 案 件 はいずれも 旧 政 権 下 で MIC の 許 可 を 既 に 得 ていたとのことで 外 国 投 資 法 上 国 家 の 利 益 に 影 響 を 与 える 重 要 な 投 資 案 件 については MIC は 国 会 に それを 提 出 することとされています( 同 法 53 条 ) 他 方 同 法 上 MIC の 決 定 は 最 終 と 規 定 されています( 同 法 49 条 ) 今 回 の 下 院 の 決 議 の 法 的 根 拠 は 不 明 ですが 外 国 投 資 法 上 MIC の 許 可 決 定 は 最 終 のものであり これを 下 院 決 議 で 覆 すことは 出 来 ないは ずで 現 地 メディアでも MIC の 事 務 局 長 の Aung Naing Oo 氏 のコメントとして これらの 下 院 の 決 議 は 法 律 違 反 であり MIC に 対 する 投 資 家 の 信 頼 を 失 わせるものとの 発 言 が 報 道 されていま 新 政 権 は 各 分 野 で 旧 政 権 時 代 の 政 策 や 決 定 の 見 直 しを 進 めており 上 記 もその 一 環 と 考 えられま 他 方 で 明 確 な 法 的 根 拠 なしに 既 に 決 定 がなされていた 投 資 案 件 を 中 止 に 追 い 込 むことは ミャンマーへの 信 頼 を 損 なうものといえま 本 案 件 の 今 後 の 帰 趨 及 び 今 後 同 種 の 事 態 の 発 生 の 有 無 については 注 意 深 く 見 守 ってゆく 必 要 がありま 弁 護 士 武 川 丈 士 +95-1-255135(ヤンゴン) +65-6593-9752(シンガポール) takeshi.mukawa@mhmjapan.com 弁 護 士 眞 鍋 佳 奈 +95-1-255137(ヤンゴン) +65-6593-9762(シンガポール) kana.manabe@mhmjapan.com 弁 護 士 井 上 淳 +95-1-255136(ヤンゴン) atsushi.inoue@mhmjapan.com ( 当 事 務 所 に 関 するお 問 い 合 せ) 森 濱 田 松 本 法 律 事 務 所 広 報 担 当 mhm_info@mhmjapan.com 03-6212-8330 www.mhmjapan.com