経済・物価情勢の展望(2016年1月)



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2000 年 12 月 輸 出 の 減 速 によりテンポはやや 鈍 化 しているものの 緩 やかな 回 復 を 続 けている 2001 年 1 月 緩 やかな 回 復 を 続 けているが そのテンポは 輸 出 の 減 速 により 鈍 化 している 2001 年 2 月 緩 やかな 回 復 を 続 け


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平成24年度 業務概況書

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税


記者発表資料

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第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 末 の 運 用 資 産 額 は 2,976 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +1.79%となりました なお 実 現 収 益 率 は +0.67%です 第 3 四 半 期

市況トレンド

片岡氏提出資料

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

Ⅰ. 量 的 質 的 金 融 緩 和 の 拡 大 量 的 質 的 金 融 緩 和 の 拡 大 マネタリーベースの 年 間 増 加 ペースを 60~70 兆 円 から 80 兆 円 に 拡 大 長 期 国 債 の 保 有 残 高 の 年 間 増 加 額 を 80 兆 円 に +30 兆 円 長 期 国

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2016年夏のボーナス見通し

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3 圏 域 では 県 北 沿 岸 で2の 傾 向 を 強 く 見 てとることができます 4 近 年 は 分 配 及 び 人 口 が 減 少 している 市 町 村 が 多 くなっているため 所 得 の 増 加 要 因 を 考 える 場 合 は 人 口 減 少 による 影 響 についても 考 慮 する

2

ほかに パート 従 業 員 らの 厚 生 年 金 加 入 の 拡 大 を 促 す 従 業 員 五 百 人 以 下 の 企 業 を 対 象 に 労 使 が 合 意 すれば 今 年 十 月 から 短 時 間 で 働 く 人 も 加 入 できる 対 象 は 約 五 十 万 人 五 百 人 超 の 企 業

Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

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(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

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は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

平 成 27 年 度 第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 の 運 用 資 産 額 は 2 兆 4,339 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +2.05%となりました 実 現 収 益 率 は +1.19%です

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タイトル

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

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社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

プラス 0.9%の 年 金 額 改 定 が 行 われることで 何 円 になりますか また どのような 計 算 が 行 われているのですか A これまでの 年 金 額 は 過 去 に 物 価 が 下 落 したにもかかわらず 年 金 額 は 据 え 置 く 措 置 をと った 時 の 計 算 式 に 基

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損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

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スライド 1

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市 町 村 税 の 概 況 市 町 村 税 の 概 況 は 平 成 25 年 度 地 方 財 政 状 況 調 査 平 成 26 年 度 市 町 村 税 の 課 税 状 況 等 の 調 及 び 平 成 26 年 度 固 定 資 産 の 価 格 等 の 概 要 調 書 等 報 告 書 等 の 資 料 に

減 少 率 ) と 平 均 余 命 の 伸 びを 勘 案 した 一 定 率 (0.3%) の 合 計 である スライド 調 整 率 を 差 し 引 いて 年 金 額 の 改 定 が 行 われる( 図 表 ) ただし マクロ 経 済 スライドが 完 全 に 実 施 されるのは 賃 金 や 物 価 があ

Q IFRSの特徴について教えてください

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

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課 税 ベ ー ス の 拡 大 等 : - 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し ( 後 掲 ) - 減 価 償 却 の 見 直 し ( 建 物 附 属 設 備 構 築 物 の 償 却 方 法 を 定 額 法 に 一 本 化 ) - 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 な る 見 直 し ( 大

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平成29年2月期 第2四半期決算短信

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

小 売 電 気 の 登 録 数 の 推 移 昨 年 8 月 の 前 登 録 申 請 の 受 付 開 始 以 降 小 売 電 気 の 登 録 申 請 は 着 実 に 増 加 しており これまでに310 件 を 登 録 (6 月 30 日 時 点 ) 本 年 4 月 の 全 面 自 由 化 以 降 申

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注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 新 規 - 社 除 外 - 社 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の

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2020年の住宅市場 ~人口・世帯数減少のインパクト~

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平成28年11月期第3四半期決算短

資料1:勧告の仕組みとポイント 改【完成】

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

消 費 ~ 軽 減 率 消 費 の 軽 減 率 制 度 が 消 費 率 10% 時 に 導 入 することとされています 平 成 26 年 4 月 1 日 平 成 27 年 10 月 1 日 ( 予 定 ) 消 費 率 5% 消 費 率 8% 消 費 率 10% 軽 減 率 の 導 入 平 成 26

1. 本 市 の 保 育 所 運 営 費 と 保 育 料 の 現 状 2 (1) 前 回 (5/29 5/29) 児 童 福 祉 専 門 分 科 会 資 料 国 基 準 に 対 する 本 市 の 保 育 料 階 層 区 分 別 軽 減 率 国 基 準 に 対 する 本 市 の 保 育 料 階 層 区

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03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項


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第5回法人課税ディスカッショングループ 法D5-4

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 有 ( 注 ) 詳 細 は 添 付 資 料 4ページ 2.サマリー 情 報 (

共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考

注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ): 無 新 規 - 社 ( 社 名 ) 除 外 - 社 ( 社 名 ) (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸

注 記 事 項 (1) 四 半 期 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 無 (2) 会 計 方 針 の 変 更 会 計 上 の 見 積 りの 変 更 修 正 再 表 示 1 会 計 基 準 等 の 改 正 に 伴 う 会 計 方 針 の 変 更 : 無 2 1

公表表紙

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 新 規 社 ( 社 名 ) 除 外 社 ( 社 名 ) (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の

Transcription:

2016 年 1 月 29 日 日 本 銀 行 経 済 物 価 情 勢 の 展 望 (2016 年 1 月 ) 基 本 的 見 解 1 < 概 要 > わが 国 の 景 気 は 輸 出 生 産 面 に 新 興 国 経 済 の 減 速 の 影 響 がみられるもの の 緩 やかな 回 復 を 続 けている 2017 年 度 までを 展 望 すると 家 計 企 業 の 両 部 門 において 所 得 から 支 出 への 前 向 きの 循 環 メカニズムが 持 続 する もとで 国 内 需 要 が 増 加 基 調 をたどるとともに 輸 出 も 新 興 国 経 済 が 減 速 した 状 態 から 脱 していくことなどを 背 景 に 緩 やかに 増 加 するとみられ る このため わが 国 経 済 は 基 調 として 緩 やかに 拡 大 していくと 考 えら れる 消 費 者 物 価 ( 除 く 生 鮮 食 品 )の 前 年 比 は エネルギー 価 格 下 落 の 影 響 から 当 面 0% 程 度 で 推 移 するとみられるが 物 価 の 基 調 は 着 実 に 高 まり 2% に 向 けて 上 昇 率 を 高 めていくと 考 えられる この 間 原 油 価 格 が 現 状 程 度 の 水 準 から 緩 やかに 上 昇 していくとの 前 提 にたてば エネルギー 価 格 の 寄 与 度 は 現 在 の-1% 強 から 次 第 に 剥 落 していくが 2016 年 度 末 まではマ イナス 寄 与 が 残 ると 試 算 される 2 この 前 提 のもとでは 消 費 者 物 価 の 前 年 比 が 物 価 安 定 の 目 標 3 である2% 程 度 に 達 する 時 期 は 2017 年 度 前 半 頃 になると 予 想 される 4 その 後 は 平 均 的 にみて 2% 程 度 で 推 移 する と 見 込 まれる 従 来 の 見 通 しと 比 べると 成 長 率 の 見 通 しは 概 ね 不 変 である 物 価 の 見 通 しは 2016 年 度 は 下 振 れ 2017 年 度 は 概 ね 不 変 である 物 価 見 通 しの 下 振 れおよび2% 程 度 に 達 する 時 期 の 後 ずれは 原 油 価 格 の 想 定 を 下 振 れ させたことによるものである 金 融 政 策 運 営 については 2%の 物 価 安 定 の 目 標 をできるだけ 早 期 に 実 現 するため マイナス 金 利 付 き 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 導 入 した 日 本 銀 行 は 2%の 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 を 目 指 し これを 安 定 的 に 持 続 するために 必 要 な 時 点 まで マイナス 金 利 付 き 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 継 続 する 今 後 とも 経 済 物 価 のリスク 要 因 を 点 検 し 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 のために 必 要 な 場 合 には 量 質 金 利 の3つ の 次 元 で 追 加 的 な 金 融 緩 和 措 置 を 講 じる 1 1 月 28 29 日 開 催 の 政 策 委 員 会 金 融 政 策 決 定 会 合 で 決 定 されたものである 2 各 政 策 委 員 は 見 通 し 作 成 にあたって 原 油 価 格 (ドバイ)は 1バレル 35 ドルを 出 発 点 に 見 通 し 期 間 の 終 盤 にかけて 40 ドル 台 後 半 に 緩 やかに 上 昇 していくと 想 定 して いる その 場 合 の 消 費 者 物 価 ( 除 く 生 鮮 食 品 )の 前 年 比 に 対 するエネルギー 価 格 の 寄 与 度 は 2015 年 度 で-0.9%ポイント 程 度 2016 年 度 で-0.7~-0.8%ポイント 程 度 と 試 算 される また 寄 与 度 は 2016 年 度 後 半 にマイナス 幅 縮 小 に 転 じ 2017 年 度 前 半 中 には 概 ねゼロになると 試 算 される 3 日 本 銀 行 は 物 価 安 定 の 目 標 を 消 費 者 物 価 指 数 ( 総 合 ベース)の 前 年 比 上 昇 率 で2% としている そのうえで 見 通 しは 天 候 など 予 測 しがたい 要 因 に 左 右 される 生 鮮 食 品 を 除 くベースの 消 費 者 物 価 指 数 で 作 成 している 4 2017 年 度 については 消 費 税 率 引 き 上 げの 直 接 的 な 影 響 を 除 くベース 消 費 税 率 につ いては 2017 年 4 月 に 10%に 引 き 上 げられること( 軽 減 税 率 については 酒 類 と 外 食 を 除 く 飲 食 料 品 および 新 聞 に 適 用 されること)を 前 提 としている 1

1.わが 国 の 経 済 物 価 の 現 状 わが 国 の 景 気 は 輸 出 生 産 面 に 新 興 国 経 済 の 減 速 の 影 響 がみられるも のの 緩 やかな 回 復 を 続 けている 海 外 経 済 は 新 興 国 が 減 速 しているが 先 進 国 を 中 心 とした 緩 やかな 成 長 が 続 いている そうしたもとで 輸 出 は 一 部 に 鈍 さを 残 しつつも 持 ち 直 している 国 内 需 要 の 面 では 設 備 投 資 は 企 業 収 益 が 明 確 な 改 善 を 続 けるなかで 緩 やかな 増 加 基 調 にある ま た 雇 用 所 得 環 境 の 着 実 な 改 善 を 背 景 に 個 人 消 費 は 底 堅 く 推 移 してい るほか 住 宅 投 資 も 持 ち 直 している 公 共 投 資 は 高 水 準 ながら 緩 やかな 減 少 傾 向 にある 鉱 工 業 生 産 は 横 ばい 圏 内 の 動 きが 続 いている わが 国 の 金 融 環 境 は 緩 和 した 状 態 にある 物 価 面 では 消 費 者 物 価 ( 除 く 生 鮮 食 品 以 下 同 じ)の 前 年 比 は 0% 程 度 となっている 予 想 物 価 上 昇 率 は このところ 弱 めの 指 標 もみられているが やや 長 い 目 でみれば 全 体 とし て 上 昇 しているとみられる 2.わが 国 の 経 済 物 価 の 中 心 的 な 見 通 し (1) 経 済 情 勢 先 行 きのわが 国 経 済 を 展 望 すると 家 計 企 業 の 両 部 門 において 所 得 か ら 支 出 への 前 向 きの 循 環 メカニズムが 持 続 するもとで 国 内 需 要 が 増 加 基 調 をたどるとともに 輸 出 も 新 興 国 経 済 が 減 速 した 状 態 から 脱 していく ことなどを 背 景 に 緩 やかに 増 加 するとみられる このため わが 国 経 済 は 基 調 として 緩 やかに 拡 大 していくと 考 えられる すなわち わが 国 経 済 は 2016 年 度 にかけて 潜 在 成 長 率 を 上 回 る 成 長 を 続 けると 予 想 される 5 2017 年 度 にかけては 消 費 税 率 引 き 上 げ 前 の 駆 け 込 み 需 要 とその 反 動 などの 影 響 を 受 けるとともに 景 気 の 循 環 的 な 動 きを 映 じて 潜 在 成 長 率 を 幾 分 下 回 る 程 度 に 減 速 しつつも プラス 成 長 を 維 持 す 5 わが 国 の 潜 在 成 長 率 を 一 定 の 手 法 で 推 計 すると このところ 0% 台 前 半 ないし 半 ば 程 度 と 計 算 されるが 見 通 し 期 間 の 終 盤 にかけて 徐 々に 上 昇 していくと 見 込 まれる ただし 潜 在 成 長 率 は 推 計 手 法 や 今 後 蓄 積 されていくデータにも 左 右 される 性 格 のも のであるため 相 当 の 幅 をもってみる 必 要 がある 2

ると 予 想 される こうした 見 通 しの 背 景 にある 前 提 は 以 下 のとおりである 第 1に 日 本 銀 行 が 2%の 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 を 目 指 し これ を 安 定 的 に 持 続 するために 必 要 な 時 点 まで マイナス 金 利 付 き 量 的 質 的 金 融 緩 和 6 を 継 続 するなかで 金 融 環 境 は 緩 和 した 状 態 が 続 き 景 気 に 対 し 刺 激 的 に 作 用 していくと 想 定 している 7 第 2に 海 外 経 済 については 先 進 国 が 堅 調 な 成 長 を 続 けるとともに その 好 影 響 が 波 及 し 新 興 国 も 減 速 した 状 態 から 脱 していくとみられること から 緩 やかに 成 長 率 を 高 めていくと 予 想 している 第 3に 公 共 投 資 は 現 在 の 高 めの 水 準 から 緩 やかな 減 少 傾 向 をたどっ たあと 見 通 し 期 間 の 終 盤 にかけては 下 げ 止 まっていくと 想 定 している 第 4に 政 府 による 規 制 制 度 改 革 などの 成 長 戦 略 の 推 進 や そのもと での 女 性 や 高 齢 者 による 労 働 参 加 の 高 まり 企 業 による 生 産 性 向 上 に 向 け た 取 り 組 みと 内 外 需 要 の 掘 り 起 こしなどが 続 くとともに デフレからの 脱 却 が 着 実 に 進 んでいくにつれて 企 業 や 家 計 の 中 長 期 的 な 成 長 期 待 は 緩 やかに 高 まっていくと 想 定 している 以 上 を 前 提 に 見 通 し 期 間 の 景 気 展 開 をやや 詳 しく 述 べると 2015 年 度 下 期 から 2016 年 度 にかけては 輸 出 は 当 面 持 ち 直 しを 続 けたあと 新 興 国 経 済 が 減 速 した 状 態 から 脱 していくもとで 既 往 の 為 替 相 場 の 動 きによ る 下 支 えもあって 緩 やかに 増 加 していくと 考 えられる 設 備 投 資 は 輸 出 生 産 の 持 ち 直 しに 伴 って 設 備 稼 働 率 が 上 昇 するとともに 過 去 最 高 水 準 にある 企 業 収 益 や 金 融 緩 和 効 果 が 引 き 続 き 押 し 上 げに 作 用 するなか 国 内 向 け 投 資 の 積 極 化 などもあって 増 加 を 続 けるとみられる 個 人 消 費 は 雇 用 環 境 の 着 実 な 改 善 が 続 き 賃 金 が 上 昇 していくことや エネルギー 価 6 マイナス 金 利 付 き 量 的 質 的 金 融 緩 和 の 導 入 (2016 年 1 月 29 日 ) 7 各 政 策 委 員 は 既 に 決 定 した 政 策 を 前 提 として また 先 行 きの 政 策 運 営 については 市 場 の 織 り 込 みを 参 考 にして 見 通 しを 作 成 している 具 体 的 には 長 短 金 利 について 市 場 金 利 をもとにしつつ 展 望 レポートと 市 場 参 加 者 との 物 価 見 通 しの 違 いを 加 味 し また 本 日 の 決 定 が 及 ぼす 影 響 を 勘 案 して 想 定 している 3

格 下 落 による 実 質 所 得 の 押 し 上 げ 効 果 が 働 くことなどから 緩 やかに 増 加 すると 予 想 される 鉱 工 業 生 産 は 新 興 国 経 済 の 減 速 の 影 響 が 和 らぎ 在 庫 調 整 が 進 捗 するにつれて 持 ち 直 しに 転 じ その 後 は 内 外 需 要 を 反 映 し て 緩 やかに 増 加 していくとみられる 2017 年 度 にかけては 2017 年 4 月 の 消 費 税 率 引 き 上 げ 前 の 駆 け 込 み 需 要 とその 反 動 の 影 響 を 受 けるとともに 設 備 投 資 の 増 加 ペースが 資 本 ストッ クの 蓄 積 に 伴 って 低 下 していくとみられる 8 もっとも 輸 出 が 海 外 経 済 の 成 長 などを 背 景 に 緩 やかな 増 加 を 続 けるとともに 国 内 民 間 需 要 も 緩 和 的 な 金 融 環 境 と 成 長 期 待 の 高 まりなどを 受 けて 底 堅 く 推 移 すると 予 想 さ れる この 間 潜 在 成 長 率 は 見 通 し 期 間 を 通 じて 緩 やかな 上 昇 傾 向 をた どり 中 長 期 的 にみた 成 長 ペースを 押 し 上 げていくと 考 えられる こうし たもとで 2017 年 度 は 潜 在 成 長 率 を 幾 分 下 回 る 程 度 に 減 速 しつつも プ ラス 成 長 を 維 持 すると 見 込 まれる 今 回 の 見 通 しを 従 来 の 見 通 しと 比 べると 概 ね 不 変 である (2) 物 価 情 勢 先 行 きの 物 価 を 展 望 すると 消 費 者 物 価 の 前 年 比 は エネルギー 価 格 下 落 の 影 響 から 当 面 0% 程 度 で 推 移 するとみられるが 物 価 の 基 調 は 着 実 に 高 まり 2%に 向 けて 上 昇 率 を 高 めていくと 考 えられる この 間 原 油 価 格 が 現 状 程 度 の 水 準 から 緩 やかに 上 昇 していくとの 前 提 にたてば エネ ルギー 価 格 の 寄 与 度 は 現 在 の-1% 強 から 次 第 に 剥 落 していくが 2016 年 度 末 まではマイナス 寄 与 が 残 ると 試 算 される この 前 提 のもとでは 消 費 者 物 価 の 前 年 比 が 物 価 安 定 の 目 標 である2% 程 度 に 達 する 時 期 は 2017 年 度 前 半 頃 になると 予 想 される 9 その 後 は 平 均 的 にみて 2% 程 度 8 2 回 の 消 費 税 率 の 引 き 上 げが 年 度 毎 の 成 長 率 に 及 ぼす 影 響 を 定 量 的 に 試 算 すると 2013 年 度 +0.5%ポイント 程 度 2014 年 度 -1.2%ポイント 程 度 2015 年 度 +0.3%ポ イント 程 度 2016 年 度 +0.3%ポイント 程 度 2017 年 度 -0.7%ポイント 程 度 となる ただし これらは その 時 々の 所 得 環 境 や 物 価 動 向 にも 左 右 されるなど 不 確 実 性 が 大 き く 相 当 の 幅 をもってみる 必 要 がある 9 2017 年 4 月 に 予 定 される 消 費 税 率 引 き 上 げが 物 価 に 及 ぼす 影 響 について 税 率 引 き 上 げが 課 税 品 目 にフル 転 嫁 されることを 前 提 に 機 械 的 に 試 算 すると 2017 年 度 の 消 費 者 4

で 推 移 すると 見 込 まれる 今 回 の 見 通 しを 従 来 の 見 通 しと 比 べると 2016 年 度 は 下 振 れ 2017 年 度 は 概 ね 不 変 である 物 価 見 通 しの 下 振 れおよび2% 程 度 に 達 する 時 期 の 後 ずれは 原 油 価 格 の 想 定 を 下 振 れさせたことによるものである こうした 見 通 しの 背 景 として 物 価 上 昇 率 を 規 定 する 主 たる 要 因 につい て 点 検 すると 第 1に 労 働 や 設 備 の 稼 働 状 況 を 表 すマクロ 的 な 需 給 バラ ンスは 新 興 国 経 済 の 減 速 を 背 景 とした 生 産 のもたつきの 影 響 などを 受 け つつも 労 働 面 を 中 心 として 着 実 に 改 善 傾 向 をたどっている 10 すなわ ち 失 業 率 が 緩 やかに 低 下 し 3% 台 前 半 で 推 移 するなど 労 働 需 給 は 引 き 締 まり 傾 向 が 続 いている 11 設 備 の 稼 働 率 は 輸 出 生 産 の 持 ち 直 しに 伴 い 上 昇 していくと 考 えられる 先 行 きについては マクロ 的 な 需 給 バ ランスは 本 年 度 末 にかけてプラス( 需 要 超 過 )に 転 じたあと 2016 年 度 にプラス 幅 が 一 段 と 拡 大 し 需 給 面 からみた 賃 金 と 物 価 の 上 昇 圧 力 は 着 実 に 強 まっていくと 予 想 される その 後 2017 年 度 には マクロ 的 な 需 給 バランスは プラスの 水 準 で 横 ばい 圏 内 の 動 きになると 見 込 まれる 第 2に 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 については このところ 弱 めの 指 標 もみられているが やや 長 い 目 でみれば 全 体 として 上 昇 しているとみら れる すなわち マーケット 関 連 指 標 やアンケート 調 査 のなかには 弱 めの 指 標 もみられているが 企 業 の 価 格 賃 金 設 定 スタンスは 特 に 本 年 度 入 物 価 の 前 年 比 は+1.0%ポイント 押 し 上 げられる 10 マクロ 的 な 需 給 バランスについては 1 潜 在 GDPを 推 計 のうえ 実 際 のGDPとの 乖 離 を 計 測 するアプローチと 2 生 産 要 素 ( 労 働 と 設 備 )の 稼 働 状 況 を 直 接 計 測 するア プローチがある 展 望 レポートにおけるマクロ 的 な 需 給 バランスの 計 測 は 従 来 から 後 者 のアプローチを 採 用 しているため GDP 成 長 率 の 変 化 と 需 給 バランスの 拡 大 縮 小 の 間 に1 対 1の 対 応 関 係 があるわけではない マクロ 的 な 需 給 バランスの 値 は 計 測 方 法 や 使 用 するデータによって 異 なり 得 るため 相 当 の 幅 をもってみる 必 要 がある 11 労 働 需 給 の 引 き 締 まり 度 合 いを 測 る 際 のひとつの 目 安 として 構 造 失 業 率 がある 労 働 市 場 では 求 人 と 求 職 の 間 にある 程 度 のミスマッチが 常 に 存 在 するため 好 況 時 で あっても 一 定 の 失 業 者 が 存 在 する 構 造 失 業 率 は こうしたミスマッチに 起 因 する 失 業 の 存 在 を 前 提 に 過 剰 労 働 力 が 解 消 した 状 態 に 対 応 する 失 業 率 にあたる 構 造 失 業 率 を 一 定 の 手 法 で 推 計 すると 最 近 の 水 準 は3% 台 前 半 となる ただし 構 造 失 業 率 の 推 計 値 は 時 間 の 経 過 などに 伴 って 変 化 する 性 格 のものである 点 には 留 意 が 必 要 である 5

り 後 明 確 に 変 化 している 消 費 者 も 雇 用 所 得 環 境 の 改 善 などを 受 け て 価 格 改 定 を 受 容 しているとみられる こうしたもとで 価 格 改 定 の 動 きは 拡 がりと 持 続 性 を 伴 っている また 労 使 間 の 賃 金 交 渉 においては 一 昨 年 以 来 企 業 業 績 や 労 働 需 給 に 加 え 物 価 動 向 を 賃 金 に 反 映 する 動 き が 拡 がっており 今 年 もこうした 動 きが 継 続 することが 見 込 まれる この ように 賃 金 の 上 昇 を 伴 いつつ 物 価 上 昇 率 が 緩 やかに 高 まっていくとい うメカニズムは 着 実 に 作 用 している もっとも 企 業 収 益 が 過 去 最 高 水 準 にあり 失 業 率 が3% 台 前 半 まで 低 下 していることとの 対 比 でみると こ れまでのところ 賃 金 の 改 善 の 程 度 が 鈍 く 労 働 分 配 率 も 低 下 傾 向 を 続 けて いる 点 には 留 意 する 必 要 がある 先 行 きについては 日 本 銀 行 が マイナス 金 利 付 き 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 推 進 し 実 際 の 物 価 上 昇 率 が 高 まっていくもとで 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 も 上 昇 傾 向 をたどり 物 価 安 定 の 目 標 である2% 程 度 に 向 けて 次 第 に 収 斂 していくとみられる こうしたもとで 企 業 の 価 格 賃 金 設 定 スタンスは 積 極 化 していくと 考 えられる 第 3に 輸 入 物 価 についてみると これまでの 為 替 相 場 の 動 きが 輸 入 物 価 を 通 じた 消 費 者 物 価 の 押 し 上 げ 要 因 として 作 用 していく 一 方 原 油 価 格 をはじめとする 国 際 商 品 市 況 の 下 落 は 物 価 の 下 押 し 圧 力 となる なお 円 安 が 物 価 に 与 える 影 響 については 輸 入 物 価 の 上 昇 を 通 じた 直 接 的 な 物 価 押 し 上 げ 効 果 に 加 え マクロ 的 な 需 給 バランスの 改 善 を 通 じて 実 際 の 物 価 を 押 し 上 げ さらに 予 想 物 価 上 昇 率 を 押 し 上 げるというより 持 続 的 な 効 果 もある 3. 上 振 れ 要 因 下 振 れ 要 因 (1) 経 済 情 勢 上 記 の 中 心 的 な 経 済 の 見 通 しに 対 する 上 振 れ 下 振 れ 要 因 としては 第 1に 海 外 経 済 の 動 向 に 関 する 不 確 実 性 がある 中 国 をはじめとする 新 興 国 や 資 源 国 については 引 き 続 き 不 透 明 感 が 強 いことに 加 え 資 源 価 格 下 6

落 の 影 響 もあって その 成 長 ペースと 世 界 経 済 への 影 響 には 不 確 実 性 があ る また 米 国 経 済 の 動 向 やそのもとでの 金 融 政 策 運 営 が 国 際 金 融 資 本 市 場 に 及 ぼす 影 響 欧 州 における 債 務 問 題 の 展 開 や 景 気 物 価 のモメンタム 地 政 学 的 リスクなどもリスク 要 因 として 挙 げられる 第 2は 2017 年 4 月 に 予 定 される 消 費 税 率 引 き 上 げの 影 響 である 軽 減 税 率 の 導 入 によって 駆 け 込 み 需 要 とその 反 動 の 影 響 や 実 質 所 得 減 少 の 影 響 は 幾 分 減 殺 されるとみられるが 実 際 のインパクトは 消 費 者 マインド や 雇 用 所 得 環 境 物 価 の 動 向 によって 変 化 し 得 る 第 3に 企 業 や 家 計 の 中 長 期 的 な 成 長 期 待 は 規 制 制 度 改 革 の 今 後 の 展 開 や 企 業 部 門 におけるイノベーション 家 計 部 門 を 取 り 巻 く 雇 用 所 得 環 境 などによって 上 下 双 方 向 に 変 化 する 可 能 性 がある この 点 企 業 が 過 去 最 高 の 収 益 に 伴 う 潤 沢 なキャッシュフローをより 効 率 的 に 設 備 人 材 投 資 などに 活 用 していくことが 期 待 される 第 4に 財 政 の 中 長 期 的 な 持 続 可 能 性 に 対 する 信 認 が 低 下 するような 場 合 には 人 々の 将 来 不 安 の 強 まりや 経 済 実 態 から 乖 離 した 長 期 金 利 の 上 昇 などを 通 じて 経 済 の 下 振 れにつながる 惧 れがある 一 方 財 政 再 建 の 道 筋 に 対 する 信 認 が 高 まり 人 々の 将 来 不 安 が 軽 減 されれば 経 済 が 上 振 れ る 可 能 性 もある (2) 物 価 情 勢 上 述 のような 経 済 の 上 振 れ 下 振 れ 要 因 が 顕 在 化 した 場 合 物 価 にも 相 応 の 影 響 が 及 ぶとみられる それ 以 外 に 物 価 の 上 振 れ 下 振 れをもたらす 要 因 としては 第 1に 企 業 や 家 計 の 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 の 動 向 が 挙 げられる 中 心 的 な 見 通 しでは 賃 金 の 上 昇 を 伴 いながら 実 際 の 物 価 上 昇 率 が 高 まっていくなかで 人 々の 予 想 物 価 上 昇 率 も 一 段 と 上 昇 し 物 価 安 定 の 目 標 である2% 程 度 に 向 けて 次 第 に 収 斂 していく 姿 を 想 定 して いるが その 上 昇 ペースには 実 際 の 物 価 の 動 きやそれが 予 想 物 価 に 及 ぼ す 影 響 の 度 合 いなどを 巡 って 不 確 実 性 がある この 点 では エネルギー 価 7

格 下 落 の 影 響 が 長 引 き 現 実 の 消 費 者 物 価 の 前 年 比 が 高 まりにくい 状 況 が 長 期 間 続 くことによって 予 想 物 価 上 昇 率 の 上 昇 ペースに 影 響 するリスク がある また 賃 金 と 物 価 の 関 係 を 考 えると 今 春 の 労 使 交 渉 において 既 往 の 基 調 的 な 物 価 上 昇 や 先 行 きの 物 価 見 通 しが 賃 金 上 昇 に 適 切 に 反 映 さ れていくことが 重 要 である さらに このところ 原 油 価 格 の 一 段 の 下 落 に 加 え 中 国 をはじめとする 新 興 国 資 源 国 経 済 に 対 する 先 行 き 不 透 明 感 などから 金 融 市 場 は 世 界 的 に 不 安 的 な 動 きとなっている このため 企 業 コンフィデンスの 改 善 や 人 々のデフレマインドの 転 換 が 遅 延 し 物 価 の 基 調 に 悪 影 響 が 及 ぶリスクが 増 大 している 第 2に マクロ 的 な 需 給 バランス とくに 労 働 需 給 の 動 向 がある 中 心 的 な 見 通 しでは 近 年 の 高 齢 者 や 女 性 による 労 働 参 加 の 高 まりや 最 近 みら れているパート 労 働 の 正 規 雇 用 化 が 労 働 供 給 を 下 支 えしていくことを 前 提 としているが この 点 を 巡 っては 上 下 双 方 向 の 不 確 実 性 がある 第 3に 物 価 上 昇 率 のマクロ 的 な 需 給 バランスに 対 する 感 応 度 が 挙 げら れる すなわち 海 外 経 済 の 動 向 など 経 営 環 境 を 巡 る 不 確 実 性 から 企 業 の 賃 上 げの 動 きが 拡 がりを 欠 く 場 合 や そうしたもとで 消 費 者 の 物 価 上 昇 に 対 する 抵 抗 感 が 強 まる 場 合 には 物 価 の 上 昇 ペースが 下 振 れるリスクがあ る また 食 料 工 業 品 や 耐 久 消 費 財 などの 価 格 が 需 給 ギャップの 改 善 に 比 較 的 強 く 反 応 する 一 方 公 共 料 金 や 一 部 のサービス 価 格 家 賃 などの 反 応 はこれまでのところ 鈍 く 先 行 きも 消 費 者 物 価 の 上 昇 率 の 高 まりを 抑 制 す る 要 因 となる 可 能 性 がある 第 4に 原 油 価 格 といった 国 際 商 品 市 況 や 為 替 相 場 の 変 動 などに 伴 う 輸 入 物 価 の 動 向 や その 国 内 価 格 への 波 及 の 状 況 によっても 上 振 れ 下 振 れ 双 方 の 可 能 性 がある 4. 金 融 政 策 運 営 以 上 の 経 済 物 価 情 勢 について 物 価 安 定 の 目 標 のもとで 2つの 8

柱 による 点 検 を 行 い 先 行 きの 金 融 政 策 運 営 の 考 え 方 を 整 理 する 12 まず 第 1の 柱 すなわち 中 心 的 な 見 通 しについて 点 検 すると わが 国 経 済 は 2017 年 度 前 半 頃 に2% 程 度 の 物 価 上 昇 率 を 実 現 し その 後 次 第 に これを 安 定 的 に 持 続 する 成 長 経 路 へと 移 行 していく 可 能 性 が 高 いと 判 断 さ れる 次 に 第 2の 柱 すなわち 金 融 政 策 運 営 の 観 点 から 重 視 すべきリスクに ついて 点 検 すると 中 心 的 な 経 済 の 見 通 しについては 海 外 経 済 の 動 向 を 中 心 に 下 振 れリスクが 大 きい 物 価 の 中 心 的 な 見 通 しについては 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 の 動 向 などを 巡 って 不 確 実 性 は 大 きく 下 振 れリスク が 大 きい より 長 期 的 な 視 点 から 金 融 面 の 不 均 衡 について 点 検 すると 現 時 点 では 資 産 市 場 や 金 融 機 関 行 動 において 過 度 な 期 待 の 強 気 化 を 示 す 動 きは 観 察 されない もっとも 政 府 債 務 残 高 が 累 増 するなかで 金 融 機 関 の 国 債 保 有 残 高 は 全 体 として 減 少 傾 向 が 続 いているが なお 高 水 準 であ る 点 には 留 意 する 必 要 がある 金 融 政 策 運 営 については 2%の 物 価 安 定 の 目 標 をできるだけ 早 期 に 実 現 するため マイナス 金 利 付 き 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 導 入 した 日 本 銀 行 は 2%の 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 を 目 指 し これを 安 定 的 に 持 続 するために 必 要 な 時 点 まで マイナス 金 利 付 き 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 継 続 する 今 後 とも 経 済 物 価 のリスク 要 因 を 点 検 し 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 のために 必 要 な 場 合 には 量 質 金 利 の3つ の 次 元 で 追 加 的 な 金 融 緩 和 措 置 を 講 じる 以 上 12 物 価 安 定 の 目 標 のもとでの2つの 柱 による 点 検 については 日 本 銀 行 金 融 政 策 運 営 の 枠 組 みのもとでの 物 価 安 定 の 目 標 について (2013 年 1 月 22 日 ) 参 照 9

( 参 考 ) 2015~2017 年 度 の 政 策 委 員 の 大 勢 見 通 し 対 前 年 度 比 % なお < > 内 は 政 策 委 員 見 通 しの 中 央 値 実 質 GDP 消 費 者 物 価 指 数 ( 除 く 生 鮮 食 品 ) 消 費 税 率 引 き 上 げの 影 響 を 除 くケース 2015 年 度 +1.0~+1.3 <+1.1> 0.0~+0.2 <+0.1> 10 月 時 点 の 見 通 し +0.8~+1.4 <+1.2> 0.0~+0.4 <+0.1> 2016 年 度 +1.0~+1.7 <+1.5> +0.2~+1.2 <+0.8> 10 月 時 点 の 見 通 し +1.2~+1.6 <+1.4> +0.8~+1.5 <+1.4> 2017 年 度 +0.1~+0.5 <+0.3> +2.0~+3.1 <+2.8> +1.0~+2.1 <+1.8> 10 月 時 点 の 見 通 し +0.1~+0.5 <+0.3> +2.5~+3.4 <+3.1> +1.2~+2.1 <+1.8> ( 注 1) 大 勢 見 通 し は 各 政 策 委 員 が 最 も 蓋 然 性 の 高 いと 考 える 見 通 しの 数 値 について 最 大 値 と 最 小 値 を1 個 ずつ 除 いて 幅 で 示 したものであり その 幅 は 予 測 誤 差 など を 踏 まえた 見 通 しの 上 限 下 限 を 意 味 しない ( 注 2) 各 政 策 委 員 は 既 に 決 定 した 政 策 を 前 提 として また 先 行 きの 政 策 運 営 については 市 場 の 織 り 込 みを 参 考 にして 上 記 の 見 通 しを 作 成 している 具 体 的 には 長 短 金 利 について 市 場 金 利 をもとにしつつ 展 望 レポートと 市 場 参 加 者 との 物 価 見 通 しの 違 いを 加 味 し また 本 日 の 決 定 が 及 ぼす 影 響 を 勘 案 して 想 定 している ( 注 3) 原 油 価 格 (ドバイ)については 1バレル 35 ドルを 出 発 点 に 見 通 し 期 間 の 終 盤 にかけて 40 ドル 台 後 半 に 緩 やかに 上 昇 していくと 想 定 している その 場 合 の 消 費 者 物 価 ( 除 く 生 鮮 食 品 )の 前 年 比 に 対 するエネルギー 価 格 の 寄 与 度 は 2015 年 度 で- 0.9%ポイント 程 度 2016 年 度 で-0.7~-0.8%ポイント 程 度 と 試 算 される また 寄 与 度 は 2016 年 度 後 半 にマイナス 幅 縮 小 に 転 じ 2017 年 度 前 半 中 には 概 ねゼロに なると 試 算 される ( 注 4) 今 回 の 見 通 しでは 消 費 税 率 について 2017 年 4 月 に 10%に 引 き 上 げられること ( 軽 減 税 率 については 酒 類 と 外 食 を 除 く 飲 食 料 品 および 新 聞 に 適 用 されること)を 前 提 としているが 各 政 策 委 員 は 消 費 税 率 引 き 上 げの 直 接 的 な 影 響 を 除 いた 消 費 者 物 価 の 見 通 し 計 数 を 作 成 している 消 費 税 率 引 き 上 げの 直 接 的 な 影 響 を 含 む 2017 年 度 の 消 費 者 物 価 の 見 通 しは 税 率 引 き 上 げが 課 税 品 目 にフル 転 嫁 されることを 前 提 に 物 価 の 押 し 上 げ 寄 与 を 機 械 的 に 計 算 したうえで(+1.0%ポイント) これを 政 策 委 員 の 見 通 し 計 数 に 足 し 上 げたものである 10

政 策 委 員 の 経 済 物 価 見 通 しとリスク 評 価 (1) 実 質 GDP 4.0 ( 前 年 比 %) ( 前 年 比 %) 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0-0.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0-0.5-1.0-1.0 2009 2010 年 度 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 (2) 消 費 者 物 価 指 数 ( 除 く 生 鮮 食 品 ) 3.5 ( 前 年 比 %) ( 前 年 比 %) 3.5 3.0 3.0 2.5 2.5 2.0 2.0 1.5 1.5 1.0 1.0 0.5 0.5 0.0 0.0-0.5-0.5-1.0-1.0 2009 2010 年 度 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 ( 注 1) 実 線 は 実 績 値 点 線 は 政 策 委 員 見 通 しの 中 央 値 を 示 す ( 注 2) は 各 政 策 委 員 が 最 も 蓋 然 性 が 高 いと 考 える 見 通 しの 数 値 を 示 すとともに その 形 状 で 各 政 策 委 員 が 考 えるリスクバランスを 示 している は リスクは 概 ね 上 下 にバランスしている は 上 振 れリスクが 大 きい は 下 振 れリスクが 大 きい と 各 政 策 委 員 が 考 えていることを 示 している ( 注 3) 消 費 者 物 価 指 数 ( 除 く 生 鮮 食 品 )は 消 費 税 率 引 き 上 げの 直 接 的 な 影 響 を 除 いたベース 11