雑 誌 マンションリフォームの 実 務 2003 年 11 月 掲 載 エレベーター 取 替 え (1) エレベーターの 故 障 電 気 機 械 組 立 装 置 に 故 障 が 発 生 するのは 一 般 的 に 設 置 の 直 後 に 多 く( 初 期 故 障 期 ) そ の 後 一 定 の 期 間 は 少 なくなり( 安 定 期 ) 経 年 劣 化 が 起 こると 再 び 故 障 発 生 が 多 くなる 傾 向 がある( 磨 耗 故 障 期 ) これは エレベーターにもいえることであり 磨 耗 劣 化 故 障 は 機 械 装 置 であるエレベーターにとって 避 けられない 図 1 は 経 年 と 故 障 発 生 件 数 の 関 係 を 示 す バスタブの 断 面 に 似 ているので バスタブ 曲 線 とも 呼 ばれる エレベーターが 故 障 すると 閉 じ 込 めや 異 常 な 振 動 床 面 とかごの 床 の 段 ズレなど 乗 客 にとって 危 険 な 状 況 になりうるため 実 際 には 故 障 する 前 に 部 品 交 換 をする 予 防 保 全 方 式 が 取 られている 多 くの 部 品 で 構 成 されるエレベーターでは その 部 品 もそれぞれのバスタブ 曲 線 をもつの で 新 設 3~4 年 後 以 降 の 安 定 期 では 故 障 部 品 交 換 も 少 なくなるが 磨 耗 故 障 期 に 入 ると 再 び 部 品 交 換 や 修 繕 が 続 くことになる この 時 期 の 保 守 を 適 切 に 行 うことが 安 全 性 全 体 の 寿 命 修 繕 コストにとって 重 要 である (2) エレベーターの 保 守 契 約 図 -1 経 年 と 故 障 発 生 件 数 の 関 係 エレベーターの 保 守 契 約 には POG(Parts Oil and Grease) 契 約 とフルメンテナンス 契 約 があ る POG 契 約 には 日 常 の 定 期 的 点 検 劣 化 磨 耗 汚 損 が 発 生 する 機 器 の 機 能 の 維 持 ( 清 掃 注 給 油 測 定 調 整 など) 経 年 により 劣 化 が 進 行 する 機 器 の 劣 化 状 況 診 断 およびヒューズ 類 白 熱 表 示 灯 など 一 部 の 消 耗 部 品 の 交 換 が 含 まれる 一 方 フルメンテナンス 契 約 は 文 字 通 り 全 部 をカバーする 契 約 で 上 記 に 加 えて 電 動 機 の 整 備 部 品 交 換 ロープの 交 換 などなど 安 全 機 能 性 能 を 維 持 するための 部 品 は 契 約 内 で 交 換 される しかし 電 動 機 の 交 換 制 御 運 転 方 式 の 変 更 及 びかご 内 装 品 乗 場 の 扉 枠 など 意 匠 的 な 部 分 は 含 まれない 故 障 対 応 や 修 理 を 行 う 間 隔 については 保 守 会 社 によって また POG 契 約 かフルメンテナン ス 契 約 かで 異 なる 場 合 があるので 注 意 が 必 要 である 以 上 のようにフルメンテナンス 契 約 ではその 費 用 を 払 えば それ 以 外 に 機 能 を 維 持 するため の 費 用 発 生 が 無 いというわかりやすい 契 約 になっているが 契 約 金 額 は 当 然 にフルメンテナン ス 契 約 の 方 が 高 くなる 保 守 会 社 は エレベーターの 標 準 的 な 寿 命 の 中 で 発 生 する 部 品 交 換 や 計 画 的 な 修 繕 の 費 用 を 累 計 積 算 した 額 を 契 約 期 間 で 均 して 保 守 費 用 が 決 まると 主 張 するが 下 記 のような 点 に 注 意 したい
1 寿 命 と 契 約 期 間 エレベーターの 寿 命 は 後 述 のように 約 30 年 近 いが フルメンテナンス 契 約 は20 年 となっている 場 合 が 多 い つまりその 後 故 障 や 修 繕 が 増 える 期 間 は 保 守 契 約 に 含 まれていない 2 修 繕 計 画 と 実 際 標 準 的 な 部 品 交 換 例 を 基 準 に 交 換 修 繕 計 画 が 策 定 されるというが 実 際 は 交 換 修 繕 の 頻 度 が 少 ない 場 合 が 多 い 3 使 用 頻 度 による 調 整 がない 走 行 や 起 動 により 磨 耗 劣 化 する 部 品 が 多 いが 運 転 頻 度 はエ レベーターによってばらつきが 多 いにも 関 わらず 保 守 費 用 はその 調 整 がみられない マンシ ョンのエレベーターの 起 動 回 数 は1 万 回 / 月 前 後 走 行 距 離 は 10~15 km/ 月 程 度 が 最 頻 値 と 思 われるので それ 以 下 の 使 用 頻 度 の 場 合 は 保 守 費 が 少 なくてすむはずである これらを 考 慮 すると ユーザーから 見 た 合 理 的 な 保 守 契 約 として 考 えられる 形 態 は 保 守 会 社 とPOG 契 約 を 結 び フルメンテナンス 契 約 との 差 額 を 管 理 組 合 で 積 立 てておく という ものである 必 要 な 修 繕 費 用 を 支 出 しても 多 くの 場 合 は 計 画 との 差 額 が 残 存 する 可 能 性 があ る 更 に 交 換 修 繕 の 頻 度 や 価 格 の 適 正 さに 関 して 管 理 会 社 の 適 切 なアドバイスが 期 待 され る (3) 遠 隔 監 視 による 保 守 最 近 の 新 設 エレベーターの 多 くは 遠 隔 監 視 診 断 装 置 が 付 置 されている 既 存 のエレベーターに 対 しても 取 付 けが 進 んでいる(ただし 機 種 によっては 付 置 が 不 可 能 な 場 合 がある) 遠 隔 監 視 診 断 装 置 によって エレベーター 毎 の 運 転 状 況 や 運 転 履 歴 データを 保 守 会 社 のセ ンターに 集 めることができ 予 防 保 全 のために 部 品 交 換 をする 時 期 の 把 握 なども 可 能 になる また 乗 客 の 少 ない 夜 間 に 遠 隔 で 運 転 指 令 を 出 し テスト 走 行 させて 診 断 をすることもできる 故 障 時 に 遠 隔 でも 対 応 でき 信 頼 性 も 高 い 従 来 点 検 員 が 月 に4 回 の 点 検 をしていたケースで この 装 置 を 取 付 けた 後 は 月 に 1 回 の 点 検 としている 例 がみられる ただし 監 視 装 置 を 保 守 会 社 で 費 用 負 担 していること 及 び 点 検 品 質 高 まったとの 理 由 で 費 用 は 低 減 しない 例 が 多 い (4)メーカー 系 保 守 会 社 と 独 立 系 保 守 会 社 平 成 15 年 1 月 現 在 のわが 国 に 据 え 付 けられたエレベーターで 保 守 点 検 の 対 象 とされるも のは 約 53 万 台 である これらの 保 守 点 検 を 行 う 会 社 は メーカーとの 関 連 の 有 無 で メー カー 系 保 守 会 社 と 独 立 系 保 守 会 社 に 分 けられる いずれもフルメンテナンス 契 約 とPOG 契 約 のコースがあり 独 立 系 保 守 会 社 も 遠 隔 監 視 シ ステムを 持 つ 場 合 が 少 なくない 保 守 契 約 の 価 格 は 一 般 にメーカー 系 の 方 が 高 い メーカー 系 か 独 立 系 かを 検 討 するときは 以 下 の 点 に 注 意 したい 124 時 間 遠 隔 監 視 システム 稼 動 履 歴 遠 隔 診 断 回 復 機 能 を 活 用 した 合 理 的 な 保 守 を 行 う か
2 保 守 用 部 品 の 在 庫 と 調 達 時 間 保 守 会 社 は 機 械 部 品 電 子 部 品 とも 在 庫 として 用 意 する この 在 庫 をいかに 適 正 に 持 つかが 信 頼 性 とコストの 観 点 から 重 要 である メーカー 系 保 守 会 社 は 特 定 機 種 ごとに 多 くのエレベーターを 保 守 しているので 在 庫 を 持 ちやすいが 機 種 が 多 岐 にわたる 独 立 系 にあっては 一 般 に 十 分 な 保 有 がなく メーカーから 調 達 するために 期 間 が 必 要 になり 故 障 回 復 に 手 間 取 る 場 合 がある 3 広 域 災 害 時 の 復 旧 スピード エレベーターは 地 震 時 に 安 全 のために 最 寄 階 に 停 止 する 運 転 を 再 開 するには 技 術 担 当 者 が 現 地 で 安 全 性 を 確 認 する 必 要 がある 技 術 担 当 者 の 数 (その 地 域 での 密 度 )が 再 開 までの 時 間 に 影 響 する 以 上 いずれにしても 費 用 対 効 果 (サービス 内 容 信 頼 性 )の 問 題 であり ユーザーにあっ ては 十 分 調 査 して 納 得 して 契 約 先 と 契 約 方 式 を 選 ぶべきである なお POGからフルメンテナンスへ 独 立 系 からメーカー 系 へ 保 守 契 約 を 移 すときには 状 態 整 備 費 の 名 目 で 別 途 請 求 されることもある 図 2 は エレベーターの 経 年 と 性 能 の 関 係 を 示 す 概 念 図 であるが データ 分 析 資 料 の 少 ない 現 状 では 縦 横 軸 の 数 値 が 明 らかではなく 保 守 の 方 法 や 後 述 するリニューアルや 更 新 のタイミ ングを 決 める 資 料 とは 言 い 難 い (5)エレベーターの 耐 用 年 数 エレベーターの 法 定 耐 用 年 数 は 17 年 と 定 められる( 大 蔵 省 令 第 14 号 ( 昭 和 56 年 3 月 31 日 ))が 実 際 の 平 均 耐 用 年 数 はこれよりも 長 く 23 年 程 度 とされて いる ( 社 ) 建 築 設 備 維 持 保 全 推 進 協 会 の 建 築 物 の LC(Life Cycle) 評 価 指 針 および LC 評 価 指 針 データ 集 は 計 画 耐 用 年 限 * を 25 年 としている 図 2 経 年 と 性 能 の 相 関 図 (( 社 ) 日 本 エレベーター 協 会 ) 凡 例 --: 日 常 の 保 守 : 修 理 * 計 画 耐 用 年 限 とは 通 常 範 囲 のメンテナンスのもとで 性 能 劣 化 による 修 繕 費 やエネル ギー 費 の 漸 増 や 技 術 的 対 応 の 困 難 などの 問 題 を 起 こすに 至 らないで その 機 能 を 発 揮 で きるとして 設 定 された 年 数 をいう ( 社 ) 日 本 エレベーター 協 会 の 調 査 によると 1998 年 のエレベーターの 平 均 交 換 期 間 は 26.9 年 とある このうち 住 宅 用 は 9.3%であり 事 務 所 用 病 院 用 に 比 べると 使 用 頻 度 が 少 ない ぶん 実 際 には 長 く 使 われていると 推 定 され マンションの 場 合 は 適 切 な 保 守 が 行 われる 場 合 は 30 年 程 度 の 耐 用 年 数 を 考 えてよいと 思 われる 建 物 全 体 の 耐 用 年 数 と 屋 根 防 水 鉄 部 塗 装 などの 建 物 部 位 ごとの 耐 用 年 数 が 別 に 論 じられる と 同 様 に エレベーターもその 部 位 別 に 耐 用 年 数 が 異 なる ロープ 式 エレベーターのロープは 磨 耗 劣 化 が 早 く 7 年 ~10 年 電 動 巻 上 機 は 10 年 ~15 年 制 御 盤 は 20 年 以 上 が 耐 用 年 数 とされる
(6)エレベーターの 更 新 の 種 類 磨 耗 故 障 期 に 入 ると 部 分 的 な 原 因 による 故 障 が 発 生 し また 全 体 の 機 能 低 下 が 見 られるよ うになる エレベーターの 所 有 者 等 は 建 築 基 準 法 第 12 条 の 規 定 の 基 づき1 年 に1 回 の 定 期 の 検 査 報 告 の 義 務 はあるものの 更 新 を 義 務 付 ける 法 的 な 規 制 は 存 在 しない もっとも 故 障 が 多 発 する 場 合 は 安 全 上 または 使 用 便 宜 上 から デザインが 陳 腐 化 した 場 合 は 美 観 上 の 理 由 から 種 々のリニューアルが 行 われる ( 社 ) 日 本 エレベーター 協 会 は 老 朽 化 したエレベーターの 安 全 性 機 能 意 匠 などを 改 善 す るためのリニューアル 工 事 をモダニゼーションと 総 称 している エレベーターのリニューアルは 次 の4 種 に 大 別 される 1 全 撤 去 新 設 リニューアル 機 器 の 全 てを 取 り 外 して 更 新 するもの 2 準 撤 去 新 設 リニューアル 一 部 の 機 器 を 残 し それ 以 外 を 更 新 するもの 3 制 御 リニューアル 機 械 室 内 の 機 器 の 更 新 のみを 行 うもの 4 部 分 リニューアル 上 記 の(1)~(3) 以 外 のリニューアル 表 1 に(1)~(3)のそれぞれのリニューアル 方 式 の 特 徴 を 掲 げた このほかに ドア 開 閉 装 置 の 更 新 ドア 開 閉 センサーの 付 加 停 電 時 自 動 着 床 装 置 地 震 時 管 制 運 転 システムの 導 入 意 匠 リニューアル(かご 乗 り 場 塗 装 かご 内 天 井 照 明 各 階 位 置 表 示 器 の 更 新 )などの 部 分 リニューアルも 行 われる なお エレベーターが 設 置 されていない 中 層 マンションの 場 合 において 新 たにエレベータ ーを 設 置 する 場 合 や 建 物 の 用 途 変 更 に 伴 う 必 要 性 からエレベーターを 新 設 する 場 合 は 工 事 の 名 称 はともかく 内 容 は 新 築 工 事 に 準 ずる (7) 全 撤 去 新 設 リニューアル 工 事 全 撤 去 新 設 リニューアル 工 事 は 長 い 工 期 ( 少 なくとも 1.5 月 )を 要 するので 一 般 に 建 物 全 体 のリニューアル 工 事 に 付 随 して 行 われることが 多 い 手 続 き 上 は 建 築 確 認 申 請 を 要 する 工 事 内 容 は エレベーター 本 体 工 事 にとどまらず 建 築 関 連 工 事 及 び 電 気 設 備 工 事 が 付 随 発 生 する エレベーター 本 体 工 事 に 比 べて 付 随 する 建 築 関 連 工 事 及 び 電 気 設 備 工 事 がおおきなウ エイトを 占 める 表 5.10.1 にエレベーターリニューアルの 種 類 と 特 徴 を 掲 げる
表 1 エレベーターリニューアルの 種 類 と 特 徴
表 2 は エレベーターの 全 撤 去 新 設 の 場 合 において エレベーター 本 体 工 事 以 外 に 必 要 とな る 建 築 関 連 工 事 及 び 電 気 設 備 関 連 工 事 の 内 容 であり 別 途 計 上 する 必 要 があるので 注 意 した い 表 2 全 撤 去 新 設 リニューアル 工 事 の 場 合 の 工 事 区 分
(8) 準 撤 去 新 設 リニューアル 工 事 準 撤 去 新 設 リニューアル 工 事 は 建 物 の 躯 体 に 取 り 付 いた 機 器 を 外 すことなく 行 うので 工 期 は 短 い(1 台 につき 25 日 程 度 ) 一 般 にエレベーターが 複 数 台 ある 場 合 に 採 用 される 手 続 き 上 建 築 確 認 申 請 を 要 するのは 全 撤 去 新 設 リニューアル 工 事 の 場 合 と 同 じである エレベ ーター 本 体 工 事 以 外 の 関 連 工 事 が 少 ない 一 方 で エレベーター 関 連 部 品 がオーダー 品 となる 場 合 が 多 く 本 体 工 事 が 高 くなる 傾 向 にある 図 3 に 準 撤 去 新 設 リニューアル 工 事 における 部 品 の 再 使 用 新 設 の 別 の 例 を 掲 げる 図 3 準 撤 去 新 設 リニューアル 工 事 における 部 品 の 再 使 用 と 新 設 の 例
(9) 制 御 リニューアル 工 事 制 御 リニューアル 工 事 は エレベーター 機 械 室 内 の 機 器 の 取 替 えを 内 容 とし エレベーターの リニューアル 工 事 の 中 で 最 も 範 囲 が 狭 く 工 期 も 最 も 短 い( 最 短 で1 台 につき4 日 ) 一 般 に エレベーターが1 台 しかない 場 合 は もっぱらこの 方 法 で 行 われる この 場 合 は 建 築 確 認 申 請 は 必 要 ない. 図 4 に 制 御 リニューアル 工 事 の 場 合 の 工 期 の 例 を 掲 げる 制 御 リニューアル 工 事 は 安 全 のた め 各 階 の 乗 り 場 を 仮 囲 いで 養 生 して 行 われる 図 4 制 御 リニューアル 工 事 における 部 品 の 再 使 用 と 新 設 の 例
(10) 部 分 リニューアル 工 事 部 分 リニューアル 工 事 としては かご 内 天 井 照 明 取 替 かご 開 閉 装 置 取 替 乗 り 場 扉 改 造 乗 り 場 表 示 取 替 乗 り 場 扉 塗 装 などが 行 われる これらはいずれも 原 則 として1 日 以 内 で 完 結 する 軽 微 な 工 事 である エレベーターの 技 術 革 新 に 伴 って 最 新 の 機 能 を 導 入 することも 行 われる これらも 制 御 リニ ューアル 工 事 又 は 部 分 リニューアル 工 事 に 含 めることができるが あえて 機 能 向 上 工 事 ( 狭 義 の モダニゼーション 工 事 )として 位 置 付 けることもできる 表 4 は 主 として 集 合 住 宅 に 適 用 される 乗 用 エレベーターの 技 術 革 新 の 変 遷 を 年 代 を 軸 に 表 し たものである 表 4 住 宅 用 エレベーターの 技 術 変 遷 表 4 中 の 最 近 開 発 された 要 素 技 術 については 安 全 性 省 エネ 省 スペースなどの 観 点 から 機 能 向 上 工 事 として 検 討 する 意 義 があると 認 められるものが 多 い 以 下 に 主 要 な 要 素 技 術 の 概 要 を 記 す (a) 地 震 時 管 制 運 転 システム 感 震 器 が 地 震 波 を 感 知 した 場 合 に 最 寄 階 に 自 動 停 止 するシステムのこと 一 般 に S 波 ( 横 波 )に 対 する 制 御 が 行 われる S 波 の 感 知 器 の 感 知 レベルは 特 低 (80gal) と 低 (150gal)の2 段 に 設 定 されることが 多 い 特 低 を 感 知 した 場 合 は 自 動 的 に 最 寄 階 に 停 止 するが 約 1 分 後 に 自 動 復 帰 し 通 常 運 転 に 戻 る 低 を 感 知 した 場 合 は 特 低 を 感 知 した 時 と 同 様 に 自 動 的 に 最 寄 階 に 停 止 するが 自 動 復 帰 することはなく 点 検 後 異 常 がないことが 認 められたら 手 動 で 切 り 替 える P 波 ( 地 震 の 初 期 波 縦 波 )の 感 知 器 も 併 置 して 特 低 を P 波 感 知 に 代 えて より 早 く 制 御 する 場 合 もある
地 震 時 管 制 運 転 の 設 定 は 建 物 の 性 状 各 機 器 の 耐 震 対 策 の 状 況 並 びにエレベーターの 管 理 体 制 と 関 連 付 け 調 和 のとれたものとする 必 要 があり 新 耐 震 設 計 法 ( 建 築 基 準 法 施 行 令 1981 年 6 月 1 日 施 行 ) 前 のエレベーターで 耐 震 改 修 をしていないものは 特 定 (60gal) 又 は P 波 感 知 低 (100gal)を 標 準 設 定 とする また 油 圧 エレベーターなど 機 械 室 が 地 階 又 は 一 階 付 近 にあるものは 特 定 (30gal) 又 は P 波 感 知 低 (60gal)を 標 準 設 定 とする (b)インバーター 制 御 方 式 1984 年 に 開 発 された 可 変 電 圧 可 変 周 波 数 制 御 方 式 とも 呼 ばれる 交 流 電 力 をいったん 直 流 電 力 に 変 換 し 再 度 インバーター 装 置 によって 任 意 の 周 波 数 の 交 流 に 変 換 する 方 式 のもので 付 加 に 見 合 ったトルクを 確 保 しながら 交 流 エレベーターの 速 度 を 超 低 速 から 定 格 速 度 まで 連 続 的 に 制 御 することができる 従 来 の 直 流 帰 還 制 御 方 式 のものに 比 べて 消 費 電 力 が 約 50% 低 減 できる 現 在 の 新 設 のロープ 式 エレベーターは 全 てインバーター 制 御 方 式 といってよい 具 体 の 工 事 内 容 は 制 御 リニューアル 工 事 の 項 を 参 照 されたい (c)マシンルームレス 化 1998 年 に 登 場 ロープ 式 エレベーターにおいて 昇 降 路 上 部 の 機 械 室 を 不 要 としたもの 機 械 室 レス エレべーターとも 呼 ばれる 制 御 盤 を 分 割 小 型 化 し 昇 降 路 内 に 分 散 配 置 するととも に 巻 上 機 も 薄 型 又 は 小 型 化 して 昇 降 路 内 に 納 めた 薄 型 巻 上 機 を 昇 降 路 内 上 部 に 設 置 する 方 式 と 小 型 巻 上 機 を 昇 降 路 ピット 内 に 設 置 する 方 式 がある モーターは 一 般 に 永 久 磁 石 同 期 電 動 機 (パーマネントマグネットモーター PM モーター)を 用 いる 制 御 盤 は 昇 降 路 内 又 は 乗 場 三 方 枠 の 戸 袋 内 に 収 納 する ギアレス 巻 上 機 とインバーター 制 御 方 式 が 採 用 され 省 スペ ースと 省 エネが 同 時 に 達 成 される (d) 巻 上 機 (ヘリカルギア 方 式 など) 歯 車 付 き 巻 上 機 には 1980 年 代 から 使 われ 始 めたウォームギア 方 式 と 1990 年 代 から 使 用 が 始 ったヘリカル( 平 行 軸 )ギア 方 式 がある ヘリカルギアはギアの 伝 達 機 構 上 ウォームギア より 効 率 がよいため 省 エネ 効 果 がある 一 方 歯 車 なし 巻 上 機 (ギアレスマシン)も 使 用 される ギアがなく 効 率 がよいので 高 速 エレ ベーターに 使 用 されることが 多 い 住 宅 用 エレベーター 用 として 薄 型 中 低 速 用 機 種 も 開 発 され 振 動 騒 音 が 小 さいことから 機 械 室 なしエレベーターに 永 久 磁 石 同 期 電 動 機 と 組 み 合 わせて 交 流 ギアレスマシンが 使 用 され る (e)ユニバーサルデザイン ユニバーサルデザインの 仕 様 のいくつかを 以 下 に 例 示 する これらは 規 格 型 基 本 仕 様 に 組 み 込 まれているものと 有 償 付 加 仕 様 (オプション)のものとがある またメーカーによっては 対 応 できないものもある
横 型 主 操 作 盤 横 型 副 操 作 盤 車 椅 子 使 用 者 や 子 供 が 操 作 でき 戸 開 き 時 間 が 約 10 秒 に 延 長 される 3 方 向 手 すり かご 内 のどの 位 置 でも 安 心 全 高 かご 内 鏡 車 椅 子 の 低 い 位 置 から 見 える 点 字 銘 板 付 き 乗 り 場 ボタン 点 字 銘 板 付 き 縦 型 操 作 盤 点 字 銘 板 付 き 縦 型 操 作 盤 車 椅 子 用 乗 り 場 ボタン 光 電 管 ドアセンサー 乗 り 降 りの 最 中 にドアが 閉 まらない 音 声 案 内 装 置 運 行 状 況 を 音 声 で 案 内 敷 居 間 ギャップ 10mm かごと 階 床 のすきまを 30mm から 10mm に 縮 小 し 敷 居 溝 幅 も 10mm に 車 椅 子 使 用 者 や 視 覚 障 害 者 の 不 安 を 軽 減 マルチビームドアセンサー 赤 外 線 ビーム 及 びセンサーで 乗 り 場 の 乗 降 客 を3 次 元 に 検 出 し 戸 の 開 閉 を 制 御 (f) 中 層 建 物 等 へのエレベーター 新 設 工 事 5 階 建 てまでのいわゆる 中 層 の 既 存 マンションにおいては エレベーターの 設 置 されていな いものが 少 なくない 居 住 者 が 高 齢 化 すると 4,5 階 まで 階 段 を 昇 降 することが 苦 痛 となる ことから 主 にバリアーフリーの 目 的 で 新 たにエレベーターを 付 置 する 例 が 見 られる( 東 京 都 住 宅 局 や 東 京 都 住 宅 供 給 公 社 における スーパーリフォーム 事 業 の 例 など) 住 棟 が 外 廊 下 型 の 場 合 は 対 応 しやすい( 写 真 1 に 外 廊 下 型 住 棟 に 付 置 した 例 を 掲 げる) 住 棟 が 階 段 室 型 の 場 合 には 各 階 段 室 ごとにその 前 に 新 たにエレベーターシャフトを 設 置 する ことになり 工 事 にあたって 居 住 者 の 生 活 運 線 との 輻 輳 があること 各 戸 当 たりの 設 置 費 用 負 担 が 大 きいこと 設 置 後 も 各 住 戸 に 至 るには 半 階 分 の 階 段 を 昇 降 する 必 要 があり バリアーフ リーの 効 果 が 不 十 分 であることなどが 課 題 である( 写 真 2 に 階 段 室 型 住 棟 に 付 置 した 例 を 掲 げ る) 写 真 1 外 廊 下 型 住 棟 に 付 置 した 例 一 般 にシャフトは 自 立 型 鉄 骨 造 で 外 壁 屋 根 は ALC 板 とされる 既 存 躯 対 とはエクスパ ンションを 設 けてデッキプレート+ 場 所 打 コ ンクリートで 連 絡 される 主 要 工 事 は 基 礎 工 事 鉄 骨 工 事 ALC 工 事 耐 火 被 覆 工 事 防 水 工 事 電 気 設 備 工 事 EV 設 置 工 事 であり2 ケ 月 強 の 工 期 が 必 要 となる
写 真 2 階 段 室 型 住 棟 に 付 置 した 例 図 6 階 段 室 型 住 棟 付 置 のイメージ 図