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Ⅶ 東 海 地 震 に 関 して 注 意 情 報 発 表 時 及 び 警 戒 宣 言 発 令 時 の 対 応 大 規 模 地 震 対 策 特 別 措 置 法 第 6 条 の 規 定 に 基 づき 本 県 の 東 海 地 震 に 係 る 地 震 防 災 対 策 強 化 地 域 において 東 海 地 震

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入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

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資 料 -6 平 成 20 年 度 第 2 回 北 陸 地 方 整 備 局 事 業 評 価 監 視 委 員 会 特 定 構 造 物 改 築 事 業 事 後 評 価 説 明 資 料 平 成 20 年 11 月 北 陸 地 方 整 備 局 -0-

背 景 と 目 的 - 東 日 本 震 災 では の 上 部 構 造 の 流 出 が 多 発 - は 復 旧 に 時 間 を 要 する 一 方 交 通 機 能 の 回 復 は 待 ったなし 活 動 項 目 数 活 動 項 目 数 ( 全 体 ) 全 体 は24hで ピー

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2. 建 築 基 準 法 に 基 づく 限 着 色 項 目 の 地 区 が 尾 張 旭 市 内 にはあります 関 係 課 で 確 認 してください 項 目 所 管 課 窓 口 市 役 所 内 電 話 備 考 がけに 関 する 限 (がけ 条 例 ) 都 市 計 画 課 建 築 住 宅 係 南 庁 舎

( の 復 旧 ) 3. 南 相 馬 市 エリアの 避 難 指 示 解 除 準 備 区 域 及 び 居 住 制 限 区 域 内 の 路 線 数 ( ) 10 路 線 うち 被 災 した 路 線 ( 工 区 ) 数 10 路 線 52 箇 所 うち 応 急 対 策 を 実 施 した 路 線 ( 工 区

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スライド 1

(8) 危 険 物 火 災 等 で 逗 子 北 化 学 1を 必 要 とする 火 災 指 令 時 は 逗 子 北 1を 同 時 編 成 する (9) 未 承 認 対 象 物 からの 即 時 通 報 は 当 該 署 所 の1ケ 部 隊 編 成 とする (10) 通 常 災 害 時 及 び 異 常 災

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目 次 第 3 編 災 害 応 急 対 策 計 画 第 1 章 組 織 及 び 動 員... 1 第 1 節 防 災 組 織 明 石 市 防 災 会 議 明 石 市 災 害 対 策 本 部... 1 第 2 節 動 員 配 備 及 び 災 害 対 策 本 部 の 設 置.

定款  変更

近畿中部防衛局広報誌

目 改 正 項 目 軽 自 動 車 率 の 引 上 げ 〇 国 及 び 地 方 を 通 じた 自 動 車 関 連 制 の 見 直 しに 伴 い 軽 自 動 車 の 標 準 率 が 次 のとおり 引 き 上 げられます 車 種 区 分 引 上 げ 幅 50cc 以 下 1,000 円 2,000 円

3 避 難 状 況 避 難 指 示 避 難 勧 告 都 道 府 県 名 市 区 町 村 名 指 示 日 時 勧 告 日 時 青 森 県 岩 手 県 山 形 県 埼 玉 県 千 葉 県 東 京 都 鰺 ヶ 沢 町 月 16 日 12 時 55 分 10 月 22 日 10 時 00 分

4 松 山 市 暴 力 団 排 除 条 の 一 部 風 俗 営 業 等 の 規 制 及 び 業 務 の 適 正 化 等 に 関 する 法 律 等 の 改 正 に 伴 い, 公 共 工 事 から 排 除 する 対 象 者 の 拡 大 等 を 図 るものです 第 30 号 H H28.1

4 参 加 資 格 要 件 本 提 案 への 参 加 予 定 者 は 以 下 の 条 件 を 全 て 満 たすこと 1 地 方 自 治 法 施 行 令 ( 昭 和 22 年 政 令 第 16 号 ) 第 167 条 の4 第 1 項 各 号 の 規 定 に 該 当 しない 者 であること 2 会 社

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3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

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Taro-事務処理要綱250820

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〔自 衛 隊〕

現 行 工 業 地 域 準 工 業 地 域 商 業 地 域 近 隣 商 業 地 域 改 正 後 準 工 業 地 域 ( 特 別 業 務 地 区 ( 第 2 種 ) 及 び 指 定 集 積 区 域 を 除 く) 近 隣 商 業 地 域 2 / 7

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Microsoft Word - 表紙(正)

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 級 の 給 料 月 額 最 高 号 級 の 給 料 月 額 1 級 ( 単 位 : ) 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 9 級 1 級 135,6 185,8 222,9 261,

(4) 運 転 する 学 校 職 員 が 交 通 事 故 を 起 こし 若 しくは 交 通 法 規 に 違 反 したことにより 刑 法 ( 明 治 40 年 法 律 第 45 号 ) 若 しくは 道 路 交 通 法 に 基 づく 刑 罰 を 科 せられてから1 年 を 経 過 していない 場 合 同

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資 を 輸 送 することができるため 災 害 救 援 活 動 の 初 期 において エネルギーなど 緊 急 物 資 輸 送 の 拠 点 としての 重 要 な 役 割 を 担 っている 2 このため 東 北 地 方 整 備 局 港 湾 事 務 所 が 一 体 となって 海 上 保 安 庁 関 係 自 治 体 等 と 調 整 を 行 いながら 早 急 な 船 舶 利 用 の 再 開 に 向 けて 図 1 に 示 す 各 港 湾 で 航 路 啓 開 作 業 を 進 めていった 本 ケースは この 作 業 の 中 心 となった 港 湾 担 当 の 副 局 長 および 港 湾 事 務 所 長 の 対 応 をとりまとめたものである 災 害 対 策 本 部 の 確 保 (プロローグ) <3 月 11 日 ( 金 ) 震 災 発 生 直 後 東 北 地 方 整 備 局 : 災 害 対 策 本 部 の 設 置 > 平 成 23 年 3 月 11 日 金 曜 日 の 午 後 東 北 地 方 整 備 局 ではいつもように 花 京 院 庁 舎 3に ある 港 湾 空 港 担 当 の 副 局 長 室 で 打 合 せが 行 われていた 副 局 長 は 港 湾 空 港 部 長 港 湾 計 1 画 課 長 を 交 えて 次 年 度 予 算 要 求 方 針 について 議 論 していた 地 震 防 災 対 策 を 第 一 としよ う 向 こう 30 年 に 99%で 発 生 すると 懸 念 される 宮 城 沖 地 震 99%とは いつ 発 生 して もおかしくない 地 震 であって ただ 0%とは 言 えないらしい それならば 是 非 にでも 備 えをしなければならない まさにそのような 議 論 が 出 ていた 最 中 に 地 震 が 発 生 した 地 震 の 発 生 は 14 時 46 分 M9.0 宮 城 県 南 部 の 震 度 は 6 強 であった 花 京 院 庁 舎 は 堅 牢 なビルであったが 地 震 により 大 きく 揺 れ しかもその 揺 れは 1 分 以 上 継 続 した 天 井 や 壁 のパネルがはがれ コピー 機 なども 大 きく 移 動 し 室 内 の 床 には 書 類 が 散 乱 してい た 2 地 震 発 生 後 直 ちに 幹 部 職 員 等 が 参 集 した 副 局 長 は 港 湾 空 港 部 長 とともに 指 示 をし 花 京 院 庁 舎 内 に 災 害 対 策 本 部 を 設 置 し 職 員 の 安 否 確 認 情 報 収 集 等 の 初 動 を 開 始 した 震 災 直 後 に 花 京 院 庁 舎 は 停 電 した 非 常 用 電 源 に 切 り 替 わったが 容 量 の 関 係 から 電 源 供 給 は 限 定 的 であった 非 常 用 電 源 は 19 時 頃 に 終 了 し 非 常 灯 のみになります と ビル 30 管 理 会 社 より 連 絡 があった このため 災 害 対 策 本 部 を 二 日 町 庁 舎 に 移 し 18 時 までに 移 2 常 時 及 び 災 害 初 動 ~ 復 旧 時 に 港 湾 が 果 たす 役 割 については 参 考 資 料 1 を 参 照 のこと 3 東 北 地 方 整 備 局 港 湾 空 港 部 の 概 要 や 庁 舎 の 位 置 等 については 参 考 資 料 2 を 参 照 のこと 2

動 を 完 了 した 花 京 院 庁 舎 の 停 電 は 3 月 13 日 16: に 回 復 し 同 日 21:30 に 災 害 対 策 本 部 を 二 日 町 庁 舎 から 戻 した 停 電 のため テレビによる 情 報 収 集 はできず パソコンもバッテリーで 駆 動 する 時 間 の みに 限 られた 現 地 事 務 所 との 連 絡 は 発 災 直 後 は 携 帯 電 話 が 使 用 可 能 であったが 津 波 到 達 以 降 は 使 用 不 能 となった マイクロ 回 線 も 津 波 による 建 物 の 被 災 や 停 電 により 一 時 的 には 全 事 務 所 と 連 絡 を 取 ることができなくなった このため 事 務 所 との 連 絡 は 衛 星 電 話 がほぼ 唯 一 の 手 段 であった 副 局 長 は 本 局 で 事 務 所 毎 の 専 任 連 絡 要 員 を 決 めて 事 務 所 長 との 連 絡 を 維 持 させるように と 指 示 をした 航 路 啓 開 作 業 を 行 うための 作 業 船 団 の 確 保 1 <3 月 11 日 ( 金 ) 震 災 発 生 直 後 東 北 地 方 整 備 局 : 航 路 啓 開 作 業 の 要 請 > 地 震 発 生 当 日 は 各 港 の 被 災 状 況 を 詳 細 に 把 握 できない 状 況 であったが これまでの 副 局 長 自 身 の 災 害 対 応 の 経 験 などから 津 波 が 来 たら 港 がどうなるのかは 想 像 ができた 津 波 の 来 襲 により 陸 域 から 流 出 した 木 材 車 両 コンテナ 等 の 漂 流 物 沈 降 物 に 加 えて 散 乱 する 養 殖 筏 などにより 船 舶 の 入 港 ができない 状 態 になっていることは 明 らかであった とりあえず 船 が 入 れるようにしないと 話 にならない 海 の 方 でも 自 衛 隊 や 海 上 保 安 庁 の 船 が 入 れるように 海 の 道 をどうやって 開 くかが 急 務 である と 考 えた しかし 現 地 事 務 所 が 所 有 する 船 舶 も 被 災 を 受 けていた 緊 急 支 援 のための 船 舶 入 港 を 可 能 とする 航 路 啓 開 が 急 務 である と 判 断 し 災 害 対 策 2 協 定 にもとづき 地 方 整 備 局 から( 社 ) 日 本 埋 立 浚 渫 協 会 東 北 支 部 に 要 請 することした し かし 協 会 員 各 社 も 被 災 を 受 けており 地 震 当 日 の 夜 にようやく 東 北 支 部 長 と 連 絡 が 取 れ た 23:00 に 二 日 町 庁 舎 で 打 合 せを 行 い その 場 で 翌 朝 に 会 員 会 社 の 関 係 者 を 招 集 する ように と 副 局 長 から 依 頼 した 電 話 での 連 絡 が 困 難 な 状 況 であったが 支 部 長 は 社 員 を 伝 令 に 走 らせる 等 工 夫 して 会 員 各 社 に 連 絡 を 取 るよう 努 力 した 30 <3 月 11 日 ( 金 ) 夜 東 北 地 方 整 備 局 : 本 省 からの 船 舶 派 遣 に 向 けた 指 示 > 地 震 当 日 の 3 月 11 日 夜 に 本 省 から 自 衛 隊 の 補 給 艦 の 入 港 が 予 想 されるので 岸 壁 を 3

早 急 に 利 用 できるように また 直 轄 所 有 の 3 船 を 緊 急 支 援 のため 派 遣 するので 優 先 的 に 入 港 させる 3 港 を 決 定 するように と 言 う 指 示 があった 国 土 交 通 省 では 大 規 模 油 流 出 事 故 が 発 生 した 際 の 対 応 等 のために 大 型 の 浚 渫 兼 油 回 収 船 を 名 古 屋 港, 関 門 港 および 新 潟 港 の 3 港 に 1 隻 ずつ 配 備 しており 事 故 発 生 の 際 には 48 時 間 以 内 に 現 場 に 到 着 できるように 常 日 頃 より 準 備 している これらの 3 隻 の 船 を 緊 急 物 資 輸 送 船 舶 として 被 災 地 に 派 遣 しようと 言 う 指 示 であった 写 真 1: 直 轄 の 大 型 浚 渫 兼 油 回 収 船 ( 清 龍 丸 )とカバーエリア ( 国 土 交 通 省 中 部 地 方 整 備 局 名 古 屋 港 湾 空 港 技 術 調 査 事 務 所 HP より) 岸 壁 の 利 用 のためには 地 震 津 波 による 被 害 が 軽 微 な 岸 壁 を 抽 出 し 航 路 啓 開 を 行 っ て 港 内 の 海 面 および 海 底 に 存 在 する 漂 流 物 を 除 去 し 船 舶 が 安 全 に 航 行 できる 水 深 を 確 1 保 する 必 要 がある しかし この 時 点 では 沿 岸 部 の 事 務 所 と 連 絡 が 取 れる 状 況 になかっ たため, 岸 壁 の 被 災 状 況 に 関 する 情 報 はほとんど 入 っていなかった このため 副 局 長 は 自 身 のこれまでの 経 験 を 頼 りに 航 路 啓 開 を 優 先 的 に 進 める 港 湾 を 判 断 する 必 要 があった このため 地 震 当 日 深 夜 までに 知 り 得 た 情 報 を 整 理 した 直 轄 の 浚 渫 兼 油 回 収 船 は 大 型 の 船 舶 であったが 平 常 時 に 入 港 可 能 な 比 較 的 大 きな 岸 壁 を 持 つ 港 湾 は 数 多 く 存 在 した 東 北 地 方 の 青 森 県 から 茨 城 県 にいたる 太 平 洋 沿 岸 で 北 からむつ 小 川 原 港 八 戸 港 久 慈 港 宮 古 港 釜 石 港 大 船 渡 港 石 巻 港 仙 台 塩 釜 港 ( 仙 台 港 区 塩 釜 港 区 ) 相 馬 港 小 名 浜 港 茨 城 港 鹿 島 港 などがあげられる 2 この 中 のいくつかの 港 湾 では 災 害 時 の 緊 急 物 資 等 の 輸 送 機 能 を 確 保 するため 耐 震 強 化 岸 壁 の 整 備 が 進 められており 八 戸 港 釜 石 港 仙 台 塩 釜 港 相 馬 港 小 名 浜 港 茨 城 港 ではすでに 整 備 が 完 了 していた 東 日 本 大 震 災 は 整 備 時 に 想 定 していた 地 震 を 大 きく 4

上 回 った 規 模 であったが 耐 震 強 化 岸 壁 であれば 構 造 物 への 被 害 も 比 較 的 小 規 模 であろう と 想 像 された 甚 大 な 被 害 を 受 けた 沿 岸 部 への 早 急 な 支 援 が 必 要 な 中 地 方 整 備 局 では 道 路 啓 開 を 国 道 4 号 線 から 沿 岸 部 の 各 都 市 に 向 けて 同 時 並 行 で 進 めようとしていた しかし 本 局 内 で 得 られた 情 報 から 宮 古 市 街 地 ではがれきの 散 乱 状 況 がひどく 道 路 啓 開 に 手 間 取 ることが 予 想 された 釜 石 市 は 市 街 地 に 至 るまでの 幹 線 道 路 の 応 急 復 旧 に 時 間 を 要 することが 懸 念 された また 仙 台 塩 釜 港 ( 仙 台 港 区 ) 周 辺 は 完 全 に 冠 水 し 市 街 地 からのアクセスが 絶 たれた 状 態 となっており 港 のエリアに 取 り 残 された 人 がいるとの 情 報 もあった 気 仙 沼 市 での 大 規 模 火 災 の 情 報 も 対 策 本 部 に 入 っていたが 近 くに 大 型 船 が 停 泊 可 能 な 港 湾 がな かった このため 副 局 長 は 宮 古 港 釜 石 港 仙 台 塩 釜 港 ( 仙 台 港 区 )の 3 港 の 航 路 啓 開 を 優 先 的 に 進 める と 判 断 した 1 <3 月 12 日 ( 土 ) 午 前 東 北 地 方 整 備 局 : 連 絡 調 整 会 議 初 会 合 > 地 震 の 翌 朝 ( 社 ) 日 本 埋 立 浚 渫 協 会 東 北 支 部 会 員 各 社 の 主 要 な 支 店 長 が 全 員 二 日 町 庁 舎 に 集 まった 各 社 とも 現 場 の 社 員 の 安 否 確 認 もできていない 状 況 の 中 であった ある 支 店 長 は 海 岸 近 くの 事 務 所 から 腰 まで 水 に 浸 かりながら 駆 けつけた 3 月 12 日 11:00 副 局 長 室 で 協 会 東 北 支 部 と 東 北 地 方 整 備 局 の 初 会 合 を 開 催 し, 総 勢 人 ほどが 参 加 した 以 後 この 会 議 は 連 絡 調 整 会 議 と 呼 ばれ 毎 日 16:00 に 航 路 計 画 作 業 の 進 捗 を 調 整 するために 地 方 整 備 局 と 会 員 各 社 が 参 加 して 開 催 された 会 議 では 本 局 から 航 路 啓 開 作 業 の 全 体 的 な 指 示 を 行 った 後 各 港 から 本 局 あるいは 強 会 協 会 員 各 社 に 報 2 告 された 被 災 状 況 啓 開 作 業 の 進 捗 状 況 作 業 船 作 業 機 械 の 調 達 状 況 翌 日 の 作 業 内 容 進 捗 見 込 み 等 について 情 報 共 有 と 意 見 交 換 を 行 った 協 議 会 の 冒 頭 副 局 長 から 災 害 対 策 協 定 にもとづき 協 会 東 北 支 部 への 要 請 を 行 った 続 いて 港 湾 空 港 部 長 から 下 記 の 説 明 があった 30 大 津 波 によって 太 平 洋 沿 岸 に 甚 大 な 被 害 を 受 けている 緊 急 物 資 輸 送 船 を 入 港 させるため 早 急 に 航 路 啓 開 作 業 を 開 始 してほしい

自 衛 隊 の 補 給 艦 を 入 港 させるため 必 要 な 水 深 を 確 保 する 直 轄 所 有 の 3 船 を 入 港 させるため 仙 台 塩 釜 港 ( 仙 台 港 区 ) 釜 石 港 宮 古 港 の 3 港 で 優 先 的 に 航 路 啓 開 を 行 う 写 真 2: 副 局 長 室 での 調 整 会 議 ( 東 北 地 方 整 備 局 より) 図 2: 航 路 啓 開 作 業 等 の 実 施 体 制 集 まってくれた 支 店 長 たちに 東 北 に 掃 海 能 力 がある 船 がありますか と 聞 いたところ 1 隻 もありません との 回 答 であった このため 副 局 長 は 直 ちに 全 国 から 作 業 船 団 を 集 めるように 要 請 を 行 った 航 路 の 啓 開 には 海 洋 工 事 能 力 のある 建 設 会 社 ( 日 本 埋 立 浚 渫 協 会 会 員 各 社 )の 力 を 集 1 めないとできなかった 海 に 沈 んだコンテナ 自 動 車 漂 流 する 木 材 などを 回 収 するため 6

の 調 査 船 潜 水 士 クレーン 船 曳 き 船 などが 必 要 になるからであった 緊 急 に 港 を 開 く ために 万 難 を 排 して 協 力 して 欲 しい と 副 局 長 から 各 社 に 訴 えた その 後 協 会 本 部 や 深 浅 測 量 を 行 う 調 査 会 社 などの 協 力 を 得 て 4 船 団 を 確 保 し このう ちの 2 船 団 を 仙 台 塩 釜 港 に 残 りの 船 団 をそれぞれ 釜 石 港 宮 古 港 に 派 遣 するよう 判 断 し 被 災 地 への 派 遣 の 準 備 を 進 めた 津 波 影 響 下 での 作 業 船 団 の 派 遣 大 津 波 警 報 がいつ 解 除 になるかわからない 状 況 であったが 沖 合 では 津 波 の 水 位 変 動 も 大 きくないので とにかく 船 を 集 めて 沖 合 に 待 機 させて 警 報 解 除 とともに 作 業 に 入 るよ うに と 副 局 長 から 作 業 船 団 の 準 備 を 進 めている 各 社 に 指 示 した 作 業 船 団 は 一 般 の 船 1 より 船 足 が 遅 く なかなか 船 団 の 数 がそろわなかった このため 港 に 優 先 順 位 を 付 けて 早 く 到 着 した 船 団 から 順 に 優 先 順 位 の 高 い 港 に 投 入 するようにと 指 示 した 沿 岸 においては 津 波 警 報 等 が 発 令 中 であり 海 上 を 吹 きおろす 冬 期 風 浪 も 作 業 船 の 派 遣 における 課 題 になった さらに 地 震 当 日 に 発 生 した 福 岡 原 発 の 事 故 の 影 響 もあった 事 故 を 受 けて 発 電 所 周 辺 からの 避 難 指 示 が 発 令 され その 対 象 範 囲 が 拡 大 しつつあった 12 日 夜 には その 対 象 範 囲 は 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 から 半 径 km 圏 となり 沿 海 区 域 を 航 行 区 域 としている 船 舶 は 福 島 原 発 を 超 えて 航 行 することができなくなった 道 路 は 3 日 で 航 路 啓 開 を 終 えたのに 船 が 港 に 入 れるようにするには 1 ヶ 月 はかかるのではないか と 副 局 長 の 心 に 不 安 がよぎった 2 状 況 が 変 化 したのは 3 月 1 日 の 海 事 局 通 達 によってであった これにより 避 難 区 域 が 沿 海 区 域 を 超 える 状 況 となった 場 合 でも 作 業 船 団 が 沿 海 区 域 を 超 えて 航 行 することが 可 能 となった それでも もともと 作 業 船 は 航 行 中 の 波 浪 などに 対 する 安 定 性 がよくない こと 沿 海 区 域 より 沖 側 を 航 行 中 に 事 故 が 発 生 した 場 合 に 避 難 等 のための 安 全 設 備 が 作 業 30 船 に 十 分 に 装 備 されていないこと 船 舶 職 員 が 沖 合 での 事 故 対 応 訓 練 等 を 十 分 に 受 けてい ないことなどと 言 った 課 題 が 残 った このため 航 行 の 安 全 に 十 分 配 慮 して 被 災 地 へ 作 業 船 団 を 派 遣 した 7

避 難 指 示 対 象 範 囲 日 時 福 島 第 一 原 発 からの 距 離 3 月 11 日 時 0 分 2km 3 月 11 日 21 時 23 分 3km 3 月 12 日 0 時 44 分 km 3 月 12 日 18 時 2 分 km 3 月 1 日 11 時 00 分 ~30km ( 屋 内 に 待 機 ) 3 月 1 日 海 事 局 通 達 緊 急 避 難 措 置 として 避 難 区 域 が 沿 海 区 域 を 超 える 状 況 となった 場 合 に は 沿 海 区 域 を 越 えて 航 行 が 可 能 図 3: 福 島 原 発 事 故 による 船 舶 航 行 区 域 の 制 約 ( 海 上 保 安 庁 資 料 (11 年 3 月 )をもとに 著 者 が 加 筆 ) 表 1: 航 行 区 域 について 航 行 区 域 出 典 : フリー 百 科 事 典 ウィキペディア(Wikipedia) 航 行 区 域 (こうこうくいき)とは 船 舶 が 航 行 する 区 域 を 指 す 船 舶 安 全 法 では すべての 水 域 を 平 水 区 域 沿 海 区 域 近 海 区 域 遠 洋 区 域 の 4 種 類 に 区 分 すること としており 船 舶 安 全 法 施 行 規 則 1 条 6 項 ~9 項 で 具 体 的 な 水 域 が 定 められている 船 舶 職 員 の 乗 組 みに 関 する 基 準 や 船 舶 検 査 証 書 などでこの 区 分 が 用 いられる また 海 商 法 において 平 水 区 域 のみを 航 行 する 船 舶 は 対 象 から 除 かれており 一 般 の 商 法 が 適 用 される 平 水 区 域 : 湖 川 及 び 港 内 等 の 水 域 たとえば 東 京 湾 の 大 部 分 伊 勢 湾 瀬 戸 内 海 の 一 部 も 含 まれる 沿 海 区 域 : おおむね 日 本 樺 太 の 一 部 朝 鮮 半 島 の 海 岸 から 海 里 以 内 の 水 域 近 海 区 域 : 東 は 東 経 17 度 南 は 南 緯 11 度 西 は 東 経 94 度 北 は 北 緯 63 度 の 線 により 囲 まれた 水 域 マラッカ 海 峡 からカムチャツカ 半 島 までが 含 まれる 8

遠 洋 区 域 : すべての 水 域 早 期 暫 定 供 用 に 向 けた 航 路 啓 開 作 業 の 実 施 <3 月 13 日 ( 日 ) 仙 台 塩 釜 港 ( 仙 台 港 区 )ほか> 航 路 啓 開 を 優 先 的 に 進 める 港 湾 である 仙 台 塩 釜 港 ( 仙 台 港 区 )に 2 船 団 宮 古 港 釜 石 港 にそれぞれ 1 船 団 が 到 着 した 津 波 警 報 は 13 日 07:30 に 津 波 注 意 報 に 切 り 替 えられて いたが 解 除 されてはいなかった 港 内 は 多 数 の 浮 遊 物 が 漂 流 している 状 態 である この ため 事 務 所 長 は 到 着 後 沖 合 で 待 機 する よう 船 団 に 指 示 をした 津 波 注 意 報 がなかなか 解 除 されなかったので 動 きがとれない 状 況 であった 副 局 長 か らは 二 次 災 害 があるので それぞれの 現 場 で 自 らの 判 断 で 自 らの 安 全 を 確 保 してできる ことをやるように と 指 示 がなされていたが ヘリで 上 空 から 偵 察 したり 高 台 から 見 た 1 りと 言 うことしかできず 海 の 中 がどうなっているのかわからないため 判 断 ができな い 状 態 にあった 図 4: 東 日 本 大 震 災 における 津 波 関 連 の 警 報 注 意 報 の 発 令 状 況 ( 港 湾 における 総 合 的 な 津 波 対 策 のあり 方 ( 中 間 とりまとめ) 参 考 資 料 ( 国 土 交 通 省 11 年 7 月 )より) 9

陸 上 から 漂 流 したがれき 類 は 津 波 により 港 口 を 行 き 来 する 流 れと 一 体 となって 港 内 を 浮 遊 していた 津 波 による 流 れは 海 底 面 でも 大 きな 流 速 をもっているので これらのが れき 類 は 水 中 あるいは 水 底 面 も 漂 っていることが 予 想 された これらのがれき 類 には 危 険 物 が 含 まれていることが 予 想 されるほか 海 底 面 に 沈 没 したがれき 等 への 座 礁 などの 懸 念 もあった 船 団 に 作 業 指 示 するにあたっては 安 全 の 確 保 が 第 一 であり 二 次 災 害 の 発 生 は 絶 対 に 避 ける 必 要 があった しかし すでに 地 震 の 発 生 から 2 日 が 経 過 しており 救 援 を 待 っている 人 へ 早 く 支 援 を 差 しのべるための 手 段 を 考 える 必 要 があった 写 真 3: 被 災 直 後 の 港 湾 内 の 状 況 ( 仙 台 塩 釜 港 ( 仙 台 港 区 )の 例 ) ( 東 北 地 方 整 備 局 資 料 より) <3 月 14 日 ( 月 ) 仙 台 塩 釜 港 ( 仙 台 港 区 )ほか> 作 業 船 団 の 入 出 港 は 安 全 上 の 問 題 から 日 出 ~ 日 没 間 に 限 られていた 啓 開 作 業 を 始 め 1 るにあたり 作 業 船 団 の 準 備 に 時 間 を 要 するため 13 日 中 の 入 港 は 困 難 であった また 13 日 夜 間 に 注 意 報 が 解 除 される 可 能 性 も 想 定 され 翌 朝 速 やかに 入 港 し その 後 啓 開 作 業 を 進 めるためには 事 前 の 作 業 船 団 の 準 備 が 必 要 であった.このため 事 務 所 長 は さま ざまな 事 態 に 対 応 できるように 作 業 船 団 の 準 備 をしておくよう 指 示 した 並 行 して 事 務 所 でも 入 港 に 向 けた 準 備 を 進 めるよう 事 務 所 担 当 者 に 指 示 をした ま ず 作 業 船 団 を 派 遣 した 建 設 会 社 等 と 構 内 での 船 舶 運 行 に 必 要 な 手 配 をする 海 事 関 係 者 と の 調 整 を 行 った また 港 湾 内 には 様 々な 施 設 があるが 国 の 財 産 である 施 設 を 含 めて 基

本 的 には 地 方 自 治 体 が 管 理 をすることになっており 作 業 の 役 割 分 担 について 調 整 が 必 要 であった さらに 作 業 船 団 の 入 出 港 をはじめ 港 湾 内 で 作 業 を 進 める 場 合 には 港 長 で ある 海 上 保 安 庁 に 対 して 避 難 勧 告 の 解 除 や 入 港 時 の 安 全 対 策 の 確 保 などについて 判 断 が 求 める 必 要 があった この 他 港 内 に 漂 流 している 輸 出 入 貨 物 や 国 際 船 舶 の 取 り 扱 いに 関 し ては 入 出 国 関 係 の 行 政 機 関 との 調 整 も 必 要 となった. 図 : 港 湾 啓 開 を 行 う 際 の 関 係 者 結 果 的 には 13 日 17:8 に 津 波 注 意 報 が 解 除 され 翌 朝 には 問 題 なく 作 業 船 団 は 入 港 し 航 路 啓 開 作 業 を 開 始 することができた 障 害 物 の 除 去 と 航 路 水 深 の 確 保 1 < 地 震 発 生 後 3 日 ~7 日 仙 台 塩 釜 港 ( 仙 台 港 区 )ほか: 浮 遊 物 撤 去 > 航 路 啓 開 作 業 は 起 重 機 船 を 主 体 に 作 業 を 行 った 起 重 機 船 は 比 較 的 水 深 の 浅 い 水 域 でも 航 行 が 可 能 であるが 浮 遊 物 が 多 いと 入 港 できないため 浮 遊 物 の 撤 去 を 先 行 して 行 った 撤 去 作 業 の 実 施 にあたり 海 中 の 浮 遊 物 の 有 無 を 確 認 するため 潜 水 士 を 乗 船 させ 海 中 浮 遊 物 を 確 認 しながら 浮 遊 物 の 除 去 を 行 うように と 事 務 所 長 から 作 業 船 団 に 指 示 をし た 海 中 は 陸 上 からの 土 砂 の 流 入 などで 濁 っており 手 さぐりで 浮 遊 物 の 有 無 を 確 認 しな ければならなおい 状 況 であった 浮 遊 物 は 海 面 いっぱいに 漂 っており 風 により 港 内 あ 2 るいは 湾 内 を 1 箇 所 にとどまることなく 移 動 するため 撤 去 には 時 間 が 必 要 であった 11

港 湾 内 では 紙 パルプ 関 連 木 材 木 製 品 製 造 業 関 連 の 貨 物 を 多 く 扱 っていたため 荷 揚 げされていた 原 木 が 港 内 外 に 漂 流 し 航 路 啓 開 にあたっての 最 大 の 課 題 となった こ のため 協 会 会 員 各 社 と 作 業 手 順 について 意 見 交 換 した 港 内 にシルトプロテクター(オ イルフェンスの 一 種 )を 展 張 し 浮 遊 する 原 木 を 封 じ 込 めよう との 結 論 に 達 した その 結 果 啓 開 作 業 開 始 の 3 日 後 には 浮 遊 物 の 撤 去 を 終 え 緊 急 支 援 物 資 船 が 入 港 可 能 な 航 路 を 確 保 することができた 左 写 真 4: 航 路 啓 開 作 業 のため 浮 遊 木 材 を 回 収 撤 去 ( 石 巻 港 の 例 ) 右 写 真 :シルトプロテクターを 活 用 して 浮 遊 物 を 封 じ 込 め( 石 巻 港 の 例 ) ( 両 写 真 とも 東 北 地 方 整 備 局 より) < 地 震 発 生 後 3 日 ~7 日 仙 台 塩 釜 港 ( 仙 台 港 区 )ほか: 深 浅 測 量 ( 異 常 点 調 査 )> 1 浮 遊 物 撤 去 後 海 底 に 沈 んだ 障 害 物 の 位 置 形 状 を 確 認 するため 異 常 点 調 査 として 深 浅 測 量 を 行 った 深 浅 測 量 は 基 本 的 にナローマルチビーム 測 深 機 による 3 次 元 測 量 を 実 施 し 障 害 物 を 面 的 に 確 認 して 障 害 物 の 種 別 を 把 握 した ここで ナローマルチビーム 測 深 機 とは 音 波 発 振 器 (ソナー)を 用 いた 測 深 機 の 一 種 であり ソナーの 受 発 信 面 から 扇 状 に 発 振 された 数 十 ~ 数 百 の 超 音 波 ビームを 用 いて 同 時 に 多 数 の 測 深 点 を 得 ることにより 1 測 線 の 測 量 結 果 を 用 いて 面 的 な 深 浅 測 量 が 可 能 であるという 特 徴 をもっている 津 波 により 基 準 点 が 流 されたので ナローマルチビーム 等 の 測 量 に 先 立 ち 基 準 点 をどう 設 定 するかが 課 題 となった 地 震 を 起 こした 地 殻 変 動 ( 隆 起 沈 降 )により 地 盤 面 も 基 準 にできなかった.このため 海 水 面 は 震 災 前 後 で 不 変 である と 考 えて 震 災 後 の 潮 位 を 2 測 定 し 当 面 の 基 準 面 として 活 用 した 12

左 写 真 6:ナローマルチビーム 測 深 機 による 3 次 元 測 量 右 図 6:ナローマルチビームによる 測 量 結 果 ( 写 真 図 とも 東 北 地 方 整 備 局 より) < 地 震 発 生 後 3 日 ~7 日 仙 台 塩 釜 港 ( 仙 台 港 区 )ほか: 障 害 物 撤 去 > 深 浅 測 量 により 確 認 された 異 常 点 は 起 重 機 船 により 1 箇 所 ずつ 撤 去 した 測 量 により 海 底 に 沈 んでいる 障 害 物 の 判 定 を 行 った 障 害 物 が 漁 網 家 屋 車 両 等 の 場 合 は 大 型 オ レンジバケットを 使 用 して 引 き 揚 げた 障 害 物 がコンテナの 場 合 は バケットでつかむと 内 容 物 の 流 出 につながる 恐 れがあるため 潜 水 士 により 玉 掛 けを 行 い 引 き 揚 げた また コンテナの 場 合 内 容 物 に 応 じて 重 量 が 変 動 するため 起 重 機 船 の 規 格 に 余 裕 を 持 たせる 必 要 があった 1 図 7: 仙 台 塩 釜 港 ( 仙 台 港 区 )の 航 路 啓 開 の 概 要 ( 港 湾 における 総 合 的 な 津 波 対 策 のあり 方 ( 中 間 とりまとめ) 13

参 考 資 料 (11 年 7 月 )より) また 浮 遊 物 沈 降 物 の 撤 去 にあたっては 震 災 がれきと 同 様 に 作 業 を 始 める 前 に 所 有 者 を 確 認 する 必 要 性 があった 陸 域 からガスボンベ 等 危 険 物 も 多 数 流 出 し 海 底 に 沈 降 しており 撤 去 作 業 には 注 意 が 必 要 であった 航 路 水 深 の 確 認 と 緊 急 救 援 物 資 輸 送 船 の 入 港 < 地 震 発 生 後 3 日 ~7 日 仙 台 塩 釜 港 ( 仙 台 港 区 )ほか: 確 認 測 量 > 障 害 物 の 撤 去 後 の 確 認 測 量 は 海 上 保 安 庁 が 実 施 した 4 海 上 保 安 庁 は 本 庁 所 属 の 測 量 船 全 隻 を 被 災 港 湾 に 派 遣 した 1 図 8: 航 路 啓 開 作 業 の 流 れ 測 量 船 の 調 査 結 果 は 毎 日 報 告 され 異 物 の 存 在 状 況 を 港 湾 管 理 者 に 通 知 し 東 北 地 方 整 備 局 もしくは 港 湾 管 理 者 が 異 物 の 撤 去 を 実 施 した 港 湾 の 異 物 撤 去 状 況 の 新 しい 情 報 が 順 次 入 ってくるため 作 業 船 をシフトさせる 度 に 海 上 保 安 庁 に 各 測 量 船 の 調 査 予 定 港 湾 を 4 関 係 法 令 については 参 考 資 料 3 を 参 照 のこと 14

変 更 するように とお 願 いした 海 上 保 安 部 との 深 浅 測 量 との 間 に 差 違 が 生 じて 障 害 物 の 撤 去 するように と 再 撤 去 を 求 められる 場 合 が 少 なからずあった 海 上 保 安 庁 では 調 査 対 象 の 港 湾 及 びその 周 辺 海 域 では 津 波 によって 多 くのがれきが 海 面 海 中 海 底 に 点 在 しており とくに 漁 網 等 のロープは 船 上 から 確 認 できないため 測 量 船 及 びその 搭 載 艇 に 何 度 も 絡 みつき 円 滑 な 業 務 を 行 う 上 で 障 害 となった このため 海 上 自 衛 隊 リエゾンとの 会 合 を 持 ち 掃 海 艇 の 潜 水 士 らによるロープ 類 の 取 り 外 し 作 業 及 び 浮 遊 物 の 除 去 について 協 力 を 得 た 海 上 自 衛 隊 と 連 携 することにより 以 降 の 調 査 を 順 調 に 進 めることができた < 地 震 発 生 後 3 日 ~7 日 仙 台 塩 釜 港 ( 仙 台 港 区 )ほか: 航 路 啓 開 後 の 公 表 > 初 動 時 における 航 路 啓 開 作 業 の 目 的 は 緊 急 救 援 物 資 輸 送 船 を 入 港 させるための 水 深 確 保 であり 確 認 測 量 により 水 深 の 確 認 が 取 れ 次 第 岸 壁 の 供 用 再 開 を 順 次 公 表 した 仙 台 塩 1 釜 港 ( 仙 台 港 区 )では 啓 開 作 業 を 始 めて 3 日 後 の 18 日 に 高 松 ふ 頭 への 船 舶 の 入 港 が 可 能 になった 1

参 考 資 料 1: 常 時 及 び 災 害 初 動 ~ 復 旧 時 に 港 湾 が 果 たす 役 割 < 被 災 地 の 緊 急 物 資 輸 送 やエネルギー 需 要 を 支 える 港 湾 > 四 方 を 海 に 囲 まれた 我 が 国 では 輸 出 入 貨 物 の 99.7%は 港 湾 を 通 じて 輸 送 されている 食 料 については 6 割 6 エネルギーについては 9 割 7が 海 外 から 調 達 されている この 一 例 として 東 北 地 方 においては 精 油 所 を 有 する 施 設 が 唯 一 仙 台 塩 釜 港 ( 仙 台 港 区 ) 内 に 立 地 しており ここから 東 北 全 域 に 供 給 を 行 っている 東 日 本 大 震 災 の 地 震 及 び 津 波 により これらのエネルギー 供 給 施 設 も 被 災 した このた め 震 災 直 後 には 被 災 地 での 災 害 復 旧 及 び 被 災 者 の 活 動 において 深 刻 なエネルギー 不 足 が 問 題 となった 以 下 にその 一 例 を 示 す 震 災 後 から 顕 著 化 してきた 広 域 的 な 燃 油 不 足 により 被 災 地 での 暖 房 非 常 電 源 設 備 の 1 運 転 被 災 地 での 緊 急 車 両 の 稼 働 などに 支 障 をきたしていた さらに そればかりではな く 帰 りのガソリンが 入 手 できないことを 理 由 に 緊 急 物 資 輸 送 を 担 うべき 長 距 離 トラッ クが 東 北 方 面 への 運 転 を 避 ける 事 態 も 招 くようになった 震 災 の 直 後 からガソリンや 灯 油 などの 燃 料 湯 の 不 足 問 題 が 深 刻 になっていた 暖 房 にも 車 での 移 動 にも 燃 料 が 必 要 である このため 仙 台 塩 釜 港 ( 塩 釜 港 区 ) 内 に 油 槽 所 (オイルターミナル)を 持 つ 民 間 会 社 が 宮 城 県 知 事 に 石 油 の 供 給 体 制 確 立 に 関 わる 要 望 書 を 提 出 した この 要 望 が 政 府 の 現 地 対 策 本 部 を 通 じて 本 省 に 伝 わり 3 月 16 日 に 石 油 供 給 の 早 急 な 回 復 のための 航 路 啓 開 作 業 の 指 示 が 本 省 より 東 北 地 方 整 備 局 にあった 急 遽 被 災 した 港 湾 内 で 使 える 可 能 性 のあ るオイルターミナルを 調 べるように 副 局 長 より 指 示 したところ 八 戸 港 と 仙 台 塩 釜 港 ( 塩 2 釜 港 区 )の 施 設 が 動 くことがわかったので 塩 釜 港 に 早 急 に 船 が 入 れるように 作 業 船 団 を シフトさせる こととした 3 月 17 日 11:00 から 現 地 において 海 上 自 衛 隊 海 上 保 安 部 と 航 路 啓 開 作 業 について 協 議 を 行 い 同 日 から 両 者 の 協 力 を 得 て 航 路 啓 開 作 業 を 実 施 することとした 財 務 省 : 輸 出 入 貨 物 の 物 流 動 向 調 査 ( 調 査 期 間 :08 年 9 月 22 日 ~9 月 28 日 )より 6 農 林 水 産 省 : 食 糧 需 給 表 ( 平 成 年 度 版 ) 概 要 ( 熱 量 ベース)より 7 資 源 エネルギー 庁 : 08 年 エネルギーバランス 表 ( 熱 量 ベース)より 16

図 参 1: 仙 台 塩 釜 港 の 地 域 に 対 する 役 割 ( 東 北 地 方 整 備 局 資 料 より) 被 災 地 のガソリン 不 足 深 刻 東 北 関 東 で 販 売 制 限 (3 月 14 日 : 朝 日 新 聞 ) 被 災 地 でのガソリン 不 足 が 深 刻 化 している 配 送 が 困 難 になっているだけでなく ガソリンスタン ドも 警 察 や 消 防 救 援 のための 車 両 を 優 先 し 一 般 利 用 者 への 販 売 を 制 限 しているためだ 販 売 制 限 は 関 東 地 方 の 一 部 でも 見 られるようになっている 千 葉 市 の 幹 線 道 路 沿 いのガソリンスタンドでは 14 日 午 前 時 ごろ 0 台 以 上 の 車 が 列 をつくって いた 待 っている 運 転 者 に 店 員 が もうガソリンがありませ ん と 説 明 していた JX 日 鉱 日 石 エネルギーによると 地 震 の 影 響 で 二 つの 製 油 所 と ガソリンなどを 保 管 する 各 地 の 油 槽 所 が 出 荷 を 停 止 し たままだ 輸 出 用 の 石 油 製 品 を 振 り 向 けるなどの 対 応 をとっ ている という 出 光 興 産 も 東 北 では 日 本 海 側 からの 輸 送 を 始 めているが 太 平 洋 側 に 到 着 できたかどうかは 把 握 できていないのが 実 態 だ 各 地 の 拠 点 には どこに 行 けば 給 油 できるのか との 利 用 者 からの 問 いあわせが 増 えているという 図 参 2: 新 聞 記 事 被 災 地 のガソリン 不 足 深 刻 (3 月 14 日 : 朝 日 新 聞 HP より) 17

参 考 資 料 2: 東 北 地 方 整 備 局 港 湾 空 港 部 の 概 要 東 北 地 方 整 備 局 は 国 土 交 通 の 地 方 支 分 局 の 一 つであり 平 成 13 年 1 月 の 省 庁 再 編 時 に 発 足 した 当 時 地 方 合 同 庁 舎 ( 二 日 町 庁 舎 図 参 3 参 照 の 東 北 地 方 整 備 局 )に 十 分 な 空 きスペースがなかったため 新 しい 合 同 庁 舎 の 建 設 を 待 つ 間 港 湾 空 港 部 は 近 隣 の 民 間 ビルを 借 り 上 げて 執 務 スペースを 構 えていた( 花 京 院 庁 舎 図 参 3 参 照 の 港 湾 空 港 部 ) 仮 庁 舎 と 言 っても 耐 震 性 他 緊 急 時 の 非 常 電 源 の 有 無 などを 確 認 して 選 定 した 比 較 的 新 しい 堅 牢 なビルである 図 参 3: 東 北 地 方 整 備 局 位 置 図 ( 東 北 地 方 整 備 局 HP より) 港 湾 空 港 部 は 東 北 地 方 の 港 湾 や 空 港 整 備 を 所 管 し 国 際 競 争 力 を 有 する 物 流 ネットワー 1 クの 形 成 交 流 拠 点 機 能 等 の 確 保 国 土 の 保 全 豊 かで 潤 いのある 海 辺 の 創 造 に 努 めると ともに 地 方 公 共 団 体 等 に 助 成 助 言 技 術 指 導 を 行 い 活 力 とやさしさに 満 ちた 地 域 づ くりを 推 進 している 地 方 整 備 局 はその 組 織 が 大 きいことなどから 港 湾 空 港 関 係 の 事 務 は 担 当 の 副 局 長 が 局 長 の 業 務 を 代 行 している その 組 織 および 所 掌 事 務 はそれぞれ 図 参 4 および 表 参 1 のとおりである 18

図 参 4: 東 北 地 方 整 備 局 組 織 図 ( 抜 粋 ) 表 参 1: 東 北 地 方 整 備 局 港 湾 空 港 部 の 所 掌 事 務 ( 地 方 整 備 局 組 織 規 則 より) 所 掌 事 務 1 2 3 4 6 7 港 湾 の 整 備 利 用 保 全 及 び 管 理 に 関 すること 航 路 の 整 備 保 全 及 び 管 理 に 関 すること 国 が 行 う 海 洋 の 汚 染 の 防 除 に 関 する 業 務 に 関 すること 港 湾 内 の 公 有 水 面 の 埋 立 て 及 び 干 拓 に 関 すること 港 湾 内 の 運 河 に 関 すること 港 湾 に 係 る 海 岸 の 整 備 利 用 保 全 及 び 管 理 に 関 すること 飛 行 場 に 関 する 国 の 直 轄 の 土 木 施 設 の 整 備 及 び 災 害 復 旧 に 関 すること 19

参 考 資 料 3: 関 係 法 令 港 則 法 抜 粋 港 則 法 ( 昭 和 二 十 三 年 七 月 十 五 日 法 律 第 百 七 十 四 号 ) 第 三 十 七 条 港 長 は 船 舶 交 通 の 安 全 のため 必 要 があると 認 めるときは 特 定 港 内 において 航 路 又 は 区 域 を 指 定 して 船 舶 の 交 通 を 制 限 し 又 は 禁 止 する ことができる 2 前 項 の 規 定 により 指 定 した 航 路 又 は 区 域 及 び 同 項 の 規 定 による 制 限 又 は 禁 止 の 期 間 は 港 長 がこれを 公 示 する 3 港 長 は 異 常 な 気 象 又 は 海 象 海 難 の 発 生 その 他 の 事 情 により 特 定 港 内 において 船 舶 交 通 の 危 険 が 生 じ 又 は 船 舶 交 通 の 混 雑 が 生 ずるおそれがある 場 合 において 当 該 水 域 における 危 険 を 防 止 し 又 は 混 雑 を 緩 和 するため 必 要 があると 認 めるときは 必 要 な 限 度 において 当 該 水 域 に 進 行 してくる 船 舶 の 航 行 を 制 限 し 若 しくは 禁 止 し 又 は 特 定 港 内 若 しくは 特 定 港 の 境 界 付 近 にある 船 舶 に 対 し 停 泊 する 場 所 若 しくは 方 法 を 指 定 し 移 動 を 制 限 し 若 しくは 特 定 港 内 若 しくは 特 定 港 の 境 界 付 近 から 退 去 することを 命 ずること ができる ただし 海 洋 汚 染 等 及 び 海 上 災 害 の 防 止 に 関 する 法 律 第 四 十 二 条 の 八 の 規 定 の 適 用 がある 場 合 は この 限 りでない 4 港 長 は 異 常 な 気 象 又 は 海 象 海 難 の 発 生 その 他 の 事 情 により 特 定 港 内 において 船 舶 交 通 の 危 険 を 生 ずるおそれがあると 予 想 される 場 合 において 必 要 があると 認 めるときは 特 定 港 内 又 は 特 定 港 の 境 界 付 近 にある 船 舶 に 対 し 危 険 の 防 止 の 円 滑 な 実 施 のために 必 要 な 措 置 を 講 ずべきことを 勧 告 する ことができる