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れ 現 在 まで 続 いている この 方 式 は 政 府 経 済 見 通 しによる 個 人 消 費 の 伸 び( 民 間 最 終 消 費 支 出 )のみによって 改 定 するもので これは 一 般 世 帯 の 約 7 割 の 消 費 水 準 と 言 われている この 貧 困 線 は 相 対 的 貧 困 線 に 近 い 概 念 であり 必 要 生 活 費 をもとにするそれまでの 保 護 基 準 とは 異 なって 一 般 家 庭 の 消 費 水 準 をベースにして 保 護 基 準 を 算 出 しており 下 位 階 層 の 支 出 総 額 の 動 向 に 注 目 するものである 1948 年 から 1983 年 までの 保 護 基 準 の 算 定 方 式 は 具 体 的 な 生 活 における 必 要 経 費 ( 食 費 が 中 心 )に 注 目 する 絶 対 的 貧 困 概 念 によっているが 1984 年 以 降 は 一 般 世 帯 の 消 費 水 準 に 注 目 して その 7 割 達 しない 層 を 貧 困 者 とすると 言 う 相 対 的 貧 困 概 念 によっている しかし 双 方 は 日 本 社 会 における 下 位 階 層 の 所 得 額 を 参 考 にして 生 活 の 必 要 経 費 を 設 定 し その 水 準 に 達 しない 場 合 に 貧 困 とみなしている 点 は 共 通 である 2 伝 統 的 な 厚 生 経 済 学 とセンの 問 題 意 識 ところでアマルティア センは 伝 統 的 な 厚 生 経 済 学 同 様 に 貧 困 を 幸 せの 不 足 と して 測 ろうとする しかし 何 を 幸 せ として 概 念 づけるかに 伝 統 的 な 経 済 学 との 相 違 が 存 在 する ( 生 活 保 護 基 準 の 算 出 では 消 費 生 活 の 水 準 が 一 定 に 満 たない 程 の 低 所 得 状 態 を 幸 せの 不 足 貧 困 状 態 とされている ) 伝 統 的 な 経 済 学 が 用 いる 幸 せの 基 準 は 厚 生 social welfare であり 物 や 財 や 社 会 状 態 などから 得 られる 人 間 の 心 理 的 な 満 足 感 であるのに 対 して センは 厚 生 とは 人 間 の 心 理 的 な 満 足 感 と 言 う 即 自 的 な 概 念 として 質 的 に 異 なる 価 値 ( 快 楽 欲 求 幸 福 ) を 詰 め 込 んでいる 事 情 報 の 処 理 や 解 釈 に 当 たって 帰 結 主 義 的 集 計 主 義 的 であり 多 様 な 価 値 を 否 定 しているとの 批 判 を 展 開 する その 上 で 厚 生 に 変 わる 人 間 の 幸 せの 基 準 ケイパビリティ を 提 示 するわけである 厚 生 とは 基 本 的 には 所 得 などの 財 の 多 寡 に 規 定 される 概 念 だが ケイパビリティ capability ( 潜 在 能 力 ) は 人 間 の その 社 会 その 境 遇 において 可 能 な 財 活 用 行 動 の 自 由 度 その 行 動 の 成 果 である 将 来 達 成 できる 生 活 の 豊 かさ その 可 能 性 としている そ の 人 の 境 遇 や 社 会 の 文 化 政 治 的 安 定 度 等 の 多 焦 点 的 な 情 報 を 斟 酌 できる 概 念 といえよう 個 人 の ケイパビリティ はその 社 会 でその 人 の 個 人 的 条 件 下 で 財 を 実 際 に 活 用 して 将 来 の 生 活 を 豊 かにできる 自 由 =( 実 現 可 能 な 豊 かさの 展 望 )であり その 社 会 の 貧 困 度 は 生 活 の 豊 かさを 構 成 する 生 活 機 能 群 機 能 (ファンクショニング) 集 合 基 本 的 ケイパビリ ティの 集 合 の 少 なさ 欠 乏 として 測 る 事 ができるとする 3 近 代 科 学 としての 厚 生 経 済 学 的 アプローチの 限 界 とセンの 対 応 2

ⅰ) 近 代 科 学 の 対 象 把 握 手 法 のもつ 限 界 性 ところで 近 代 科 学 は 近 世 社 会 ルネッサンスのキリスト 教 会 内 部 において もう 一 つの バイブルである 自 然 を 読 み 解 く 学 問 としてその 芽 を 胚 胎 したと 言 われる たとえば 天 体 の 運 動 の 秩 序 力 学 的 整 合 性 を 読 み 解 く 事 は 神 の 作 り 給 うた 自 然 の 調 和 ユニヴァースを 読 み 解 く 事 であり 神 の 技 の 妙 なることを 愛 でる 作 業 であった それゆえ 自 然 科 学 の 法 則 は シンプルであればある 程 遍 く 地 上 にゆき 渡 ればゆき 渡 る 程 その 法 則 性 こそが 神 の 恩 寵 その 確 信 そのものであった 2 という 法 学 の 世 界 では 市 民 革 命 の 時 代 19 世 紀 的 近 代 市 民 社 会 は 自 由 な 市 民 の 私 的 自 治 を 最 大 の 価 値 とする 近 代 市 民 法 的 秩 序 に 覆 われる 個 人 の 意 思 を 極 端 なまでに 重 んずる 意 思 主 義 個 人 の 意 思 だけに 純 化 された 契 約 像 3 とも 表 現 される 意 思 だけに 契 約 効 果 の 根 拠 を 求 める 契 約 原 理 が 支 持 される この 合 理 的 な 事 理 弁 識 能 力 ある 市 民 像 は 中 世 的 身 分 社 会 を 越 える 価 値 を 体 現 し 封 建 領 主 や 聖 職 者 に 何 を 求 められたとしても 一 市 民 の 内 心 の 意 思 が 全 てに 優 先 するとなした しかしこの 理 想 的 市 民 の 内 心 の 意 志 に 至 上 の 価 値 をおく 近 代 契 約 法 理 は 現 世 を 生 き 抜 く 様 々な 境 遇 の 生 身 の 人 間 を 捨 象 した 上 で 抽 象 的 市 民 理 想 的 市 民 を 構 成 するもので あった 経 済 活 動 を 科 学 する 経 済 学 においても このような 思 考 様 式 が 踏 襲 され 自 己 利 益 の 最 大 化 を 求 めて 合 理 的 に 判 断 する 経 済 人 ホモ エコノミカスという 人 間 像 をもって 多 様 な 人 間 を 抽 象 し 経 済 活 動 の 予 測 や 評 価 に 適 用 される 人 間 行 動 をシンプリファイして 把 握 す る 方 法 論 を 踏 襲 したと 思 われる 貧 困 へのアプローチでも 所 得 のみに 関 する 情 報 所 得 分 布 情 報 という 切 り 口 によって 貧 困 にアプローチするという 極 度 にシンプリファイする 手 法 が 援 用 されたと 思 われる この 近 代 科 学 的 な 手 法 から 生 じる 不 都 合 を センは 公 理 分 析 の 手 法 を 駆 使 する 事 によっ て 拓 こうとし やがて 生 活 の 全 体 像 を 把 握 できる 多 焦 点 的 な 機 能 (functionings) 概 念 によ り 構 成 されるケイパビリティ 概 念 による 貧 困 へのアプローチを 提 示 したと 考 えられる ⅱ) 過 酷 な 生 活 問 題 としての 貧 困 問 題 ところで 貧 困 概 念 の 背 後 にあり 反 映 すべき 実 体 は 具 体 的 概 念 としての 生 活 の 困 窮 であり 社 会 福 祉 の 側 からみると 歴 史 的 に 生 活 問 題 という 多 焦 点 的 な 問 題 として 対 応 し 続 けている 問 題 であり その 過 酷 な 部 分 と 言 わざるを 得 ない 生 活 困 窮 としての 貧 困 を 所 得 情 報 だけで 測 ろうとしても 貧 困 概 念 の 中 の 不 平 等 問 題 に 相 当 する 部 分 は 多 焦 2 渡 辺 正 雄 科 学 者 とキリスト 教 P17 ブルーバックス B-686 講 談 社 昭 和 62 年 4 月 20 日 注 ) 桜 井 登 科 学 的 世 界 観 2 節 科 学 と 宗 教 自 然 科 学 においては 宇 宙 は 秩 序 だ ったもので その 構 造 や 法 則 は 最 終 的 には 簡 明 であるべきであると 考 えられている http://www.geocities.jp/nbsakurai/32.htm 07/20/20 3 内 田 貴 契 約 の 時 代 P29 岩 波 書 店 2000 年 11 月 3

点 的 で 多 様 な 情 報 に 依 拠 しており 補 足 しきれない 部 分 をかえることになる また 生 活 財 を 手 に 入 れる 手 段 は 貨 幣 経 済 ( 市 場 )による 生 活 財 の 取 得 が 主 流 となって いる 現 代 社 会 であっても 家 族 扶 養 や 親 類 縁 者 慈 善 結 い 等 からの 生 活 財 の 確 保 など 前 近 代 的 な 現 物 交 換 のルールが 残 っている 国 や 地 域 もあるところから 生 活 の 困 窮 を 所 得 情 報 のみで 測 ることが 全 ての 社 会 において 全 く 有 効 とは 限 らないと 考 えられる アマルティア センの 提 示 する 厚 生 に 代 わる 幸 せの 基 準 ケイパビリティ の 構 成 要 素 諸 機 能 は 適 切 な 栄 養 を 得 ているか 健 康 状 態 にあるか 避 けられる 病 気 にかかって いないか 早 死 にしていないか 幸 福 であるか 自 尊 心 をもっているか 社 会 生 活 に 参 加 しているか 4 など 生 活 の 質 に 関 連 する 内 容 である ⅲ)ソーシャルワークにおける 生 活 問 題 ソーシャルワークは 歴 史 的 に 生 活 問 題 とは 多 くの 焦 点 を 持 つものとして 対 峙 してお り 過 酷 な 生 活 問 題 である 貧 困 に 対 しては ソーシャルワーク 発 祥 の 時 期 19 世 紀 から 友 愛 訪 問 セッツルメント 活 動 などとして 対 応 を 重 ねてきているわけである 近 代 の 夜 明 け 産 業 革 命 直 後 のイギリス 社 会 都 市 生 活 者 の 絶 対 的 貧 困 状 態 が 蔓 延 する 中 で ロンド ン 市 民 への 友 愛 訪 問 がそのルーツである 近 代 主 義 の 一 典 型 としての 近 代 経 済 学 における 貧 困 へのアプローチ 所 得 と 言 う 単 一 の 次 元 の 情 報 によるアプローチの 限 界 を 前 に センはこの 限 界 を 拓 く 為 に 公 理 分 析 の 手 法 を 駆 使 して 多 様 な 視 点 を 導 入 し 遂 にケイパビリティ 概 念 の 提 示 へと 進 んだと 考 えられる この 関 係 を 社 会 福 祉 の 側 からみると センが 編 み 出 した 公 理 分 析 の 手 法 や 貧 困 へのケイ パビリティ アプローチは 厚 生 経 済 学 的 貧 困 研 究 における 貧 困 へのアプローチ 所 得 情 報 のみによるアプローチ その 狭 隘 さに 対 峙 して 過 酷 な 生 活 問 題 へのアプローチと して 捉 える 中 から その 情 報 的 基 礎 の 拡 大 を 追 求 する 必 要 で 不 可 欠 な 道 筋 であったと 考 える 事 ができよう ⅳ)どのような 情 報 群 を 選 んで 貧 困 をはかるのか 基 本 的 ケイパビリティ( 生 活 の 機 能 functioning の 集 合 )を 情 報 源 ( 情 報 的 基 礎 )として 貧 困 を 測 定 しようとするのが 貧 困 へのケイパビリティ アプローチである しかしその 社 会 の 基 本 的 なケイパビリティの 特 定 には 様 々な 機 能 の 中 の 何 を 選 び どのような 重 要 さ で 評 価 するべきか 5 の 選 択 において 依 然 として 困 難 を 抱 えていると 言 わねばならない 4 アマルティア セン 不 平 等 の 再 検 討 P59 岩 波 書 店 2000 年 12 月 5 橘 木 俊 詔 浦 川 邦 夫 日 本 の 貧 困 研 究 P17 東 京 大 学 出 版 会 2006 年 9 月 4

ケイパビリティの 政 策 への 応 用 である 国 連 の 人 間 貧 困 指 数 の 開 発 においても 様 々な 議 論 が 重 ねられて 指 標 は 2 度 の 改 訂 を 経 ている また 絶 対 的 貧 困 ラインの 算 定 方 式 や 保 護 基 準 の 算 定 方 式 の 改 変 の 推 移 をみても 同 様 の 問 題 は 尾 を 引 いていると 思 われる たとえば 最 低 生 活 費 は 食 費 を 中 心 に 算 定 するとしても 食 費 をどれだけ 重 み 付 けるのか そしてその 他 の 費 用 のうちどれを 選 ぶのかについては 自 明 とは 言 えない 問 題 といえよう そのために 戦 後 の 生 活 保 護 基 準 の 算 定 方 式 では 主 に 食 費 について 重 みづけつつも ど の 程 度 重 みづけるのか さらに 食 費 以 外 の 生 活 費 用 の 積 算 についてはさまざまな 見 解 があ り その 後 の 改 訂 された 算 定 方 式 では この 難 問 を 相 対 的 貧 困 概 念 によって 一 般 家 庭 の 消 費 水 準 との 比 較 によるものとして 回 避 している 訳 である また P.タウンゼントの 相 対 的 剥 奪 指 標 における 12 の 社 会 行 動 の 選 択 60 の 財 の 選 択 や 現 在 では 社 会 的 排 除 の 指 標 においても どのような 調 査 項 目 を 選 び どのように 重 み 付 けて 測 るのか それが 自 明 とはいえない 問 題 として 検 討 されている この 事 はセンの 基 本 的 ケイパビリティの 選 択 においても 同 様 であり 調 査 項 目 の 選 定 上 の 困 難 は 共 通 の 課 題 として 現 れていると 思 われる ケイパビリティの 比 較 のみに 基 づいて 貧 困 指 標 を 作 ることは 困 難 である 6 との 指 摘 もあり 旧 来 の 所 得 情 報 による 貧 困 測 定 を 公 理 分 析 の 手 法 によって 行 った 場 合 の 隘 路 を 再 度 持 ちこしている 感 も 否 めない 貧 困 の 測 定 にあたり 所 得 情 報 をベースにする 測 定 を 進 め それを 補 完 修 正 するためにケイパビリティ 概 念 を 用 いる 方 法 が 提 示 されるなど 今 後 の 研 究 成 果 が 待 たれるとの 指 摘 もなされている 貧 困 と 不 平 等 問 題 人 間 の 幸 せへ 6 絵 所 秀 紀 山 崎 幸 治 編 著 アマルティア センの 世 界 経 済 学 と 開 発 研 究 の 架 橋 P93 晃 洋 書 房 2005 年 2 月 25 日 5