海 外 情 報 タイのいんげんの 生 産 および 輸 出 動 向 調 査 情 報 部 要 約 タイのいんげんは 冷 涼 な 北 部 で 栽 培 されており 冷 凍 加 工 向 けは 冷 凍 加 工 企 業 との 契 約 栽 培 となっている 主 な 仕 向 け 先 の 日 本 が 冷 凍 いんげんの 発 注 先 をタイから 価 格 の 安 い 中 国 にシ フトしているため 作 付 面 積 生 産 量 および 輸 出 量 とも 減 少 傾 向 で 推 移 している 一 方 タイの 冷 凍 加 工 企 業 は 中 国 産 えだまめから 残 留 農 薬 が 検 出 されて 日 本 からの 発 注 量 が 増 えている 冷 凍 えだまめの 生 産 にシフトしており 今 後 もこの 流 れが 継 続 するとみられる 1 はじめに いんげんは 元 来 豆 を 意 味 したが 若 採 りしたものがサヤをつけたまま 野 菜 として 利 用 されており 日 本 において 和 食 や 洋 食 などで 幅 広 く 使 用 されている 国 産 のさやいんげんは 6 月 から9 月 を 中 心 に 出 回 り 主 に 家 庭 消 費 向 けとして 量 きょうじつ 販 店 などで 販 売 されているが 他 の 莢 実 類 同 様 収 穫 調 製 作 業 は 機 械 化 が 進 んでお らず 手 間 がかかるため 生 産 者 の 高 齢 化 に 伴 い 作 付 面 積 および 生 産 量 は 減 少 傾 向 にあ る 一 方 輸 入 品 のうち 生 鮮 いんげんは 品 薄 になる 冬 期 の 家 庭 消 費 向 けに 中 東 のオ マーンから 補 完 的 に 輸 入 される 程 度 である が 冷 凍 いんげんは 中 国 産 タイ 産 など が 外 食 中 食 などの 業 務 向 けや 家 庭 消 費 向 けに 年 間 を 通 して 広 く 流 通 している 特 に 材 料 コストの 抑 制 が 求 められる 低 価 格 志 向 の 外 食 中 食 や 消 費 者 向 けのディスカウ ントストアなどでは 安 価 な 冷 凍 いんげん は 欠 かせないものとなっている 日 本 のタイ 産 冷 凍 いんげんの 輸 入 量 は 1980 年 代 までは 少 なかったものの 90 年 代 に 入 り 大 きく 伸 長 し 2015 年 では 中 国 に 次 ぐ 第 2 位 の 輸 入 先 国 であり 輸 入 量 全 体 の 約 3 割 を 占 める( 図 1) 本 稿 では 主 要 な 輸 入 先 国 であるタイの いんげんの 生 産 および 輸 出 動 向 について 紹 介 する なお 本 稿 中 の 為 替 レートは 1バーツ= 3 円 (2016 年 5 月 末 日 TTS 相 場 :3.18 円 )を 使 用 した 野 菜 情 報 72 2016.7
(トン) 30,000 図 1 日 本 の 国 別 冷 凍 いんげん 豆 等 輸 入 量 の 推 移 25,000 20,000 15,000 855 1,773 1,073 1,286 1,554 9,819 10,481 9,566 8,369 7,623 その 他 タイ 10,000 5,000 14,686 13,473 14,033 14,800 14,561 中 国 0 2011 2012 2013 2014 2015 ( 年 ) 資 料 : Global Trade Atlas 注 :HSコード07102200000( 冷 凍 野 菜 :ささげ 属 又 はいんげんまめ 属 の 豆 ) 2 いんげんの 生 産 状 況 (1) 主 産 地 の 動 向 東 南 アジアに 位 置 するタイは 標 高 が 高 く 比 較 的 冷 涼 な 北 部 降 水 量 が 少 ない 東 北 部 熱 帯 特 有 の 気 候 条 件 で 穀 倉 地 帯 の 中 部 中 部 よりも 雨 季 が 長 くゴムノキなどの 生 産 が 盛 んな 南 部 に 区 分 され いんげんなどの 野 菜 は 主 に 冷 涼 な 北 部 で 生 産 される( 図 2) 図 2 いんげん 産 地 の 位 置 資 料 : 機 構 作 成 とうしょ 注 : 地 図 作 成 上 の 技 術 的 な 制 約 から 島 嶼 部 を 除 いた 地 域 のみ 記 載 野 菜 情 報 73 2016.7
タイのいんげん 栽 培 の 始 まりは 不 明 だ が 1985 年 のプラザ 合 意 以 降 円 高 基 調 となった 為 替 相 場 を 背 景 に 日 系 企 業 がタイ に 進 出 し 日 本 向 けの 野 菜 を 含 む 加 工 食 品 の 生 産 が 活 発 に 行 われたことや タイ 政 府 による 第 6 次 農 業 開 発 計 画 (1987 91 年 ) 第 7 次 農 業 開 発 計 画 (1992 96 年 ) により 野 菜 生 産 や 農 産 物 加 工 業 の 発 展 支 援 が 行 われたことで 作 付 面 積 生 産 量 と もに 増 加 してきた 特 に 第 7 次 農 業 開 発 計 画 では 農 外 の 就 業 機 会 が 少 なく 中 部 より 所 得 の 低 い 北 部 などの 農 家 所 得 の 向 上 を 目 的 に 輸 出 向 け 野 菜 の 契 約 栽 培 を 推 進 した これらのことから 北 部 の 輸 出 向 けいんげ ん 産 地 が 確 立 したとみられる (2) 栽 培 工 程 北 部 では ほかの 地 域 同 様 水 田 栽 培 が 農 業 の 主 体 となっているため いんげんは 一 般 的 に 水 田 裏 作 として 栽 培 されている 温 暖 な 気 候 のタイは 雨 季 と 乾 季 でコメの 二 期 作 が 可 能 であるが コメは 活 着 期 から 登 熟 期 にかけて 小 まめな 水 管 理 が 求 められ るため かんがい 未 整 備 ほ 場 では 乾 季 のコ メ 栽 培 ができない コメの 生 産 性 の 高 い 中 部 ではかんがい 整 備 が 進 んでいるが 比 較 的 冷 涼 で 生 産 性 の 低 い 北 部 は かんがい 未 整 備 ほ 場 が 多 いため ほ 場 の 有 効 活 用 とし て 雨 季 作 (6 10 月 )の 裏 作 にいんげん などの 野 菜 が 栽 培 されている また 北 部 は 冷 凍 加 工 企 業 が 多 く 立 地 しており 原 料 としての 需 要 が 大 きいため 冷 凍 加 工 企 業 へ 出 荷 する 農 家 の 多 くは 周 年 でいんげん 栽 培 を 行 う 一 般 的 な 水 田 裏 作 では コメの 収 穫 が 終 わった11 月 に 耕 うんや 土 作 りなどのほ 場 準 備 が 行 われ 12 月 には 種 が 行 われる また コメの 雨 季 作 との 兼 ね 合 いから 栽 培 期 間 の 短 いつるなし 品 種 が 栽 培 されてお り 収 穫 期 間 は3 月 の1カ 月 間 と 短 い( 図 3) 図 3 タイ 北 部 のいんげんの 生 育 ステージ 一 般 的 な 水 田 裏 作 (つるなし) 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 ほ 場 準 備 は 種 収 穫 輸 出 向 け 契 約 主 体 (つるあり) 収 穫 ほ 場 準 備 は 種 ほ 場 準 備 は 種 収 穫 資 料 : 聞 き 取 りにより 機 構 作 成 一 方 輸 出 向 け 契 約 主 体 の 栽 培 では 長 期 間 収 穫 を 目 指 すためにつるあり 品 種 が 栽 培 されており 1 月 から3 月 収 穫 の 場 合 は 9 月 から10 月 には 種 を 行 い 7 月 から12 月 収 穫 の 場 合 は5 月 から6 月 には 種 を 行 う つるあり 品 種 の 栽 培 は1 条 植 えで 日 本 で 一 般 的 なネット 栽 培 ではなく1 株 ごと に 支 柱 を 立 ててつるを 絡 ませており 草 丈 は 日 本 同 様 2メートル 程 度 になる( 写 真 ) 野 菜 情 報 74 2016.7
写 真 つるあり 品 種 のほ 場 (3) 栽 培 契 約 冷 凍 加 工 企 業 は 個 々の 生 産 者 ではなく 地 域 の 代 表 者 と 栽 培 契 約 を 結 ぶ( 図 4) 冷 凍 加 工 企 業 は 品 種 肥 料 農 薬 などを 指 定 しており 指 定 資 材 を 地 域 の 代 表 者 に 一 括 販 売 し 地 域 の 代 表 者 が 個 々の 生 産 者 に 分 配 する 個 々の 生 産 者 が 自 身 のほ 場 で 冷 凍 加 工 企 業 の 栽 培 基 準 による 栽 培 を 行 い 冷 凍 加 工 企 業 の 栽 培 指 導 員 が 各 生 産 者 のほ 場 を 巡 回 指 導 し 産 地 全 体 の 栽 培 技 術 の 統 一 を 図 っている 収 穫 調 製 作 業 は 生 産 者 が 共 同 で 行 い 出 荷 は 地 域 の 代 表 者 が 集 約 して 行 う 販 売 代 金 は 冷 凍 加 工 企 業 が 地 域 の 代 表 者 に 一 括 して 支 払 い 地 域 の 代 表 者 が 個 々の 生 産 者 の 出 荷 量 に 応 じて 分 配 する 図 4 冷 凍 加 工 企 業 と 産 地 の 契 約 契 約 関 係 冷 凍 加 工 企 業 資 材 配 布 販 売 代 金 分 配 は 地 域 の 代 表 者 に 一 任 栽 培 指 導 は 個 々の 生 産 者 を 対 象 出 荷 自 社 指 定 の 農 業 資 材 ( 種 子 肥 料 農 薬 )の 販 売 販 売 代 金 の 支 払 い( 農 業 資 材 代 は 支 払 い 時 に 差 し 引 き) 栽 培 指 導 員 による 巡 回 指 導 ( 生 産 者 個 別 指 導 ) 地 域 の 代 表 者 種 子 肥 料 農 薬 販 売 代 金 の 各 農 家 への 分 配 収 穫 物 の 集 約 出 荷 生 産 者 生 産 者 生 産 者 生 産 者 生 産 者 資 料 : 聞 き 取 りにより 機 構 作 成 野 菜 情 報 75 2016.7
地 域 の 代 表 者 は 冷 凍 加 工 企 業 と 生 産 者 の 仲 介 役 としても 機 能 しており 冷 凍 加 工 企 業 の 栽 培 指 導 員 と 協 力 しながら 個 々の 生 産 者 の 利 害 調 整 や 栽 培 調 製 技 術 の 統 一 を 行 っている 地 域 の 代 表 者 が 栽 培 指 導 員 の 補 佐 的 な 役 割 を 担 っているため 冷 凍 加 工 企 業 の 栽 培 指 導 員 が 産 地 に 巡 回 できない 時 も 農 薬 の 不 適 切 使 用 などの 問 題 は 起 きに くいという (4) 作 付 面 積 の 推 移 いんげんは タイにおいて 主 要 な 野 菜 品 目 ではないために 全 国 統 計 はないものの 主 産 地 である 北 部 のナーン 県 およびチェン マイ 県 は 生 産 統 計 を 整 備 している 公 的 指 導 機 関 である 両 県 の 農 業 事 務 所 によると 生 産 統 計 は 県 内 全 ての 作 付 面 積 を 把 握 して いないものの 栽 培 動 向 の 指 標 になるとし ている これによると ナーン 県 では 作 付 面 積 が 減 少 傾 向 にあり 特 に2014 年 は 前 年 比 69.6% 減 の7ヘクタールと 激 減 した( 表 1) ナーン 県 農 業 事 務 所 によると 生 育 期 の 降 水 量 不 足 により 栽 培 を 中 止 した 生 産 者 が 多 かったことによるとしている 項 目 年 表 1 ナーン 県 の 作 付 面 積 および 生 産 量 の 推 移 作 付 面 積 (ヘクタール) 収 穫 量 (トン) 10 a 当 たり 収 量 ( キログラム) 2011 27.8 357.8 1,287.1 2012 24.2 347.3 1,435.1 2013 23.0 400.6 1,741.7 2014 7.0 132.0 1,885.7 資 料 :ナーン 県 農 業 事 務 所 冷 凍 加 工 工 場 が 多 いチェンマイ 県 は 盆 地 のため 雨 季 の 気 温 が 中 部 を 上 回 る 日 も 多 く ナーン 県 などの 他 産 地 よりも 収 量 が 低 いものの ( 注 1) 冷 凍 加 工 工 場 まで 他 産 地 よ りも 近 いことから 作 付 面 積 が 拡 大 し 2014 年 は12.8ヘクタールとナーン 県 を 上 回 った( 表 2) ちゃっ きょう 注 1:いんげんは 高 温 条 件 下 では 着 莢 が 悪 化 する ため 減 収 となる 表 2 チェンマイ 県 の 作 付 面 積 および 生 産 量 の 推 移 項 目 年 作 付 面 積 (ヘクタール) 収 穫 量 (トン) 10 a 当 たり 収 量 ( キログラム) 2011 2.4 18.0 750.0 2012 3.5 13.0 371.4 2013 2014 12.8 48.0 375.0 資 料 :チェンマイ 県 農 業 事 務 所 注 :2013 年 はデータ 未 整 備 なお 北 部 で 最 も 作 付 面 積 が 多 いとされ るチェンライ 県 は 生 産 統 計 が 未 整 備 と なっている タイでは 2011 年 から 当 時 のインラッ ク 政 権 により 大 規 模 なコメ 価 格 支 持 政 策 が 行 われ 高 水 準 の 価 格 形 成 を 推 し 進 めた 野 菜 情 報 76 2016.7
しかし 高 価 な 政 府 買 入 米 を 安 価 に 輸 出 す ることはWTOで 規 定 する 輸 出 補 助 金 に 該 当 するため 輸 出 できずに 過 剰 な 政 府 在 庫 となったことで 巨 額 な 財 政 損 失 となった その 後 軍 事 クーデターにより 政 権 に 就 い たプラユット 政 権 は 2014 年 にこの 政 策 を 廃 止 し 統 制 的 に 米 価 を 引 き 下 げた コ メ 政 策 に 関 してプラユット 政 権 は 低 コス ト 化 と 生 産 性 の 向 上 のみならず 作 物 適 性 に 応 じたコメ 生 産 地 域 の 特 定 と 他 作 物 への 転 作 などを 計 画 しており 北 部 のようなコ メの 生 産 性 の 低 い 地 域 では 今 後 野 菜 な どへの 転 作 が 進 むとみられている いんげんについては 主 に 冷 凍 加 工 企 業 との 契 約 栽 培 となることから 冷 凍 加 工 企 業 による 原 料 需 要 が 増 加 する 場 合 コメか らの 転 作 が 進 み 作 付 面 積 の 増 加 につなが る しかし 後 述 する 冷 凍 加 工 企 業 による 冷 凍 いんげんの 生 産 量 減 少 と 冷 凍 えだまめ への 生 産 シフトにより いんげんの 生 産 は 減 少 傾 向 にある このため コメからの 転 作 は 冷 凍 加 工 企 業 の 需 要 が 増 加 している えだまめの 作 付 面 積 の 拡 大 につながるとさ れており いんげんの 作 付 面 積 は 微 減 傾 向 となる 可 能 性 が 高 い 3 いんげん 加 工 を 取 り 巻 く 状 況 いんげんを 含 む 輸 出 向 け 冷 凍 野 菜 加 工 は 国 内 企 業 と 輸 出 先 国 の 企 業 による 合 弁 事 業 として 始 まったケースが 多 く 生 産 さ れた 冷 凍 野 菜 の8 割 から9 割 が 日 本 などへ の 輸 出 向 けとなっている 企 業 名 工 場 所 在 地 総 生 産 量 生 産 商 品 主 な 加 工 原 料 野 菜 企 業 内 容 A 社 B 社 C 社 チェンマイ 県 内 2 カ 所 ラムパーン 県 内 2 カ 所 チェンマイ 県 内 1カ 所 ラムパーン 県 内 1カ 所 資 料 : 聞 き 取 りにより 機 構 作 成 2 万 8216 トン 冷 凍 野 菜 6000 トン 冷 凍 野 菜 表 3 主 な 加 工 企 業 2 万 トン 冷 凍 野 菜 いんげん えだまめ 1988 年 設 立 野 菜 冷 凍 加 工 としては 先 発 企 業 である いんげん えだまめ 日 系 商 社 と 台 湾 冷 凍 加 工 企 業 国 内 農 業 スイートコーン ベビー 生 産 企 業 の 合 弁 企 業 コーン にんじん 仕 向 け 先 は 日 本 が 92% その 他 国 外 が 7.2% 国 内 が 0.8%で いんげんはほぼ 全 てが 日 本 向 け 1989 年 設 立 いんげん えだまめ 日 系 商 社 日 系 食 品 企 業 日 系 食 品 企 業 スイートコーン ベビー の 現 地 子 会 社 の 合 弁 企 業 コーン にんじん マ 仕 向 け 先 は 日 本 が 60% 米 国 欧 州 が シュルーム いちご それぞれ 15% 台 湾 が 5% 国 内 が 5% 1993 年 設 立 国 内 のたばこ 輸 出 企 業 と 国 内 商 社 および 銀 行 の 合 弁 企 業 仕 向 け 先 は 日 本 が 56% 米 国 が 25% その 他 国 外 が 4% 国 内 が 15% 主 な 加 工 企 業 としては 表 3の3 社 が 挙 げられるが 代 表 的 な 事 例 として 日 系 冷 凍 加 工 企 業 A 社 について 紹 介 する A 社 の 設 立 は1988 年 と 国 内 では 先 発 で 当 時 冷 凍 野 菜 の 主 要 対 日 輸 出 国 で あった 台 湾 の 人 件 費 増 など 生 産 コスト 上 昇 により 日 系 商 社 と 台 湾 の 冷 凍 加 工 企 業 が 生 産 コストの 低 いタイに 新 たな 対 日 生 産 拠 点 の 設 置 を 目 指 したことにある 台 湾 での 生 産 ノウハウと 日 本 国 内 の 販 路 は 確 保 され ていたことから 日 台 両 企 業 は 国 内 での 原 料 調 達 ノウハウを 持 つ 国 内 農 業 生 産 企 業 との 合 弁 に 至 った A 社 は 国 内 の 冷 凍 いんげんの 半 分 以 上 野 菜 情 報 77 2016.7
を 生 産 しており その 仕 向 け 先 はほぼ 全 て が 日 本 となっている 冷 凍 いんげんの 生 産 および 出 荷 量 は 公 表 されていないものの 年 間 6000 7000トン 程 度 とされている A 社 は 人 件 費 などの 生 産 コストの 上 昇 に より 冷 凍 いんげんの 生 産 および 出 荷 量 は 微 減 傾 向 にあるとしている A 社 の 生 産 管 理 を 見 ると 生 産 者 には 自 社 で 販 売 する 農 業 資 材 以 外 の 資 材 の 使 用 を 認 めておらず 栽 培 期 間 中 は 栽 培 指 導 員 による 巡 回 指 導 と 肥 料 や 農 薬 などの 記 帳 が 行 われている これにより 生 産 者 全 体 の 栽 培 技 術 を 統 一 するとともに ほ 場 からの トレーサビリティを 可 能 にしている 収 穫 後 ほ 場 原 料 集 荷 段 階 では 全 生 産 者 の 出 荷 物 について ロットごとに 日 本 の 基 準 によ る 残 留 農 薬 検 査 を 実 施 し 基 準 値 を 超 えて 残 留 のあったロットは 返 品 としている 冷 凍 加 工 工 場 では HACCP ( 注 2) に 基 づい た 生 産 管 理 を 行 うとともに GMP ( 注 3) I S O 9000 ( 注 4) といった 食 品 安 全 などに 関 する 認 証 も 取 得 することにより 日 本 の 冷 凍 加 工 工 場 同 等 の 食 品 安 全 対 策 を 講 じて いる( 図 5) 注 2: 食 品 の 製 造 加 工 工 程 のあらゆる 段 階 で 発 生 する 恐 れのある 微 生 物 汚 染 などの 危 害 を 事 前 に 分 析 し その 結 果 に 基 づいて 重 要 管 理 点 を 定 め 連 続 的 に 監 視 することで 製 品 の 安 全 を 確 保 する 衛 生 管 理 の 手 法 注 3: 製 造 適 正 規 範 製 品 が 安 全 に 作 られ 一 定 の 品 質 が 担 保 できるよう 製 造 工 程 を 管 理 する 基 準 のこと 注 4: 製 品 またはサービスが 所 与 の 品 質 要 求 を 満 た していることの 妥 当 な 信 頼 感 を 与 えるために 必 要 な 全 ての 計 画 的 および 体 系 的 活 動 に 対 す るISO( 国 際 標 準 化 機 構 )の 認 証 制 度 図 5 A 社 の 生 産 工 程 原 料 搬 入 計 量 1 次 洗 浄 2 次 洗 浄 ブランチング 冷 却 半 製 品 完 成 半 製 品 搬 入 ロットごとの 生 産 データ 確 認 選 別 個 別 包 装 金 属 検 査 ロットごとの 生 産 データ 確 認 出 荷 製 品 完 成 資 料 :A 社 野 菜 情 報 78 2016.7
A 社 のいんげんを 含 む 冷 凍 野 菜 の 仕 向 け 先 は 日 本 が92% そのほかの 国 が7.2% とほとんどが 輸 出 向 けとなっており 国 内 向 けはわずか0.8%にすぎない 対 日 輸 出 さ れるA 社 の 冷 凍 野 菜 は 輸 出 先 企 業 のブラン ドで 販 売 されており 日 本 でA 社 の 企 業 名 が 入 った 冷 凍 野 菜 を 目 にすることはない A 社 を 含 めたタイ 産 冷 凍 いんげんは 原 料 が 全 量 契 約 栽 培 によることから 日 本 で は 農 場 指 定 などとして ほ 場 が 限 定 さ れていることを 消 費 者 に 訴 求 した 販 売 が 行 われている A 社 やB 社 などの 日 系 冷 凍 加 工 企 業 は 主 な 仕 向 け 先 が 日 本 のため 日 本 側 の 需 要 に 生 産 量 が 影 響 される 傾 向 がある 近 年 は 日 本 のタイ 産 冷 凍 いんげん 需 要 が 伸 び 悩 んでいる ため 生 産 量 は 微 減 傾 向 で えだまめやミック スベジタブルに 生 産 がシフトしているとのこ とである これに 対 して 日 本 向 けの 比 率 が 両 社 より 低 い 国 内 資 本 のC 社 は 他 国 向 けや 国 内 向 け 生 産 量 を 伸 ばしている 4 いんげんの 輸 出 動 向 冷 凍 いんげんの 輸 出 量 は 2013 年 以 降 主 要 輸 出 先 である 日 本 の 需 要 減 少 により 減 少 傾 向 にあるが 特 に2014 年 は 原 料 の 主 産 地 であるナーン 県 が 不 作 となったこ とで 減 少 に 拍 車 がかかった( 図 6) 日 本 の 需 要 減 少 は タイとともに 主 要 輸 入 先 で ある 中 国 産 との 価 格 差 が2013 年 に 拡 大 し たため 仕 入 先 を 中 国 にシフトしたことに よる( 図 7) 中 国 との 価 格 差 拡 大 は イ ンラック 政 権 が2012 年 最 低 賃 金 を 大 幅 に 引 き 上 げたことで 生 産 コストが 上 昇 した ことが 大 きな 要 因 となっている 生 産 コス トの 上 昇 は 人 件 費 高 騰 による 生 産 拠 点 の 国 外 移 転 を 招 くことから 最 低 賃 金 は 2013 年 以 降 据 え 置 かれているものの 2015 年 の 中 国 産 との 価 格 差 は 依 然 として 1キログラム 当 たり39 円 となっている 日 本 側 は2014 年 ナーン 県 の 不 作 を 受 け 中 国 産 を 代 替 として 使 用 することと なった 2015 年 も タイ 産 は 数 量 確 保 の 面 で 不 安 が 残 ったこと 中 国 産 は 安 価 で 数 量 が 安 定 しており 品 質 も 均 一 であることな どから 日 本 側 が 中 国 産 を 増 やした 結 果 タイ 産 の 輸 出 量 はさらに 減 少 した (トン) 11,000 10,000 9,000 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 40 94 406 9,428 図 6 冷 凍 いんげん 豆 等 輸 出 量 の 推 移 26 6 443 9,971 50 50 468 9,452 6 405 8,103 8 154 7,498 2011 2012 2013 2014 2015 ( 年 ) 資 料 : Global Trade Atlas 注 :HSコード07102200000( 冷 凍 野 菜 :ささげ 属 又 はいんげんまめ 属 の 豆 ) その 他 米 国 台 湾 日 本 野 菜 情 報 79 2016.7
図 7 日 本 におけるいんげんのタイ 産 と 中 国 産 の 価 格 の 推 移 ( 円 /キログラム) 240 220 200 180 160 140 120 タイ 中 国 100 2011 2012 2013 2014 2015 ( 年 ) 資 料 : 財 務 省 貿 易 統 計 一 方 冷 凍 えだまめの 輸 出 量 は 増 加 傾 向 にある( 図 8) 日 本 のえだまめ 輸 入 に おいて 中 国 は 台 湾 に 次 ぐ 主 要 輸 入 先 で あったが 2012 年 に 中 国 産 冷 凍 えだまめ から 基 準 値 を 超 えた 残 留 農 薬 が 検 出 された ことなど 食 品 安 全 上 の 問 題 の 影 響 から タ イ 産 へのシフトが 続 いている 冷 凍 いんげ んの 製 造 レーンは 冷 凍 えだまめ 生 産 に 転 用 されており 冷 凍 加 工 企 業 との 契 約 生 産 者 もいんげんからえだまめへ 作 付 けをシフト している 日 本 においてえだまめは 冷 凍 野 菜 輸 入 の2 割 を 占 めており 家 庭 消 費 は もちろん 外 食 などでも 大 量 に 使 用 される など 需 要 が 大 きい これに 対 していんげん は 冷 凍 野 菜 輸 入 の1 割 に 満 たない 上 え だまめに 比 べ 外 食 などの 使 用 量 も 少 ないた め えだまめより 需 要 が 小 さい 図 8 タイ 産 のえだまめの 国 別 輸 出 量 (トン) 26,000 1,164 22,000 18,000 665 934 3,486 3,532 777 2,960 883 2,686 2,832 その 他 米 国 日 本 14,000 19,185 19,297 18,597 19,432 21,173 10,000 2011 2012 2013 2014 2015 ( 年 ) 資 料 : Global Trade Atlas 注 :HSコード071029( 冷 凍 野 菜 :えだまめを 含 むその 他 豆 類 ) これらのことから 冷 凍 野 菜 の 主 要 な 輸 出 先 国 である 日 本 の 需 要 動 向 の 影 響 を 受 け るタイでは いんげん 生 産 および 輸 出 量 の 減 少 と 冷 凍 えだまめ 生 産 および 輸 出 量 の 増 加 が 継 続 するものとみられる 野 菜 情 報 80 2016.7
5 さいごに タイのいんげん 作 付 面 積 は 冷 凍 加 工 企 業 の 日 本 向 け 出 荷 が 主 体 のため 日 本 側 の 発 注 量 に 大 きく 左 右 される 傾 向 があり 近 年 は 日 本 側 が 安 価 で 生 産 量 が 安 定 してい る 中 国 産 へシフトしていることから 減 少 傾 向 となっている また タイの 日 本 向 け 冷 凍 野 菜 生 産 全 体 としても 冷 凍 いんげん の 生 産 および 輸 出 量 は 2012 年 の 国 内 最 低 賃 金 の 引 き 上 げに 伴 う 生 産 コスト 上 昇 に より 微 減 傾 向 となっている こうしたこ とから タイの 野 菜 生 産 輸 出 については 他 の 品 目 の 生 産 輸 出 状 況 はもちろん 生 産 コストの 上 昇 につながる 施 策 も 対 日 輸 出 に 影 響 を 及 ぼしていることがわかる タイの 冷 凍 野 菜 加 工 業 の 発 展 は 日 系 企 業 の 積 極 的 な 進 出 が 契 機 であり いんげん からえだまめにシフトするなど 品 目 は 変 化 するものの 今 後 も 中 国 とともに 主 要 な 輸 入 先 国 として 多 くの 冷 凍 野 菜 が 日 本 に 輸 入 されることが 見 込 まれる 野 菜 情 報 81 2016.7