廃 棄 物 埋 立 地 から 発 生 する 硫 化 水 素 とその 対 策 - 埼 玉 の 環 境 と 地 域 産 業 を 見 据 えた 埋 立 工 法 の 開 発 に 向 けて- 廃 棄 物 管 理 担 当 小 野 雄 策 1 廃 棄 物 埋 立 地 における 硫 化 水 素 問 題 最 近 廃 棄 物 最 終 処 分 場 において 発 生 した によって 処 分 場 の 作 業 員 が 死 亡 したり 中 毒 を 起 こしたりする 事 例 が 報 告 され ている 00ppm (1L/m 3 ) 以 上 の 高 濃 度 の 硫 化 水 素 ガスに 曝 露 されると 急 速 に 呼 吸 困 難 と なり 即 死 する 場 合 がある また 硫 化 水 素 に 関 する 問 題 はこの 数 年 に 限 られたものではなく 黒 い 水 や 卵 の 腐 ったような 臭 いによる 悪 臭 問 題 として 現 場 で 取 り 上 げられてきた 問 題 で ある( 図 1) これは 嫌 気 性 状 態 で 硫 酸 塩 還 元 菌 が 廃 棄 物 中 に 含 まれる 有 機 成 分 やその 分 解 産 物 を 栄 養 源 とし 廃 棄 物 中 や 自 然 界 に 多 量 に 存 在 する 硫 酸 イオンをエネルギー 源 とし て これを 還 元 して 硫 化 水 素 が 発 生 することが 原 因 となっている 図 1 黒 い 水 の 流 出 ( 黒 色 部 分 : 金 属 硫 化 物 溶 解 性 硫 化 物 白 色 部 分 :イオウ 炭 酸 カルシウム α-sio 2 ) 日 本 の 安 定 型 最 終 処 分 場 は 汚 濁 成 分 の 流 出 を 防 止 する 観 点 から 埋 立 有 機 物 量 を 削 減 する 方 向 にあるが 大 都 市 圏 で 多 量 に 発 生 する 建 設 廃 棄 物 の 中 には 有 機 物 が 混 入 したり 付 着 したりするもの があり これらが 埋 め 立 てられると 硫 化 水 素 が 発 生 する 事 例 がある また 廃 石 膏 ボード 類 を 破 砕 選 別 処 理 した 石 膏 部 分 [Ca 1/2H 2 O( 焼 石 膏 )]( 安 定 型 廃 棄 物 )の 埋 立 でも 硫 化 水 素 が 発 生 するという ことが 問 題 となっている これらの 問 題 を 解 決 するためには 建 設 廃 棄 物 の 発 生 条 件 を 解 明 し さらに の 発 生 防 止 対 策 が 必 要 である 2 硫 化 水 素 の 発 生 機 構 埋 立 地 における 硫 化 水 素 の 発 生 は 自 然 環 境 中 いたるところに 存 在 する 硫 酸 塩 還 元 菌 の 作 用 による この 硫 酸 塩 還 元 菌 は 図 2に 示 したように 嫌 気 性 菌 で 通 常 酸 素 の 存 在 しな い 条 件 で 有 機 物 の 分 解 産 物 である 有 機 酸 ( 乳 酸 プロピオン 酸 酢 酸 等 )を 栄 養 源 とし 硫 酸 イ オン( ) 中 の 酸 素 を 呼 吸 源 ( 嫌 気 呼 吸 という)と + 乳 酸 有 機 物 SRB 酢 酸 + フ ロヒ オン 酸 + 硫 酸 塩 還 元 菌 (SRB) 生 育 条 件 水 分 が 多 く 嫌 気 状 態 でかつ phが 中 性 有 機 酸 と 硫 酸 イオンが 豊 富 にあること 図 2 埋 立 地 における 硫 化 水 素 の 発 生 機 構 HS -,H 2 S HS - HS -
して 生 長 し 増 殖 していく この 過 程 で 次 のような 化 学 式 により 硫 化 物 が 生 成 されてくる CH 3 COO - ( 酢 酸 )+ ( 硫 酸 イオン) 2HCO 3 - +HS - このことから 硫 酸 塩 還 元 菌 の 生 育 条 件 は 一 般 的 には1 硫 酸 塩 還 元 菌 が 存 在 し 2 硫 酸 塩 還 元 菌 の 栄 養 源 である 有 機 物 ( 有 機 酸 )が 多 量 にあり 3 嫌 気 呼 吸 源 である 硫 酸 イオンが 多 量 にあり か つ4 水 分 を 多 く 含 みほぼ 中 性 領 域 (ph6.5-8.0)であること 5さらに 嫌 気 性 状 態 ( 酸 化 還 元 電 位 がマイ ナス)であることが 必 要 不 可 欠 である 3 建 設 廃 棄 物 からの 硫 化 水 素 の 発 生 関 東 圏 から 排 出 される 建 設 廃 棄 物 の 多 くは 埼 玉 県 内 の 破 砕 選 別 施 設 で 処 理 されている そこで 県 内 の 破 砕 選 別 施 設 から 採 取 した 試 料 を 建 設 混 合 廃 棄 物 と 廃 石 膏 ボード 類 に 大 別 し この2 群 の 試 料 をさらに 有 機 物 含 有 量 ( 熱 灼 減 量 )の 多 い 順 にそれぞれ5 群 に 細 分 し( 1) 廃 棄 物 0g に 蒸 留 水 00mL を 加 えて 嫌 気 性 状 態 で 52 日 間 培 養 実 験 を 行 い が 発 生 するかどうかを 検 討 した 実 験 区 廃 棄 物 の 種 類 1 建 設 混 合 廃 棄 物 と 廃 石 膏 ボードの 性 状 熱 灼 減 量 ph 溶 出 試 験 ( 固 相 : 液 相 =1: 6 時 間 振 とう 後 のろ 過 液 ) BOD COD TOC Ca 2+ (mg/l) (mg/l) (mg/l) (mg/l) (mg/l) 1 5.6 11.7 18 18 23 1480 543 2 8.9 8.5 8 16 16 1590 696 3 建 設 混 合 廃 棄 物 15.3 8.3 27 28 16 7 4 21.7 9.3 26 48 45 1530 721 5 68.5 8.0 162 293 18 1480 725 6 ー 廃 3.2 8.2 60 15 30 1470 725 ド 7 石 石 膏 部 分 4.4 9.3 40 61 50 1490 73 8 膏 6.3 9.6 53 39 32 15 76 9 ボ ダス 7.2.9 85 121 92 16 787 紙 部 分 41.2 8.2 328 590 325 1690 734 その 結 果 実 験 区 2 3を 除 き 全 ての 実 験 区 で や 硫 化 物 イオンが 生 成 された 一 般 に 処 分 場 作 業 員 は 埋 立 地 内 の 掘 削 作 業 や 浸 出 水 等 の 監 視 点 検 作 業 を 半 閉 鎖 空 間 で 行 うため 硫 化 水 素 ガスが 一 時 的 に 高 濃 度 に 達 し 一 過 性 の 曝 露 を 受 けることがある そこで 急 性 毒 性 が 現 れるレベ ルと 考 えられる 濃 度 00ppm (5mmol/L)を 有 害 影 響 ガスレベルとして 設 定 し この レベルで が 発 生 する 条 件 を 検 討 した 溶 解 性 の 硫 化 物 は ph8.5 以 では H 2 Sガスとして 液 中 に 溶 解 し 特 に ph5 以 では 0%H 2 S ガ スとして 溶 解 し 液 相 から 気 相 に 揮 散 していく 一 方 ph8.5 以 上 では HS - あるいはS として 液 中 にイオン として 溶 解 している そこで よりpH が 低 くなる 廃 石 膏 ボード 群 の 培 養 液 の 平 均 ph である7.5 におい て 気 相 内 で を 00ppm 以 上 発 生 させるには 液 相 内 にどの 程 度 硫 化 水 素 が 溶 解 し ていなければならないかヘンリーの 法 則 により 導 き 出 した 1) ( 文 献 参 照 ) その 結 果 0.43mmol/L 以 上 の 硫 化 物 イオンが 液 相 に 溶 解 していなければならないことが 分 かった この 値 を 廃 棄 物 1kg の 埋 立 に 換 算 すると 廃 棄 物 1kg 当 たりの 硫 化 物 イオンと の 総 量 が 0.13mmol/(kg- 廃 棄 物 ) 以 上 の 時 に 有 害 影 響 ガスレベルになると 推 定 された さらに この 濃 度 を 本 実 験 の 溶 液 ( 固 相 : 液 相 =1:)に 換 算 すると0.013mmol/L 以 上 であることが 分 かった この 濃 度 を 有 害 影 響 液 相 レベルとした 1) ( 文 献 参 照 ) 3.1 熱 灼 減 量 と 硫 化 水 素 生 成 の 関 係 廃 棄 物 管 理 において 法 的 基 準 として 熱 灼 減 量 が 採 用 されており 目 視 で 廃 棄 物 の 種 類 が 確 認 で きないとき 熱 灼 減 量 が 5%を 超 えるものを 管 理 型 廃 棄 物 としている そこで 熱 灼 減 量 と 有 害 影 響 液 相 レベル(0.013 mmol/l 以 上 )との 関 係 を 図 3に 示 した 11
図 中 の 白 抜 き 記 号 は 有 害 影 響 液 相 レベル 以 のもの 黒 く 塗 りつぶした 記 号 はレベル 以 上 のもの である 今 培 養 液 中 の 硫 化 物 イオンの 最 大 濃 度 が 有 害 影 響 液 相 レベルに 達 した 実 験 区 の 廃 棄 物 を 高 硫 化 水 素 生 成 廃 棄 物 ( 硫 化 水 素 を 危 険 なレベルで 生 成 する 廃 棄 物 )とする この 場 合 建 設 混 合 廃 棄 物 では 熱 灼 減 量 20% 以 上 のものが 高 硫 化 水 素 生 成 廃 棄 物 になり また 廃 石 膏 ボード 類 選 別 物 では 熱 灼 減 量 4% 以 上 のものが 高 硫 化 水 素 生 成 廃 棄 物 となる 特 に 熱 灼 減 量 の 大 きい 実 験 区 5( 粗 大 可 燃 物 ) 及 び 実 験 区 ( 選 別 紙 類 )は 硫 化 水 素 生 成 量 が 多 く 管 理 の 徹 底 が 期 待 される 3.2TOCと 硫 化 水 素 生 成 との 関 係 硫 化 物 イオン 生 成 の 必 須 条 件 として 溶 液 中 の 酸 化 還 元 電 位 Eh(mV)の 低 がある 酸 化 還 元 電 位 を 低 させるためには 硫 酸 塩 還 元 菌 やその 他 の 細 菌 の 栄 養 源 として 有 機 物 の 存 在 が 必 要 である また 最 終 処 分 場 における 有 機 物 の 管 理 基 準 としては 安 定 型 最 終 処 分 場 における 浸 透 水 の 法 的 基 準 として BOD があり 20mg/L 以 に 維 持 し なければならないとされている そこで 培 養 実 験 における 酸 化 還 元 電 位 と 埋 立 前 の 廃 棄 物 溶 出 試 験 ( 環 境 省 告 示 第 13 号 試 験 )の 溶 出 液 中 の 有 機 物 の 関 係 を 硫 化 物 イオン 濃 度 1 0.1 0.01 1 01 79 6 1 8 2 3 4 5 建 設 混 合 廃 棄 物 廃 石 膏 ボード 3 0 20 30 40 50 60 70 80 熱 灼 減 量 図 3 培 養 期 間 中 における 最 高 硫 化 物 イオン 濃 度 と 廃 棄 物 の 熱 灼 減 量 との 関 係 酸 化 還 元 電 位 Eh(mV) 0 8 0 50 0 150 200 250 300 350-6 明 らかにできれば 管 理 しやすい また 管 理 面 で BOD 試 験 は5 日 間 かかるので 廃 棄 物 管 理 手 法 と して 即 日 に 結 果 のでるTOC との 関 係 を 明 らかにした 方 がより 管 理 しやすいため 溶 出 液 の TOC と 培 養 実 験 における 酸 化 還 元 電 位 の 関 係 を 図 4に 示 した この 図 から 溶 出 液 TOC 濃 度 が 30mg/L 以 上 の 場 合 に 酸 化 還 元 電 位 がマイナスとなり かつ 酸 化 還 元 電 位 がマイナスの 場 合 にほとんどの 実 験 区 の 硫 化 物 イオン 濃 度 が 有 害 影 響 液 相 レベル (0.013mmol/L) 以 上 ( 図 中 の 黒 塗 りマーク)になっていることが 分 かった このことから 廃 棄 物 の 溶 出 液 の TOC 濃 度 を30mg/L 以 に 管 理 する 必 要 があると 認 められた 1の 溶 出 試 験 におけるBOD とTOC の 相 関 関 係 (R 2 =0.97)からBOD が 20mg/L のときTOC は 25mg/L となることから 建 設 廃 棄 物 からの 硫 化 水 素 の 発 生 を 防 止 するためには 安 全 性 を 加 味 して 溶 出 液 の TOC が 25mg/L 以 に 管 理 されるべきであると 考 えた 400 300 200 0-20 -30 2 1 3 4 9 5 TOC (mg/l) 建 設 混 合 廃 棄 物 廃 石 膏 ボード 図 4 培 養 実 験 中 における 最 小 酸 化 還 元 電 位 Ehと 廃 棄 物 溶 出 液 中 TOCとの 関 係 4 含 鉄 資 材 による 硫 化 水 素 の 発 生 抑 制 2 節 で 示 した 硫 酸 塩 還 元 菌 の 増 殖 活 性 を 抑 制 すれば 硫 化 水 素 の 発 生 を 抑 制 できる そのために は 1 好 気 的 な 埋 立 条 件 を 維 持 する 2 硫 酸 塩 還 元 菌 にとって 致 命 的 な ph 領 域 にする 3 硫 酸 塩 還 元 菌 の 生 長 因 子 を 制 御 する( 水 分 有 機 物 等 の 減 少 )などが 考 えられる さらに 4 環 境 中 に 存 在 する 鉄 などの 重 金 属 類 と 硫 化 物 イオンを 反 応 させて 黒 色 の 硫 化 金 属 とし て 埋 立 地 内 に 捕 捉 させるなどが 考 えられる 簡 単 な 化 学 式 は 次 の 通 りである Fe 2+ + S FeS この4による 溶 解 性 硫 化 物 対 策 については これまでにも 一 時 的 な 方 法 ではあるが 鉄 塩 試 薬 を 散 12
布 し 硫 化 鉄 として 沈 殿 させ 処 分 場 内 で 安 定 化 させる 方 法 が 用 いられてきた しかしながら この 方 法 は 必 ずしも 適 切 な 方 法 ではなく 却 って 還 元 状 態 を 助 長 し 硫 化 水 素 の 発 生 を 促 進 するなど 逆 効 果 となる 場 合 もあった そこで 本 研 究 ではより 恒 久 的 な 溶 解 性 硫 化 物 対 策 として 火 山 灰 壌 のような 含 鉄 壌 や 鉄 鋼 業 から 排 出 される 鉄 粉 廃 棄 物 を 用 いて 硫 化 物 を 処 分 場 内 に 捕 捉 安 定 化 させる 方 法 に ついて 検 討 した 4.1 含 鉄 壌 及 び 鉄 粉 廃 棄 物 の 硫 化 物 イオン 捕 捉 能 力 2に 示 した 埼 玉 県 内 から 採 取 した 火 山 灰 壌 沖 積 壌 及 び 鉄 分 を 多 く 含 む 熊 本 県 阿 蘇 山 の 火 山 灰 壌 及 び 鉄 鉱 業 の 鉄 鋳 造 過 程 で 排 出 される 酸 化 膜 の 削 りかすである 鉄 粉 廃 棄 物 について ph8 における 溶 解 性 硫 化 物 溶 液 の 捕 捉 量 を 測 定 した 実 験 区 分 類 2 含 鉄 壌 及 び 鉄 粉 廃 棄 物 の 組 成 及 び 実 験 条 件 採 取 深 さ 等 (cm) 粒 径 (mm) 撹 拌 時 間 (h) 熱 灼 減 量 SiO 2 Al 2 O 3 鶴 ヶ 島 -A 0-15 16.2 27.2 21.4 1.1 12.3 鶴 ヶ 島 -B 50-14.6 29.0 23.7 1.2 14.1 入 間 -A 0-15.4 52.5 15.6 1.1.6 入 間 -B 埼 玉 県 40-9.4 39.8 16.4 1.1.3 大 宮 -A 火 山 灰 壌 0-54 11.1 41.8 17.4 1.0 11.0 大 宮 -B 570 12.0 31.6 22.9 1.1 13.4 深 谷 -A 157 15.5 35.0 16.4 0.8 7.9 深 谷 -B 57-75.5 44.6 20.6 1.0 12.6 <2.00 0.5 阿 蘇 黄 阿 蘇? 13.7 4.9 0.5 0.0 68.9 阿 蘇 黒 ボク 火 山 灰 壌? 19.4 27.7 6.5 0.6 24.0 TiO 2 Fe 2 O 3 熊 谷 -A 0-24 8.9 48.4.3 0.7 5.6 熊 谷 -B 埼 玉 県 24-34 9.5 47.9.7 0.7 6.3 春 日 部 -A 沖 積 壌 0-13 4.9 42.7 14.3 0.7 6.1 春 日 部 -B 13-30 13.6 40.7 14.3 0.7 6.7 グラインダーダス 鉄 鉱 業 - 14.7 5.7 0.4 74.3 ショッブラスダス 鉄 粉 廃 棄 物 - 44.7 1.1 0.1 52.1 実 験 は 硫 化 ナリウム 溶 液 ( 約 40 meq-s/l)に 塩 酸 を 滴 してpH を 約 8 に 調 整 した 溶 液 を50mL のフラン 瓶 に 入 れ 試 料 の 重 量 を 変 えて 添 加 し 硫 化 物 イオンの 捕 捉 量 を 測 定 した その 結 果 図 5に 示 したように 一 般 的 に 鉄 含 有 量 (Fe 2 O 3 )の 高 い 試 料 が 硫 化 物 イオンの 捕 捉 量 が 高 いこと が 判 明 した しかし 鉄 含 有 量 が 沖 積 壌 より 高 い 鉄 粉 廃 棄 物 や 一 部 火 山 灰 壌 ( 深 谷 壌 など)で 硫 化 物 イオ ンの 捕 捉 量 が 低 い 試 料 も 存 在 した 4.2 含 鉄 壌 及 び 含 鉄 廃 棄 物 による 硫 化 水 素 の 発 生 抑 制 硫 化 物 イオン 捕 捉 量 (meq)/ 壌 (g) 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 そこで 2 節 で 硫 化 物 イオンが 発 生 した 廃 石 膏 ボードに 3に 示 した 含 鉄 壌 と 含 鉄 廃 棄 物 を 混 合 して 嫌 気 性 培 養 実 験 を 行 った その 結 果 図 6に 示 したように 鶴 ヶ 島 -B 壌 では g 以 上 から また 阿 蘇 黒 ボク では 5g 以 上 か ら 及 び 硫 化 物 イオンの 発 生 が 抑 えられた さらに グラインダーダス 及 びショッブラス 鶴 ヶ 島 入 間 大 宮 深 谷 阿 蘇 熊 谷 春 日 部 鉄 廃 棄 物 黄 黒 ボ ク 図 5 硫 化 物 イオンの 捕 捉 量 グ ラ イ ン ダ ー ダ ス シ ョ ッ ブ ラ ス ダ ス 13
ダスでは 全 ての 実 験 区 で 硫 化 物 イオンや の 発 生 が 見 られなかった 4.1 項 で 硫 化 物 イ オンの 捕 捉 能 力 の 低 かったショッブラスダスでも 硫 化 水 素 の 抑 制 効 果 が 見 られた これより 4.1 項 の 結 果 は 反 応 時 間 が 短 いため 即 効 性 の 反 応 とみることができ 一 方 本 項 の 結 果 は 長 期 的 な 培 養 実 験 によるもので 遅 効 性 効 果 とみなすことができる また 鉄 粉 廃 棄 物 では 有 機 酸 の 流 出 がみられたが 含 鉄 壌 では 有 機 酸 の 流 出 を 抑 制 する 効 果 が 確 認 された 3 含 鉄 資 材 と 培 養 実 験 の 条 件 5 埋 立 地 における 硫 化 水 素 抑 制 工 法 高 硫 化 水 素 生 成 廃 棄 物 を 分 別 するには 廃 棄 物 溶 出 試 験 ( 固 相 / 液 相 =1/)を 行 い その 溶 液 の TOC 濃 度 が 25mg/L を 境 とすべき ことが 分 か ったが こ の 値 以 上 の 廃 棄 物 を 埋 立 処 分 する 際 には 硫 化 水 素 対 策 を 立 て る 必 要 があ る この 場 合 硫 化 物 イオン 抑 制 資 材 実 験 区 含 鉄 資 材 添 加 量 (g) 硫 化 物 イオン 発 生 廃 棄 物 硫 酸 塩 還 元 菌 培 養 液 (ml) 蒸 留 水 (ml) Cnt(+) 1 00 対 照 区 - - - - Cnt(-) 0 00 T 鶴 ヶ 島 壌 1 5 50 廃 石 膏 ボード 1 00 A 阿 蘇 黒 ボク 1 5 50 0g 1 00 G グラインダーダス 1 5 50 1 00 S ショッブラスダス 1 5 50 1 00 [H2Sgas] 対 照 区 対 照 区 [H2Sgas] グラインダー ダス グラインダー ダス Cnt(+) Cnt(-) G(1g) G(5g) G(g) G(50g) G(1g) G(5g) G(g) G(50g) [H2Sgas] Cnt(+) Cnt(-) 鶴 ヶ 島 -B 壌 [H2Sgas] ショッブラス ダス S(1g) S(5g) S(g) S(50g) ショッブラス ダス S(1g) S(5g) S(g) S(50g) 図 6 廃 石 膏 ボードの 嫌 気 性 培 養 における 硫 化 水 素 発 生 防 止 資 材 T(1g) T(5g) T(g) T(50g) 鶴 ヶ 島 -B 壌 T(1g) T(5g) T(g) T(50g) [H2Sgas] 阿 蘇 黒 ボク A(1g) A(5g) A(g) A(50g) 阿 蘇 黒 ボク A(1g) A(5g) A(g) A(50g) 14
図 7 に 示 したように 1 廃 棄 物 で 発 生 した や 硫 化 物 イオンを 即 応 性 の 高 い 火 山 灰 壌 を 用 いた 覆 で 捕 集 し 2 高 硫 化 水 素 生 成 廃 棄 物 の 埋 立 には 遅 効 性 の 鉄 粉 廃 棄 物 を1% 程 度 混 合 して 埋 め 立 てると 硫 化 水 素 が 最 終 処 分 場 から 環 境 中 に 漏 出 しないものと 推 察 される これは 廃 棄 物 が 徐 々に 還 元 性 となり 硫 化 水 素 の 発 生 条 件 が 整 うときに 同 時 に 硫 化 水 素 と 反 応 しやすい 鉄 ( 還 元 性 の 溶 解 性 鉄 や 遊 離 酸 化 鉄 等 )が 増 加 して 硫 化 鉄 等 を 生 成 し 沈 殿 するためであると 考 えら れる 最 上 覆 : 火 山 灰 壌 による 覆 廃 棄 物 : 鉄 粉 廃 棄 物 との 混 合 ( 1%) 中 間 覆 : 火 山 灰 壌 による 覆 廃 棄 物 : 鉄 粉 廃 棄 物 との 混 合 ( 1%) 底 部 覆 : 火 山 灰 壌 による 覆 図 7 硫 化 水 素 抑 制 工 法 文 献 1) 小 野 雄 策 田 中 信 壽 : 建 設 廃 棄 物 埋 立 における 発 生 の 可 能 性 と 管 理 法 に 関 する 考 察 廃 棄 物 学 会 誌 Vol.14 No.5 pp.248-257(2003) 用 語 解 説 注 1)TOC ( 全 有 機 体 炭 素 ): 水 中 に 存 在 する 有 機 物 中 の 炭 素 をいう 有 機 汚 濁 量 の 指 標 注 2) 酸 化 還 元 電 位 : 好 気 的 なバクテリアは 有 機 物 の 利 用 において 酸 素 を 消 費 し 溶 液 を 還 元 状 態 とする そこで 嫌 気 的 な バクテリアが 働 き さらに 還 元 化 が 進 む このような 溶 液 の 酸 化 や 還 元 の 状 態 を 示 す 単 位 で 白 金 電 極 の 通 電 量 (mv)で 示 される [Eh(mV) 値 ]: 値 が 低 いほど 還 元 状 態 であることを 示 す 注 3) 石 膏 ボード: 石 膏 [ 通 常 は 焼 石 膏 (Ca 1/2H 2 O)を 用 いる]を 単 体 もしくは 繊 維 質 などを 混 ぜた 石 膏 を 芯 とし それに 板 紙 などで 被 覆 した 建 築 資 材 である 注 4) 有 機 酸 : 有 機 物 ( 糖 タンパク 質 脂 肪 等 )が 嫌 気 性 微 生 物 により 加 水 分 解 を 受 けて 低 級 脂 肪 酸 になる この 低 級 脂 肪 酸 には 乳 酸 プロピオン 酸 酢 酸 などがあり C x H 2x+1 -COOH で せる 記 の 式 のように 有 機 酸 と 硫 酸 イオン 及 び 硫 酸 塩 還 元 菌 により 硫 化 物 イオンが 生 成 される 乳 酸 : 2CH 3 CHOCOO - + 2CH 3 COO - + 2CO 2(aq) + 1/2HS - + 1/2H 2 S + 3/2OH - + 1/2H2O プロピオン 酸 : 4CH 3 CH 2 COO - + 3 4CH 3 COO - + 4HCO 3 - + H + + 3HS - 酢 酸 : CH 3 COO - + 2HCO 3 - + HS - 注 5) 硫 化 鉄 : 硫 酸 塩 還 元 菌 により 生 成 した 硫 化 物 (H 2 S, HS -, S, S 0 )は 自 然 界 の 中 では 鉄 イオンなどと 反 応 し 硫 化 鉄 とし て 安 定 化 し 地 中 等 に 保 存 される 硫 化 鉄 の 沈 積 (リン 酸 の 溶 出 ):Fe 3 (PO 4 ) 2 + 3S 3FeS + 2PO 4 3- ハイドライ(hydrotroilite)の 生 成 :Fe + HS - FeS nh 2 O + H + パイライ(pyrite)の 生 成 :FeS + S 0 FeS 2 15