演 題 排 水 処 理 と 病 原 微 生 物 講 師 ( 独 ) 土 木 研 究 所 材 料 地 盤 研 究 グループ リサイクルチーム 尾 崎 正 明 上 席 研 究 員 排 水 処 理 と 病 原 微 生 物 ( 独 ) 土 木 研 究 所 材 料 地 盤 研 究 グループ リサイクルチーム 尾 崎 正 明 諏 訪 守 陶 山 明 子 1 はじめに 下 水 処 理 水 が 関 与 した 病 原 微 生 物 による 集 団 感 染 の 未 然 防 止 また 下 水 処 理 水 や 汚 泥 の 再 利 用 にあ たり 下 水 処 理 水 や 下 水 汚 泥 に 含 まれる 病 原 微 生 物 に 関 する 安 全 性 の 確 保 が 求 められている このため 極 微 量 の 病 原 微 生 物 を 検 出 する 方 法 の 開 発 や 下 水 処 理 過 程 や 環 境 水 中 での 病 原 微 生 物 の 挙 動 把 握 が 重 要 となっている 平 成 8 年 に 河 川 水 中 に 存 在 したクリプトスポリジウムが 水 道 水 に 混 入 して 配 水 され たため 9,000 人 近 い 集 団 下 痢 の 被 害 が 発 生 した この 集 団 感 染 においては 感 染 者 から 排 出 された 多 数 の 原 虫 が 排 水 処 理 施 設 で 十 分 に 除 去 されなかったことが 感 染 拡 大 の 一 要 因 であると 考 えられており 下 水 道 としての 対 応 が 求 められている また これまで 対 象 とされなかったウイルスについても 下 水 中 での 存 在 量 や 消 毒 耐 性 が 細 菌 類 と 異 なることから 安 全 性 に 関 する 検 討 が 必 要 となっている 2 下 水 処 理 水 の 再 利 用 水 質 基 準 クリプトスポリジウム 等 の 病 原 微 生 物 による 健 康 被 害 が 社 会 問 題 となり 水 の 安 全 性 への 関 心 が 高 ま っている また 建 築 物 衛 生 法 関 連 政 省 令 が 改 正 され 雑 用 水 利 用 の 給 水 設 備 を 対 象 として 新 たな 基 準 が 設 定 され 平 成 15 年 4 月 より 施 行 されている このような 状 況 を 踏 まえ 再 生 水 利 用 における 衛 生 学 的 安 全 性 確 保 美 観 快 適 性 確 保 施 設 機 能 障 害 防 止 の 観 点 を 踏 まえた 下 水 処 理 水 再 利 用 に 関 する 技 術 上 の 基 準 について 検 討 が 行 われ 下 水 処 理 水 の 再 利 用 水 質 基 準 等 マニュアル ( 平 成 17 年 4 月 )が 作 成 された 衛 生 学 的 安 全 性 確 保 の 観 点 からは 腸 管 系 の 病 原 微 生 物 である 細 菌 類 原 虫 類 ウイルス 類 が 問 題 と なる 可 能 性 がある 細 菌 類 については 現 在 再 生 水 の 消 毒 方 法 として 広 く 採 用 されている 塩 素 消 毒 が 有 効 であり 原 虫 類 については 塩 素 耐 性 があることから 区 別 して 検 討 が 行 われた なお ウイルス 類 に ついては 再 生 水 利 用 における 衛 生 学 的 安 全 性 確 保 に 万 全 を 期 するためにも 今 後 も 引 き 続 き 検 討 を 行 い 安 全 性 を 確 認 していくことが 必 要 とされた 細 菌 類 の 基 準 では 水 道 水 質 基 準 の 変 更 や 建 築 物 衛 生 法 施 行 規 則 の 改 正 において 雑 用 水 の 水 質 基 準 が 大 腸 菌 群 から 大 腸 菌 へ 変 更 されたこと 等 を 踏 まえ 従 来 の 大 腸 菌 群 に 代 え 大 腸 菌 が 新 たに 基 準 項 目 とし て 設 定 された また 基 準 値 についても 水 道 水 質 基 準 や 建 築 物 衛 生 法 施 行 規 則 における 基 準 ( 検 水 量 100mL 当 たり 不 検 出 )を 参 考 に 規 定 された さらに 再 生 水 の 供 給 過 程 における 再 増 殖 の 可 能 性 への 対 策 として 残 留 効 果 の 高 い 塩 素 消 毒 を 行 うこととし 残 留 塩 素 が 管 理 目 標 値 として 設 定 された 管 理 目 標 値 については 実 態 調 査 の 結 果 供 給 先 における 残 留 塩 素 が 建 築 物 衛 生 法 施 行 規 則 における 基 準 値 を 満 たしている 場 合 には 細 菌 類 の 再 増 殖 がほとんど 見 られなかったことから 同 法 施 行 規 則 における 残 留 塩 素 基 準 値 ( 結 合 残 留 塩 素 濃 度 0.4mg/L 以 上 )を 参 考 に 規 定 された 原 虫 類 の 基 準 では 再 生 水 の 供 給 過 程 における 閉 塞 防 止 の 観 点 から 砂 ろ 過 施 設 または 同 等 以 上 の 機 能 を 有 する 施 設 が 施 設 基 準 として 規 定 された また 施 設 が 適 切 に 機 能 していることを 担 保 する 運 転 管 理 指 標 として 濁 度 が 管 理 目 標 値 として 設 定 された 管 理 目 標 値 については 下 水 道 施 設 計 画 設 計 指 針 と 解 説 における 急 速 ろ 過 法 の 処 理 成 績 例 が 濁 度 2.3 度 ( 平 均 値 )となっていること また 実 態 調 査
において 施 設 が 適 切 に 機 能 していることが 確 認 されているろ 過 施 設 からの 処 理 水 の 濁 度 が 2 度 を 超 える ことがほとんどなかったことを 踏 まえ 2 度 以 下 と 設 定 された 3 検 出 方 法 の 開 発 下 水 処 理 水 や 汚 泥 の 再 利 用 におけるクリプトスポリジウムやウイルスに 関 する 安 全 性 確 保 を 目 的 と して これら 病 原 性 微 生 物 を 迅 速 簡 便 安 全 に 検 出 できる 方 法 の 開 発 や 下 水 処 理 過 程 や 環 境 水 中 で の 挙 動 解 明 について 研 究 を 行 っている 培 養 法 や 検 鏡 法 に 比 べて 簡 便 性 などの 面 で 優 位 であると 考 えら れることから 分 子 生 物 学 的 手 法 を 用 いた 検 出 手 法 ( 特 に PCR (Polymerase 法 Chain )の 適 Reac 用 開 発 を 主 眼 に 置 いている リアルタイム PCR 法 は PCRにより 増 幅 された DNAを 蛍 光 シグナルによりリアルタイムで 検 出 するも のであり 初 期 DNA 濃 度 とある 蛍 光 強 度 に 増 幅 されるまでのサイクル 数 の 関 係 を 求 めておくことによっ て 未 知 試 料 中 の DNA 濃 度 を 定 量 するものである これまでに 高 感 度 検 出 が 可 能 と 考 えられるクリプ トスポリジウムの 18Sリボソーム RNA 遺 伝 子 を 標 的 として 検 出 感 度 を 向 上 させた 結 果 クリプトスポリ ジウムオーシストが 約 1 個 という 少 ない 個 数 から 検 出 できることが 明 らかになった また 濃 縮 分 離 操 作 および 下 水 性 状 の 違 いが 検 出 感 度 に 及 ぼす 影 響 について 検 討 を 行 った 結 果 オ-シストの 測 定 では 試 料 中 の 有 機 物 濃 度 の 違 いによる 影 響 や 濃 縮 分 離 操 作 により 回 収 効 率 の 損 失 があるため 改 善 策 を 講 ずる 必 要 があることが 明 らかとなった ウイルスの 検 出 では モデルウィルスとして Qβファージを 使 用 して 下 水 試 料 に 適 した 濃 縮 法 について 検 討 を 行 った 表 -1に PEG( ポ リエチレングリコ-ル) 沈 殿 法 超 遠 心 法 陰 電 荷 膜 法 陽 電 荷 膜 法 セルロ-ス 吸 着 凝 集 法 によるファージ 回 収 率 を 示 す 最 も 高 い 回 収 率 を 示 したのは PEG 沈 殿 法 であった 一 方 陽 電 荷 膜 法 および 陰 電 荷 膜 法 による 回 収 率 は 0.6 %-13 %と 低 かった データは 示 していな いが これらの 膜 へのファージ 吸 着 率 は 95 % 以 上 であったため 誘 出 操 作 を 改 善 することで 回 収 率 の 向 上 が 期 待 される セルロース 吸 着 凝 集 法 による 回 収 率 は 10% 前 後 と 低 かった その 原 因 として ファージ Qβ 量 (10 6 PFU) に 対 してセルロース 担 体 量 が 少 なかったため であると 考 え セルロース 担 体 量 は 一 定 のまま ファージ Qβ 添 加 量 を 10 4 PFU に 減 少 すると 回 収 率 は 56 %-98 %に 改 善 された また 10 11 PFU に 増 加 すると 回 収 率 は 5 % 前 後 に 低 表 -1 各 種 濃 縮 法 によるファージ Qβ 回 収 率 濃 縮 法 PEG 沈 殿 法 超 遠 心 法 陰 電 荷 膜 法 陽 電 荷 膜 法 セルロース 吸 着 凝 集 法 60 59 5.5 0.68 回 収 率 (%) 二 次 処 理 水 高 度 処 理 水 67 30 1.7 2.3 16 ファージ Qβ 初 期 添 加 量 :10 6 PFU Fluorescence 0.55 0.50 0.45 0.40 0.35 0.30 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 0.00-0.05 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 Cycle Number 84 20 0.6 13 8. 7 図 -1 PCR リサイクル 数 に 対 する 蛍 光 強 度 10 10 copies 10 9 copies 10 8 copies 10 7 copies 10 6 copies 10 5 copies 10 4 copies 10 3 copies 10 2 copies 10 1 copies 10 0 copies 下 した リアルタイム PCR 法 によるウイルスの 定 量 感 度 を 把 握 するため ノロウイルス(G1 G 2) 型 エンテロウイルスおよび Qβファージ について 検 出 感 度 の 検 討 を 行 った ノロウイル スG2 型 の 結 果 のみ 示 すが 図 -1は 各 希 釈 系 Cycle Number 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 Log (Copy Concentration number) 図 -2 各 希 釈 系 列 と PCRサイクル 数 の 関 係 Slope = -3.480 Intercept = 42.35 Error = 0.117 r = -1.00
列 について PCRサイクル 数 に 対 する 蛍 光 強 度 図 -2は 各 希 釈 系 列 について 蛍 光 強 度 が 指 数 的 に 増 加 し 始 めるサイクル 数 と 希 釈 濃 度 の 対 数 値 に 対 してプロットし 得 た 検 量 線 を 表 している 各 試 料 ともに5~ 10 10 コピ-の 間 で 蛍 光 強 度 と 相 関 性 があり この 範 囲 で 定 量 測 定 が 可 能 であると 推 定 された 4 下 水 処 理 場 での 病 原 微 生 物 除 去 特 性 モンス-ン アジア 都 市 部 においても 都 市 化 の 進 展 人 口 の 集 中 などに 伴 いヒトからの 排 泄 物 により 病 原 微 生 物 の 汚 染 による 水 環 境 の 悪 化 が 懸 念 されている これら 病 原 微 生 物 に 起 因 する 水 系 感 染 症 の 拡 大 を 防 止 するためにも 下 水 を 含 めた 水 環 境 中 の 実 態 解 明 や 効 果 的 な 対 策 を 講 ずることが 必 要 である 本 研 究 では 沖 縄 県 におけるラグーン 実 験 施 設 およびタイ 国 で 採 用 されているラグーンを 対 象 として 下 水 中 の 病 原 微 生 物 の 実 態 やラグ-ンでの 除 去 特 性 の 解 明 を 目 的 に 実 態 調 査 を 行 った 4.1 沖 縄 県 での 調 査 事 例 ラグ-ンにおける 降 雨 流 出 SS 日 間 変 動 などが 病 原 微 生 物 の 消 長 に 及 ぼす 影 響 やまた ラグ-ン 処 理 水 の 処 理 レベルの 高 度 化 を 図 るため 植 生 浄 化 法 による 病 原 微 生 物 の 除 去 特 性 を 把 握 した ラグ- ンによる 病 原 微 生 物 の 除 去 特 性 調 査 は 沖 縄 県 A 浄 化 センタ- 内 に 設 置 してあるラグ-ン 実 験 施 設 にお いて 実 施 した ラグ-ンの 容 量 は 100m 3 水 深 は2m であり ラグ-ン 実 験 施 設 の 後 段 には 処 理 水 の 高 度 処 理 を 目 的 とした 施 設 面 積 約 0.09m 2 水 深 30cm のアシを 植 生 した 浄 化 施 設 を 有 する 各 指 標 微 生 物 の 濃 度 と 除 去 率 について 整 理 したものを 表 -2に 示 す ラグ-ンによる 大 腸 菌 群 数 の 除 去 率 は 80% 程 度 であり 降 雨 時 晴 天 時 でもラグーン 処 理 水 の 濃 度 に 大 きな 違 いはなく 日 間 変 動 も 小 さかった 大 腸 菌 ファ-ジ 除 去 率 は 降 雨 時 および 晴 天 時 とも 日 間 平 均 値 で 70% 程 度 であった しかし 降 雨 時 においてラグ-ン 処 理 水 の 濃 度 はほぼ 一 定 であるが 晴 天 時 の 調 査 では 夜 中 から 朝 方 にかけ 若 干 の 濃 度 上 昇 が 見 られた ウイルスの 除 去 率 は 降 雨 時 および 晴 天 時 とも 日 間 平 均 値 で 90% 程 度 であっ た 原 虫 類 のジアルジアでは 降 雨 時 と 晴 天 時 の の 濃 度 で 大 きな 違 いがあり 降 雨 時 と 晴 天 時 において 若 干 除 去 率 に 差 があるものの ラグ-ン 処 理 水 の 平 均 濃 度 はほぼ 同 じであった クリプトスポ リジウムは で 1~4 個 /L の 範 囲 で 検 出 される 場 合 もあったが ラグーン 処 理 水 からは 検 出 さ れていない 一 方 降 雨 に 伴 うラグーン 施 設 からの 流 出 流 量 は 設 定 流 量 に 対 し 10% 程 度 の 増 加 が 見 られたことから 流 出 汚 濁 負 荷 量 は 若 干 上 昇 するものと 考 えられた 植 生 浄 化 法 では 大 腸 菌 群 数 ジアルジアは 1 ケタ 程 度 濃 度 レベルが 減 少 したが ファ-ジについては 大 きな 濃 度 レベルの 減 少 は 見 られなかった ラグ -ンでの SS 除 去 率 は 低 く また 植 生 浄 化 法 でも 30% 程 度 であるため ラグ-ンでの 固 液 分 離 を 良 好 に 行 えれば さらに 各 指 標 微 生 物 の 除 去 率 を 向 上 させられるものと 推 定 される 降 雨 時 () 内 : 除 去 率 % 晴 天 時 () 内 : 除 去 率 % 表 -1-2 各 指 標 微 生 物 の 濃 濃 度 度 と と 除 除 去 率 去 率 ウイルス ( 上 澄 液 ) 大 腸 菌 群 数 ファージ ジアルジア SS ( 個 /ml) (copies/100ml) (Pfu /ml) ( 個 /L) (mg/l) 4.9E+5 1.8E+2 5.8E+3 1.0E+2 73 ラグーン 処 理 水 植 生 浄 化 処 理 水 1.0E+5 1.9E+1 1.9E+3 2.0E+1 67 (79%) (90%) (68%) (80%) (8%) 3.6E+4 1.5E+3 1.0E+0 52 (-) (93%) (74%) (99%) (29%) 4.6E+5 6.1E+1 4.1E+3 5.6E+2 98 ラグーン 処 理 水 植 生 浄 化 処 理 水 1.1E+5 6.3E+0 1.2E+3 2.4E+1 108 (77%) (90%) (71%) (96%) (ー) 2.1E+4 1.0E+3 1.5E+0 63 (-) (95%) (76%) (98%) (36%) 滞 ( 留 時 間 :ラグーン10 日 間 植 生 浄 化 12 時 間 )
4-2 タイ 国 での 調 査 事 例 タイでの 調 査 は コンケンおよびバンコクのアジア 工 科 大 学 (AIT)に 隣 接 するラグ-ンを 対 象 とし た コンケンは 個 々の 家 庭 でセプティプタンクあるいは 浸 透 式 トイレ 形 式 と 推 定 され その 流 出 水 がラ グ-ンに 流 入 するものと 考 えられる AIT では 水 洗 トイレにより 下 水 はラグ-ンに 排 出 される 各 々の ラグ-ン 施 設 の 概 要 を 図 -3 4 に 示 す コンケンは 3 池 のラグ-ンから 構 成 されており 第 2 池 で 間 欠 曝 気 を 行 い 総 容 量 は 46,000m 3 平 均 水 深 は2m である AIT は 2 池 のラグ-ンから 構 成 されてお り 容 量 は 2,125m 3 3,360m 3 水 深 は 1.7m 0.7mである AIT では 第 1 2 池 流 出 水 コンケンでは 第 2 3 池 流 出 水 の 各 々3 試 料 について 採 水 を 行 った 図 -3 コンケンのラグーン 施 設 図 -4 AITのラグーン 施 設 (1:,2:,3: 第 3 池 流 出 水 ) (1:,2: 第 1 池 流 出 水,3: ) 調 査 結 果 を 表 -3 および 図 -5~8 に 示 す コンケンと AIT において 各 々 病 原 微 生 物 の 濃 度 に 大 きな 違 いが 見 られた 特 に AIT の ではジアルジアのシスト 濃 度 の 最 大 検 出 濃 度 は 1.8 10 4 (cysts /L) ノロウイルス(G1 型 ) 濃 度 は 3.5 10 6 (copies/l)となっており 沖 縄 県 でのラグ-ンの 調 査 結 果 と 比 較 すると の 濃 度 は 2~3 オーダー 高 い 大 腸 菌 群 の 濃 度 レベルは 同 程 度 であった 表 -3 各 病 原 微 生 物 の 検 出 濃 度 範 囲 と 除 去 率 地 点 微 生 物 大 腸 菌 群 ノ ロ ウ イ ル スG1 ノ ロ ウ イ ル スG2 (cfu o r M P N /(co m l) pies/l )(c opies/l ) ジ ア ル ジ ア ク リ プ ト ス ポ リ ジ ウ ム (c ysts/ L) (o ocy sts/ L) コ ン ケ ン 記 載 デ ー タ H16.6 月 ~ H17.2,3 月 H16.6~ 12 月.H1 7.1 月 H1 6.6 月 ~ H1 7.1 月 4.4E+2~ 2.3E+5 1.1E+4~ 9.7E+5 4.1E+2~ 1.6E+5 N D~ 1.5E+2 7/8 ND 0/8 4.0E+1~ 3.0E+4 N D~ 1.0E+3 N D~ 1.7E+4 N D~ 2.2E+1 2/8 ND 0/8 第 3 池 流 出 水 3.8E+1~ 2.2E+4 N D~ 2.9E+2 N D~ 1.0E+4 N D~ 1.0E+0 1/8 ND 0/8 除 去 率 の 範 囲 (% ) 0~ 9 9.6 8 2.3~ 100 0~ 10 0 99.3~ 1 00 A I T 平 均 除 去 率 (% ) 83.2 94.2 85.0 9 9.9 2.1E+4~ 9.0E+6 4.5E+4~ 3.5E+6 1.7E+4~ 2.0E+6 2.6E+2~ 1.8E+4 9/9 ND~ 1.6E+1 5/9 第 1 池 流 出 水 4.6E+3~ 1.6E+6 1.0E+5~ 2.2E+6 1.3E+4~ 1.3E+6 1.1E+1~ 4.1E+2 9/9 ND~ 2.0E+0 2/9 7.0E+1~ 5.0E+3 3.6E+1~ 4.2E+5 N D~ 6.0E+4 3.0E+0~ 2.8E+1 9/9 N 0/9 D 除 去 率 の 範 囲 (% ) 9 8.1~ 99.99 0~ 99.97 56.8~ 100 94.6~ 1 00 10 0 平 均 除 去 率 (% ) 99.6 65.7 9 2.3 9 9.2 10 0 原 虫 類 の 欄 内 : 下 段 分 析 検 体 数, 上 段 検 出 検 体 数, 検 出 限 界 値 範 囲 1~4 検 出 限 界 値 以 下 の 場 合 には 除 去 率 を 100 %として 計 算 した oocysts/l
クリプトスポリジウムの 検 出 割 合 は 比 較 的 高 いが 検 出 濃 度 はジアルジアに 比 較 して 低 濃 度 であった 一 方 コンケンの の 病 原 微 生 物 濃 度 は AIT と 比 較 してそれ 程 高 濃 度 で はないが 沖 縄 県 でのラグ-ンの のノ ロウイルス 濃 度 と 比 較 すると 最 大 検 出 濃 度 は 2 オーダー 高 い クリプトスポリジウムは 全 て の 試 料 で 不 検 出 であった( 検 出 限 界 値 1~ 4oocysts/L) コンケンと AIT における 流 入 下 水 の 病 原 微 生 物 濃 度 の 違 いは 先 にも 述 べたが 下 水 の 排 除 方 式 の 差 によるものと 推 定 される が 今 後 詳 細 な 現 地 調 査 を 行 いこれらの 違 い について 解 明 する 必 要 があろう 環 境 水 に 大 きな 影 響 を 及 ぼすと 考 えられる ラグ-ン 処 理 水 の 病 原 微 生 物 濃 度 は 各 々 低 レ ベルとなっている ラグ-ンによって 各 病 原 微 生 物 とも 1log 程 度 から 3log 以 上 の 平 均 除 去 率 が 得 られており ラグ-ンの 滞 留 時 間 が 10 日 間 での 沖 縄 県 で 行 った 調 査 結 果 と 比 較 すると 大 腸 菌 群 ジアルジアの 除 去 率 は 高 い 除 去 率 が 高 い 要 因 はラグ-ンの 配 置 が 多 段 であるこ とや 推 定 ではあるが 滞 留 時 間 が 異 なることに 起 因 するものと 考 えられる しかし ノロウイ ルスの 除 去 率 の 推 移 に 関 して 図 -5~8 に 示 し たが 比 較 的 大 きな 変 動 を 示 した ラグ-ン 内 の 溶 存 酸 素 濃 度 とコリファ-ジの 藻 類 等 の 浮 遊 状 粒 子 への 吸 脱 着 現 象 についての 報 告 があ ることから ウイルス 除 去 率 と 溶 存 酸 素 濃 度 と の 関 係 を 整 理 したが 有 意 な 相 関 関 係 は 見 られ なかった また 他 の 水 質 項 目 との 関 連 も 特 に 見 られなかった 図 -5 1 コンケンにおけるノロウイルスG1 型 濃 度 図 -6 2 AITにおけるノロウイルスG1 型 濃 度 図 -7 3 コンケンにおけるノロウイルスG2 型 濃 度 1.0E+00 6/24 7/23 8/23 9/2310/2211/2312/24 1.0E+00 6/22 8/3 8/31 9/30 11/611/2812/23 1.0E+00 6/24 7/23 8/23 9/2310/2211/2312/24 6/22 8/3 8/31 9/30 11/611/2812/23 図 -8 4 AITにおけるノロウイルスG2 型 濃 度 第 3 池 流 出 水 第 1 池 流 出 水 第 3 池 流 出 水 第 1 池 流 出 水 5 おわりに わが 国 においても 腸 管 系 ウイルスによる 感 染 事 例 や 水 系 での 存 在 状 況 消 毒 耐 性 に 関 する 報 告 がみら れる 培 養 細 胞 を 使 用 したウイルス 分 離 試 験 によると 感 染 力 を 保 持 したウイルスの 存 在 が 確 認 できる その 結 果 では 下 水 からは 高 い 確 率 で 腸 管 系 ウイルスが 検 出 され 下 水 処 理 過 程 で 相 当 量 が 除 去 あるい は 不 活 化 されると 考 えられるものの 放 流 水 からも 検 出 されることが 報 告 されている ノロウイルスは 食 中 毒 患 者 の 糞 便 を 電 子 顕 微 鏡 で 観 察 し 発 見 されたウイルス 様 粒 子 である このウイ ルスは 培 養 細 胞 を 用 いて 分 離 することはできないため 下 水 および 河 川 水 からの 検 出 は PCR 法 による 遺 伝 子 検 査 が 主 流 である PCR 法 を 用 いた 検 出 方 法 の 開 発 については 上 述 したが ウイルス 粒 子 を 構 成 す る 遺 伝 子 の 一 部 を 検 出 するため ウイルスの 生 死 が 判 定 できない 問 題 がある 一 方 消 毒 耐 性 については ウイルスの 安 全 性 からみた 下 水 処 理 水 の 再 生 処 理 法 検 討 マニュアル( 案 )
において ポリオウイルスを 用 いた 結 果 が 報 告 されている ポリオウイルスは 培 養 法 で 濃 度 の 測 定 がで き ワクチン 株 なので 安 全 性 が 高 く 多 くの 消 毒 実 験 に 用 いられている 以 上 ウイルス 類 に 関 する 現 状 を 述 べた 今 後 とも 検 出 方 法 の 開 発 消 毒 耐 性 を 含 めた 下 水 処 理 過 程 での 挙 動 などについて 検 討 を 進 め 下 水 処 理 水 や 下 水 汚 泥 に 含 まれる 病 原 微 生 物 に 関 する 安 全 性 の 確 保 を 図 っていきたい 謝 辞 4 下 水 処 理 場 での 病 原 微 生 物 除 去 特 性 に 係 る 調 査 は 文 部 科 学 省 予 算 アジア モンス-ン 地 域 における 水 資 源 の 安 全 性 に 関 わるリスクマネジメントシステムの 構 築 の 研 究 助 成 を 受 けて 実 施 した ものである なお タイ 国 での 調 査 は アジア 工 科 大 学 のシピン 博 士 コンケン 大 学 のパイラヤ 博 士 と 共 同 で 実 施 した 参 考 文 献 1) 国 土 交 通 省 都 市 地 域 整 備 局 下 水 道 部 国 土 技 術 政 策 総 合 研 究 所 (2005) 下 水 処 理 水 の 再 利 用 水 質 基 準 等 マニュアル 2) 諏 訪 ら(2004) ラグーンによる 病 原 微 生 物 の 除 去 特 性 第 41 回 下 水 道 研 究 発 表 会 講 演 集 p942-944 3) 陶 山 ら(2005) 日 本 およびタイにおける 下 水 中 の 腸 管 系 ウイルスの 実 態 と 下 水 処 理 施 設 における 消 長 第 42 回 下 水 道 研 究 発 表 会 講 演 集 ( 投 稿 中 ) 4) 矢 野 (2003) SRSV( 小 型 球 形 ウイルス:Small Round Structured による 水 系 感 染 水 Virus) 環 境 学 会 誌 Vol.26 N0.1 p8-13 5) 高 度 処 理 会 議 (2001) ウイルスの 安 全 性 からみた 下 水 処 理 水 の 再 生 処 理 法 検 討 マニュアル( 案 ) 質 疑 応 答 Q: 講 演 の 始 めに 紹 介 されました 今 回 の 雑 用 水 としての 再 利 用 水 質 基 準 は 大 腸 菌 として 100mL 中 検 出 されないなど 従 来 のものよりかなり 厳 しいものとなっているようです この 理 由 と 一 方 では 放 流 水 の 1mL 当 たり 大 腸 菌 群 数 として 3000 個 という 技 術 上 の 基 準 と 随 分 オーダーが 違 ってきていますが こ れについてのコメントをお 願 いします A: 再 利 用 水 の 基 準 には 残 留 塩 素 の 項 がありますが 塩 素 処 理 をきちんと 行 えば 雑 用 水 の 基 準 と 同 程 度 の 大 腸 菌 のレベルは 確 保 できるという 考 えであったと 思 います 放 流 水 の 基 準 の 話 ですが 大 腸 菌 群 数 を 大 腸 菌 に 替 えるという 指 標 の 問 題 を 始 めとしていろいろ 議 論 されていくと 思 います ( 尾 崎 講 師 )