<4D6963726F736F667420576F7264202D208CBB926E92B28DB88C8B89CA82C68ACF91AA8BAD906B93AE82CC95AA90CD82C98AEE82C382AD89768FE992AC96F08FEA8EFC95D382CC94ED8A518F57928682CC8CB488F682C98AD682B782E98D6C8E4076322E646F6378>



Similar documents
Microsoft Word - 表紙(正)

Microsoft Word - 「平成28年(2016年)熊本地震」_20号.docx

目 次 第 1 土 地 区 画 整 理 事 業 の 名 称 等 1 1. 土 地 区 画 整 理 事 業 の 名 称 1 2. 施 行 者 の 名 称 1 第 2 施 行 地 区 1 1. 施 行 地 区 の 位 置 1 2. 施 行 地 区 位 置 図 1 3. 施 行 地 区 の 区 域 1 4

学校安全の推進に関する計画の取組事例

<4D F736F F D E598BC68A8897CD82CC8DC490B68B7982D18E598BC68A8893AE82CC8A C98AD682B782E993C195CA915B C98AEE82C382AD936F985E96C68B9690C582CC93C197E1915B927582CC898492B75F8E96914F955D89BF8F915F2E646F6

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

3 圏 域 では 県 北 沿 岸 で2の 傾 向 を 強 く 見 てとることができます 4 近 年 は 分 配 及 び 人 口 が 減 少 している 市 町 村 が 多 くなっているため 所 得 の 増 加 要 因 を 考 える 場 合 は 人 口 減 少 による 影 響 についても 考 慮 する

地震保険研究 16

長崎市民間建築物耐震化推進事業の概要

1 平 成 27 年 度 土 地 評 価 の 概 要 について 1 固 定 資 産 税 の 評 価 替 えとは 地 価 等 の 変 動 に 伴 う 固 定 資 産 の 資 産 価 値 の 変 動 に 応 じ その 価 格 を 適 正 で 均 衡 のとれたものに 見 直 す 制 度 である 3 年 ご

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

現 地 調 査 では 火 口 周 辺 の 地 形 や 噴 気 等 の 状 況 に 変 化 は 見 られませんでした また 赤 外 熱 映 像 装 置 5) による 観 測 では 2015 年 3 月 頃 から5 月 29 日 の 噴 火 前 に 温 度 上 昇 が 認 められていた 新 岳 火 口

事 業 概 要 利 用 時 間 休 館 日 使 用 方 法 使 用 料 施 設 を 取 り 巻 く 状 況 や 課 題 < 松 山 駅 前 駐 輪 場 > JR 松 山 駅 を 利 用 する 人 の 自 転 車 原 付 を 収 容 する 施 設 として 設 置 され 有 料 駐 輪 場 の 利 用

<6D313588EF8FE991E58A778D9191E5834B C8EAE DC58F4992F18F6F816A F990B32E786C73>

Ⅰ. は じ め に 27 年 か ら の 不 況 の 影 響 で 不 動 産 競 売 物 件 が 増 加 し て い る 29 年 9 月 は 全 国 で 8 件 を 超 え た ( 前 年 同 月 は 約 6 件 ) ま た 不 動 産 競 売 の 情 報 が イ ン タ ー ネ ッ ト で 公

<4D F736F F D B3817A8E9096E291E D86939A905C>


これまでの 課 題 の 検 討 状 況 の 整 理 地 震 保 険 制 度 に 関 するプロジェクトチーム 報 告 書 ( 平 成 24 年 11 月 30 日 ) ( 附 属 物 の 損 害 査 定 ) 地 震 保 険 においては 迅 速 性 の 観 点 から 主 要 構 造 部 を 対 象 とし

<4D F736F F D2090BC8BBB959491BA8F5A91EE8A C52E646F63>

湯沢町耐震改修促進計画

1 変更の許可等(都市計画法第35条の2)

主要生活道路について

Microsoft PowerPoint - 経営事項審査.ppt

表紙

Microsoft Word - H27報告書

東北電力株式会社 東通原子力発電所 敷地の地質・地質構造 (コメント回答)

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word 印刷ver 本編最終no1(黒字化) .doc

Taro-01 議案概要.jtd

1 変更の許可等(都市計画法第35条の2)

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

新 市 建 設 計 画 の 変 更 に 係 る 新 旧 対 照 表 ページ 変 更 後 変 更 前 表 紙 安 中 市 松 井 田 町 合 併 協 議 会 安 中 市 松 井 田 町 合 併 協 議 会 平 成 27 年 3 月 変 更 安 中 市 6 2. 計 画 策 定 の 方 針 (3) 計

<4D F736F F D208FE DC926E8BE6926E8BE68C7689E681408C7689E68F912E646F63>

<4D F736F F D208ED089EF95DB8CAF89C193FC8FF38BB CC8EC091D492B28DB88C8B89CA82C982C282A282C42E646F63>

Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

12 大 都 市 の 人 口 と 従 業 者 数 12 大 都 市 は 全 国 の 人 口 の 約 2 割 従 業 者 数 の 約 3 割 を 占 める 12 大 都 市 の 事 業 所 数 従 業 者 数 及 び 人 口 は 表 1 のとおりです これらの 12 大 都 市 を 合 わせると 全

背 景 と 目 的 - 東 日 本 震 災 では の 上 部 構 造 の 流 出 が 多 発 - は 復 旧 に 時 間 を 要 する 一 方 交 通 機 能 の 回 復 は 待 ったなし 活 動 項 目 数 活 動 項 目 数 ( 全 体 ) 全 体 は24hで ピー

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

18 国立高等専門学校機構

< F31332D91CF906B89BB8C7689E68F912E6A7464>

目 次 第 1. 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 等 1 (1) 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 1 (2) 施 行 者 の 名 称 1 第 2. 施 行 区 1 (1) 施 行 区 の 位 置 1 (2) 施 行 区 位 置 図 1 (3) 施 行 区 の 区 域 1 (4) 施

様式第4号

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

<4D F736F F D208E9197BF CF092CA8F88979D82CC96CA82A982E782CC984890FC82CC90AE979D81698BC792B CE3816A2E646F63>

(2) 国 道 196 号 自 転 車 走 行 空 間 社 会 実 験 ( 平 成 21 年 度 ) 概 要 松 山 市 内 の 国 道 196 号 において 自 転 車 レーンを 設 置 する 社 会 実 験 を 実 施 し 歩 行 者 と 自 転 車 の 分 離 による 走 行 空 間 の 安

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

1.H26年エイズ発生動向年報ー概要

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

Microsoft Word - 概況(確定版).doc

6 構 造 等 コンクリートブロック 造 平 屋 建 て4 戸 長 屋 16 棟 64 戸 建 築 年 1 戸 当 床 面 積 棟 数 住 戸 改 善 後 床 面 積 昭 和 42 年 36.00m m2 昭 和 43 年 36.50m m2 昭 和 44 年 36.

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

人事行政の運営状況の報告について

市 町 村 税 の 概 況 市 町 村 税 の 概 況 は 平 成 25 年 度 地 方 財 政 状 況 調 査 平 成 26 年 度 市 町 村 税 の 課 税 状 況 等 の 調 及 び 平 成 26 年 度 固 定 資 産 の 価 格 等 の 概 要 調 書 等 報 告 書 等 の 資 料 に

高松市緊急輸送道路沿道建築物耐震改修等事業補助金交付要綱(案)

中根・金田台地区 平成23年度補償説明業務

PowerPoint プレゼンテーション

安 芸 太 田 町 学 校 適 正 配 置 基 本 方 針 の 一 部 修 正 について 1 議 会 学 校 適 正 配 置 調 査 特 別 委 員 会 調 査 報 告 書 について 安 芸 太 田 町 教 育 委 員 会 が 平 成 25 年 10 月 30 日 に 決 定 した 安 芸 太 田

16 日本学生支援機構

Ⅰ 平成14年度の状況

 

<6D33335F976C8EAE CF6955C A2E786C73>

Taro-条文.jtd


(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

(Microsoft Word - \220\340\226\276\217\221.doc)

大 阪 福 岡 鹿 児 島 前 頁 からの 続 き 35

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

(3) 調 査 の 進 め 方 2 月 28 日 2 月 28 日 ~6 月 30 日 平 成 25 年 9 月 サウンディング 型 市 場 調 査 について 公 表 松 戸 市 から 基 本 的 な 土 地 情 報 サウンディングの 実 施 活 用 意 向 アイデアのある 民 間 事 業 者 と

容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

課 税 ベ ー ス の 拡 大 等 : - 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し ( 後 掲 ) - 減 価 償 却 の 見 直 し ( 建 物 附 属 設 備 構 築 物 の 償 却 方 法 を 定 額 法 に 一 本 化 ) - 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 な る 見 直 し ( 大

社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

公表表紙

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

2. 住 宅 の 建 て 方 構 造 中 野 区 と 23 区 の 住 宅 の 建 て 方 構 造 階 級 別 の 住 宅 割 合 ( 平 成 15 年 住 宅 土 地 統 計 調 査 ) 中 野 区 中 野 区 23 区 平 均 23 区 平 均 木 造 防 火 木 造 非 木 造 木 造 防 火

Microsoft Word )40期決算公開用.doc

工 業 用 水 道 更 新 耐 震 化 事 業 の 費 用 対 効 果 の 算 定 工 業 用 水 道 更 新 耐 震 化 事 業 における 費 用 対 効 果 を 工 業 用 水 道 事 業 に 係 る 政 策 評 価 実 施 要 領 ( 経 済 産 業 省 ) 及 び 費 用 対 効 果 分 析

守 口 市 立 東 小 学 校 大 久 保 小 学 校 の 統 合 実 施 計 画 目 次 第 1 守 口 市 における 学 校 統 合 の 背 景 1 第 2 東 小 学 校 と 大 久 保 小 学 校 の 統 合 について 1 第 3 統 合 校 の 学 校 づくりについて 2 第 4 東 小

目 次 1. 方 針 1 2. 市 庁 舎 の 耐 震 化 事 業 計 画 2 [ 参 考 ] 建 物 の 現 状 5

1 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )について 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )の 構 成 構 成 記 載 内 容 第 1 章 はじめに 本 マニュアルの 目 的 記 載 内 容 について 説 明 しています 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 5 章 第 6 章 林 地

入札公告 機動装備センター

消 防 庁 危 険 物 保 安 室 殿 ドラム 缶 に 係 る 可 燃 性 蒸 気 対 流 シミュレーション 分 析 業 務 成 果 報 告 書 2013 年 1 月 アドバンスソフト 株 式 会 社

2 県 公 立 高 校 の 合 格 者 は このように 決 まる (1) 選 抜 の 仕 組 み 選 抜 の 資 料 選 抜 の 資 料 は 主 に 下 記 の3つがあり 全 高 校 で 使 用 する 共 通 の ものと 高 校 ごとに 決 めるものとがあります 1 学 力 検 査 ( 国 語 数

Microsoft Word - No.10 西村.doc

スライド 1

(2) 支 状 況 保 育 所 ( 定 員 60 人 以 上 ) 支 状 況 は 次 とおりです 1 総 入 構 成 比 は 割 合 が88.1% 活 動 外 入 が2.1% 特 別 入 が9.8%でした 2 構 成 比 は 運 営 費 入 が80.1% 経 常 経 費 補 助 金 入 が17.8%

年 3 月 期 1 都 3 県 賃 貸 住 宅 指 標 東 京 都 全 域 23 区 市 部 2015 年 5 月 28 日 発 行 空 室 率 TVI(ポイント) 募 集 期 間 (ヶ 月 )

m07 北見工業大学 様式①

Microsoft Word - H27概要版

<6E32355F8D918DDB8BA697CD8BE28D C8EAE312E786C73>

能勢町市街化調整区域における地区計画のガイドライン

平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

<4D F736F F D F8D828D5A939982CC8EF68BC697BF96B38F9E89BB82CC8A6791E52E646F63>

経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

東京事務所BCP【実施要領】溶け込み版

2 平 均 病 床 数 の 平 均 病 床 数 では 療 法 人 に 対 しそれ 以 外 の 開 設 主 体 自 治 体 社 会 保 険 関 係 団 体 その 他 公 的 の 規 模 が 2.5 倍 程 度 大 きく 療 法 人 に 比 べ 公 的 病 院 の 方 が 規 模 の 大 き いことが

b) 参 加 表 明 書 の 提 出 時 において 東 北 地 方 整 備 局 ( 港 湾 空 港 関 係 を 除 く) における 平 成 年 度 土 木 関 係 建 設 コンサルタント 業 務 に 係 る 一 般 競 争 ( 指 名 競 争 ) 参 加 資 格 の 認 定 を 受 けて

頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

<8BB388F58F5A91EE82A082E895FB8AEE967B95FB906A>

Transcription:

現 地 調 査 結 果 と 観 測 強 震 動 の 分 析 に 基 づく 益 城 町 役 場 周 辺 の 被 害 集 中 の 原 因 に 関 する 考 察 京 都 大 学 防 災 研 究 所 川 瀬 博 松 島 信 一 宝 音 図 京 都 大 学 工 学 研 究 科 長 嶋 史 明 仲 野 健 一 1. 調 査 分 析 の 概 要 今 回 の 熊 本 地 震 における 被 害 の 発 生 要 因 を 理 解 するため 我 々は4 月 29 日 から5 月 1 日 にかけて 益 城 町 および 西 原 村 において 被 害 状 況 の 観 察 と 微 動 調 査 および 余 震 観 測 点 の 敷 設 を 行 った 微 動 調 査 結 果 の 詳 細 および 余 震 観 測 データの 分 析 については 今 後 の 作 業 となるが とりあえず 益 城 町 役 場 周 辺 の 被 害 集 中 の 原 因 に 関 して 推 察 することができるだ けの 情 報 を 抽 出 したので それらの 結 果 をもとに 仮 説 の 構 築 を 行 った 具 体 的 には 被 害 集 中 域 における 踏 査 微 動 観 測 と 地 震 観 測 データの 分 析 観 測 強 震 動 の 構 造 物 破 壊 能 の 計 算 である 以 下 その 概 要 を 報 告 する 今 回 の 報 告 は 現 時 点 で 入 手 した 情 報 に 基 づいて 行 うもので 将 来 さらなる 情 報 の 入 手 に より 結 論 が 変 わる 可 能 性 は 否 定 できない しかしもしその 仮 説 が 正 しいのであれば より 定 量 的 な 理 解 のために 必 要 な 今 後 の 調 査 項 目 にそれを 反 映 していただきたいと 思 い ここに とりまとめた 次 第 である 2. 益 城 町 ( 宮 園 木 山 )での 被 害 集 中 の 特 徴 すでに 報 道 も 含 め 多 くの 調 査 結 果 が 報 告 されているので 益 城 町 中 心 部 の 被 害 集 中 その ものについては 多 くを 言 及 しない 益 城 町 の 町 役 場 文 化 会 館 を 中 心 とした 被 害 は 東 西 方 法 は 国 道 443 号 線 の 西 から 始 まり 県 道 235 号 線 の 東 まで( 約 1.5km~2km) 南 北 方 向 は 県 道 28 号 線 の 両 側 幅 約 ±300m の 領 域 に 広 がっている 南 側 は 秋 津 川 で 明 瞭 に 区 画 されて いるが( 南 側 には 水 田 地 帯 が 広 がりそもそも 被 害 の 出 ようがない) 北 側 および 西 側 の 境 界 はそれほど 明 瞭 ではない 現 地 踏 査 の 結 果 その 被 害 の 様 相 は 以 下 のようにまとめられる 1) 被 害 が 集 中 している 領 域 においては 旧 耐 震 の 構 造 物 だけでなく 新 耐 震 の 構 造 物 も 被 害 を 受 けている 事 例 がある 耐 震 補 強 を 施 した 建 物 も 多 く 被 害 を 受 けたとの 報 道 も ある( 写 真 1) 2) 一 方 旧 耐 震 の 構 造 物 でも 外 見 上 大 きな 被 害 が 見 られず 生 き 残 っている 建 物 も 多 数 存 在 している( 写 真 2) 3) 微 細 なスケール(50m オーダー)での 被 害 域 は 東 西 方 向 に 帯 状 に 分 布 し 南 北 方 向 に はまだら 模 様 となっている 一 方 で 東 西 方 向 にはある 程 度 連 続 している 傾 向 にある 上 記 1)はその 帯 状 被 害 集 中 域 内 についての 記 載 である 4) 一 方 上 記 2)の 記 載 はその 帯 の 外 側 に 位 置 する 建 物 に 関 する 記 載 である すなわ ち 微 細 スケールの 被 害 分 布 がまだら 模 様 となっているのはランダムになっているわけ ではない 1

Kawase, 2016/05/25 Ver.2 5 倒壊した建物の倒壊方向は高い確率で東西方向となっている 転倒した墓石もほ ぼ東西方向 断層並行方向 に転倒している 写真1 写真3 6 6 被害集中域の東西ラインを横切る南北方向の舗装道路においては必ず顕著な地盤 変状 舗装の割裂 盛土や擁壁の東西方向への崩壊 段差の生成 が見られる これは 被害の集中が地殻変動を主因としていることを裏付ける傍証である 写真7 8 な お秋津川近傍の平坦部では液状化によると思われる堤体の亀裂やマンホールの上昇 (10~20cm 程度)等が見られているが 上記の東西方向に分布する地盤変状は緩傾斜地 のもので それとは異なる 写真1 新しいアパートの被害 東西方向 写真3 東西方向に傾いた店舗 写真2 写真4 2 古い建物で生き残った事例 東西方向に傾いた鉄骨住宅

写 真 5 東 西 に 大 破 した 寺 の 本 堂 (RC 新 耐 震 ) 写 真 6 東 西 方 向 に 転 倒 した 墓 石 写 真 7 写 真 8 地 盤 変 状 の 表 出 とそれに 隣 接 する 大 破 倒 壊 建 物 ( 道 は 南 北 方 向 ) 3

3. 益 城 町 被 害 集 中 域 での 微 動 特 性 益 城 町 の 被 害 集 中 域 において 可 搬 型 微 動 計 SMAR-6A3P を 10 台 用 いて 約 100m 間 隔 で 格 子 状 に 700m 1km の 領 域 で 微 動 計 測 を 行 った その 配 置 図 を 図 1に 示 すが その 中 で 益 城 町 役 場 を 中 心 とする 県 道 235 号 線 沿 いの 益 城 中 央 病 院 から 秋 津 川 に 掛 けての 北 端 中 央 南 端 の 6 地 点 での 水 平 上 下 比 (MHVR)を 比 較 したのが 図 2である 観 測 された MHVR は 2~3Hz 付 近 にピークを 持 ち そのピークレベルは 約 4~5 倍 であり 地 下 構 造 に はそれなりのインピーダンスコントラストがあることを 示 唆 しているが 被 災 地 域 をまた いだ 測 線 での MHVR の 違 いはわずかである 図 3には 観 測 した 地 点 でピークが 読 み 取 れた 地 点 のピーク 振 動 数 を 円 のサイズで 表 現 して 示 す( 円 内 の 数 字 はそのピーク 振 動 数 ) 南 西 の 秋 津 川 沿 いの 低 地 でピーク 振 動 数 が 有 意 に 低 くなっており その 領 域 で 表 層 地 盤 厚 さが 厚 くなっている 可 能 性 が 指 摘 できるが その 領 域 は 被 害 集 中 域 から 外 れており 表 層 地 盤 の 空 間 的 差 異 が 益 城 町 中 心 部 における 被 害 集 中 の 直 接 的 原 因 とは 考 えられない なお 被 害 集 中 域 の 北 側 の 外 縁 部 に 位 置 する 辻 の 城 に 防 災 科 学 技 術 研 究 所 の KiK-net 益 城 (KMMH16)が 設 置 されており 本 震 も 得 られているが その 本 震 以 前 に 観 測 された 弱 震 動 の 平 均 水 平 上 下 比 EHVR を 用 いた 分 析 結 果 については 別 途 (http://zeisei5.dpri.kyotou.ac.jp/naga/20160418-kmmh16-obs&theoryhvr-v2.pdf) 報 告 しているので 参 照 された い ちなみに EHVR のピークは 同 じく 3Hz で ピークレベルは 6 倍 そのピーク 振 動 数 は ボーリング 調 査 で 明 らかになっている 20~24m 地 表 面 下 にある 凝 灰 岩 層 との 速 度 コントラ ストで 生 じているものと 推 察 される なおこの 防 災 科 学 技 術 研 究 所 実 施 のボーリング 調 査 結 果 から 求 めた 表 層 30mの 平 均 S 波 速 度 Vs30 は 265m/s であり 日 本 の 基 準 からは 決 し て 軟 弱 地 盤 ではない 図 1 益 城 町 被 害 中 心 部 における 微 動 観 測 地 点 の 分 布 4

図 2 益 城 町 役 場 を 通 る 南 北 測 線 での 観 測 微 動 の 水 平 上 下 比 MHVR 図 3 益 城 町 被 害 中 心 部 での 微 動 観 測 から 得 られた MHVR の 基 本 ピーク 振 動 数 分 布 5

4. 益 城 町 での 観 測 強 震 動 の 特 徴 とその 構 造 物 破 壊 能 益 城 町 役 場 に 置 かれていた 自 治 体 震 度 計 の 前 震 および 本 震 の 気 象 庁 震 度 が 震 度 7 であっ たことはすでに 報 道 されている 通 りである しかし 兵 庫 県 南 部 地 震 以 降 速 報 性 を 重 視 し て 導 入 された 気 象 庁 の 計 測 震 度 が 震 度 5 強 以 上 で 想 定 されているよりも 小 さな 被 害 しか 生 じないケースが 多 々あることが 報 告 されており 2011 年 の 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 において も 唯 一 震 度 7となった K-NET 築 館 の 観 測 点 の 周 辺 でも 大 破 倒 壊 といった 大 被 害 は 生 じな かったことが 知 られている しかし 今 回 の 益 城 町 役 場 における 観 測 強 震 動 波 形 はすでに 気 象 庁 によって 公 開 されており その 結 果 を 分 析 した 筑 波 大 学 の 境 有 紀 教 授 のサイトでは 今 回 の 地 震 動 は 周 期 1~2 秒 の 応 答 スペクトルを 指 標 に 計 算 する 境 震 度 においても 震 度 7 と 見 なせると 報 告 されている(http://www.kz.tsukuba.ac.jp/~sakai/s1605s.htm) 従 って その 破 壊 力 は 震 度 7クラスといってもよいとも 思 われるが 前 述 のように 被 害 集 中 域 を 踏 査 すると 域 内 での 被 害 は 決 して 一 様 ではなく 旧 耐 震 の 一 見 脆 弱 に 見 える 構 造 物 が 大 きな 被 害 を 免 れている 事 例 がある 一 方 新 耐 震 と 思 われる 構 造 物 に 大 きな 被 害 が 生 じている 事 例 も 見 られる このような 構 造 物 の 特 性 によって 大 破 倒 壊 を 免 れて 生 き 残 れる 構 造 物 が 生 じていること 自 体 今 回 の 益 城 町 中 心 部 での 強 震 動 が 兵 庫 県 南 部 地 震 の 神 戸 市 内 の 震 災 の 帯 の 中 のそのまた 中 心 部 における 大 破 以 上 率 100%の 強 震 動 のレベルとは 同 等 のものでは ないことを 示 唆 している 実 際 京 都 大 学 防 災 研 究 所 の 岩 田 知 孝 教 授 は 益 城 町 役 場 に 置 かれていた 自 治 体 震 度 計 の 本 震 波 形 を 積 分 し 170cm/s を 超 える 最 大 速 度 を 得 ているが(http://sms.dpri.kyotou.ac.jp/topics/masiki-nishihara0428ver2.pdf) それは 断 層 平 行 成 分 に 近 い EW 成 分 で 得 ら れており 同 じくさらに 積 分 して 得 た 変 位 波 形 ではその 最 大 速 度 パルスの 後 の2 秒 間 で EW 方 向 に 1m ずれ 動 いた( 永 久 変 位 として 地 殻 変 動 が 残 った)ことを 報 告 している 横 ずれ 成 分 が 卓 越 していた 今 回 の 熊 本 地 震 の 震 源 直 上 では 普 通 なら 兵 庫 県 南 部 地 震 の 神 戸 市 域 で 見 られたように( 松 島 川 瀬 2000 建 築 学 会 論 文 集 ) 永 久 変 位 を 伴 わない 断 層 直 交 成 分 に おけるアスペリティパルス(いわゆる キラーパルス )が 被 害 の 主 要 原 因 となるはずであ るが 益 城 町 役 場 の 波 形 の 断 層 直 交 成 分 に 近 い NS 成 分 には 明 瞭 なアスペリティパルスが 見 られていない また 上 述 のように 大 破 倒 壊 建 物 の 大 変 形 の 発 生 方 向 は 東 西 方 向 に 著 しく 片 寄 っている 従 って 益 城 町 中 心 部 の 被 害 の 生 成 は 東 西 方 向 に 卓 越 した 永 久 変 形 を 生 成 する 際 の 地 殻 変 動 が 主 因 であった 可 能 性 が 指 摘 できる そこで 兵 庫 県 南 部 地 震 の 際 の 神 戸 市 域 における 再 現 地 動 ( 松 島 川 瀬 2000 前 出 )と 町 丁 目 別 に 悉 皆 調 査 された 木 造 建 物 の 被 害 率 統 計 を 用 いて 木 造 2 階 建 の 非 線 形 応 答 解 析 モ デルの 終 局 耐 力 の 確 率 密 度 関 数 を 観 測 被 害 率 を 再 現 できるように 構 築 した 長 戸 川 瀬 モデ ル( 長 戸 川 瀬 2002 JEES)を 年 代 別 耐 力 モデルに 拡 張 した 吉 田 モデル( 吉 田 他, AIJ 大 会, 2004)に 益 城 町 役 場 の 観 測 強 震 動 を 入 力 して 神 戸 市 東 灘 区 に 立 っていた 木 造 家 屋 と 同 等 の 木 造 家 屋 が 益 城 町 にも 平 均 的 に 分 布 していたものとして 推 定 被 害 率 を 計 算 した その 結 果 以 下 の 表 1に 示 すように 前 震 本 震 いずれも EW 成 分 に 対 してより 大 きな 被 害 が 発 生 する 6

という 結 果 が 得 られた またその 計 算 被 害 率 は 最 大 の 被 害 率 が 計 算 された 本 震 の EW 成 分 に 対 しても 新 耐 震 導 入 (1981 年 ) 以 降 の 木 造 家 屋 では 高 々10% 程 度 に 収 まるものの 古 い 木 造 家 屋 の 場 合 には 50% 以 上 の 被 害 率 が 推 定 された よって 今 回 の 地 震 動 の 構 造 物 破 壊 能 は 兵 庫 県 南 部 地 震 の 神 戸 市 域 の 大 破 倒 壊 率 100%の 領 域 の 強 震 動 に 比 して 決 して 大 きいとは 言 えないが それ 以 降 これまで 我 が 国 で 得 られた 強 震 動 波 形 としては 最 大 級 の 破 壊 力 をもつ ことが 分 かった なお 後 本 震 での 益 城 町 役 場 の 記 録 と KiK-net 益 城 の 記 録 による 被 害 率 を 比 較 すると NS 成 分 ではほぼ 同 等 か 古 い 建 物 で 少 し 益 城 町 役 場 の 方 が 大 きい 傾 向 にあるのに 対 し EW 成 分 ではほぼ 同 等 で 70 年 代 建 物 でのみ KiK-net 益 城 の 方 が 少 し 大 きくなっている これは 図 4に 示 したように 時 間 軸 を S 波 の 到 来 で 合 わせた 波 形 を 重 ねたときに 両 者 は 基 本 的 に よく 似 ていることを 反 映 しているものと 考 えられ NS 成 分 では 24 秒 付 近 で 益 城 町 役 場 の 記 録 が 大 きな 最 大 加 速 度 を 示 しているのに 対 し EW 成 分 では 21.6 秒 付 近 の 継 続 時 間 の 短 表 1 計 算 された 方 向 別 年 代 別 木 造 家 屋 の 推 定 大 破 倒 壊 率 地 震 場 所 地 震 動 成 分 最 大 加 速 度 4/14 21:26 前 本 震 4/16 01:25 後 本 震 益 城 町 役 場 KMMH16 益 城 町 役 場 KMMH16 計 算 被 害 率 ~1950 1950~1970 1970~1981 1982~ NS 632cm/s 2 0.594 0.423 0.423 0.159 EW 732cm/s 2 0.765 0.577 0.425 0.169 NS 759cm/s 2 0.264 0.328 0.384 0.168 EW 922cm/s 2 0.785 0.703 0.501 0.351 NS 776cm/s 2 0.555 0.481 0.330 0.105 EW 825cm/s 2 0.711 0.481 0.423 0.154 NS 651cm/s 2 0.473 0.386 0.332 0.11 EW 1156cm/s 2 0.637 0.423 0.555 0.144 図 4 益 城 町 役 場 と KiK-net 益 城 の 水 平 2 成 分 の 加 速 度 波 形 の 比 較 7

いパルス 状 の 部 分 で KiK-net 益 城 の 方 が 最 大 加 速 度 は 1.4 倍 になっているものの それは 速 度 すなわち 入 力 エネルギーの 増 大 にはあまり 寄 与 していないので 結 果 的 に 大 きな 被 害 率 には 直 結 しなかったものと 考 えられる 5. 考 えられる 益 城 町 被 害 集 中 の 原 因 以 上 の 調 査 結 果 および 本 震 の 発 震 点 の 位 置 さらに 産 総 研 GSJ がまとめた 活 断 層 マッ プと InSAR の 地 殻 変 動 の 分 布 図 (https://www.gsj.jp/hazards/earthquake/kumamoto2016/ index.html)を 参 照 すると 今 回 の 益 城 町 中 心 部 における 被 害 集 中 は 観 測 された 強 震 動 そ のものが 原 因 というよりも 強 震 動 とそれに 伴 って 発 生 した 地 殻 変 動 およびそれによる 地 盤 変 状 の 発 生 が 主 たる 原 因 で 生 じたものではないかと 推 察 される もちろんこれは 純 粋 に 振 動 により 壊 れた 建 物 がなかったと 主 張 するものではない その 論 理 をまとめると 以 下 の 通 りである 1) 地 震 動 の 分 析 からは 確 かに 強 烈 な 地 震 動 ではあるが KiK-net 益 城 においても 同 じような 被 害 が 出 ていても 不 思 議 ではない 2) 地 震 動 を 用 いた 推 定 からも 被 害 の 実 相 からも 断 層 平 行 成 分 に 近 い 東 西 方 向 の 被 害 が 卓 越 していたと 推 測 される 3) 被 害 の 帯 は 東 西 方 向 に 連 続 し 南 北 方 向 には 連 続 していない 連 続 する 東 西 方 向 の 被 害 帯 を 横 切 る 道 路 には 高 い 確 率 で 地 盤 変 状 が 見 られた 4) 上 記 被 害 帯 の 内 側 では 新 耐 震 の 建 物 も 壊 れているケースがある 一 方 その 外 側 で は 旧 耐 震 の 脆 弱 そうな 建 物 でも 軽 微 な 被 害 に 留 まっているケースが 多 く 見 られる これ ら 相 反 する 情 報 は 益 城 町 中 心 部 での 被 害 が 単 純 な 地 震 動 によって 建 物 に 生 じた 震 動 被 害 ではないことを 示 唆 している 5) 被 害 集 中 域 の 北 端 南 端 と 中 心 部 の 地 盤 構 造 に 大 きな 違 いがある 可 能 性 は 低 い 6) 地 盤 の 非 線 形 化 を 考 慮 しても 表 層 が 浅 く 基 盤 も 浅 いと 考 えられる 今 回 の 被 害 集 中 域 において 神 戸 の 場 合 に 出 現 したエッジ 効 果 (Kawase, SRL, 1996)のような 特 異 な 地 盤 増 幅 現 象 があった 可 能 性 は 低 い 7) GSJ の 活 断 層 マップでは 県 道 28 号 線 沿 いに 布 田 川 断 層 主 要 部 から 分 岐 した 小 断 層 ( 地 震 本 部 の 長 期 評 価 部 会 の 報 告 http://www.jishin.go.jp/main/chousa/02may_ futagawa/f02.htm では 木 山 断 層 )が 引 かれている その 西 縁 は 国 道 443 号 線 までで それよりも 西 には 引 かれていない これは 国 道 443 号 線 を 挟 んで 東 側 では 明 瞭 な1 本 の 線 上 に 地 震 断 層 としての 地 殻 変 動 が 集 中 してきたのに 対 して 西 側 では 今 回 の 被 害 集 中 域 の 幅 にその 変 動 が 分 布 してきたためではないかと 推 察 される 実 際 秋 津 川 に 来 たか ら 流 れ 込 む 支 流 は 500m くらいの 幅 で 北 東 から 南 西 に 斜 めに 流 れ 込 んでおり 過 去 発 生 した 地 震 による 地 表 断 層 変 位 が 分 散 して 出 現 してきたことを 示 唆 している InSAR の 変 動 分 布 も 木 山 断 層 までは 明 瞭 な 線 が 見 いだせるが その 西 側 では 幅 1km 長 さ 2km にわたって 変 動 が 明 瞭 でない 領 域 が 形 成 されている これらはこの 領 域 において 分 散 し 8

て 地 殻 変 動 が 表 出 した 可 能 性 を 示 唆 している 8) 今 回 の 本 震 の 発 震 点 は 布 田 川 断 層 主 部 上 ではなく 上 記 分 岐 断 層 の 延 長 線 上 にあ り 少 なくとも 発 震 点 から 東 側 に 直 線 状 に 延 長 し 布 田 川 断 層 主 部 に 合 流 するまでの 分 岐 セグメントが 断 層 運 動 に 伴 う 地 表 変 位 の 北 端 であったことは InSAR の 地 殻 変 動 を 表 し た 縞 模 様 が 示 唆 するところである これらの 情 報 を 総 合 的 に 判 断 すると 今 回 の 益 城 町 中 心 部 における 被 害 の 集 中 は 前 震 本 震 による2 度 の 揺 れを 受 けたことが 主 因 ではなく この 地 域 の 地 盤 が 特 に 揺 れやすいた めでもなく 古 い 建 物 がここに 集 中 していたためでもない 本 震 の 断 層 運 動 に 伴 う 地 殻 変 動 が 表 層 の 地 盤 変 状 となって 表 れ その 永 久 変 位 を 形 成 するプロセスの 地 震 動 とそれに 伴 っ て 生 じた 地 盤 変 状 の 相 乗 効 果 で 大 きな 被 害 が 生 じたものと 推 察 される なお 西 原 村 南 部 の 被 害 集 中 域 もまた 断 層 変 位 の 表 出 した 地 点 の 近 傍 であり やはり 周 辺 に 地 盤 変 状 が 多 く 観 察 される 集 落 で 生 じている 一 方 日 本 の 記 録 史 上 最 大 の 地 動 速 度 260cm/s を 記 録 した ( 岩 田 知 孝 前 出 ) 西 原 村 役 場 は 事 実 上 無 被 害 であった 最 後 に このような 引 張 応 力 場 において 発 生 した 正 断 層 型 の 地 震 における 被 害 が もっぱ ら 断 層 近 傍 の 断 層 運 動 に 伴 って 生 じたものに 限 られた 事 例 は 今 回 が 初 めてではなく 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 の 誘 発 地 震 として 発 生 した 福 島 県 浜 通 り 地 震 でも 指 摘 されていた( 久 田 他 2012 日 本 地 震 工 学 会 論 文 集 ) 6. まとめ 以 上 我 々の 調 査 によれば 今 回 の 益 城 町 中 心 部 における 被 害 集 中 は 地 殻 変 動 を 伴 った 強 震 動 およびそれによる 地 盤 変 状 の 発 生 が 主 たる 原 因 で 生 じたものと 推 察 される 従 って 今 後 の 調 査 においては 1) 被 害 建 物 の 被 害 程 度 別 詳 細 な 空 間 分 布 の 把 握 2) 被 害 建 物 の 分 布 と 地 盤 変 状 の 分 布 の 相 関 関 係 の 把 握 3) 被 害 建 物 の 倒 壊 方 向 最 大 変 形 方 向 の 把 握 4) 被 害 集 中 域 における 詳 細 な 地 殻 変 動 量 の 空 間 分 布 把 握 5) 被 害 集 中 域 とその 周 辺 における 基 盤 に 至 るまでの 地 下 構 造 の 把 握 が 必 要 であり 是 非 本 仮 説 を 検 証 もしくは 否 定 するに 足 る 定 量 的 情 報 を 関 係 者 と 協 力 して 収 集 したいと 考 えているし そのために 役 立 つ 情 報 提 供 をお 願 いしたい なお 本 仮 説 が 正 しかった 場 合 には 活 断 層 近 傍 の 被 害 は 防 げないのだから 日 本 にも 活 断 層 法 ( 活 断 層 上 の 建 築 を 制 限 する 法 )が 必 要 だ と 主 張 される 一 部 専 門 家 を 後 押 しする ことになりかねないが 逆 に 今 回 の 事 例 は 活 断 層 法 が 今 回 のような 分 散 した 断 層 地 変 に は 無 力 であることを 示 したものであることから その 教 訓 を 正 しく 解 釈 していただき 活 断 層 法 の 導 入 を 考 えるよりも 大 きな 一 方 向 変 位 入 力 に 対 しても 倒 壊 しない 木 造 耐 震 補 強 法 をより 一 層 展 開 していくべきだと 考 えている 9

謝 辞 本 報 告 には 科 学 研 究 費 補 助 金 特 別 推 進 研 究 費 2016 年 熊 本 地 震 と 関 連 する 活 動 に 関 す る 総 合 調 査 ( 代 表 者 : 清 水 洋 )によるサポートを 受 けました 微 動 調 査 には 川 瀬 研 究 室 松 島 研 究 室 の 学 生 諸 君 の 協 力 を 得 ました 観 測 地 震 記 録 は JMA および NIED の 収 集 され たものを 利 用 させていただきました その 他 筑 波 大 京 大 防 災 研 地 質 調 査 所 および 国 土 地 理 院 のウェブ 情 報 を 参 照 しました 記 して 感 謝 の 意 を 表 します 10