変貌する高齢者家計と次世代への課題

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社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

小山市保育所整備計画

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)


平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

(1) 率 等 一 覧 ( 平 成 26 年 度 ) 目 課 客 体 及 び 納 義 務 者 課 標 準 及 び 率 法 内 に 住 所 を 有 する ( 均 等 割 所 得 割 ) 内 に 事 務 所 事 業 所 又 は 家 屋 敷 を 有 する で 内 に 住 所 を 有 し ないもの( 均 等

経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減


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Microsoft Word - 目次.doc

第25回税制調査会 総25-1

平成16年度

Taro-H19退職金(修正版).jtd

Microsoft PowerPoint a1.ppt

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公表表紙

16 日本学生支援機構

賦課の根拠となった法律及び条例(その2)

Microsoft Word - H25年度の概要

目 次 高 山 市 連 結 財 務 諸 表 について 1 連 結 貸 借 対 照 表 2 連 結 行 政 コスト 計 算 書 4 連 結 純 資 産 変 動 計 算 書 6 連 結 資 金 収 支 計 算 書 7

賦課の根拠となった法律及び条例(その2)

減 少 率 ) と 平 均 余 命 の 伸 びを 勘 案 した 一 定 率 (0.3%) の 合 計 である スライド 調 整 率 を 差 し 引 いて 年 金 額 の 改 定 が 行 われる( 図 表 ) ただし マクロ 経 済 スライドが 完 全 に 実 施 されるのは 賃 金 や 物 価 があ

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

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子ども手当見直しによる家計への影響~高所得者層の可処分所得は大幅減少に

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Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt


(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

別 表 1 土 地 建 物 提 案 型 の 供 給 計 画 に 関 する 評 価 項 目 と 評 価 点 数 表 項 目 区 分 評 価 内 容 と 点 数 一 般 評 価 項 目 立 地 条 件 (1) 交 通 利 便 性 ( 徒 歩 =80m/1 分 ) 25 (2) 生 活 利 便

資料1:勧告の仕組みとポイント 改【完成】

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

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m07 北見工業大学 様式①

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 現 況 ( 平 成 22 1 号 給 の 給 料 月 額 137,9 188,9 226,7 266,4 294,3 最 高 号 給 の 給 料 月 額 247,9 314,9 362,8 399,9 415,1 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制

Microsoft Word - H25普通会計決算状況 .docx

技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77


平 成 34 年 4 月 1 日 から 平 成 37 年 3 月 31 日 まで 64 歳 第 2 章 労 働 契 約 ( 再 雇 用 希 望 の 申 出 ) 第 3 条 再 雇 用 職 員 として 継 続 して 雇 用 されることを 希 望 する 者 は 定 年 退 職 日 の3か 月 前 まで

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Microsoft Word - ☆f.doc

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

(Microsoft Word - \220\305\220\247\211\374\220\263.doc)

●幼児教育振興法案

5

別紙3

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1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) (H25.4.1) (H25.4.1) (H25.7.1) (H25.7.1) (H25.4.1) (H25.7.1)

Microsoft PowerPoint - 【資料5】社会福祉施設職員等退職手当共済制度の見直し(案)について

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

就 業 規 則 ( 福 利 厚 生 ) 第 章 福 利 厚 生 ( 死 亡 弔 慰 金 等 ) 第 条 法 人 が 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 民 間 社 会 福 祉 施 設 等 職 員 共 済 規 程 に 基 づき 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 との 間 において 締 結 す

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平成21年10月30日

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 161,7 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

も く じ 1 税 源 移 譲 1 2 何 が 変 わったのか 改 正 の 3 つ の ポイント ポイント1 国 から 地 方 へ 3 兆 円 規 模 の 税 源 が 移 譲 される 2 ポイント2 個 人 住 民 税 の 税 率 構 造 が 一 律 10%に 変 わる 3 ポイント3 個 々の 納

    平成11年度余市町私立幼稚園就園奨励費補助金交付要綱

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

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川越市幼稚園就園奨励費補助金交付要綱

スライド 1

3 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 ( ベース) 43.7 歳 32, , ,321

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(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

波佐見町の給与・定員管理等について

第5回法人課税ディスカッショングループ 法D5-4

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18 国立高等専門学校機構

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 25 年 4 月 1 日 現 在 ) 1) 一 般 行 政 職 福 島 県 国 類 似 団 体 平 均 年 齢 平

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

目 次 1. 社 会 保 障 分 野 でできること 1 1 高 額 医 療 高 額 介 護 合 算 制 度 の 改 善 2 保 険 証 機 能 の 一 元 化 3 自 己 診 療 情 報 の 活 用 4 給 付 可 能 サービスの 行 政 側 からの 通 知 2. 年 金 分 野 でできること 5


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03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 最 高 号 給 の 給 料 月 額 243,7 37,8 35

資料2 利用者負担(保育費用)

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1 はじめに 計 画 の 目 的 国 は 平 成 18 年 度 に 住 生 活 基 本 法 を 制 定 し 住 まいに 関 する 基 本 的 な 計 画 となる 住 生 活 基 本 計 画 ( 全 国 計 画 )を 策 定 し 住 宅 セーフティネットの 確 保 や 住 生 活 の 質 の 向 上

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 2 年 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものです ( 単 位 : ) 3 職 員 の 平 均 給 与 月

資料2 年金制度等について(山下委員提出資料)

災害時の賃貸住宅居住者の居住の安定確保について

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Transcription:

経 済 社 会 構 造 分 析 レポート 経 済 構 造 分 析 レポート No.31 変 貌 する 高 齢 者 家 計 と 次 世 代 への 課 題 世 代 間 連 鎖 する 格 差 は 政 策 によって 克 服 できるか 2015 年 8 月 7 日 全 58 頁 経 済 調 査 部 シニアエコノミスト 近 藤 智 也 主 任 研 究 員 溝 端 幹 雄 研 究 員 石 橋 未 来 [ 要 約 ] 本 稿 では 国 内 の 個 人 消 費 を 牽 引 する 高 齢 者 世 帯 の 消 費 が どのように 決 まるのかを 他 の 年 齢 階 級 と 比 較 することで 明 らかにする また 主 な 収 入 が 年 金 である 高 齢 無 職 世 帯 の 消 費 の 特 徴 を 捉 え 年 金 の 実 質 的 な 減 額 が 消 費 抑 制 へつながるのかを 確 認 したい 勤 労 世 帯 と 異 なり 高 齢 無 職 世 帯 の 消 費 は 所 得 を 大 幅 に 上 回 っており 交 際 費 やパック 旅 行 等 の 選 択 的 支 出 の 割 合 が 比 較 的 多 い 近 年 は 勤 労 世 帯 が 食 費 を 切 り 詰 めているのに 対 し 高 齢 無 職 世 帯 ではあまり 変 化 がない その 原 資 は 貯 蓄 取 り 崩 しであり 資 産 を 持 つ 高 齢 者 世 帯 の 割 合 は 増 加 している 定 年 退 職 後 の 長 い 高 齢 期 ( 健 康 寿 命 と 比 較 しても 定 年 年 齢 は 早 期 に 設 定 されている)の 消 費 については 低 貯 蓄 低 収 入 世 帯 を 除 き 公 的 年 金 給 付 だけでなく 貯 蓄 取 り 崩 し や 就 労 によってヘッジしていくことが 望 ましいと 思 われる そのため 特 に 高 齢 者 の 就 労 を 促 すには 生 産 性 に 応 じた 雇 用 体 系 へ 移 行 すべきであろう しかしながら 一 方 で 金 融 資 産 の 保 有 を 通 じて 高 齢 者 世 帯 の 二 極 化 が 進 み 負 のスパイ ラルから 抜 け 出 せない 世 帯 の 存 在 も 指 摘 できる こうした 状 況 は 子 や 孫 への 所 得 移 転 に 対 する 各 種 非 課 税 措 置 や 若 い 世 代 の 持 家 率 の 低 下 によって 次 世 代 にも 連 鎖 していく 懸 念 があり 政 策 のあり 方 が 問 われよう 今 後 の 超 少 子 高 齢 社 会 や 産 業 構 造 の 高 度 化 を 見 据 えると イノベーションを 生 み 出 す 高 度 人 材 の 育 成 と 活 躍 の 場 を 提 供 すべきであり 教 育 面 では 高 等 教 育 と 就 学 前 教 育 の 充 実 雇 用 面 では 人 材 の 多 様 性 と 流 動 性 の 確 保 が 必 要 である さらに そうした 人 材 をうまく 活 用 するには 地 域 の 人 口 を 集 約 化 して 近 接 性 を 高 めるのも 効 果 的 だろう 株 式 会 社 大 和 総 研 丸 の 内 オフィス 100-6756 東 京 都 千 代 田 区 丸 の 内 一 丁 目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー このレポートは 投 資 勧 誘 を 意 図 して 提 供 するものではありません このレポートの 掲 載 情 報 は 信 頼 できると 考 えられる 情 報 源 から 作 成 しておりますが その 正 確 性 完 全 性 を 保 証 する ものではありません また 記 載 された 意 見 や 予 測 等 は 作 成 時 点 のものであり 今 後 予 告 なく 変 更 されることがあります 大 和 総 研 の 親 会 社 である 大 和 総 研 ホールディングスと 大 和 証 券 は 大 和 証 券 グループ 本 社 を 親 会 社 とする 大 和 証 券 グループの 会 社 です 内 容 に 関 する 一 切 の 権 利 は 大 和 総 研 にあります 無 断 での 複 製 転 載 転 送 等 はご 遠 慮 ください

2 / 58 目 次 1.はじめに... 3 2. 存 在 感 増 す 高 齢 者 世 帯 の 消 費... 3 3. 収 入 減 は 消 費 を 抑 制 させるか... 5 (1) 勤 労 世 帯 との 比 較... 5 (2) 年 金 給 付 は 不 十 分 なのか... 8 (3) 高 齢 者 世 帯 の 消 費 はどう 変 化 するのか... 10 (4) 高 齢 無 職 世 帯 が 生 活 水 準 を 維 持 している 手 段... 12 (5) 貯 蓄 増 や 収 入 増 で 増 加 する 消 費 支 出 項 目 とは... 14 (6) 選 択 的 支 出 については 年 金 給 付 だけでは 不 十 分... 16 (7) 三 世 代 消 費 を 支 える 持 っている 高 齢 者 の 行 動... 16 4. 住 居 形 態 が 影 響 する 高 齢 者 世 帯 の 生 活... 21 (1) 高 齢 者 世 帯 の 住 居 形 態 による 消 費 構 造 の 違 い... 21 (2) 住 居 負 担 が 重 い 借 家 世 帯 では 貯 蓄 額 も 少 ない... 22 (3) 現 役 世 代 の 持 家 率 の 低 下 が 高 齢 期 の 借 家 世 帯 の 増 加 に... 25 (4) 公 営 住 宅 が 低 所 得 世 帯 の 消 費 を 変 える... 26 (5) 住 宅 政 策 は 今 後 の 高 齢 者 消 費 に 影 響 するか... 28 (6) 実 現 のハードルが 高 い 高 齢 者 の 地 方 移 住... 29 5. 高 齢 者 雇 用... 32 (1) 年 金 支 給 開 始 までの 生 活 費... 32 (2) 高 齢 者 世 帯 が 就 労 した 場 合... 34 (3) 高 齢 者 の 雇 用 を 阻 むもの... 38 6. 成 長 戦 略 で 超 少 子 高 齢 社 会 は 本 当 に 乗 り 越 えられるのか?... 40 (1) 最 新 の 成 長 戦 略 の 概 要 とこれまでの 進 捗 状 況... 41 (2) 超 少 子 高 齢 社 会 では 成 長 戦 略 にも 発 想 の 転 換 が 必 要... 46 (3)まとめと 課 題 : 超 少 子 高 齢 社 会 を 乗 り 切 るカギは 多 様 な 高 度 人 材 の 有 効 活 用.. 55 7.まとめ... 55

3 / 58 1.はじめに 本 稿 は 超 少 子 高 齢 社 会 で 変 貌 していく 高 齢 者 世 帯 の 家 計 周 辺 の 環 境 について 消 費 住 宅 雇 用 地 域 成 長 戦 略 などの 視 点 から 考 察 したものである まず2 章 から4 章 までは 国 内 の 個 人 消 費 を 牽 引 する 高 齢 者 世 帯 の 消 費 がどのように 決 まる のかを 他 の 年 齢 階 級 と 比 較 することで 明 らかにする また 主 な 収 入 が 年 金 である 高 齢 無 職 世 帯 の 消 費 の 特 徴 を 捉 え 金 融 資 産 や 居 住 形 態 の 違 いも 踏 まえながら 年 金 の 実 質 的 な 減 額 が 消 費 抑 制 へつながるのかを 確 認 したい 続 く5 章 では 年 金 収 入 を 補 うために 今 後 重 要 となる 高 齢 者 雇 用 6 章 では 超 少 子 高 齢 社 会 において 家 計 社 会 全 体 の 所 得 を 高 めていく 成 長 戦 略 や 地 域 のあり 方 について 述 べて 最 後 にまとめを 行 う 以 下 の 分 析 で 明 らかになるように 定 年 退 職 後 の 長 い 高 齢 期 ( 健 康 寿 命 と 比 較 しても 定 年 年 齢 は 早 期 に 設 定 されている)の 消 費 については 低 貯 蓄 低 収 入 世 帯 を 除 き 公 的 年 金 給 付 だ けでなく 貯 蓄 取 り 崩 しや 就 労 によってヘッジしていくことが 望 ましいと 思 われる 特 に 高 齢 者 の 就 労 を 促 すには 生 産 性 に 応 じた 雇 用 体 系 へ 移 行 すべきだと 考 える 一 方 で 就 労 が 困 難 な 後 期 高 齢 者 や 低 貯 蓄 低 収 入 世 帯 においては 年 金 を 重 点 的 に 給 付 す るような 制 度 のあり 方 が 検 討 できるだろう ただし 現 役 世 代 の 持 家 比 率 が 低 下 しており 将 来 の 低 貯 蓄 低 収 入 世 帯 は 今 後 増 えることが 予 想 される そのため 長 期 的 にはこうした 低 貯 蓄 低 収 入 世 帯 を 減 らすための 社 会 政 策 例 えば 貧 困 世 帯 への 就 学 前 教 育 の 充 実 は 有 効 な 政 策 となりうると 考 える 2. 存 在 感 増 す 高 齢 者 世 帯 の 消 費 超 高 齢 社 会 にある 日 本 では 総 人 口 における 高 齢 者 の 割 合 が 増 加 するのに 伴 い 消 費 市 場 に おいても 高 齢 者 の 存 在 感 が 増 している 経 済 産 業 省 の 産 業 活 動 分 析 ( 平 成 24 年 1~3 月 期 ) 高 齢 者 世 帯 の 消 費 について に 倣 い 国 民 経 済 計 算 の 家 計 最 終 消 費 支 出 額 ( 除 く 持 ち 家 の 帰 属 家 賃 )を 当 該 年 の 家 計 調 査 の 年 齢 階 級 別 消 費 支 出 規 模 ( 一 世 帯 当 たりの 消 費 支 出 額 世 帯 数 分 布 )の 比 率 で 按 分 して 推 計 すると 2014 年 の 世 帯 主 60 歳 以 上 の 高 齢 者 世 帯 の 年 間 最 終 消 費 支 出 額 が 115 兆 円 に 達 しており 家 計 最 終 消 費 支 出 額 の 48%を 占 めていることが 確 認 できる( 図 表 1) 高 齢 者 世 帯 数 は 今 後 も 増 加 が 見 込 まれており 国 内 消 費 全 体 に 及 ぼす 高 齢 者 世 帯 の 影 響 は 一 層 大 きくなることが 予 想 される

4 / 58 図 表 1 年 齢 階 級 別 世 帯 の 最 終 消 費 支 出 額 の 動 向 ( 兆 円 ) 300 60% 250 200 150 100 50 50% 40% 30% 20% 10% 70 代 ~ 60 代 50 代 40 代 30 代 20 代 60 代 と70 代 世 帯 の 割 合 ( 右 軸 ) 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 ( 年 ) 0% ( 出 所 ) 内 閣 府 国 民 経 済 計 算 総 務 省 統 計 局 家 計 調 査 家 計 収 支 編 総 世 帯 より 大 和 総 研 作 成 図 表 2 年 齢 階 級 別 世 帯 類 型 の 内 訳 高 齢 者 ( 注 2) 後 期 高 齢 者 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 0.8 2.0 21.8 24.5 10.2 2.0 40.5 41.0 0.5 0.5 0.6 15.1 12.5 11.9 12.5 10.0 8.7 50.2 55.3 54.0 0.7 11.6 9.2 49.1 1.4 1.1 2.1 0.7 0.9 13.7 12.9 15.5 11.6 12.5 13.5 22.3 32.5 40.2 41.0 41.8 33.9 27.5 22.3 17.4 3.9 18.2 36.0 12.5 8.0 20.1 26.2 8.0 21.7 16.8 11.4 3.5 親 戚 等 を 含 むその 他 シンク ルファサ ー/シンク ルマサ ー 夫 婦 と 親 三 世 代 世 帯 社 会 施 設 入 居 者 等 単 独 世 帯 夫 婦 のみ 夫 婦 と 子 ども ( 注 1) 数 字 は 年 齢 階 級 別 に 占 める 各 世 帯 類 型 の 割 合 ( 注 2) 通 常 高 齢 者 とは65 歳 以 上 人 口 を 指 すが ここでは 定 年 退 職 後 に 注 目 するため 60 歳 以 上 を 高 齢 者 と している ( 注 3) 社 会 施 設 入 居 者 等 には 病 院 療 養 所 の 入 院 者 も 含 まれる ( 注 4) 親 戚 等 含 むその 他 は 夫 婦 の 兄 弟 姉 妹 と 同 居 したり 叔 父 叔 母 と 同 居 する 例 などを 含 む ( 出 所 ) 総 務 省 2010 年 国 勢 調 査 より 大 和 総 研 作 成

5 / 58 60 歳 以 上 の 高 齢 者 世 帯 は 既 に 全 世 帯 の 約 3 割 を 占 めているが その 姿 は 多 様 化 している( 総 務 省 2010 年 国 勢 調 査 ) 図 表 2が 示 すように 60 歳 以 降 は 子 どもの 独 立 に 伴 い 夫 婦 と 子 ど も 世 帯 が 減 少 し 夫 婦 のみ 世 帯 が 増 加 する 後 期 高 齢 者 になる 75 歳 以 降 は 夫 婦 のみ 世 帯 が 減 少 し 単 独 世 帯 や 三 世 代 世 帯 の 割 合 が 増 え さらに 85 歳 以 上 になると 社 会 施 設 入 居 者 等 ( 病 院 療 養 所 などを 含 む) 世 帯 の 増 加 が 目 立 つ このような 世 帯 類 型 の 変 化 に 伴 う 消 費 パターンの 変 化 や 世 帯 における 有 業 者 数 の 変 化 また 健 康 度 合 いによる 働 き 方 の 変 化 に 加 え 世 代 特 有 の 消 費 パターンなどが 高 齢 者 の 消 費 行 動 に 多 様 性 をもたらしている 可 能 性 は 十 分 考 えられる しか し データ 上 の 制 約 もあり 現 時 点 では 高 齢 者 の 消 費 行 動 の 全 貌 を 正 確 に 把 握 することは 難 し い そこで3 章 から4 章 では 現 役 を 引 退 して 主 な 収 入 が 公 的 年 金 となる 高 齢 無 職 世 帯 を 中 心 に 今 後 予 定 されている 年 金 支 給 開 始 年 齢 の 引 き 上 げや 実 質 的 な 年 金 支 給 額 の 引 き 下 げが 高 齢 者 世 帯 の 消 費 へどのように 影 響 するかについて 取 得 可 能 な 二 人 以 上 世 帯 のデータを 用 いて 検 証 したい 現 時 点 において 多 くの 企 業 が 定 年 年 齢 として 設 定 している 60 歳 以 降 の 世 帯 ( 世 帯 主 年 齢 )を 高 齢 者 世 帯 として 捉 え 可 能 な 限 り 60 代 無 職 世 帯 と 70 代 以 上 の 無 職 世 帯 とに 分 けて 分 析 を 行 う 3. 収 入 減 は 消 費 を 抑 制 させるか (1) 勤 労 世 帯 との 比 較 2015 年 4 月 分 からの 公 的 年 金 額 は 物 価 や 賃 金 の 伸 びを 受 けて 前 年 度 比 0.9% 増 となった 額 面 上 の 受 け 取 りは 増 えるが 特 例 水 準 の 段 階 的 な 解 消 やマクロ 経 済 スライド 1 による 調 整 が 実 施 されたため 物 価 や 賃 金 の 上 昇 率 よりは 年 金 の 伸 び 率 が 抑 制 され 実 質 的 な 受 給 額 は 減 少 し た こうしたマクロ 経 済 スライドの 発 動 は 年 金 財 政 の 安 定 化 に 必 要 な 手 段 と 考 えられるが 一 方 で 年 金 生 活 者 の 消 費 意 欲 の 低 下 を 招 く 懸 念 が 指 摘 されている そこで デフレ 脱 却 を 掲 げる 現 政 権 ではデフレ 下 でのマクロ 経 済 スライドの 適 用 を 見 送 り その 分 については 物 価 上 昇 時 に まとめて 実 施 することを 検 討 するなど 慎 重 な 姿 勢 だが 年 金 受 給 者 の 収 入 ( 主 に 公 的 年 金 の 平 均 受 給 額 )と 消 費 の 関 係 を 確 認 すると 収 入 が 減 額 しつつも 消 費 が 衰 えていない 様 子 が 見 られ る 図 表 3が 示 すように 年 金 受 給 者 の 夫 婦 二 人 当 たりの 平 均 年 金 受 給 額 ( 名 目 )は 2000 年 度 以 降 一 貫 して 減 額 している 物 価 水 準 (CPI 総 合 )は 2000 年 度 比 マイナス2% 程 度 で 停 滞 す る 中 2013 年 度 の 老 齢 年 金 を 受 給 している 夫 婦 二 人 の 平 均 年 金 受 給 月 額 は 2000 年 度 比 11% 減 と 同 12% 減 である 現 役 世 代 の 名 目 賃 金 ( 民 間 平 均 給 与 )と 変 わらない 水 準 にまで 落 ち 込 んで いる 1 超 少 子 高 齢 社 会 の 下 で 年 金 保 険 料 を 負 担 する 現 役 世 代 に 過 度 な 負 担 が 生 じないように 現 役 世 代 の 減 少 と 高 齢 世 代 の 平 均 余 命 の 延 びという 人 口 動 態 の 変 化 を 考 慮 して 年 金 の 給 付 水 準 の 伸 び 率 を 一 定 程 度 自 動 的 に 抑 制 する 仕 組 み

6 / 58 図 表 3 平 均 年 金 受 給 額 物 価 賃 金 の 推 移 (2000 年 度 =100) 105 100 95 90 85 夫 婦 二 人 世 帯 平 均 年 金 受 給 額 物 価 (CPI 総 合 ) 名 目 賃 金 80 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 ( 年 度 ) ( 注 ) 夫 婦 二 人 世 帯 の 平 均 年 金 受 給 額 は 夫 ( 厚 生 年 金 平 均 受 給 額 )に 妻 ( 国 民 年 金 平 均 受 給 額 )を 加 えた ( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 年 金 局 厚 生 年 金 保 険 国 民 年 金 事 業 の 概 況 総 務 省 統 計 局 消 費 者 物 価 指 数 総 合 ( 全 国 ) 国 税 庁 民 間 給 与 実 態 統 計 調 査 結 果 より 大 和 総 研 作 成 実 支 出 2 を 主 に 勤 め 先 収 入 によって 賄 っている 勤 労 世 帯 では このような 賃 金 の 伸 び 悩 みに 合 わせ 支 出 を 抑 制 することで 生 計 を 維 持 している( 図 表 4) つまり 賃 金 の 変 動 に 生 活 水 準 を 対 応 させてきたのだと 言 えよう 二 人 以 上 の 勤 労 世 帯 の 実 収 入 3 は 1990 年 代 後 半 にピークをつ けて 停 滞 しているが それに 合 わせる 形 で 実 支 出 が 抑 制 されており 一 定 の 黒 字 ( 実 収 入 - 実 支 出 )が 維 持 されている 図 表 4 勤 労 者 世 帯 世 帯 一 人 当 たり 1 ヵ 月 間 の 実 収 入 と 実 支 出 の 推 移 ( 万 円 ) 35 30 ( 万 円 ) 8 7 25 20 15 10 1989 年 消 費 税 率 3% 1997 年 消 費 税 率 5% 2014 年 消 費 税 率 8% 5 1 実 収 入 実 支 出 実 収 入 - 実 支 出 ( 右 軸 ) 0 0 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 ( 年 平 均 ) ( 注 1) 民 間 最 終 消 費 デフレーターによる 実 質 金 額 2005 年 価 格 ( 注 2) 世 帯 当 たり 実 収 入 と 実 支 出 を 世 帯 人 員 の 平 方 根 で 除 した ( 注 3) 世 帯 主 の 年 齢 は 43.4 歳 ~48.0 歳 ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 家 計 調 査 ( 家 計 収 支 編 ) 時 系 列 データ( 二 人 以 上 の 世 帯 ) より 大 和 総 研 作 成 6 5 4 3 2 2 日 常 の 生 活 を 営 むに 当 たり 必 要 な 商 品 やサービスを 購 入 して 実 際 に 支 払 った 金 額 である 消 費 支 出 と 税 金 や 社 会 保 険 料 などの 非 消 費 支 出 を 合 計 した 支 出 3 いわゆる 税 込 み 収 入 であり 勤 め 先 収 入 公 的 年 金 給 付 等 の 社 会 保 障 給 付 以 外 にも 家 賃 収 入 など 世 帯 員 全 員 の 現 金 収 入 を 合 計 したもの

7 / 58 一 方 実 支 出 を 主 に 公 的 年 金 を 中 心 とした 社 会 保 障 給 付 で 賄 っている 高 齢 無 職 世 帯 では 収 入 以 上 の 支 出 を 継 続 させている( 図 表 5と 図 表 6) 社 会 保 障 の 給 付 額 が 増 えていた 90 年 代 ま では 赤 字 ( 実 収 入 - 実 支 出 )の 縮 小 が 見 られたが それ 以 降 は 年 金 の 減 額 など 実 収 入 の 伸 び 悩 みにもかかわらず 実 支 出 が 徐 々に 増 えており 赤 字 額 が 拡 大 している つまり 2000 年 以 降 の 約 15 年 間 は 収 入 の 減 少 に 合 わせた 生 活 水 準 の 変 更 が 図 られてこなかったとも 言 えよう 図 表 5 60 代 無 職 世 帯 世 帯 一 人 当 たり 1 ヵ 月 間 の 実 収 入 と 実 支 出 の 推 移 ( 注 1) 民 間 最 終 消 費 デフレーターによる 実 質 金 額 2005 年 価 格 ( 注 2) 世 帯 当 たり 実 収 入 と 実 支 出 を 世 帯 人 員 の 平 方 根 で 除 した ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 家 計 調 査 ( 家 計 収 支 編 ) 無 職 世 帯 に 関 する 結 果 ( 二 人 以 上 の 世 帯 ) より 大 和 総 研 作 成 図 表 6 70 代 以 上 無 職 世 帯 世 帯 一 人 当 たり 1 ヵ 月 間 の 実 収 入 と 実 支 出 の 推 移 ( 注 1) 民 間 最 終 消 費 デフレーターによる 実 質 金 額 2005 年 価 格 ( 注 2) 世 帯 当 たり 実 収 入 と 実 支 出 を 世 帯 人 員 の 平 方 根 で 除 した ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 家 計 調 査 ( 家 計 収 支 編 ) 無 職 世 帯 に 関 する 結 果 ( 二 人 以 上 の 世 帯 ) より 大 和 総 研 作 成

8 / 58 赤 字 幅 については 同 じ 無 職 世 帯 であっても 60 代 の 方 が 大 きく 70 代 以 上 になると 赤 字 額 は 半 分 程 度 に 縮 小 しているものの 2010 年 前 後 を 境 に 70 代 以 上 の 無 職 世 帯 の 赤 字 幅 の 拡 大 が 加 速 し ている この 期 間 に 70 代 以 上 となった 世 帯 とは 2000 年 前 後 に 60 代 を 迎 えた 世 帯 であるが 60 代 無 職 世 帯 の 赤 字 幅 の 拡 大 がちょうどその 頃 から 始 まっており 世 代 的 に 消 費 意 欲 が 旺 盛 な 傾 向 があるとも 捉 えられよう 2014 年 時 点 で 70 代 以 上 の 高 齢 者 は 戦 前 生 まれであり 物 心 つく 頃 を 戦 後 の 復 興 期 に 過 ごし 壮 年 期 には 高 度 経 済 成 長 を 支 えた 世 代 である 豊 かな 消 費 が 一 般 家 庭 でも 可 能 になったことを 経 験 している 世 代 であるため 消 費 に 対 して 積 極 的 な 世 代 とも 言 えるのかもしれない そうした 世 代 が 高 齢 期 を 迎 え 国 内 消 費 を 下 支 えしている (2) 年 金 給 付 は 不 十 分 なのか 1 高 齢 無 職 世 帯 の 消 費 の 中 身 しかしながら もし 高 齢 無 職 世 帯 において 実 収 入 に 合 わせた 生 活 水 準 の 調 整 が 行 われなかっ た 理 由 が 生 活 を 支 える 基 礎 的 支 出 4 の 割 合 が 大 きいことにあり また そうした 消 費 が 公 的 年 金 の 受 給 額 の 減 少 によってほとんどカバーできなくなっているのだとすれば 問 題 と 言 えるかも しれない そこで 年 齢 階 級 別 の 消 費 について 中 身 を 確 認 したい 図 表 7では 二 人 以 上 世 帯 の 消 費 支 出 を 世 帯 人 員 一 人 当 たりに 換 算 した 消 費 支 出 総 額 につい て 年 齢 階 級 別 に 比 較 しているが(2014 年 平 均 ) 無 職 世 帯 では 60 代 世 帯 も 70 代 以 上 の 世 帯 も さらに 高 齢 の 単 身 世 帯 についても 20 代 や 30 代 勤 労 世 帯 と 同 水 準 もしくはそれ 以 上 の 消 費 支 出 を 行 っている 特 に 60 代 無 職 世 帯 は 40 代 勤 労 世 帯 とほとんど 同 水 準 の 消 費 支 出 総 額 となっ ているが 40 代 勤 労 世 帯 において 全 体 の 約 1 割 を 占 めている 教 育 がほとんどない 分 保 健 医 療 (40 代 より 健 康 保 持 用 摂 取 品 5 が 増 える)や 食 料 ( 同 果 物 魚 介 類 等 が 増 える) そ の 他 の 消 費 支 出 6 ( 同 交 際 費 等 が 増 える)などに 多 く 費 やしている 4 家 計 調 査 では 支 出 弾 力 性 が 1.00 未 満 の 支 出 項 目 を 基 礎 的 支 出 ( 必 需 品 的 なもの)に 分 類 しており 食 料 家 賃 光 熱 費 保 健 医 療 サービスなどが 該 当 するとしている 5 サプリメント 剤 型 の 健 康 食 品 など 栄 養 成 分 の 補 給 や 健 康 増 進 のために 用 いる 食 品 のこと 6 交 際 費 や 民 間 の 医 療 保 険 料 等 が 含 まれる

9 / 58 図 表 7 年 齢 階 級 別 世 帯 一 人 当 たり 消 費 支 出 (1ヵ 月 間 )(2014 年 平 均 ) ( 万 円 ) 0 5 10 15 20 ~20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 無 職 60 代 無 職 70 代 ~ 単 身 無 職 65 歳 ~ 食 料 住 居 光 熱 水 道 家 具 家 事 用 品 被 服 及 び 履 物 保 健 医 療 交 通 通 信 教 育 教 養 娯 楽 その 他 の 消 費 支 出 ( 注 1) 世 帯 当 たり 消 費 支 出 を 世 帯 人 員 の 平 方 根 で 除 した ( 注 2) 無 職 世 帯 以 外 は 勤 労 世 帯 ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 2014 年 家 計 調 査 家 計 収 支 編 より 大 和 総 研 作 成 全 体 的 には 若 い 勤 労 世 帯 では 携 帯 電 話 の 通 信 費 を 中 心 とした 交 通 通 信 や 食 料 住 居 ( 主 に 賃 料 ) が 支 出 に 占 める 割 合 が 大 きく 無 職 世 帯 を 含 む 高 齢 者 世 帯 になるほど 食 料 の 他 に その 他 の 消 費 支 出 や 教 養 娯 楽 7 などの 割 合 が 増 える この 統 計 からは 高 齢 無 職 世 帯 の 消 費 支 出 総 額 が 勤 労 世 帯 と 比 較 しても 低 い 水 準 にあると は 言 えず また 中 身 についても 基 礎 的 支 出 項 目 だけでなく それ 以 外 の 項 目 に 対 しても 特 に 切 り 詰 めているようにはみえない 公 的 年 金 を 中 心 とした 実 収 入 の 減 額 が 高 齢 無 職 世 帯 の 生 活 水 準 の 維 持 を 困 難 としているわけではない 様 子 がうかがえるだろう 2 2000 年 との 比 較 図 表 8は 入 手 可 能 なデータのうち 最 も 古 い 2000 年 から 2014 年 にかけて 消 費 支 出 項 目 ご との 支 出 額 の 変 化 ( 実 質 )と 消 費 支 出 総 額 と 可 処 分 所 得 の 変 化 さらに 可 処 分 所 得 に 対 する 消 費 支 出 総 額 の 比 率 の 変 化 について 年 齢 階 級 ごとに 比 較 したものである 7 パック 旅 行 を 中 心 とした 教 養 娯 楽 サービス 等 が 含 まれる

10 / 58 図 表 8 世 帯 一 人 当 たり 1 ヵ 月 間 の 消 費 支 出 の 変 化 (2000 年 平 均 2014 年 平 均 ) ( 万 円 ) 4 3 2 1 0 1 2 3 4 (%pt) 40 30 20 10 0 10 20 30 40 ( 注 1) 世 帯 当 たり 消 費 支 出 を 世 帯 人 員 の 平 方 根 で 除 した ( 注 2) 無 職 世 帯 以 外 は 勤 労 世 帯 ( 注 3)その 他 消 費 支 出 の 実 質 化 には 消 費 者 物 価 指 数 の 諸 雑 費 を 用 いた ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 2014 年 家 計 調 査 家 計 収 支 編 消 費 者 物 価 指 数 より 大 和 総 研 作 成 食 料 住 居 光 熱 水 道 家 具 家 事 用 品 被 服 及 び 履 物 保 健 医 療 交 通 通 信 教 育 教 養 娯 楽 その 他 の 消 費 支 出 支 出 総 額 / 可 処 分 所 得 の 変 化 ( 右 軸 ) 消 費 支 出 総 額 の 変 化 (% 右 軸 ) 可 処 分 所 得 の 変 化 (% 右 軸 ) 期 間 中 いずれの 年 齢 階 級 とも その 他 の 消 費 支 出 や 被 服 及 び 履 物 の 支 出 を 抑 制 する 一 方 交 通 通 信 や 家 具 家 事 用 品 の 支 出 を 増 やしているが 基 礎 的 支 出 項 目 に 含 まれ る 食 料 や 保 健 医 療 の 変 化 の 仕 方 は 年 齢 階 級 間 で 異 なっている 高 齢 になるほど 保 健 医 療 の 支 出 が 増 加 するのはやむを 得 ないと 言 えるが 食 料 の 支 出 については 50 代 以 下 の 勤 労 世 帯 では 大 幅 に 抑 制 しているにもかかわらず 高 齢 無 職 世 帯 では 微 減 にとどまる また 可 処 分 所 得 に 対 する 消 費 支 出 総 額 の 比 率 の 変 化 だが 50 代 以 下 の 勤 労 世 帯 では 2014 年 も 2000 年 の 水 準 をほぼ 維 持 しているのに 対 し 60 代 の 勤 労 世 帯 や 高 齢 無 職 世 帯 では 消 費 支 出 の 割 合 が 増 えている 約 15 年 間 で 可 処 分 所 得 が 25.2% 減 と 最 も 落 ち 込 んだ 60 代 無 職 世 帯 の 消 費 支 出 総 額 の 変 化 は 5.0% 減 とほとんど 変 化 させていないため 支 出 総 額 / 可 処 分 所 得 の 上 昇 が 目 立 つ (3) 高 齢 者 世 帯 の 消 費 はどう 変 化 するのか 以 上 のような 高 齢 者 世 帯 の 消 費 が 減 らない 理 由 にはどのようなものがあるのだろうか そ れを 考 えるには 消 費 は 大 きく 分 けて3つの 要 因 によって 決 まることを 確 認 する 必 要 がある まず 消 費 の 動 きは 所 得 や 資 産 の 状 況 (1 所 得 制 約 の 大 きさ)に 応 じて 変 化 すると 考 えられ 一 般 にマクロの 消 費 動 向 を 見 る 場 合 には 所 得 や 資 産 の 動 きを 注 視 しないといけない 一 方 様 々 な 世 帯 属 性 が 示 す 消 費 パターンの 特 性 (2 効 用 関 数 の 形 状 )やそれぞれの 財 サービス 価 格 の 相 対 的 な 変 化 (3 所 得 制 約 線 の 傾 き)によっても 消 費 は 影 響 を 受 ける これらは 個 別 の 消 費 項 目 といったミクロの 消 費 動 向 を 見 る 場 合 に 重 要 な 要 因 となる

11 / 58 高 齢 者 世 帯 の 消 費 水 準 が 維 持 される 理 由 として 3 章 (4)では 資 産 の 取 り 崩 し( 上 で 述 べ た1)があることを 主 な 原 因 として 指 摘 していくが 3 章 (3)では 相 対 的 な 価 格 変 化 (3) を 取 り 除 いた 上 で 2の 可 能 性 特 に 高 齢 という 世 帯 属 性 に 焦 点 を 当 てた 消 費 の 変 動 要 因 を 探 る 世 帯 属 性 に 注 目 する 理 由 は 世 帯 属 性 と 消 費 が 一 定 の 関 係 に 保 たれやすい 性 質 があり そ れを 利 用 すれば 将 来 の 消 費 行 動 を 予 測 しやすくなるからだ 例 えば 消 費 には 年 齢 に 応 じたパターン( 年 齢 効 果 )がある 若 年 世 帯 では 住 居 費 ( 家 賃 賃 料 )の 占 める 割 合 は 大 きいものの 子 育 て 世 帯 になると 次 第 に 教 育 費 が 増 えていき 壮 年 世 帯 では 教 育 費 を 中 心 に 消 費 水 準 が 人 生 の 中 でピークを 迎 える といった 具 合 である また 消 費 は 技 術 革 新 などの 時 代 の 変 化 によっても 影 響 を 受 ける( 時 代 効 果 ) 近 年 あらゆる 世 帯 で 通 信 費 が 増 えているのは 日 常 生 活 においてスマートフォンをはじめとする 携 帯 電 話 の 利 用 頻 度 の 高 まりや 機 能 向 上 による 通 信 費 の 上 昇 がある そして 消 費 に 及 ぼす 影 響 としては 生 まれた 世 代 (コーホート)が 固 有 に 持 つ 特 徴 ( 世 代 効 果 )も 重 要 だ 戦 後 生 まれの 団 塊 世 代 の 高 齢 者 は 若 年 期 に 成 熟 しつつある 多 くの 文 化 に 触 れているので 戦 前 生 まれの 世 代 と 比 べてレジャーや 耐 久 消 費 財 といった 趣 味 への 支 出 が 多 い 可 能 性 がある こうした 世 代 特 有 の 消 費 パターンをつ かむことで 将 来 の 消 費 活 動 をある 程 度 予 想 できる 場 合 が 多 い そこで パターンのつかみやすい 年 齢 効 果 と 世 代 効 果 に 注 目 し 溝 端 [2012]では 今 後 の 高 齢 者 世 帯 の 消 費 について 次 のような 特 徴 を 示 していくものと 予 想 している 8 なお 3 章 (3)の データは 単 身 農 林 漁 業 世 帯 を 含 んだより 網 羅 的 な 総 世 帯 であることに 留 意 されたい 年 齢 効 果 から 当 面 予 想 される 動 きを 見 てみると( 図 表 9) 超 高 齢 社 会 では 教 育 費 交 通 費 住 居 ( 賃 料 ) そして 被 服 及 び 履 物 ( 特 に 洋 服 や 履 物 類 ) といった 消 費 が 減 少 しやすい 一 方 超 高 齢 社 会 で 増 えやすい 消 費 には 保 健 医 療 以 外 にも その 他 の 消 費 支 出 ( 交 際 費 や 民 間 の 医 療 保 険 料 等 ) 光 熱 水 道 住 居 ( 設 備 修 繕 維 持 ) 家 具 家 事 用 品 ( 家 庭 用 耐 久 財 家 事 用 消 耗 品 等 ) 教 養 娯 楽 といった 項 目 が 挙 げられる さらに 世 代 効 果 も 踏 まえて 中 期 的 な 消 費 動 向 を 予 想 すると 食 料 のうち 生 鮮 食 品 (いわゆ る 内 食 ) や 外 食 は 今 後 の 減 少 が 予 想 される 一 方 家 事 用 消 耗 品 調 理 食 品 (いわゆる 中 食 ) 電 気 代 通 信 費 油 脂 調 味 料 教 養 娯 楽 サービス( 特 にパック 旅 行 ) 等 の 消 費 は 世 代 効 果 から 押 し 上 げられる 可 能 性 が 高 い( 図 表 10 9 ) こうした2つの 効 果 より 超 高 齢 社 会 における 今 後 の 消 費 の 特 徴 として 在 宅 余 暇 メ ンテナンス 安 心 安 全 がキーワードになるものと 考 えられる 8 分 析 の 詳 細 については 溝 端 幹 雄 [2012] 超 高 齢 社 会 で 変 容 していく 消 費 :キーワードは 在 宅 余 暇 メ ンテナンス 安 心 安 全 大 和 総 研 経 済 社 会 構 造 分 析 レポート を 参 照 されたい 9 例 えば 左 側 の 一 番 上 のグラフは 1931 年 ~35 年 生 まれ 世 代 の 人 々の 野 菜 海 藻 の 月 平 均 一 人 当 たり 消 費 動 向 を 40 歳 代 後 半 から 70 歳 代 まで 追 跡 調 査 したものとなっている これを 見 ると どの 世 代 でも 年 齢 にかかわ りなく 一 定 の 消 費 水 準 を 維 持 しているが その 水 準 は 若 い 世 代 ほど 低 下 していることが 分 かる 一 方 右 側 の グラフではどの 世 代 でも 年 齢 と 共 に 消 費 水 準 が 上 昇 しており しかも 若 い 世 代 ほど 同 じ 年 齢 階 級 における 消 費 水 準 が 高 くなっている よって 日 本 では 超 少 子 高 齢 社 会 が 進 行 すると 野 菜 海 藻 の 消 費 市 場 は 縮 小 するが 家 事 用 消 耗 品 の 消 費 市 場 は 拡 大 する 可 能 性 が 高 いことが 分 かる

12 / 58 図 表 9 世 帯 主 年 齢 階 級 別 家 計 消 費 項 目 の 内 訳 (2014 年 ) ( 円 / 月 ) 50,000 45,000 40,000 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 食 料 住 居 29 歳 以 下 30-39 歳 40-49 歳 50-59 歳 60-69 歳 70 歳 以 上 光 水 熱 道 家 家 事 具 用 品 被 履 服 物 及 び 保 健 医 療 交 通 通 信 教 育 教 養 娯 楽 消 そ 費 の 支 他 出 の ( 注 ) 単 身 農 林 漁 業 世 帯 を 含 む 総 世 帯 世 帯 当 たり 消 費 を 世 帯 人 員 の 平 方 根 で 除 した ( 出 所 ) 総 務 省 家 計 調 査 年 報 ( 平 成 26 年 ) より 大 和 総 研 作 成 図 表 10 コーホート 別 に 見 た 消 費 動 向 ( 左 : 野 菜 海 藻 右 : 家 事 用 消 耗 品 ) 8,000 ( 円 / 月 ) 1,600 ( 円 / 月 ) 7,000 1,400 6,000 1,200 5,000 1,000 4,000 800 3,000 600 2,000 400 1,000 0 ( 年 齢 階 級 ) -24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-1931-35 年 生 1936-40 年 生 1941-45 年 生 1946-50 年 生 1951-55 年 生 1956-60 年 生 1961-65 年 生 1966-70 年 生 1971-75 年 生 1976-80 年 生 1981-85 年 生 1986-90 年 生 200 0 ( 年 齢 階 級 ) -24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-1931-35 年 生 1936-40 年 生 1941-45 年 生 1946-50 年 生 1951-55 年 生 1956-60 年 生 1961-65 年 生 1966-70 年 生 1971-75 年 生 1976-80 年 生 1981-85 年 生 1986-90 年 生 ( 注 ) 各 消 費 額 はCPIで 実 質 化 等 価 消 費 ( 世 帯 人 員 の 平 方 根 で 除 した 消 費 額 )で 比 較 ( 出 所 ) 総 務 省 家 計 調 査 年 報 消 費 者 物 価 指 数 より 大 和 総 研 作 成 ( 注 ) 各 消 費 額 はCPIで 実 質 化 等 価 消 費 ( 世 帯 人 員 の 平 方 根 で 除 した 消 費 額 )で 比 較 ( 出 所 ) 総 務 省 家 計 調 査 年 報 消 費 者 物 価 指 数 より 大 和 総 研 作 成 (4) 高 齢 無 職 世 帯 が 生 活 水 準 を 維 持 している 手 段 個 別 の 消 費 項 目 では 世 帯 属 性 の 要 因 を 無 視 できないが マクロ 的 には 勤 労 世 帯 の 場 合 は 可 処 分 所 得 の 変 化 が 重 要 である 一 方 高 齢 無 職 世 帯 については 消 費 を 支 えている 大 きな 要 因 の 一 つとして 貯 蓄 の 取 り 崩 しがあるようだ 特 に 無 職 60 代 世 帯 では 実 支 出 全 体 の 約 4 割 を 預 貯 金 引 出 等 によって 補 っており 影 響 が 大 きい( 図 表 11) 無 職 70 代 以 上 の 世 帯 でも 全 体 の 約 2 割 を 預 貯 金 引 出 等 から 補 っているが 2000 年 に 60 代 を 迎 え 始 めた 頃 の 無 職 世 帯 (2014 年 の 無 職 70 代 以 上 の 世 帯 )についても 預 貯 金 引 出 等 の 割 合 が 全 体 の 約 2 割 であるので この 世 代 の 貯 蓄 取 り 崩 しのパターンは 年 齢 が 上 がってもあまり 変 化 してこなかったのかもしれない

13 / 58 図 表 11 年 齢 階 級 別 世 帯 一 人 当 たり 実 収 入 + 預 貯 金 引 出 等 (1ヵ 月 間 ) ~20 代 ( 万 円 ) 0 5 10 15 20 25 30 35 30 代 40 代 50 代 60 代 無 職 60 代 無 職 70 代 ~ 単 身 無 職 65 歳 ~ 勤 め 先 収 入 その 他 の 経 常 収 入 財 産 収 入 社 会 保 障 給 付 仕 送 り 金 特 別 収 入 ( 受 贈 金 等 ) 預 貯 金 引 出 等 ( 注 1) 世 帯 当 たり 実 収 入 と 預 貯 金 引 出 等 を 世 帯 人 員 の 平 方 根 で 除 した ( 注 2) 無 職 世 帯 以 外 は 勤 労 世 帯 ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 2014 年 家 計 調 査 家 計 収 支 編 より 大 和 総 研 作 成 住 宅 土 地 の 負 債 がほとんどなくなる 60 歳 以 上 無 職 世 帯 の 金 融 資 産 は 世 帯 人 員 一 人 当 たり 1,400 万 円 前 後 と 60 歳 未 満 勤 労 世 帯 の3 倍 近 い 規 模 であり こうした 貯 蓄 からの 取 り 崩 しは 高 齢 者 の 消 費 を 大 いに 支 えていると 言 えよう また 高 齢 無 職 世 帯 の 金 融 資 産 は 足 元 の 株 高 の 影 響 を 受 けて 一 層 拡 大 している 可 能 性 が 高 い 図 表 12 が 示 すように 無 職 世 帯 も 勤 労 世 帯 も 全 体 の6 割 以 上 を 預 貯 金 が 占 めているもの の 有 価 証 券 の 占 める 割 合 が 60 歳 未 満 勤 労 世 帯 では 10% 前 後 にとどまるのに 対 し 60 歳 以 上 の 無 職 世 帯 では 15~20% 程 度 と 比 較 的 高 い 水 準 にあるからである 図 表 12 金 融 資 産 の 内 訳 と 有 価 証 券 の 割 合 ( 左 :60 歳 以 上 無 職 世 帯 右 :60 歳 未 満 勤 労 世 帯 ) ( 万 円 ) ( 万 円 ) 1,800 25% 1,800 25% 1,600 1,400 20% 1,600 1,400 有 価 証 券 生 命 保 険 など 定 期 性 預 貯 金 20% 1,200 1,000 15% 1,200 1,000 通 貨 性 預 貯 金 有 価 証 券 の 割 合 ( 右 軸 ) 15% 800 600 10% 800 600 10% 400 5% 400 5% 200 200 0 0% 0 0% ( 注 1) 世 帯 当 たり 金 融 資 産 現 在 高 を 世 帯 人 員 の 平 方 根 で 除 した ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 2014 年 家 計 調 査 貯 蓄 負 債 編 二 人 以 上 の 世 帯 より 大 和 総 研 作 成

14 / 58 株 高 を 受 けて 高 齢 無 職 世 帯 の 金 融 資 産 が 拡 大 している 様 子 を 示 したのが 図 表 13 だが 2002 年 から 2014 年 にかけて 全 体 的 に 高 貯 蓄 世 帯 と 低 貯 蓄 世 帯 の 割 合 が 増 えている 中 高 貯 蓄 世 帯 で は 60 代 以 上 の 世 帯 が 増 加 している もちろん 高 齢 者 世 帯 数 そのものが 増 加 していることなども 影 響 しているだろうが 金 融 資 産 4,000 万 円 以 上 の 60 代 以 上 の 世 帯 は 同 期 間 中 全 世 帯 に 占 める 割 合 を 約 2.5%pt 増 加 させている 図 表 13 金 融 資 産 現 在 高 階 級 別 各 年 齢 階 級 世 帯 が 占 める 割 合 の 変 化 (2002 年 2014 年 ) (%pt) 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 70 代 ~ 60 代 50 代 40 代 30 代 20 代 各 金 融 資 産 現 在 高 の 変 化 の 割 合 ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 家 計 調 査 貯 蓄 負 債 編 二 人 以 上 の 世 帯 より 大 和 総 研 作 成 しかしその 一 方 で 金 融 資 産 100 万 円 未 満 の 低 貯 蓄 世 帯 については 30 代 ~50 代 世 帯 の 割 合 が 1.5%pt 増 加 しているだけでなく 60 代 以 上 世 帯 の 割 合 も 1.5%pt 増 えている つまり 同 じ 高 齢 者 世 帯 であっても 金 融 資 産 を 拡 大 させた 高 貯 蓄 世 帯 と 金 融 資 産 をほとんど 保 有 しない 低 貯 蓄 世 帯 との 二 極 化 が 進 んでいる 様 子 である (5) 貯 蓄 増 や 収 入 増 で 増 加 する 消 費 支 出 項 目 とは 図 表 14 は 高 齢 無 職 世 帯 の 保 有 金 融 資 産 の 状 況 や 年 金 収 入 による 消 費 への 影 響 を 見 たもので ある

15 / 58 図 表 14 高 齢 無 職 世 帯 の 消 費 支 出 の 差 ( 上 : 貯 蓄 現 在 高 階 級 別 下 : 公 的 年 金 恩 給 受 給 額 階 級 別 ) (150 万 円 ~300 万 円 =100) 200 食 料 光 熱 水 道 180 被 服 及 び 履 物 交 通 通 信 160 その 他 の 消 費 支 出 140 120 100 80 60 40 住 居 家 具 家 事 用 品 保 健 医 療 教 養 娯 楽 (80 万 円 未 満 =100) 240 食 料 220 光 熱 水 道 被 服 及 び 履 物 200 交 通 通 信 180 その 他 の 消 費 支 出 160 140 120 100 80 60 住 居 家 具 家 事 用 品 保 健 医 療 教 養 娯 楽 ( 注 1) 高 齢 無 職 世 帯 の 世 帯 主 平 均 年 齢 は70.8 歳 ( 注 2) 教 育 については 金 額 自 体 が 少 ないため 除 外 した ( 注 3) 貯 蓄 現 在 高 階 級 別 のグラフ( 上 )では 年 金 給 付 等 の 可 処 分 所 得 の 影 響 を 除 去 するため 各 貯 蓄 現 在 高 階 級 の 消 費 支 出 (150~300 万 円 対 比 )を 各 階 級 における 可 処 分 所 得 (150~300 万 円 対 比 )で 基 準 化 した ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 より 大 和 総 研 作 成 図 表 14( 上 )の 貯 蓄 現 在 高 150 万 ~300 万 円 世 帯 を 基 準 としたとき 基 礎 的 支 出 項 目 に 含 ま れる 食 料 や 光 熱 水 道 住 居 は 貯 蓄 の 差 によって 大 きな 消 費 の 差 とはなっていない が 貯 蓄 が 増 加 するほど 可 処 分 所 得 の 影 響 を 除 いても 教 養 娯 楽 被 服 及 び 履 物 その 他 の 消 費 支 出 など 基 礎 的 支 出 項 目 以 外 の 消 費 支 出 が 増 えている 住 居 については 貯 蓄 の 多 い 世 帯 ほど 設 備 修 繕 維 持 に 関 する 消 費 が 増 加 するが 貯 蓄 の 少 ない 世 帯 では 家 賃 地 代 の 占 める 割 合 が 大 きく 設 備 修 繕 維 持 と 比 較 して 義 務 的 な 支 出 だと 言 えよう

16 / 58 また 図 表 14( 下 )の 公 的 年 金 恩 給 受 給 80 万 円 未 満 を 基 準 としたケースでも 基 礎 的 支 出 項 目 に 含 まれる 住 居 や 光 熱 水 道 食 料 などは 高 所 得 世 帯 と 比 較 しても 大 きな 差 とな っていないが その 他 の 消 費 支 出 や 被 服 及 び 履 物 教 養 娯 楽 など 選 択 的 な 支 出 項 目 は 差 が 拡 大 している 保 健 医 療 については 公 的 年 金 恩 給 受 給 階 級 で 見 た 場 合 差 が 拡 大 す る 項 目 になっているが 診 療 代 以 外 の 人 間 ドック 料 や マッサージ 料 健 康 保 持 用 摂 取 品 (サプリメント) など より 選 択 的 支 出 については 受 給 階 級 が 上 がるほど 増 加 している 可 能 性 がある (6) 選 択 的 支 出 については 年 金 給 付 だけでは 不 十 分 これらの 統 計 から 高 齢 無 職 世 帯 の 消 費 動 向 は 金 融 資 産 の 保 有 状 況 や 公 的 年 金 等 による 可 処 分 所 得 から 影 響 を 受 けており ある 意 味 当 然 ではあるが 貯 蓄 が 増 加 するほど また 年 金 給 付 が 増 えるほど 消 費 が 拡 大 する 傾 向 にある ただし そこで 増 加 が 目 立 つのは 選 択 的 支 出 であ り 食 料 や 住 居 光 熱 水 道 といった 基 礎 的 支 出 は 大 きく 変 化 していない 前 掲 図 表 7や 図 表 11 から 示 されるように 高 齢 者 の 生 活 を 支 える 基 礎 的 支 出 については 現 在 の 公 的 年 金 給 付 によってある 程 度 カバーされていると 言 え 低 貯 蓄 低 年 金 の 高 齢 無 職 世 帯 を 除 けば 今 後 予 定 されている 年 金 給 付 の 実 質 的 な 減 額 が 早 急 に 問 題 となることはないものと 思 われる その 一 方 で 選 択 的 支 出 については 貯 蓄 の 取 り 崩 しや 年 金 給 付 の 減 額 によって 減 少 し ていく 可 能 性 がある そのため 充 実 した 消 費 水 準 を 維 持 するには 高 齢 者 が 自 ら 公 的 年 金 以 外 の 収 入 源 を 確 保 していくという 姿 勢 が 必 要 になるだろう (7) 三 世 代 消 費 を 支 える 持 っている 高 齢 者 の 行 動 1 持 っている 高 齢 者 に 対 する 政 府 の 対 応 ~ アメとムチ 高 齢 者 の 中 でも 金 融 資 産 の 保 有 を 通 じて 二 極 化 が 進 んでいることを 指 摘 したが ここでは 金 融 資 産 を 持 っている 高 齢 者 について 考 えてみたい 高 齢 化 を 背 景 に 社 会 保 障 関 連 支 出 が 大 幅 に 増 加 していることに 対 応 するために 政 府 は 歳 入 を 増 やそうと 様 々な 対 策 を 実 施 しており 全 国 民 が 影 響 を 受 けた 2014 年 4 月 の 消 費 税 率 引 き 上 げもその 一 環 である 同 時 に 政 府 は 取 れるところから 取 るという 姿 勢 を 強 めており 2015 年 1 月 から 相 続 税 の 基 礎 控 除 は 縮 小 されその 最 高 税 率 は 従 来 の 50%から 55%に 引 き 上 げられ( 所 得 税 の 最 高 税 率 も 40%から 45%に) 相 続 税 を 負 担 しなければならない 層 は 少 なからず 増 えた また 7 月 からは 1 億 円 超 の 有 価 証 券 を 保 有 する 人 ( 対 象 は 高 齢 者 に 限 らない)が 海 外 移 住 する 際 に 株 式 の 含 み 益 などに 課 税 する 出 国 税 を 導 入 した 高 齢 者 向 けでは 2015 年 4 月 から 65 歳 以 上 が 払 う 介 護 保 険 料 が 多 くの 自 治 体 で 上 がり 8 月 からは 一 定 以 上 の 所 得 がある 高 齢 者 の 介 護 サービス 利 用 料 の 自 己 負 担 割 合 が1 割 から2 割 に 引

17 / 58 き 上 げられた 10 2 割 負 担 になる 対 象 者 は 65 歳 以 上 の 約 20%に 相 当 し 毎 年 の 収 入 によって1 割 負 担 か2 割 負 担 かに 分 かれる ただし 月 々の 負 担 上 限 が 決 まっているので それを 超 えた 分 については 払 い 戻 されることから 実 際 に2 割 負 担 になる 人 は 限 定 される また 特 別 養 護 老 人 ホームなどの 施 設 に 入 所 した 際 に 受 ける 補 助 の 条 件 が 厳 しくなり 負 担 が 増 えるケースが 出 てくるとみられる さらに 政 府 税 制 調 査 会 の 議 論 は 富 裕 な 高 齢 者 の 負 担 を 増 やす 方 向 だが 配 偶 者 控 除 などの 見 直 しを 含 めたものであり 時 間 のかかる 工 程 になりそうだ だが ムチばかりでは 富 裕 高 齢 者 も 海 外 に 出 て 行 ってしまいかねず 相 続 税 増 税 を 相 殺 す る 格 好 で 贈 与 税 の 非 課 税 措 置 の 拡 大 が 導 入 されている つまり 持 っている 高 齢 者 から 子 や 孫 への 所 得 移 転 を 促 す 仕 組 みである 2 拡 充 される 贈 与 の 非 課 税 措 置 政 府 に 左 右 されない 高 齢 者 の 自 主 的 な 対 応 として 三 世 代 消 費 が 挙 げられる 子 や 孫 のため の 支 出 ( 結 果 的 に 資 金 援 助 所 得 移 転 と 同 義 )であるために 祖 父 母 にあたる 高 齢 者 にはある 程 度 ゆとりがあることが 前 提 になろう 三 世 代 消 費 には 祖 父 母 が 直 接 支 払 うという 形 式 の 他 に 子 や 孫 を 資 金 面 でサポートする 間 接 的 な 消 費 行 動 が 考 えられる 後 述 するように 特 定 の 目 的 を 持 った 贈 与 の 場 合 一 定 の 期 間 内 に 使 われなければ 優 遇 措 置 はなくなる 仕 組 みであるために ( 目 的 外 に 使 った 部 分 についてはメリットを 受 けられない) 時 間 差 はあるものの 目 的 に 沿 っ た 実 際 の 支 出 につながるとみられる これまで 政 府 は 税 制 上 の 様 々な 優 遇 措 置 を 設 けて 子 や 孫 への 贈 与 という 形 の 所 得 移 転 を 促 してきた 具 体 的 には 2013 年 度 の 税 制 改 正 で 教 育 資 金 贈 与 の 非 課 税 措 置 が 創 設 され 2015 年 度 には 新 たに 結 婚 子 育 て 資 金 贈 与 の 非 課 税 措 置 や ジュニア NISA が 創 設 された 他 期 限 切 れとなる 住 宅 取 得 等 資 金 贈 与 の 非 課 税 措 置 の 延 長 拡 充 が 決 まるなど 大 幅 に 広 げられている 11 教 育 資 金 の 贈 与 は 30 歳 未 満 の 人 ( 受 贈 者 )が 直 系 尊 属 からの 最 大 1,500 万 円 の 贈 与 に 対 し て 非 課 税 になる( 導 入 当 初 は 2013 年 4 月 ~2015 年 末 までの 時 限 措 置 だったが 現 在 は 2019 年 3 月 末 までに 延 長 されている) ただし 受 贈 者 が 30 歳 に 達 した 段 階 で 教 育 目 的 に 拠 出 された 分 を 除 いて 残 額 があれば それは 贈 与 となり 贈 与 税 を 納 めなければならない 新 設 された 結 婚 子 育 て 資 金 の 贈 与 は 両 親 や 祖 父 母 の 資 産 を 早 期 に 移 転 することを 通 じて 子 や 孫 の 結 婚 出 産 育 児 を 後 押 しするため の 贈 与 に 対 し 1,000 万 円 を 上 限 に 非 課 税 枠 を 設 定 した ただし これも 受 贈 者 が 50 歳 に 達 した 時 点 で 使 い 残 しがあれば 贈 与 税 が 課 せられる また 最 も 歴 史 のある 住 宅 取 得 資 金 に 関 しては 住 宅 市 場 活 性 化 と 消 費 税 率 再 引 き 上 げに 伴 う 対 策 として 直 系 尊 属 からの 資 金 援 助 に 対 する 贈 与 税 の 非 課 税 措 置 が 2019 年 6 月 末 まで 延 長 され かつ 上 限 がこれまでの 1,000 万 円 から 最 大 3,000 万 円 に 引 き 上 げられた(ただし 3,000 万 円 が 適 用 される 対 象 は 消 費 税 10%が 適 用 される 省 エネ 住 宅 といった 物 件 に 限 定 される) 10 http://www.mhlw.go.jp/file/06-seisakujouhou-12300000-roukenkyoku/riyousyahutan.pdf 11 暦 年 贈 与 ( 現 在 は1 年 間 に 110 万 円 までの 贈 与 は 非 課 税 で 支 出 の 目 的 に 制 限 はない)は 従 来 通 り

18 / 58 3 非 課 税 措 置 の 拡 充 は 格 差 を 拡 大 させる 可 能 性 がある では 一 連 の 措 置 によってどの 程 度 の 贈 与 額 が 実 施 されてきたのだろうか 国 税 庁 統 計 年 報 によると 12 住 宅 取 得 等 資 金 の 非 課 税 制 度 の 適 用 を 受 けた 金 額 は 毎 年 6,000~7,000 億 円 で 7 万 人 以 上 が 利 用 してきた( 図 表 15) 2013 年 4 月 から 非 課 税 措 置 がスタートした 教 育 資 金 に 対 する 関 心 は 高 く 信 託 協 会 によると 非 課 税 制 度 を 利 用 した 教 育 資 金 贈 与 信 託 の 契 約 数 は 開 始 1 年 間 で 6.7 万 件 を 超 え 残 高 は 4,500 億 円 弱 に 達 した そして 増 加 ペースはやや 鈍 ったものの 2 年 経 った 2015 年 3 月 末 時 点 で 約 11.9 万 件 8,000 億 円 超 とハイペースで 拡 大 している 一 件 当 たりの 規 模 は 約 670 万 円 と 非 課 税 上 限 の 半 分 程 度 だが 超 富 裕 層 だけが 利 用 しているというよりは 直 近 1 年 間 の 新 規 分 も 一 件 当 たり 700 万 円 弱 とコンスタントに 利 用 者 の 裾 野 を 広 げているといえよう 図 表 15 住 宅 取 得 等 資 金 の 非 課 税 制 度 の 状 況 ( 左 ) 教 育 資 金 贈 与 信 託 の 受 託 状 況 ( 右 ) ( 億 円 ) 金 額 左 ( 万 人 ) 10,000 うち 非 課 税 の 適 用 を 受 けた 分 左 7.8 9,000 人 員 右 7.7 8,000 7.6 7,000 7.5 ( 億 円 ) ( 万 件 ) 信 託 財 産 設 定 額 累 計 左 9,000 12 契 約 数 累 計 右 8,000 10 7,000 6,000 8 6,000 5,000 7.4 7.3 5,000 4,000 6 4,000 7.2 3,000 4 3,000 2,000 1,000 0 教 育 資 金 の 非 課 税 拠 出 額 左 平 成 22 年 平 成 23 年 平 成 24 年 平 成 25 年 ( 出 所 ) 国 税 庁 国 税 庁 統 計 年 報 より 大 和 総 研 作 成 7.1 7.0 6.9 6.8 2,000 1,000 0 ( 出 所 ) 信 託 協 会 資 料 より 大 和 総 研 作 成 2 0 ( 月 末 ) 信 託 協 会 が 公 表 した 教 育 資 金 に 関 するアンケート 調 査 によると 実 施 前 の 調 査 (2012 年 8 月 公 表 ) 13 では 貯 蓄 額 が 多 いほど 比 率 は 高 まるものの 経 済 的 援 助 をした 経 験 があるのは4 割 弱 にとどまっていた そして 新 しい 制 度 を 利 用 してサポートしたいあるいはサポートを 検 討 し たいと 答 えている 割 合 は 約 3 割 だった また 利 用 しようと 思 う 理 由 としては 贈 与 税 の 優 遇 措 置 が 受 けられる 教 育 資 金 として 使 ってもらいたい などが 高 い 支 持 を 集 めた 次 に 制 度 が 導 入 された 後 の 調 査 (2014 年 7 月 公 表 ) 14 をみると 実 際 に 制 度 を 利 用 している 受 贈 者 のうち 約 7 割 が かなり 軽 減 される 約 2 割 が 多 少 軽 減 される と 答 え 合 わせて 9 割 以 上 が 教 育 費 に 係 る 負 担 が 軽 減 と 回 答 している(ただし 心 理 的 不 安 軽 減 も 含 む) 利 用 者 12 ただし 直 近 は 2013 年 分 であり 足 元 の 状 況 を 把 握 するには 代 替 的 なデータを 見 る 必 要 があろう 13 http://www.shintaku-kyokai.or.jp/data/pdf/repot2408-1.pdf 14 http://www.shintaku-kyokai.or.jp/data/pdf/repot2607-1.pdf

19 / 58 の 多 く( 約 8 割 )は 子 供 の 大 学 などの 高 等 教 育 に 使 いたいと 答 えており 高 等 教 育 の 有 無 が 子 供 の 将 来 を 左 右 する 要 因 の 一 つになるとしたら 同 制 度 は 生 産 性 向 上 に 貢 献 する 可 能 性 が 高 い 逆 に サポートを 受 けられない 子 供 は 将 来 の 選 択 肢 を 狭 められてしまう 恐 れもあろう (この 点 は6 章 でも 再 度 言 及 される ) 一 方 今 回 の 税 制 改 正 で 新 たに 設 けられた 結 婚 子 育 て 資 金 に 対 する 非 課 税 措 置 は 始 まった ばかりであり(2015 年 4 月 ~2019 年 3 月 末 まで) データはあまり 揃 っていない ただ これ についても 信 託 協 会 が 2013 年 8 月 に 公 表 した 導 入 前 のアンケート 調 査 によると 15 子 供 の 結 婚 を 契 機 とした 何 らかの 資 金 援 助 を 行 ったことがあるという 親 は 55%と 過 半 数 に 達 し 貯 蓄 額 が 多 い 世 帯 ほどその 割 合 が 高 くなっている 一 人 当 たりの 援 助 額 実 績 は 平 均 350 万 円 だが 貯 蓄 額 1,000 万 円 未 満 の 世 帯 と 2,000 万 円 以 上 の 世 帯 では 援 助 額 に 約 2 倍 の 差 がみられる そ して 新 たな 資 金 贈 与 信 託 に 対 する 関 心 は 高 く 特 に 未 婚 の 子 供 や 孫 に 向 けて 利 用 しようとい う 意 向 が 強 い また 制 度 を 利 用 した 想 定 援 助 金 額 は 制 度 を 利 用 しない 場 合 を 60~70 万 円 ほど 上 回 っており 貯 蓄 額 が 多 い 世 帯 ほど 押 し 上 げ 効 果 が 大 きい 貯 蓄 額 1,000 万 未 満 と 2,000 万 以 上 の 世 帯 では 約 3 倍 と 過 去 の 実 績 よりも 格 差 が 拡 大 する 可 能 性 がある 一 方 受 贈 予 定 者 ( 未 婚 者 )の 意 識 としては 援 助 を 受 けることで 結 婚 後 より 良 いところに 住 める 生 活 用 品 や 家 電 の 購 入 を 増 やす 子 供 を 持 ちたいなどの 期 待 が 強 いようである これらの 制 度 の 留 意 点 として 贈 与 者 である 父 母 祖 父 母 は 子 や 孫 ( 受 贈 者 )に 教 育 資 金 や 結 婚 子 育 て 資 金 を 一 括 して 拠 出 する 必 要 がある つまり 一 人 当 たりの 非 課 税 限 度 額 であ る 1,500 万 円 1,000 万 円 というまとまった 金 額 を 一 度 にポンと 出 せる 中 高 齢 者 は 前 述 した 高 齢 者 の 金 融 資 産 状 況 を 鑑 みると 相 当 限 られるだろう また もし 子 や 孫 に 送 った 資 金 を 目 的 外 に 使 ってしまえば( 自 分 の 介 護 向 けも 目 的 外 になる) 余 計 なコスト( 贈 与 税 )が 掛 かることに なる 多 くの 中 高 齢 者 は 自 分 自 身 の 老 後 にも 備 えなければならず 限 度 いっぱい 利 用 できるの は 元 々 相 続 対 策 に 頭 を 悩 ませていた 少 数 のお 金 持 ちぐらいかもしれない 逆 に 出 費 を 渋 る 親 と 期 待 を 高 める 子 らの 関 係 がギスギスしたり 子 や 孫 に 渡 してしまったお 金 を 返 せともいえず に 生 活 に 窮 する 高 齢 者 が 出 てこないとも 限 らない これらの 措 置 は いずれも 目 的 がピンポイントであるが 故 に 父 母 や 祖 父 母 に 大 きな 余 裕 あ る 場 合 には 政 府 の 期 待 通 り 着 実 にお 金 が 回 って 政 策 効 果 を 発 揮 するとみられる 例 えば 水 準 の 高 い 教 育 が 施 される 文 教 地 区 は 住 宅 価 格 ( 地 価 )が 高 く 生 活 コストも 高 いため 制 度 の 利 用 によって 住 宅 取 得 や 結 婚 出 産 高 度 な 教 育 機 会 を 得 られる 若 い 世 帯 も 増 えるかもしれ ない さらに 高 度 な 教 育 の 機 会 が 生 活 水 準 や 生 涯 所 得 のアップに 正 の 相 関 を 持 つのであれば 16 15 http://www.shintaku-kyokai.or.jp/data/pdf/repot2508-1.pdf 16 お 茶 の 水 女 子 大 学 が 2014 年 3 月 にまとめた 調 査 ( 平 成 25 年 度 全 国 学 力 学 習 状 況 調 査 (きめ 細 かい 調 査 ) の 結 果 を 活 用 した 学 力 に 影 響 を 与 える 要 因 分 析 に 関 する 調 査 研 究 )によると 家 庭 所 得 や 両 親 の 学 歴 で 構 成 さ れる 家 庭 の 社 会 経 済 的 背 景 (SES)が 高 い 児 童 生 徒 の 方 が 各 教 科 の 平 均 正 答 率 が 高 い 傾 向 が 見 られる とい う つまり 所 得 が 多 いほど 両 親 の 学 歴 が 高 いほど 子 供 の 学 力 が 高 い 加 えて 所 得 に 比 例 して 増 える 傾 向 にある 学 習 塾 や 習 い 事 などの 学 校 外 教 育 費 支 出 が 多 い 家 庭 の 方 が 子 供 の 学 力 も 高 くなる 結 果 が 示 された( 図 表 16) http://www.nier.go.jp/13chousakekkahoukoku/kannren_chousa/pdf/hogosha_factorial_experiment.pdf

20 / 58 豊 かな 家 系 は 豊 かであり 続 ける 確 率 が 高 まる 計 算 になる 逆 に 贈 与 が 困 難 な 低 所 得 者 のケースでは 非 課 税 措 置 のメリットはおろか 結 婚 子 育 て 教 育 に 関 するサポートにも 恵 まれず 貧 困 を 抜 け 出 すチャンスは 狭 まり 負 のスパイラルに 陥 る 可 能 性 も 出 てこよう つまり 様 々な 措 置 を 無 制 限 に 設 けることで( 期 間 限 定 受 贈 者 側 に 所 得 制 限 があったり 一 つ 当 たりの 金 額 制 限 はあっても 複 数 の 制 度 が 利 用 可 能 で 持 っている 者 ほどメリットが 大 きくなる 仕 組 み) 格 差 の 固 定 化 だけでなく さらなる 拡 大 を 招 く 懸 念 はな いだろうか 世 代 内 格 差 に 起 因 する 世 代 間 格 差 拡 大 の 可 能 性 を 少 しでも 解 消 する 方 策 の 一 つと して 所 得 や 資 産 の 多 い 高 齢 者 ( 子 や 孫 に 贈 与 をする 余 裕 がある 高 齢 者 )に 経 済 力 に 応 じた 税 制 や 社 会 保 障 の 負 担 を 求 めることが 考 えられ 実 際 に 一 部 ではスタートしている この 結 果 として 現 役 世 代 などの 負 担 が 多 少 軽 減 され 特 にその 還 元 先 を 贈 与 を 受 けていない 現 役 世 代 (あ るいは 贈 与 する 余 裕 がない 高 齢 者 )に 限 定 すれば 格 差 を 埋 めることにつながろう 図 表 16 学 校 外 教 育 支 出 と 学 力 ~ お 金 をかけると 成 績 も 上 がる ( 正 答 率 %) 100 小 6 国 語 A 小 6 国 語 B 小 6 算 数 A 小 6 算 数 B 中 3 国 語 A 中 3 国 語 B 中 3 数 学 A 中 3 数 学 B 90 80 70 60 50 40 30 (1ヵ 月 当 たりの 学 校 外 教 育 支 出 万 円 ) 0.0 0.5 未 満 0.5~1.0 1.0~1.5 1.5~2.0 2.0~2.5 2.5~3.0 3.0~5.0 5.0 以 上 ( 出 所 ) お 茶 の 水 女 子 大 学 平 成 25 年 度 全 国 学 力 学 習 状 況 調 査 (きめ 細 かい 調 査 )の 結 果 を 活 用 した 学 力 に 影 響 を 与 える 要 因 分 析 に 関 する 調 査 研 究 より 大 和 総 研 作 成 4 三 世 代 消 費 の 実 態 三 世 代 消 費 の 実 態 を 統 計 から 正 確 に 把 握 することは 難 しい ここでは 65 歳 以 上 の 者 ( 高 齢 者 ) がいる 三 世 代 世 帯 の 行 動 をみる 三 世 代 消 費 を 語 る 上 では 必 ずしも 同 居 している 必 要 はな いが 日 常 的 に 生 活 をサポートするという 観 点 からは 近 くに 住 んでいることが 一 つの 条 件 にな ろう 一 方 前 述 した 政 府 の 税 制 上 の 対 策 は 物 理 的 な 距 離 とは 無 関 係 に 効 果 を 発 揮 しよう 厚 生 労 働 省 の 国 民 生 活 基 礎 調 査 によると 2014 年 の 65 歳 以 上 の 者 がいる 三 世 代 世 帯 17 は 311.7 万 世 帯 にのぼり 65 歳 以 上 の 者 がいる 世 帯 の 13.2%( 全 世 帯 の 6.2%)を 占 めている 18 ただ 過 去 20 年 間 で 100 万 世 帯 以 上 減 少 し 65 歳 以 上 に 占 める 比 率 は3 分 の1に 低 下 するなど 17 国 民 生 活 基 礎 調 査 では 世 帯 主 を 中 心 とした 直 系 三 世 代 以 上 の 世 帯 を 指 す 18 なお 65 歳 以 上 の 者 (3432.6 万 人 )の 家 族 形 態 をみると 子 夫 婦 と 同 居 している 者 は 472.8 万 人 と 全 体 の 13.8% を 占 めており 三 世 代 世 帯 の 比 率 とほぼ 同 じである

21 / 58 高 齢 者 だけの 世 帯 が 大 幅 に 増 えている( 高 齢 者 だけの 世 帯 に 未 婚 の 子 がいる 世 帯 を 加 えると 全 体 の4 分 の3に 達 する) 必 ずしも 65 歳 以 上 の 高 齢 者 がいるわけではないが 三 世 代 世 帯 の1ヵ 月 間 の 家 計 支 出 額 (2013 年 )は 32.7 万 円 と 全 世 帯 の 平 均 値 23.6 万 円 を 上 回 っている 当 然 ながら 世 帯 員 数 が 多 いこと も 寄 与 しているだろう なお 高 齢 者 世 帯 の 平 均 支 出 額 は 18.7 万 円 である また 世 帯 主 の 年 齢 階 級 別 に 三 世 代 世 帯 の 支 出 額 をみると 世 帯 主 が 40 歳 以 上 ではほぼ 同 水 準 であり( 最 も 多 い 55~59 歳 が 35.2 万 円 60~64 歳 が 30.7 万 円 ) 他 の 世 帯 構 造 に 比 べるとバラツキが 小 さい( 核 家 族 世 帯 では 約 10 万 円 の 乖 離 幅 がある) 年 換 算 すると 平 均 支 出 額 が 全 世 帯 では 283 万 円 であるのに 対 して 三 世 代 世 帯 は 392 万 円 と 約 110 万 円 多 く 平 均 所 得 では 全 世 帯 が 529 万 円 で 三 世 代 世 帯 が 842 万 円 と 300 万 円 以 上 多 い 税 金 等 の 多 寡 を 考 慮 しても 三 世 代 世 帯 には 支 出 の 裏 付 けとなる 収 入 があり しかも 貯 蓄 等 の 余 裕 があるとみられる また 1985 年 からの 時 系 列 でみても 三 世 代 世 帯 の 収 入 は 他 の 世 帯 構 造 をアウトパフォームして 推 移 してきた 4. 住 居 形 態 が 影 響 する 高 齢 者 世 帯 の 生 活 (1) 高 齢 者 世 帯 の 住 居 形 態 による 消 費 構 造 の 違 い 高 齢 無 職 世 帯 の 消 費 動 向 が 金 融 資 産 の 保 有 状 況 や 公 的 年 金 等 による 可 処 分 所 得 から 影 響 を 受 けている 様 子 や 金 融 資 産 を 持 っている 高 齢 者 の 三 世 代 消 費 について 見 てきたが 4 章 で はさらに 住 居 形 態 から 受 ける 影 響 についても 小 さくない 様 子 を 見 ていく また そこから 今 後 求 められる 高 齢 者 の 住 宅 政 策 についても 言 及 したい 高 齢 者 世 帯 19 では 世 帯 内 で 有 業 者 がいると 社 会 保 障 給 付 が 減 額 される 仕 組 みになっている ( 在 職 老 齢 年 金 ) しかし 減 額 された 分 の 収 入 については 世 帯 内 有 業 者 の 賃 金 によって 補 われ るため 世 帯 内 の 有 業 者 の 有 無 という 属 性 の 違 いによる 世 帯 間 の 消 費 の 差 は 大 きくない 一 方 で 持 ち 家 ( 以 下 持 家 )のある 世 帯 か 民 間 借 家 の 世 帯 かという 住 居 形 態 ( 実 物 資 産 ) の 違 いについては 同 じ 高 齢 無 職 世 帯 であっても 消 費 の 差 が 大 きく 広 がる 世 帯 人 員 一 人 当 た り 実 収 入 が 持 家 の 場 合 では 133,388 円 民 営 借 家 の 場 合 では 104,805 円 ( 総 務 省 統 計 局 2014 年 家 計 調 査 家 計 収 支 編 より)と 持 家 世 帯 の 方 が3 万 円 程 度 多 いため 消 費 総 額 についても その 分 持 家 世 帯 の 方 が 多 い( 図 表 17) しかし 両 者 における 消 費 構 造 について 詳 しくみると その 中 身 は 大 きく 異 なる 持 家 の 場 合 は 住 居 の 消 費 支 出 が 少 ないため 基 礎 的 消 費 ( 食 料 光 熱 水 道 など)が4 割 程 度 に とどまり 選 択 的 消 費 の 割 合 が 大 きい 民 間 借 家 の 場 合 は 住 居 ( 主 に 家 賃 の 支 払 い) 費 の 割 合 の 大 きさが 影 響 して 基 礎 的 消 費 だけでも 消 費 全 体 の6 割 に 達 し 選 択 的 消 費 の 割 合 が 小 さい 19 ここでは 家 計 調 査 における 二 人 以 上 の 世 帯 のうち 世 帯 主 が 無 職 の 世 帯 世 帯 主 の 平 均 年 齢 は 72.3 歳

22 / 58 両 者 の 消 費 構 造 に 大 きな 消 費 の 差 をもたらしている 住 居 を 除 く 消 費 総 額 で 比 較 すると 民 間 借 家 の 世 帯 では 持 家 世 帯 の3 分 の2にとどまる 民 間 借 家 の 世 帯 では 持 家 の 世 帯 と 比 較 して 教 養 娯 楽 や その 他 消 費 支 出 ( 交 際 費 など) といった 生 活 を 豊 かにする 要 素 が 多 い 選 択 的 消 費 を 中 心 に 消 費 が 抑 制 されている 図 表 17 住 居 の 所 有 状 況 別 高 齢 無 職 世 帯 の 一 人 当 たり 消 費 ( 万 円 / 月 ) 0 5 10 15 20 持 家 民 営 借 家 食 料 住 居 光 熱 水 道 家 具 家 事 用 品 被 服 及 び 履 物 保 健 医 療 交 通 通 信 教 育 教 養 娯 楽 その 他 の 消 費 支 出 ( 注 ) 世 帯 当 たり 消 費 支 出 を 世 帯 人 員 の 平 方 根 で 除 した ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 2014 年 家 計 調 査 家 計 収 支 編 より 大 和 総 研 作 成 (2) 住 居 負 担 が 重 い 借 家 世 帯 では 貯 蓄 額 も 少 ない 国 内 では7 割 の 世 帯 が 持 家 で 残 り3 割 の 世 帯 が 借 家 である ただし 65 歳 以 上 の 世 帯 に 限 ってみると 8 割 以 上 が 持 家 になる( 図 表 18) そのため 3 章 の 図 表 7でも 示 したように 借 家 の 割 合 が 大 部 分 を 占 める 30 歳 未 満 や5 割 以 上 である 30 代 の 世 帯 ( 図 表 19)などと 比 較 する と 全 体 的 に 高 齢 者 世 帯 の 選 択 的 消 費 の 割 合 は 大 きくなる 図 表 18 65 歳 以 上 世 帯 の 住 居 の 所 有 状 況 借 家 19% 持 ち 家 81% ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 平 成 25 年 住 宅 土 地 統 計 調 査 より 大 和 総 研 作 成

23 / 58 図 表 19 年 齢 階 級 別 住 居 の 状 況 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 30 歳 未 満 30 代 40 代 50 代 60 代 70 代 ~ 借 家 持 ち 家 ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 平 成 25 年 住 宅 土 地 統 計 調 査 より 大 和 総 研 作 成 しかし 一 方 で 借 家 に 住 む 65 歳 以 上 の 無 職 世 帯 の 場 合 収 入 に 対 して 住 居 費 の 大 きさが 影 響 し 十 分 な 生 活 水 準 を 維 持 するだけの 消 費 が 行 われないケースも 考 えられる 2013 年 の 一 世 帯 当 たり 平 均 可 処 分 所 得 金 額 の 中 央 値 は 415 万 円 ( 全 世 帯 ベース 厚 生 労 働 省 平 成 26 年 国 民 生 活 基 礎 調 査 より)であり その 50% 以 下 となる 世 帯 については 相 対 的 貧 困 とされているが 借 家 世 帯 では 住 居 費 の 割 合 の 大 きさが 影 響 して この 相 対 的 貧 困 に 至 ら ずともかなり 生 活 が 困 窮 している 可 能 性 が 高 いと 考 えられる 例 えば 年 収 300 万 円 未 満 の 借 家 世 帯 は 国 内 に 858 万 世 帯 あるが そのうち3 割 が 世 帯 主 年 齢 65 歳 以 上 の 世 帯 である( 平 成 25 年 住 宅 土 地 統 計 調 査 より)( 図 表 20) こうした 低 所 得 高 齢 者 の 借 家 世 帯 (65 歳 以 上 高 齢 者 世 帯 全 体 の 16%)では 持 家 世 帯 と 比 較 して 選 択 的 消 費 の 割 合 はもちろん 基 礎 的 消 費 について もかなり 抑 制 せざるを 得 ない 状 況 にあると 考 えられる 図 表 20 65 歳 以 上 世 帯 の 年 間 収 入 階 級 別 住 居 の 所 有 状 況 ( 万 世 帯 ) 400 350 300 250 200 150 100 50 0 持 ち 家 借 家 ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 平 成 25 年 住 宅 土 地 統 計 調 査 より 大 和 総 研 作 成

24 / 58 なぜならば 借 家 世 帯 では 先 述 したような 高 齢 者 世 帯 の 消 費 の 特 徴 として 多 く 見 られる 貯 蓄 の 取 り 崩 しが 困 難 である 可 能 性 が 高 いためである 図 表 21 は 貯 蓄 階 級 別 に 見 た 持 家 率 を 示 し ているが 貯 蓄 額 が 多 い 世 帯 であるほど 持 家 率 は 上 がっている 貯 蓄 額 750 万 円 以 上 の 年 金 受 給 世 帯 では 90% 以 上 とほとんどの 世 帯 が 持 家 であるが 貯 蓄 額 が 低 い 世 帯 では 借 家 比 率 が 上 昇 している( 持 家 率 が 低 下 する) 図 表 21 世 帯 の 貯 蓄 階 級 別 持 家 率 (%) 100 90 80 70 60 50 主 な 年 間 収 入 が 年 金 等 の 世 帯 勤 労 者 世 帯 ( 平 均 年 齢 47.5 歳 ) ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 より 大 和 総 研 作 成 また 高 齢 者 夫 婦 世 帯 20 の 住 居 の 所 有 関 係 別 に 貯 蓄 と 負 債 の 関 係 を 見 たものが 図 表 22 である が ここでも 持 家 世 帯 の 平 均 貯 蓄 高 は 2,200 万 円 超 と 多 い 高 齢 者 夫 婦 世 帯 の9 割 は 持 家 世 帯 であるが こうした 世 帯 のほとんどが 既 に 住 宅 ローンを 完 済 しているため 負 債 もわずかであ る 一 方 民 営 借 家 借 間 の 世 帯 でも 負 債 についてはほとんどないものの 平 均 貯 蓄 高 は 900 万 円 に 満 たない 平 均 900 万 円 弱 の 貯 蓄 高 が 少 ないとは 言 えないかもしれないが 借 家 住 まいの 高 齢 者 世 帯 では 世 帯 人 員 一 人 当 たり 約 4 万 円 / 月 の 貯 蓄 の 取 り 崩 しが 行 われている( 総 務 省 統 計 局 2014 年 家 計 調 査 家 計 収 支 編 より) さらに 貯 蓄 の 目 的 について 病 気 や 介 護 が 必 要 になった 時 など 万 一 の 場 合 の 備 えのため 21 と 回 答 する 高 齢 者 が 多 い 点 からすれば 借 家 世 帯 では 持 家 世 帯 と 比 較 して 十 分 な 消 費 を 行 うための 貯 蓄 を 保 有 していないと 捉 えることもできる だろう 20 夫 65 歳 以 上, 妻 60 歳 以 上 の 夫 婦 のみの 世 帯 夫 婦 高 齢 者 世 帯 (65 歳 以 上 の 夫 婦 のみの 世 帯 )のケースでも 同 じ 傾 向 が 見 られた 21 どういう 目 的 で 貯 蓄 をしているか との 質 問 に 対 し 60 歳 以 上 の 62.3%が 病 気 や 介 護 が 必 要 になった 時 など 万 一 の 場 合 の 備 えのため と 回 答 しており 以 下 普 段 の 生 活 を 維 持 するため (20.0%) より 豊 か な 生 活 や 趣 味 にあった 暮 らしを 送 るため (4.6%) もっぱら 子 どもや 家 族 に 残 すため (2.7%)と 続 く 内 閣 府 政 策 統 括 官 ( 共 生 社 会 政 策 担 当 ) 高 齢 者 の 経 済 生 活 に 関 する 意 識 調 査 結 果 平 成 24 年 3 月 より

25 / 58 図 表 22 高 齢 者 夫 婦 世 帯 の 住 居 の 所 有 関 係 別 貯 蓄 と 負 債 ( 万 円 ) 2,500 2,000 貯 蓄 現 在 高 負 債 現 在 高 1,500 1,000 500 0 持 ち 家 民 営 借 家 借 間 ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 より 大 和 総 研 作 成 以 上 から 高 齢 期 に 教 養 娯 楽 サービスや 交 際 費 といった 選 択 的 消 費 を 行 う 余 裕 は 持 家 世 帯 の 方 が 多 い 傾 向 にあると 言 えよう そのため 高 齢 期 に 高 い 生 活 水 準 を 維 持 しようと 思 えば 高 齢 期 に 至 る 以 前 に 持 家 を 取 得 しておくことが 選 択 肢 の 一 つと 言 えるかもしれない (3) 現 役 世 代 の 持 家 率 の 低 下 が 高 齢 期 の 借 家 世 帯 の 増 加 に しかしながら 勤 労 世 帯 の 持 家 率 を 年 間 収 入 階 級 別 に 確 認 すると 年 間 収 入 が 増 加 するほど それに 応 じて 持 家 率 が 上 昇 している 様 子 が 見 られる つまり 高 齢 期 に 生 活 の 維 持 が 困 難 とな る 傾 向 がある 借 家 世 帯 とは 現 役 時 代 を 通 じて 持 家 の 取 得 が 難 しかった 世 帯 であり 現 役 時 代 においても 低 所 得 世 帯 であった 可 能 性 が 考 えられる( 図 表 23) 図 表 23 勤 労 世 帯 の 収 入 階 級 別 持 家 率 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 持 家 率 (%) ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 2014 年 家 計 調 査 家 計 収 支 編 より 大 和 総 研 作 成

26 / 58 住 宅 の 所 有 についてどう 思 うかというアンケート 行 った 平 成 26 年 度 土 地 問 題 に 関 する 国 民 の 意 識 調 査 ( 国 土 交 通 省 )では 60 歳 未 満 の6~8 割 が 土 地 建 物 については 両 方 とも 所 有 したい と 回 答 するなど 若 い 世 代 でも 持 家 希 望 の 高 さがうかがえる それにもかかわらず 直 近 30 年 間 で 60 歳 未 満 の 全 ての 年 齢 階 級 ( 現 役 世 代 )で 持 家 率 が 低 下 している( 図 表 24) 図 表 24 年 齢 階 級 別 持 家 率 の 推 移 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 1983 1988 1993 1998 2003 2008 2013 ( 年 ) 70 歳 以 上 60 歳 以 上 50 代 40 代 30 代 30 歳 未 満 ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 住 宅 土 地 統 計 調 査 より 大 和 総 研 作 成 1990 年 前 後 までは 約 半 分 の 世 帯 が 持 家 を 取 得 していた 30 代 だが 2013 年 には4 割 以 下 に 低 下 するなど 特 に 持 家 離 れが 目 立 つ この 点 について 平 成 24 年 度 国 土 交 通 白 書 では 持 ち 家 取 得 に 係 る 経 済 的 負 担 の 増 加 が 若 者 の 持 ち 家 率 の 減 少 の 一 因 と 考 えられる としてお り 現 役 世 代 が 持 家 を 取 得 することが 徐 々に 難 しくなりつつある 様 子 を 示 している 実 質 賃 金 の 低 下 に 加 え 現 役 世 代 の 賃 金 カーブについてはフラット 化 が 進 んでいるため( 後 述 する5 章 高 齢 者 雇 用 図 表 28 を 参 照 されたい) 今 後 も 年 齢 が 上 がったからといって 急 激 に 所 得 水 準 が 上 昇 するようなことは 考 えにくい そうであれば 若 い 世 代 の 持 家 率 の 低 下 は そのまま 高 齢 期 の 住 居 の 所 有 状 況 に 結 びつく 懸 念 もあるだろう 将 来 的 な 支 給 開 始 年 齢 の 引 き 上 げや 実 質 的 な 給 付 額 の 減 少 が 見 込 まれる 年 金 収 入 に 対 し 借 家 住 まいであることによる 住 居 費 の 割 合 が 増 していけば それ 以 外 の 消 費 を 圧 縮 するなど 高 齢 者 世 帯 の 生 活 が 逼 迫 するだけでなく やがて 生 活 保 護 世 帯 へ 移 行 してしまうケースの 増 加 についても 危 惧 される (4) 公 営 住 宅 が 低 所 得 世 帯 の 消 費 を 変 える そこで 例 えば 借 家 であるために 生 活 の 維 持 が 困 難 な 高 齢 者 世 帯 に 対 して 住 居 の 支 援 を 行 っ た 場 合 貧 困 を 減 らし さらに 消 費 を 拡 大 させるような 効 果 はあるのだろうか 低 所 得 者 への 住 宅 保 障 については 県 営 住 宅 市 営 住 宅 などと 呼 ばれている 公 営 住 宅 が 用 意 されている

27 / 58 公 営 住 宅 22 とは 住 宅 に 困 窮 する 低 所 得 者 に 対 して 低 廉 な 家 賃 で 供 給 される 都 道 府 県 や 市 区 町 村 が 所 有 又 は 管 理 している 賃 貸 住 宅 である こうした 公 営 住 宅 ( 公 営 借 家 )に 高 齢 者 が 入 居 した 場 合 公 営 借 家 の 一 人 当 たり 住 居 費 は 民 営 借 家 の 半 分 になる 家 賃 の 支 払 いが 中 心 である 住 居 の 消 費 支 出 が 大 幅 に 抑 制 される ことで 限 られた 年 金 収 入 でもそれ 以 外 の 消 費 に 資 金 を 振 り 向 けることが 可 能 になるようだ 図 表 25 は 世 帯 人 員 一 人 当 たり 実 収 入 がほぼ 同 じである 民 営 借 家 と 公 営 借 家 に 住 まう 高 齢 無 職 世 帯 の 消 費 について 住 居 を 除 いて 比 較 したものである 公 営 借 家 に 居 住 する 世 帯 では そ の 他 の 消 費 支 出 など 生 活 上 必 ずしも 必 要 とはいえない 選 択 的 消 費 が 民 営 借 家 の 世 帯 よりも 多 く 生 活 に 余 裕 があるように 見 える 同 様 の 点 について 森 田 中 村 [2004] 23 でも 公 営 住 宅 への 入 居 前 後 について 比 較 したデータ を 用 い 居 住 者 便 益 の 測 定 を 行 った 結 果 世 帯 により 大 きなバラツキ があるとしながらも 特 に 高 齢 者 世 帯 では 民 間 住 宅 よりも 低 廉 な 家 賃 で 提 供 される 公 営 住 宅 への 入 居 によって 世 帯 の 消 費 が 変 化 し 大 きな 便 益 が 発 生 していることが 明 らか であると 言 及 している 図 表 25 借 家 の 種 類 別 高 齢 無 職 世 帯 の 一 人 当 たり 消 費 支 出 の 比 較 ( 除 く 住 居 費 ) ( 万 円 / 月 ) 0 2 4 6 8 10 12 民 営 借 家 公 営 借 家 食 料 光 熱 水 道 家 具 家 事 用 品 被 服 及 び 履 物 保 健 医 療 交 通 通 信 教 育 教 養 娯 楽 その 他 の 消 費 支 出 ( 注 1) 世 帯 当 たり 消 費 支 出 を 世 帯 人 員 の 平 方 根 で 除 した ( 注 2) 世 帯 人 員 一 人 当 たり 実 収 入 は 民 間 借 家 の 場 合 が 104,805 円 公 営 借 家 の 場 合 が 100,906 円 ( 出 所 ) 総 務 省 統 計 局 2014 年 家 計 調 査 家 計 収 支 編 より 大 和 総 研 作 成 22 入 居 者 の 収 入 基 準 は 公 営 住 宅 法 により 定 められている 第 一 種 公 営 住 宅 と 第 二 種 公 営 住 宅 があり 第 二 種 公 営 住 宅 は 第 一 種 公 営 住 宅 の 家 賃 を 支 払 うことのできない 低 所 得 者 に 賃 貸 する 住 宅 となっている 低 廉 な 家 賃 で 供 給 される 背 景 には 建 設 や 維 持 管 理 などの 運 営 について 国 からの 補 助 金 が 自 治 体 に 交 付 されていること がある 23 森 田 学 中 村 良 平 [2004] 公 営 住 宅 における 居 住 者 便 益 と 消 費 の 非 効 率 性 日 本 経 済 研 究 センター 日 本 経 済 研 究 No.50 (2004 年 9 月 )

28 / 58 (5) 住 宅 政 策 は 今 後 の 高 齢 者 消 費 に 影 響 するか 低 所 得 高 齢 者 の 住 まいに 関 する 支 援 については 2013 年 6 月 に 閣 議 決 定 された 日 本 再 興 戦 略 JAPAN is BACK 24 の 中 で 中 低 所 得 層 の 高 齢 者 が 地 域 において 安 心 して 暮 らせるよう にするため 空 家 や 学 校 跡 地 などの 有 効 活 用 による 新 たな 住 まいの 確 保 を 図 る と 明 記 される など 改 めて 注 目 されていた 生 活 支 援 サービス 住 まいの 提 供 体 制 の 強 化 の 必 要 性 が 謳 わ れ 翌 2014 年 度 の 予 算 にも 1.2 億 円 が 新 たに 計 画 されたが 翌 年 2015 年 度 の 予 算 ではこの 低 所 得 高 齢 者 等 住 まい 生 活 支 援 モデル 事 業 費 は1 億 円 に 圧 縮 され さらに 2014 年 以 降 の 日 本 再 興 戦 略 ( 改 訂 版 )からは 高 齢 者 向 けの 住 まいに 関 するこうした 文 言 が 早 くも 削 除 されてし まった 国 内 では 住 宅 については 私 的 財 産 で 使 用 方 法 や 処 分 について 個 人 の 自 由 という 観 念 が 強 い 25 とされ 行 政 主 導 による 住 宅 の 社 会 化 が 行 われることはなかった 26 ことを 背 景 に 社 会 保 障 としての 低 所 得 者 への 住 宅 保 障 が 公 営 住 宅 以 外 には 生 活 保 護 における 住 宅 扶 助 など の 施 策 が 行 われるにとどまっている しかし 私 的 財 産 と 捉 えられながらも 実 際 は 企 業 福 祉 のかたちでの 住 宅 供 給 ( 給 与 住 宅 ) が 大 きな 役 割 を 果 たしてきた 27 ことに 加 え 経 済 政 策 の 一 環 として 社 宅 供 給 を 後 押 しする 低 利 融 資 税 制 優 遇 措 置 (= 国 家 による 財 政 福 祉 )とが 絡 み 合 うことによって いわゆる 日 本 型 雇 用 の 成 立 と 再 生 産 が 行 われ 28 てきた 面 が 大 きかった そうした 点 に 鑑 みれば 雇 用 環 境 の 変 化 とともに 社 会 福 祉 としての 住 宅 政 策 のあり 方 についても 再 考 すべき 転 換 期 を 迎 えていると 言 えるのかもしれない もちろん 年 金 だけでなく 医 療 や 介 護 を 含 む 社 会 保 障 全 体 が 現 役 世 代 の 支 払 う 税 や 保 険 料 を 中 心 に 賄 われている 賦 課 方 式 である 点 からすれば 多 額 の 補 助 金 で 支 えられる 公 営 住 宅 を 低 所 得 の 高 齢 者 世 帯 に 供 給 することについて そう 単 純 に 議 論 は 進 まないだろう だが 少 なく とも 消 費 の 面 だけで 捉 えれば 低 所 得 世 帯 の 住 居 費 負 担 を 引 き 下 げることは シニア 世 代 の 消 費 拡 大 につながると 期 待 できるかもしれない 特 に 今 後 は 現 役 時 代 に 住 宅 を 取 得 できな い 高 齢 者 世 帯 の 増 加 が 見 込 まれるため 低 所 得 の 高 齢 者 世 帯 に 対 する 住 宅 政 策 のあり 方 が 将 来 的 な 消 費 動 向 を 左 右 する 可 能 性 も 考 えられよう 24 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/saikou_jpn.pdf 25 上 枝 朱 美 [2010] 低 所 得 者 に 対 する 社 会 保 障 のあり 方 住 宅 と 生 活 満 足 度 国 立 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 季 刊 社 会 保 障 研 究 第 46 巻 第 2 号 26 菊 地 英 明 金 子 能 宏 [2005] 社 会 保 障 における 住 宅 政 策 の 位 置 づけ- 福 祉 国 家 論 からのアプローチ- 国 立 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 海 外 社 会 保 障 研 究 No.152 27 注 釈 26 と 同 じ 28 注 釈 26 と 同 じ

29 / 58 (6) 実 現 のハードルが 高 い 高 齢 者 の 地 方 移 住 1 高 齢 者 の 移 住 構 想 高 齢 者 向 けの 住 宅 政 策 との 関 連 性 は 薄 いものの 昨 今 高 齢 者 をはじめとして 東 京 圏 ( 東 京 都 神 奈 川 県 埼 玉 県 千 葉 県 の 一 都 三 県 )など 大 都 市 から 地 方 への 移 住 を 促 す 話 が 話 題 に なっている 日 本 創 成 会 議 が 予 想 される 東 京 圏 の 急 速 な 高 齢 化 を 背 景 に 医 療 介 護 の 観 点 か ら 問 題 提 起 している 他 政 府 の まち ひと しごと 創 生 基 本 方 針 2015-ローカル アベノミ クスの 実 現 に 向 けて- でも 地 方 移 住 の 支 援 や 日 本 版 CCRC 構 想 の 推 進 が 謳 われている 29 例 えば 日 本 創 成 会 議 の 提 言 では 東 京 圏 の 高 齢 者 介 護 対 応 能 力 の 欠 如 を 指 摘 した 上 で 外 国 人 介 護 人 材 受 け 入 れの 積 極 的 推 進 を 謳 う 他 高 齢 者 の 集 住 化 のための 取 り 組 みや 一 都 三 県 の 連 携 の 必 要 性 にも 言 及 し 対 策 の 一 つとして 東 京 圏 の 高 齢 者 の 地 方 移 住 環 境 の 整 備 を 挙 げている また 地 方 への 移 住 を 希 望 する 国 民 を 支 援 していこうとする まち ひと しごと 創 生 基 本 方 針 2015-ローカル アベノミクスの 実 現 に 向 けて- の 中 の 日 本 版 CCRC 構 想 は 移 住 を 希 望 する 健 康 な 高 齢 者 をターゲットにしている( 図 表 26) 日 本 創 成 会 議 の 提 言 の 中 で 示 されている 医 療 介 護 体 制 が 整 って 受 け 入 れ 能 力 のある 地 域 は 北 海 道 や 北 東 北 北 陸 中 国 四 国 九 州 など 東 京 圏 から 距 離 がある 都 市 が 多 い 自 分 の 出 身 地 故 郷 であれば 移 りやすいだろうが 東 京 圏 育 ちには 未 知 の 世 界 である それよりも 首 都 圏 ( 八 都 県 )でも 人 口 減 少 に 苦 しむ 地 域 は 存 在 しており 住 み 慣 れた 地 域 から 比 較 的 近 い 場 所 に 移 住 する 方 がより 現 実 的 かもしれない また 政 府 の 医 療 政 策 の 一 つとして 入 院 よりも 在 宅 医 療 を 中 心 に 据 えた 地 域 包 括 ケアシステムの 整 備 を 進 めようという 動 きがあるが 行 政 や 民 間 サービスに 頼 るだけでなく 引 き 続 き 家 族 が 重 要 な 担 い 手 の 一 つと 期 待 されているようだ 一 方 高 齢 者 だけが 流 入 してくれば 地 方 の 高 齢 者 比 率 は 上 昇 するだけであろう 確 かに 日 本 版 CCRC 構 想 などでは 元 気 なうちからの 地 方 移 住 を 想 定 していようが 現 役 世 代 に 比 べると 高 齢 者 が 健 康 でいられる 時 間 は 短 く 病 気 になる 確 率 も 高 いとみられる 従 って 地 方 に 定 着 して 時 間 が 経 っていればいいが 移 って 間 を 置 かずに 病 気 になった 場 合 住 み 慣 れていない 場 所 での 療 養 や 介 護 に 対 して 遠 く 離 れて 暮 らす 子 供 らが 面 倒 をみることは 容 易 ではないだろ う 年 齢 階 層 のバランスをある 程 度 維 持 するためには 高 齢 者 になる 前 の 現 役 段 階 での 移 住 (あ るいは 高 齢 者 と 現 役 世 代 一 緒 の 移 住 )にも 力 を 入 れる 必 要 があろう ただ その 場 合 現 役 世 代 が 生 活 するための 雇 用 確 保 が 大 きな 課 題 になり 大 都 市 ( 東 京 圏 )と 地 方 の 現 状 では 地 方 への 移 動 を 促 すインセンティブの 付 与 は 欠 かせないだろう 例 えば 地 方 移 転 して 雇 用 創 出 に 貢 献 した 企 業 に 対 する 法 人 税 減 税 移 住 者 に 対 する 税 負 担 軽 減 補 助 金 支 給 (ただ これは 既 存 の 住 民 とのバランスに 配 慮 する 必 要 あり)などが 想 定 されるが いずれにしても 国 から 地 方 への 資 金 移 転 になる 30 29 http://www.policycouncil.jp/ http://www.kantei.go.jp/jp/headline/chihou_sousei/ 30 まち ひと しごと 創 生 会 議 の 有 識 者 の 一 人 である 伊 東 岡 山 県 倉 敷 市 長 は 2015 年 6 月 2 日 の 同 会 議 の 中

30 / 58 図 表 26 日 本 版 CCRC の 概 要 従 来 の 高 齢 者 施 設 等 日 本 版 CCRC 要 介 護 状 態 になってから 移 住 移 住 の 契 機 健 康 時 から 移 住 高 齢 者 はサービスの 受 け 手 高 齢 者 の 生 活 仕 事 社 会 活 動 生 涯 学 習 などに 積 極 的 に 参 加 ( 支 え 手 としての 役 割 ) 住 宅 内 で 完 結 し 地 域 との 交 流 が 少 ない 地 域 との 関 係 地 域 に 溶 け 込 んで 多 世 代 と 共 働 ( 出 所 ) まち ひと しごと 創 生 本 部 日 本 版 CCRC 構 想 有 識 者 会 議 日 本 版 CCRC 構 想 ( 素 案 ) より 大 和 総 研 作 成 2 高 齢 者 と 子 供 の 住 居 の 関 係 前 述 したように 現 役 世 代 の 持 家 保 有 比 率 ( 持 家 率 )は 低 下 傾 向 にある 特 に 1960 年 前 後 生 まれの 持 家 に 拘 らなくなった 世 代 が 高 齢 者 に 差 し 掛 かれば 全 体 の 持 家 率 が 一 段 と 低 下 する 余 地 が 生 じるだろう とはいえ 歳 を 取 るにつれて 持 家 率 が 上 昇 していくというトレンド 自 体 は 変 わっていないため 高 齢 者 の 地 方 移 住 と 絡 めて 考 えた 場 合 高 齢 者 の 持 家 率 が8 割 である 点 は 大 きなハードルといえる なぜならば これまで 居 住 していた 住 宅 資 産 を 処 分 しなければ ならないからだ 借 家 のように 身 軽 に 引 っ 越 すというわけにはいかないだろう 2013 年 時 点 の 全 国 の 持 ち 家 住 宅 率 が 61.7%( 持 ち 家 世 帯 率 は 61.5% 括 弧 内 は 以 下 同 じ)であるのに 対 して 31 東 京 都 は 45.8%(45.6%)と 全 国 一 低 く 神 奈 川 県 も 58.6%(58.3%) と 全 国 平 均 を 下 回 っている 一 方 千 葉 県 は 66.3%(66.1%) 埼 玉 県 は 66.1%(65.7%)と 平 均 を 上 回 っている 四 都 県 を 合 計 すると 東 京 圏 は 55.9%(55.7%)と 全 国 平 均 を 下 回 るが 背 景 としては 東 京 圏 では 持 家 率 が 低 い 若 年 層 の 人 口 が 多 いことが 挙 げられる ただし 東 京 圏 でも 高 齢 者 に 限 定 すれば 全 国 平 均 の 8 割 には 届 かないものの 60 歳 以 上 の 持 ち 家 世 帯 率 で 日 本 版 CCRC について 高 齢 者 の 希 望 の 実 現 がある 一 方 で 受 け 入 れる 側 になる 地 方 が 抱 える 課 題 とし て 既 存 の 入 所 待 機 者 への 対 応 や 介 護 従 事 者 の 不 足 受 け 入 れ 自 治 体 の 財 政 負 担 の 増 加 を 挙 げた 第 一 に 地 元 で 施 設 に 入 れずに 順 番 を 待 っている 高 齢 者 がいる 状 況 では 他 の 地 域 から 高 齢 者 を 受 け 入 れるこ とは 容 易 ではないだろう また 仮 に 健 康 で 直 ちに 施 設 に 入 る 状 態 でなくても 将 来 の 潜 在 的 な 入 所 需 要 があ る あるいは 施 設 に 容 易 に 入 れることを 期 待 して 移 住 してくる 可 能 性 が 高 い 当 然 ながら 受 け 入 れる 自 治 体 の 住 民 の 負 担 増 になるようでは そのハードルは 一 段 と 高 くなろう 従 って 伊 東 倉 敷 市 長 が 指 摘 するよう に 国 からの 補 助 や 自 治 体 間 の 財 政 調 整 などの 仕 組 みが 必 要 になる また 有 識 者 の 一 人 である 中 橋 NPO 法 人 理 事 長 は 日 本 創 成 会 議 の 東 京 圏 の 高 齢 者 の 地 方 移 住 推 進 について 高 齢 者 のみを 医 療 介 護 の 人 材 に 余 裕 があると 試 算 されている 地 方 に 移 住 させるのではなく 家 族 丸 ごと 移 住 してきていただきたい と 述 べており もっともな 指 摘 であろう 参 照 :http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/souseikaigi/h27-06-12-gijiyousi.pdf 31 持 ち 家 住 宅 率 は 持 ち 家 が 住 宅 全 体 に 占 める 割 合 であり 持 ち 家 世 帯 率 は 持 ち 家 に 居 住 する 主 世 帯 の 普 通 世 帯 全 体 に 占 める 割 合 である

31 / 58 は 75.5% 65 歳 以 上 で 76.3%となり 極 端 に 低 いとはいえないだろう( 東 京 都 のみでは 66.4% 67.5%と 低 い) 東 京 圏 の 持 家 を 持 たない 高 齢 者 を 対 象 に 移 住 を 進 めるのではない 限 り やはり 住 宅 資 産 の 取 扱 いは 大 きな 課 題 になろう 三 世 代 という 観 点 から 改 めてフォーカスすると 現 役 世 代 の 持 家 志 向 の 低 下 の 背 景 として 親 との 同 居 が 進 んでいるのかというと 必 ずしもそうではない 65 歳 以 上 の 者 がいる 世 帯 数 は 2014 年 で 2,357.2 万 世 帯 にのぼっている これは 全 世 帯 の 46.7%を 占 めており 約 30 年 前 の 全 体 の 4 分 の1からほぼ 倍 増 している このうち アニメ サザエさん に 登 場 する 磯 野 フグ 田 家 のように 子 や 孫 と 同 居 する 三 世 代 世 帯 そのものが 減 少 する 一 方 で 高 齢 者 だけの 世 帯 が 大 幅 に 増 えている 従 って 現 役 世 代 の 持 家 志 向 の 低 下 の 理 由 にはならないのである 次 に 総 務 省 住 宅 土 地 統 計 調 査 で 高 齢 者 のいる 世 帯 (65 歳 以 上 の 世 帯 員 がいる 主 世 帯 ) のうち 高 齢 単 身 世 帯 (65 歳 以 上 の 単 身 の 主 世 帯 )と 高 齢 者 のいる 夫 婦 のみの 世 帯 ( 夫 婦 とも 又 はいずれか 一 方 が 65 歳 以 上 の 夫 婦 一 組 のみの 主 世 帯 )を 合 計 した 高 齢 者 普 通 世 帯 における 子 供 との 居 住 環 境 をみてみる 高 齢 者 普 通 世 帯 は 着 実 に 増 加 しており 2013 年 には 1,139 万 世 帯 と 高 齢 者 のいる 世 帯 の 約 55%を 占 めている(30 年 前 は 約 240 万 世 帯 高 齢 者 のいる 世 帯 の3 割 弱 だった) 高 齢 者 普 通 世 帯 の 15.5%は 子 供 がおらず また 子 の 居 住 地 が 不 詳 であるケースが 相 当 数 (17%)あることか ら これらを 分 析 の 対 象 から 除 く 子 供 がいる 高 齢 者 普 通 世 帯 のうち 子 供 と 一 緒 に 住 んでい る あるいは 片 道 1 時 間 未 満 という 比 較 的 近 距 離 に 住 んでいる 割 合 を 足 しあげると 68%になる (なお 持 家 と 借 家 の 違 いはほとんどみられない) 2008 年 調 査 と 比 較 すると 一 緒 に 住 んでいる 割 合 は 低 下 しているものの 1 時 間 未 満 の 割 合 が 高 まっていることから 全 体 としては 子 の 近 居 化 が 進 んでいるといえよう これらは 全 国 の 値 であり 当 然 ながら 地 域 差 がみられる 東 京 圏 のうち 東 京 都 (72.5%)や 神 奈 川 県 (70.3%) 埼 玉 県 (71.9%)では1 時 間 未 満 に 子 供 が 住 んでいる 割 合 が 全 国 平 均 を 大 きく 上 回 っている 唯 一 千 葉 県 が 64.6%と 低 いために 東 京 圏 全 体 ではやや 押 し 下 げられるが それでも 全 国 レベ ルよりは 近 距 離 である 同 様 に 国 立 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 ( 以 下 社 人 研 )が 2015 年 3 月 に 公 表 した 第 5 回 全 国 家 庭 動 向 調 査 (2013 年 社 会 保 障 人 口 問 題 基 本 調 査 )でも 親 世 代 との 同 居 の 有 無 や 居 住 距 離 に 関 する 調 査 結 果 が 示 されている ただし この 調 査 の 分 析 対 象 が 有 配 偶 女 性 ( 妻 )に 限 定 されている 点 には 留 意 すべきであろう なお 社 人 研 によると 有 配 偶 女 性 の 年 齢 分 布 や 家 族 類 型 分 布 は 国 勢 調 査 や 労 働 力 調 査 と 比 較 して 大 きな 偏 りはないという 4 人 の 親 のうち 誰 かと 同 居 している 割 合 は 約 3 割 と 過 去 20 年 の 調 査 の 中 で 最 も 高 くなってい る さらに いずれの 親 とも 同 居 していないケースにおける 妻 (60 歳 未 満 )と 親 との 時 間 的 距 離 をみると 60 分 未 満 が6 割 弱 と 過 去 の 調 査 に 比 べて 割 合 が 高 まっている これは4 人 の 親 それぞれでもほとんど 差 がみられない 別 居 していても 親 の 近 くに 住 むという 近 居 化 の 傾 向 が 強 まっている

32 / 58 鉄 道 やバスといった 公 共 交 通 機 関 や 道 路 等 のインフラの 発 達 により 日 本 全 体 における 移 動 可 能 距 離 は 長 く 移 動 時 間 は 短 くなっているため 32 同 居 という 形 を 取 らなくても 近 居 という 柔 軟 な 形 態 が 増 えることによって 育 児 子 育 てのサポートを 得 られやすくなるし 将 来 の 介 護 という 逆 のケースでもプラスに 寄 与 しよう さらに ひと 昔 前 は スープの 冷 めない 距 離 と いわれていた 親 世 代 と 子 世 代 の 距 離 感 だが 今 の 高 齢 者 は 昔 に 比 べて 健 康 で 活 動 的 になってい る 点 を 踏 まえれば 例 えば 1 時 間 程 度 は 許 容 範 囲 になってくるかもしれない また 戦 後 の 経 済 発 展 の 過 程 で 地 方 から 東 京 圏 などの 大 都 市 に 出 て 就 職 し 生 活 基 盤 を 築 い てきた 団 塊 の 世 代 を 含 めた 今 の 高 齢 者 の 場 合 その 子 もまた 同 じ 大 都 市 に 住 み 続 けているケー スが 多 く 親 子 の 距 離 感 は 短 くなっている 特 に 東 京 圏 では 全 国 平 均 に 比 べて 子 供 が 親 の 近 くに 住 んでいる 割 合 が 高 く こうした 親 と 別 居 していても 居 住 距 離 が 縮 まっている 最 近 のトレ ンドを 踏 まえると 高 齢 者 だけを 移 住 させることは 現 状 から 大 きく 乖 離 した 発 想 といえるだろ う 長 く 住 み 慣 れた 土 地 から 離 れることに 抵 抗 感 を 示 すのは 都 心 で 何 十 年 も 生 活 してきた 高 齢 者 にとっても 同 じである それでも 高 齢 者 の 地 方 移 住 を 促 進 させようとすれば クリアしなけ ればならない 課 題 が 多 い 目 先 は 高 齢 者 が 住 み 慣 れた 持 家 の 処 分 十 分 な 金 融 資 産 を 持 って いないのであれば 充 実 した 生 活 を 送 る( 貯 蓄 を 取 り 崩 す)ためには 持 家 の 処 分 ( 賃 貸 に 出 すのも 一 つの 方 法 だろうが)は 必 須 になろう ただ 仮 に 子 供 への 持 家 の 生 前 相 続 が 可 能 にな れば 東 京 圏 の 住 宅 を 相 続 した 子 供 が 地 方 に 移 る 可 能 性 は 大 幅 に 低 下 しよう 5. 高 齢 者 雇 用 5 章 では 高 齢 者 の 消 費 を 抑 制 すると 懸 念 される 年 金 支 給 開 始 年 齢 の 引 き 上 げや 年 金 給 付 の 実 質 的 な 減 額 の 影 響 を 緩 和 するため 年 金 以 外 の 収 入 を 得 ていく 手 段 と 考 えられる 高 齢 者 雇 用 の 現 状 や 主 な 課 題 について 見 ていく (1) 年 金 支 給 開 始 までの 生 活 費 厚 生 労 働 省 平 成 26 年 就 労 条 件 総 合 調 査 によると 2014 年 時 点 で 定 年 制 を 定 めている 企 業 割 合 は 93.8%( 前 年 93.3%)であり そのうち 年 齢 を 一 律 に 定 めている 企 業 割 合 が 98.9% ( 同 98.4%) 職 種 別 に 定 めている 企 業 割 合 が 0.7%( 同 1.2%)となっている この 定 年 制 を 一 律 に 定 めている 企 業 のうち 81.8%が 60 歳 を 定 年 年 齢 としており 33 国 内 では 多 くの 企 業 が 60 歳 定 年 制 を 採 用 している 従 って 65 歳 までの5 年 間 の 消 費 支 出 を 補 足 する 分 の 貯 蓄 32 確 かに 大 都 市 に 比 べると 地 方 の 公 共 交 通 機 関 は 頻 度 などの 面 で 必 ずしも 充 実 しているとはいえないが 自 動 車 の 普 及 を 考 えれば 地 方 における 移 動 手 段 が 大 都 市 よりも 著 しく 劣 っているとはいえないだろう 33 65 歳 以 上 としている 企 業 割 合 は 15.5%にすぎない( 厚 生 労 働 省 平 成 26 年 就 労 条 件 総 合 調 査 )