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Ⅱ-3 カーボン クレジットの認証等の制度例 54

Verified Carbon Standard (VCS) VER 市場の統一ルール化を目指して The Climate Group, the International Emissions Trading Association (IETA), the World Economic Forum 及び the World Business Council for Sustainable Development (WBCSD) によって設立 VER 制度の草分け的存在となっており 2010 年においては VER 市場において最も多い取引量を記録している CDM のように第三者機関による審査制度を採り 一般が閲覧可能な登録簿を整備している 基本となる基準は幾度かの改定を重ね 2011 年現在 VCS Standard: VCS Version 3 版が最新となっている また現在では 他制度 (CDM 等 ) で認められた方法論を使用するプロジェクトも対象となっている 登録簿 登録プロジェクト件数 (2011.4.22 現在 ) VCU 発行量 (2011.4.22 現在 ) VCS Registry System 592 53,297,370t-CO2 対象プロジェクト分野 (CDM 方法論や Climate Action Reserve 採用方法論含む ) https://vcsprojectdatabase1.apx.com/mymodule/rpt/myrpt.asp?r=210 エネルギー産業 輸送 需要 運輸 ( 交通 ) 植林 再植林他メタン回収 製造業鉱業 鉱物生産 LULUCF 硝酸削減 化学工業燃料からの漏えい畜産コンポスト 建設廃棄物埋め立て処分場畜産他 55

Gold Standard 約 60 の NGO の支援のもと スイスにある事務局が運営している Gold Standard では CDM や JI プロジェクトについて 持続可能な発展との観点を加えてさらに評価する仕組みのほか それ以外の VER プロジェクトについて制度基準に基づいて評価する仕組みの双方がある 現在のところ 再生可能エネルギーや省エネに関する方法論を有し 持続可能な発展に資するかどうかを重要な点としている 2003 年の制度設立以来 VER 含むカーボン マーケットの市場の発展とともに制度文書の改訂が行われており 2009 年 7 月に発行された Gold Standard Requirements v2.1 が最新となっている 方法論も 現在分野拡大を検討中としている Climate Action Reserve や VCS の登録簿にも関与している APX Inc. が運営する登録簿を有している 登録簿 プロジェクト件数 (2011.4 現在 ) 発行済 VER 量 / 年平均 (2011.4 現在 ) Gold Standard Registry for VERs 対象プロジェクト分野 公開プロジェクト数 :283 内訳 : クレジット発行済み :44 登録 :42 有効化審査中 :26 公開 :171 4,190,162 tco2e http://goldstandard.apx.com/resources/accessreports.asp 再生可能エネルギー 最終消費側での省エネ技術 太陽光地熱産業農業 太陽熱小規模 低インパクト水力公共運輸 環境的に健全なバイオマス ( エネルギー策物 農業系廃棄物 林業系廃棄物 農業残材 ) 風力 環境的に健全なバイオガス 商業 住宅 56

Ⅱ-4 海外カーボン オフセット普及の状況 57

1. 海外カーボン オフセットの認証等の制度の状況 英国認証制度 (QAS) 9 事業者の提供する25 種の商品 サービスが認証されている 詳細 :http://offsetting.decc.gov.uk/cms/approved-offsets/ ニュージーランド認証制度 (Carbon Zero Program) 認証の枠組み 件数 CarbonZero 事業者 (organization) 19 事業者と商品 11 事業者とサービス 4 商品 1 CERMAS 事業者 ニュージーランドの事業者 19 イギリスの事業者 38 その他 3 詳細 :http://www.carbonzero.co.nz/members/organisations_certified.asp オーストラリア認証制度 (NCOS) 7 事業者 ( の提供する商品 サービス ) が認証されている 詳細 : http://www.lowcarbonaustralia.com.au/index.php?q=page/carbon-neutral-network 英国政府担当者等からのヒアリング結果における カーボン オフセット認証制度に対する指摘 クレジット : 使用可能なクレジットの再整理全体 : 申請から認証までの手続の効率化カーボン ニュートラルを視野に入れた基準 制度の設置平成 22 年度カーボン オフセットにかかる英国の動向調査事業 ( 環境省 ) 58

2. 海外カーボン クレジットの認証等の制度の状況 1 1 億 2600 万 t 8700 万 t カーボン クレジット市場全体の規模は拡大傾向にあり 取扱量は 2008 年約 48 億トンから 2009 年約 87 億トンへと約 2 倍近くに増加している そのうち VER の取引規模は 2008 年までは拡大傾向にあったが 2008 年から 2009 年にかけて取引量が減少しており 約 1 億 2600 万トンから約 8700 万トンという値になっている ( ここで掲載する値は 特に明記のない限り State and Trends of the Carbon Market 2010, World Bank より引用し VER 市場に関する値は CCX 及び Voluntary market の値の合算値を用いている ) State and Trend of the Carbon Market, World Bank 2010( 図 ) State of the Voluntary Carbon Markets 2010 59

2. 海外カーボン クレジットの認証等の制度の状況 2 京都議定書における削減目標を考慮し 国際的にも 日本のクレジット需要は欧州に次いで高いとみられている 京都クレジットの価格は 2008 年の 16.1 米ドル /1t をピークに 2009 年は 12.7 米ドル /1t(2008 年度比 21% 低下 ) となっている 一方で VER の価格は 2009 年で 6.5 米ドル /1t となっており 京都クレジットの約半額である State and Trend of the Carbon Market, World Bank 2010( 図 ) State of the Voluntary Carbon Markets 2010 60

2. 海外カーボン クレジットの認証等の制度の状況 3 京都議定書の削減目標を有していないアメリカを含む北米地域をみると カーボン クレジット制度の多様化がみられる そのほか 世界中でいくつかのカーボン クレジット制度が存在しており 近年はクレジットの削減 吸収以外の付加価値に着目する傾向 ( 特に森林吸収プロジェクトにおいて コミュニティの利益や 生物多様性の利益にも資するようなコベネフィッツを評価する制度の開始等 ) や 制度の地域的多様化 ( 中国 インドネシア等 先進国以外の国における制度の設立 ) が見られる State of the Voluntary Carbon Markets 2010 における カーボン クレジット制度に対する指摘 クレジットの品質担保が課題 真の削減量であること ( 追加性 永続性 リーケージ ダブルカウント等の問題 ) 第三者審査機関による審査を受けていること 独立し 信頼瀬の高い登録簿でクレジットが管理されていること等 State and Trend of the Carbon Market, World Bank 2010 ( 図 ) 61

その他参考情報 気候ニュートラルネットワーク (Climate Neutral Network (CN Net) 気候安定化をめざす国 地域 そして地球規模での行動と 社会のすべてのレベルの参画を促進するための国連環境計画 (UNEP) 主催のネットワーク 2008 年 2 月より開始 参加者の取組は必ずしもカーボン ニュートラルに限らず 様々な気候変動に対する内容となっている 参加国例 コスタリカ エチオピア アイスランド モルディブ モナコ ニュージーランド ニウエ ノルウェー パキスタン ポルトガル ( コスタリカは 2021 年までのカーボン ニュートラル達成を宣言 ) 日本における参加者一覧 環境省 上勝町 ( 徳島県 ) 埼玉県 渋谷区 ( 東京都 ) 流山市 ( 千葉県 ) 名古屋市 ( 愛知県 ) 兵庫県 株式会社久栄社 杉田エース株式会社 東急不動産株式会社 日東電工株式会社 日本航空 富士フイルムホールディングス 地球環境平和財団 地球友の会 その他 100 近くの企業や 地域レベルでの参加も有 http://www.ourplanet.jp/network/index.html( 日本語 ) http://www.unep.org/climateneutral/default.aspx?tabid=741( 英語 )2011 年 6 月時点 62

Ⅲ カーボン ニュートラルについて

カーボン ニュートラルの普及に向けて 1. カーボン オフセットの発展型としての カーボン ニュートラル カーボン オフセットの取組は 着実に広がっている こうした中 最近の動きとして カーボン オフセットを更に進め 企業の事業活動や国民の日常生活などから排出される温室効果ガス排出総量を丸ごとオフセットする カーボン ニュートラル の取組が自主的に始まっており 英国等で基準が策定されるなど 海外では どのような取組がニュートラルと言えるのかについても議論が行われている 2. カーボン ニュートラル の普及のために 我が国においてもカーボン ニュートラルを掲げて取り組む事例が見られるようになってきており カーボン オフセットの取組の深化 削減努力の継続性の確保の観点から こうした動きを支援していくことが重要 このため 事業者等にとって取り組み易く また 市民から見て分かりやすい 信頼性が確保されたものとなるよう ルールづくりを含め この新たな取組を実践する事業者等を後押しをすることとしたい 64

海外におけるカーボン ニュートラルの事例 Sky( スカイ ) [ 英国のテレビ局 ] The world s first carbon neutral media company ( 放映にかかる事業活動に伴う排出量のニュートラル化 ) 2006-2011 年における事業活動に伴う排出量を算出し カーボン オフセットを実施 The European Code of Conduct on Energy Efficient Digital TV Services にも参画し 継続的な削減努力を行っている Ashton Hayes( アシュトンヘイス村 ) [ 英国西部 ] Aiming to be England s first carbon neutral village ( 村全体でカーボン ニュートラルを実現する継続的な取組 ) 英国西部の人口 1,000 人ほどの村 住民 事業者の日常的な活動を対象とした削減努力の促進で カーボン ニュートラルの実現を目指す 2006 年から継続して取組を行っている Dell( デル ) [ 米国のパソコンメーカー ] The first major computing company to go carbon neutral ( 電力消費 空調 社員の通勤に伴う排出量のニュートラル化 ) Greenest technology company on the planet を長期的目標に設定し 自社取組の他 取引業者の活動やエンドユーザーの自社製品使用に伴う排出量についても最小限に抑える取組を行っている 米 Dell 社は 2008 年 4 月 2 日 同社の グリーン電力 使用率が テキサス州ラウンドロックの本社キャンパスで 100% に達したと発表した 同社が目指す カーボン ニュートラル化 への新たな一歩だとしている Dell は 2007 年 9 月 事業全体で排出される温室効果ガスを相殺する カーボン ニュートラル化 を目標として掲げている ( 注 ) カーボン ニュートラル を掲げて取り組んでいる事例の一部について 各企業等のリリース資料 HP 等より環境省作成 65

国内におけるカーボン ニュートラルの事例 日本興亜損害保険オフィスでの電力使用から出張や通勤に至るまで企業活動に伴う排出量を包括的に算定する国内初の 日本興亜基準 を 2008 年 10 月に策定 これは環境省の温室効果ガス排出量算定ガイドラインに準拠したもの 摂津市駅阪急電鉄電力使用量 ( 照明 エレベーターなど ) 水道使用量からの年間排出量を約 70 トンと認識し 排出削減の具体的施策として 太陽光発電の導入や LED( 発光ダイオード ) 照明の採用等により 年間約 36 トンの CO2 削減を行った 直接的に削減困難な年間約 34 トンは CO2 排出枠購入により相殺され 日本初の カーボンニュートラルステーション を実現した 三洋電機 2008 年度を起点とする新 3 カ年 グローバル環境行動計画 を策定 カーボン ニュートラルの達成率については 2008 年度 38% 2009 年度 70% 2010 年度 100% の目標を掲げた グローバルの 2010 年度 CO2 排出量は約 160 万トンと予想され 省エネに貢献する環境配慮型商品の使用を通じて 約 160 万トンの抑制効果を引き出すとしている 太陽電池 ハイブリット車用 2 次電池 市販用ニッケル水素充電池 ( エネループ ) などの拡販により カーボン ニュートラル から カーボン マイナス に転換していくとして 達成率目標についても 2009 年度に 100% 目標を達成し 2010 年度目標は 150% に上方修正を行った 2020 年度には省エネ製品で約 2000 万トンの CO2 削減効果を創出するとの目標を掲げる ( 注 ) カーボン ニュートラル を掲げて取り組んでいる事例の一部について 各企業等のリリース資料 HP 等より環境省作成 66

様々な事例をもとに 海外の公的機関ではカーボン ニュートラルを以下のように定義している 出典タイプ定義例指針カーボン ニュートラルとは排出量の算定 削減 残りの排出量のオフセットのステップを通じて ネット排出量がゼロであること Carbon neutral means that through a transparent process of calculating emissions, reducing those emissions and offsetting residual emissions net carbon emissions equal zero. 英国政府エネルギー 気候変動省カーボン ニュートラルガイダンス 英国規格協会 PAS2060 ニュージーランド Carbon Zero 制度 オーストラリア National Carbon Offset Standard (NCOS) (July 2010) ( Carbon Neutral Program 含む ) 海外におけるカーボン ニュートラルの定義例 基準 確認の種類は 以下 3パターンを想定 1 独立第三者機関による認証 2 上記以外の機関による審査 3 自己宣言 第三者認証制度 (2011 年 4 月現在 5 審査機関がウェブで紹介 ) 第三者認証基準 ある対象における GHG 排出の結果 大気への GHG 排出の純増がない状態のこと ( ただし PAS2060 のもとでニュートラルの宣言を行うためには 削減は必須 ) Condition/state in which there is no net increase in the global emission of greenhouse gases to the atmosphere as a result of the greenhouse gas emissions associated with the subject カーボン ニュートラルとなることは 気候にダメージを与える排出量の算定 そのうち可能な部分の削減 そして残ってしまった排出量をバランス (= ゼロ ) にすることであり クレジットの購入により行われることが多い この言葉は製品やサービス イベント 事業者 個別の活動に使われる Being carbon neutral involves calculating total climate-damaging carbon emissions, reducing them where possible, and then balancing the remaining emissions, often by purchasing a carbon offset. The term may be used to describe a product, service, event, organisation, or individual activities. 活動やイベント 家庭 ビジネス 組織といったある特定の範囲における排出量を 当該排出量に責任のあるものがネットにおいてゼロにするボランタリーなメカニズム 削減努力 ( 例エネルギー効率化 再生可能エネルギーの購入 ) を行い 残った排出量に対しネット排出量をゼロにするため クレジットを購入することによっても達成しうる A voluntary mechanism where an activity, event, household, business or organisation is responsible for no net emissions of greenhouse gases and can therefore be declared carbon neutral in that specific area. Carbon neutrality can be achieved by reducing emissions as far as possible (e.g. energy efficiency, purchasing renewable energy) and then purchasing offsets for any residual emissions in order to achieve zero net emissions. 67

カーボン ニュートラルの検討における課題 消費者へ提供すべき項目? 正しい情報提供のためのルール? いつカーボン ニュートラル宣言ができる? 1 排出量の認識 算定の範囲は? 算定のルールは?( 算定の根拠となる数値や算定方法 ) 5 情報提供 2 削減努力 削減努力の在り方は? どのくらい削減すればよい? 誰が検証するのか? 4 検証 3 埋め合わせ クレジットの信頼性? 実施のタイミング? オフセットの必然性? 6 全体 継続的な取組が必要? 68

カーボン ニュートラルの検討における課題設定 1~ 排出量の認識 ~ カーボン オフセットでは排出量の算定対象範囲を任意に設定することが可能であるが カーボン ニュートラルの場合は その認識に幅が出ることにより 取組への信頼性が損なわれる恐れがあるため 算定対象範囲の設定に一定の法則を設けることが必要と考えられる また カーボン ニュートラルの質を高く保つため算定のルールも明確に定めるべきではないか 算定対象範囲をどのように設定すべきか? スコープ 1( 直接排出量 ) スコープ 2(2 次エネルギーの使用による間接排出量 ) スコープ 3( その他の間接排出量 ) どこまでを算定対象範囲に含めるのか スコープ 3 を算定対象に含めた ( 例えばサプライチェーンを含めた排出を対象とする ) 場合 排出量が非常に多くなる可能性があり 取組自体が困難となるおそれがあるのではないか 算定の根拠となる活動量や排出係数の設定方法及び算定に使う算定式は? 活動量は一次データ ( 実測値 ) でなくてはいけないのか? 二次データ ( 既定値 ) でもよいのか? 排出係数は何を用いるのか? 算定式の信頼性を何をもって担保するのか? 現行のカーボン オフセット認証制度では 算定対象範囲の設定は自ら任意に設定が可能となっている 算定に関するある一定の考え方はガイドラインで示されているが 厳密なルールは定まっていない部分もあり 事業者に任されている部分が多い 海外のカーボン ニュートラル指針や制度では 各国政府や制度で定める算定ガイドラインや, PAS2050, ISO14040, ISO14064, the GHG Protocol 等複数のガイドラインから 算定対象範囲の設定 算定のルールを選択することを認めていることが多い 69

カーボン ニュートラルの検討における課題設定 2~ 削減努力 ~ カーボン オフセットでは削減努力は定性的な評価であり 特に数値的な基準は定まっていない カーボン ニュートラルでは 排出量の削減を 努力 として定性評価するべきか? それとも定量評価をするべきか? 削減は 定性評価 か? 定量評価 か? 定性評価の場合 : 何を基準に誰が評価を行うのか 定量評価の場合 : 1 どのくらい削減すればよいのか また 削減が行われたことを誰が評価するのか 2 原単位の削減か? 総量の削減か? 現行のカーボン オフセット認証制度では 削減努力は定性評価であり いつ どんなことをしなければならないといったような基準を特に設けてはおらず 事業者が行っている ( 又は計画している ) 削減努力全般を認めている 海外のカーボン ニュートラル指針や制度では 基本的には定量評価 しかし 量的基準は定まっていない なお 総量あるいは原単位における量的基準をオプションとして提示している制度もある その他 定量的に削減を行うための削減活動例の提示などを行う制度も多い 70

カーボン ニュートラルの検討における課題設定 3~ 埋め合わせ ~ カーボン オフセットの際に活用するクレジットを カーボン ニュートラルでも使用することでよいか? 無効化のタイミングは? また クレジットの無効化以外の埋め合わせ ( 他の場所での削減 吸収活動 ) も認めるべきか? 使用するクレジットの種類は? 以下のような品質が担保されているクレジットが使用されるべき 厳格性が確保された削減 吸収量であること ( 保守性 追加性 永続性 リーケージ ダブルカウント等の問題 ) 第三者検証機関による検証を受けていること 独立し 信頼性の高い登録簿でクレジットが管理されていること等 カーボン ニュートラルではオフセットされる量が多くなる可能性が高いため 上記以外のクレジットの使用も認め 使用できるクレジットの種類を増やすことも視野に入れるか? どのタイミングで無効化がされるべきなのか? クレジットの無効化以外の埋め合わせも認めるべきか? クレジットの無効化以外に他の場所での削減 吸収活動をもって埋め合わせることも認めた場合 その活動による排出削減 吸収量をどのように確認 担保するか? 現行のカーボン オフセット認証制度では 京都メカニズムクレジット (AAU, ERU, CER, RMU) オフセット クレジット (J-VER) 都道府県 J-VER 認証基準では クレジットの無効化以外の排出削減活動による埋め合わせは認めていない 海外のカーボン ニュートラル指針や制度では 京都メカニズムクレジット (AAU, ERU, CER, RMU), EU-ETS 排出取引枠 (EUA) VER( たとえば Gold Standard のクレジット,Voluntary Carbon Standard) 等 オプションを提示している 71

カーボン ニュートラルの検討における課題設定 4~ 検証 ~ カーボン オフセットでは検証が義務付けられてはいない しかし カーボン ニュートラルの場合は 排出量が実質的にゼロと見なせる状態になることが担保されなければならないため 算定及び無効化に関しての検証は必要か? また 誰が検証を行うのか? 検証の必要性は? また 検証の対象は? 検証は必須か? 自己宣言でよいのか? どの範囲を検証すべきか? 算定 削減 無効化 将来計画すべて? 誰が検証を行うのか? ある一定の資格を持った独立した第三者機関による検証か? それとも その他の機関等によるも検証も認めるか? 信頼性のある検証を担保するために 何を基準として検証できる主体を設定するか? 現行のカーボン オフセット認証制度では 要求事項ではないが 行うことを妨げるものではない 海外のカーボン ニュートラル指針や制度では 独立した第三者機関 (ISO14065 や ISO14040 により認定を与えられている等資格をもった機関 ) による審査を求めている制度が多い しかし その他の機関による検証や 自ら検証を行うことも妨げない制度もある 72

カーボン ニュートラルの検討における課題設定 5~ 情報提供 ~ カーボン オフセットの際の情報提供の他に カーボン ニュートラルにおいて消費者へ提供すべき項目はどのようなものか? 正しい情報提供のためのルール設定が必要では? いつカーボン ニュートラルを宣言できるのか? 今からカーボン ニュートラルの取組を始めようとする事業者にとっても対応できる カーボン ニュートラル宣言のタイミングは? カーボン ニュートラルにおける情報提供のためのルール設定は? カーボン ニュートラルへのコミットメントの段階なのか カーボン ニュートラルを達成した段階なのかを分けて表現をすることによって 事業者のステータスが明確に分かるようにするなど 表現のルールを設定すべきでは? 現行のカーボン オフセット認証制度では ガイドラインによる一定の考え方の提示が行われており 基準に情報提供必須事項が定められている 情報提供のタイミングは各取組によって様々 海外のカーボン ニュートラル指針や制度では 基本的には情報提供必須項目が提示されており それらに基づく情報提供が必須となっている なお カーボン ニュートラルのコミットメントの段階と カーボン ニュートラル達成の段階を明確に分け それぞれに表現方法を細かく規定している制度もある 73