平 成 19 年 度 実 績 報 告 先 進 的 統 合 センシング 技 術 平 成 19 年 度 採 択 研 究 代 表 者 本 田 学 国 立 精 神 神 経 センター 神 経 研 究 所 疾 病 研 究 第 七 部 部 長 脳 に 安 全 な 情 報 環 境 をつくるウェアラブル 基 幹 脳 機 能 統 合 センシングシステム 1. 研 究 実 施 の 概 要 情 報 環 境 と 脳 との 不 適 合 によって 発 生 する 特 異 なストレスは 生 命 活 動 を 制 御 する 基 幹 脳 ( 脳 幹 視 床 視 床 下 部 などからなる 生 命 の 基 幹 的 機 能 を 担 う 脳 部 位 )の 機 能 異 常 を 導 き 情 動 自 律 神 経 系 や 内 分 泌 免 疫 系 の 不 調 を 介 して 様 々な 現 代 病 の 原 因 となる 本 研 究 では 安 全 安 心 な 情 報 環 境 の 創 出 に 資 するために 多 チャンネルバイタルセンサからのシグナルを 統 合 することによ り 小 型 軽 量 で 高 確 度 なウェアラブル 基 幹 脳 機 能 センシング 技 術 を 創 成 し 日 常 生 活 空 間 で 簡 便 に 使 用 できるシステムの 実 用 化 を 目 的 とする 研 究 初 年 度 にあたる 平 成 19 年 度 は 研 究 の 円 滑 な 立 ち 上 げのために すべての 開 発 要 素 につ いて 基 本 的 な 設 計 をおこなうとともに 研 究 開 発 環 境 を 整 備 することを 目 標 として 研 究 を 遂 行 し 概 ね 計 画 通 りの 成 果 を 得 た 具 体 的 には 基 幹 脳 活 性 指 標 再 構 成 技 術 を 開 発 するために 不 可 欠 の 磁 気 共 鳴 画 像 - 脳 波 同 時 計 測 システムを 構 築 し データ 収 集 を 開 始 した またウェアラブルセンサ システムの 基 本 的 な 回 路 設 計 を 実 施 するとともに 新 しい 雑 音 除 去 技 術 を 考 案 し 試 作 に 入 った システム 校 正 臨 床 評 価 用 シミュレータのシステム デザインを 終 え それに 従 ってシミュレータ 用 ブ ースを 構 築 した シミュレータ 用 の 音 響 呈 示 装 置 と 低 拘 束 度 PET 装 置 の 基 本 設 計 を 終 え 前 倒 し で 試 作 に 入 るとともに パイロットスタディ 用 の 音 響 映 像 ソフトウェアの 試 験 的 制 作 を 行 った 今 後 は 基 幹 脳 活 性 指 標 再 構 成 技 術 を 開 発 するとともに それを 組 み 込 んだウェアラブルセン サを 試 作 し システム 校 正 臨 床 評 価 用 シミュレータを 用 いて 実 証 試 験 を 実 施 する 予 定 である 2. 研 究 実 施 内 容 ( 文 中 にある 参 照 番 号 は 4.(1)に 対 応 する) 本 研 究 は 研 究 全 体 を 大 きく 4 項 目 に 整 理 して 推 進 する(1. 基 幹 脳 活 性 指 標 再 構 成 技 術 の 開 発 2.ウェアラブルセンサシステムの 開 発 3.システム 校 正 臨 床 評 価 用 シミュレータを 用 いたシ
ステム 校 正 とフィードバック 4. 臨 床 試 験 の 実 施 ) このうち 4. 臨 床 試 験 の 実 施 はシステム 試 作 と 校 正 が 完 了 する 平 成 23 年 度 以 降 に 実 施 する 予 定 である 残 り 3 項 目 について 平 成 19 年 度 の 研 究 実 施 内 容 を 項 目 ごとに 述 べる なお 本 研 究 開 発 の 理 論 的 背 景 となる 情 報 環 境 との 不 適 合 に よって 引 き 起 こされる 自 己 解 体 現 象 に 関 して 細 胞 生 物 学 と 人 工 生 命 を 用 いて 検 討 した 論 文 が in press となっている( 原 著 論 文 1) 1. 基 幹 脳 活 性 指 標 再 構 成 技 術 の 開 発 頭 皮 上 の 限 定 された 電 極 から 記 録 されたシグナルに 必 要 に 応 じて 心 拍 変 動 や 皮 膚 抵 抗 などの バイタルシグナルを 加 味 し 数 理 的 手 法 により 再 構 成 して ポジトロン 断 層 撮 像 法 または 磁 気 共 鳴 機 能 画 像 法 をもちいて 同 時 計 測 された 基 幹 脳 の 活 性 と 相 関 の 高 い 基 幹 脳 活 性 指 標 (Fundamental Brain Activity index)を 算 出 する 解 析 技 術 を 構 築 することが 目 標 である 平 成 19 年 度 は 基 幹 脳 活 性 指 標 算 出 の 基 盤 となるデータを 収 集 するために 時 間 分 解 能 の 比 較 的 良 好 な 磁 気 共 鳴 機 能 画 像 と 多 チャンネル 頭 皮 上 脳 波 とを 同 時 に 計 測 するシステムを 構 築 し データ 収 集 を 開 始 した 磁 気 共 鳴 画 像 装 置 は 急 速 に 変 動 する 傾 斜 磁 場 を 発 生 させることにより 画 像 を 得 るため 画 像 装 置 内 に 設 置 した 脳 波 電 極 には 電 磁 誘 導 によって 大 きなノイズが 混 入 する 一 方 この 撮 像 法 は 核 磁 気 共 鳴 現 象 を 利 用 するため 磁 場 変 化 が 時 間 的 に 厳 密 に 制 御 されてお り 磁 場 が 大 きく 変 動 する 区 間 とそうでない 区 間 とが 明 瞭 に 分 けられる そこで 磁 気 共 鳴 画 像 装 置 を 制 御 するクロックを 用 いて 脳 波 データをサンプリングする A/D コンバータを 外 部 制 御 し 磁 場 が 大 きく 変 化 しない 区 間 で 脳 波 データをサンプリングすることにより 電 磁 誘 導 によって 発 生 するノ イズを 著 しく 軽 減 することが 可 能 になる(Stepping Stone Sampling 法 ) またノイズが 混 入 した 場 合 に も 画 像 装 置 と 脳 波 データサンプリング 装 置 を 同 一 のクロックで 制 御 することによりノイズ 波 形 が 一 定 となるため 記 録 されたデータからノイズ 波 形 を 加 算 平 均 したテンプレートを 差 し 引 く(Template Subtraction 法 )ことにより ノイズ 除 去 の 精 度 が 上 昇 する そこで Stepping Stone Sampling 法 の 原 理 を 開 発 した 国 立 精 神 神 経 センター 武 蔵 病 院 の 穴 見 公 隆 博 士 との 共 同 研 究 により 本 プロジェク トで 使 用 する 高 磁 場 磁 気 共 鳴 画 像 装 置 において 上 記 のノイズ 除 去 法 を 実 現 するためのシステムを 構 築 した その 結 果 図 1に 示 すように 実 用 水 準 でノイズ 除 去 が 可 能 となった 現 在 基 幹 脳 活 性 指 標 再 構 成 技 術 開 発 のためのデータを 蓄 積 中 である ノイズ 除 去 前 ノイズ 除 去 後 図 1 磁 気 共 鳴 画 像 と 脳 波 の 同 時 計 測 データ 2.ウェアラブルセンサシステムの 開 発 日 常 生 活 環 境 において 日 常 的 な 活 動 を 妨 げることなく 脳 波 心 拍 変 動 皮 膚 抵 抗 などを 同 時
に 計 測 することが 可 能 なセンサシステムを 開 発 することが 目 標 である 平 成 19 年 度 は センサシステムについて 回 路 の 基 本 設 計 と 試 作 を 並 行 して 進 めるとともに 雑 音 除 去 法 についての 検 討 を 行 った 3.システム 校 正 臨 床 評 価 用 シミュレータを 用 いたシステム 校 正 とフィードバック 開 発 するシステムの 校 正 と 臨 床 評 価 のために 日 常 生 活 環 境 をシミュレートできるモデル 空 間 を 構 築 する 必 要 がある 提 案 者 らがこれまでに 蓄 積 してきた 医 学 生 理 学 的 知 見 と 技 術 を 活 かして 基 幹 脳 機 能 を 活 性 化 するための 情 報 環 境 制 御 システムを 構 築 するとともに 超 小 型 ポジトロン 断 層 撮 像 装 置 を 被 験 者 の 拘 束 度 を 軽 減 した 状 態 で 計 測 可 能 なように 改 良 し システム 校 正 と 臨 床 評 価 を 行 うことが 目 標 である 平 成 19 年 度 は システム 校 正 臨 床 評 価 用 シミュレータのシステム デザインを 行 い それに 基 づいて 上 記 の 基 本 性 能 を 備 えたブースを 国 立 精 神 神 経 センターに 構 築 した( 図 2) このブース は 日 常 生 活 環 境 をシミュレートしつつ 同 時 に 脳 波 やバイタルシグナルなどの 生 理 指 標 を 計 測 す ることが 可 能 であり 寛 いだ 状 態 の 被 験 者 から 生 理 データを 計 測 することが 可 能 なように 設 計 され ている また システム 校 正 を 行 うためには 薬 剤 を 用 いずに 視 聴 覚 情 報 によって 被 験 者 の 基 幹 脳 機 能 を 変 動 させてデータをサンプリングし 情 報 入 力 に 対 する 基 幹 脳 の 応 答 特 性 を 捉 える 必 要 がある そのために 本 研 究 グループが 発 見 したハイパーソニック エフェクト( 人 間 の 可 聴 域 上 限 をこえ る 超 高 周 波 成 分 を 豊 富 に 含 む 複 雑 な 音 が 基 幹 脳 を 活 性 化 する 現 象 )を 応 用 する ハイパー ソニック エフェクトの 基 幹 脳 活 性 変 動 効 果 を 十 分 に 発 揮 するために 必 要 な 150kHz 以 上 に 及 ぶ 超 高 周 波 成 分 に 対 する 特 性 を 大 幅 に 改 善 したスピーカを 設 計 し 試 作 を 開 始 した またシミュレータの 特 性 調 整 用 に 基 幹 脳 機 能 モニタに 必 要 十 分 な 時 間 を 反 復 なしにカバー することの 可 能 な 時 間 長 を 備 え 基 幹 脳 活 性 を 変 動 する 効 果 をもった 音 響 映 像 ソフトウェアの 試 作 を 行 った さらに PET 装 置 を 低 拘 束 度 化 するための 基 本 設 計 を 終 え 前 倒 しで 試 作 に 入 っ た 図 2 システム 校 正 臨 床 評 価 用 シミュレータ 用 として 国 立 精 神 神 経 センターに 構 築 したブース
3. 研 究 実 施 体 制 (1) 国 立 精 神 神 経 センター グループ 1 研 究 分 担 グループ 長 : 本 田 学 ( 国 立 精 神 神 経 センター 部 長 ) 基 幹 脳 機 能 統 合 センシングシステムの 開 発 と 臨 床 評 価 (2) 情 報 通 信 研 究 機 構 グループ 1 研 究 分 担 グループ 長 : 片 桐 祥 雅 ( 情 報 通 信 研 究 機 構 専 攻 研 究 員 ) 基 幹 脳 機 能 統 合 センシングシステムの 設 計 と 試 作 (3) 国 際 科 学 振 興 財 団 グループ 1 研 究 分 担 グループ 長 : 大 橋 力 ( 国 際 科 学 振 興 財 団 理 事 主 席 研 究 員 ) 基 幹 脳 機 能 統 合 センシングシステム 校 正 評 価 用 シミュレータにおける 基 幹 脳 活 性 化 統 合 ソ フトウェア 構 築 (4) メディア 教 育 開 発 センター グループ 1 研 究 分 担 グループ 長 : 仁 科 エミ (メディア 教 育 開 発 センター 准 教 授 ) 基 幹 脳 機 能 統 合 センシングシステム 校 正 評 価 用 シミュレータの 視 覚 情 報 環 境 構 築 と 運 用 (5) アクション リサーチ グループ 1 研 究 分 担 グループ 長 : 前 川 督 雄 (( 株 )アクション リサーチ 部 長 ) 基 幹 脳 機 能 統 合 センシングシステム 校 正 評 価 用 シミュレータ 構 築 (6) 神 戸 高 専 グループ 1 研 究 分 担 グループ 長 : 山 本 誠 一 ( 神 戸 市 立 工 業 高 等 専 門 学 校 教 授 ) 基 幹 脳 機 能 統 合 センシングシステム 校 正 用 PET の 非 拘 束 化 設 計 と 運 用
4. 研 究 成 果 の 発 表 等 (1) 論 文 発 表 ( 原 著 論 文 ) 1. Oohashi T., Ueno O., Maekawa T., Kawai N., Nishina E., Honda M., Effectiveness of hierarchical model for the biomolecular covalent bond: An Approach Integrating Artificial Chemistry and an Actual Terrestrial Life System, Artificial Life, in press.