京 都 教 育 大 学 教 育 実 践 研 究 紀 要 第 14 号 2013 51 中 学 校 技 術 家 庭 科 における 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 の 現 状 京 都 府 の 中 学 校 教 員 への 調 査 から 中 須 晴 南 * 湯 川 夏 子 ** 土 屋 英 男 *** 中 西 洋 子 ** (* 京 都 教 育 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科 ** 京 都 教 育 大 学 家 政 科 *** 京 都 教 育 大 学 産 業 技 術 科 学 科 ) The Actual Conditions of Cooperation of Plant Culture and Cooking Practice in the Technology and Home Economics Education of Junior High School. -From the Investigation to the Junior High School Teacher in Kyoto Prefecture- Haruna Nakasu Natsuko Yukawa Hideo Tsuchiya Yoko Nakanishi 2013 年 11 月 30 日 受 理 抄 録 : 京 都 府 の 中 学 校 技 術 科 および 家 庭 科 担 当 教 員 を 対 象 に 栽 培 と 調 理 実 習 を 連 携 した 授 業 を 効 果 的 に 行 うための 方 法 を 考 えることを 目 的 としたアンケート 調 査 を 行 った その 結 果 技 術 科 担 当 教 員 は 栽 培 に 関 す る 基 礎 的 な 知 識 を 求 めており 教 員 自 身 の 経 験 不 足 がうかがえた また 家 庭 科 では 授 業 時 数 が 全 体 的 に 少 なく 調 理 実 習 の 時 間 不 足 という 問 題 があった 連 携 については 収 穫 時 期 や 量 が 調 理 実 習 と 合 わないとい う 課 題 も 明 らかになった 連 携 を 行 うにあたっては 栽 培 する 野 菜 を 収 穫 しやすく かつ 一 度 に 多 く 収 穫 でき るものにするとともに 50 分 間 という 短 い 時 間 でも 可 能 な 調 理 実 習 教 材 の 提 案 等 を 行 うことが 必 要 である キーワード: 中 学 校 技 術 家 庭 科 栽 培 調 理 実 習 連 携 Ⅰ.はじめに いつでもどこにいても 食 事 をすることができるような 現 代 において 食 材 のありがたさや 作 ってくれる 人 に 対 する 感 謝 の 気 持 ちが 薄 れつつあるのではないだろうか 家 庭 科 で 食 事 の 重 要 性 や 心 身 の 健 康 については 学 習 する 一 方 で 栽 培 等 の 生 産 体 験 を 行 うことは 難 しいこともあり 感 謝 の 心 についてはさほど 学 習 していないのが 現 状 である この 現 状 の 中 平 成 20 年 の 学 習 指 導 要 領 の 改 訂 により 中 学 校 技 術 家 庭 科 技 術 分 野 において 選 択 で あった 栽 培 の 分 野 が 平 成 24 年 度 から 生 物 育 成 に 関 する 技 術 の 内 容 として 必 修 化 された 1) 家 庭 科 の 調 理 実 習 では 野 菜 を 使 った 料 理 を 取 り 上 げることもできることから 技 術 科 の 栽 培 という 生 産 体 験 と 連 携 を 行 うことで 感 謝 の 気 持 ちを 育 むことができる 他 授 業 内 容 に 関 連 性 を 持 たせ 生 徒 の 意 識 を 高 めることもできる と 考 えられる しかし 学 習 指 導 要 領 には 栽 培 と 調 理 実 習 を 連 携 させるとの 記 載 はなく それぞれ 独 立 して 行 っ ている 学 校 が 多 いことが 考 えられる 家 庭 科 においても 調 理 や 食 事 に 関 する 学 習 は 行 うが 栽 培 や 流 通 廃 棄 を 含 む 食 材 の 循 環 については 学 ぶ 機 会 が 少 ないことが 推 測 される 技 術 科 と 家 庭 科 を 連 携 させることで 食 を 一 つ の 流 れとしてとらえることができ 食 に 関 する 理 解 を 深 めることができるのではないだろうか しかし 技 術 科 の 栽 培 と 家 庭 科 の 調 理 実 習 の 連 携 の 授 業 を 行 うにあたっては 課 題 も 多 いことが 考 えられる そこで 本 研 究 では 栽 培 と 調 理 実 習 を 連 携 した 授 業 を 効 果 的 に 行 うための 方 法 を 考 えることを 目 的 とし 京 都 府 の 中 学 校 教 員 に 対 し アンケート 調 査 を 行 い 技 術 科 および 家 庭 科 担 当 教 員 が 栽 培 や 調 理 実 習 を 行 うにあたり 考 慮 していることや 連 携 に 対 する 意 識 について 明 らかにする Ⅱ. 調 査 概 要 1. 調 査 方 法 2012 年 9 月 ~10 月 に 京 都 府 下 の 全 中 学 校 ( 国 立 公 立 私 立 ) 計 199 校 の 技 術 科 および 家 庭 科 担 当 教 員 を 対 象 に 自 記 式 質 問 紙 による 調 査 を 行 った 調 査 票 は 技 術 科 1 部 家 庭 科 1 部 の 計 2 部 を 送 付 した 回 答 は 質
52 京 都 教 育 大 学 教 育 実 践 研 究 紀 要 第 14 号 問 紙 郵 送 法 の 他 電 子 メールも 併 用 した また 調 査 を 行 うにあたり 京 都 府 及 び 京 都 市 の 技 術 家 庭 科 指 導 主 事 の 方 を 通 じて 協 力 要 請 を 行 った 有 効 回 答 数 及 び 有 効 回 収 率 はそれぞれ 技 術 科 61 部 (30.7%) 家 庭 科 56 部 (28.1%)であった 2. 調 査 項 目 アンケートの 内 容 は 1. 回 答 者 の 属 性 2. 技 術 分 野 C 生 物 育 成 に 関 する 技 術 の 内 容 3. 家 庭 分 野 B 食 生 活 と 自 立 の 内 容 4. 生 物 育 成 または 調 理 実 習 を 行 うにあたっての 希 望 5. 技 術 分 野 ( 栽 培 )と 家 庭 分 野 ( 調 理 実 習 )の 連 携 とした Ⅲ. 調 査 結 果 1. 回 答 者 の 属 性 回 答 者 の 内 訳 を 表 1 に 示 す 技 術 科 担 当 教 員 61 名 ( 男 性 58 名 女 性 3 名 ) 家 庭 科 担 当 教 員 56 名 ( 男 性 2 名 女 性 54 名 )であり 性 別 の 差 が 顕 著 であった 年 齢 構 成 は 40~50 歳 代 の 教 員 が 多 く 全 体 の 6~7 割 を 占 めていた 7 割 以 上 の 雇 用 形 態 は 教 諭 であったが 1 割 を 超 える 教 員 が 臨 時 の 教 員 免 許 で 技 術 科 または 家 庭 科 を 担 当 していた 2 割 を 超 える 教 員 は 複 数 校 勤 務 をしており 他 教 科 の 兼 務 をしている 教 員 も 技 術 科 は 15 名 家 庭 科 は 10 名 と 多 かった 表 1 教 員 及 び 勤 務 校 技 術 家 庭 技 術 家 庭 性 別 男 性 58 2 教 員 免 許 専 修 7 3 女 性 3 54 一 種 32 36 年 齢 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 以 上 無 回 答 4 8 18 27 3 1 雇 用 形 態 教 諭 52 再 任 用 教 諭 2 常 勤 講 師 1 非 常 勤 講 師 5 1 8 11 二 種 臨 時 12 10 9 8 21 勤 務 学 校 数 1 校 45 42 15 複 数 校 16 14 0 1 40 0 4 10 2 他 教 科 兼 務 の 有 無 あり なし 無 回 答 15 44 2 10 41 5 計 61 56 2. 技 術 分 野 C 生 物 育 成 に 関 する 技 術 の 内 容 技 術 科 担 当 教 員 に C 生 物 育 成 に 関 する 技 術 の 栽 培 に 関 する 内 容 について 尋 ねた (1) 生 物 育 成 の 作 物 とその 種 類 表 2 生 物 育 成 において 扱 う 作 物 ( 校 ) 生 物 育 成 の 実 習 で 扱 う 作 物 について 尋 ねたところ 京 都 府 の 中 学 校 生 物 育 成 の 作 物 学 校 数 においては 動 物 や 水 産 生 物 の 扱 いはほとんどなく 多 くの 学 校 で 野 菜 や 花 の 栽 培 実 習 を 行 っていた 特 に 8 割 を 超 える 学 校 においては 野 野 菜 48 菜 の 栽 培 をしていた( 表 2) 野 菜 と 花 3 花 4 未 定 無 記 入 6 計 61
中 学 校 技 術 家 庭 科 における 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 の 現 状 53 栽 培 実 習 において 育 てている 野 菜 は サツマイモとトマト ミニトマトが 12 校 と 最 も 多 く 次 いで 大 根 水 菜 という 順 に 多 かった( 図 1) 技 術 科 の 教 科 書 に 栽 培 例 として 掲 載 されていないシシトウ 等 の 野 菜 も 多 くみら れ 多 種 多 様 な 野 菜 が 育 てられていた また 小 学 校 で 育 てられることの 多 いトマトやオクラ 等 の 野 菜 もみられ 必 ずしも 小 学 校 と 中 学 校 で 育 てる 野 菜 が 区 別 されている 訳 ではなかった 水 菜 や 万 願 寺 トウガラシといった 京 都 の 伝 統 的 な 野 菜 も 育 てられており 地 域 の 野 菜 について 学 ばせている 学 校 のあることがうかがえた サツマイモ トマト ミニトマト 大 根 ハツカ 大 根 水 菜 ゴーヤ ピーマン 万 願 寺 トウガラシ シシトウ レタス サニーレタス リーフレタス キュウリ ジャガイモ ナス スプラウト タマネギ n=51 オクラ 図 1 栽 培 をしている 野 菜 の 種 類 ( 複 数 回 答 ) 0 2 4 6 8 10 12 14 ( 校 ) (2) 野 菜 及 び 花 の 収 穫 後 の 扱 い 方 栽 培 実 習 を 行 った 野 菜 及 び 花 の 収 穫 後 の 対 応 は 多 くの 学 校 は 家 に 持 って 帰 らせていた( 図 2) また 家 庭 科 の 調 理 実 習 や 技 術 科 の 時 間 に 食 べる 等 の 対 応 をしている 学 校 も 多 い 野 菜 は 家 に 持 ち 帰 った 後 おそらく 調 理 をしているとみられ 野 菜 を 栽 培 した 場 合 は 何 らかの 形 で 食 べる という 対 応 をしている 学 校 が 多 いよう である 家 に 持 って 帰 らせる 家 庭 科 の 調 理 実 習 で 使 用 する 技 術 科 の 授 業 時 間 に 食 べる 特 に 何 もしない n=61 0 10 20 30 40 野 菜 野 菜 と 花 花 未 定 無 記 入 ( 校 ) ( 校 ) 図 2 野 菜 及 び 花 の 収 穫 後 の 扱 い 方 ( 複 数 回 答 ) (3) 栽 培 実 習 の 題 材 を 決 める 際 に 考 慮 すること 栽 培 実 習 を 行 う 場 合 に 問 題 課 題 であると 思 われること 栽 培 実 習 の 題 材 を 決 める 際 6 割 近 くの 教 員 が 育 成 が 容 易 栽 培 場 所 の 準 備 ができる 生 徒 が 取 り 組 み やすい ということを 考 慮 していることが 分 かった( 図 3) 必 修 化 して 間 もないということもあり 簡 単 にで きるものや 栽 培 場 所 に 重 点 をおいている 傾 向 がみられた 調 理 実 習 に 使 用 できる ことを 考 慮 している 教 員 は 少 なかったが 連 携 をするとなると 調 理 実 習 のことも 考 慮 して 題 材 を 選 択 する 必 要 性 があるだろう 栽 培 実 習 を 行 う 場 合 の 問 題 課 題 は 評 価 の 方 法 が 一 番 多 く 次 いで 栽 培 場 所 がない 天 候 管 理 ができない 手 間 がかかる ということが 挙 げられた( 図 4) 実 習 全 般 において 問 題 となる 評 価 方 法 の 他 栽 培 実 習 を 行 うにあたっては 栽 培 の 場 所 や 管 理 方 法 が 問 題 となっているようである
54 京 都 教 育 大 学 教 育 実 践 研 究 紀 要 第 14 号 育 成 が 容 易 栽 培 場 所 の 準 備 ができる 生 徒 が 取 り 組 みやすい 費 用 が 安 く 済 む 生 徒 の 興 味 関 心 を 得 やすい 指 導 要 領 に 準 拠 している 短 期 間 でできる 家 でも 育 てられそう 調 理 実 習 に 使 用 できる 長 期 休 暇 も 扱 いやすい 学 習 内 容 が 多 い 学 年 の 学 習 度 に 合 っている 教 科 書 に 載 っている 生 徒 の 生 物 育 成 技 術 があがる 環 境 に 配 慮 している 他 の 分 野 との 兼 ね 合 い n=61 0 10 20 30 40 50 図 3 栽 培 実 習 の 題 材 を 決 める 際 に 考 慮 すること( 技 術 分 野 )( 複 数 回 答 ) 評 価 の 方 法 栽 培 場 所 がない 天 候 管 理 ができない 手 間 がかかる 1 回 の 授 業 あたりの 時 間 想 定 外 のトラブルへの 対 応 費 用 の 問 題 授 業 時 間 数 育 て 方 が 分 からない 生 徒 の 授 業 態 度 教 科 書 や 指 導 要 領 の 情 報 不 足 教 員 数 材 料 の 調 達 が 困 難 生 徒 の 生 物 育 成 技 術 の 実 態 学 校 や 文 部 科 学 省 の 方 針 n=61 0 10 20 30 40 図 4 栽 培 実 習 を 行 う 場 合 に 問 題 課 題 であると 思 われること( 技 術 分 野 )( 複 数 回 答 ) (4) 生 物 育 成 の 授 業 を 行 うにあたり 欲 しい 情 報 生 物 育 成 の 授 業 を 行 うにあたり 欲 しい 情 報 は 中 学 生 に 適 した 教 材 が 一 番 多 く(31 名 ) 次 いで 基 本 的 な 育 て 方 (29 名 ) 病 気 害 虫 への 対 応 (26 名 ) 土 の 管 理 方 法 (25 名 )であった 生 物 育 成 が 必 修 化 され て 1 年 目 だったこともあり 栽 培 に 関 する 基 礎 的 な 情 報 を 希 望 する 教 員 が 多 かった 3. 家 庭 分 野 B 食 生 活 と 自 立 の 内 容 家 庭 科 担 当 教 員 に 家 庭 分 野 B 食 生 活 と 自 立 の 調 理 実 習 に 関 する 内 容 について 尋 ねた (1) B 食 生 活 と 自 立 の 授 業 時 間 数 と 1 回 あたりの 調 理 実 習 時 間 B 食 生 活 と 自 立 の 授 業 時 間 数 は 21~30 時 間 が 23 校 と 最 も 多 く 次 いで 31 時 間 以 上 (19 校 )が 多 かっ た 1 回 あたりの 調 理 実 習 時 間 は 約 6 割 の 学 校 (34 校 )で 50 分 以 内 という 現 状 であった 1 時 間 の 授 業 の 中 で 調 理 実 習 を 行 っている 学 校 が 多 いようである
中 学 校 技 術 家 庭 科 における 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 の 現 状 55 (2) 調 理 実 習 で 使 用 する 野 菜 について 学 ばせること 調 理 実 習 で 使 用 する 野 菜 について 学 ばせることは 教 科 書 でも 取 り 上 げられている 調 理 性 や 栄 養 価 が 多 く 次 いで 旬 や 生 産 地 という 順 であった( 図 5) 栽 培 や 流 通 の 過 程 について 学 ばせている 教 員 は 少 なかった 調 理 性 栄 養 価 旬 生 産 地 栽 培 の 過 程 流 通 の 過 程 n=56 図 5 調 理 実 習 で 使 用 する 野 菜 について 学 ばせること( 複 数 回 答 ) (3) 調 理 実 習 の 題 材 を 決 める 際 に 考 慮 すること 調 理 実 習 を 行 う 場 合 に 問 題 課 題 であると 思 われること 調 理 実 習 の 題 材 を 決 める 際 には 7 割 を 超 える 教 員 が 生 徒 が 取 り 組 みやすい 短 時 間 でできる 家 でも 作 れそう ということを 考 慮 していた( 図 6) 授 業 の 一 時 間 の 中 で 作 ることができ かつ 生 徒 が 日 常 生 活 でも 活 用 できるということに 重 点 を 置 いているようである 実 習 の 問 題 や 課 題 は 準 備 後 片 付 けの 時 間 不 足 や 調 理 の 時 間 不 足 授 業 時 間 数 という 回 答 が 多 かった( 図 7) 学 ばせる 内 容 は 多 いにもかかわらず 時 間 数 が 少 ないという 教 科 の 問 題 が 明 らかになった 生 徒 が 取 り 組 みやすい 短 時 間 でできる 家 でも 作 れそう 生 徒 の 興 味 関 心 を 得 やすい 味 がおいしい 材 料 が 用 意 しやすい 指 導 要 領 に 準 拠 している 学 習 できる 内 容 が 多 い 生 徒 の 調 理 技 術 があがる 教 科 書 に 載 っている 費 用 が 安 く 済 む 学 年 の 学 習 度 に 合 っている 環 境 に 配 慮 している 他 の 分 野 との 兼 ね 合 い 小 学 校 の 復 習 を 兼 ねている 0 10 20 30 40 50 図 6 調 理 実 習 の 題 材 を 決 める 際 に 考 慮 すること( 家 庭 分 野 )( 複 数 回 答 ) n=56 準 備 後 片 付 けの 時 間 不 足 調 理 の 時 間 不 足 授 業 時 間 数 評 価 の 方 法 給 食 との 兼 ね 合 い 教 員 数 設 備 や 器 具 が 不 十 分 衛 生 面 ( 食 中 毒 など) 危 険 性 ( 事 故 や 怪 我 ) 生 徒 の 調 理 技 術 の 実 態 費 用 の 問 題 材 料 の 調 達 が 困 難 生 徒 の 授 業 態 度 班 の 人 数 想 定 外 のトラブルへの 対 応 学 校 や 文 部 科 学 省 の 方 針 n=56 0 10 20 30 40 図 7 調 理 実 習 を 行 う 場 合 に 問 題 課 題 であると 思 われること( 家 庭 分 野 )( 複 数 回 答 )
56 京 都 教 育 大 学 教 育 実 践 研 究 紀 要 第 14 号 (4) 調 理 実 習 の 授 業 を 行 うにあたり 欲 しい 情 報 調 理 実 習 の 授 業 を 行 うにあたり 欲 しい 情 報 は 50 分 以 内 にできるレシピ (39 名 )や 簡 単 なレシピ (27 名 ) が 挙 げられた 授 業 時 間 数 が 少 ないと 感 じている 教 員 が 多 いことから 短 時 間 でできる 簡 単 なレシピを 多 く 希 望 していた 地 域 の 食 文 化 について も 多 く(31 名 ) 地 域 の 食 材 を 用 いた 調 理 実 習 の 内 容 も 求 められていた 4. 生 物 育 成 または 調 理 実 習 を 行 うにあたっての 希 望 技 術 科 担 当 教 員 には 生 物 育 成 について 家 庭 科 担 当 教 員 には 調 理 実 習 について 授 業 を 行 うにあたり 希 望 する ことを 尋 ねたところ 多 くの 教 員 が 教 材 の 充 実 や 研 修 会 の 充 実 を 希 望 していた( 図 8) 教 育 現 場 で 実 践 しやすい 教 材 を 提 案 していくとともに 教 員 自 身 の 研 修 会 も 充 実 させる 必 要 性 があるようである 技 術 科 と 家 庭 科 の 教 員 で 希 望 することに 差 もみられた 技 術 科 の 教 員 は 専 門 家 との 交 流 や 連 携 家 庭 科 の 教 員 は 外 部 講 師 の 派 遣 や 授 業 時 数 を 増 やす ことの 希 望 が 特 に 多 く それぞれ 有 意 差 もみられた ここでも 家 庭 科 の 教 員 は 授 業 時 数 を 増 やすことを 希 望 しており 教 科 としての 問 題 が 明 らかになった 教 材 の 充 実 研 修 会 の 充 実 専 門 家 との 交 流 連 携 外 部 講 師 の 派 遣 他 学 校 の 教 員 との 交 流 会 授 業 時 数 を 増 やす ネットの 情 報 の 充 実 書 籍 の 内 容 の 充 実 *p<0.05 **p<0.01 ***p<0.001 0 10 20 30 技 術 (n=61) 家 庭 (n=56) 図 8 生 物 育 成 または 調 理 実 習 を 行 うにあたり 希 望 すること( 複 数 回 答 ) 5. 技 術 分 野 ( 栽 培 )と 家 庭 分 野 ( 調 理 実 習 )の 連 携 技 術 科 及 び 家 庭 科 担 当 教 員 に 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 について 尋 ねた (1) 栽 培 と 調 理 実 習 を 連 携 した 授 業 をしているか 栽 培 と 調 理 実 習 を 連 携 した 授 業 は 2 割 を 超 える 学 校 で 行 われていた( 図 9) また してみたいと 思 っている が 課 題 も 多 く 実 践 に 至 っていない 学 校 もあることが 分 かった 連 携 の 内 容 は サツマイモを 育 てて 大 学 いもやスイートポテトを 作 る 水 菜 を 育 ててギョウザやおやきを 作 る というような 連 携 の 他 緑 のカーテンのできるゴーヤを 取 り 入 れた 連 携 をしている 学 校 もあった 連 携 には イ モ 類 や 葉 野 菜 といった 育 てやすく 一 度 に 多 く 収 穫 できる 野 菜 を 用 いているようであった している 予 定 はあるがしていない 予 定 はないがしてみたい 技 術 (n=61) 家 庭 (n=56) していない 0 5 10 15 20 25 図 9 栽 培 と 調 理 実 習 を 連 携 した 授 業 をしているか
中 学 校 技 術 家 庭 科 における 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 の 現 状 57 (2) 自 分 で 栽 培 したものを 自 分 で 調 理 して 食 べるという 授 業 で 生 徒 自 身 が 習 得 することができると 思 うこと 自 分 で 栽 培 したものを 自 分 で 調 理 して 食 べるという 授 業 で 生 徒 自 身 が 習 得 することができると 思 うことは 栽 培 の 達 成 感 生 産 から 消 費 までの 一 連 の 流 れ は 技 術 科 の 教 員 が 多 く 食 べ 物 に 対 する 感 謝 の 気 持 ち 食 材 や 料 理 を 作 ってくれている 人 に 対 する 感 謝 の 気 持 ち は 家 庭 科 の 教 員 が 多 く 回 答 していた( 図 10) 特 に 食 材 や 料 理 を 作 ってくれている 人 に 対 する 感 謝 の 気 持 ち は 技 術 科 と 家 庭 科 の 教 員 で 有 意 差 がみられ 家 庭 科 の 方 が 高 かった このように 技 術 科 の 教 員 は 野 菜 に 関 すること 家 庭 科 の 教 員 は 感 謝 の 気 持 ち というよ うに 生 徒 が 習 得 できると 思 うことに 差 がみられた このことから 教 員 が 授 業 を 行 う 際 に 重 視 している 点 も 技 術 科 と 家 庭 科 では 異 なることが 考 えられるため それぞれの 教 科 の 特 徴 を 活 かした 連 携 ができると 考 えられる 栽 培 の 達 成 感 生 産 から 消 費 までの 一 連 の 流 れ 食 べ 物 に 対 する 感 謝 の 気 持 ち 食 材 や 料 理 を 作 ってくれている 人 に 対 する 感 謝 の 気 持 ち 持 続 可 能 な 社 会 の 視 点 ***p<0.001 技 術 (n=61) 家 庭 (n=56) 無 回 答 0 10 20 30 40 50 図 10 自 分 で 栽 培 したものを 自 分 で 調 理 して 食 べるという 授 業 で 生 徒 自 身 が 習 得 することができると 思 うこと( 複 数 回 答 ) (3) 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 を 行 うことでよいと 思 うこと 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 を 行 うことでよいと 思 うことは 技 術 科 と 家 庭 科 の 内 容 を 関 連 付 けることができる が 最 も 多 い 結 果 となった( 図 11) 内 容 を 関 連 付 けることで 断 片 的 な 学 習 を 一 連 の 流 れとして 総 合 的 に 学 ぶこ とができるようになることが 考 えられる 次 いで 生 徒 が 意 欲 的 に 取 り 組 むことができる 一 連 の 流 れをつ かむことができる が 続 いた 技 術 科 と 家 庭 科 はつなげることのできる 内 容 も 多 いことから うまく 連 携 するこ とでより 深 い 学 習 へとなっていくことが 考 えられる 技 術 科 と 家 庭 科 の 内 容 を 関 係 づけることができる 生 徒 が 意 欲 的 に 取 り 組 むことができる 一 連 の 流 れを つかむことができる 授 業 時 数 を 有 効 に 活 用 できる 費 用 を 抑 えることができる 教 員 の 負 担 が 減 る ***p<0.001 技 術 (n=61) 家 庭 (n=56) 評 価 がしやすくなる 0 10 20 30 40 50 60 図 11 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 を 行 うことでよいと 思 うこと( 複 数 回 答 )
58 京 都 教 育 大 学 教 育 実 践 研 究 紀 要 第 14 号 (4) 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 を 行 うにあたり 問 題 課 題 と 思 うこと 連 携 の 問 題 や 課 題 点 としては 収 穫 時 期 や 量 が 調 理 実 習 と 合 わない が 技 術 科 は 39 名 家 庭 科 は 36 名 と 圧 倒 的 に 多 い 結 果 となった( 図 12) 調 理 実 習 の 時 期 に 収 穫 できるか 分 からないことや 調 理 実 習 に 必 要 な 量 が 収 穫 できるか 分 からないことは 自 然 のものを 扱 う 以 上 避 けられない 問 題 である 授 業 時 数 の 分 担 が 難 しい ことや 教 員 同 士 の 話 し 合 いの 時 間 がとれない といった 問 題 も 多 く 挙 げられたが まずは 特 に 多 かった 収 穫 時 期 や 量 という 問 題 を 解 決 することで 連 携 がしやすくなるとも 考 えられる 収 穫 時 期 量 が 調 理 実 習 と 合 わない 授 業 時 数 の 分 担 が 難 しい 教 員 同 士 の 話 し 合 いの 時 間 がとれない 技 術 ( 家 庭 ) 分 野 の 内 容 が あまり 分 からない 来 年 度 への 引 き 継 ぎが 難 しい 教 員 の 負 担 が 大 きい 技 術 (n=61) 家 庭 (n=56) 評 価 がしにくい 費 用 の 問 題 0 10 20 30 40 50 図 12 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 を 行 うにあたり 問 題 課 題 と 思 うこと( 複 数 回 答 ) Ⅳ. 考 察 1. 技 術 分 野 C 生 物 育 成 に 関 する 技 術 について C 生 物 育 成 に 関 する 技 術 の 実 習 は 8 割 を 超 える 学 校 で 野 菜 の 栽 培 をしていた 野 菜 は 動 物 に 比 べ 教 材 としても 扱 いやすいため 多 くの 学 校 で 野 菜 を 育 てられているのだろう 題 材 を 決 める 際 に 調 理 実 習 に 使 用 で きる ことを 考 慮 している 教 員 は 少 なかったが 実 際 に 育 てている 野 菜 は サツマイモ トマト ミニトマト 大 根 水 菜 等 調 理 実 習 に 使 用 できるものが 多 かった これらの 野 菜 について 収 穫 後 は 多 くの 学 校 が 家 に 持 っ て 帰 らせる 対 応 をとっていたが 家 庭 科 の 調 理 実 習 で 使 用 している 学 校 もあった 連 携 を 行 うにあたっては 連 携 のために 栽 培 する 野 菜 を 新 たに 教 材 開 発 するのではなく 現 在 育 てている 野 菜 をそのまま 活 用 し 調 理 実 習 で 使 用 することで 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 につなげていくこともできると 考 えられる 栽 培 実 習 を 行 う 場 合 の 問 題 課 題 には 管 理 ができない 手 間 がかかる という 栽 培 自 体 に 否 定 的 な 意 見 も 挙 げられた また 授 業 を 行 うにあたり 専 門 家 との 交 流 連 携 の 希 望 が 特 に 多 かったことや 欲 しい 情 報 に 基 本 的 な 育 て 方 病 気 害 虫 への 対 応 土 の 管 理 方 法 等 の 栽 培 に 関 する 基 礎 的 な 情 報 を 求 める 教 員 が 多 かったことは 栽 培 に 関 する 教 員 の 経 験 不 足 を 顕 著 に 表 しているだろう 稲 葉 らが 行 った 茨 城 県 の 技 術 科 担 当 教 員 を 対 象 とした 調 査 では 37.1%の 教 員 が 栽 培 をほとんどもしくは 全 く 扱 ったことがないと 回 答 していた 上 多 くの 教 員 が 生 物 育 成 の 教 育 を 難 しい と 回 答 していた 2) また 1 割 を 超 える 教 員 が 臨 時 の 教 員 免 許 で 授 業 を 担 当 していることや 2 割 を 超 える 教 員 が 他 教 科 の 兼 務 をしているという 現 状 から 技 術 科 の 専 門 性 に 欠 けている 教 員 が 多 いのかもしれない 栽 培 が 必 修 になった 時 期 が 最 近 であることや 教 員 が 基 礎 的 な 知 識 を 求 めていること 等 から 教 員 自 身 の 栽 培 経 験 が 不 足 している 現 状 がうかがえたため 栽 培 する 野 菜 は 手 間 も 少 なく 育 てやすい 野 菜 にするとよいことが 考 えられた
中 学 校 技 術 家 庭 科 における 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 の 現 状 59 2. 家 庭 分 野 B 食 生 活 と 自 立 について B 食 生 活 と 自 立 に 割 く 授 業 時 間 数 は 21~30 時 間 が 最 も 多 く 次 いで 31 時 間 以 上 が 多 かった 山 梨 県 の 中 学 校 を 対 象 とした 調 査 でも 家 庭 科 の 食 生 活 領 域 の 授 業 時 数 の 平 均 は 34.5 時 間 であった 3) この 結 果 は 家 庭 科 の 授 業 時 間 数 が 3 年 間 を 通 して 87.5 時 間 ( 技 術 家 庭 科 全 175 時 間 の 半 数 )であることを 考 えると 他 の 領 域 に 比 べて 食 生 活 領 域 に 割 いている 時 間 は 多 いようである それにもかかわらず 調 理 実 習 を 行 うにあたって の 希 望 は 授 業 時 数 を 増 やす ことが 特 に 多 く 調 理 実 習 を 行 う 場 合 の 問 題 課 題 も 準 備 後 片 付 けの 時 間 不 足 や 調 理 の 時 間 不 足 授 業 時 間 数 という 回 答 が 多 かった 前 田 らの 三 重 県 の 中 学 校 を 対 象 とした 調 査 では 調 理 実 習 の 回 数 を 少 ないと 感 じている 教 員 が 多 く その 原 因 として 家 庭 科 の 年 間 授 業 時 数 が 少 ないことが 挙 げられていた 4) 授 業 時 数 が 全 体 的 に 不 足 している 現 状 は 家 庭 科 の 教 科 としての 問 題 であろう また 伊 藤 らの 揚 げ 調 理 の 実 態 調 査 では 中 等 教 育 の 調 理 実 習 で 揚 げ 調 理 を 行 う 際 の 問 題 点 について 準 備 片 付 けの 時 間 不 足 や 調 理 時 間 の 不 足 等 時 間 的 制 限 に 関 する 回 答 が 多 くみられた 5) 調 理 実 習 を 行 うにあたり 欲 しい 情 報 では 50 分 以 内 にできるレシピ や 簡 単 なレシピ が 挙 げられており 調 理 実 習 時 間 が 少 ないと 感 じている 教 員 が 多 い ようであった 授 業 時 間 数 の 不 足 は 調 理 実 習 自 体 の 時 間 不 足 にも 関 わっているのだろう また 家 庭 科 教 員 の 実 態 は 2 割 弱 の 教 員 が 他 教 科 を 兼 務 していた 家 庭 科 以 外 の 教 科 を 兼 務 している 教 員 が 鹿 児 島 県 では 約 5 割 であっ たことと 比 較 すると 6) 京 都 府 のこの 割 合 は 少 ないが 調 理 実 習 の 準 備 は 他 教 科 を 兼 務 している 教 員 にとっては 特 に 負 担 となっていることも 考 えられた 家 庭 科 の 授 業 時 間 数 が 少 ないがゆえに 調 理 実 習 の 時 間 も 不 足 している 現 状 において 調 理 実 習 を 準 備 から 後 片 付 けを 含 め 50 分 間 で 行 うことは 教 員 にとっては 大 きな 課 題 となっていることから この 問 題 を 解 決 できる ような 調 理 実 習 教 材 を 開 発 することが 必 要 であることが 分 かった 3. 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 について 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 を 行 うことでよいと 思 うことは 技 術 科 と 家 庭 科 の 内 容 を 関 連 付 けることができる が 最 も 多 く 次 いで 生 徒 が 意 欲 的 に 取 り 組 むことができる 一 連 の 流 れをつかむことができる と 続 いた 阿 部 らは 生 物 育 成 が 授 業 時 間 数 や 教 員 の 知 識 経 験 不 足 によって 育 てる のみの 経 験 主 義 的 な 内 容 に 終 始 してしまう 可 能 性 を 指 摘 している 7) 連 携 を 行 う 際 にも 栽 培 した 野 菜 を 調 理 することだけを 目 指 すのではなく 栽 培 技 術 や 社 会 との 関 わり 栽 培 する 作 物 の 循 環 等 についても 学 ばせることで 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 も 意 義 の あるものとなることが 考 えられる また 藤 川 はオーセンティック( 真 正 の 評 価 )を 高 めるクロスカリキュラム として 技 術 科 の 栽 培 と 家 庭 科 の 調 理 実 習 の 連 携 を 挙 げている 8) この 連 携 を 行 うことで 学 んだ 知 識 や 技 能 を 実 感 を 伴 って 身 に 付 けることができ 生 徒 は 収 穫 の 喜 びや 達 成 感 をより 深 く 感 じることができると 報 告 している 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 を 行 うことで 内 容 を 関 連 付 けたり 生 徒 の 意 欲 を 高 めたりできるため 生 徒 の 学 習 がよ り 深 まることが 考 えられた 技 術 分 野 の 栽 培 実 習 では 水 菜 や 万 願 寺 トウガラシといった 京 都 の 伝 統 的 な 野 菜 もみられた 京 野 菜 は 家 庭 分 野 の 地 域 の 食 材 を 生 かした 調 理 の 内 容 と 関 連 付 けることが 期 待 できる しかし 地 域 の 食 文 化 について の 情 報 を 求 めている 家 庭 科 の 教 員 も 多 く 情 報 が 不 足 している 現 状 も 考 えられた 前 田 らの 三 重 県 の 中 学 校 を 対 象 とした 調 査 では 今 後 取 り 組 みたい 献 立 として 地 産 地 消 や 伝 統 食 をとりいれた 料 理 が 最 も 多 い 結 果 であり 4) 地 域 の 食 文 化 に 関 する 内 容 をより 充 実 させることの 必 要 性 がうかがえた しかし 連 携 を 行 うにあたっては 問 題 や 課 題 点 も 挙 げられ 特 に 収 穫 時 期 や 量 が 調 理 実 習 と 合 わないこと が 圧 倒 的 に 多 かった そのため この 課 題 を 解 決 できる 連 携 教 材 を 開 発 する 必 要 がある なお 調 理 実 習 で 使 用 する 野 菜 について 学 ばせることは 教 科 書 でも 取 り 上 げられている 調 理 性 や 栄 養 価 が 多 く 次 いで 旬 や 生 産 地 という 順 番 であり 栽 培 や 流 通 の 過 程 について 学 ばせている 学 校 は 少 なかった 栽 培 や 流 通 の 過 程 については 技 術 分 野 で 学 ばせることもできるため 重 複 する 学 習 領 域 についてはどの 内 容 を 技 術 分 野 または 家 庭 分 野 で 学 ばせるかについて 考 える 必 要 もあるだろう
60 京 都 教 育 大 学 教 育 実 践 研 究 紀 要 第 14 号 Ⅴ.おわりに 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 を 行 うにあたり 京 都 府 の 中 学 校 技 術 家 庭 科 に 関 する 調 査 から 明 らかになったこ とは 以 下 の 3 点 である 1. 技 術 分 野 C 生 物 育 成 に 関 する 技 術 について 生 物 育 成 の 実 習 では 8 割 を 超 える 学 校 で 野 菜 を 育 てられていた しかし 栽 培 を 行 う 場 合 の 問 題 や 課 題 と して 栽 培 の 技 術 に 関 することが 多 く 挙 げられた 他 栽 培 に 関 する 基 礎 的 な 知 識 を 求 めており 教 員 自 身 の 経 験 不 足 がうかがえた そのため 栽 培 する 野 菜 は 手 間 も 少 なく 育 てやすい 野 菜 にするとよいことが 考 えられた 2. 家 庭 分 野 B 食 生 活 と 自 立 について 他 の 領 域 に 比 べて 食 生 活 領 域 にあてている 時 間 が 多 いにもかかわらず 家 庭 科 の 授 業 時 数 が 全 体 的 に 不 足 して おり 調 理 実 習 においても 時 間 が 足 りないという 問 題 があることが 分 かった 調 理 実 習 を 行 うにあたり 欲 しい 情 報 としても 50 分 以 内 にできるレシピ や 簡 単 なレシピ が 挙 げられており 授 業 時 間 数 が 少 ないと 感 じて いる 教 員 が 多 かった そのため 時 間 不 足 を 解 決 できる 短 時 間 でできる 簡 単 なレシピ 等 の 調 理 実 習 教 材 を 開 発 することが 必 要 である 3. 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 について 栽 培 と 調 理 実 習 の 連 携 を 行 うことで 技 術 科 と 家 庭 科 の 内 容 を 関 連 付 けることができ 生 徒 の 学 習 がより 深 まる ことが 考 えられた 京 都 は 京 野 菜 という 京 都 の 伝 統 的 な 野 菜 もあるため 京 野 菜 を 栽 培 することで 家 庭 分 野 の 地 域 の 食 材 を 生 かした 調 理 の 内 容 とも 関 連 付 けることができると 考 えられた しかし 収 穫 時 期 や 量 が 調 理 実 習 と 合 わないという 課 題 も 浮 き 彫 りになったことから この 問 題 を 解 決 できる 連 携 教 材 を 開 発 する 必 要 が ある そのため 栽 培 する 野 菜 を 収 穫 しやすく かつ 一 度 に 多 く 収 穫 できるものにするとともに 50 分 間 とい う 短 い 時 間 でも 可 能 な 調 理 実 習 内 容 を 考 えることで 解 決 できると 考 える そして これらの 課 題 を 解 消 しつつ 生 徒 の 学 びがより 深 まるような 栽 培 と 調 理 実 習 を 連 携 した 教 材 の 提 案 等 を 行 うことが 必 要 である 参 考 文 献 1) 文 部 科 学 省 (2008), 中 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 技 術 家 庭 編, 教 育 図 書 2) 稲 葉 健 五 (2011), 学 習 指 導 要 領 の 改 訂 に 伴 う 生 物 育 成 技 術 の 扱 いについて 中 学 校 技 術 科 担 当 教 員 に 対 する アンケート 調 査, 茨 城 大 学 教 育 実 践 研 究 30,67-75 3) 時 友 裕 紀 子 井 上 由 美 子 (2009), 山 梨 県 中 学 校 家 庭 科 における 調 理 実 習 の 学 習 に 関 する 調 査 研 究, 山 梨 大 学 教 育 人 間 科 学 部 紀 要 11,144-151 4) 前 田 紀 夫 磯 部 由 香 平 島 円 吉 本 敏 子 (2012), 三 重 県 の 中 学 校 技 術 家 庭 における 調 理 実 習 の 現 状, 三 重 大 学 教 育 学 部 研 究 紀 要 63,167-171 5) 伊 藤 知 子 久 保 加 織 水 野 千 恵 湯 川 夏 子 和 田 珠 子 (2008), 中 等 教 育 の 調 理 実 習 における 揚 げ 調 理 の 実 態 調 査, 日 本 調 理 科 学 会 誌 41 (3),196-203 6) 黒 光 貴 峰 新 馬 場 有 希 徳 重 礼 美 (2011), 鹿 児 島 県 における 家 庭 科 教 育 の 実 施 状 況 中 学 校 家 庭 科 教 員 の 実 態, 鹿 児 島 大 学 教 育 学 部 研 究 紀 要 教 育 科 学 編 62,203-215 7) 阿 部 英 之 助 佐 藤 史 人 (2012), 中 学 校 技 術 科 教 育 の 現 状 と 技 能 継 承 の 課 題 生 物 育 成 を 中 心 とした 教 員 技 能 について, 和 歌 山 大 学 教 育 学 部 紀 要 教 育 科 学 62,131-136 8) 藤 川 聡 (2012), 生 物 育 成 に 関 する 技 術 における 指 導 と 評 価 の 視 点 学 習 効 果 を 高 める 指 導 モデルの 作 成, 京 都 教 育 大 学 環 境 教 育 研 究 年 報 20,151-160