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Transcription:

意 見 書 弁 明 書 の 要 旨 本 件 審 査 請 求 執 行 停 止 申 立 ては 不 適 法 であること 1 本 来 国 には 審 査 請 求 執 行 停 止 の 申 立 適 格 は 認 められないこと (1) 法 定 受 託 事 務 に 係 る 処 分 に 対 する 行 政 不 服 審 査 法 による 審 査 請 求 及 び 執 行 停 止 申 立 ( 両 者 をあわせて 審 査 請 求 等 という)について 現 行 法 には 国 の 審 査 請 求 等 の 適 格 を 否 定 する 明 文 規 定 は 存 しない しかし 行 政 不 服 審 査 制 度 は 私 人 の 個 別 的 な 権 利 利 益 の 簡 易 迅 速 な 救 済 を 制 度 趣 旨 とするものである 加 害 者 は 国 家 公 共 団 体 なのであるから 被 害 者 たる 私 人 の 簡 易 迅 速 な 救 済 手 続 を 設 けておく 必 要 性 が 高 いことから 行 政 作 用 により 侵 害 された 私 人 の 個 別 的 な 権 利 利 益 を 厳 格 な 司 法 手 続 によ らないで 簡 易 迅 速 に 救 済 する 手 続 として 設 けられたものである この 制 度 趣 旨 より 本 来 国 には 国 に 請 求 等 適 格 が 認 められないものと 言 う べきであり 例 外 的 に 私 人 とまったく 同 様 の 立 場 で 個 別 の 権 利 義 務 が 侵 害 された 場 合 すなわち 固 有 の 資 格 ( 一 般 私 人 の 立 ちえない 立 場 )に 基 づ かない 場 合 にのみ 審 査 請 求 等 の 適 格 が 認 められるものと 言 うべきである (2) 法 定 受 託 事 務 に 対 する 審 査 請 求 等 を 認 めることに 対 してはそもそも 強 い 批 判 が 存 するものであり その 範 囲 は 私 人 の 簡 易 迅 速 な 救 済 の 必 要 性 という 趣 旨 を 逸 脱 することのないように 画 されるべきものである すなわち 地 方 公 共 団 体 のした 処 分 に 対 して 国 が 裁 定 をすることについては 国 と 地 方 公 共 団 体 が 対 等 な 関 係 であることと 矛 盾 して 不 合 理 であるとして 制 度 の 存 在 自 体 に 対 して 厳 しい 批 判 がなされているが 私 人 の 簡 易 迅 速 な 救 済 手 続 の 必 要 性 によってかろうじて 制 度 の 合 理 性 が 認 められているものであり この 制 度 趣 旨 を 超 えて 広 範 に 審 査 請 求 の 範 囲 を 認 めることはできない また とりわけ 国 が 審 査 請 求 をする 場 合 には 判 断 の 中 立 性 公 正 性 とい うことから 国 が 私 人 と 同 一 の 立 場 であるか 否 かということについて 厳 格 なうえにも 厳 格 に 判 断 されなければならない すなわち 国 の 特 定 の 機 関 が 不 服 申 し 立 てをした 場 合 に その 判 断 を 国 が 行 うことは 国 という 同 一 の 行 政 主 体 が 審 査 請 求 等 をしてこれに 対 する 判 断 をすることになる 国 が 一 定 の 行 政 目 的 の 実 現 のためにした 行 為 に 関 して 地 方 公 共 団 体 の 行 った 処 分 につ いて 地 方 公 共 団 体 の 処 分 の 当 否 を 国 が 判 断 するならば 国 の 意 図 した 目 的 にあわせた 結 論 ありきの 偏 頗 な 判 断 がなされるおそれがあることになる し たがって その 行 為 によって 実 現 しようとしている 目 的 を 踏 まえて 私 人 の 個 別 的 な 権 利 義 務 と 同 質 と 言 えるか 否 かが 検 討 されてなければならない 2 本 件 埋 立 承 認 出 願 は 固 有 の 資 格 に 基 づくものであること (1) 公 有 水 面 埋 立 承 認 出 願 は 国 のみが 行 えること ア 公 有 水 面 埋 立 法 は 国 と 私 人 は 明 確 に 区 別 して 規 定 しており 私 人 が 事 業 者 である 場 合 と 国 が 事 業 者 である 場 合 を 区 別 して 規 定 している すなわち 私 人 が 埋 立 事 業 主 体 となる 場 合 には 同 法 2 条 により 都 道 府 県 1

知 事 の 免 許 が 必 要 で 定 めているのに 対 し 国 が 埋 立 事 業 主 体 となる 場 合 には 同 法 42 条 1 項 により 都 道 府 県 知 事 の 承 認 が 必 要 であると 定 め ている このように 公 有 水 面 埋 立 法 は 私 人 が 事 業 主 体 となる 場 合 には 埋 立 の 免 許 出 願 という 制 度 を 設 け 他 方 国 が 埋 立 の 事 業 主 体 となる 場 合 には 埋 立 の 承 認 出 願 という 別 個 の 制 度 を 設 けているものであり 私 人 は 埋 立 の 承 認 出 願 を 行 うことはできない 埋 立 承 認 出 願 人 の 地 位 に 私 人 が 立 つことはできず 国 のみがなし 得 るも のであるから 固 有 の 資 格 に 基 づくことは 明 らかである イ もっとも 許 可 と 承 認 は いずれも 埋 立 権 を 設 定 するものであ り 許 可 承 認 の 効 力 がその 後 消 滅 したときは 特 定 の 公 有 水 面 を 埋 め 立 てて 土 地 を 造 成 して 埋 立 地 の 所 有 権 を 取 得 する 権 利 を 喪 失 し 既 に 行 われ た 埋 立 ては 法 的 根 拠 を 失 って 違 法 となり その 結 果 原 状 回 復 義 務 を 負 う ものと 解 すべきという 点 においては 両 者 には 共 通 している 部 分 もある しかし 公 有 水 面 埋 立 法 は 私 人 が 事 業 主 体 となる 場 合 ( 免 許 )と 国 が 事 業 主 体 となる 場 合 ( 承 認 )について 規 律 を 異 にしているものである 例 えば 同 法 22 条 1 項 は 私 人 が 事 業 主 体 となる 場 合 は 竣 工 認 可 手 続 が 必 要 であるとするのに 対 し 国 が 埋 立 事 業 主 体 となる 場 合 は 同 法 42 条 2 項 で 国 の 竣 工 認 可 手 続 は 免 除 され 国 は 通 知 をすれば 足 りるとされてい る また 私 人 が 事 業 主 体 となる 場 合 は 同 法 13 条 で 埋 立 ノ 免 許 ヲ 受 ケタル 者 ハ 埋 立 ニ 関 スル 工 事 ノ 著 手 及 工 事 ノ 竣 功 ヲ 都 道 府 県 知 事 ノ 指 定 スル 期 間 内 ニ 為 スヘシ と 定 めているが この 規 定 は 国 が 事 業 主 体 となる 場 合 には 準 用 されていない そのほか 免 許 料 の 徴 収 にかかる 規 定 や 罰 則 の 規 定 も 国 が 事 業 主 体 となる 場 合 には 準 用 されていないなど 公 有 水 面 埋 立 法 において 私 人 が 事 業 主 体 となる 場 合 と 国 が 事 業 主 体 となる 場 合 とで 異 なる 扱 いをし 国 については 一 般 私 人 が 立 ちえないような 立 場 を 定 めて いるのであるから 申 立 人 ( 審 査 請 求 者 )が 固 有 の 資 格 に 基 づいて 公 有 水 面 埋 立 承 認 出 願 を 行 ったものであることは 明 らかである (2) 実 質 的 に 考 察 しても 固 有 の 資 格 に 基 づくことは 明 らかであること ア 本 件 埋 立 は 条 約 に 基 づく 義 務 履 行 のために 行 うものであること 埋 立 必 要 理 由 書 には わが 国 の 平 和 と 安 全 を 保 つための 安 全 保 障 体 制 の 確 保 は 政 府 の 最 も 重 要 な 施 策 の 一 つであり 政 府 が 責 任 をもって 取 り 組 む 必 要 がある 日 米 両 政 府 は 普 天 間 飛 行 場 の 代 替 施 設 について 以 下 の 観 点 を 含 め 多 角 的 に 検 討 を 行 い 総 合 的 に 判 断 した 結 果 移 設 先 は 辺 野 古 とすることが 唯 一 の 有 効 な 解 決 策 であるとの 結 論 に 至 った 本 埋 立 てを 行 うことで 普 天 間 飛 行 場 の 代 替 施 設 が 建 設 され 日 米 両 政 府 の 喫 緊 の 課 題 となっている 普 天 間 飛 行 場 の 早 期 の 移 設 返 還 を 実 現 して 沖 縄 県 の 負 担 軽 減 を 図 ることが 可 能 となる また 在 日 米 軍 再 編 が 着 実 に 実 施 されることにより 日 米 安 全 保 障 体 制 が 強 化 され わが 国 の 安 全 と 共 にア ジア 太 平 洋 地 域 の 安 全 にも 寄 与 することが 可 能 となる などとされてい る 本 件 埋 立 承 認 出 願 は 基 地 提 供 という 外 交 防 衛 にかかる 条 約 上 の 義 務 2

の 履 行 という 目 的 をもってなされているものであり まさに 国 家 としての 立 場 においてなされる 一 連 の 行 為 にほかならない この 埋 立 必 要 理 由 に 示 された 利 益 は 外 交 防 衛 上 の 一 般 的 公 益 そのも のであって 行 政 不 服 審 査 制 度 によって 実 現 される 私 人 の 個 別 的 権 利 利 益 ではない 埋 立 てによる 利 益 は 外 交 防 衛 上 の 一 般 公 益 であって 行 政 不 服 審 査 制 度 が 救 済 の 対 象 とする 私 人 の 個 別 的 な 権 利 利 益 でないことより 固 有 の 資 格 ( 一 般 私 人 が 立 ちえないような 立 場 にある 状 態 )においてなされてい ることは 明 らかである イ 現 政 権 の 立 場 ( 平 成 22 年 5 月 28 日 閣 議 決 定 ) 沖 縄 防 衛 局 は 防 衛 大 臣 の 指 揮 命 令 に 服 し 防 衛 大 臣 と 国 土 交 通 大 臣 はと もに 内 閣 の 構 成 員 としての 一 体 性 を 有 し 閣 議 決 定 に 基 づく 方 向 性 を 同 じ くしている そして 平 成 22 年 5 月 28 日 に 日 米 安 全 保 障 協 議 委 員 会 において 承 認 された 事 項 に 関 する 当 面 の 政 府 の 取 組 について と 題 する 閣 議 決 定 において 国 は 日 米 両 国 政 府 は 普 天 間 飛 行 場 を 早 期 に 移 設 返 還 するために 代 替 の 施 設 をキャンプシュワブ 辺 野 古 崎 地 区 及 びこれに 隣 接 する 水 域 に 設 置 することとし 必 要 な 作 業 を 進 めていく ことを 決 定 し 現 政 権 はこれを 承 継 している 平 成 26 年 6 月 13 日 に 公 布 ( 施 行 は 公 布 後 2 年 以 内 であり 現 時 点 では 施 行 されていない )された 行 政 不 服 審 査 法 の 改 正 法 の 第 1 条 1 項 の 目 的 規 定 には 簡 易 迅 速 かつ 公 正 な 手 続 と 明 記 され 手 続 の 公 正 性 が 前 提 であることが 明 らかにされているが これは 創 設 的 な 規 定 ではなく 公 正 な 手 続 という 当 然 の 事 理 を その 重 要 性 に 鑑 み 目 的 として 明 記 したもの と 解 され 公 正 な 手 続 の 保 障 は 行 政 不 服 審 査 制 度 の 前 提 をなすものという べきである しかし 辺 野 古 移 設 を 唯 一 の 解 決 策 として 一 体 的 方 針 を 共 有 してい る 内 閣 の 内 部 において 一 般 私 人 たる 沖 縄 防 衛 局 と 公 正 中 立 な 審 査 庁 たる 国 土 交 通 大 臣 と 位 置 付 けて その 判 断 の 中 立 性 公 正 性 を 保 つ ことは 余 りにも 無 理 があるものである その 意 味 で 判 断 権 者 の 公 正 中 立 という 行 政 不 服 審 査 制 度 の 前 提 が 欠 落 しているのであり 自 作 自 演 出 来 レース や プレイヤー 兼 ジ ャッジ といった 批 判 を 免 れ 得 ない ウ 日 米 合 同 委 員 会 合 意 閣 議 決 定 防 衛 大 臣 告 示 は 私 人 がなしえないこと 日 米 両 政 府 は 平 成 26 年 6 月 20 日 の 日 米 合 同 委 員 会 で 米 軍 普 天 間 飛 行 場 移 設 先 となる 名 護 市 辺 野 古 沖 で 普 天 間 飛 行 場 の 代 替 施 設 の 工 事 完 了 の 日 まで 常 時 立 ち 入 り 禁 止 となる 臨 時 制 限 区 域 を 設 定 するとともに 日 米 地 位 協 定 に 基 づき 代 替 施 設 建 設 のため 日 本 政 府 が 同 区 域 を 共 同 使 用 する ことを 合 意 した そして 同 年 7 月 1 日 の 閣 議 において 日 本 国 とアメリカ 合 衆 国 と の 間 の 相 互 協 力 及 び 安 全 保 障 条 約 第 六 条 に 基 づく 地 位 に 関 する 協 定 第 2 条 に 基 づく 施 設 及 び 区 域 の 共 同 使 用, 使 用 条 件 変 更 及 び 追 加 提 供 につい て を 閣 議 決 定 し 同 月 2 日 に 防 衛 大 臣 が 告 示 ( 防 衛 省 告 示 第 123 号 )し 3

た これは まさに 私 人 は 絶 対 に 行 うことのできない 埋 立 事 業 であることを 示 しているものにほかならない 3 まとめ 以 上 のとおり 行 政 不 服 審 査 制 度 は 私 人 の 個 別 的 な 権 利 利 益 の 救 済 を 目 的 とするものであり 国 は 私 人 と 同 一 の 立 場 に 立 つ 場 合 ( 固 有 の 資 格 に 基 づ かない 場 合 )でなければ 審 査 請 求 等 の 適 格 を 有 しないものである しかるに 公 有 水 面 埋 立 法 は 私 人 が 事 業 主 体 となる 免 許 と 国 が 事 業 主 体 となる 承 認 を 明 確 に 区 別 して 規 律 しているのであるから 私 人 が 承 認 申 請 をすることは 不 可 能 であり 本 件 公 有 水 面 埋 立 承 認 出 願 が 固 有 の 資 格 に 基 づくことは 客 観 的 形 式 的 にも 明 らかである また 実 質 的 に 検 討 しても 本 件 埋 立 承 認 出 願 は 外 交 防 衛 上 という 一 般 公 益 のため 条 約 上 の 義 務 の 履 行 のための 一 連 の 手 続 としてなされたものであ り この 目 的 は 閣 議 決 定 をされているものである また 本 件 埋 立 など 基 地 建 設 事 業 を 実 施 するために 日 米 合 同 委 員 会 合 意 閣 議 決 定 防 衛 大 臣 告 示 によ って 臨 時 制 限 区 域 の 設 定 がなされているが これは 一 般 私 人 が 行 うことができ ず 国 にのみがなしうるものであり 沖 縄 防 衛 局 による 本 件 埋 立 承 認 出 願 が 固 有 の 資 格 に 基 づくことはあまりにも 明 らかというべきである 執 行 停 止 申 立 人 審 査 請 求 には 審 査 請 求 等 の 適 格 は 認 められず 本 件 執 行 停 止 申 立 本 件 審 査 請 求 は 不 適 法 であるから 却 下 されなければならない 4

本 件 埋 立 承 認 取 消 が 適 法 であること 第 1 概 要 公 有 水 面 埋 立 出 願 に 対 して 都 道 府 県 知 事 は 公 有 水 面 埋 立 法 第 4 条 第 1 項 各 号 のすべての 要 件 を 充 足 しなければ 承 認 することができないものであるが 本 件 については 同 項 第 1 号 の 要 件 (1 号 要 件 ) 及 び 第 2 号 の 要 件 (2 号 要 件 ) を 充 足 しないにもかかわらず 承 認 されたものであり その 判 断 に 係 る 考 慮 要 素 の 選 択 や 判 断 の 過 程 は 合 理 性 を 欠 いていたものであるから 本 件 埋 立 承 認 には 瑕 疵 があるものである 公 有 水 面 埋 立 法 第 4 条 は 当 該 地 方 公 共 団 体 の 公 益 を 保 護 するため 都 道 府 県 知 事 に 承 認 権 限 を 付 与 しているのであるから 都 道 府 県 知 事 は 当 該 地 方 公 共 団 体 の 公 益 を 保 護 するため その 権 限 を 行 使 すべき 責 務 を 負 っているもので ある そして 本 件 埋 立 必 要 理 由 には 実 証 的 根 拠 が 認 められず 承 認 を 取 り 消 すこと による 不 利 益 は 高 度 なものと 認 めることができないのに 対 し 本 件 埋 立 により 沖 縄 県 の 公 益 が 著 しく 害 されることになり 瑕 疵 ある 本 件 埋 立 承 認 を 放 置 する ことは 公 共 の 福 祉 の 要 請 に 照 らし 著 しく 不 当 であるから 瑕 疵 ある 本 件 埋 立 承 認 を 取 り 消 すことは 沖 縄 県 知 事 の 責 務 であり 本 件 埋 立 承 認 取 消 は 適 法 である 第 2 1 号 要 件 について 1 国 土 利 用 上 適 正 且 合 理 的 ナルコト の 意 義 公 有 水 面 埋 立 法 の 第 4 条 1 項 ( 同 法 第 42 条 3 項 で 承 認 に 準 用 )は その 柱 書 において 都 道 府 県 知 事 ハ 埋 立 ノ 免 許 ノ 出 願 左 ノ 各 号 ニ 適 合 スト 認 ムル 場 合 ヲ 除 クノ 外 埋 立 ノ 免 許 ヲ 為 スコトヲ 得 ズ とし 第 1 号 は 国 土 利 用 上 適 正 且 合 理 的 ナルコト と 定 めている この 国 土 利 用 上 適 正 且 合 理 的 ナルコト とは 埋 立 てにより 生 ずる 利 益 と 埋 立 てにより 失 われる 利 益 ( 生 ずる 不 利 益 )とを 比 較 衡 量 し 前 者 が 後 者 を 優 越 することを 意 味 するものであり これは 総 合 的 判 断 として 行 われなければな らないことを 意 味 するものと 解 される 2 埋 立 ての 必 要 性 (1) 埋 立 てにより 生 ずる 利 益 とは 埋 立 必 要 理 由 書 記 載 の 埋 立 必 要 理 由 にほか ならないものと 解 される 本 件 埋 立 承 認 出 願 は 海 兵 隊 航 空 基 地 の 建 設 を 目 的 とするものであり 海 兵 隊 航 空 基 地 新 設 の 動 機 は 普 天 間 飛 行 場 の 返 還 にあるとされる 普 天 間 飛 行 場 が 返 還 されるべきことは 当 然 であるが 普 天 間 飛 行 場 を 返 還 する 必 要 があるということと 本 件 埋 立 対 象 地 に 海 兵 隊 航 空 基 地 を 新 設 する こととは 次 元 の 異 なる 問 題 であり 普 天 間 飛 行 場 の 返 還 の 必 要 性 からただ ちに 本 件 埋 立 対 象 地 への 海 兵 隊 航 空 基 地 新 設 の 必 要 性 が 導 かれるものではな い あくまで 検 討 の 対 象 となるのは 本 件 埋 立 対 象 地 における 海 兵 隊 航 空 基 地 新 設 の 必 要 性 である しかし その 根 拠 については 埋 立 必 要 理 由 書 は 抽 象 的 なマジック ワー 5

ドを 羅 列 するだけで 具 体 的 な 根 拠 を 何 ら 示 していない 普 天 間 飛 行 場 代 替 施 設 を 県 内 に 移 設 しなければならないとする 理 由 すなわち 抑 止 力 軍 事 的 プレゼンスが 許 容 できない 程 度 に 低 下 すること 地 理 的 に 優 位 であること や 一 体 的 運 用 の 必 要 性 などについて なんら 具 体 的 実 証 的 説 明 はなく 埋 立 必 要 理 由 書 の 記 載 をもって 埋 立 必 要 理 由 を 認 めることはできないものであ る (2) 在 日 米 軍 全 体 のプレゼンスないし 抑 止 力 の 維 持 という 説 明 について ア 埋 立 必 要 理 由 書 は 在 沖 海 兵 隊 を 含 む 在 日 米 軍 全 体 のプレゼンスや 抑 止 力 を 低 下 させることはできない とする 安 保 条 約 に 基 づき 駐 留 する 在 日 米 軍 の 抑 止 力 ないし 軍 事 的 プレゼンスが 重 要 であるとしても なぜ 普 天 間 飛 行 場 を 県 外 等 に 移 設 すれば 在 日 米 軍 全 体 のプレゼンスないし 抑 止 力 が 許 容 できない 程 度 に 低 下 するのかとい うことについて 実 証 的 具 体 的 根 拠 はなんら 示 されていないものであり このような 説 明 をもって 本 事 業 は 極 めて 必 要 性 が 高 い と 認 めること はできない イ かえって 沖 縄 に 海 兵 隊 航 空 基 地 があることと 抑 止 力 については 検 証 結 果 報 告 書 が 指 摘 するとおり 沖 縄 県 は 在 沖 海 兵 隊 が, 国 内 の 他 の 都 道 府 県 に 移 転 した 場 合 においても, 沖 縄 には 嘉 手 納 飛 行 場 やホワイト ビーチなど, 米 空 軍, 米 海 軍, 米 陸 軍,さらに 陸 上 自 衛 隊, 海 上 自 衛 隊, 航 空 自 衛 隊 の 基 地 が 存 在 しており, 周 辺 国 が 沖 縄 に 手 出 しをするほど, 軍 事 的 なプレゼンスが 低 下 することはないのではないか と 具 体 的 な 根 拠 を 示 して 疑 問 があることが 明 らかにしている そもそも 米 国 領 以 外 には 海 兵 隊 はほとんど 駐 留 していないものであ る 2013 年 ( 平 成 25 年 )12 月 末 時 点 で 韓 国 を 除 く 東 アジア 太 平 洋 地 域 には 海 兵 隊 は1 万 6178 人 駐 留 しているが 日 本 への 駐 留 が1 万 5893 人 であり 日 本 韓 国 以 外 の 駐 留 人 数 は 195 人 に 過 ぎず 実 際 には 海 兵 隊 の 兵 力 はないに 等 しく 韓 国 についても 海 兵 隊 の 駐 留 人 数 は 1112 人 に 過 ぎないものであり 海 兵 隊 が 駐 留 しなければ 駐 留 米 軍 のプレゼンスない し 抑 止 力 がないということができないことは 明 らかである ウ なお 埋 立 必 要 理 由 書 は 抑 止 力 の 内 容 についてなんら 具 体 的 に 明 らか にしていないが 念 のため 述 べておくと 駐 留 米 軍 をトリップ ワイヤー ( 罠 の 仕 掛 け 線 )ないし 人 質 として 抑 止 力 を 説 明 する 立 場 からも 普 天 間 飛 行 場 の 移 設 によって 抑 止 力 が 失 われるという 論 理 は 成 り 立 ちえない たとえば 冷 戦 構 造 下 のベルリンへの 米 軍 駐 留 や 韓 国 への 米 軍 駐 留 の 意 義 について ベルリンや 韓 国 への 侵 攻 は 米 軍 を 攻 撃 することになり 受 入 国 への 攻 撃 によって 自 動 的 に 米 軍 が 参 加 することになることに 抑 止 力 があるとして 駐 留 米 軍 をトリップ ワイヤーないし 人 質 として 説 明 する 立 場 がある そして 普 天 間 飛 行 場 の 移 設 問 題 に このロジックがあては まると 主 張 されることがある しかし 普 天 間 飛 行 場 が 県 外 等 に 移 設 され ても 日 本 から 米 軍 の 駐 留 がなくなるものではないし 沖 縄 の 米 軍 駐 留 が なくなるものものではない そもそも 国 が 分 裂 して 国 境 線 を 挟 んで 対 立 している 状 況 での 駐 留 米 軍 の 意 義 に 関 する 議 論 が 異 なる 状 況 に 妥 当 する 6

とする 根 拠 も 明 らではない エ 以 上 のとおり 在 日 米 軍 全 体 のプレゼンスないし 抑 止 力 について 埋 立 必 要 理 由 書 はこれらの 語 を 具 体 性 実 証 性 のないマジック ワードとして 使 っているだけであり そのような 無 内 容 の 説 明 をもって 極 めて 必 要 性 が 高 い ということはできないものである (3) 一 体 的 運 用 の 必 要 性 地 理 的 に 優 位 であること などの 説 明 について 埋 立 必 要 理 由 書 は 海 兵 隊 の 一 体 的 運 用 の 必 要 性 などを 挙 げ 普 天 間 飛 行 場 を 県 外 等 に 移 設 すれば 海 兵 隊 の 機 動 性 即 応 性 といった 特 性 機 能 を 損 なう 懸 念 があるとし また 沖 縄 の 地 理 的 優 位 性 を 根 拠 として 県 外 等 移 設 が 適 切 でないとする しかし なぜ 県 外 移 設 等 によって 海 兵 隊 の 特 性 機 能 が 損 なわれるの か また 普 天 間 飛 行 場 に 配 備 された 航 空 部 隊 にとって 沖 縄 に 配 備 される ことがなぜ 必 要 であるのかについて 具 体 的 実 証 的 な 説 明 は 一 切 ないも のであり このような 埋 立 必 要 理 由 書 の 説 明 をもって 本 事 業 は 極 めて 必 要 性 が 高 い と 認 めることはできない ア 第 31 海 兵 機 動 展 開 隊 (31MEU)について (ア) 埋 立 必 要 理 由 書 は 米 海 兵 隊 は 司 令 部 陸 上 航 空 後 方 支 援 部 隊 を 組 合 わせて 一 体 的 に 運 用 する 組 織 構 造 を 有 するとしている たしかに 海 兵 隊 は 任 務 を 行 うべき 何 らかの 事 態 が 発 生 した 場 合 司 令 部 部 隊 陸 上 部 隊 航 空 部 隊 及 び 後 方 支 援 部 隊 が 一 体 となった 海 兵 空 地 任 務 部 隊 (MAGTF)を 編 成 して 作 戦 を 展 開 するところに その 特 性 があり MAGTF を 編 成 してその 機 能 をはたすものである しかし この 具 体 的 な 特 性 機 能 という 点 から なぜ 普 天 間 飛 行 場 に 配 備 されて いる 航 空 部 隊 を 県 外 等 に 移 設 することが 出 来 ないのかということについ ての 具 体 的 な 説 明 はまったくなされていない そこで 以 下 具 体 的 に 検 討 する MAGTF は 編 成 規 模 の 大 きい 順 に 1 海 兵 機 動 展 開 部 隊 (MEF/メ フ) 2 海 兵 機 動 展 開 旅 団 (MEB/メブ) 及 び3 海 兵 機 動 展 開 隊 (MEU/ ミュー)の3 段 階 が 存 在 するが 沖 縄 に 配 備 されている 兵 力 のみで 編 成 できるのは MEU1 個 のみである 海 兵 隊 が MEU を 編 成 して 任 務 を 行 う 場 合 には 米 海 軍 の 水 陸 両 用 戦 隊 の 揚 陸 艦 に 搭 乗 して 実 任 務 を 行 うことになる 日 本 に 配 備 されてい る 揚 陸 艦 は 長 崎 県 佐 世 保 基 地 の4 隻 であるが これに 搭 載 できる MAGTF は MEU1 個 のみである 水 陸 両 用 戦 隊 と MAGTF を 合 わせたものが 水 陸 両 用 即 応 群 (ARG/ア ーグ)であり 実 任 務 は ARG として 行 われることになる すなわち 31MEU の 約 2200~2500 名 ( 標 準 は 2000 名 )が 佐 世 保 から 展 開 して くる3 隻 の 強 襲 揚 陸 艦 に 搭 乗 して 洋 上 で 即 応 展 開 する 仕 組 みになって いる ( 森 本 敏 オスプレイの 謎 その 真 実 218 頁 )ものであり 具 体 的 に 機 動 性 即 応 性 が 問 題 となるのは MEU1 個 を 搭 載 した ARG の 機 動 性 即 応 性 である 沖 縄 に 配 備 された 第 31 海 兵 機 動 展 開 隊 (31MEU)が 実 任 務 を 行 う 際 7

には 米 海 軍 の 水 陸 両 用 戦 隊 と ARG を 編 成 して 行 うことになる しかし 沖 縄 には 海 兵 隊 基 地 は 存 在 しても 米 海 軍 の 水 陸 両 用 戦 隊 の 母 港 となる 海 軍 基 地 は 存 在 しない 揚 陸 艦 は 日 本 本 土 の 長 崎 県 佐 世 保 基 地 を 母 港 とするものである また 揚 陸 艦 に 搭 載 されるハリアー 戦 闘 機 は 山 口 県 岩 国 飛 行 場 に 配 備 されている 31MEU が 任 務 を 行 うためには 長 崎 県 佐 世 保 基 地 から 揚 陸 艦 が 沖 縄 県 具 志 川 市 のホワイトビーチに 回 航 されるのを 待 ち ヘリコプター 装 備 兵 員 等 を 搭 載 し そこでようやく 実 任 務 地 に 向 かうことになる 佐 世 保 基 地 に 停 泊 している 揚 陸 艦 が 出 撃 命 令 を 受 けてから 31MEU を 搭 載 して 沖 縄 を 出 港 するまでには 円 滑 に 最 短 時 間 で 準 備 が 進 むとし ても4 日 程 度 は 要 するとされている 水 陸 両 用 戦 隊 の 揚 陸 艦 の 母 港 から 海 を 挟 んだ 遠 隔 地 に 沖 縄 の 海 兵 隊 基 地 は 所 在 しているものであり 沖 縄 に 海 兵 隊 航 空 基 地 がなければ 機 動 性 即 応 性 が 失 われるとの 論 理 は 成 り 立 たちえない 普 天 間 飛 行 場 に 配 備 された 航 空 部 隊 は 揚 陸 艦 に 搭 載 されて 実 任 務 に つくものであり 揚 陸 艦 に 搭 載 された 後 に 即 応 性 機 動 性 といった 特 性 機 能 を 示 すことになるが 揚 陸 艦 の 母 港 は 日 本 本 土 にあるのだから 普 天 間 飛 行 場 の 県 外 移 設 等 によって 即 応 性 機 動 性 が 失 われることに はならない ちなみに 2011 年 ( 平 成 23 年 )3 月 11 日 に 発 生 した 東 北 大 震 災 の 際 佐 世 保 基 地 に 在 泊 中 であったドッグ 型 揚 陸 艦 は 輸 送 支 援 のため 北 海 道 に 向 い 同 月 15 日 には 北 海 道 苫 小 牧 港 に 入 港 しており 佐 世 保 基 地 の 揚 陸 艦 に 北 海 道 から 搭 乗 する 場 合 と 沖 縄 から 搭 乗 する 場 合 を 比 較 し ても 即 応 性 機 動 性 にさしたる 差 は 存 しないことになる (イ) また 31MEU は オーストラリア タイ フィリピンなどのアジア 太 平 洋 地 域 の 国 々をめぐり 共 同 訓 練 を 行 い 信 頼 関 係 を 醸 成 すること にその 重 要 な 役 割 があり アジア 太 平 洋 地 域 を 広 範 囲 に 巡 回 し 同 盟 国 との 共 同 訓 練 人 道 支 援 災 害 救 援 を 担 うことで アジア 太 平 洋 地 域 に おいてプレゼンスを 示 している 31MEU は 1 年 のうち 半 分 以 上 の 期 間 は 洋 上 展 開 をしているもので あるが 洋 上 展 開 をしている 際 には どの 地 域 から 乗 船 したのかは 関 係 がないものであるから この 点 からも 沖 縄 に 海 兵 隊 航 空 基 地 を 置 くこと は 必 然 とはいえない ちなみに 2011 年 ( 平 成 23 年 )3 月 11 日 に 発 生 した 東 北 大 震 災 に おける トモダチ 作 戦 には 31MEU と 長 崎 県 佐 世 保 基 地 の 第 11 水 陸 両 用 戦 隊 とで 構 成 される ARG も 参 加 したが 震 災 発 生 当 時 マレ ーシア インドネシアにあった ARG は 震 災 発 生 から6 日 後 の 同 月 17 日 には 秋 田 沿 岸 に 到 着 している (ウ) 訓 練 について 埋 立 必 要 理 由 は 平 素 から 日 常 的 に 各 構 成 要 素 が 一 体 となり 訓 練 を 行 うことで 優 れた 機 動 力 即 応 性 を 保 つとしている しかし 31MEU の 実 任 務 は 長 崎 県 佐 世 保 基 地 の 第 11 水 陸 両 用 戦 8

隊 と 一 体 として ARG を 構 成 して 行 われるものであるが ARG を 構 成 し ての 演 習 は 洋 上 で 行 われるものであり 沖 縄 に 海 兵 隊 航 空 基 地 が 所 在 しているために 洋 上 展 開 していない 時 期 には ARG としての 訓 練 を 行 う ことはできない また 広 大 な 演 習 場 のない 沖 縄 では 輸 送 ヘリが 装 甲 車 などの 大 型 貨 物 を 吊 り 下 げて 飛 行 する 訓 練 をすることもできず 米 本 土 の 訓 練 で 培 われ た 練 度 を 維 持 するための 総 合 的 訓 練 への 支 障 があるとの 指 摘 が 海 兵 隊 員 や 軍 事 評 論 家 らからなされている なお 31MEU を 構 成 する 主 力 部 隊 は 米 国 から 沖 縄 に 交 代 で 配 備 さ れる UDP 派 遣 (Unit Deployment Program の 略 で 部 隊 交 代 計 画 を 意 味 する )である 米 本 土 で 約 6か 月 の 編 成 解 除 展 開 準 備 錬 成 のため の 訓 練 日 本 での 約 6か 月 の 練 度 維 持 のための 訓 練 洋 上 での 約 6か 月 の 即 応 体 制 というローテーションであり 兵 員 は 常 に 入 れ 替 わっている ものである イ MEU を 超 える 規 模 の MAGTF について MEU を 超 える 規 模 の MAGTF は 国 外 県 外 の 各 地 に 分 散 配 備 され 今 後 更 なる 分 散 配 備 が 予 定 されている ⅢMEF(サードメフ)が 沖 縄 に 配 備 されているといっても 司 令 部 陸 上 航 空 後 方 支 援 部 隊 は 海 外 も 含 めて 分 散 配 置 されているものであり 分 散 配 置 が 海 兵 隊 の 一 体 性 を 損 なうものでないことを 示 している この 分 散 配 置 が 可 能 であることについては 有 事 における 部 隊 運 用 を 理 解 する 必 要 がある 現 在 太 平 洋 地 域 の 海 兵 隊 は 沖 縄 とハワイにほぼ 同 じ 規 模 の 地 上 航 空 後 方 支 援 部 隊 が 配 置 されている そして 山 口 県 岩 国 基 地 には 戦 闘 機 部 隊 がある これらを 統 合 する 司 令 部 が 沖 縄 にある こ の 配 置 運 用 で 仮 にフィリピンへ 作 戦 展 開 する 事 態 が 起 きたとする 沖 縄 から 海 兵 隊 の 地 上 航 空 後 方 支 援 の 各 部 隊 が 現 地 に 急 行 する ハワイ からも 部 隊 を 急 派 する 規 模 によってはカリフォルニアからも 増 派 され る そして 沖 縄 の 司 令 部 が 現 地 で 各 部 隊 と 合 流 し 統 合 指 揮 する このよ うに 海 兵 隊 は 現 地 集 合 型 の 運 用 を 採 用 しているため どこへでも 迅 速 な 対 応 が 可 能 である ( 屋 良 朝 博 基 地 問 題 の 実 相 と 構 造 島 袋 純 阿 部 裕 己 編 沖 縄 が 問 う 日 本 の 安 全 保 障 210 頁 )との 指 摘 もなされている MEU を 超 える 規 模 の MAGTF を 編 成 する 際 には 日 本 駐 留 の 兵 力 では 編 成 できず また 日 本 に 配 備 された 揚 陸 艦 には 搭 載 できないものである から 沖 縄 に 配 備 されていなければ 即 応 性 機 動 性 がはたせないというこ とにはならない ウ 海 兵 隊 基 地 について 沖 縄 の 地 理 的 優 位 性 は 認 められないこと (ア) 在 沖 海 兵 隊 が 実 任 務 を 行 う 際 には 長 崎 県 佐 世 保 基 地 を 母 港 とする 揚 陸 艦 に 搭 乗 して 任 務 につくものであり 1 年 のうちの 半 分 以 上 の 期 間 は 洋 上 展 開 をしているものである 1 年 の 大 半 の 期 間 を 占 める 洋 上 展 開 をしている 間 は 揚 陸 艦 が 航 行 し ている 場 所 から 目 的 地 に 向 かうことになるものであり 海 兵 隊 基 地 がど こに 所 在 しているのかは 問 題 とならない 9

31MEU は アジア 太 平 洋 地 域 の 同 盟 国 をめぐり 同 盟 国 との 共 同 訓 練 人 道 支 援 災 害 救 援 活 動 を 行 うことで 同 盟 国 との 信 頼 関 係 を 醸 成 する 活 動 を 行 い その 存 在 を 示 しているものあるから ヘリコプターが どこで 搭 載 されたか( 航 空 基 地 がどこに 所 在 しているのか)によって プレゼンスが 変 わるものではない (イ) 洋 上 展 開 していない 時 期 には 長 崎 県 佐 世 保 基 地 から 揚 陸 艦 が 具 志 川 市 のホワイトビーチに 回 航 されるのを 待 たなければならないものであ り 日 本 本 土 との 対 比 において 沖 縄 に 地 理 的 優 位 性 があることにはな らない (ウ) 海 兵 隊 の 駐 留 必 要 性 として 常 に 言 われることは 朝 鮮 半 島 有 事 との 関 係 である しかし 少 なくとも 日 本 本 土 との 対 比 において 朝 鮮 半 島 有 事 への 対 応 のために 日 本 本 土 ではなく 沖 縄 に 海 兵 隊 基 地 が 必 要 である ということはできない むしろ 朝 鮮 半 島 との 地 理 的 位 置 でいうならば 沖 縄 に 駐 留 すること は 朝 鮮 半 島 との 距 離 は 日 本 本 土 よりも 遠 ざかることになる 例 えば 沖 縄 ソウル 間 は 約 1260 キロメートルであるのに 対 し 福 岡 ソウル 間 は 約 534キロメートル 熊 本 ソウル 間 は 約 620キロメートルである 朝 鮮 半 島 有 事 への 対 応 は 日 本 本 土 と 沖 縄 との 対 比 において 沖 縄 に 地 理 的 優 位 性 があることの 根 拠 にはならないものである 海 兵 隊 に 即 していうならば 再 三 述 べているとおり 朝 鮮 半 島 で 任 務 を 行 うとしても 洋 上 展 開 している 期 間 であればそこから 朝 鮮 半 島 に 向 かうことになるから 沖 縄 の 地 理 的 位 置 は 関 係 がないものである 沖 縄 に 駐 留 している 部 隊 が 朝 鮮 半 島 に 向 かうためには 長 崎 県 佐 世 保 基 地 か ら 沖 縄 県 まで 揚 陸 艦 が 回 航 し これに 乗 船 をしてから 朝 鮮 半 島 に 向 かう ことになるものであるから 一 旦 朝 鮮 半 島 とは 逆 方 向 の 沖 縄 に 揚 陸 艦 が 向 かい 沖 縄 で 31MEU を 搭 載 してから 朝 鮮 半 島 に 向 かうことになる のである 朝 鮮 半 島 有 事 との 関 係 において 海 兵 隊 基 地 として 沖 縄 に 地 理 的 優 位 性 が 存 しないことは 明 らかである (エ) 沖 縄 の 地 理 的 優 位 性 の 根 拠 として 沖 縄 と 台 湾 海 峡 との 距 離 の 近 接 性 が 言 われることがある 日 本 本 土 より 沖 縄 が 台 湾 海 峡 に 近 いとしても 日 本 本 土 の 長 崎 県 佐 世 保 基 地 に 配 備 された 揚 陸 艦 が 到 着 することを 待 たなければならないこ とに 変 わりはなく 地 続 きで 佐 世 保 基 地 から 乗 艦 できる 地 域 との 優 劣 は なんら 明 らかにされていない また 朝 鮮 半 島 と 台 湾 海 峡 の 双 方 との 距 10

離 を 考 えても 例 えば 九 州 と 比 較 して 沖 縄 に 有 利 性 があるとは 言 えな い 検 証 結 果 報 告 書 が 地 理 的 位 置 関 係 を 素 直 に 見 る 限 り, 沖 縄 から ソウルは 1260km, 沖 縄 から 台 北 は 630km の 距 離 にあり, 一 方, 例 え ば 九 州 の 熊 本 からソウルは 620km, 熊 本 から 台 北 は 1240km であるか ら( 防 衛 省 第 1 次 回 答 書 平 成 23 年 12 月 19 日 ), 地 理 的 位 置 関 係 で 台 湾 海 峡 と 朝 鮮 半 島 への 距 離 をみた 場 合, 沖 縄 より 熊 本 の 方 が 地 理 的 に 優 れていると 見 るのが 事 実 に 沿 うものと 言 える なお, 沖 縄 県 は, 第 1 次 質 問 書 をもって, 防 衛 省 に 対 し, 何 故 日 本 の 中 で 沖 縄 におく 必 要 が あるのか,すなわち 本 土 に 配 備 した 場 合 との 比 較 における 沖 縄 配 備 の 優 位 性 について 質 問 をしているが, 国 からは 具 体 的 な 回 答 はなされてい ない としているとおり 海 兵 隊 基 地 について 沖 縄 が 地 理 的 優 位 性 を 有 するとする 具 体 的 実 証 的 根 拠 は 一 切 示 されていないものである さらに 本 件 で 問 題 とされているのは あくまでも 海 兵 隊 である 中 国 との 関 係 で 海 兵 隊 が 想 定 されていないことについては ジョージ ワ シントン 大 学 のマイク モチヅキ 教 授 は その 時 に 対 峙 する 米 軍 は 空 軍 と 海 軍 の 潜 水 艦 であって 海 兵 隊 ではありません だから 海 兵 隊 が いなくなると 不 安 だ という 日 本 国 民 の 意 識 は 間 違 っています とし 後 に 防 衛 大 臣 となる 森 本 敏 氏 は 野 村 総 合 研 究 所 主 任 研 究 員 であったと きに もともと 台 湾 海 峡 など 中 国 周 辺 に 海 兵 隊 が 投 入 される 可 能 性 は 極 めて 低 い としていたものである 軍 事 専 門 家 は 対 中 国 という 点 で 問 題 となるのは 空 軍 と 海 軍 であり 海 兵 隊 ではないとしているものである (オ) 海 兵 隊 は 揚 陸 艦 に 乗 船 して 洋 上 展 開 するものであるが 沖 縄 には 揚 陸 艦 の 母 港 となりうる 海 軍 施 設 は 存 しないものである また 海 兵 隊 は 沖 縄 では 訓 練 を 行 っているものであるが 射 程 の 長 い 実 弾 砲 撃 演 習 を 行 える 演 習 場 はなく(かつては 県 道 を 封 鎖 して 行 ってい た) 広 大 な 演 習 場 がない 沖 縄 では 訓 練 に 制 限 があり 沖 縄 に 駐 留 する 第 3 海 兵 師 団 第 12 海 兵 連 隊 による 実 弾 砲 撃 演 習 は 現 在 矢 臼 別 演 習 場 ( 北 海 道 ) 王 城 寺 原 演 習 場 ( 宮 城 県 ) 東 富 士 演 習 場 ( 静 岡 県 ) 日 出 生 台 演 習 場 ( 大 分 県 )の5ヵ 所 の 演 習 場 で 行 われている 揚 陸 艦 の 母 港 もなく 広 大 な 演 習 場 がないことは 海 兵 隊 基 地 の 地 理 的 条 件 として 優 位 であるとはいい 難 いものである 後 述 するとおり 沖 縄 の 海 兵 隊 移 駐 に 軍 事 的 根 拠 がないことは 米 国 米 軍 内 部 でも 指 摘 されてきていた また 1960 年 代 後 半 には 普 天 間 飛 行 場 は 軍 事 的 には 価 値 がないものと して 完 全 閉 鎖 が 予 定 されながら 首 都 圏 の 厚 木 基 地 の 航 空 機 被 害 をなくす ために 航 空 機 部 隊 の 移 設 先 とされたものである 海 兵 隊 基 地 の 沖 縄 集 中 は 日 本 本 土 の 米 軍 基 地 負 担 をなくすことで 日 本 本 土 の 反 米 軍 基 地 感 情 を 鎮 静 化 させるという 政 治 的 事 情 目 的 によっ ておこなわれたものであり 地 政 学 的 軍 事 的 理 由 によるものではない (キ) 沖 縄 の 基 地 の 脆 弱 性 は 米 国 米 軍 内 でかねてから 認 識 されていたもの であり 沖 縄 以 外 に 分 散 することにこそ 軍 事 的 合 理 性 が 存 するものであ 11

る 1957 年 ( 昭 和 32 年 )に 元 国 防 次 官 補 がアイゼンハワー 大 統 領 の 依 頼 に 応 じて 作 成 した 報 告 書 (ナッシュ レポート)においても 沖 縄 島 に 軍 事 力 が 集 中 していることは ソ 連 のミサイル 能 力 や 増 強 されている 中 国 の 軍 事 力 からみて 沖 縄 を 非 常 に 魅 力 的 で 脆 弱 なターゲットにして いる とし 更 なる 柔 軟 性 の 確 保 と 適 切 な 分 散 のために 適 当 な 部 隊 を 他 の 極 東 地 域 に 徐 々に 移 動 させることを 検 討 する よう 勧 告 していた ( 吉 次 公 介 ナッシュ レポート にみる 在 日 在 沖 米 軍 沖 縄 法 学 第 32 号 170 頁 ) 最 近 では 平 成 26 年 12 月 8 日 の 朝 日 新 聞 に ジョ ゼフ ナイ 元 国 防 次 官 補 が 中 国 の 弾 道 ミサイル 能 力 向 上 に 伴 い 固 定 化 された 基 地 の 脆 弱 性 を 検 討 する 必 要 がでてきた 卵 を1つのかごに 入 れておけば(すべて 割 れる)リスクが 増 す と 指 摘 し 在 日 米 軍 基 地 の7 割 超 が 沖 縄 に 集 中 していることは 軍 事 戦 略 上 のリスクになりつつ あるとの 見 方 を 示 しているものである (ク) 沖 縄 に 海 兵 隊 基 地 が 集 中 していることに 軍 事 的 地 理 的 必 然 性 がな く 他 地 域 への 分 散 が 政 治 的 に 困 難 であることが 理 由 であることは 防 衛 大 臣 らがこれを 認 めてきたものであった 森 本 敏 ( 当 時 ) 防 衛 大 臣 は 2012 年 ( 平 成 24 年 )12 月 25 日 の 防 衛 大 臣 記 者 会 見 において 普 天 間 の 辺 野 古 移 設 は 地 政 学 的 に 沖 縄 に 必 要 だから 辺 野 古 なのか それとも 本 土 や 国 外 に 受 入 れるところがないから 辺 野 古 なのか との 質 問 に 対 して 政 治 的 に 許 容 できるところが 沖 縄 にしかないので だから 簡 単 に 言 ってしまうと 軍 事 的 には 沖 縄 で なくても 良 いが 政 治 的 に 考 えると 沖 縄 がつまり 最 適 の 地 域 である と そういう 結 論 になる と 答 え 沖 縄 の 軍 事 的 地 理 的 必 然 性 を 端 的 に 否 定 していたものである 中 谷 防 衛 大 臣 ( 防 衛 大 学 校 卒 業 元 陸 上 自 衛 官 )は 平 成 13 年 4 月 から 平 成 14 年 9 月 にかけて 防 衛 庁 長 官 を 務 め 2014 年 ( 平 成 26 年 ) 12 月 24 日 に 防 衛 大 臣 に 任 命 されたものであるが 防 衛 大 臣 任 命 の 数 か 月 前 である 同 年 3 月 に 行 われたインタビュー(BOKUmedia ぼくメデ ィア)に 対 し できるだけ 日 本 各 地 に 分 散 できるところがないのかな と 探 していますけれど 理 解 をしてくれる 自 治 体 があれば 移 転 できます けれど 米 軍 反 対 とかいうところが 多 くて なかなか 米 軍 基 地 の 移 転 が 進 まないということで 沖 縄 に 集 中 しているというのが 現 実 なんで すね 九 州 とか 北 海 道 とかそういうところにもお 願 いはしています と 答 え 海 兵 隊 基 地 の 県 外 分 散 は 可 能 であることを 明 言 していた また かつて 小 泉 純 一 郎 ( 当 時 ) 首 相 は 平 成 16 年 (2004 年 )10 月 に 沖 縄 の 負 担 を 全 国 民 が 分 かち 合 おうということならば 本 土 移 転 国 外 移 転 の 両 方 を 考 えていい と 記 者 団 に 語 ったが 翌 年 6 月 23 日 の 戦 没 者 慰 霊 祭 の 際 に 記 者 団 に 質 問 された 際 には 総 論 賛 成 各 論 反 対 だ 負 担 軽 減 には 賛 成 しかし 自 分 の 所 には 来 てくれるなという 地 域 ば かりだ そこが 非 常 に 難 しい と 答 えていたものであった 12

(1) 沖 縄 への 米 軍 基 地 の 過 重 負 担 格 差 が 形 成 された 経 緯 ア 沖 縄 における 米 軍 基 地 の 形 成 経 緯 (ア) 日 本 本 土 と 沖 縄 の 米 軍 基 地 面 積 の 推 移 日 本 本 土 及 び 沖 縄 における 米 軍 基 地 ( 専 用 施 設 ) 面 積 の 推 移 は 以 下 の とおりである 日 本 (1972 年 以 降 は 沖 縄 を 除 く 面 積 ) 沖 縄 1945(S20) 年 4 万 5000 エーカー ( 約 182 km2) 1951(S26) 年 124 km2 1952(S27) 年 1352.636 km2 1954(S29) 年 162 km2 1955(S30) 年 1296.360 km2 1957(S32) 年 1005.39 km2 1958(S33) 年 660.528 km2 1958(S33) 年 176 km2 1960(S35) 年 335.204 km2 1960(S35) 年 209 km2 1965(S40) 年 1970(S45) 年 306.824 km2 214.098 km2 1972(S47) 年 196.991 km2 1972(S47) 年 278.925 km2 1985(S60) 年 82.675 km2 1985(S60) 年 248.61 km2 2013(H25) 年 80.919 km2 2013(H25) 年 228.072 km2 1,400.0 米 軍 専 用 施 設 面 積 の 推 移 1,200.0 1,000.0 日 本 の 米 軍 専 用 施 設 沖 縄 の 米 軍 専 用 施 設 800.0 600.0 400.0 200.0 0.0 1952 年 1955 年 1958 年 1961 年 1964 年 1967 年 1970 年 1973 年 1976 年 1979 年 1982 年 1985 年 1988 年 1991 年 1994 年 1997 年 2000 年 2003 年 2006 年 2009 年 2012 年 13

(イ) 沖 縄 への 海 兵 隊 移 駐 及 び 普 天 間 飛 行 場 が 航 空 基 地 拠 点 とされた 経 緯 a 海 兵 隊 基 地 の 沖 縄 へのシワ 寄 せ 1950 年 代 初 頭 沖 縄 の 米 軍 基 地 面 積 は 約 124 平 方 キロメートル (1951 年 昭 和 26 年 )であったのに 対 し 日 本 本 土 の 米 軍 基 地 面 積 は 1352.636 平 方 キロメートル(1952 年 昭 和 27 年 )であり 沖 縄 の 米 軍 基 地 面 積 は 日 本 本 土 の 米 軍 基 地 面 積 の 10 パーセントに も 満 たないものであった そして 1950 年 代 を 通 じて 日 本 の 米 軍 基 地 面 積 は 大 きく 減 少 し 他 方 で 沖 縄 の 基 地 面 積 は 激 増 した すなわち 1960 年 ( 昭 和 35 年 ) には 日 本 の 米 軍 基 地 面 積 は 335.204 平 方 キロメーロルと4 分 の1 以 下 に 減 少 し 他 方 で 沖 縄 の 米 軍 基 地 面 積 は 約 209 平 方 キロメー トルと 約 1.7 倍 となった この 沖 縄 における 基 地 面 積 の 激 増 の 大 きな 要 因 となったのは 日 本 本 土 から 沖 縄 への 海 兵 隊 移 駐 であった 沖 縄 戦 の 主 力 を 担 った 海 兵 隊 部 隊 のほとんどは 降 伏 後 の 日 本 本 土 に 移 って 初 期 の 占 領 政 策 に 従 事 した 後 米 国 本 土 に 帰 還 した 沖 縄 の 占 領 政 策 を 行 ったのは 米 国 の 陸 軍 と 海 軍 であった 米 国 本 土 で 一 旦 解 散 した 海 兵 隊 の 部 隊 は 朝 鮮 戦 争 を 契 機 に 1953 年 ( 昭 和 28 年 )に 第 3 海 兵 師 団 として 再 結 成 され 日 本 本 土 に 派 遣 された キャンプ 岐 阜 とキャンプ 富 士 に 司 令 部 が 置 かれ 神 奈 川 県 横 須 賀 市 静 岡 県 御 殿 場 市 滋 賀 県 大 津 市 奈 良 県 奈 良 市 大 阪 府 和 泉 市 堺 市 兵 庫 県 神 戸 市 などに 分 散 駐 留 した 1950 年 代 には 日 本 本 土 でも 米 軍 基 地 や 演 習 は 住 民 から 目 に 見 え る 存 在 であった 日 本 国 との 平 和 条 約 ( 以 下 対 日 平 和 条 約 という )により 日 本 が 主 権 国 家 として 独 立 を 回 復 したにもかかわ らず 多 くの 米 軍 基 地 が 存 在 し 続 け 時 には 住 民 たちが 訓 練 に 巻 き 込 まれて 死 傷 者 が 出 るような 状 況 に 対 し 日 本 本 土 の 各 地 で 熾 烈 な 米 軍 基 地 への 反 対 運 動 があった とりわけ 1957 年 ( 昭 和 32 年 )1 月 に 発 生 した 薬 莢 拾 いをし ていた 農 家 の 主 婦 を 米 兵 が 射 殺 したジラード 事 件 は 日 本 社 会 に 大 きな 衝 撃 を 与 え 米 軍 への 批 判 が 相 次 ぎ 国 会 でも 野 党 が 米 軍 によ る 犯 罪 を 追 及 し 深 刻 な 政 治 問 題 へと 発 展 した 岸 首 相 は マッカ ーサー 駐 日 米 大 使 に 国 内 の 対 米 不 満 を 強 調 し 米 陸 上 兵 力 の 全 面 撤 退 を 訴 え アイゼンハワー 大 統 領 は 米 陸 上 兵 力 を 遅 滞 なく 日 本 から 撤 退 させることを 決 断 し 海 兵 隊 の 沖 縄 移 駐 が 加 速 された 1957 年 ( 昭 和 32 年 )6 月 21 日 の 岸 首 相 とアイゼンハワー 米 大 統 領 の 共 同 声 明 において 独 立 国 家 となった 日 本 と 米 国 との 対 等 が 強 調 され 米 国 が 明 年 中 に 日 本 国 内 の 合 衆 国 軍 隊 の 兵 力 を すべ ての 合 衆 国 地 上 戦 闘 部 隊 のすみやかな 撤 退 を 含 み 大 幅 に 削 減 す る ことを 約 束 した そして 1958 年 ( 昭 和 33 年 )にはすべて の 地 上 戦 闘 部 隊 の 撤 退 すなわち 海 兵 隊 の 日 本 からの 撤 退 が 実 現 し その 多 くが 沖 縄 へと 移 駐 した 14

この 海 兵 隊 の 日 本 本 土 から 沖 縄 への 移 駐 については その 軍 事 的 根 拠 も 定 かではなかった 1954 年 ( 昭 和 29 年 )4 月 1 日 統 合 参 謀 本 部 は 極 東 米 軍 の 包 括 的 な 再 配 置 計 画 を 作 成 したが この 計 画 では 日 本 駐 留 の 第 3 海 兵 師 団 を 米 国 本 国 に 1955 年 7 月 から9 月 にかけて 撤 退 させるとなっていた 1954 年 ( 昭 和 29 年 )7 月 26 日 ウィルソン 国 防 長 官 ( 前 職 は GM 社 の 社 長 という 実 業 家 である) は 日 本 から 本 国 に 撤 退 予 定 の 第 3 海 兵 師 団 を 沖 縄 に 移 駐 させるこ とを 提 案 し 各 軍 で 詳 しく 検 討 される 前 に 僅 か2 日 後 の 国 家 安 全 保 障 会 議 で 承 認 をされた この 決 定 に 対 し 東 京 の 極 東 軍 司 令 官 は 移 駐 コストと 土 地 接 収 の 観 点 から 海 兵 隊 の 沖 縄 移 駐 に 反 対 した ま た 統 合 参 謀 本 部 の 下 部 機 関 である 統 合 戦 略 計 画 委 員 会 が 同 年 11 月 にまとめた 検 討 結 果 では ソ 連 との 全 面 戦 争 が 勃 発 した 場 合 には 第 三 海 兵 師 団 はヨーロッパに 派 遣 されることが 予 定 されており 第 三 海 兵 師 団 を 沖 縄 に 移 駐 させることは 実 際 的 ではないとしていた 翌 年 5 月 那 覇 総 領 事 館 総 領 事 は 駐 日 大 使 に 国 防 長 官 の 決 定 はだれも 説 明 できない 深 刻 な 事 態 に 陥 っている 土 地 問 題 は 解 決 で きなくなるだろう と 打 電 し 日 本 本 土 から 沖 縄 への 海 兵 隊 の 移 駐 に 反 対 した 1957 年 ( 昭 和 32 年 ) 末 に 元 国 防 次 官 補 がアイゼンハワー 大 統 領 の 依 頼 によって 作 成 した 報 告 書 (ナッシュ レポート)は 沖 縄 の 海 兵 隊 は 機 動 性 に 欠 ける と 問 題 点 を 指 摘 していた 海 兵 隊 の 役 割 は 戦 争 となった 場 合 に 真 っ 先 に 戦 場 に 駆 けつけ 敵 前 上 陸 をは かることであり その 機 動 性 を 欠 いているということは 海 兵 隊 の 沖 縄 駐 留 は 軍 事 的 合 理 性 を 欠 いているということにほかならない 軍 事 的 合 理 性 を 欠 いたまま 日 本 国 内 の 反 米 軍 基 地 感 情 の 鎮 静 化 という 政 治 的 目 的 のために 海 兵 隊 の 沖 縄 移 駐 が 急 がれたことは 明 らかであった 日 本 本 では 1957 年 ( 昭 和 32 年 ) 中 には 伊 丹 飛 行 場 内 灘 演 習 場 など 1958 年 ( 昭 和 33 年 ) 中 には 新 潟 飛 行 場 小 牧 飛 行 場 キ ャンプ 岐 阜 など 1959 年 ( 昭 和 34 年 )には 北 海 道 演 習 場 辻 堂 演 習 場 キャンプ 千 歳 などが 返 還 されていき 近 畿 中 部 四 国 には ほとんど 米 軍 基 地 がなくなり 日 本 本 土 における 反 米 基 地 感 情 は 急 激 に 鎮 静 化 していった 1950 年 代 初 頭 の 日 本 の 独 立 回 復 時 から 1960 年 ( 昭 和 35 年 )の 安 保 改 定 までの 間 に 日 本 本 土 の 米 軍 基 地 面 積 は4 分 の1 以 下 に 減 少 していた 一 方 対 日 平 和 条 約 第 3 条 により 日 本 から 切 り 離 された 沖 縄 では あらたな 米 軍 基 地 建 設 のために いわゆる 銃 剣 とブルドーザー と 呼 ばれる 軍 用 地 の 強 制 接 収 も 行 われ 米 軍 基 地 が 拡 張 をされてい った そして 1956 年 ( 昭 和 31 年 )にはキャンプ シュワブ 辺 野 古 弾 薬 庫 1957 年 ( 昭 和 32 年 )にはキャンプ ハンセン 北 部 訓 練 15

場 キャンプ マクトリアス 1958 年 ( 昭 和 33 年 )にはキャンプ コートニーと 北 部 の 海 兵 隊 新 基 地 を 中 心 として 沖 縄 の 米 軍 基 地 が 拡 張 されていった 沖 縄 の 米 軍 基 地 面 積 は 1951 年 ( 昭 和 26 年 )には 124 平 方 キロ メートルであったものが 1960 年 ( 昭 和 35 年 )には 209 平 方 キロ メートルにまで 増 加 していた b 航 空 機 騒 音 被 害 の 沖 縄 へのシワ 寄 せ( 普 天 間 飛 行 場 が 第 36 海 兵 航 空 群 のホームベースとされた 経 緯 等 ) 普 天 間 飛 行 場 が 第 36 海 兵 航 空 軍 のホームベースとなったのは 1969 年 ( 昭 和 44 年 )のことであるが 日 本 本 土 の 基 地 負 担 の 軽 減 のためであった 米 国 防 総 省 が 1968 年 ( 昭 和 43) 年 12 月 に 策 定 した 在 日 米 軍 再 編 計 画 では 朝 鮮 半 島 有 事 の 際 に 海 兵 隊 の 航 空 機 は 到 着 までに 数 日 かかるため 決 定 的 な 役 割 を 果 たせないことや 牧 港 補 給 地 区 の 第 3 海 兵 補 給 群 は 財 政 的 組 織 的 に 非 効 率 などの 軍 事 的 理 由 を 挙 げ 普 天 間 飛 行 場 の 完 全 閉 鎖 のほか 第 26 連 隊 上 陸 団 を 米 本 土 へ 移 転 第 3 海 兵 補 給 軍 を 陸 軍 第 2 補 給 部 隊 に 統 合 するなど 在 沖 海 兵 隊 の 大 幅 な 削 減 が 提 案 されていた 完 全 閉 鎖 の 対 象 とされた 普 天 間 飛 行 場 は 1960 年 ( 昭 和 35 年 ) に 海 兵 隊 航 空 基 地 として 使 用 開 始 された 当 時 は 飛 行 場 と 周 辺 居 住 地 域 との 間 に 遮 蔽 もなかったものであり 1969 年 ( 昭 和 44 年 )の 時 点 においても ヘリコプター 部 隊 は 僅 かに 4 機 が 展 開 するのみであ った しかし 日 本 本 土 における 米 軍 基 地 負 担 を 軽 減 するため 普 天 間 飛 行 場 の 完 全 閉 鎖 を 含 む 在 沖 海 兵 隊 の 大 幅 削 減 の 計 画 は 見 送 られ 一 転 して 日 本 本 土 の 航 空 部 隊 の 移 駐 先 とされることとなった 国 防 総 省 は 当 時 撤 退 圧 力 が 高 まっていた 神 奈 川 県 の 厚 木 飛 行 場 に 展 開 する 航 空 機 の 移 転 先 として 岩 国 飛 行 場 と 普 天 間 飛 行 場 を 選 定 し 普 天 間 飛 行 場 は 完 全 閉 鎖 どころか 日 本 本 土 に 展 開 してい る 航 空 機 の 移 転 先 とされることになり 1969 年 ( 昭 和 44 年 )11 月 に 第 1 海 兵 航 空 団 第 36 海 兵 航 空 群 のホームベースとされた(( 川 名 晋 史 在 日 米 軍 基 地 再 編 を 巡 る 米 国 の 認 識 とその 過 程 起 点 とし ての 1968 年 国 相 安 全 保 障 第 42 巻 第 3 号 ) 日 本 の 首 都 圏 の 米 軍 航 空 機 騒 音 等 の 軽 減 の 必 要 という 政 治 的 事 情 により 軍 事 的 理 由 からは 閉 鎖 が 検 討 されていた 普 天 間 飛 行 場 が 第 36 海 兵 航 空 群 のホームベースとさたものであり そもそも 普 天 間 飛 行 場 が 海 兵 隊 航 空 基 地 の 拠 点 とされたことに 地 理 的 必 然 性 は なかったものである 他 方 1960 年 代 後 半 から 1970 年 代 前 半 にかけて 日 本 本 土 の 米 軍 基 地 は 首 都 圏 を 中 心 に 激 減 をした 1968 年 ( 昭 和 43 年 )の 米 軍 板 付 基 地 のF-4ファントム 戦 闘 機 が 九 州 大 学 構 内 に 墜 落 事 故 などにより 日 本 本 土 では 急 激 に 反 米 軍 16

基 地 感 情 が 高 まり 日 米 両 政 府 にとって 反 基 地 感 情 の 鎮 静 化 が 深 刻 な 政 治 課 題 となり 首 都 圏 を 中 心 とする 米 軍 基 地 の 整 理 縮 小 が 検 討 されることとなった 同 年 12 月 に 開 催 された 第 9 回 日 米 安 全 保 障 協 議 委 員 会 (SCC) において 日 米 双 方 が 日 本 のような 狭 隘 な 国 土 における 基 地 施 設 の 存 在 が 深 刻 な 問 題 を 惹 起 しているとの 認 識 を 示 し 米 軍 基 地 の 返 還 等 について 日 米 合 同 委 員 会 で 具 体 的 措 置 をとることとされた F 4 ファントム 戦 闘 機 の 墜 落 事 故 を 起 こした 板 付 基 地 は 軍 事 的 に は 朝 鮮 有 事 において 在 韓 米 空 軍 基 地 が 使 用 不 能 になった 場 合 には 決 定 的 に 重 要 な 役 割 を 果 たすと 位 置 づけられていたにもかかわらず ( 沖 縄 ソウル 間 は 1260 キロメートルであるのに 対 し 福 岡 ソ ウル 間 は 534 キロメートルと 半 分 にも 満 たない ) 1969 年 6 月 までに 分 散 作 戦 基 地 へ 転 換 (すなわち 運 用 停 止 )することとされた そして 1969 年 ( 昭 和 44 年 )6 月 の 日 米 合 同 委 員 会 における 中 間 報 告 までの 約 半 年 間 の 間 に 19 基 地 について 措 置 がとられた 同 年 12 月 の 第 12 回 SCC において 基 地 の 整 理 統 合 計 画 が 正 式 に 了 承 され 1971 年 ( 昭 和 46 年 )6 月 までに 横 田 基 地 からの 偵 察 部 隊 の 米 国 への 移 駐 や 戦 闘 部 隊 の 復 帰 直 前 の 沖 縄 嘉 手 納 基 地 へ の 移 駐 などが 決 まった 横 田 基 地 の 戦 闘 機 部 隊 は 1971 年 ( 昭 和 46 年 )3 月 から 沖 縄 嘉 手 納 基 地 への 移 駐 を 開 始 し 同 年 5 月 まで に 移 駐 を 完 了 した 輸 送 機 基 地 への 変 貌 した 横 田 基 地 の 航 空 機 騒 音 が 減 少 する 一 方 で 横 田 基 地 からのF-4 ファントム 戦 闘 機 の 移 駐 先 となった 嘉 手 納 基 地 の 基 地 機 能 は 強 化 され 戦 闘 機 騒 音 もさらに 激 化 することとなった 1973 年 ( 昭 和 48 年 )1 月 の 第 14 回 SCC において 関 東 平 野 地 域 における 施 設 区 域 の 整 理 統 合 計 画 ( 関 東 計 )が 了 承 され 同 月 中 に 日 米 合 同 委 員 会 で 関 東 計 画 の 実 施 が 合 意 された 関 東 計 画 の 内 容 は 1973 年 ( 昭 和 48 年 )から3 年 間 で 関 東 平 野 に 所 在 す る 空 軍 基 地 を 横 田 基 地 に 集 約 し 6つの 基 地 ( 府 中 空 軍 施 設 の 大 部 分 キャンプ 朝 霞 の 大 部 分 立 川 飛 行 場 関 東 村 住 宅 地 区 ジョン ソン 飛 行 場 の 大 部 分 水 戸 空 対 地 射 爆 撃 場 )を 日 本 に 返 還 するとい うものであり 日 本 本 土 の 米 軍 基 地 の 大 幅 削 減 はこうして 完 成 し 首 都 圏 を 中 心 として 目 に 見 える 形 で 米 軍 基 地 の 削 減 が 実 現 したこと により 日 本 本 土 における 米 軍 基 地 への 社 会 的 関 心 は 薄 れていった c 以 上 述 べたとおり 沖 縄 への 米 軍 基 地 集 中 という 構 造 は 日 本 本 土 の 反 米 軍 基 地 感 情 の 鎮 静 化 という 政 治 的 課 題 の 解 決 のため 日 本 本 土 に 駐 留 していた 海 兵 隊 日 本 の 首 都 圏 の 航 空 機 部 隊 の 沖 縄 への 移 駐 基 地 のしわ 寄 せによってつくられたものであり 地 理 的 軍 事 的 必 然 性 によるものではない (3) 埋 立 てによって 得 られる 利 益 に 関 するまとめ 安 保 条 約 に 基 づく 米 軍 の 日 本 駐 留 自 体 の 必 要 性 が 認 められることを 前 提 17

としても また 沖 縄 への 米 軍 海 兵 隊 の 駐 留 を 前 提 としても 海 兵 隊 航 空 基 地 を 沖 縄 に 置 かなければならないという 地 理 的 必 然 性 は 認 められず 普 天 間 飛 行 場 を 県 内 にしか 移 設 できないという 地 理 的 軍 事 的 根 拠 は 存 し ないものであり 埋 立 てによって 得 られる 利 益 は 相 対 的 に 高 度 なものと は 言 えないものである 3 埋 立 ての 遂 行 により 失 われる 利 益 ( 生 ずる 不 利 益 ) (1) 本 件 埋 立 は 全 国 の 在 日 米 軍 専 用 施 設 の 73.8 パーセントを 抱 える 沖 縄 県 内 において 米 軍 基 地 の 固 定 化 を 招 く 契 機 となり 基 地 負 担 について 格 差 や 過 重 負 担 の 固 定 化 に 繋 がるものである また 本 件 埋 立 対 象 地 は 自 然 環 境 的 観 点 から 極 めて 貴 重 な 価 値 を 有 する 地 域 であって いったん 本 件 埋 立 が 実 施 されると 現 況 の 自 然 への 回 復 がほぼ 不 可 能 であり また 今 後 本 件 埋 立 対 象 地 に 普 天 間 飛 行 場 代 替 施 設 が 建 設 さ れた 場 合 騒 音 被 害 の 増 大 は 住 民 の 生 活 や 健 康 に 大 きな 被 害 を 与 えるもので ある (2) 沖 縄 県 民 は 軍 事 戦 争 米 軍 基 地 の 存 在 のため 運 命 を 翻 弄 され 基 地 負 担 を 押 し 付 けられてきた そして 戦 後 70 年 を 経 過 した 今 日 においても 沖 縄 における 米 軍 基 地 の 存 在 は 沖 縄 の 振 興 開 発 を 進 める 上 で 大 きな 制 約 となっていることはもとよ り その 運 用 等 により 周 辺 住 民 をはじめ 県 民 生 活 に 様 々な 影 響 を 与 えている 日 本 の 国 土 面 積 のわずか 0.6 パーセントに 過 ぎない 狭 い 沖 縄 県 に 在 日 米 軍 専 用 施 設 面 積 の 73.8 パーセントに 及 ぶ 広 大 な 面 積 の 米 軍 基 地 ( 専 用 施 設 ) が 存 在 している 米 軍 基 地 は 県 土 面 積 の 約 10 パーセントを 占 め とりわ け 人 口 や 産 業 が 集 中 する 沖 縄 島 においては 約 18 パーセントを 米 軍 基 地 が 占 めている さらに 沖 縄 周 辺 には 28 か 所 の 水 域 と 20 ヵ 所 の 空 域 が 米 軍 の 訓 練 区 域 として 設 定 されるなど 陸 地 だけでなく 海 空 の 使 用 も 制 限 され ている 米 軍 基 地 には 日 本 国 内 法 令 が 適 用 されないものと 解 釈 運 用 されており また 日 米 地 位 協 定 による 排 他 的 管 理 権 などの 米 軍 の 特 権 が 認 められている ことから 地 方 公 共 団 体 からすれば 米 軍 基 地 の 存 在 とは 自 治 権 の 及 ばな い 地 域 存 在 にほかならない すなわち 県 土 面 積 の 約 10 パーセント 沖 縄 島 においては 約 18 パーセントにも 及 ぶ 地 域 について 自 治 権 が 奪 われて いることになり 巨 大 な 自 治 権 の 空 白 地 帯 となっている こうした 過 重 な 米 軍 基 地 の 存 在 は 都 市 形 成 や 交 通 体 系 の 整 備 並 びに 産 業 基 盤 の 整 備 など 地 域 の 振 興 開 発 を 図 る 上 で 大 きな 障 害 となっている 街 の 中 心 地 に 基 地 を 持 つ 沖 縄 島 中 部 の 主 要 都 市 では 周 辺 集 落 間 の 交 通 網 が 遮 断 さ れている また 基 地 周 辺 の 住 宅 商 業 地 域 はゾーニングもされないままス プロール 化 してできたため 住 宅 等 が 密 集 し 道 路 整 備 などが 不 十 分 な 状 況 になっている また 広 大 な 米 軍 基 地 の 存 在 は 県 民 生 活 や 自 然 環 境 に 様 々な 影 響 を 及 ぼ しており とりわけ 日 常 的 に 発 生 する 航 空 機 騒 音 による 基 地 周 辺 住 民 の 健 康 への 影 響 や 戦 闘 機 ヘリコプター 等 米 軍 機 の 墜 落 事 故 及 び 油 脂 類 赤 土 等 18

の 流 出 実 弾 演 習 による 山 林 火 災 や 被 弾 事 故 等 米 軍 基 地 に 起 因 する 事 件 事 故 等 による 県 民 生 活 及 び 環 境 への 影 響 が 問 題 となっている 飛 行 場 基 地 周 辺 においては 環 境 省 の 定 める 環 境 基 準 値 を 超 える 違 法 な 航 空 機 騒 音 が 発 生 しており 地 域 住 人 の 日 常 生 活 及 び 健 康 への 影 響 が 懸 念 され ている また 基 地 周 辺 の 学 校 では 授 業 が 度 々 中 断 されるなど 教 育 面 でも 影 響 が 出 ている キャンプ ハンセン 演 習 場 では 度 重 なる 実 弾 演 習 や それに 伴 う 山 林 火 災 の 発 生 等 により 大 切 な 緑 が 失 われ 山 肌 がむき 出 しになるなど かけが えのない 自 然 環 境 が 損 なわれている その 他 同 演 習 場 では 無 数 の 不 発 弾 が 存 在 し その 処 理 には 莫 大 な 費 用 と 長 い 年 月 を 要 することが 予 想 される 米 軍 航 空 機 関 連 の 事 故 は 復 帰 後 平 成 24 年 12 月 末 現 在 で 540 件 (うち 墜 落 43 件 ) 発 生 している 航 空 機 事 故 は 一 歩 間 違 えば 住 民 を 巻 き 込 む 大 惨 事 になりかねないものであり 周 辺 住 民 はもとより 県 民 に 大 きな 不 安 を 与 えている 平 成 10 年 7 月 にキャンプ ハンセン 内 で 発 生 した 海 兵 隊 所 属 のヘリコプ ター 墜 落 事 故 をはじめ 平 成 11 年 4 月 には 海 兵 隊 所 属 のヘリコプターが 北 部 訓 練 所 の 沖 合 に 墜 落 する 事 故 ( 乗 員 4 名 死 亡 ) 同 年 6 月 にはハリアー 機 が 嘉 手 納 飛 行 場 を 離 陸 後 滑 走 路 に 墜 落 する 事 故 平 成 14 年 8 月 には 嘉 手 納 基 地 所 属 の 戦 闘 機 が 沖 縄 本 島 の 南 約 60 マイル( 約 100 キロメートル)の 海 上 に 墜 落 する 事 故 平 成 16 年 8 月 13 日 には 沖 縄 国 際 大 学 構 内 への 海 兵 隊 所 属 のヘリコプター 墜 落 事 故 平 成 18 年 1 月 17 日 には 嘉 手 納 基 地 所 属 の 戦 闘 機 が 嘉 手 納 飛 行 場 から 北 東 へ 55 マイルの 訓 練 区 域 内 の 海 上 へ 墜 落 する 事 故 平 成 20 年 10 月 24 日 には 嘉 手 納 飛 行 場 のエアロクラブ 所 属 のセスナ 機 が 名 護 市 真 喜 屋 の 畑 地 に 墜 落 した 事 故 が 発 生 し 県 民 に 大 きな 不 安 と 衝 撃 を 与 えた その 他 米 軍 人 等 による 刑 法 犯 罪 は 沖 縄 県 警 察 本 部 の 統 計 によると 昭 和 47 年 の 日 本 復 帰 から 平 成 24 年 12 月 末 までに 5,801 件 にのぼり そのう ち 凶 悪 事 件 が 570 件 粗 暴 犯 が 1,045 件 も 発 生 するなど 県 民 の 生 命 生 活 及 び 財 産 に 大 きな 影 響 を 及 ぼしている そして 圧 倒 的 な 県 民 世 論 は 本 件 埋 立 に 反 対 をしている 平 成 7 年 10 月 21 日 に8 万 5000 人 が 参 加 した 基 地 の 整 理 縮 小 地 位 協 定 の 見 直 し 等 を 求 める 県 民 総 決 起 大 会 から 平 成 27 年 5 月 17 日 に3 万 5000 人 が 参 加 した 県 民 大 会 まで くり 返 して 基 地 の 整 理 縮 小 を 求 め 新 基 地 に 反 対 する 民 意 を 示 してきた 平 成 8 年 9 月 8 日 に 実 施 された 県 民 投 票 では 約 89 パーセン トが 日 米 地 位 協 定 の 見 直 し 及 び 基 地 の 整 理 縮 小 に 賛 成 し 平 成 9 年 12 月 21 日 に 実 施 された 名 護 市 住 民 投 票 では 過 半 数 が 新 基 地 建 設 に 反 対 をした 平 成 22 年 1 月 24 日 の 名 護 市 長 選 挙 平 成 26 年 1 月 29 日 の 名 護 市 長 選 挙 で は 辺 野 古 新 基 地 建 設 に 反 対 する 稲 嶺 進 候 補 が 当 選 をした 平 成 22 年 11 月 28 日 の 沖 縄 県 知 事 選 挙 では 日 米 合 意 の 見 直 しと 普 天 間 基 地 の 県 外 移 設 の 実 現 を 強 く 求 めることを 公 約 として 掲 げた 仲 井 眞 弘 多 候 補 が 当 選 した そ して 仲 井 眞 前 知 事 による 本 件 埋 立 承 認 後 の 平 成 26 年 11 月 16 日 に 行 われ た 沖 縄 県 知 事 選 挙 では 辺 野 古 新 基 地 建 設 に 反 対 する 翁 長 雄 志 候 補 が 本 件 19

埋 立 承 認 をした 仲 井 眞 弘 多 候 補 に 10 万 票 以 上 の 大 差 をつけて 当 選 した 平 成 26 年 12 月 14 日 に 行 われた 衆 議 院 選 挙 では 沖 縄 県 内 の 小 選 挙 区 のすべ てで 辺 野 古 新 基 地 建 設 に 反 対 する 候 補 が 当 選 した 今 日 新 たに 恒 久 的 な 海 兵 隊 航 空 基 地 を 沖 縄 県 内 に 建 設 することは 県 民 の 意 思 に 反 して この 70 年 余 に 及 ぶ 過 重 な 基 地 負 担 格 差 を さらに 将 来 にわたって 固 定 化 することにほかならない (3) 2 号 要 件 について 後 述 するとおり 本 件 埋 立 対 象 地 は 豊 かで 貴 重 な 自 然 生 態 系 をなし 希 少 生 物 等 の 生 息 地 として 極 めて 高 い 自 然 環 境 価 値 を 有 す る 地 域 である また 美 しい 眺 望 と 静 謐 さを 兼 ね 備 え 良 好 な 大 気 環 境 水 環 境 に 恵 まれ この 良 好 な 環 境 はリゾート 事 業 にとっても 高 い 価 値 を 有 する ものである そして 本 件 埋 立 を 遂 行 することは 辺 野 古 周 辺 の 生 態 系 海 域 生 物 (ウ ミガメ) サンゴ 類 海 草 藻 類 ジュゴンに 重 大 な 悪 影 響 を 与 えるものであ り また 埋 立 土 砂 による 外 来 種 の 侵 入 が 強 く 懸 念 され 航 空 機 騒 音 低 周 波 による 被 害 を 住 民 に 生 じさせものである (4) 埋 立 ての 遂 行 により 失 われる 利 益 ( 生 ずる 不 利 益 ) のまとめ 以 上 述 べたとおり 豊 かで 貴 重 な 自 然 環 境 と 良 好 な 生 活 環 境 を 破 壊 して 新 基 地 を 建 設 し 沖 縄 の 過 重 な 基 地 負 担 をさらに 将 来 にわたって 固 定 化 する 不 利 益 は 看 過 できないものであり 埋 立 てにより 失 われる 利 益 ( 生 ずる 不 利 益 ) は 重 大 である 4 1 号 要 件 の 充 足 ついての 結 論 本 件 埋 立 により 得 られる 利 益 と 本 件 埋 立 により 失 われる 利 益 ( 生 ずる 不 利 益 ) とを 比 較 衡 量 して 総 合 的 に 判 断 した 場 合 国 土 利 用 上 適 正 且 合 理 的 ナルコ ト とは 言 えず 法 第 4 第 1 項 第 1 号 の 要 件 を 充 足 していないものと 判 断 され 本 件 埋 立 承 認 には 瑕 疵 がある 5 1 号 要 件 に 係 る 考 慮 要 素 の 選 択 や 判 断 過 程 の 合 理 性 の 欠 如 執 行 停 止 申 立 人 審 査 請 求 者 は 執 行 停 止 申 立 書 審 査 請 求 書 において 前 知 事 の 判 断 に 不 合 理 な 点 はなく 裁 量 権 の 逸 脱 濫 用 は 認 められない として いるが 以 下 のとおり 1 号 要 件 ( 埋 立 ての 必 要 性 を 含 む )の 判 断 に 係 る 考 慮 要 素 の 選 択 や 判 断 の 過 程 は 合 理 性 を 欠 いていたものである (1) 埋 立 ての 必 要 性 埋 立 ての 必 要 性 ( 審 査 基 準 においては 埋 立 ての 必 要 性 及 び 法 第 4 条 第 1 項 第 1 号 の 周 辺 の 土 地 利 用 の 現 況 からみて 不 釣 り 合 いな 土 地 利 用 と なっていないか 埋 立 ての 規 模 及 び 位 置 が 適 切 か )について 具 体 的 実 質 的 な 審 査 を 行 った 形 跡 がみとめられないこと 抑 止 力 論 等 についての 沖 縄 県 と 防 衛 省 との 間 の2 次 にわたる 質 疑 応 答 についても 埋 立 ての 必 要 性 に ついての 本 件 審 査 の 対 象 としていないことなど 審 査 の 実 態 は 埋 立 必 要 理 由 書 の 記 載 の 形 式 的 な 確 認 にとどまっておりその 内 容 の 合 理 性 妥 当 性 等 について 検 討 を 行 っていないものと 判 断 される 埋 立 ての 必 要 性 の 審 査 については 1 本 件 審 査 結 果 において 普 天 間 飛 行 場 移 設 の 必 要 性 から 直 ちに 本 件 埋 立 対 象 地 ( 辺 野 古 地 区 )での 埋 立 ての 必 要 性 ( 審 査 基 準 においては 埋 立 ての 必 要 性 周 辺 の 土 地 20

利 用 の 現 況 からみて 不 釣 り 合 いな 土 地 利 用 となっていないか 埋 立 ての 規 模 及 び 位 置 が 適 切 か )があるとした 点 に 論 理 の 飛 躍 ( 審 査 の 欠 落 )がある こと 2 本 件 埋 立 必 要 理 由 書 で 説 明 している 本 件 埋 立 対 象 地 についての 埋 立 ての 必 要 性 については 重 大 な 疑 念 があり 埋 立 ての 必 要 性 が 存 在 すると 認 定 することは 困 難 であること 3その 審 査 の 実 態 においても 具 体 的 審 査 がなされていないことなどの 点 から 考 慮 要 素 の 選 択 や 判 断 の 過 程 は 合 理 性 を 欠 いていたものである (2) 自 然 環 境 及 び 生 活 環 境 等 2 号 要 件 に 関 して 後 述 するとおり 環 境 影 響 評 価 手 続 における 免 許 権 者 等 で 示 された 問 題 点 に 対 応 できていないこと 定 量 評 価 をしておらず 明 らか に 誤 った 記 載 があり その 他 記 載 に 丁 寧 さ 慎 重 さを 欠 くといった 問 題 点 が あることから 環 境 保 全 措 置 が 問 題 の 現 況 及 び 影 響 を 的 確 に 把 握 し これに 対 する 措 置 が 適 正 に 講 じられているとは 言 い 難 く かつその 程 度 も 十 分 とは 認 めがたいこと といった 問 題 点 がある また 環 境 影 響 評 価 手 続 での 問 題 や 環 境 保 全 措 置 については 事 後 的 に 必 要 に 応 じて 専 門 家 の 指 導 助 言 を 得 て 必 要 な 措 置 を 講 じる との 意 見 表 明 だけで 当 該 環 境 保 全 措 置 の 全 てが 適 正 かつ 十 分 と 認 められないこと 等 種 々の 問 題 がある 自 然 環 境 及 び 生 活 環 境 等 に 悪 影 響 が 生 じることについては 平 成 24 年 3 月 27 日 付 普 天 間 飛 行 場 代 替 施 設 建 設 事 業 に 係 る 環 境 影 響 評 価 書 に 対 する 意 見 ( 土 海 第 1317 号 農 港 第 1581 号 )( 以 下 知 事 意 見 という ) において 名 護 市 辺 野 古 沿 岸 全 域 を 事 業 実 施 区 域 とする 当 該 事 業 は 環 境 の 保 全 上 重 大 な 問 題 があると 考 える また 当 該 評 価 書 で 示 された 環 境 保 全 措 置 等 では 事 業 実 施 区 域 周 辺 の 生 活 環 境 及 び 自 然 環 境 の 保 全 を 図 ることは 不 可 能 である とされていたものであり また 本 件 埋 立 承 認 の 約 1か 月 前 に 提 出 された 平 成 25 年 11 月 29 日 付 公 有 水 面 埋 立 承 認 申 請 書 に 関 する 意 見 について( 回 答 ) ( 環 政 第 1033 号 )( 以 下 環 境 生 活 部 長 意 見 とい う )においては 当 該 事 業 の 承 認 申 請 書 に 示 された 環 境 保 全 措 置 等 では 不 明 な 点 があり 事 業 実 施 区 域 周 辺 域 の 生 活 環 境 及 び 自 然 環 境 の 保 全 について の 懸 念 が 払 拭 できない とされていたことを 考 えると 上 記 の 問 題 点 が 適 切 に 考 慮 されるべきことは 明 らかであり 考 慮 要 素 の 選 択 及 び 判 断 の 過 程 は 合 理 性 を 欠 いているものである 以 上 のとおり 自 然 環 境 等 及 び 生 活 環 境 等 ( 審 査 基 準 においては 法 第 4 条 第 1 項 第 1 号 の 埋 立 てにより 地 域 社 会 にとって 生 活 環 境 等 の 保 全 の 観 点 か らみて 現 に 重 大 な 意 味 をもっている 干 潟, 浅 海, 海 浜 等 が 失 われることにな らないか 及 び 埋 立 地 の 用 途 から 考 えられる 大 気, 水, 生 物 等 の 環 境 への 影 響 の 程 度 が 当 該 埋 立 てに 係 る 周 辺 区 域 の 環 境 基 準 に 照 らして 許 容 できる 範 囲 にとどまっているか )について 考 慮 要 素 の 選 択 や 判 断 の 過 程 は 合 理 性 を 欠 いていたものである (3) 沖 縄 県 における 過 重 な 基 地 負 担 や 基 地 負 担 についての 格 差 の 固 定 化 沖 縄 県 における 過 重 な 基 地 負 担 や 基 地 負 担 の 格 差 すなわち 戦 後 70 年 余 にわたって 沖 縄 県 に 広 大 な 米 軍 基 地 が 維 持 された 結 果 全 国 の 在 日 米 軍 専 用 施 設 の 73.8 パーセントが 沖 縄 県 に 集 中 して 他 の 地 域 との 著 しい 基 地 負 担 21

の 格 差 が 生 じていること 米 軍 基 地 には 排 他 的 管 理 権 等 のため 自 治 権 が 及 ば ないことにより 広 大 な 米 軍 基 地 の 存 在 が 沖 縄 県 の 地 域 振 興 の 著 しい 阻 害 要 因 となっていること 米 軍 基 地 に 起 因 する 様 々な 負 担 被 害 が 生 じていること 沖 縄 県 民 が 過 重 な 基 地 負 担 格 差 の 是 正 を 求 めていること 等 は 何 人 もが 知 っている 公 知 の 事 実 である そして 新 たに 海 兵 隊 航 空 基 地 を 建 設 すること は この 沖 縄 県 における 過 重 な 基 地 負 担 や 基 地 負 担 の 格 差 を 固 定 化 するもの であり その 不 利 益 は 顕 著 なものである 次 に 述 べるとおり 沖 縄 県 における 過 重 な 基 地 負 担 や 基 地 負 担 についての 格 差 の 固 定 化 という 不 利 益 は 国 土 利 用 上 適 正 且 合 理 的 ナルコト の 総 合 判 断 の 重 要 な 判 断 要 素 であると 考 えられるにもかかわらず 適 切 に 考 慮 され ていないのであるから 考 慮 要 素 の 選 択 及 び 判 断 の 過 程 は 合 理 性 を 欠 いてい るものである (4) 国 土 利 用 上 適 正 且 合 理 的 ナルコト 国 土 利 用 上 適 正 且 合 理 的 ナルコト という 要 件 はいわゆる 規 範 的 要 件 で あり 前 述 のとおり その 評 価 を 根 拠 づける 事 実 ( 埋 立 てにより 得 られる 利 益 )とその 評 価 を 障 害 する 事 実 ( 埋 立 てにより 失 われる 利 益 ( 生 ずる 不 利 益 )) を 総 合 的 に 判 断 して 行 うべきものである 先 に 検 討 したとおり 埋 立 てによって 得 られる 利 益 すなわち 埋 立 て の 必 要 性 については 埋 立 必 要 理 由 書 記 載 の 理 由 に 実 証 的 根 拠 が 認 めら れないのに 対 し 他 方 で 埋 立 てによって 失 われる 利 益 ( 生 ずる 不 利 益 )は 自 然 環 境 及 び 生 活 環 境 等 に 重 大 な 悪 影 響 を 与 え 沖 縄 県 における 過 重 な 基 地 負 担 や 基 地 負 担 についての 格 差 を 固 定 化 するものであるから その 不 利 益 の 程 度 は 重 いものであり 両 者 を 衡 量 すると 不 利 益 が 利 益 を 上 回 るものであ る 審 査 の 過 程 において このような 衡 量 がなされたものとは 認 められず 1 号 要 件 の 判 断 において 考 慮 要 素 の 選 択 及 び 判 断 の 過 程 は 合 理 性 を 欠 いてい たものである 6 小 括 以 上 述 べたとおり 本 件 埋 立 承 認 出 願 は 国 土 利 用 上 適 正 且 合 理 的 ナルコト という1 号 要 件 を 充 足 しないにもかかわらず 承 認 がなされたものであり その 判 断 に 係 る 考 慮 要 素 の 選 択 や 判 断 の 過 程 は 合 理 性 を 欠 いていたものであるか ら 1 号 要 件 を 充 足 するとした 承 認 の 判 断 には 瑕 疵 がある 22

第 3 2 号 要 件 について 1 2 号 要 件 の 意 義 公 有 水 面 埋 立 法 の 第 4 条 1 項 第 2 号 は 其 ノ 埋 立 ガ 環 境 保 全 及 災 害 防 止 ニ 付 十 分 配 慮 セラレタルモノナルコト と 定 めている 埋 立 を 取 り 巻 く 社 会 経 済 環 境 は 時 代 とともにその 様 相 を 異 にする 環 境 保 全 措 置 が 具 体 的 に 十 分 と 認 められるか どうかは 判 断 時 点 における 環 境 保 全 をめぐる 社 会 情 勢 を 考 慮 して 判 断 されるべきものである そして 近 年 は 世 界 的 に 環 境 保 全 に 対 する 取 組 みが 高 まりを 増 している 環 境 法 制 についていえば 平 成 4 年 6 月 にリオデジャネイロで 環 境 と 開 発 に 関 する 国 連 会 議 (リオ 地 球 サミット)が 開 催 された 後 の 平 成 5 年 環 境 基 本 法 が 制 定 された 同 法 は 環 境 保 全 について 環 境 を 健 全 で 恵 み 豊 かなものと して 維 持 することが 人 間 の 健 康 で 文 化 的 な 生 活 に 欠 くことのできないものであ ること 生 態 系 が 微 妙 な 均 衡 を 保 つことによって 成 り 立 っており 人 類 の 存 続 の 基 盤 である 限 りある 環 境 が 人 間 の 活 動 による 環 境 への 負 荷 によって 損 なわ れるおそれが 生 じていること を 踏 まえて 現 在 及 び 将 来 の 世 代 の 人 間 が 健 全 で 恵 み 豊 かな 環 境 の 恵 沢 を 享 受 するとともに 人 類 の 存 続 の 基 盤 である 環 境 が 将 来 にわたって 維 持 されるように 適 切 に 行 われなければならない とする( 同 法 3 条 ) この 理 念 のもと 同 法 は 第 21 条 において 環 境 の 保 全 上 の 支 障 を 防 止 するための 規 制 を 講 じなければならないとする さらに 平 成 9 年 には 環 境 影 響 評 価 法 が 制 定 され 平 成 20 年 には 生 物 多 様 性 の 価 値 と 重 要 性 を 指 摘 する 生 物 多 様 性 基 本 法 が 制 定 されるに 至 った このように 環 境 及 び 環 境 保 全 についての 価 値 重 要 性 は 時 代 とともに 大 きく 変 化 してきた 上 記 環 境 法 制 の 発 展 からもわかる 通 り 高 度 経 済 成 長 期 を 経 て 深 刻 な 公 害 問 題 を 経 験 したこの 数 十 年 の 間 に 社 会 の 環 境 に 対 する 意 識 や 環 境 保 全 に 求 める 水 準 は 相 当 に 高 くなってきているのである したがって 法 における 十 分 配 慮 との 要 件 を 充 足 するか 否 かは 環 境 保 全 についての 現 在 の 社 会 水 準 を 踏 まえた 慎 重 な 判 断 がなされなければならな い 2 本 件 埋 立 対 象 地 の 有 する 価 値 と 本 件 埋 立 による 損 失 (1) 本 件 埋 立 対 象 地 の 有 する 環 境 的 価 値 ア 自 然 環 境 (ア) 辺 野 古 崎 大 浦 湾 の 自 然 生 態 系 a 地 理 的 特 徴 辺 野 古 崎 大 浦 湾 は 沖 縄 県 のうち 沖 縄 島 名 護 市 東 海 岸 にあり 太 平 洋 に 面 する 地 区 に 位 置 する 同 地 域 は サンゴ 礁 が 広 がる 辺 野 古 崎 周 辺 と 外 洋 的 環 境 から 内 湾 的 環 境 の 特 徴 を 持 つ 大 浦 湾 が 一 体 となって 存 在 するという 極 めてまれな 地 理 的 特 徴 を 有 する そして 辺 野 古 崎 周 辺 のサンゴ 礁 には 準 絶 滅 危 惧 種 に 指 定 されているリュウキュウス ガモ ベニアマモなど7 種 の 海 草 の 藻 場 が 安 定 的 に 広 がっている 辺 野 古 崎 に 隣 接 する 大 浦 湾 は 全 体 的 に 水 深 が 深 くなっているが 湾 奥 は 海 底 が 砂 れきから 泥 へと 移 り 変 わり 水 深 が 深 くなるスロープラ 23

インに 沿 ってユビエダハマサンゴの 大 群 集 が 分 布 する 平 成 19 年 9 月 には 大 浦 湾 の 東 部 に 高 さ 12 メートル 幅 30 メートル 長 さ 50 メートルの 広 範 囲 にわたる 絶 滅 危 惧 種 のアオサンゴ 群 落 (チリビシの 青 サンゴ 群 集 )が 発 見 された 湾 奥 の 大 浦 川 や 汀 間 川 の 河 口 付 近 には オヒルギやメヒルギといった 大 規 模 なマングローブ 林 や 干 潟 が 広 がっ ている さらに 辺 野 古 崎 と 大 浦 湾 の 接 点 である 大 浦 湾 西 部 の 深 部 に は 琉 球 列 島 では 特 異 な 砂 泥 地 が 広 がっている b 生 態 系 の 特 徴 環 境 省 は 絶 滅 の 恐 れのある 野 生 生 物 ( 動 植 物 )について レッ ドリスト を 作 成 し 公 表 している レッドリストでは 絶 滅 危 惧 のカ テゴリーとして 保 全 の 必 要 性 の 高 い 順 に 絶 滅 危 惧 Ⅰ 類 (CR+EN) 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類 (VU) 準 絶 滅 危 惧 (NT)の3 区 分 に 分 類 している 辺 野 古 崎 大 浦 湾 は レッドリストの 中 でも 最 も 要 保 全 性 の 高 い 絶 滅 危 惧 IA 類 (CR)に 指 定 されているジュゴンの 生 息 域 に 位 置 し 海 草 のみを 餌 とするジュゴンの 生 息 には 欠 かせない 餌 場 となってい る 同 地 域 のサンゴ 礁 には カクレクマノミなど 沖 縄 に 生 息 する6 種 のクマノミ 全 てが 観 察 され トカゲハゼのような 希 少 種 など 魚 類 が 豊 富 に 生 息 し 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類 (VU)のエリグロアジサシなど 渡 り 鳥 の 生 息 地 ともなっている 公 益 財 団 法 人 世 界 自 然 保 護 基 金 ジャパン(W WFジャパン)が 平 成 21 年 に 行 った 調 査 では 大 浦 湾 においてわず か1 週 間 の 調 査 で 36 種 の 新 種 及 び 国 内 初 記 録 の 25 種 の 十 脚 甲 殻 類 (エビ カニ 類 )などの 生 息 が 確 認 されるなど 生 物 学 的 にも 貴 重 な 地 域 である 河 口 部 のマングローブ 干 潟 には トカゲハゼなどの 魚 類 のほか ミナミコメツキガニといった 甲 殻 類 シマカノコ マング ローブアマガイなどの 底 生 生 物 などレッドリスト 掲 載 の 生 物 が 多 数 生 息 している さらに 大 浦 湾 西 深 部 の 砂 泥 地 は 詳 細 な 生 息 地 が 知 ら れていなかったオキナワハナムシロや 新 種 の 甲 殻 類 など 特 異 的 な 生 物 群 と 希 少 種 が 分 布 するなど サンゴ 礁 の 発 達 する 琉 球 列 島 の 中 にあっ て 極 めて 特 異 な 生 物 相 を 有 する c 辺 野 古 崎 大 浦 湾 が 貴 重 な 自 然 環 境 として 評 価 されていること 豊 かな 自 然 環 境 を 有 する 辺 野 古 崎 大 浦 湾 は 沖 縄 県 の 自 然 環 境 の 保 全 に 関 する 指 針 ( 平 成 10 年 ) により 沿 岸 地 域 の 大 部 分 が 評 価 ランクⅠとして 自 然 環 境 の 厳 格 な 保 護 を 図 る 地 域 とされてきた また 同 地 域 は レッドリスト 掲 載 種 を 多 数 育 むなど 生 物 多 様 性 の 見 地 から 保 全 上 の 配 慮 をすべき 地 域 として 平 成 13 年 に 環 境 省 により 日 本 の 重 要 湿 地 500 に 選 定 されている さらに 海 洋 生 物 多 様 性 保 全 戦 略 ( 環 境 省 ; 平 成 23 年 )の 海 域 の 特 性 を 踏 まえた 対 策 の 推 進 の 記 述 においては 藻 場 干 潟 サンゴ 礁 などの 浅 海 域 の 湿 地 は 規 模 にかかわらず 貝 類 や 甲 殻 類 の 幼 生 仔 稚 魚 などが 移 動 分 散 する 際 に 重 要 な 役 割 を 果 たしている 場 合 があり 科 学 的 知 見 を 踏 まえ この ような 湿 地 間 の 相 互 のつながりの 仕 組 みや 関 係 性 を 認 識 し 残 された 藻 場 干 潟 やサンゴ 礁 の 保 全 相 互 のつながりを 補 強 する 生 物 の 住 み 24

場 所 の 再 生 修 復 創 造 を 図 っていくことが 必 要 である とされ そ の 重 要 性 が 強 調 されている 生 物 多 様 性 国 家 戦 略 2012-2020 に おいては ジュゴンについて 引 き 続 き 生 息 環 境 生 態 等 の 調 査 や 漁 業 者 との 共 生 に 向 けた 取 組 を 進 めるとともに 種 の 保 存 法 の 国 内 希 少 野 生 動 植 物 種 の 指 定 も 視 野 に 入 れ 情 報 の 収 集 等 に 努 めます と され その 保 全 が 急 務 となっている ジュゴンの 保 護 は 国 際 的 な 関 心 事 となっており 国 際 自 然 保 護 連 合 (IUCN)においては 平 成 12 年 平 成 16 年 に 次 いで 平 成 20 年 のバルセロナ 総 会 でも 2010 年 国 連 国 際 生 物 多 様 性 年 におけるジュゴ ン 保 護 の 推 進 が 決 議 されている d ラムサール 条 約 登 録 湿 地 要 件 を 充 たす 国 際 的 に 重 要 な 湿 地 であるこ と 埋 立 予 定 地 である 大 浦 湾 に 注 ぎ 込 む 大 浦 川 及 び 河 口 域 は 平 成 22 年 9 月 30 日 時 点 で 環 境 省 によりラムサール 条 約 湿 地 潜 在 候 補 地 として 選 定 されている ラムサール 条 約 ( 特 に 水 鳥 の 生 息 地 として 国 際 的 に 重 要 な 湿 地 に 関 する 条 約 )は 干 潟 をはじめとする 湿 地 保 全 の 重 要 性 が 国 際 的 に 認 識 されたことから 昭 和 46 年 に 採 択 され 以 後 湿 地 の 保 全 は 国 際 的 な 課 題 となっている 日 本 は 昭 和 55 年 にラムサ ール 条 約 を 批 准 し 現 在 の 日 本 における 同 条 約 登 録 湿 地 の 数 は 46 か 所 となっている ラムサール 条 約 は その 名 が 示 すとおり かつては 水 鳥 の 保 護 を 中 心 とした 条 約 であったが 現 在 では 広 く 湿 地 の 保 護 を 目 的 とするものとなっている 登 録 湿 地 の 基 準 については 現 在 は9 の 基 準 が 示 されており そのいずれかに 該 当 すれば 登 録 湿 地 の 要 件 を 充 たすものと 評 価 される 我 が 国 においては 国 際 的 に 重 要 な 湿 地 であること( 国 際 的 な 基 準 のうちいずれかに 該 当 すること) 国 の 法 律 ( 自 然 公 園 法 鳥 獣 保 護 法 など)により 将 来 にわたって 自 然 環 境 の 保 全 が 図 られること 地 元 住 民 などから 登 録 への 賛 意 が 得 られること が 登 録 基 準 とされており 国 際 的 に 重 要 な 湿 地 であ ること の 要 件 については 環 境 省 が 平 成 13 年 12 月 に 選 定 した 日 本 の 重 要 湿 地 500 から 登 録 湿 地 がほぼ 選 定 されるという 方 法 が 採 ら れている 辺 野 古 崎 大 浦 湾 については 上 記 のとおり 重 要 湿 地 500 選 に 含 まれている また ラムサール 条 約 登 録 湿 地 の 国 際 的 な 基 準 に 照 らしても 環 境 省 レッドリストにおいて 絶 滅 危 惧 種 IA 類 (CR) のジュゴンの 生 息 地 となっていること( 基 準 1) アマモ 類 の 大 きな 群 落 による 藻 場 が 形 成 されていること( 基 準 8) 大 浦 湾 についても 日 本 の 重 要 湿 地 500 への 選 定 理 由 とされている 危 急 種 である 底 生 生 物 が 多 く 生 息 することやマングローブ 林 の 前 後 に 存 する 水 溜 まり に 止 水 性 昆 虫 の 種 の 多 様 性 が 高 いことから 優 に 国 際 的 に 重 要 な 湿 地 の 要 件 は 充 たしていることとなる このように 辺 野 古 崎 周 辺 の 海 域 は ラムサール 条 約 締 結 のための 基 準 を 優 に 充 たしているもので あり 国 際 的 に 重 要 な 湿 地 であることは 明 らかである e 陸 域 生 物 の 要 保 護 性 も 高 いこと 25

陸 域 については 辺 野 古 ダム 周 辺 から 土 砂 が 採 取 され 森 林 が 改 変 さ れる 計 画 となっているが 当 該 区 域 には 国 指 定 天 然 記 念 物 であるカラ スバト 等 の 重 要 な 種 が 多 数 確 認 され 植 生 はリュウキュウマツ 群 落 等 から 沖 縄 島 北 部 の 極 相 林 であるイタジイ 群 落 への 遷 移 の 過 程 にあり 環 境 保 全 指 針 においてその 大 部 分 が 自 然 環 境 の 保 護 保 全 を 図 る 区 域 であるランクⅡと 評 価 される 区 域 である (イ) 辺 野 古 崎 大 浦 湾 に 生 息 する 希 少 生 物 等 の 価 値 a ジュゴン ジュゴンは 西 太 平 洋 からインド 洋 の 熱 帯 及 び 亜 熱 帯 の 浅 海 域 に 生 息 している 一 般 に 生 息 には 水 温 と 気 温 が 20 度 以 上 の 環 境 が 必 要 とされており 西 太 平 洋 における 分 布 域 では 沖 縄 県 の 周 辺 海 域 が 北 限 にあたる ジュゴンの 分 布 は 広 い 範 囲 に 及 ぶが 生 息 域 が 不 連 続 であるため それぞれの 集 団 ( 個 体 群 )が 地 域 固 有 のものである と 考 えられている 日 本 におけるジュゴンの 分 布 域 は 鹿 児 島 県 の 奄 美 大 島 以 南 と 考 えられていたが 近 年 ジュゴンの 目 撃 例 は 沖 縄 本 島 の 周 辺 海 域 に 限 られている ジュゴンは 国 際 自 然 保 護 連 合 (IUCN)のレッドデータブック において 野 生 絶 滅 種 に 次 ぐ 絶 滅 危 機 種 に 分 類 され そのうちの 危 急 ( 野 生 状 態 で 中 期 的 に 絶 滅 する 危 険 を 孕 んでいる 種 )に 分 類 され ており 世 界 の 多 くの 場 所 で 捕 獲 禁 止 とされている 日 本 哺 乳 類 学 会 は 沖 縄 ジュゴンについて 個 体 数 が 50 頭 未 満 であるとの 判 断 のもとに IUCN 基 準 上 の 近 絶 滅 種 ( 近 い 将 来 に 高 い 確 率 で 野 生 では 絶 滅 に 至 る 危 機 にある 種 )に 相 当 する 絶 滅 危 惧 種 に 指 定 し ている また 水 産 庁 の 日 本 の 希 少 な 野 生 生 物 に 関 するデータブ ック でも 同 じく 絶 滅 危 惧 種 に 指 定 されている このように ジュゴンは 最 も 絶 滅 が 危 惧 される 生 物 の 一 つとし て その 保 全 の 必 要 性 は 極 めて 大 きい b 海 草 藻 場 辺 野 古 から 宜 野 座 松 田 までの 礁 池 内 には 絶 滅 のおそれのある 野 生 生 物 の 種 のリスト- 植 物 Ⅰ( 維 管 束 植 物 ) (レッドリスト) において 準 絶 滅 危 惧 種 に 指 定 されているボウバアマモ リュウキ ュウアマモ リュウキュウスガモ 等 で 構 成 される 海 草 藻 場 が 広 がり 環 境 省 が 日 本 の 重 要 湿 地 500 として 選 定 している 水 底 で 海 草 類 が 群 落 状 に 生 育 する 場 所 をいう 海 草 藻 場 は 国 の 天 然 記 念 物 に 指 定 されているジュゴンの 餌 場 であることはもとよ り 水 質 を 浄 化 する 機 能 や 底 質 を 安 定 化 する 機 能 をもっており 生 物 の 繁 殖 場 生 育 場 としての 重 要 性 があることも 知 られている こ うしたさまざまな 機 能 により 海 草 藻 場 は 微 小 動 物 から 大 型 の 貝 カニ エビ ナマコ 魚 類 などに 至 る 様 々な 生 物 の 共 存 を 可 能 にし て 生 物 の 多 様 性 を 育 んでいる 海 草 藻 場 は まさに 辺 野 古 大 浦 湾 の 生 物 多 様 性 を 根 底 にて 支 26

えているものであるから その 存 在 価 値 は 高 く 保 全 の 必 要 性 も 極 めて 大 きい c ウミガメ 現 在 地 球 上 には7 種 ないし8 種 のウミガメ 類 が 生 息 しているが そのうちアカウミガメ アオウミガメ タイマイ ヒメウミガメ オ サガメの5 種 類 を 沖 縄 近 海 で 見 ることができる 嘉 陽 地 崎 (バン 崎 からギミ 崎 にかけて)や 安 部 地 崎 (ギミ 崎 から 安 部 崎 及 び 大 浦 湾 側 ) 等 は アカウミガメやアオウミガメの 上 陸 と 産 卵 がみられ とくに アカウミガメは 高 い 孵 化 率 が 観 察 されており 同 所 は ウミガメ 類 の 上 陸 産 卵 に 良 好 な 場 所 として 考 えられている アカウミガメやアオウミガメは ワシントン 条 約 において 最 も 厳 しく 規 制 される 附 属 書 Ⅰに 属 し 国 際 希 少 野 生 動 植 物 とされている d サンゴ 類 サンゴは ポリプと 呼 ばれる 本 体 と 石 灰 質 の 骨 格 部 分 でつくられた 動 物 であり 無 機 のポリプが 集 合 体 を 形 成 している サンゴをはじめ として 硬 い 骨 や 殻 をもった 生 物 たちが 死 んだあとに 多 くの 骨 や 殻 を 残 すが これらが 長 年 にわたって 積 りつもってサンゴ 礁 が 築 かれる サンゴは 二 酸 化 炭 素 を 吸 収 して 酸 素 を 供 給 するほか 炭 水 化 物 や タンパク 質 などの 有 機 物 を 作 り 出 しており それが 小 さな 生 物 たちの 栄 養 分 になっている また サンゴは 硬 い 骨 格 を 持 ち 枝 状 やテー ブル 状 の 複 雑 な 形 を 作 るため 生 物 たちの 最 適 な 住 処 となる したが って サンゴ 礁 では 豊 かな 生 態 系 が 広 がっている 辺 野 古 沿 岸 域 の 礁 斜 面 及 び 大 浦 湾 には 造 礁 サンゴ( 体 の 中 に 褐 虫 藻 を 住 まわせているサンゴ)が 分 布 するサンゴ 礁 地 形 が 発 達 している 特 に 大 浦 湾 には 浜 から 礁 斜 面 までいくつも 切 れ 込 みと 高 まりが 繰 り 返 す 地 形 になっており その 高 まりの 上 に 多 くの 種 類 からなるサンゴ 群 集 等 が 発 達 している 具 体 的 には 1チリビシのアオサンゴ 群 集 2ハマサンゴの 丘 3 ユビエダハマサンゴ 群 集 が 存 在 し 特 徴 的 なサンゴ 群 集 を 形 成 するほ か コモンサンゴ 類 キクメイシ 類 ミドリイシ 類 アガミサンゴな ど 多 種 のサンゴが 生 息 する なかでも チリビシのアオサンゴ 群 集 は 水 深 1~13 メートルの 斜 面 に 位 置 し 幅 約 30 メートル 長 さ 約 50 メートル 高 さ 約 12 メートルになる 国 内 最 大 級 の 群 集 である 前 述 のとおり サンゴ 礁 は 多 くの 生 物 の 種 の 保 存 に 大 きく 貢 献 す る 等 極 めて 重 要 な 役 割 を 果 たしている イ 生 活 環 境 等 事 業 実 施 区 域 周 辺 地 域 は その 周 辺 を 海 成 段 丘 や 島 嶼 が 織 りなす 美 しい 眺 望 と 畑 地 や 山 林 に 囲 まれた 静 謐 さを 兼 ね 備 え 良 好 な 大 気 環 境 水 環 境 を 有 する 地 域 である 文 化 的 にも 松 田 の 浜 東 松 根 の 浜 や ハーリーの 場 等 の 伝 統 的 行 事 や 祭 礼 等 の 場 が 存 在 しているほか 事 業 区 域 の 東 側 に 位 置 する 平 島 及 びその 周 辺 域 は 県 民 や 観 光 客 らのレクリエーションの 場 として 27

また 沖 縄 県 の 伝 統 行 事 である 浜 下 りの 場 として 利 用 されている 当 該 事 業 実 施 区 域 北 側 の 大 浦 湾 を 隔 てた 陸 域 に まさに 事 業 区 域 を 含 む 大 浦 湾 全 体 を 見 渡 す 様 にして 大 規 模 リゾート 施 設 が 存 在 することからも 分 かるとおり 沖 縄 島 東 海 岸 側 における 観 光 及 び 保 養 の 場 として 活 用 する ことのできる 資 源 としての 価 値 を 有 するものである 国 の 実 施 したアンケートにおいても 事 業 区 域 近 隣 を 利 用 する 人 々の 価 値 認 識 として 眺 めがよい 静 かである といった 快 適 さが 挙 げられて おり また 地 元 住 民 の 多 くが 豊 かな 生 活 環 境 を 有 する 地 域 に 親 しみが あり 愛 着 がある と 回 答 している ウ 国 又 は 地 方 公 共 団 の 計 画 等 (ア) 自 然 環 境 の 保 全 に 関 する 指 針 第 3 次 沖 縄 振 興 開 発 計 画 ( 沖 縄 振 興 特 別 措 置 法 3 条 の2)に 基 づき 平 成 6 年 3 月 に 沖 縄 環 境 管 理 計 画 が 策 定 され それを 受 けて 平 成 10 年 3 月 沖 縄 県 において 自 然 環 境 の 保 全 に 関 する 指 針 が 策 定 されて いる 同 指 針 は 陸 域 における 自 然 環 境 の 保 全 に 関 する 指 針 及 び 沿 岸 域 における 自 然 環 境 の 保 全 に 関 する 指 針 からなる 陸 域 における 自 然 環 境 の 保 全 に 関 する 指 針 では すぐれた 自 然 身 近 な 自 然 土 地 利 用 自 然 環 境 保 全 について 検 討 し 要 保 護 性 の 高 い 順 から 評 価 ランクⅠないしⅤに 区 分 している 沿 岸 域 における 自 然 環 境 の 保 全 に 関 する 指 針 では すぐれた 自 然 底 質 水 質 港 湾 漁 場 海 域 保 全 レクリエーション 等 について 検 討 し 要 保 護 性 の 高 い 順 から 評 価 ランクⅠないしⅣに 区 分 している 同 指 針 によれば 大 浦 湾 を 有 する 当 該 事 業 実 施 区 域 及 びその 周 辺 域 は 自 然 環 境 の 厳 正 な 保 護 を 図 る 区 域 として ランクⅠ( 自 然 環 境 の 厳 正 な 保 護 保 全 を 図 る 区 域 ) と 位 置 付 けられており 沖 縄 県 内 におい て 生 物 多 様 性 保 全 上 最 も 重 要 な 地 域 の 一 つとされている また 埋 立 土 砂 発 生 区 域 の 大 部 分 はリュウキュウマツ 群 落 等 から 沖 縄 島 北 部 の 極 相 林 であるイタジイ 群 落 へ 遷 移 が 進 む 自 然 環 境 の 保 護 保 全 を 図 る 区 域 で ランクⅡ( 自 然 環 境 の 保 護 保 全 を 図 る 区 域 ) に 位 置 づけられており 近 い 将 来 ランクⅠ になる 可 能 性 があるとされ ている (イ) 生 物 多 様 性 おきなわ 戦 略 生 物 多 様 性 基 本 法 13 条 は 都 道 府 県 及 び 市 町 村 は 生 物 多 様 性 国 家 戦 略 を 基 本 として 単 独 で 又 は 共 同 して 当 該 都 道 府 県 又 は 市 町 村 の 区 域 内 における 生 物 の 多 様 性 の 保 全 及 び 持 続 可 能 な 利 用 に 関 する 基 本 的 な 計 画 ( 以 下 生 物 多 様 性 地 域 戦 略 という )を 定 めるよう 努 めなけ ればならない と 定 め 沖 縄 県 はこれを 受 けて 平 成 25 年 3 月 生 物 多 様 性 の 保 全 と 持 続 可 能 な 利 用 に 関 する 県 の 基 本 的 な 計 画 として 生 物 多 様 性 国 家 戦 略 を 基 に 生 物 多 様 性 おきなわ 戦 略 を 策 定 している 同 戦 略 の 中 で 目 指 すべき 北 部 圏 域 の 将 来 像 としてジュゴンとそ の 生 息 環 境 の 保 全 ウミガメが 産 卵 する 砂 浜 の 保 全 また サンゴ 礁 の 28