欧 州 における 日 系 企 業 の 組 織 ロケーション 戦 略 の 変 遷 と 見 通 し ブリュッセル センター 1980 年 代 から 本 格 化 した 日 系 企 業 の 欧 州 への 投 資 は EU 市 場 統 合 の 進 展 に 加 え 2004 年 5 月 のEU 拡 大 を 迎 え 岐 路 に 立 たされている 本 レポートは ジェトロがKPMGユー ロ ジャパン センター( 在 ブリュッセル)の 野 村 正 智 ディレクターに 日 系 企 業 のこれ までの 欧 州 への 投 資 と 進 出 の 動 向 を 踏 まえて EU 拡 大 後 の 日 系 企 業 の 組 織 再 編 およびロ ケーション 戦 略 に 資 するよう 解 説 をお 願 いしたものである また 本 レポートは 筆 者 個 人 の 見 解 を 反 映 したものであり KPMGの 見 解 を 示 すものではない 点 に 留 意 されたい ユーロトレンド 2004.5 1
目 次 1 これまでの 発 展... 3 1.1 1980 年 代... 3 1.2 1992 年 市 場 統 合... 6 1.3 1990 年 代 前 半... 7 1.4 1990 年 代 後 半... 11 1.4.1 欧 州 本 部 のイギリス 集 中... 11 1.4.2 物 流 統 合... 12 1.4.3 生 産 拠 点 の 中 欧 への 移 動... 13 2 2000 年 以 降 と 今 後 の 発 展... 16 2.1 税 制 メリットの 相 対 的 減 少... 16 2.2 中 東 欧 諸 国 へ 製 造 拠 点 進 出 継 続... 18 2.3 事 業 組 織 の 効 率 化... 19 2.3.1 市 場 統 合 と 競 争... 19 2.3.2 販 売 の 強 化 とバックオフィスの 合 理 化... 19 2.3.3 支 店 化... 20 2.3.4 コミッショネア 方 式... 22 2.3.5 製 造 拠 点 を 含 んだ 組 織 合 理 化... 24 2.4 組 織 合 理 化 における 問 題 点... 25 2.4.1 変 化 に 対 する 抵 抗... 25 2.4.2 税 制 による 制 約... 26 3 今 後 の 見 通 し... 29 ユーロトレンド 2004.5 2
1.これまでの 発 展 1.1 1980 年 代 日 本 から 欧 州 への 投 資 は1980 年 代 半 ばから 本 格 化 し 始 めた ことに1984 年 に 日 産 自 動 車 が イギリスへ 工 場 進 出 を 決 定 したことにより 大 型 投 資 の 時 代 を 迎 えた ( 表 1 参 照 ) ( 表 1) 日 系 企 業 による 欧 州 への 直 接 投 資 額 累 計 (1951 年 度 以 降 各 年 度 末 までの 直 接 投 資 額 累 計 単 位 100 万 ドル) 1985 年 度 1990 年 度 1995 年 度 2001 年 度 英 国 3,141 22,598 37,274 89,430 オランダ 1,687 12,816 20,956 45,091 フランス 819 4,156 7,915 12,436 ドイツ 1,343 4,689 8,608 11,850 ベルギー 743 1,720 3,573 4,803 スペイン 514 1,867 3,020 4,285 アイルランド 260 614 1,980 3,937 イタリア 180 900 1,917 2,402 その 他 2,315 9,905 13,094 17,471 欧 州 計 11,002 59,265 98,337 191,705 出 典 :ジェトロ 白 書 投 資 編 1987 1992 1997 年 ジェトロ 貿 易 投 資 白 書 2002 年 財 務 省 ( 旧 大 蔵 省 ) 届 け 出 統 計 よりジェトロ 作 成 EEC( 欧 州 経 済 共 同 体 )は 1958 年 にイタリア オランダ ドイツ フランス ベルギー ルクセンブルクの6カ 国 により 創 設 された 1973 年 にアイルランド イギリス デンマーク の3カ 国 が 加 盟 1981 年 にはギリシャが 加 盟 して 10カ 国 となっていた しかしながら 1980 年 代 の 欧 州 市 場 は 1970 年 代 の 石 油 ショックの 後 遺 症 で 経 済 は 低 成 長 失 業 率 は 高 く 各 国 ごとの 保 護 主 義 が 市 場 を 分 断 するという 状 況 であった ユーロトレンド 2004.5 3
なお EECは その 後 ECSC( 欧 州 石 炭 鉄 鋼 共 同 体 ) EURATOM( 欧 州 原 子 力 共 同 体 ) と 合 同 し EC( 欧 州 共 同 体 )となった 現 在 では 政 策 の 分 野 により ECとEU( 欧 州 連 合 )が 使 い 分 けられているが 本 稿 では 以 下 便 宜 上 EUに 統 一 する EUには 1986 年 に は スペインとポルトガルが 加 盟 した 1995 年 には オーストリア スウェーデン フィ ンランドが 加 盟 し 加 盟 国 は15カ 国 となった さらに2004 年 5 月 には 中 東 欧 諸 国 マル タ キプロスの10カ 国 が 加 盟 し 25カ 国 となった 日 本 から 欧 州 への 輸 出 は 1980 年 前 半 に エレクトロニクス 製 品 自 動 車 など 欧 州 の 有 力 メーカーと 直 接 競 合 する 製 品 分 野 における 輸 出 が 増 加 した このため 1980 年 代 の 日 欧 関 係 は 日 本 からの 輸 出 増 加 を 欧 州 側 が 防 戦 するという 貿 易 摩 擦 が 特 徴 となった 初 期 の 貿 易 摩 擦 で 有 名 なのは 1982 年 にフランス 政 府 が 日 本 からのVTRの 輸 入 通 関 を 内 陸 都 市 ポ ワチエ1カ 所 に 絞 ることで 実 質 的 に 制 限 した 事 件 である 1980 年 代 中 盤 以 降 EUの 行 政 機 関 である 欧 州 委 員 会 が 日 本 製 品 に 対 する 反 ダンピング 関 税 の 賦 課 を 急 増 させたことによっ て 貿 易 摩 擦 は 頂 点 に 達 した 反 ダンピング 関 税 には 輸 入 品 に 対 し 付 加 的 な 関 税 をかけ 価 格 競 争 力 を 落 とすことで 当 該 製 品 の 国 内 生 産 者 を 保 護 する 効 果 がある それに 対 応 する 日 系 メーカーの 反 ダンピン グ 関 税 対 策 は 生 産 拠 点 をEU 内 に 移 すことであった 当 初 は 迅 速 に 設 立 できる 組 み 立 て 工 場 を 設 置 し 欧 州 委 員 会 がこれを 迂 回 行 為 として 組 み 立 て 工 場 の 輸 入 基 幹 部 品 にも 反 ダン ピング 関 税 を 課 すと 基 幹 部 品 の 現 地 生 産 を 行 い 現 地 調 達 率 を 向 上 させて 反 ダンピング 関 税 を 避 けた こうしてEUにおける 日 系 企 業 の 生 産 拠 点 は 1985 年 から1990 年 の 間 に 倍 増 した( 表 2 参 照 ) ユーロトレンド 2004.5 4
( 表 2) 日 系 製 造 業 の 拠 点 数 の 推 移 1985 年 1990 年 1995 年 2000 年 2002 年 英 国 50 145 203 258 266 フランス 34 78 106 137 140 ドイツ 43 86 115 128 129 スペイン 20 40 53 64 67 イタリア 22 42 54 65 66 オランダ 17 27 42 56 57 ベルギー 17 34 42 46 46 チェコ 0 0 6 17 42 ハンガリー 0 2 10 30 35 アイルランド 7 15 22 24 25 その 他 19 31 52 85 100 欧 州 合 計 229 500 705 910 973 ( 出 典 : 在 欧 州 トルコ 日 系 製 造 業 の 経 営 実 態 -2002 年 度 調 査 ジェトロ 海 外 調 査 部 2003 年 3 月 ) 1980 年 代 の 欧 州 における 販 売 戦 略 は 市 場 が 国 別 に 分 断 されていたため 各 国 市 場 ごとの 攻 略 であった 規 格 基 準 認 証 販 売 許 可 等 の 規 制 は 各 国 ごとに 定 められていた その ため 販 売 会 社 としての 全 機 能 を 備 えた 現 地 法 人 が 主 要 市 場 で 設 立 された 各 国 ごとに 消 費 者 の 嗜 好 が 違 うだけではなく 消 費 者 の 心 理 として 他 国 企 業 を 信 頼 しないという 問 題 も 顕 著 であった この 消 費 者 心 理 は 20 年 後 の 現 在 も 必 ずしもなくなってはいないが 当 時 は 事 業 拠 点 設 立 において 重 要 な 要 素 であった 例 えば 新 市 場 に 進 出 する 際 に 現 地 法 人 を 設 立 した 方 がよいか 支 店 を 設 立 した 方 がよいかという 質 問 に 対 する 答 えとして 支 店 は 開 設 閉 鎖 が 容 易 であるが それゆえに 他 国 企 業 の 支 店 は 消 費 者 から 信 頼 されな い 可 能 性 があるというアドバイスが 相 当 な 重 みを 持 っていた 時 代 であった ユーロトレンド 2004.5 5
資 本 関 係 としては 日 本 の 親 会 社 が 直 接 子 会 社 を 設 立 するという 形 であった( 図 1 参 照 ) 各 国 市 場 を 個 別 に 攻 略 していたため 欧 州 レベルでまとめる 必 要 がなかったという 理 由 に 加 え 日 本 の 税 制 上 の 理 由 もあった 当 時 の 日 本 の 外 国 税 額 控 除 制 度 では 直 接 の 子 会 社 支 店 で 支 払 った 外 国 税 額 の 控 除 しか 認 めていなかったため 欧 州 に 中 間 持 株 会 社 を 設 立 す ると その 下 の 層 に 属 する 販 売 会 社 ( 日 本 の 親 会 社 から 見 ると 孫 会 社 )の 利 益 に 関 し 日 本 で 二 重 課 税 が 生 じる 可 能 性 があった つまり 販 売 会 社 から 中 間 持 株 会 社 経 由 で 日 本 の 親 会 社 になされた 配 当 は 日 本 の 親 会 社 の 利 益 に 合 算 され 課 税 されるが その 際 に 孫 会 社 である 販 売 会 社 で 支 払 った 法 人 税 を 控 除 することができなかった ( 図 1) 日 本 からの 直 接 投 資 持 株 の 例 日 本 の 親 会 社 イギリス 販 売 会 社 ドイツ 販 売 会 社 イギリス 製 造 工 場 1.2 1992 年 市 場 統 合 高 失 業 率 と 低 成 長 にあえぐ 欧 州 経 済 の 問 題 解 決 策 として 各 国 の 市 場 を 相 互 に 開 放 し 一 大 市 場 を 創 設 することで 経 済 効 率 を 高 め 経 済 成 長 を 促 すというプロジェクトが 1980 年 代 半 ばに 打 ち 上 げられた EUの 市 場 統 合 がそれまで 進 まなかった 理 由 として 法 律 の 採 択 において 原 則 として 全 加 盟 国 の 賛 成 を 必 要 とするという 制 度 に 問 題 があると 見 られて いた 加 盟 国 ごとに 異 なる 政 策 を 統 一 する 過 程 で 1カ 国 でも 反 対 すれば 統 一 が 出 来 ない という 状 況 であった 1985 年 に 欧 州 委 員 会 は 市 場 統 合 を1992 年 までに 完 成 させることを 目 的 とした 白 書 を 発 表 した 達 成 手 段 として 域 内 市 場 に 関 わる 法 律 の 採 択 に 多 数 決 制 度 を 導 入 し 法 律 採 択 の ユーロトレンド 2004.5 6
スピードを 上 げることが 必 要 であると 考 えられた 1986 年 には 設 立 条 約 を 修 正 する 単 一 欧 州 議 定 書 が 採 択 され 域 内 市 場 に 関 する 立 法 に 加 盟 国 の 規 模 を 考 慮 した 多 数 決 制 度 が 導 入 された 単 一 欧 州 議 定 書 は1987 年 に 発 効 し 市 場 統 合 の 原 動 力 となった 1992 年 域 内 市 場 統 合 は 法 律 導 入 促 進 という 実 質 面 だけではなく 欧 州 委 員 会 の 一 大 プロ パガンダという 側 面 も 持 っていた すなわち 市 場 統 合 の 結 果 米 国 市 場 をしのぐ 人 口 3 億 2 千 万 人 の 一 大 市 場 が 創 設 され 一 大 ビジネスチャンスをもたらすという 絵 が 描 かれた 当 時 は 日 本 製 品 に 対 する 反 ダンピング 関 税 最 盛 期 であったため 1992 年 に 域 内 市 場 の 統 合 が 完 成 すると EUは 保 護 主 義 に 転 じ 外 部 企 業 を 閉 め 出 すのではないかという 懸 念 をいだく 日 系 企 業 もあった このため 1992 年 に 至 る 数 年 間 は EUへの 進 出 が 相 次 いだ 1.3 1990 年 代 前 半 日 系 企 業 の 国 際 化 と 為 替 リスク 1985 年 以 降 日 本 からの 投 資 が 拡 大 した 背 景 には 反 ダンピング 関 税 のような 欧 州 側 の 事 情 だけではなく 1985 年 のプラザ 合 意 後 の 円 高 1980 年 代 後 半 の 日 本 の 好 景 気 に 押 された 日 系 企 業 の 急 速 な 国 際 化 という 要 素 があった 日 系 企 業 の 国 際 化 に 伴 い 大 手 製 造 業 を 中 心 に 為 替 変 動 のインパクトを 抑 えるために 市 場 の 近 くでの 生 産 を 考 えるようになった 世 界 的 に 見 ると 日 本 から 北 米 への 投 資 は 欧 州 への 投 資 を 大 きく 上 回 っていた ( 表 3 参 照 ) ( 表 3) 日 系 企 業 による 直 接 投 資 額 累 計 の 地 域 別 シェアの 推 移 (1951 年 度 以 降 の 直 接 投 資 額 累 計 ) 1985 年 度 1990 年 度 1995 年 度 2001 年 度 北 米 32% 44% 44% 40% 欧 州 13% 19% 19% 24% アジア 23% 15% 17% 17% その 他 31% 22% 20% 19% 合 計 100% 100% 100% 100% 出 典 :ジェトロ 白 書 投 資 編 1987 1992 1997 年 ジェトロ 貿 易 投 資 白 書 2002 年 財 務 省 ( 旧 大 蔵 省 ) 届 け 出 統 計 よりジェトロが 作 成 した 資 料 を 基 に 算 出 ユーロトレンド 2004.5 7
欧 州 中 間 持 株 会 社 の 設 立 1992 年 市 場 統 合 の 進 展 を 見 越 して 欧 州 における 事 業 運 営 をひとつのユニットとして 考 え る 企 業 が 現 れてきた 例 えば 欧 州 における 投 資 の 成 果 を 日 本 に 配 当 せずに 欧 州 で 再 投 資 することを 目 的 とする 欧 州 中 間 持 株 会 社 の 設 立 が 増 加 した しかしながら 当 時 の 日 本 企 業 の 業 績 判 断 基 準 は 連 結 決 算 を 行 うグループ 企 業 の 業 績 で はなく 親 会 社 単 体 の 業 績 であった 従 って 多 くの 上 場 企 業 が 海 外 子 会 社 から 親 会 社 への 配 当 を 必 要 としていた 1992 年 に 行 われた 日 本 の 外 国 税 額 控 除 制 度 改 正 により 孫 会 社 まで 日 本 における 外 国 税 額 控 除 の 対 象 となった このため 中 間 持 株 会 社 の 設 立 による 二 重 課 税 の 可 能 性 は 減 少 した この 結 果 多 くの 企 業 が 欧 州 中 間 持 株 会 社 設 立 を 積 極 的 に 検 討 するようになった 中 間 持 株 会 社 の 設 立 地 としては 優 遇 税 制 のあったオランダ ベルギーが 注 目 を 浴 びた オランダの 中 間 持 株 会 社 に 関 する 優 遇 税 制 は 事 業 目 的 のための 一 定 割 合 以 上 の 持 ち 株 を 行 う 場 合 配 当 と 売 却 時 のキャピタルゲインへの 課 税 を 免 除 するというものであった 日 系 企 業 の 設 立 した 中 間 持 株 会 社 が 傘 下 に 置 いた 現 地 法 人 は 販 売 会 社 に 限 定 されること が 多 かった 製 造 子 会 社 は 少 なくとも 設 立 当 初 は 日 本 の 親 会 社 が 直 接 持 ち 株 を 行 う 場 合 がほとんどであった 製 造 会 社 設 立 に 必 要 な 投 資 資 金 は 販 売 会 社 に 比 べ 大 きいこと 販 売 会 社 に 比 べ 設 立 から 黒 字 転 換 するまでに 時 間 がかかる 可 能 性 が 高 いため 欧 州 におけ る 再 投 資 資 金 循 環 システムに 組 み 入 れづらいこと 本 社 あるいは 日 本 の 製 造 拠 点 の 支 援 を 必 要 としたことなどから 組 織 的 に 本 社 の 直 接 コントロール 下 に 置 かれることが 多 かった と 思 われる( 図 2 参 照 ) ユーロトレンド 2004.5 8
( 図 2) 欧 州 中 間 持 株 会 社 の 例 日 本 の 親 会 社 欧 州 中 間 持 株 会 社 イギリス 販 売 会 社 ドイツ 販 売 会 社 イギリス 製 造 工 場 地 域 統 括 会 社 日 系 企 業 が1980 年 代 後 半 から 海 外 展 開 を 大 きく 発 展 させたことにより 日 本 の 本 社 側 で 国 際 展 開 に 必 要 な 対 応 を 従 来 の 形 のまま 維 持 することが 困 難 になってきた すなわち 海 外 における 事 業 展 開 が 大 規 模 化 複 雑 化 した 結 果 本 社 において 意 思 決 定 に 必 要 な 情 報 を 吸 い 上 げ 多 様 な 事 業 環 境 に 対 応 した 的 確 な 経 営 判 断 を 迅 速 に 行 うことが 難 しくなった ま た 海 外 事 業 に 対 応 できる 人 材 をすべての 地 域 に 派 遣 することが 難 しくなってきた この ため 日 本 の 本 社 機 能 の 一 部 を 担 う 地 域 統 括 会 社 を 北 米 と 欧 州 に 設 立 する 企 業 が 増 加 した 地 域 本 部 地 域 統 括 会 社 の 目 的 は 大 きく 分 けて2つある 第 一 は 日 本 の 本 社 が 行 ってい た 経 営 管 理 機 能 の 一 部 を 地 域 本 部 に 委 譲 し 地 域 の 事 業 に 通 じた 経 営 陣 に 経 営 判 断 を 任 せ ることで 判 断 のスピードと 質 を 高 めること 第 二 は その 地 域 で 重 複 して 行 われている 財 務 会 計 人 事 広 告 宣 伝 情 報 技 術 物 流 管 理 などの 機 能 を 統 合 し 規 模 の 利 益 (ス ケールメリット)を 実 現 することである ユーロトレンド 2004.5 9
欧 州 における 地 域 統 括 会 社 ( 欧 州 本 部 )の 設 立 地 としては すでに 大 きな 事 業 活 動 を 展 開 しているイギリスあるいはドイツに 置 く 企 業 が 多 かったが 事 業 規 模 と 関 わりなく オラ ンダやベルギーに 置 く 場 合 もあった すでに 大 きな 事 業 展 開 をしている 場 所 に 欧 州 本 部 を 置 くメリットは 大 規 模 な 販 売 会 社 組 織 の 持 っているインフラをそのまま 利 用 できること と 最 大 の 販 売 会 社 を 背 景 とすることで 指 揮 命 令 系 統 を 円 滑 に 運 営 できるという 期 待 で ある オランダやベルギーに 欧 州 本 部 を 置 く 場 合 本 部 を 一 から 設 立 する 必 要 があるが 一 大 国 のバイアスにとらわれない 欧 州 全 体 を 見 渡 す 経 営 を 容 易 にするというメリットが ある 持 株 会 社 と 地 域 統 括 会 社 は 必 ずしも 同 一 とする 必 要 はない 持 株 会 社 の 立 地 選 択 には 税 制 が 重 要 な 基 準 となり 地 域 統 括 会 社 の 立 地 選 択 にはインフラ 人 材 の 採 用 可 能 性 などが 重 要 な 基 準 となるためである しかしながら 同 一 とすることで 指 揮 命 令 系 統 と 資 本 関 係 を 一 致 させることができること 純 粋 持 株 会 社 は 日 本 とEUの 税 制 上 必 ずしも 有 利 では ないことなどから 持 株 会 社 と 地 域 統 括 会 社 を 一 本 化 するケースは 多 い 1980 年 以 前 は 企 業 の 組 織 として 製 造 部 門 と 販 売 部 門 を 分 離 させる 考 え 方 がかなり 一 般 的 であったが 1980 年 代 頃 から 事 業 ごとに 製 造 部 門 と 販 売 部 門 を 一 体 化 し 経 営 責 任 を 担 わせる 事 業 部 制 の 考 え 方 が 日 系 企 業 の 間 に 広 がってきた 国 際 事 業 の 比 率 が 小 さいうちは 事 業 部 制 は 国 内 だけに 適 用 され 国 際 ( 販 売 ) 部 門 は 人 的 資 源 の 有 効 利 用 の 観 点 からも 国 内 事 業 からは 独 立 して 運 営 されることが 多 かった しかし 国 際 的 な 製 造 拠 点 の 展 開 が 始 まり 国 際 事 業 の 比 率 が 高 まると 国 内 外 の 事 業 を 切 り 離 して 運 営 することは 効 率 的 で なくなってきた このため1990 年 代 に 日 系 企 業 の 組 織 は 日 本 国 内 は 各 事 業 本 部 が 担 当 し 国 外 は 海 外 事 業 本 部 が 一 括 して 担 当 するという 方 式 から 日 本 国 内 外 を 通 して 事 業 部 制 を 敷 く 方 式 に 徐 々に 変 化 して 行 った 事 業 部 ごとに 別 々の 場 所 に 欧 州 本 部 を 設 立 する 企 業 もあったが 多 くの 企 業 は 各 事 業 部 を 束 ね 各 事 業 部 共 通 の 機 能 を 持 つ 欧 州 本 部 を 設 立 した イギリスへの 工 場 進 出 拡 大 1980 年 代 後 半 から 欧 州 に 製 造 拠 点 を 設 ける 企 業 が 増 える 中 で その 多 くはイギリスへ 向 かった( 表 2 参 照 ) 理 由 としては 次 項 で 見 るように 言 語 人 材 集 中 効 果 などが 挙 げら れる さらに この 時 期 の 特 殊 事 情 として 欧 州 委 員 会 の 対 日 本 製 品 反 ダンピング 調 査 が 集 中 したことに 対 し イギリス 政 府 が 日 本 製 品 擁 護 の 姿 勢 を 示 したことが 挙 げられる 製 ユーロトレンド 2004.5 10
造 拠 点 投 資 の 場 合 長 期 的 に 資 本 をコミットすることになるため 親 日 的 な 政 府 を 持 つ 国 を 選 んだわけである 1.4 1990 年 代 後 半 1.4.1 欧 州 本 部 のイギリス 集 中 1970 年 代 から1990 年 代 前 半 まで イギリスの 経 済 は 規 模 成 長 率 共 に ドイツに 劣 って いた しかし1990 年 代 前 半 の 東 西 ドイツ 統 一 景 気 が 終 わると ドイツは 構 造 不 況 に 陥 り, 代 わって 1990 年 代 前 半 の 不 況 から 脱 出 したイギリスでは 1980 年 代 にサッチャー 政 権 下 で 行 われた 改 革 が 功 を 奏 し 好 景 気 高 成 長 率 が 継 続 した イギリス 経 済 の 回 復 市 場 の 拡 大 ドイツの 不 況 市 場 の 縮 小 により 日 系 企 業 の 欧 州 本 部 は ドイツを 離 れ イギリスに 集 中 するようになった 市 場 の 重 要 度 の 変 化 に 加 え 日 系 企 業 の 欧 州 本 部 がイギリスに 集 中 する 理 由 の 第 一 は 言 語 であると 思 われる 最 近 急 速 に 国 際 的 な 事 業 展 開 を 行 ってきた 日 系 企 業 の 多 くにとって 国 際 ビジネス 言 語 である 英 語 で 事 業 運 営 を 行 える 人 材 を 育 成 確 保 することは 容 易 ではな い さらに 欧 州 大 陸 の 国 で 事 業 を 行 うに 足 るその 他 の 言 語 能 力 を 持 った 人 材 を 育 成 確 保 することは たいへんな 負 担 になる 余 談 であるが 外 国 語 によって 事 業 運 営 が 出 来 る 人 材 を 確 保 することが 容 易 ではないのは 必 ずしも 日 本 に 限 られた 話 ではない 国 内 市 場 の 大 きな 国 では 外 国 語 習 得 の 必 要 性 が 必 ずしも 明 確 ではないので 複 数 言 語 に 通 じた 人 材 を 育 てることが 困 難 なためか イギリス ドイツ フランスなどの 大 国 での 外 国 語 教 育 の 結 果 は 小 国 オランダ ベルギーなどにおける 外 国 語 教 育 の 結 果 と 比 べ 明 らかに 貧 弱 である 欧 州 本 部 のロケーションとして イギリスに 続 いて ベルギー オランダが 多 く なる 理 由 は 地 理 的 な 要 因 に 加 え 欧 州 大 陸 側 の 市 場 の 重 要 度 が 高 い 企 業 にとって 多 言 語 能 力 を 持 つ 人 材 を 確 保 しやすいという 点 にあると 思 われる イギリスに 欧 州 本 部 を 置 く 理 由 としては 英 語 国 であることに 加 え 国 際 的 な 事 業 運 営 能 力 を 持 つ 人 材 を 比 較 的 確 保 しやすいことが 挙 げられる イギリスでは 東 インド 会 社 大 英 帝 国 以 来 国 際 的 な 人 材 が 連 綿 と 培 われてきた さらに 近 年 は 欧 州 の 中 では 一 番 先 に 米 国 流 の 考 え 方 を 取 り 入 れる 傾 向 があるため やはり 米 国 を 向 いている 日 系 企 業 としては とけ 込 みやすいという 事 情 もある オランダ ベルギーに イギリスに 次 いで 欧 州 本 部 が ユーロトレンド 2004.5 11
設 立 される 傾 向 があるのも 国 内 市 場 が 小 さいため 国 際 的 な 事 業 運 営 能 力 を 持 つ 人 材 が 比 較 的 豊 富 な 点 にあると 言 える 加 えて 欧 州 本 部 欧 州 主 要 拠 点 のイギリス 集 中 の 理 由 として 集 中 効 果 が 挙 げられる 日 系 企 業 の 集 中 がある 規 模 に 達 すると 他 の 日 系 企 業 もその 地 域 に 集 中 するようになる 顧 客 企 業 に 追 随 して 進 出 するという 理 由 に 加 え 行 政 機 関 の 対 応 日 系 企 業 向 けサプライ ヤー 日 本 人 学 校 日 本 食 レストランなど 日 系 企 業 従 業 員 向 けインフラが 次 第 に 整 って くるため 後 発 企 業 が 進 出 しやすくなる 古 くはドイツのデュッセルドルフ 近 年 では1990 年 代 後 半 のハンガリーへの 集 中 などが 例 として 挙 げられよう 1.4.2 物 流 統 合 EU 市 場 統 合 の 恩 恵 を 最 初 に 受 けたのは 物 流 である 1993 年 1 月 1 日 から EU 加 盟 国 間 の 国 境 における 通 関 が 廃 止 され トラックが 国 境 で 止 まる 必 要 がなくなった トラック 輸 送 の 場 合 1993 年 以 前 はEU 加 盟 国 間 の 国 境 を 越 えるたびに 約 1 日 配 送 リードタイムを 追 加 す る 必 要 があった この 自 由 化 により EU 加 盟 国 間 の 輸 送 時 間 は 大 幅 に 短 縮 され 在 庫 の 集 中 が 可 能 になった 時 期 をほぼ 同 じくして EU 内 の 運 輸 業 の 自 由 化 も 行 われた その 結 果 EU 市 場 のための 物 流 センターを1カ 所 に 統 合 し 在 庫 を 圧 縮 すると 共 に 輸 送 コストを 削 減 することが 可 能 になった 実 はこの 物 流 自 由 化 の 実 務 的 な 効 果 は 1993 年 直 後 すぐには 実 現 しなかった 企 業 の 物 流 合 理 化 が 本 格 化 したのは1990 年 代 中 盤 以 降 である 輸 送 業 界 による 自 由 化 対 応 が 実 現 する までに 数 年 を 要 したのが 一 つの 理 由 である EUにおける 法 改 正 自 由 化 の 効 果 が 事 業 活 動 にインパクトを 与 えるまで ある 程 度 の 期 間 を 要 することの 一 例 である 物 流 センターを1カ 所 に 統 合 する 場 合 ロケーションとして 選 ばれたのは 主 にオランダ ベルギーであった 両 国 が 欧 州 大 陸 への 海 上 輸 送 の 主 要 陸 揚 げ 港 であるロッテルダム ア ントワープを 擁 していること 鉄 道 高 速 道 路 運 河 など 欧 州 大 陸 輸 送 ネットワークへの アクセスが 良 好 なこと それに 伴 い 輸 送 業 者 が 集 中 発 展 していること 等 が 理 由 であっ た ユーロトレンド 2004.5 12
物 流 センターの 統 合 は 製 品 発 注 から 納 入 までのリードタイムが 数 日 の 業 種 地 域 から 始 まった EU 内 の 輸 送 条 件 が 整 うにつれ 対 応 範 囲 地 域 が 拡 大 した 2004 年 5 月 の 中 東 欧 諸 国 のEU 加 盟 により この 地 域 にも 物 流 合 理 化 の 恩 恵 がもたらされると 予 想 される リードタイムが 極 めて 短 い 業 種 の 場 合 物 流 センターを1カ 所 に 統 合 せず 欧 州 内 で3カ 所 程 度 に 統 合 する 例 も 見 られた 例 えば イギリスを 中 心 とする イギリス アイルランド 地 区 向 け 物 流 センター ドイツを 中 心 とする 北 欧 中 欧 ベネルックス 地 区 向 け 物 流 セ ンター フランス イタリア スペインなど 南 欧 諸 国 向 け 物 流 センターなどである 1.4.3 生 産 拠 点 の 中 欧 への 移 動 ドイツの 構 造 不 況 イギリスの 好 況 の 結 果 ポンドとドイツ マルクの 為 替 レートは 1990 年 代 前 半 のポンド 安 から 1990 年 代 後 半 にはポンド 高 に 大 きく 振 れた(グラフ1 参 照 ) 1999 年 のユーロ 導 入 以 前 も フランス フラン オランダ ギルダー ベルギー フランなど の 欧 州 大 陸 の 主 要 通 貨 は ドイツ マルクと 連 動 していたため ポンドは 欧 州 大 陸 の 主 要 通 貨 に 対 し 全 面 高 となった イギリスの 物 価 上 昇 率 は 1980 年 代 から1992 年 にポンドが 欧 州 通 貨 システムから 離 脱 する まで ドイツの 物 価 上 昇 率 をかなり 上 回 っていた OECD 統 計 によると 1979 年 から1991 年 までの 平 均 消 費 者 物 価 上 昇 率 はドイツの 年 3.0%に 対 して イギリスでは4%ポイント 高 く 年 7.0%であった 1992 年 にポンドが 欧 州 通 貨 システムから 離 脱 した 結 果 ポンドはド イツ マルクに 対 して 大 幅 に 下 落 した この 時 は 物 価 上 昇 率 の 差 を 反 映 した 為 替 レートの 調 整 という 側 面 があったが 1995 年 から2000 年 にかけてポンドのドイツマルクに 対 する 為 替 レートが 約 36% 上 昇 した 際 には 物 価 上 昇 率 の 差 は 無 関 係 であった 1992 年 から2000 年 までの 平 均 消 費 者 物 価 上 昇 率 は ドイツの 年 2.1%に 対 し イギリスは 年 2.8%であった 為 替 がコストの 上 昇 を 反 映 せずにポンド 高 に 大 きく 振 れたため イギリスの 製 造 拠 点 は 価 格 競 争 力 を 失 い 日 系 企 業 は 次 第 に 中 東 欧 地 域 に 生 産 拠 点 を 移 すようになった ユーロトレンド 2004.5 13
グラフ(1) イギリス ポンドの ECU/EURに 対 する 為 替 変 動 ECU/EUR 1.80 1.60 1.40 1.20 1.00 0.80 0.60 0.40 0.20-1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 GBP ( 出 典 : 欧 州 中 央 銀 行 月 次 報 告 書 ) 1989-90 年 に 計 画 経 済 から 市 場 経 済 に 転 換 した 中 東 欧 諸 国 は 欧 州 市 場 に 対 し 安 価 な 労 働 力 を 提 供 するようになった このため 日 系 企 業 製 造 拠 点 の 進 出 が 1990 年 代 半 ばから 急 速 に 増 えた 自 動 車 自 動 車 用 オーディオ 機 器 自 動 車 用 部 品 コンポーネント 電 器 電 子 機 器 などの 分 野 の 製 造 拠 点 が 次 々と 設 立 された 当 初 は 欧 州 における 製 造 拠 点 の 新 設 拡 大 を 目 的 とする 進 出 が 主 であったが 1990 年 代 終 盤 以 降 は コスト 競 争 力 を 強 化 す るためにイギリスなどの 西 欧 における 製 造 拠 点 を 移 転 する 例 が 増 えた 中 東 欧 諸 国 の 資 本 主 義 経 済 転 換 直 後 は 経 済 発 展 度 が 比 較 的 高 く 労 働 者 の 教 育 程 度 も 比 較 的 高 かった ハンガリー チェコ ポーランドの3カ 国 が 主 要 な 投 資 先 と 見 なされた ロケーション 選 択 の 際 の 比 較 は 多 くの 場 合 この3カ 国 を 中 心 に 行 われた 1990 年 代 半 ば 前 後 に 中 東 欧 地 域 に 進 出 した 日 系 企 業 は 国 際 事 業 展 開 で 日 系 企 業 の 最 先 端 を 行 く 企 業 が 多 く 進 出 先 はそれぞれの 理 由 によりハンガリー(スズキ TDK ソニー デンソーな ど) チェコ( 松 下 電 産 東 レなど) ポーランド(フィリップス 松 下 電 池 いすず ブ リジストンなど)に 分 散 していた しかし 1990 年 代 後 半 に 進 出 を 決 めた 第 2 陣 になると 圧 倒 的 にハンガリーが 多 くなった ハンガリーに 日 系 企 業 が 集 中 した 理 由 は すでに 先 行 して 投 資 した 日 系 企 業 により 日 系 企 業 向 けインフラの 発 展 が 最 も 進 んでいたこと 投 資 誘 致 機 関 の 誘 致 姿 勢 が 好 感 を 持 たれたこと 等 が 挙 げられよう チェコは ドイツの 南 東 に ユーロトレンド 2004.5 14
位 置 し 西 欧 市 場 へのアクセスはハンガリーよりも 良 い さらに3カ 国 の 中 では 工 業 化 の 進 んだ 国 であったが 1990 年 代 半 ばまで 政 府 が 投 資 誘 致 に 消 極 的 であったため 投 資 関 連 の 法 制 投 資 誘 致 公 社 の 体 制 などが 不 備 で 投 資 家 から 敬 遠 された ポーランドは 国 土 が 広 く 人 口 も 多 い 上 ドイツ 西 欧 市 場 への 距 離 も 近 く さらに 有 利 な 投 資 優 遇 制 度 も 作 られていたが 行 政 インフラの 未 整 備 が 理 由 で 投 資 家 から 敬 遠 されることが 多 かった ハンガリーにおける 外 国 企 業 の 投 資 は 全 国 にまんべんなく 広 がっているわけではなく 投 資 のほとんどは 利 便 の 良 いブタペストから1 時 間 圏 内 とブタペスト-ウィーンを 結 ぶ 高 速 道 路 周 辺 に 集 中 している この 地 域 の 労 働 市 場 における 需 給 関 係 がひっ 迫 すると ハン ガリー 全 体 では 製 造 拠 点 投 資 の 受 け 入 れ 余 地 はまだあったにもかかわらず チェコへ 投 資 が 向 かうようになる 元 々 西 欧 市 場 へのアクセスがよい 上 1990 年 代 末 に 投 資 誘 致 制 度 な ど 投 資 関 連 の 法 制 が 整 備 されたこと 政 府 投 資 誘 致 機 関 の 姿 勢 転 換 により 投 資 家 が 好 感 を 持 ちやすくなったことなどもチェコへの 投 資 が 急 増 した 理 由 として 挙 げられる( 表 4 参 照 ) ( 表 4) 在 欧 州 日 系 企 業 の 中 東 欧 地 域 における 製 造 拠 点 数 の 推 移 1990 年 1995 年 1998 年 2000 年 2002 年 ポーランド 0 4 10 13 18 チェコ 0 6 11 17 42 スロバキア 0 1 4 6 8 ハンガリー 2 10 18 30 35 ルーマニア 0 0 1 3 7 ( 出 典 : 在 欧 州 トルコ 日 系 製 造 業 の 経 営 実 態 -2002 年 度 調 査 ジェトロ 海 外 調 査 部 2003 年 3 月 ) ユーロトレンド 2004.5 15
2.2000 年 以 降 と 今 後 の 発 展 2000 年 以 降 の 特 徴 は 日 本 の 製 造 業 における 海 外 事 業 の 比 重 が 高 まったこと 1990 年 代 か ら 続 く 日 本 の 不 況 により 欧 州 事 業 で 利 益 を 生 み 出 すことが 重 要 になってきたことが 挙 げ られる また1990 年 代 中 盤 以 降 EU 市 場 統 合 の 効 果 が 次 第 に 表 れ 欧 州 事 業 の 画 期 的 な 効 率 化 が 容 易 になってきた その 反 面 競 争 圧 力 も 高 まり コスト 競 争 力 の 強 化 が 一 層 重 要 になっている さらにコーポレート ガバナンス 意 識 の 高 まりにより リスク 管 理 の 整 備 が 重 要 な 課 題 となった その 結 果 日 系 企 業 の 欧 州 事 業 の 統 合 合 理 化 が 重 要 になってい る その 一 方 で 欧 州 における 優 遇 税 制 が 縮 小 し 優 遇 税 制 によるロケーション 選 択 の 可 能 性 は 少 なくなっている また 事 業 の 画 期 的 な 効 率 化 をクロスボーダーで 行 うと 税 制 上 の 障 害 にぶつかることも 多 い 2.1 税 制 メリットの 相 対 的 減 少 間 接 税 の 分 野 はEUの 共 通 政 策 を 必 要 とするため 比 較 的 早 い 時 期 から 統 合 が 行 われた 例 えば 関 税 の 分 野 では1968 年 に 加 盟 国 間 の 関 税 が 廃 止 され 共 通 対 外 関 税 が 導 入 された またVATの 分 野 では 1977 年 に 採 択 された 第 6 号 VAT 指 令 によって VAT 制 度 の 共 通 の 枠 組 みが 導 入 された しかしながら 法 人 所 得 税 個 人 所 得 税 など 直 接 税 に 関 する 税 制 は 原 則 として 各 加 盟 国 の 主 権 に 属 する 政 策 と 見 なされている このため 直 接 税 分 野 の 統 合 は なかなか 進 まず 親 子 会 社 間 の 配 当 に 対 する 源 泉 税 免 除 ( 理 事 会 指 令 90/435/EEC)と 特 定 の 組 織 再 編 に 対 する 課 税 繰 り 延 べ( 理 事 会 指 令 90/434/EEC)が1990 年 に 合 意 されたのが 始 まりである 1990 年 代 後 半 から EU 加 盟 国 政 府 の 間 に 外 国 資 本 をターゲットとした 優 遇 税 制 は EU 全 体 にとってマイナスであるという 考 え 方 が 拡 がった すなわち 資 本 は 労 働 力 に 比 べ 移 動 性 が 高 いため 優 遇 税 制 に 反 応 しやすい しかしながら 労 働 力 の 移 動 はそれに 伴 わ ないため 資 本 が 国 外 に 移 動 した 後 には 失 業 が 残 る 可 能 性 がある このため EU 加 盟 国 間 で 外 国 資 本 を 引 っ 張 り 合 う 法 人 税 制 は 有 害 であるという 考 えである この 考 えを 政 策 として 実 現 するためにEUの 有 害 な 法 人 税 制 に 関 する 諮 問 委 員 会 が1997 年 に 設 置 された この 諮 問 委 員 会 は 1999 年 にEU 加 盟 国 及 び 属 領 における66の 税 制 を 有 害 な 法 人 税 制 と 認 定 した EUでいう 有 害 な 法 人 税 制 とは 国 内 資 本 と 比 して 外 国 資 本 を 優 遇 し 外 国 資 本 を 誘 致 するための 税 制 を 指 している オランダの 金 融 子 会 社 持 株 会 社 ベルギ ーのコーディネーション センター サービス センター アイルランドの 製 造 業 に 対 す ユーロトレンド 2004.5 16
る 税 率 10% 適 用 など EU 中 小 国 の 外 国 企 業 誘 致 政 策 の 目 玉 となる 制 度 が 軒 並 み 有 害 税 制 リストに 載 せられた 有 害 な 法 人 税 制 の 廃 止 は 加 盟 国 の 裁 量 に 任 されているが 欧 州 委 員 会 および 相 互 の 圧 力 により 制 度 の 改 廃 が 進 められている EUでは 有 害 な 法 人 税 制 競 争 の 制 限 に 加 え 政 府 補 助 金 を 排 除 する 政 策 を 取 っている 政 府 補 助 金 の 一 つである 投 資 誘 致 制 度 には その 場 所 に 進 出 することによるデメリットを 補 完 する 程 度 を 越 えてはならないという 原 則 が 適 用 されている この 政 府 補 助 金 に 対 する 政 策 は EU 設 立 当 初 からの 古 い 政 策 であるが 市 場 統 合 が 進 行 するにつれ EU 内 で 対 等 な 競 争 環 境 を 確 保 する 重 要 性 が 増 しているため 近 年 とみに 施 行 が 強 化 されている ベルギーのコーディネーション センター 制 度 この 制 度 は 10 人 雇 用 することを 条 件 に 国 際 企 業 に 対 し グループ 内 金 融 などを 目 的 と するコーディネーション センターの 設 立 を 認 めるものであった 金 融 費 用 人 件 費 等 を 除 く 運 営 費 用 の8%を 課 税 基 礎 と 見 なすという 優 遇 税 制 が 適 用 された この 課 税 基 礎 に 対 し 通 常 の 法 人 税 率 が 課 される このため 例 えばグループ 内 金 融 によって 得 られた 利 益 は 基 本 的 に 課 税 されないことになる このコーディネーション センターの 制 度 は 導 入 された 当 時 1984 年 には 欧 州 委 員 会 の 承 認 を 得 ていた しかしこの 制 度 は 1999 年 の 答 申 により 有 害 税 制 として 認 定 されただけでなく 2002 年 には 欧 州 委 員 会 の 違 法 な 政 府 補 助 金 に 対 する 調 査 の 対 象 になった その 結 果 制 度 は 大 幅 に 変 更 され 税 制 中 立 的 な 新 制 度 が2003 年 に 導 入 された 経 過 措 置 として すでに 認 可 を 得 ているコーディネーション センターについては2010 年 までの 継 続 が 認 められることになった 中 東 欧 諸 国 の 投 資 誘 致 制 度 2004 年 5 月 1 日 よりEUに 加 盟 する 中 東 欧 諸 国 8カ 国 (エストニア スロバキア スロベニ ア チェコ ハンガリー ポーランド ラトビア リトアニア)については 加 盟 交 渉 の 過 程 で EUの 制 度 へ 適 合 させるための 投 資 誘 致 制 度 の 見 直 しが 行 われた 中 東 欧 諸 国 の 従 来 の 投 資 誘 致 制 度 は 投 資 後 5-20 年 間 に 渡 り 法 人 税 免 除 (いわゆるタックス ホリデー) を 認 める 形 が 多 かった 投 資 企 業 の 受 け 取 るメリットは 投 資 額 とは 関 わりなく 免 除 期 間 中 にどれだけ 利 益 を 生 み 出 せるかによって 決 まる 仕 組 みになっていた EUの 制 度 は 誘 致 制 度 の 内 容 と 関 わりなく 投 資 額 に 対 する 一 定 の 割 合 を 上 限 として 定 めるという 方 式 で ある 各 加 盟 国 が 地 域 ごとに 上 限 を 定 め これを 欧 州 委 員 会 が 事 前 承 認 するという 手 続 ユーロトレンド 2004.5 17
きが 踏 まれている 中 東 欧 諸 国 に 関 しても EU 加 盟 交 渉 の 過 程 で 同 様 の 制 度 が 導 入 さ れた さらに 過 去 に 認 められた 法 人 税 免 除 に 関 しても 基 本 的 に 投 資 額 の50%を 法 人 税 免 除 の 上 限 とする 修 正 が 加 えられた 法 人 税 課 税 基 礎 欧 州 委 員 会 では 法 人 税 率 の 設 定 は 加 盟 国 の 主 権 に 属 するため 統 合 できないが 法 人 税 の 課 税 基 礎 統 合 は EUの 権 限 に 入 ると 考 えており 2001 年 に 法 人 税 課 税 基 礎 の 統 合 を 政 策 目 標 として 掲 げた 欧 州 委 員 会 のコンセプトは 次 の 通 りである 1. EU 内 のグループ 企 業 の 所 得 を 共 通 の 課 税 基 礎 を 用 いて 連 結 ベースで 計 算 する 2. 算 出 された 所 得 は 共 通 の 配 付 方 法 を 使 って 各 国 に 配 分 する 3. 配 付 された 所 得 に 各 加 盟 国 の 定 める 法 人 税 率 を 適 用 し 法 人 税 額 を 算 出 する 4. 法 人 税 の 納 付 は それぞれの 加 盟 国 に 行 う 法 人 税 課 税 基 礎 の 統 合 は 中 長 期 的 なプロジェクトで 実 現 までには 数 々の 障 害 が 予 想 さ れている しかし 統 合 が 実 現 すると EU 事 業 の 損 益 通 算 が 可 能 になると 共 に EU 内 でグ ループ 企 業 間 の 移 転 価 格 問 題 がなくなる さらに 名 目 上 の 法 人 税 率 の 差 がそのまま 投 資 リターンの 差 に 反 映 されることになるため 加 盟 国 の 法 人 税 率 を 収 斂 させる 効 果 を 持 つこ とが 予 想 される 2.2 中 東 欧 諸 国 へ 製 造 拠 点 進 出 継 続 欧 州 における 製 造 拠 点 として 中 東 欧 への 工 場 進 出 は 継 続 すると 思 われる 中 東 欧 へ の 工 場 進 出 の 主 たる 理 由 は 比 較 的 低 い 人 件 費 によって 比 較 的 レベルの 高 い 労 働 者 を 雇 用 できるため コスト 競 争 力 を 強 化 できる 点 にある ハンガリー チェコの 製 造 拠 点 立 地 は 上 限 に 近 づいてきている このため 次 はポーラン ド スロバキアへの 進 出 が 拡 大 し さらに 低 賃 金 を 必 要 とする 業 種 については ルーマ ニア ウクライナ 等 への 進 出 増 加 が 予 想 される この2カ 国 の 産 業 基 盤 生 活 基 盤 は 中 欧 ユーロトレンド 2004.5 18
諸 国 と 比 べ かなり 見 劣 りがするのは 事 実 である しかしルーマニアは 北 西 部 で ウクラ イナは 西 部 で ハンガリーと 国 境 を 接 している このため これらの 国 の 拠 点 をハンガリ ーの 製 造 拠 点 の 姉 妹 拠 点 とし 部 品 供 給 物 流 手 配 経 営 支 援 などをハンガリーの 製 造 拠 点 から 行 うと 拠 点 運 営 が 容 易 になる 可 能 性 がある 2004 年 5 月 1 日 に 中 東 欧 8カ 国 がEUに 加 盟 すると 従 来 の 対 EU 国 境 における 通 関 が 廃 止 される その 結 果 新 旧 加 盟 国 間 あるいは 新 加 盟 国 間 の 輸 送 時 間 が 相 当 短 縮 される 輸 送 時 間 短 縮 のインパクトとして ハンガリー チェコのこれまで 投 資 が 少 なかった 地 域 へ の 投 資 が 拡 大 することも 考 えられる その 一 方 で 新 規 加 盟 国 の 外 側 にEUの 対 外 国 境 が 設 定 されるため ルーマニア ウクライナなど EUに 加 盟 していない 国 との 輸 送 時 間 の 差 が 目 立 つようになる 2.3 事 業 組 織 の 効 率 化 2.3.1 市 場 統 合 と 競 争 事 業 活 動 のグローバル 化 EU 市 場 統 合 進 展 により EU 内 における 競 争 は 激 化 している 欧 州 市 場 は 成 長 率 は 比 較 的 低 いが 安 定 しているため プレーヤーが 多 くなりがちで 競 争 が 激 化 しやすい 従 来 は 国 ごとの 規 制 商 慣 習 等 に 守 られていたので 国 ごとの 事 業 活 動 に 専 念 していれば 事 業 の 成 功 を 継 続 することができた しかしながら 市 場 統 合 の 進 行 により 資 本 力 のある 大 企 業 でなくとも 周 辺 国 への 進 出 事 業 展 開 が 可 能 になって きた また クロスボーダーの 事 業 展 開 が 増 えるにつれ 従 来 国 際 的 な 事 業 展 開 に 興 味 を 持 たなかった 企 業 も 防 衛 策 として 周 辺 国 に 進 出 するようになってきた 従 来 から 複 数 の 国 で 事 業 展 開 を 行 ってきた 企 業 としては 競 争 が 激 化 する 中 で 利 益 を 確 保 するためには 事 業 の 効 率 化 が 重 要 になる 競 争 圧 力 に 加 え EU 市 場 統 合 の 進 行 により 国 別 の 規 制 が 緩 和 されたため 近 年 飛 躍 的 な 発 展 を 遂 げた 情 報 通 信 技 術 を 利 用 して 機 能 を 統 合 することが 容 易 になってきた さらに 顧 客 企 業 が 欧 州 レベルで 物 流 購 買 在 庫 機 能 などを 統 合 す るにつれ サプライヤー 企 業 も それに 対 応 した 組 織 が 必 要 になってくる すなわち 各 国 事 業 における 戦 略 を 統 括 調 整 する 欧 州 レベルの 戦 略 意 思 決 定 機 能 が 必 要 になる 2.3.2 販 売 の 強 化 とバックオフィスの 合 理 化 一 般 的 に 顧 客 と 対 面 で 接 する 営 業 の 最 前 線 の 合 理 化 と 中 央 への 集 中 は 事 業 にとってマ イナスの 影 響 を 持 つと 見 られている しかし 顧 客 と 対 面 で 接 することのない 販 売 サポー ユーロトレンド 2004.5 19
ト 機 能 バックオフィス 機 能 などは 1カ 所 に 集 中 合 理 化 することで 規 模 の 利 益 (スケー ルメリット)を 実 現 することができる バックオフィスの 合 理 化 によるコスト 削 減 と 最 前 線 の 営 業 部 隊 強 化 による 販 売 拡 大 を 同 時 に 行 うことが 理 想 的 である EU 市 場 統 合 に 対 応 した 国 別 販 売 テリトリー(1 国 1 販 社 )を 見 直 す 企 業 は 増 えている しかしながら 市 場 統 合 度 の 差 異 は 分 野 地 域 により 大 きい 言 語 の 違 いは 規 制 緩 和 や 市 場 統 合 の 進 展 に 関 わらず 残 る 問 題 であるし 長 年 に 渡 って 形 成 されてきた 人 々の 嗜 好 商 慣 習 等 の 違 いも 長 期 間 残 る 性 質 のものである その 一 方 で 技 術 の 発 展 国 際 的 な 文 化 新 しい 嗜 好 の 伝 播 により 実 質 的 に 一 市 場 が 形 成 されている 場 合 もある さらに 小 売 業 者 自 身 が 欧 州 の 複 数 国 で 事 業 を 展 開 している 場 合 販 売 会 社 としては 欧 州 で 一 本 化 した 対 応 をする 必 要 がある 中 間 的 な 例 として 複 数 の 国 別 組 織 を 統 合 するものの 欧 州 全 体 を1テリトリーとせず 例 えば 欧 州 を 東 西 南 北 に 分 け 管 理 する 企 業 もある いずれにせよ 欧 州 市 場 の 変 化 に 継 続 的 に 対 応 できる 体 制 を 作 ることが 望 ましい 国 別 組 織 の 統 合 と 並 行 して 組 織 全 体 としての 簡 素 化 を 行 う 必 要 がある 組 織 簡 素 化 の 例 としては 支 店 化 コミッショネア 方 式 シェアード サービス センター( 財 務 経 理 人 事 ITなどの 機 能 統 合 )などが 挙 げられる 以 下 支 店 化 とコミッショネア 方 式 を 中 心 に 組 織 簡 素 化 を 検 討 する 2.3.3 支 店 化 欧 州 内 の 販 売 を 販 売 子 会 社 ではなく 支 店 を 通 じて 行 う 方 式 である 欧 州 事 業 を 統 括 す るために 欧 州 本 店 をいずれかの 国 におき 支 店 を 管 理 する( 図 3 参 照 ) 支 店 化 により 本 店 への 権 限 の 集 中 間 接 部 門 の 合 理 化 が 容 易 になる また 支 店 の 損 を 本 店 の 利 益 と 相 殺 できるようになる 但 し 国 により 制 度 が 異 なり 例 えばフランスに 本 店 を 置 く 場 合 には 在 外 支 店 で 発 生 した 損 失 と 本 店 利 益 の 相 殺 はできない ユーロトレンド 2004.5 20
( 図 3) 親 子 会 社 構 造 と 本 支 店 構 造 親 会 社 親 会 社 欧 州 持 株 会 社 欧 州 本 店 販 売 会 販 売 会 販 売 会 支 店 支 店 支 店 再 編 時 の 問 題 として 販 売 子 会 社 を 支 店 化 する 際 に 営 業 権 の 移 転 が 行 われたと 見 なされ 営 業 権 に 対 する 課 税 が 発 生 する 可 能 性 がある しかし1990 年 に 採 択 された 特 定 の 組 織 再 編 に 対 する 課 税 繰 り 延 べを 認 める 指 令 ( 理 事 会 指 令 90/434/EEC)により この 問 題 は 緩 和 さ れた 2003 年 に 提 案 されたクロスボーダーの 合 併 に 関 する 欧 州 議 会 理 事 会 指 令 案 が 採 択 される と 再 編 に 関 するEU 会 社 法 の 枠 組 みが 整 備 されるため 子 会 社 の 支 店 化 は 一 層 容 易 になる と 見 込 まれる その 一 方 で 本 店 と 支 店 は 同 一 法 人 と 見 なされるため 本 店 は 支 店 に 対 し 無 限 責 任 を 負 う ことになる このため リスク 管 理 の 観 点 から 事 業 の 有 限 責 任 を 維 持 したい 場 合 には 支 店 化 は 向 かない さらに 現 地 法 人 を 支 店 化 しただけでは 支 店 ごとの 法 人 税 VATの 申 告 会 計 記 録 の 維 持 を 行 う 必 要 は 残 るなど 自 動 的 な 合 理 化 にはつながらない このため 支 店 化 を 契 機 とし て 事 業 プロセスの 抜 本 的 な 見 直 し 統 合 を 行 う 必 要 がある 但 し 機 能 統 合 を 行 う 場 合 支 店 から 本 店 へ 営 業 権 の 移 転 が 行 われたと 税 務 当 局 から 認 定 されるおそれがあるので 事 前 に 十 分 な 調 査 が 必 要 である ユーロトレンド 2004.5 21
2.3.4 コミッショネア 方 式 コミッショネアと 呼 ばれる 販 売 会 社 が 自 己 の 名 を 以 って 本 社 (プリンシパル)のために 取 引 を 行 う 方 式 をいう 販 売 会 社 (コミッショネア)は 営 業 に 専 念 し 為 替 在 庫 など のリスクは 一 切 取 らない 為 替 管 理 在 庫 管 理 債 権 管 理 などリスクを 伴 う 機 能 は 本 社 で 行 い リスクを 反 映 した 利 益 マージンを 本 社 で 取 ることで 利 益 を 本 社 に 集 中 させる ( 図 4 参 照 ) 販 売 の 売 り 上 げは 本 社 が 立 てるので 販 売 会 社 の 売 り 上 げは 原 則 として 本 社 からの 手 数 料 だけになる コミッショネアとしての 販 売 会 社 に 対 する 法 人 税 の 課 税 は 本 社 がその 国 で 上 げた 売 り 上 げではなく コミッショネアの 手 数 料 収 入 がベースとなる そのためには コミッショネアは 本 社 名 義 ではなく 自 己 名 義 で 営 業 を 行 う 必 要 がある コミッショネア 方 式 では 販 売 子 会 社 から 本 社 へのリスク 管 理 機 能 等 の 集 中 に 対 応 して 組 織 の 合 理 化 を 行 うと 欧 州 事 業 全 体 としてコストを 引 き 下 げることが 可 能 になる さら に 本 社 (プリンシパル)をアイルランドのような 低 税 率 国 に 置 くことで 税 効 率 が 飛 躍 的 に 高 まる 可 能 性 がある ユーロトレンド 2004.5 22
( 図 4)コミッショネア 方 式 コミッション 本 社 機 能 集 中 による リスクの 集 中 管 理 販 売 会 社 (コミッショネア) 在 庫 配 送 請 求 等 対 面 営 業 顧 客 再 編 時 の 問 題 としては 販 売 会 社 方 式 から コミッショネア 方 式 への 転 換 の 際 に 営 業 権 の 移 転 を 認 定 されると 販 売 会 社 側 で 営 業 権 売 却 益 に 対 する 課 税 が 発 生 する 可 能 性 がある 点 である また 運 営 上 の 問 題 としては 販 売 会 社 所 在 国 の 税 務 当 局 から 本 社 が 営 業 を 行 っていたと 認 定 され 本 社 のその 国 における 売 り 上 げを 課 税 のベースと 見 なされるおそれがある 本 社 への 利 益 の 集 中 は 本 社 が 営 業 の 主 体 となっており 全 てのリスクを 負 っていること 販 売 会 社 は 契 約 に 基 づく 営 業 支 援 のみを 行 っていることなどが 前 提 となる このため 税 務 リスクの 分 析 に 基 づいた 事 業 プロセスの 構 築 移 転 価 格 の 設 定 が 必 要 である コミッショネア 方 式 は 米 国 企 業 が 主 導 した 組 織 形 態 である 多 くの 米 国 企 業 は 米 国 本 社 あるいは 低 税 率 国 をプリンシパルとすることで 税 効 率 の 向 上 を 狙 った 日 系 企 業 は ユーロトレンド 2004.5 23
税 効 率 の 向 上 を 狙 うというよりも 組 織 の 合 理 化 を 狙 うことが 多 いようである このため 既 存 の 欧 州 本 社 をプリンシパルとして コミッショネア 方 式 を 導 入 する 例 が 多 い 2.3.5 製 造 拠 点 を 含 んだ 組 織 合 理 化 前 述 した 通 り 従 来 日 系 企 業 では 製 造 拠 点 を 日 本 の 本 社 あるいは 事 業 部 直 轄 とすることが 多 く 欧 州 本 部 の 下 に 組 み 入 れることは 少 なかった しかしながら 製 造 のグローバル 化 サプライ チェーン マネジメントの 高 度 化 により 欧 州 事 業 全 体 の 効 率 化 を 考 える 際 に 製 造 拠 点 を 含 めて 検 討 をする 企 業 が 増 えている 製 造 拠 点 合 理 化 の 一 例 は 製 造 拠 点 を 製 造 に 専 念 させ 原 材 料 の 調 達 在 庫 販 売 などの 機 能 は 本 社 で 集 中 管 理 するという 構 想 である( 図 5 参 照 ) 製 造 拠 点 は 通 常 雇 用 人 数 が 多 いため かなり 充 実 した 組 織 を 持 たせることが 多 い 特 に 欧 州 に 多 数 の 製 造 拠 点 を 持 つ 場 合 各 製 造 拠 点 の 持 つ 機 能 を 本 社 に 集 約 することによる 合 理 化 効 果 は 大 きいと 期 待 できる ( 図 5) 製 造 拠 点 のスリム 化 調 達 サプライヤー 本 社 原 材 料 の 支 給 手 数 料 の 支 払 い 営 業 在 庫 請 求 アフターサービス 等 製 造 拠 点 顧 客 製 品 直 送 ユーロトレンド 2004.5 24
2.4 組 織 合 理 化 における 問 題 点 2.4.1 変 化 に 対 する 抵 抗 権 限 の 集 中 機 能 の 統 合 リスク 管 理 の 統 合 は 従 来 の 国 別 組 織 と 相 容 れない 部 分 がある すなわち 国 別 組 織 で 事 業 戦 略 を 立 て 経 営 管 理 人 事 考 課 人 事 異 動 を 行 い 業 績 の 評 価 を 行 っていたのでは 全 体 として 競 争 力 を 失 う 結 果 になりかねない その 一 方 で 国 別 に 作 り 上 げられた 組 織 の 影 響 力 は 一 朝 一 夕 に 変 更 できるものではない 従 業 員 特 に 幹 部 社 員 の 変 化 に 対 する 抵 抗 権 限 の 変 更 に 対 する 抵 抗 は どの 組 織 でも 大 きな 問 題 であ る 特 に 欧 州 レベルの 組 織 統 合 は 国 別 組 織 において 幹 部 社 員 の 減 員 権 限 縮 小 従 業 員 の 配 転 解 雇 を 伴 うため 大 きな 抵 抗 が 予 想 される 極 めて 中 央 集 権 的 な 組 織 であれば 本 社 の 指 示 一 本 で 組 織 の 再 編 を 行 うことができるかも 知 れない しかしながら 日 系 企 業 の 多 くは 従 来 国 別 販 売 会 社 に 大 きな 権 限 を 与 えて きたため 販 売 会 社 特 に 規 模 の 大 きな 販 売 会 社 は かなり 独 立 した 権 限 を 持 っているこ とが 多 い 特 に 代 理 店 を 買 収 して 自 社 直 轄 の 販 売 会 社 とした 場 合 には 一 層 その 傾 向 が 強 い また 日 系 企 業 が 一 から 立 ち 上 げた 拠 点 でも 幹 部 社 員 の 現 地 化 により 国 別 経 営 色 が 強 まっている 可 能 性 もある さらに 親 会 社 の 経 営 幹 部 がその 国 に 強 い 愛 着 を 持 っている ため その 国 の 販 売 組 織 縮 小 に 対 し 難 色 を 示 したこともある そのような 障 害 に 正 面 からぶつかって 強 い 抵 抗 にあうことを 避 けるため まず 形 式 上 の 組 織 を 改 編 し その 後 組 織 の 実 質 的 な 変 更 を 行 うという 手 順 を 踏 む 日 系 企 業 は 多 い 例 えば 従 来 国 別 販 売 組 織 として 現 地 法 人 を 用 いている 企 業 が 現 地 法 人 を 廃 し 支 店 化 するケースでは 現 地 法 人 から 支 店 に 変 更 することだけによる 組 織 の 効 率 化 は 極 めて 限 定 されている しかしながら 現 地 法 人 の 社 長 の 肩 書 きが 支 店 長 に 替 わることで 中 央 からの 指 示 が 通 りやすくなる 可 能 性 がある また 支 店 長 を 本 店 の 経 営 に 関 わらせること で 支 店 レベルの 視 野 を 越 えた 経 営 を 行 うことが 可 能 になる その 結 果 支 店 の 機 能 の 一 部 を 本 社 に 移 し 集 中 管 理 を 行 うことが 容 易 になる 集 中 管 理 は 管 理 の 質 と 効 率 を 向 上 さ せることが 目 的 であるが それだけでは 総 コストの 低 下 にはつながらない すなわち 支 店 から 本 店 に 機 能 が 移 ることに 伴 い 支 店 の 人 員 を 削 減 することが 総 コストを 下 げる ためには 必 要 である この 場 合 現 地 法 人 の 最 高 責 任 者 である 社 長 の 立 場 よりも 欧 州 レ ベルの 経 営 視 野 を 持 たされた 支 店 長 の 方 が 人 員 削 減 の 決 断 をしやすいという 可 能 性 があ る また どうしても 販 売 会 社 支 店 トップの 交 替 が 必 要 な 場 合 たとえ 形 式 的 とは 言 え ユーロトレンド 2004.5 25
交 替 に 株 主 総 会 の 決 議 が 必 要 な 現 地 法 人 の 社 長 よりも そのような 手 続 きの 不 要 な 支 店 長 の 方 が 交 替 させやすいという 面 もある コミッショネア 方 式 では リスク 管 理 と 営 業 に 対 するバックオフィス 機 能 を 本 社 に 集 中 さ せるため 大 がかりな 業 務 プロセスの 見 直 しが 必 要 になる 見 かけ 上 の 組 織 ( 例 えば 親 子 会 社 関 係 )が 変 更 されない 場 合 別 の 方 法 で 業 務 プロセス 見 直 しのきっかけを 作 り 変 更 を 実 施 する 必 要 がある コミッショネア 方 式 を 実 施 する 際 に 機 能 集 中 に 対 応 した 販 売 会 社 の 合 理 化 が 遅 れると 本 社 の 管 理 コストが 従 来 の 組 織 の 上 に 乗 り 一 時 的 にせよ コ スト 高 に 陥 るリスクがある さらに 販 売 会 社 の 売 り 上 げが 縮 小 するため 営 業 を 担 当 して いる 部 署 の 士 気 の 維 持 高 揚 をはかるために 報 酬 システムの 再 構 築 を 行 う 必 要 もある 2.4.2 税 制 による 制 約 営 業 権 の 移 転 事 業 の 効 率 を 上 げるためには 見 かけ 上 の 組 織 を 変 更 するだけではなく 実 質 的 な 機 能 拠 点 の 統 廃 合 を 行 うことが 必 要 になる ところが 支 店 化 やコミッショネア 方 式 の 導 入 に 伴 い 機 能 営 業 拠 点 の 統 廃 合 をクロスボーダーで 行 う 場 合 営 業 権 の 移 転 に 対 する 課 税 が 発 生 する 可 能 性 がある 実 際 に 第 三 者 に 対 して 売 却 を 行 った 場 合 売 却 益 (あるいは 売 却 損 )が 実 現 する この 場 合 当 該 地 の 税 制 により クロスボーダーの 取 引 であれ 一 国 内 取 引 であれ 売 却 益 に 対 する 課 税 が 行 われる その 一 方 グループ 企 業 内 で 営 業 拠 点 の 統 廃 合 を 行 った 場 合 連 結 納 税 制 度 のある 国 における 国 内 取 引 であれば 課 税 の 対 象 にな らない 可 能 性 が 高 い しかしながらクロスボーダーの 統 廃 合 であれば 原 則 として 第 三 者 間 の 取 引 と 見 なされ 課 税 の 対 象 となる 見 かけ 上 のクロスボーダーの 組 織 再 編 には 1990 年 の 指 令 ( 理 事 会 指 令 90/434/EEC)によ り 未 実 現 の 売 却 益 に 対 する 課 税 繰 り 延 べが 適 用 される しかし 実 質 的 な 営 業 拠 点 の 統 廃 合 を 伴 うクロスボーダーの 組 織 再 編 の 際 には 課 税 繰 り 延 べは 適 用 されない このため 欧 州 においてクロスボーダーの 機 能 営 業 拠 点 の 統 廃 合 を 伴 う 再 編 を 行 う 場 合 には 未 実 現 の 利 益 に 課 税 される 可 能 性 がある 特 に 高 収 益 事 業 の 再 編 の 場 合 課 税 額 が 大 きくなり 組 織 再 編 の 足 かせとなりかねない ユーロトレンド 2004.5 26
移 転 価 格 税 制 対 策 グループ 企 業 内 で 組 織 再 編 を 行 い 機 能 の 統 廃 合 を 行 う 場 合 グループ 企 業 内 の 売 買 価 格 ( 移 転 価 格 )に 反 映 させる 必 要 がある すなわち 独 立 企 業 間 取 引 と 同 様 にリスクを 反 映 し た 利 益 率 を 設 定 するのであるが グループ 企 業 内 の 移 転 価 格 は グループ 企 業 内 であるが 故 に 客 観 的 に 独 立 企 業 間 価 格 であることを 証 明 することが 難 しい このため 税 務 当 局 との 間 で 問 題 が 発 生 しやすい 事 項 である 企 業 側 としては 相 当 な 労 力 を 費 やして 独 立 企 業 間 価 格 であることを 証 明 する 必 要 がある 現 在 EU 加 盟 国 の 法 制 は 移 転 価 格 が 独 立 企 業 間 価 格 であることを 証 明 するために 一 定 の 文 書 を 備 えることを 求 める 傾 向 がある さらに 企 業 側 の 事 前 防 衛 策 として 事 前 価 格 合 意 (APA)を 取 引 の 片 側 あるいは 両 側 の 税 務 当 局 と 結 び 一 定 の 条 件 の 下 に 将 来 の 移 転 価 格 問 題 を 事 前 に 解 消 する 方 式 も 急 速 に 拡 大 している 日 本 の 外 国 税 額 控 除 制 度 上 の 制 約 日 本 の 外 国 税 額 控 除 制 度 は 日 本 の 親 会 社 から 数 えて2 層 目 すなわち 外 国 孫 会 社 の 所 得 に 対 して 課 される 外 国 法 人 税 まで 外 国 税 額 控 除 を 認 めている 従 って 3 層 目 以 降 の 会 社 に 対 しては 外 国 税 額 控 除 制 度 の 対 象 とならない 日 系 企 業 が 自 ら 構 築 した 組 織 の 場 合 日 本 の 税 額 控 除 制 度 を 考 慮 しているため 大 きな 問 題 が 生 じることは 少 ないが 日 本 のような 制 限 のない 国 に 設 立 された 外 国 企 業 を 買 収 した 場 合 3 層 以 上 に 渡 るグループ 企 業 を 持 つ 場 合 が 多 々ある このため 日 本 の 親 会 社 から 数 えて3 層 目 以 降 のグループ 企 業 から 日 本 へ 配 当 を 行 う 場 合 二 重 課 税 が 発 生 する 可 能 性 が ある 日 本 のCFC 税 制 の 制 約 日 本 のCFC 税 制 (タックスヘイブン 対 策 税 制 )では 法 人 税 25% 以 下 の 国 に 存 在 する 持 ち 分 5% 以 上 の 法 人 の 利 益 を 日 本 法 人 の 利 益 と 合 算 するという 内 容 である 実 体 がある 場 合 などに 対 し 例 外 規 定 はあるが 欧 州 各 国 の 税 制 と 比 べかなり 厳 しい 内 容 になっているた め 欧 州 企 業 を 買 収 した 場 合 など その 企 業 が 税 効 率 を 高 めるために 行 っている 方 策 が 日 本 のCFC 税 制 の 対 象 となる 可 能 性 がある 例 えば 特 許 権 など 知 的 財 産 権 を 低 税 率 国 に プールするなどの 方 策 が 欧 州 企 業 の 間 で 取 り 入 れられているが 法 人 税 率 25% 以 下 の 国 ユーロトレンド 2004.5 27
に 設 立 された 知 的 財 産 権 の 保 有 を 主 目 的 とした 外 国 関 連 会 社 は 日 本 のCFC 税 制 上 日 本 法 人 との 合 算 対 象 となるため 節 税 効 果 が 失 われてしまう ユーロトレンド 2004.5 28
3. 今 後 の 見 通 し 21 世 紀 初 頭 の 日 系 企 業 の 欧 州 事 業 では 従 来 独 立 した 組 織 として 発 展 してきた 販 売 会 社 製 造 会 社 を 欧 州 レベルで 一 本 化 し 効 率 のよい 合 理 的 な 組 織 をどのように 実 現 するかとい う 点 が 最 大 の 課 題 となると 思 われる 市 場 統 合 が 進 み 従 来 の 国 別 組 織 が 必 ずしも 必 要 ではなくなってきた 上 情 報 通 信 技 術 の 飛 躍 的 発 展 により サプライ チェーンの 運 営 や 顧 客 との 関 係 管 理 を 統 合 集 中 管 理 する ことが 可 能 になってきている さらに 近 年 米 国 欧 州 で 企 業 会 計 に 絡 む 大 型 の 不 祥 事 が 相 次 いだため 企 業 統 治 の 強 化 が 倫 理 面 法 制 面 で 重 要 な 課 題 となっている この 観 点 からは リスクを 集 中 して 管 理 することが 重 要 になる 特 に 代 理 店 の 買 収 を 通 じて 発 展 してきた 組 織 の 場 合 経 営 管 理 システムやさらには 企 業 風 土 が 異 なる 可 能 性 もある その ため 組 織 の 統 合 は 一 筋 縄 ではいかないが それだけにリスクの 透 明 化 と 集 中 管 理 は 一 層 重 要 である 市 場 統 合 の 進 展 情 報 通 信 技 術 の 発 展 は 競 争 の 激 化 を 生 むという 側 面 もある さらに 近 年 株 主 利 益 重 視 が 国 際 的 に 重 要 視 されているが これが 日 本 の 親 会 社 から 欧 州 事 業 に 対 する 利 益 重 視 の 圧 力 につながっている 欧 州 市 場 は 比 較 的 成 熟 しているため 間 接 費 用 の 圧 縮 が 利 益 増 大 を 実 現 する 上 で 重 要 な 要 素 である また 製 造 拠 点 に 関 しては 労 働 コストが 比 較 的 安 く 労 働 者 の 質 が 比 較 的 高 い 中 東 欧 諸 国 への 投 資 が 継 続 すると 思 われる 現 在 投 資 が 集 中 している 地 域 の 労 働 力 が 払 底 し 賃 金 が 上 昇 すると 投 資 はさらに 東 に 向 かうと 予 想 される 欧 州 における 組 織 の 統 合 リスク 管 理 の 集 中 という 戦 略 的 方 向 は 比 較 的 明 確 であるが 問 題 は タイミングである 市 場 統 合 が 進 んだとはいえ 国 別 地 域 別 の 差 異 は 残 っている ため タイミングを 見 極 めずに 統 合 を 進 めると 思 いがけない 抵 抗 に 遭 うことや 実 状 と 乖 離 した 組 織 を 作 ってしまう 可 能 性 がある さらに 統 合 に 対 する 制 度 上 の 障 害 もかなり 残 っている 現 在 EUにおける 事 業 統 合 に 対 する 制 度 上 の 障 害 の 中 で 最 も 重 要 なものは 税 制 であるとい える EUにおける 税 制 は 形 式 的 な 組 織 の 統 合 は 支 援 しているが 拠 点 や 機 能 の 統 廃 合 を ユーロトレンド 2004.5 29
含 むような 根 本 的 なビジネス プロセスの 再 編 を 支 援 するほど 整 備 統 合 されていない このため 事 業 統 合 の 際 の 課 税 が 再 編 の 障 害 となる 可 能 性 がある 日 系 企 業 の 欧 州 事 業 にとり 既 存 の 組 織 の 統 合 合 理 化 をどの 程 度 どのタイミングで 実 行 するかを 見 極 めることが 重 要 な 戦 略 的 課 題 である ユーロトレンド 2004.5 30