家 庭 科 教 育 の 変 容 と 様 相 について 岡 本 文 子 Transformation in Home Economics Education and Its Current Situation Ayako OKAMOTO 1. 諸 言 平 成 20 年 に 学 習 指 導 要 領 が 改 訂 され 平 成 21 年 度 からの 移 行 期 を 経 て 平 成 23 年 度 から 全 面 実 施 さ れた その 背 景 には 平 成 18 年 12 月 に 教 育 基 本 法 が 改 正 され さらにそれを 受 けて 改 正 された 平 成 19 年 6 月 の 学 校 教 育 法 の 中 で 新 たに 義 務 教 育 の 目 標 が 規 定 されたことがある 教 育 基 本 法 第 5 条 第 2 項 に 示 される 義 務 教 育 の 目 的 は 社 会 において 自 立 的 に 生 きる 基 礎 を 培 い また 国 家 および 社 会 の 形 成 者 として 必 要 とされる 基 本 的 な 資 質 を 養 うこと となっている これを 受 けて 学 校 教 育 法 第 21 条 第 4 項 では 家 族 と 家 庭 の 役 割 生 活 に 必 要 な 衣 食 住 情 報 産 業 その 他 の 事 項 に ついて 基 礎 的 な 理 解 と 技 能 を 養 うこと を 義 務 教 育 の 目 的 実 現 のための 達 成 目 標 の 一 つとして 定 め ている 小 学 校 教 育 課 程 講 座 家 庭 では 教 育 基 本 法 や 学 校 教 育 法 の 改 正 と 今 回 の 改 正 との 関 わりの 中 で 次 のように 述 べられている 1) 戦 後 の 教 育 改 革 において 制 定 されたものが 教 育 基 本 法 である 法 整 備 がなされたことにより 我 が 国 の 教 育 は 一 定 水 準 で 実 施 され その 効 果 も 認 められている しかし 戦 後 60 年 を 経 た 今 の 時 代 は 教 育 をとりまく 環 境 は 大 きく 変 化 してきている 子 どもた ち 自 身 と 家 庭 をはじめとして 学 校 地 域 社 会 すべてに 変 化 が 見 られる 例 えば 国 際 化 情 報 化 少 子 高 齢 化 価 値 観 の 多 様 化 など 我 が 国 全 体 を 通 して 変 化 している 状 況 である このような 変 化 は これからの 新 しい 時 代 にはさらに 大 きくなっていくことが 考 えられる した がって 戦 後 に 制 定 された 教 育 基 本 法 ではそぐわない 部 分 も 見 られたことから 改 正 する 必 要 がでて きた そのような 社 会 の 変 化 にともない 近 年 小 中 高 等 学 校 家 庭 科 教 育 における 教 育 内 容 や 方 法 そ れに 伴 う 児 童 生 徒 の 知 識 や 技 術 力 また 家 庭 生 活 そのもののありようが 著 しく 変 容 してきている ことは 本 学 の 学 生 に 関 わる 中 で 感 じてきたところである しかしながら 実 際 には 学 生 が 学 んでき た 知 識 や 技 術 あるいは 体 験 について 断 片 的 にしか 知 り 得 ていない 現 状 を 把 握 することは 適 切 な 教 育 活 動 を 行 う 上 で 必 要 であり かつ 現 代 の 家 庭 生 活 の 現 状 を 知 ることでもある さらにこの 大 学 生 の 世 代 が 次 世 代 への 文 化 の 継 承 者 であり 現 代 社 会 における 家 庭 の 有 りよう 家 庭 の 役 割 求 め 229
られる 家 庭 像 を 考 察 する 一 助 になるものと 考 える 2. 旧 学 習 指 導 要 領 と 新 学 習 指 導 要 領 の 内 容 新 学 習 指 導 要 領 の C 快 適 な 衣 服 と 住 まい に 関 する 内 容 を 平 成 10 年 版 学 習 指 導 要 領 と 比 較 し た 表 を 以 下 に 挙 げる 3) 表 1 小 学 校 家 庭 科 新 旧 内 容 項 目 一 覧 新 学 習 指 導 要 領 で 衣 生 活 と 住 生 活 を 一 つの 内 容 に 統 合 されたことは 大 きな 変 化 である C 快 適 な 衣 服 と 住 まい として 一 つの 内 容 とした 背 景 について 衣 服 は 人 体 を 取 り 巻 く 環 境 そして 住 まいはその 外 側 を 取 り 巻 く 環 境 をつくっており これらを 関 連 させて 学 習 することに 意 義 があるか らである つまり これらの 内 容 の 構 成 は 人 間 を 取 り 巻 く 環 境 を 快 適 に 整 えることへの 関 心 を 高 め 衣 服 と 住 まいを 関 連 付 けて 総 合 的 に 学 習 ようにしたのである と 説 明 されている 2) また 家 庭 生 活 を 大 切 にする 心 情 を 規 定 したことや 第 5 学 年 にガイダンス 的 な 内 容 を 新 設 したことなどが 改 訂 のポイントとしてあげられ 特 に 被 服 分 野 に 限 ったものではないが 関 連 する 230
改 訂 のポイントとして 環 境 への 配 慮 を 規 定 したことや 習 得 活 用 探 求 を 意 識 した 指 導 の 重 視 があげられる 3. 方 法 3.1 女 子 大 学 生 短 期 大 学 部 生 を 対 象 に 次 のようなアンケート 調 査 を 行 った アンケートの 概 要 は 配 布 時 期 : 平 成 23 年 7 9 月 配 布 数 120 名 回 収 率 100% 対 象 者 の 年 齢 :19 歳 ~21 歳 と なっている アンケート 調 査 内 容 は 次 の 通 りである 1 小 学 校 中 学 校 高 校 の 家 庭 科 で 製 作 した 被 服 関 連 の 作 品 の 内 容 体 験 について 2 基 本 的 な 縫 製 や 服 飾 工 芸 の 技 術 についての 自 己 評 価 3 家 庭 生 活 における 現 状 について 4 アパレルや 縫 製 に 関 わる 基 本 的 知 識 について 4. 結 果 3.1の 結 果 を 次 に 挙 げる 1 小 学 校 中 学 校 高 校 で 製 作 した 被 服 関 連 の 作 品 の 内 容 体 験 の 結 果 は 図 1の 通 りである 図 1-1 小 学 校 製 作 の 内 容 図 1-2 中 学 校 製 作 の 内 容 図 1-3 高 等 学 校 製 作 の 内 容 2 基 本 的 な 縫 製 や 服 飾 工 芸 の 技 術 についての 自 己 評 価 の 結 果 は 図 2の 通 りである 図 2-1 技 術 の 自 己 評 価 直 線 縫 い:ミシン 図 2-2 技 術 の 自 己 評 価 直 線 縫 い: 手 縫 い 図 2-3 技 術 の 自 己 評 価 玉 留 め 図 2-4 技 術 の 自 己 評 価 ボタンつけ 図 2-5 技 術 の 自 己 評 価 カギホックつけ 図 2-6 技 術 の 自 己 評 価 まつり 縫 い 図 2-7 技 術 の 自 己 評 価 すそのしまつ 図 2-8 技 術 の 自 己 評 価 千 鳥 がけ 図 2-9 技 術 の 自 己 評 価 ファスナーつけ 図 2-10 技 術 の 自 己 評 価 服 飾 工 芸 : 刺 繍 図 2-11 技 術 の 自 己 評 価 服 飾 工 芸 :レース 編 み 図 2-12 技 術 の 自 己 評 価 服 飾 工 芸 :かぎ 針 編 み 図 2-13 技 術 の 自 己 評 価 服 飾 工 芸 : 棒 針 編 み 231
3 家 庭 生 活 における 現 状 についての 結 果 は 図 3の 通 りである 図 3-1 家 庭 でのミシンの 保 有 率 図 3-2 家 庭 での 裁 縫 箱 保 有 率 4 アパレルや 縫 製 に 関 わる 基 本 的 知 識 についての 結 果 は 図 4の 通 りである 図 4-1 繊 維 名 の 正 答 数 図 4-2 織 物 名 の 正 答 数 5. 結 論 今 回 の 家 庭 科 教 育 に 関 するアンケート 調 査 で まず 最 初 に 述 べておきたいこととして 小 中 高 校 の12 年 間 を 通 して 全 く 被 服 に 関 する 製 作 実 習 を 経 験 しなかった という 答 が120 名 中 3 名 2.5%( 図 1 1)あったということである 本 調 査 の 中 で 覚 えていない という 回 答 も 見 られたが この3 名 の 回 答 者 については 製 作 していない あるいは 製 作 がなかった と 回 答 している 1 の 家 庭 科 における 製 作 実 習 体 験 では( 図 2-1) 小 学 校 5 年 または6 年 で エプロン と ナッ プザック の 両 方 もしくは 片 方 を 製 作 したという 答 が83%で 最 も 多 くなっている ただし エプロン と ナップザック の 両 方 を 体 験 したという 答 は45%であり 片 方 の 体 験 と 両 方 の 体 験 では 量 的 差 異 があることが 認 められた 次 に 多 いのはクッションカバー トートバッグ 小 物 入 れの 順 になっ ているが 小 学 校 の 段 階 での 製 作 実 習 に 顕 著 な 個 人 的 差 異 は 見 られず 学 習 指 導 要 領 に 則 った 指 導 が 概 ね 平 均 的 になされていることがわかる しかし 中 学 校 になると( 図 2-2) 製 作 実 習 の 体 験 があるという 答 は58%と 激 減 し 製 作 実 習 の 内 容 をみても 脈 絡 がなく 最 も 多 い ハーフパンツ でさえ16 名 13%に 留 まっている 製 作 内 容 には エプロン ブックカバー クッションカバー ナップザック ランチョンマット トートバッグ のように 小 学 校 で 体 験 したという 答 と 重 複 しているものも 多 く 発 展 性 がない ぞうきん という 答 も2.5%とはいえ 驚 くべき 結 果 であっ た 中 学 校 の 学 習 指 導 要 領 では 布 を 用 いた 物 の 製 作 を 通 して 生 活 を 豊 かにするための 工 夫 をで きることを 目 指 しており 小 学 校 で 習 得 した 技 能 を 生 かし 簡 単 な 衣 服 の 製 作 や 衣 服 のリメークや リフォームなどが 想 定 されているはずであるが 衣 服 に 類 する 内 容 は ハーフパンツ のみであっ た さらに 高 等 学 校 では( 図 2-3) 被 服 に 関 する 製 作 実 習 を 体 験 したという 答 は42%しかなく 58%つまり 大 半 の 学 生 は3 年 間 全 く 体 験 していないことになる 体 験 した 回 答 の 内 容 にも 一 貫 性 が なく 小 中 との 脈 絡 も 分 りづらい 編 み 物 や 刺 繍 などの 服 飾 工 芸 が 加 わっているものの 中 で 最 も 多 いのは 小 学 校 で 学 んだと 同 じ エプロン であった このことから 現 代 の 若 い 世 代 で は 縫 製 の 技 術 については その 実 習 内 容 からみて 系 統 立 てて 学 んできていないということが 言 え る また 継 続 して 行 う 機 会 が 乏 しいため 反 復 練 習 にはなり 得 ず 技 術 の 習 得 も 難 しいと 考 えられる 2の 基 本 的 な 縫 製 や 服 飾 工 芸 の 技 術 についての 自 己 評 価 では ミシンを 使 った 直 線 縫 いができ る ( 図 3-1)という 答 が86% と 答 えなかったのは14%で17 名 であった この17 名 の うち 約 3 分 の1である6 名 は 中 高 のいずれか または 両 方 で 製 作 実 習 を 体 験 しているにも 関 わ 232
らず と 答 えなかった 残 りの3 分 の2は 中 高 の 両 方 とも 製 作 実 習 を 体 験 していないか 憶 えていない 回 答 者 である また 手 縫 いで 直 線 縫 いが ( 図 3-2)という 答 が92% 玉 留 めが ( 図 3-3)という 答 が92% ボタンつけが ( 図 3-4)という 答 が80%と この4 点 については ほぼ という 自 己 評 価 がなされている しかしながら ミシンを 使 っ た 直 線 縫 い で と 答 えなかった つまり ミシンを 使 った 直 線 縫 い が と いう 答 が14%あるという 現 実 がある 手 縫 いについても8%が と 回 答 していない また 玉 留 めが と 答 えなかったものも8%あったことは 注 目 すべきである ボタンつけができ る と 答 えなかった つまり という 回 答 はさらに20%に 上 った 基 本 的 な 技 術 の 中 で は まつり 縫 い ( 図 3-6)についても と 答 えたのは46%であり 半 数 以 上 の56%は と 意 識 している 日 常 生 活 に 密 接 な 技 術 としては スカートやパンツのすそのしまつ ( 図 3-7)に 対 して27%しか と 回 答 しておらず まつり 縫 いが の46%をはる かに 下 回 っている カギホック ( 図 3-5)についても と 答 えたのは25%であり ま つり 縫 い とほぼ 同 様 の 結 果 であった これらの 技 術 は 最 も 日 常 生 活 に 結 びついた 技 術 であり 被 服 の 縫 製 といった 技 能 以 前 の 基 本 的 技 術 である 千 鳥 がけ ( 図 3-8)については と いう 答 はわずか2%であった ファスナーつけ ( 図 3-9)についても と 答 えたの は9%に 過 ぎなかった このことから 袋 物 以 外 の 衣 服 としてまとまりのある 縫 製 はほとんどできな いということを 表 している このような 日 常 生 活 に 結 びついた 縫 製 に 関 わる 基 本 的 技 術 の 習 得 がな されていないという 結 果 から これまでの 成 育 歴 の 過 程 で 携 る 機 会 がなかったということが 考 えら れるし 日 常 生 活 の 中 でその 必 然 性 が 認 識 されていないと 考 えられる また 服 飾 工 芸 に 関 する 技 術 については かぎ 針 編 み ( 図 3-12)が と 答 えた28%が 最 も 多 く 3 名 に1 名 がということになる また 次 に という 答 が 多 かったのは 刺 繍 ( 図 3-10)で 20%であった これは5 名 に1 名 がということである 棒 針 編 み ( 図 3-13)が と 答 えたのも18%とほぼ 同 様 である ただ レース 編 み ( 図 3-11)につ いては と 答 えたのは5%しかいなかった しかし これらの 服 飾 工 芸 の 技 術 は 生 活 を 豊 かにするためのものであり 日 常 生 活 にとって 必 然 性 があるものではない このような 自 己 評 価 の 数 字 は 決 して 高 いものではないが 日 常 生 活 に 必 要 な 基 本 的 な 技 術 の 割 合 に 比 べると 必 然 性 その ものが 揺 らいでいるように 見 える 3の 家 庭 生 活 における 現 状 については 家 族 と 同 居 している 回 答 者 のうち 家 にミシンがある ( 図 4-1)という 答 が75% ない という 答 が21% 借 りることが という 答 が4%であっ た このことから25%の 家 庭 が 日 常 生 活 の 中 でミシンを 必 要 としていないということが 窺 える ま たミシンを 必 要 とする 場 面 を 社 会 で 代 替 できているということも 要 因 として 考 えられる 一 方 家 に 裁 縫 箱 がある ( 図 4-2)と 答 えたのは98%でほぼすべての 家 庭 で 裁 縫 箱 は 準 備 されている または 小 学 校 からの 裁 縫 箱 を 引 き 続 き 所 持 しているということも 考 えられ 詳 細 は 明 確 にできてい ないが 裁 縫 箱 が 存 在 しない 家 庭 はほとんどないことになる しかしながら 必 要 と 感 じているかと いう 意 識 については 調 査 項 目 によって 明 らかにするべきであった さらに4のアパレルや 縫 製 に 関 わる 基 本 的 知 識 については 7つの 繊 維 名 と7つの 織 物 名 を 正 し 233
く 選 択 かどうかを 問 うという 単 純 な 回 答 方 法 であるが 7つの 繊 維 名 を 正 しく 選 択 した 回 答 者 は7 名 6%であり( 図 5-1) 最 も 多 かったのは 正 答 数 0の30 名 25% 次 に 正 答 数 5の21 名 18% 次 に 正 答 数 3の17 名 14% 正 答 数 6の13 名 11% 正 答 数 2 正 答 数 4の12 名 10% 正 答 数 1の8 名 7%の 順 になっている 一 方 織 物 名 についても 図 5-2のように 最 も 多 かったのは 正 答 数 0の50 名 42%であり 正 答 数 7は7 名 6%と 繊 維 名 の 知 識 よりもさらに 知 識 が 乏 しい ことが 理 解 される これらの 質 問 の 内 容 も 方 法 も 極 めて 単 純 であるが 名 称 を 知 らない 繊 維 につい てその 特 性 の 知 識 があるとは 考 えにくく 名 称 を 知 らない 織 物 の 特 徴 を 答 えられるとは 考 えにくい しかしながら 繊 維 の 性 質 を 知 っておくことも 必 要 な 知 識 である 保 温 性 や 吸 湿 性 などの 性 質 は 暑 さ 寒 さへの 対 応 と 密 接 に 関 係 しているからである 中 学 校 の 学 習 指 導 要 領 でも 第 2 章 第 8 節 技 術 家 庭 ( 家 庭 分 野 )2 内 容 のC 衣 生 活 と 住 生 活 の 自 立 において 衣 服 の 材 料 や 状 態 に 応 じ た 日 常 着 の 手 入 れがことを 指 導 すること とされている しかし 調 査 による 実 態 では 布 地 の 材 料 に 関 する 知 識 は 充 分 とは 言 えない この 被 服 材 料 の 知 識 に 関 しては 習 得 できていないという よりもむしろ 知 識 を 伝 達 する 側 にその 必 要 性 に 対 する 関 心 が 薄 いのではないかと 懸 念 されるので ある 改 訂 学 習 指 導 要 領 C(3) 生 活 に 役 立 つ 物 の 製 作 で 扱 う 基 礎 的 基 本 的 技 能 は 布 の 扱 い 方 その 他 の 材 料 や 用 具 道 具 ミシンやアイロンなどの 取 扱 い 布 を 用 いた 製 作 に 役 立 つ 物 の 製 作 計 画 を 立 てること 目 的 や 使 い 方 に 合 った 形 や 大 きさの 決 定 縫 い 針 に 糸 を 通 したり 糸 端 を 玉 結 び や 玉 どめにしたり 布 を 合 わせて 縫 ったりすること ミシンの 使 い 方 の 理 解 及 びミシン 縫 いの 基 本 的 な 操 作 がことなどである とされている 4) また 同 書 では 習 得 状 況 が 目 に 見 えて 評 価 し やすい 技 能 は2 年 間 の 学 習 の 中 で 繰 り 返 して 確 実 に 定 着 した 技 能 として 実 生 活 で 使 えるようにする ことが 必 要 である としているが 製 作 体 験 の 結 果 では 繰 り 返 して 習 得 を 図 ったという 形 跡 は 見 られないのである このような 結 果 を 見 るに 技 術 面 を 捉 えて 若 い 世 代 は 何 々が という 受 け 止 め 方 をし がちである しかし 家 庭 生 活 の 在 りようは 刻 々と 変 化 してきており 若 い 世 代 の 生 活 様 式 そのも のの 変 容 を 表 していると 捉 えることものではないだろうか 現 代 の 若 い 世 代 は 年 長 の 世 代 か ら 見 ると 当 然 はずのことが 当 然 知 っておくべきことを 知 らないと 受 け 止 められる こともあるだろうが 教 わらないことは 知 らないであろうし 経 験 しないことはであろう しかし 代 わりに 前 の 世 代 が 出 来 なかったことや 知 らなかったことを 学 んでいる 可 能 性 も 否 定 できな い さらに 広 義 には 文 化 の 変 容 を 表 しているとも 言 える ただ いかに 生 活 様 式 が 変 化 し 文 化 が 変 容 しても 普 遍 的 な 継 承 されていくべきものがあるはず である いかに 家 庭 生 活 の 社 会 化 が 進 んでも 埋 め 尽 くせない 精 神 性 があるはずである 新 学 習 指 導 要 領 においても 伝 統 や 文 化 に 関 する 教 育 の 充 実 は 重 点 事 項 とされている 今 回 の 調 査 の 技 術 的 な 側 面 については あくまで 自 己 評 価 にとどまっており という 答 と 推 定 という 答 という 答 の 実 際 の 技 術 的 差 異 または 技 術 そのものは 両 者 が 逆 転 し ているという 可 能 性 をも 含 めて 詳 細 な 情 報 にはなり 得 ていない ただ 自 己 評 価 は 相 対 的 にみた 自 234
信 や 意 識 の 指 標 とは 捉 えることがと 考 えられる また 今 回 の 調 査 の 対 象 である 女 子 大 学 生 短 期 大 学 部 生 は 本 学 学 生 に 限 られており その 結 果 を もって 一 般 化 ものではない その 他 の 属 性 地 域 や 成 育 歴 学 力 などによって 結 果 が 変 わっ てくる 可 能 性 は 否 定 しかしこの 世 代 のひとつの 層 ではあるが 次 代 の 家 庭 生 活 を 構 成 し 家 庭 建 設 者 であることに 変 わりはない 本 調 査 により 若 年 層 の 家 庭 科 教 育 における 知 識 や 技 術 の 習 得 について 一 端 ではあるが 実 態 を 把 握 することができた この 結 果 をもとに 教 育 方 法 の 改 善 を 図 るとともに 内 容 についても 伝 統 や 文 化 の 継 承 者 であることに 鑑 み 知 識 や 技 能 の 習 得 とともに 伝 えるべきものを 検 討 していきたい さらに 過 去 に 遡 って 小 中 高 等 学 校 の 教 科 書 等 の 資 料 を 紐 解 くことによって 家 庭 科 教 育 と 家 庭 生 活 の 変 容 を 分 析 し 現 状 の 要 因 を 探 り 家 庭 科 教 育 のある べき 方 向 性 についても 探 求 していきたい 235
1) 平 成 20 年 改 訂 小 学 校 教 育 課 程 講 座 家 庭 長 澤 由 喜 子 鈴 木 明 子 編 著 ぎょうせい 平 成 20 年 11 月 15 日 p2 注 2) 小 学 校 新 学 習 指 導 要 領 ポイントと 授 業 づくり 家 庭 東 洋 館 出 版 社 平 成 20 年 12 月 10 日 p153 3) 小 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 家 庭 編 文 部 科 学 省 東 洋 館 出 版 社 平 成 20 年 8 月 31 日 p6 4) 小 学 校 教 育 課 程 家 庭 長 澤 由 喜 子 鈴 木 明 子 編 著 編 著 金 子 佳 代 子 藤 原 孝 子 p103 参 考 文 献 小 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 家 庭 編 文 部 科 学 省 東 洋 館 出 版 社 平 成 20 年 8 月 31 日 中 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 家 庭 編 文 部 科 学 省 東 洋 館 出 版 社 平 成 20 年 8 月 31 日 平 成 20 年 改 訂 小 学 校 教 育 課 程 講 座 家 庭 長 澤 由 喜 子 鈴 木 明 子 編 著 ぎょうせい 平 成 20 年 11 月 15 日 伝 統 や 文 化 に 関 する 教 育 の 充 実 編 集 中 村 哲 教 育 開 発 研 究 所 平 成 21 年 7 月 1 日 小 学 校 新 学 習 指 導 要 領 ポイントと 授 業 づくり 家 庭 編 著 金 子 佳 代 子 藤 原 孝 子 東 洋 館 出 版 社 平 成 20 年 12 月 10 日 占 領 下 の 日 本 における 家 庭 科 教 育 の 成 立 と 展 開 柴 静 子 広 島 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科 紀 要 第 二 部 第 59 号 2010 361-370 ( 岡 本 文 子 おかもと あやこ) 236
図 1-1 製 作 実 習 の 体 験 の 有 無 図 1-2 小 学 校 製 作 の 内 容 ( 小 中 高 校 )12 年 間 を 通 して 製 作 実 習 を 体 験 した 製 作 実 習 を 体 験 していない 3% 97% ナップザック エプロン クッションカバー トートバッグ ランチョンマット 小 物 入 れ 枕 カバー ランチバック ブックカバー ハーフパンツ ティッシュケースカバー アームカバー 6 年 生 5 年 生 0 10 20 30 40 50 60 図 1-3 中 学 校 製 作 の 内 容 図 1-4 高 等 学 校 製 作 の 内 容 ハーフパンツ エプロン 刺 繍 布 絵 本 ぬいぐるみ ブックカバー マフラー ぞうきん クッションカバー トートバッグ ナップザック ランチョンマット 3 年 生 2 年 生 1 年 生 エプロン 刺 繍 編 み 物 ランチバッグ ナップザック トートバッグ ペットボトルホルダー ペンケース 小 物 入 れ ティッシュケースカバー はっぴ ハーフパンツ 3 年 生 2 年 生 1 年 生 0 2 4 6 8 10 0 2 4 6 8 10 12 図 2-1 小 学 校 2 年 間 の 製 作 内 容 の 内 訳 図 2-2 中 学 校 での 製 作 実 習 体 験 の 有 無 小 学 校 2 年 間 で ナップザック エプロン 両 方 を 製 作 した ナップザック エプロン の 片 方 を 製 作 した ナップザック エプロン 以 外 を 製 作 した 何 も 製 作 していない 覚 えていない 9% 8% 45% 製 作 実 習 を 体 験 した 42% 中 学 校 3 年 間 で 製 作 実 習 を 体 験 していない 覚 えていない 58% 38% 237
図 2-3 高 等 学 校 での 製 作 実 習 体 験 の 有 無 図 3-1 技 術 の 自 己 評 価 直 線 縫 い:ミシン 体 験 した 高 等 学 校 3 年 間 で 体 験 していない 覚 えていない ミシンで 直 線 縫 いが 42% 14% 58% 86% 図 3-2 技 術 の 自 己 評 価 直 線 縫 い: 手 縫 い 図 3-3 技 術 の 自 己 評 価 玉 留 め 手 縫 いで 直 線 縫 いが 玉 留 めが 8% 8% 92% 92% 図 3-4 技 術 の 自 己 評 価 ボタンつけ 図 3-5 技 術 の 自 己 評 価 カギホックつけ ボタンつけが カギホックつけが 20% 25% 80% 75% 238
図 3-6 技 術 の 自 己 評 価 まつり 縫 い 図 3-7 技 術 の 自 己 評 価 すそのしまつ まつり 縫 いが スカートやパンツのすそのしまつが 46% 27% 54% 73% 図 3-8 技 術 の 自 己 評 価 千 鳥 がけ 図 3-9 技 術 の 自 己 評 価 ファスナーつけ 千 鳥 がけが 2% ファスナーつけが 9% 98% 91% 図 3-10 技 術 の 自 己 評 価 服 飾 工 芸 : 刺 繍 図 3-11 技 術 の 自 己 評 価 服 飾 工 芸 :レース 編 み 刺 繍 が レース 編 みが 20% 5% 80% 95% 239
図 3-12 技 術 の 自 己 評 価 服 飾 工 芸 :かぎ 針 編 み 図 3-13 技 術 の 自 己 評 価 服 飾 工 芸 : 棒 針 編 み かぎ 針 編 み 棒 針 編 みが 28% 18% 72% 82% 図 4-1 家 庭 でのミシンの 保 有 率 図 4-2 家 庭 での 裁 縫 箱 保 有 率 ( 家 族 と 同 居 のうち) 家 庭 にミシンが ある ない 借 りることが 4% 21% ( 家 族 と 同 居 のうち) 家 庭 に 裁 縫 箱 が ある ない 借 りることが 0% 2% 75% 98% 図 5-1 繊 維 名 の 正 答 数 図 5-2 織 物 名 の 正 答 数 人 数 30 繊 維 名 人 数 50 織 物 名 21 8 12 17 12 13 7 15 26 9 8 3 2 7 0 1 2 3 4 5 6 7 正 答 数 0 1 2 3 4 5 6 7 正 答 数 240